JP2006288387A - 気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる方法 - Google Patents

気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる方法 Download PDF

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康彦 高橋
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Abstract

【課題】例えば、うつ病又は不安症等の「気分障害又は関連障害」による疾患症状を改善させる方法等を提供することを目的とする。また、当該「気分障害又は関連障害」の治療に有効な医薬の有効成分である物質を探索する方法、及び、当該方法において利用されるモデル哺乳動物等を提供することも目的とする。
【解決手段】下記のいずれかのタンパク質類を哺乳動物における脳内で過剰に存在させる工程を有することを特徴とする気分障害または関連障害による疾患症状を改善させる方法
<タンパク質類>(a)Gm1タンパク質、(b)Gm1タンパク質において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するタンパク質等、並びに、前記方法が施されてなることを特徴とする哺乳動物等
【選択図】なし

Description

本発明は、気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる方法等に関するものである。
気分障害、特にうつ病を治療するのに用いられる医薬の製造における、ある種の化合物及び医薬的に許容されるその塩の使用等が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、G−タンパク質αサブユニット間で保存されているGTP結合部位及びGTPase活性化部位と高い配列同一性を有するドメイン、及び、G−タンパク質αサブユニット間で保存されている3量体形成ドメインと高い配列同一性を有するアミノ酸配列部分を有するタンパク質(Gm1タンパク質)が知られている(例えば、特許文献2参照)。当該タンパク質は、G−タンパク質共役受容体(GPCR)刺激による細胞内シグナル伝達に関与しており、ヒトの脳、胸腺、精巣、脾臓、小腸、子宮及び心臓において発現していることが報告されている。そして、当該タンパク質をコードするポリヌクレオチドを用いた細胞シグナル伝達調節物質のスクリーニング方法が開示されている。
特表2002-541190号公報 特開2004-350672号公報
本発明は、例えば、うつ病又は不安症等の「気分障害又は関連障害」による疾患症状を改善させる方法等を提供することを目的とする。また、当該「気分障害又は関連障害」の治療に有効な医薬の有効成分である物質を探索する方法、及び、当該方法において利用されるモデル哺乳動物等を提供することも目的とする。
本発明者は、このような状況下、前記目的を達成するために、うつ病又は不安症等の「気分障害又は関連障害」による疾患の発症の原因となる因子を見出すべく鋭意研究を重ねた結果、前記の三量体Gタンパク質αサブユニットGm1が関与すること、即ち、うつ病及び不安症の患者の神経細胞において当該タンパク質の発現が低下していること、及び、モデル哺乳動物の脳内において当該タンパク質を過剰に発現させたところ、Gm1脳内強制発現哺乳動物では各種のストレスに対して抵抗性を示すこと等を新たに見出し、当該知見を利用することにより、本発明に至った。
即ち、本発明は
1.下記のいずれかのタンパク質類(具体的には、タンパク質及びポリペプチド等)を哺乳動物における脳内で過剰に存在させる工程を有することを特徴とする気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる方法(以下、本発明改善方法と記すこともある。)
<タンパク質類>
(a)Gm1タンパク質
(b)Gm1タンパク質において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するタンパク質
(c)Gm1タンパク質の一部を有し、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するポリペプチド
(d)Gm1タンパク質と85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するポリペプチド;
2.前項1記載の方法が施されてなることを特徴とする哺乳動物(以下、本発明哺乳動物と記すこともある。)又はその一部;
3.トランスジェニック哺乳動物の個体又はその子孫動物或いはそれらの一部であって、下記のいずれかの遺伝子類(具体的には、遺伝子及びポリヌクレオチド等)の発現量が同種の野生型哺乳動物での同遺伝子の発現量よりも実質的に増加されてなることを特徴とするトランスジェニック哺乳動物(以下、本発明トランスジェニック哺乳動物と記すこともある。)又はその一部;
<遺伝子類>
(a)Gm1遺伝子
(b)Gm1遺伝子において、1若しくは複数の塩基が欠失、付加若しくは置換された塩基配列なり、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有する遺伝子
(c)Gm1遺伝子の一部を有し、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有するポリヌクレオチド
(d)Gm1遺伝子の塩基配列と85%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有するポリヌクレオチド
4.トランスジェニック哺乳動物がマウスであることを特徴とする前項3記載のトランスジェニック動物又はその一部;
5.トランスジェニック哺乳動物の個体又はその子孫動物或いはそれらの一部が、トランスジェニック哺乳動物由来の組織又は細胞であることを特徴とする前項3又は4記載のトランスジェニック哺乳動物又はその一部;
6.気分障害又は関連障害の治療に有用な医薬を製造するための、下記のいずれかのタンパク質類の使用(以下、本発明タンパク質使用と記すこともある。)
<タンパク質類>
(a)Gm1タンパク質
(b)Gm1タンパク質において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するタンパク質
(c)Gm1タンパク質の一部を有し、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するポリペプチド
(d)Gm1タンパク質と85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するポリペプチド;
7.気分障害又は関連障害の治療において医薬として使用するための、下記のいずれかのタンパク質類(以下、本発明医薬用タンパク質と記すこともある。)
<タンパク質類>
(a)Gm1タンパク質
(b)Gm1タンパク質において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するタンパク質
(c)Gm1タンパク質の一部を有し、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するポリペプチド
(d)Gm1タンパク質と85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するポリペプチド;
8.下記のいずれかのタンパク質類及び医薬的に許容しうる担体を含有することを特徴とする、気分障害又は関連障害の治療用医薬組成物(以下、本発明タンパク質組成物と記すこともある。)
<タンパク質類>
(a)Gm1タンパク質
(b)Gm1タンパク質において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するタンパク質
(c)Gm1タンパク質の一部を有し、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するポリペプチド
(d)Gm1タンパク質と85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するポリペプチド;
9.気分障害又は関連障害の治療に有用な医薬を製造するための、下記のいずれかのGm1遺伝子類の使用(以下、(以下、本発明遺伝子使用と記すこともある。)
<遺伝子類>
(a)Gm1遺伝子
(b)Gm1遺伝子において、1若しくは複数の塩基が欠失、付加若しくは置換された塩基配列なり、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有する遺伝子
(c)Gm1遺伝子の一部を有し、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有するポリヌクレオチド
(d)Gm1遺伝子の塩基配列と85%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有するポリヌクレオチド
(e)上記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドを含有するベクター;
10.気分障害又は関連障害の治療において医薬として使用するための、下記のいずれかのGm1遺伝子類(以下、本発明医薬用遺伝子と記すこともある。)
<遺伝子類>
(a)Gm1遺伝子
(b)Gm1遺伝子において、1若しくは複数の塩基が欠失、付加若しくは置換された塩基配列なり、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有する遺伝子
(c)Gm1遺伝子の一部を有し、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有するポリヌクレオチド
(d)Gm1遺伝子の塩基配列と85%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有するポリヌクレオチド
(e)上記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドを含有するベクター
11.下記のいずれかのGm1遺伝子類及び医薬的に許容しうる担体を含有することを特徴とする、気分障害又は関連障害の治療用医薬組成物(以下、本発明遺伝子組成物と記すこともある。)
<遺伝子類>
(a)Gm1遺伝子
(b)Gm1遺伝子において、1若しくは複数の塩基が欠失、付加若しくは置換された塩基配列なり、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有する遺伝子
(c)Gm1遺伝子の一部を有し、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有するポリヌクレオチド
(d)Gm1遺伝子の塩基配列と85%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有するポリヌクレオチド
(e)上記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドを含有するベクター;
12.気分障害または関連障害の治療に有用な医薬の有効成分である物質を探索する方法であって、
(1)被験物質を前項2〜5のいずれかの前項記載の哺乳動物又はその一部に投与する又は接触させる第1工程、
(2)前記被験物質が投与又は接触された哺乳動物又はその一部における、気分障害または関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値を測定する第2工程、
(3)測定された効果又は指標値を対照と比較する第3工程、
(4)比較して得られる差異に基づき、気分障害または関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値を変動させる被験物質を選択する第4工程
を有することを特徴とする方法(以下、本発明探索方法と記すこともある。);
13.気分障害又は関連障害の治療に有用な医薬の有効成分である物質を探索する方法であって、
(1)被験物質を哺乳動物又はその一部に投与する又は接触させる第1工程、
(2)前記被験物質が投与又は接触された哺乳動物又はその一部における、気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値を測定する第2工程、
(3)測定された効果又は指標値を対照と比較する第3工程(ここで、当該対照の少なくとも一つは、前項2〜5のいずれかの前項記載の哺乳動物又はその一部における、気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値である。)及び
(4)比較して得られる差異に基づき、気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値を変動させる被験物質を選択する第4工程を有することを特徴とする方法;
14.対照が、前記哺乳動物と同種の被験物質が投与又は接触されていない哺乳動物又はその一部における、気分障害または関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値であることを特徴とする前項12又は13記載の方法;
15.対照が、前記哺乳動物と同種の被験物質が投与又は接触された哺乳動物又はその一部における、気分障害または関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値であることを特徴とする前項12又は13記載の方法;
16.対照が、被験物質が投与又は接触されていない前項2〜5のいずれかの前項記載の哺乳動物又はその一部における、気分障害または関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値であることを特徴とする前項12記載の方法;
17.前項12〜16記載のいずれかの前項記載の探索方法により選択される物質を有効成分として含有することを特徴とする気分障害又は関連障害の治療に有用な医薬;
18.気分障害又は関連障害に対する哺乳動物の個体の羅病性を決定するための方法であって、
(1)前記個体からタンパク質サンプルを取得する工程、及び
(2)前記タンパク質サンプルにおける下記のいずれかのタンパク質類の存在量を測定する工程
を有することを特徴とする方法(以下、本発明決定方法1と記すこともある。)
<タンパク質類>
(a)Gm1タンパク質
(b)Gm1タンパク質において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するタンパク質
(c)Gm1タンパク質の一部を有し、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するポリペプチド
(d)Gm1タンパク質と85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するポリペプチド;
19.気分障害又は関連障害に対する哺乳動物の個体の羅病性を決定するための方法であって、
(1)前記個体から核酸サンプルを取得する工程、及び
(2)前記核酸サンプルにおける下記のいずれかのGm1遺伝子類の転写量を測定する工程、又は、前記核酸サンプルにおけるGm1遺伝子類の多型のタイプを検定する工程
を有することを特徴とする方法(以下、本発明決定方法2と記すこともある。)
<遺伝子類>
(a)Gm1遺伝子
(b)Gm1遺伝子において、1若しくは複数の塩基が欠失、付加若しくは置換された塩基配列なり、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有する遺伝子
(c)Gm1遺伝子の一部を有し、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有するポリヌクレオチド
(d)Gm1遺伝子の塩基配列と85%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有するポリヌクレオチド;
等を提供するものである。
本発明により、例えば、うつ病又は不安症等の「気分障害又は関連障害」による疾患症状を改善させる方法等を提供することが可能となる。また、当該「気分障害又は関連障害」の治療に有効な医薬の有効成分である物質を探索する方法、及び、当該方法において利用されるモデル哺乳動物等を提供することも可能となる。
本明細書において、DNAの調製やベクターの調製等の分子生物学的な手法、タンパク質の抽出やウエスタン・ブロッティング等のタンパク質化学的な手法、及びノックアウト哺乳動物作製の操作等は、特に明記しない限り、MolecularCloning, A Laboratory Manual(T.Maniatis et al.,Cold Spring Harbor Laboratory(1982))、新生化学実験講座(日本生化学会編;東京化学同人)、ジーンターゲッティング(相沢慎一;羊土社(1995))等の実験書に記載される方法又はそれに準じた方法により行うことができる。
本発明における「気分障害又は関連障害」とは、「精神障害の診断および統計的マニュアル第4版」(DSM−IV)に定義された、例えば、気分障害(296.XX、300.4、311、301.13、295.70)、精神分裂病および関連障害(295.XX、297.1、298.8、297.3、298.9)、不安障害(300.XX、309.81、308.3)、適応障害(309.XX)および人格異常(301.XX)等の障害を意味する(カッコ内は、DSM−IVコードである)。
また本発明における「Gm1タンパク質」とは、例えば、特開2004-350672号公報に記載された公知なタンパク質(即ち、同公開公報における「Gm1タンパク質」)であり、当該公開公報に記載される配列番号1等で示されるアミノ酸配列を有する「三量体Gタンパク質αサブユニットGm1」と呼ばれているタンパク質である。尚、当該タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列は、同公開公報に記載される配列番号2等で示される塩基配列である。
さらにまた、同公開公報に記載される配列番号25で示されるアミノ酸配列を有するマウス由来のGm1タンパク質や、同公開公報に記載される配列番号26で示されるアミノ酸配列を有するラット由来のGm1タンパク質等も例示することができる。
本発明改善方法は、下記のいずれかのタンパク質類(以下、総じて、本タンパク質と記すこともある。)を哺乳動物における脳内で過剰に存在させる工程を有することを特徴とする。
<タンパク質類>
(a)Gm1タンパク質
(b)Gm1タンパク質において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するタンパク質
(c)Gm1タンパク質の一部を有し、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するポリペプチド
(d)Gm1タンパク質と85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するポリペプチド
ここで「本タンパク質」とは、上記のように、Gm1タンパク質の機能を損なわないものであれば、そのタンパク質の一部であってもよい。因みに、特開2004-350672号公報に記載される配列番号1に示されるアミノ酸配列は、Gタンパク質αサブユニット間で保存されているGTP結合部位及びGTPase活性化部位のアミノ酸配列と配列同一性が高いアミノ酸配列部分を有する。これらの部分は、特開2004-350672号公報に記載される配列番号1のアミノ酸配列におけるアミノ酸番号126〜133、287〜292、353〜359、428〜435で示される各領域である。これらのアミノ酸配列で示される領域は、既にGタンパク質αサブユニットとして同定されているGs及びGolfのGTP結合部位及びGTPase活性化部位のアミノ酸配列(NATURE,117-127,1991,vol349)と一致している。また、特開2004-350672号公報に記載される配列番号1に示されるアミノ酸配列は、Gタンパク質αサブユニット間で特にGsファミリーに属するGs及びGolfで高く保存されている特徴的配列と同じ配列(特開2004-350672号公報に記載される配列番号1のアミノ酸番号119〜126)を有し、しかもGタンパク質αサブユニット間で保存されているαヘリックス構造をとり得る。
本タンパク質には、例えば、当該タンパク質の他に生物学的機能を損なわない範囲でその塩又は誘導体も含まれる。このような誘導体としては、例えば、C末端又はその他のカルボキシル基がアミド、エステル等に変換されたもの、N末端又はその他のアミノ基がホルミル基、アシル基等で保護されているもの等が挙げられる。また、塩としては酸付加塩が好ましい。酸付加塩としては、塩酸、リン酸、硫酸等の無機酸との塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸との塩が挙げられる。
さらに生物学的機能を喪失することなくどのアミノ酸残基を何個置換、欠失又は付加できるかの指標は、特開2003−193330に記載された方法等により見出すことができる。生物学的機能を喪失しない改変は、例えば、既に同定されている各種のGタンパク質αサブユニットのアミノ酸配列との配列同一性が低い部分について行うことができる。
ここで、前記(b)にある「アミノ酸が欠失、付加若しくは置換」、前記(c)にある「一部」や、前記(d)にある「85%以上の配列同一性」には、例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質が細胞内で受けるプロセシング、当該タンパク質が由来する生物の種差、個体差、組織間の差異等により天然に生じる変異や、人為的なアミノ酸の変異等が含まれる。
前記(b)にある「アミノ酸が欠失、付加若しくは置換」(以下、総じて、アミノ酸の改変と記すこともある。)を人為的に行う場合の手法としては、例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードするDNAに対して慣用の部位特異的変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法が挙げられる。ここで部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.,12,9441-9456(1984))、変異導入用プライマーを用いたPCR法による方法等が挙げられる。
前記で改変されるアミノ酸の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数個、又はそれ以上である。かかる改変の数は、気分障害または関連障害による疾患症状を改善させる効果を見出すことのできる範囲であればよい。
また前記欠失、付加又は置換のうち、特にアミノ酸の置換に係る改変が好ましい。当該置換は、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴等の類似した性質を有するアミノ酸への置換がより好ましい。このような置換としては、例えば、i)グリシン、アラニン(非極性アミノ酸)、ii)バリン、イソロイシン、ロイシン(非極性アミノ酸)、iii)アスパラギン酸、グルタミン酸(酸性アミノ酸)、アスパラギン、グルタミン(極性アミノ酸)、iv)セリン、スレオニン(極性アミノ酸)、v)リジン、アルギニン、ヒスチジン(塩基性アミノ酸)、vi)フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸)のグループ内での置換が挙げられる。
本発明において「配列同一性」とは、2つのDNA又は2つのタンパク質間の配列の同一性及び相同性をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象のDNA又はタンパク質は、2つの配列の最適なアラインメントにおいて、付加又は欠失(例えばギャップ等)を有していてもよい。このような配列同一性に関しては、例えば、Vector NTIを用いて、ClustalWアルゴリズム(Nucleic Acid Res.,22(22):4673-4680(1994)を利用してアラインメントを作成することにより算出することができる。尚、配列同一性は、配列解析ソフト、具体的にはVector NTI、GENETYX-MACや公共のデータベースで提供される解析ツールを用いて測定される。前記公共データベースは、例えば、DNA Data Bank of Japan[国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJ研究センター (Center for Information Biology and DNA Data Bank of Japan ;CIB/DDBJ)内で運営される国際DNAデータバンク]のウェブサイト(ホームページアドレスhttp://www.ddbj.nig.ac.jp)等において、一般的に利用可能である。
本発明における配列同一性は、アミノ酸レベルの場合には85%以上であればよいが、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上であり、核酸レベルの場合には85%以上であればよいが、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
前記(d)にある「配列同一性」が2つのDNA間で高い場合には、Gm1タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列と相補性を有する塩基配列からなるDNAと「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」に関して、ここで使用されるハイブリダイゼーションは、例えば、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)等に記載される通常の方法に準じて行うことができる。また「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、6×SSC(1.5M NaCl、0.15M クエン酸三ナトリウムを含む溶液を10×SSCとする)、50%フォルムアミドを含む溶液中で45℃にてハイブリッドを形成させた後、2×SSCで50℃にて洗浄するような条件(Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6)等を挙げることができる。洗浄ステップにおける塩濃度は、例えば、2×SSCで50℃の条件(低ストリンジェンシーな条件)から0.2×SSCで50℃までの条件(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。洗浄ステップにおける温度は、例えば、室温(低ストリンジェンシーな条件)から65℃(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。また、塩濃度と温度の両方を変えることもできる。
尚、「Gm1タンパク質としての機能を有する」とは、生体内のホルモン、オータコイド、神経伝達物質等の生理活性物質が結合することにより受容体が発するシグナルを増幅し、伝達する機能を有することを意味し、具体的には、7回膜貫通型受容体であるGタンパク質共役型受容体(以下、「GPCR」という;Gprotein coupled receptor)が受けた刺激のシグナルを細胞内に運ぶ伝達器としての役割を果たすことである。GPCRは広範な種類の組織で発現しており、このシグナル伝達系がホルモン受容、神経伝達、細胞の増殖・分化のような広範な細胞機能の発現に介在することが明らかになっている(例えば、現代化学増刊34、61〜70、1997等参照)。詳述すれば、例えば、膜表面にあるGPCRにホルモンや神経伝達物質等のリガンドが結合すると、GPCRが活性化され、そのシグナルがG−タンパク質に伝えられる。シグナルが伝えられたG−タンパク質では、αサブユニットにGDPが結合した不活性型からGDPが放出され、これに代えてGTPが結合する活性化型に変換する。本タンパク質は、G−タンパク質αサブユニットとして、G−タンパク質共役型受容体刺激による細胞内シグナル伝達に関与する機能を有する。
また「哺乳動物」としては、いかなる哺乳動物でも用いることができるが、実験動物としては非ヒト哺乳動物が好ましい。このような哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ハムスター、マウス、ラット、ウマ、ネコ等が挙げられるが、この中でも、個体発生に要する期間及び生物サイクルが比較的短く、また繁殖が容易な齧歯類哺乳動物、特にマウスが好ましい。用いられるマウスの代表例としては、例えば、純系として、C57BL/6系、BALB/c系、DBA2系等、交雑系として、B6C3F1系、BDF1系、B6D2F1系、ICR系等が挙げられるが、中でもC57BL/6系が好ましく用いられる。
本タンパク質を「哺乳動物における脳内で過剰に存在させる」には、例えば、Gm1遺伝子等の本遺伝子の脳内での発現量を制御することによりGm1タンパク質等の本タンパク質の脳内での存在量を制御する方法(具体的には、当該哺乳動物の染色体上の1箇所以上に脳内で発現を誘導する適当なプロモーターの下流に本遺伝子が連結されてなるDNAを導入する方法や、ウィルスベクターを用いて本遺伝子を導入する方法等が挙げられる。)、Gm1遺伝子等の本遺伝子の脳内での発現量を制御することなくGm1タンパク質等の本タンパク質の脳内での存在量を制御する方法(具体的には、本タンパク質を直接脳内にマイクロインジェクションする方法)等を用いればよい。
尚、ここでいう「過剰」とは、本タンパク質の脳内での存在量が野生型哺乳動物の脳内での存在量に比べて実質的に上回っている状態をいう。例えば、対象とする哺乳動物において本タンパク質の脳内での存在量を増加させる処置が行われた状態が挙げられる。
本発明哺乳動物は、本発明改善方法が施されてなることを特徴としている。当該哺乳動物では、Gm1タンパク質等の本タンパク質が当該哺乳動物における脳内で過剰に存在している。勿論、他の遺伝子の変異操作等を施すことにより、本遺伝子の発現量が実質的に増加させてなる哺乳動物(即ち、本発明トランスジェニック哺乳動物)についても本発明哺乳動物に含まれる。そして、本発明哺乳動物は、被験物質の気分障害又は関連障害の治療のための医薬としての効果を評価する際の薬効の指標としても利用できる。
本発明哺乳動物の「一部」としては、当該哺乳動物由来の組織又は細胞を挙げることができ、好ましくは脳組織等の体の一部が挙げられる。また、当該動物由来の血液、リンパ液若しくは尿等の体液も本発明における本発明哺乳動物の一部に含まれる。
更に、上記組織、臓器又は体液に含まれる細胞を単離・培養して得られる培養細胞(採取した一代目の初代細胞及び当該初代細胞を株化した細胞を含む)や抽出物、のみならず胎生期胚における発生段階の各器官、又は不随する細胞の培養物及びES細胞についても分化・増殖能の有無に関わらず非ヒト動物の「一部」に含まれる。
Gm1遺伝子等の本遺伝子の導入により、Gm1タンパク質等の本タンパク質の発現が増加した哺乳動物を作製する方法自体は公知であり、公知のいずれの方法を用いてもよい。具体的には例えば、脳内での発現誘導が可能なプロモーターの下流に本遺伝子が連結され、さらにその下流にポリA付加シグナルが連結されたDNAをマイクロマニピュレーターでマイクロインジェクションすることにより、受精卵に導入する。脳内での発現誘導が可能なプロモーターとしては、例えば、脳特異的エノラーゼ(以下、NSEと記すこともある。)遺伝子プロモーター又はカルモジュリンキナーゼII遺伝子プロモーター等を挙げることができる。当該受精卵を擬妊娠状態にある哺乳動物(以下、仮親と記すこともある。)の卵管に移植することによってトランスジーンを持った哺乳動物を得るような方法が用いられる。
仮親の仔が上記のようなトランスジェニック哺乳動物であることの同定は、通常の遺伝子工学的方法等によりトランスジーンの存在に関してスクリーニングすることにより知り得る。例えば、仮親より出生離乳した仔より体組織(例えば、尾の一部等)よりゲノムDNAを抽出する。当該ゲノムDNAが、導入された本遺伝子のDNAを含むか否かを調べる。この操作では、例えば、ゲノムDNAを鋳型にして、トランスジーンの少なくとも一部と相補的であるプライマーを用いてPCRすることにより、導入DNAに由来するDNA断片が増幅するか否かを調べる。導入された本遺伝子のDNAがゲノムDNA中に存在することが確認された哺乳動物をトランスジェニック哺乳動物と同定すればよい。
トランスジェニック哺乳動物は、導入された本遺伝子のDNAを安定に保持することを確認しながら飼育継代を行う。得られたトランスジェニック哺乳動物における本遺伝子の発現解析は、例えば、RT−PCR法等により行うことができる。例えば、トランスジェニック哺乳動物の各組織から抽出されたRNAについて、導入された遺伝子の発現の分布及びレベルをRT−PCR法により調べる。具体的には例えば、作製されたトランスジェニック哺乳動物の脳組織からRNAを調製し、調製されたRNAを鋳型にして、本遺伝子にハイブリダイズする適当なプライマーを用いて逆転写反応を行い、続けてPCR反応を行う。得られたPCR産物をアガロースゲルにて電気泳動した後、当該ゲルをエチジウムブロマイドにより染色する。次いで、当該ゲルをUV照射しながらバンド強度を測定することにより、所望のDNA断片の存在有無を検出すればよい。尚、RNAの調製、電気泳動法、逆転写反応、PCR反応、バンド強度の検出方法等は、それ自体公知の通常用いられる方法に従い行えばよい。
得られたトランスジェニック哺乳動物における本タンパク質の発現解析は、例えば、ウエスタンブロット法等により行うことができる。具体的には例えば、作製されたトランスジェニック哺乳動物の脳組織から蛋白抽出液を調製し、調製された蛋白抽出液を電気泳動した後、分離された本タンパク質を適当なメンブレンの上に転写する。次いで、当該メンブレンの上に転写された本タンパク質を抗本タンパク質抗体(例えば、特開2003−193330号公報参照)等で検出する。尚、蛋白抽出液の調製、電気泳動法、メンブレンの上への転写、本タンパク質の検出方法等は、それ自体公知の通常用いられる方法に従い行うことができる。
本願発明者らは、下記の実施例に具体的に記載されるように、上記のようにして得られる本発明哺乳動物が、ストレスの付加により誘発される精神障害様モデル状態に対して抵抗性を示すことを見出した。従って、Gm1タンパク質等の本タンパク質を脳内で過剰に存在させることは、各種のストレス起因性の精神障害による疾患症状の改善に有効であり、Gm1タンパク質等の本タンパク質又はGm1遺伝子等の本遺伝子には、気分障害又は関連障害の治療に有用な医薬の有効成分としての効果があることが、明らかにされた。
次に、本発明哺乳動物の継代及び維持に関して、このようにして作製された本発明哺乳動物では、交配により得られた哺乳動物(次世代)の個体についても、本遺伝子の発現量が実質的に増加していることを確認しながら通常の飼育環境で飼育継代を行なうことにより継代及び維持が可能となる。即ち、本遺伝子が導入されたトランスジェニック哺乳動物の雌又は雄を、野生型哺乳動物の雄又は雌と交配することにより、本遺伝子が導入されたトランスジェニック哺乳動物を継代することができる。尚、このようにして得られた子孫も、本発明哺乳動物に含まれる。
次に、本発明哺乳動物の行動解析に関して、上記のようにして得られた本発明哺乳動物では、Gm1タンパク質等の本タンパク質の生体内における機能を解析する目的で行動解析を行い、さらに分析することができる。行動解析法としては、当該哺乳動物に適用できるものであればいかなるものでもよく、例えば、CURRENT PROTOCOLS IN NEUROSCIENCE (Jhon Wiley & Sons, Inc.)、哺乳動物の行動機能テスト(生体の科学、医学書院刊、vol.45、No.5(1995))等に記載される方法に準じて行うことができる。具体的には例えば、オープンフィールドテスト、棒渡り平衡感覚テスト、針金ぶら下がり筋力テスト、明暗選択テスト、個別飼育テスト、恐怖条件付けテスト、敗北経験テスト、電気ショック感受性テスト、Morrisの水迷路テスト、強制水泳テスト等が挙げられる。中でも、本発明哺乳動物においては、個別飼育テスト、恐怖条件付けテスト、敗北経験テスト、強制水泳テスト等が好ましく用いられるが、いくつかの方法を組み合わせて行動解析を行うことが好ましい。
このような行動解析法は、急性又は慢性ストレスによる、情動性又は行動の変化を検出することができるように条件が設定されている。従って、本発明哺乳動物及び野生型哺乳動物(対照)について上記の行動解析を行い、それぞれの結果を比較し、特定のテストにおいて、本発明哺乳動物と野生型哺乳動物(対照)との間に有意差が得られた場合には、そのテストにより行動解析され得る疾患症状において、本発明哺乳動物が何らかの変化や効果を有すると評価・判断することができる。本発明哺乳動物は、例えば、個別飼育テストにおいて野生型哺乳動物と有意な差を示す。個別飼育テストは、哺乳動物の情動性を検査する方法であり、気分障害又は関連障害による疾患(特に、うつ病又は不安定症)症状を有する哺乳動物で有意な差が検出されるテストであることから、当該哺乳動物は気分障害又は関連障害による疾患(特に、うつ病又は不安定症)症状に対して抵抗性を有していると評価・判断することができる。つまり、本タンパク質の脳内での過剰な存在が気分障害又は関連障害による疾患症状の改善(緩和、予防等を含む)に有用であることが判る。
尚、このような行動解析に用いられる野生型哺乳動物としては、同腹の仔であることが好ましい。
本発明タンパク質使用は、気分障害又は関連障害の治療に有用な医薬を製造するための本タンパク質の使用である。また、本発明医薬用タンパク質は、気分障害又は関連障害の治療において医薬として使用するための本タンパク質である。さらにまた、本発明タンパク質組成物は、本タンパク質及び医薬的に許容しうる担体を含有することを特徴とする、気分障害又は関連障害の治療用医薬組成物である。
本タンパク質は、以下の形態で医薬として使用すればよい。
本タンパク質は、そのまま又は医薬的に許容される担体(賦形剤、増量剤、結合剤、潤沢剤等を含む)や慣用の添加剤等と混合して気分障害又は関連障害の治療用医薬組成物として調製できる。当該医薬組成物は、調製する形態(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤等の経口投与剤;注射剤、点滴剤、外用剤、座剤等の非経口投与剤)等に応じて経口投与又は非経口投与することができる。また投与量は、有効成分の種類、投与経路、投与対象又は患者の年齢、体重、症状等によって異なり一概に規定できないが、1日投与量として、0.01〜100mg程度を1日1回又は数回に分けて投与できる。
尚、本タンパク質を医薬品として使用する場合には、医薬組成物の有効成分としては、本タンパク質等の中でもヒトに対する抗原性が最も低く、本タンパク質のアミノ酸配列若しくは、少なくとも一部を有するタンパク質を使用することが好ましい。本タンパク質は、天然に存在する生物体から抽出、精製等の操作により、天然タンパク質として調製することができるし、又は、遺伝子工学的手法を用いて組換えタンパク質として調製することもできる。例えば、ヒトの細胞、組織から粗抽出液を調製し、種々のカラムを使うことにより、精製タンパク質を調製することができる。ここでの細胞としては、本タンパク質を産生・発現しているものであれば特に限定されず、例えば、白血球由来細胞等を用いることができる。
本発明遺伝子使用は、気分障害又は関連障害の治療に有用な医薬を製造するため、下記のいずれかのGm1遺伝子類(以下、総じて、本遺伝子と記すこともある。)の使用である。
<遺伝子類>
(a)Gm1遺伝子
(c)Gm1遺伝子の一部を有し、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有するポリヌクレオチド
(d)Gm1遺伝子の塩基配列と85%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有するポリヌクレオチド
(e)上記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドを含有するベクター
ここで「本遺伝子」とは、本タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドであり、他の詳細事項については、前記の本タンパク質に係る記載において説明された内容に従い理解すればよい。
本発明遺伝子使用は、気分障害又は関連障害の治療に有用な医薬を製造するための本遺伝子の使用である。また、本発明医薬用遺伝子は、気分障害又は関連障害の治療において医薬として使用するための本遺伝子である。さらにまた、本発明遺伝子組成物は、本遺伝子及び医薬的に許容しうる担体を含有することを特徴とする、気分障害又は関連障害の治療用医薬組成物である。
本遺伝子は、以下の形態で医薬として使用すればよい。
本遺伝子は、そのまま又は医薬的に許容される担体(賦形剤、増量剤、結合剤、潤沢剤等を含む)や慣用の添加剤等と混合して気分障害又は関連障害の治療用医薬組成物として調製できる。当該医薬組成物は、調製する形態(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤等の経口投与剤;注射剤、点滴剤、外用剤、座剤等の非経口投与剤)等に応じて経口投与又は非経口投与することができる。また投与量は、有効成分の種類、投与経路、投与対象又は患者の年齢、体重、症状等によって異なり一概に規定できないが、1日投与量として、0.01〜100mg程度を1日1回又は数回に分けて投与できる。その他、例えば、リポソーム内に封入して送達するリポソームデリバリーシステム、マイクロインジェクション、直接注射法、遺伝子銃等を利用して細胞内に導入することもできる。これらの場合も、投与量、投与方法は、患者の年齢、体重、症状等によって異なり一概に規定できないが、当業者であれば適宜選択することができる。さらに本遺伝子は、遺伝子治療用のウィルスベクター等に組み込んだ形態で、目的とする細胞に導入することもできる。
更に、本遺伝子が有する塩基配列を基にアンチセンス医薬品を開発することもできる。即ち、本遺伝子の一部やその誘導体を、公知の方法で合成し、それらを使用して本タンパク質の発現を調整したり、本遺伝子に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドやその誘導体を使用して、本タンパク質の発現を調節することができる。
本発明探索方法は、気分障害又は関連障害の治療に有用な医薬の有効成分である物質を探索する方法であって、(1)被験物質を前項2〜5のいずれかの前項記載の哺乳動物又はその一部に投与する又は接触させる第1工程、(2)前記被験物質が投与又は接触された哺乳動物又はその一部における、気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値を測定する第2工程、(3)測定された効果又は指標値を対照と比較する第3工程、及び(4)比較して得られる差異に基づき、気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値を変動させる被験物質を選択する第4工程を有することを特徴とする。
そして、本発明探索方法においては、対照が、前記哺乳動物と同種の被験物質が投与又は接触されていない哺乳動物又はその一部における、気分障害または関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値であることが好ましい。また、対照が、前記哺乳動物と同種の被験物質が投与又は接触された哺乳動物又はその一部における、気分障害または関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値である一態様や、対照が、被験物質が投与又は接触されていない前項2〜5のいずれかの前項記載の哺乳動物又はその一部における、気分障害または関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値である一態様も挙げることができる。
ここで、本発明探索方法に関して、第1工程及び第2工程における「哺乳動物又はその一部」と、第3工程における「対照」との関係において、被験目的となる対象哺乳動物と対照目的となる対象哺乳動物とを入れ替えることにより、例えば、下記のように言い換えられた探索方法も本発明には含まれるものである。即ち、本発明には、気分障害又は関連障害の治療に有用な医薬の有効成分である物質を探索する方法であって、(1)被験物質を哺乳動物又はその一部に投与する又は接触させる第1工程、(2)前記被験物質が投与又は接触された哺乳動物又はその一部における、気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値を測定する第2工程、(3)測定された効果又は指標値を対照と比較する第3工程(ここで、当該対照の少なくとも一つは、前項2〜5のいずれかの前項記載の哺乳動物又はその一部における、気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値である。)及び(4)比較して得られる差異に基づき、気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値を変動させる被験物質を選択する第4工程を有することを特徴とする方法も含まれる。
本発明において「被験物質」としては、特に限定は無く、核酸、ペプチド、タンパク質(本タンパク質に対する抗体を含む)、有機化合物、無機化合物等であり、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子有機化合物、合成ペプチド、合成核酸、天然化合物等が挙げられる。ここで「本タンパク質に対する抗体」としては、例えば、配列番号1記載のアミノ酸配列又はその部分領域からなるタンパク質に免疫特異的な抗体等を挙げることができる。
被験物質の代わりに「対照物質」となり得るポジティブコントロール又はネガティブコントロールを用いて本発明探索方法を実施することにより、場合に応じて本発明探索方法でいう「対照」とすることもできる。
ここで「ポジティブコントロール」とは、気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果を有する任意の物質を表し、また「ネガティブコントロール」としては、被験物質に含まれる溶媒、バックグランドとなる試験系溶液等が挙げられる。
「対照物質」をネガティブコントロールとする場合、被験物質の気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果が対照物質の気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果よりも大きければ、当該被験物質は気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果を有すると評価すればよい。一方、被験物質の気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果が対照物質の気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果と同程度若しくは小さければ、当該被験物質は気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果を有さないと評価することができる。
また、対照物質をポジティブコントロールとする場合、被験物質の気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果と対照物質の気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果とを比較することにより、被験物質の気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果を評価すればよい。
さらにまた、被験物質の代わりに「対照物質」となり得るポジティブコントロール又はネガティブコントロールを用いて、かつ、本発明探索方法でいう「対照」を、(1)前記哺乳動物と同種の被験物質が投与又は接触された哺乳動物又はその一部における、気分障害または関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値や(2)被験物質が投与又は接触されていない本哺乳動物・本発明トランスジェニック哺乳動物又はその一部における、気分障害または関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値に相当させながら本発明探索方法を実施することもできる。
本発明探索方法の第1工程における「被験物質を本発明哺乳動物に投与する又は接触させる」とは、被験物質を当該哺乳動物に投与すること、又は被験物質を当該哺乳動物の一部に接触させることを表し、当業者に汎用されている方法で実施することができる。被験物質を当該哺乳動物に投与する場合、その投与方法には特に限定はなく、経口的若しくは非経口的に投与すればよい。非経口的投与方法としては、静脈内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与(ip)、直腸内投与、経皮投与(塗布)等を挙げることができる。
被験物質の形態に特に限定は無く、固体、液体、基剤との混合物、縣濁液又は溶液等として用いることができる。縣濁液若しくは溶液とする場合、水、pH緩衝液、メチルセルロース溶液、生理食塩水、有機溶媒水溶液(有機溶媒としては通常エタノールやジメチルスルホキシドが用いられる。)等を用いる。基剤としてはグリセリン、スクワラン等の油等が挙げられ主に塗布用の被験物質を調製するために用いられる。投与量、投与回数及び投与期間は、例えば、全身状態、全身諸器官組織等に重篤な影響を及ぼさない範囲内(例えば投与量は、最大耐量)とすればよい。
本発明探索方法の第2工程における「気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値」の測定方法としては、被験物質を本発明哺乳動物に投与する場合には、例えば、行動解析法等を用いて評価・測定することができる。具体的には、前記の行動解析法の中から任意に選択して用いることができるが、本発明哺乳動物では、個別飼育テスト、恐怖条件付けテスト、敗北経験テスト、強制水泳テスト等が好ましく用いられる。当該哺乳動物と野生型哺乳動物との間で有意差が検出されるような行動解析法を選んで用いることが好ましい。より好ましくは、例えば、ポジティブコントロールが投与された哺乳動物とネガティブコントロールが投与された哺乳動物との間で有意差が検出されるような行動解析法を選んで用いることがよい。
このような行動解析の結果、後述で詳細するような本発明探索方法の第3工程及び第4工程において、例えば、被験物質が投与された野生型哺乳動物から得られた結果と、被験物質が投与されていない野生型哺乳動物(無処理の対照において対象となる哺乳動物)から得られた結果とを比較して行動解析し、そして被験物質が投与された野生型哺乳動物の結果が、被験物質が投与されていない野生型哺乳動物(無処理の対照において対象となる哺乳動物)の結果よりも本発明哺乳動物の結果に近ければ、投与された被験物質が気分障害又は関連障害の治療に有用な医薬の有効成分である物質であると判定すればよく、当該判定の結果に基づき被験物質を選択すればよい。勿論、被験物質が投与されていない野生型哺乳動物の代わりに、ネガティブコントロールが投与された野生型哺乳動物を使用することもできる。
他の方法としては、被験物質を本発明哺乳動物に投与する又は接触させる場合には、本遺伝子の発現レベルを「気分障害または関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値」として測定する方法等を挙げることができる。本遺伝子の発現レベルとしては、例えば、RNA量等の本遺伝子の転写物量や、タンパク質量等の本遺伝子の翻訳産物量等を挙げることができる。具体的には、本遺伝子の発現レベルの測定は、例えば、単位量の検体あたりの本遺伝子の転写物量を測定する方法、単位量の検体あたりの本遺伝子の翻訳産物量を測定する方法等により行えばよい。ここで「検体」とは、例えば、本遺伝子が含まれる可能性のある生体試料をあげることができ、具体的には、例えば、本発明哺乳動物から採取された脳組織等の組織或いはこれら組織から分離された細胞、又はその培養細胞等をあげることができる。これらの試料はそのまま検体として用いてもよく、また、かかる試料から分離、分画、固定化等の種々の操作により調製された試料を検体として用いてもよい。因みに、Gm1タンパク質は、ヒトの脳において特に顕著に発現しているので、生体試料としては脳組織を利用することが特に好ましい。
具体的に例えば、当該タンパク質のRNA量を検出・測定する方法及び、当該タンパク質量を検出・測定する方法等が挙げられる。そして、本発明探索方法の第2工程における「それに相関する指標値」としては、例えば、RNA量等の本遺伝子の転写物量や、タンパク質量等の本遺伝子の翻訳産物量等を挙げることができる。
本遺伝子の転写物量を測定するには、例えば、当該遺伝子の転写物であるmRNA量を測定する。特定の遺伝子のmRNA量の測定は、具体的には、例えば、定量的リアルタイム−ポリメラ−ゼチェイン反応(以下、定量的RT−PCRと記す。)、ノ−ザンハイブリダイゼ−ション法[J.Sambrook, E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラ−・クロ−ニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コ−ルドスプリング・ハ−バ−・ラボラトリ−(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年]、DNAアレイ法、インサイチュ−ハイブリダイゼ−ション法等により実施することができる。
また、本遺伝子の翻訳産物量を測定するには、例えば、本遺伝子の塩基配列にコ−ドされるアミノ酸配列を有するタンパク質の量を測定する。特定のタンパク質の量の測定は、具体的には、例えば、当該タンパク質に対する特異抗体を用いた免疫学的測定法(例えば、ELISA、ウェスタンブロット、RIA、免疫組織化学的検査等)、二次元電気泳動法、高速液体クロマトグラフィ−等により実施することができる。本遺伝子の塩基配列にコ−ドされるアミノ酸配列を有するタンパク質に対する特異抗体は、通常の方法に準じて、本遺伝子の塩基配列にコ−ドされるアミノ酸配列を有するタンパク質を免疫抗原として調製することができる。
本遺伝子の転写物量の測定方法についてさらに説明する。
本遺伝子の転写物であるmRNA量は、例えば、本遺伝子の塩基配列に基づいて設計、調製されたプロ−ブ又はプライマ−を使用して、通常の遺伝子工学的方法、例えば、ノ−ザンハイブリダイゼ−ション法、定量的RT−PCR、DNAアレイ法、インサイチュ−ハイブリダイゼ−ション法等を用いることによって測定することができる。具体的には、例えば、J.Sambrook, E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラ−・クロ−ニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コ−ルドスプリング・ハ−バ−・ラボラトリ−(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年等に記載された方法に準じて行うことができる。この際、組織における発現レベルが恒常的に一定であることが知られている遺伝子(以下、対照遺伝子と記す。)、例えば、β−actin遺伝子(Nucl.Acids.Res., vol.12,No.3, p.1687,1984)や36B4(Acidic Ribosomal Phosphoprotein)(Nucl.Acids.Res., vol.19,No.14, p.3998,1991)遺伝子等のmRNA量を同時に測定してもよい。そして、対照遺伝子のmRNA量若しくはその指標値あたりの本遺伝子のmRNA量又はその指標値を算出することにより、本遺伝子の発現レベルを求めてもよい。
(1.ノザンハイブリダイゼ−ション法)
まず、mRNA量を測定しようとする遺伝子のDNAを調製し、次いで、その全部又は一部からなるDNAを標識してプロ−ブを調製する。
上記の遺伝子は、市販のcDNA(例えば宝酒造から入手)又は以下に示した方法により調製したcDNAを鋳型にしてPCR等によって調製することができる。例えば、まず当該遺伝子を発現する組織から、塩酸グアニジン/フェノ−ル法、SDS−フェノ−ル法、グアニジンチオシアネ−ト/CsCl法等の通常の方法によって全RNAを抽出する。例えばISOGEN(ニッポンジ−ン製)等の市販のキットを利用して全RNAを抽出してもよい。
抽出された全RNAから、例えば、以下のようにしてmRNAを調製する。まず、オリゴdTをリガンドとして有するポリAカラムを5倍カラム容量以上のLoading buffer[20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.6)、0.5M NaCl、1mM EDTA、0.1%(w/v)SDS]を用いて、平衡化し、続いて前述の方法で調製された全RNAをカラムにかけ、10倍カラム容量のloading bufferで洗浄する。さらに5倍カラム容量のWashing buffer[20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.6)、0.1M NaCl、1mM EDTA、0.1%(w/v)SDS]で洗浄する。続いて、3倍カラム容量のelution buffer[10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.6)、1mM EDTA、0.05%(w/v)SDS)でmRNAを溶出させることによってmRNAを得る。
次いで、オリゴdTプライマ−を前記全RNA或いはmRNAのポリA鎖にアニ−ルさせ、例えばcDNA合成キット(宝酒造)のプロトコ−ルに従って、一本鎖cDNAを合成する。この時、鋳型とするRNAは、全RNA又はmRNAのどちらでもよいが、mRNAを用いる方がより好ましい。
前記一本鎖cDNAを鋳型にして、TaKaRa taq(宝酒造)等のDNA polymeraseを用いてPCRすることにより、DNAを増幅する。PCRの条件は、測定対象とする動物の種類、使用するプライマ−の配列等により異なるが、例えば、反応緩衝液[10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.3)、50mM KCl,1.5mM MgCl2]中、2.5mM NTP存在下で、94℃,30秒間次いで40℃〜60℃,2分間さらに72℃,2分間の保温を1サイクルとしてこれを30〜55サイクル行う条件等を挙げることができる。
このようにして増幅された本遺伝子のDNAは、pUC118等のベクタ−に挿入してクロ−ニングしておいてもよい。当該DNAの塩基配列は、Maxam Gilbert法 (例えば、Maxam,A.M&W.Gilbert, Proc.Natl.Acad.Sci.,74,560,1977 等に記載される)やSanger法(例えばSanger,F.&A.R.Coulson,J.Mol.Biol.,94,441,1975 、Sanger,F,& Nicklen and A.R.Coulson., Proc.Natl.Acad.Sci.,74,5463,1977等に記載される)等により確認することができる。
このようにして調製された本遺伝子のDNAの全部又はその一部を、次のようにして放射性同位元素や蛍光色素等で標識することによりプロ−ブを調製することができる。プローブは、通常15bp〜全配列の塩基数、好ましくは15bp〜1kb、より好ましくは100bp〜1kbの塩基長を有するものが例示できる。例えば、上記のようにして調製されたDNAを鋳型とし、当該DNAの塩基配列の部分配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマ−に用いて、[α−32P]dCTP又は[α−32P]dATPを含むdNTPを反応液に添加してPCRを行うことにより32Pで標識されたプロ−ブが得られる。また、上記のようにして調製されたDNAを、例えば、Random prime labeling Kit(ベ−リンガ−マンハイム社)、MEGALABEL(宝酒造)等の市販の標識キットを用いて標識してもよい。
次に、上記プロ−ブを使用して、ノ−ザンハイブリダイゼ−ション分析を行う。具体的には、本遺伝子の発現レベルを測定しようとする組織又は細胞から全RNA又はmRNAを調製する。調製された全RNA 20μg又はmRNA 2μgをアガロ−スゲルで分離し、10×SSC(1.5M NaCl、0.35Mクエン酸ナトリウム)で洗浄した後、ナイロンメンブラン[例えば、Hybond−N(アマシャム製)等]に移す。ポリエチレン袋にメンブランを入れ、ハイブリダイゼ−ションバッファ−〔6×SSC(0.9M NaCl、0.21Mクエン酸ナトリウム)、5×デンハルト溶液[0.1%(w/v)フィコ−ル400、0.1%(w/v)ポリビニルピロリドン、0.1%BSA]、0.1%(w/v)SDS,100μg/ml変性サケ精子DNA、50%ホルムアミド〕25mlを加えて、50℃、2時間インキュベ−トした後、ハイブリダイゼ−ションバッファ−を捨て、新たに2ml〜6mlのハイブリダイゼ−ションバッファ−を加える。更に上記方法で得られたプロ−ブを加え、50℃、一晩インキュベ−トする。ハイブリダイゼ−ションバッファ−としては、上記のほかに、市販のDIG EASY Hyb(ベ−リンガ−マンハイム社)等を用いることができる。メンブランを取り出して、50〜100mlの2×SSC、0.1% SDS中で室温、15分間インキュベ−トし、さらに同じ操作を1回繰り返し行い、最後に50〜100mlの0.1×SSC、0.1% SDS中で68℃、30分間インキュベ−トする。メンブラン上の標識量を測定することにより、本遺伝子の転写産物であるmRNAの量を測定することができる。
(2.定量的RT−PCR)
本遺伝子の発現レベルを測定しようとする組織又は細胞から上記(1 ノ−ザンハイブリダイゼ−ション法)に記載された方法と同様の方法でmRNAを調製する。調製されたmRNAに例えばMMLV(東洋紡)等の逆転写酵素を添加し、反応緩衝液[50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.3)、3mM MgCl2、75mM KCl、10mM DTT]中、0.5mM dNTP及び25μg/mlオリゴdT存在下で42℃、15分間〜1時間反応させ、対応するcDNAを調製する。cDNA合成キット(宝酒造)を用いて対応するcDNAを調製してもよい。調製されたcDNAを鋳型にして、本遺伝子の塩基配列の一部分を有するオリゴヌクレオチドをプライマ−としてPCRを行う。プライマ−としては、本遺伝子の部分塩基配列を有するプライマ−を挙げることができる。通常15bp〜100bp、好ましくは15bp〜50bp、より好ましくは15bp〜35bpの塩基長を有するものが例示できる。PCRの条件としては、例えば、TAKARA taq(宝酒造)を使用し、反応緩衝液[10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.3)、50mM KCl,1.5mM MgCl2]中、2.5mM dNTP及び[α32P]−dCTP存在下で、例えば、94℃,30秒間次いで40℃〜60℃,2分間さらに72℃,2分間の保温を1サイクルとしてこれを30〜55サイクル行う条件をあげることができる。増幅されたDNAをポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、分離されたDNAの放射活性量を測定することにより、本遺伝子のmRNAの量を測定することができる。或いはまた、例えば、TAKARA taq(宝酒造)を使用し、反応緩衝液[10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.3)、50mM KCl,1.5mM MgCl2]中、SYBR Green PCR ReagentsPCR(ABI社) 25μlを含む50μlの反応液を調製し、ABI7700(ABI社)を用いて、50℃,2分間次いで95℃,10分間の保温の後、95℃,15秒間次いで60℃,1分間の保温を1サイクルとしてこれを40サイクル実施する条件でPCRを行う。増幅されたDNAの蛍光を測定することにより、本遺伝子のmRNAの量を測定することができる。
(3.DNAアレイ解析)
本遺伝子の転写物量の測定には、ナイロンメンブラン等のメンブランフィルタ−等に本遺伝子のcDNAをスポットして作製されるマクロアレイ、スライドガラス等に本遺伝子のcDNAをスポットして作製されるマイクロアレイ、スライドガラス上に本遺伝子の塩基配列の部分配列を有するオリゴヌクレオチド(通常18〜25merの鎖長)を光化学反応を利用して固定して作製されるプロ−ブアレイ等、公知の技術に基づいたDNAアレイを利用することができる。これらのアレイの作製は、例えば、ゲノム機能研究プロトコ−ル 実験医学別冊(羊土社刊)等に記載された方法に準じて行うことができる。またAffymetrix社等から市販されているGenechip等を利用することもできる。
以下、DNAアレイを用いて本遺伝子の転写物量を測定する方法の一例を示す。
(3−1.マクロアレイによる定量)
本遺伝子の発現レベルを測定しようとする組織又は細胞から上記(1 ノ−ザンハイブリダイゼ−ション法)に記載された方法と同様の方法でmRNAを調製する。調製されたmRNAに、例えばMMLV(東洋紡社)等の逆転写酵素を添加し、反応緩衝液[例えば50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.3)、3mM MgCl2、75mM KCl、及び10mM DTTを含む液]中、0.5mMdNTP、[α32P]−dCTP、及び25μg/mlオリゴdT存在下で42℃、15分間〜1時間反応させて、標識DNAを調製し、これをプロ−ブとする。このとき、cDNA合成キット(宝酒造)等を用いてもよい。メンブランフィルタ−に本遺伝子のcDNAをスポットして作製されたマクロアレイをポリエチレン袋に入れ、ハイブリダイゼ−ションバッファ−〔6×SSC(0.9M NaCl、0.21Mクエン酸ナトリウム)、5×デンハルト溶液[0.1%(w/v)フィコ−ル400、0.1%(w/v)ポリビニルピロリドン、0.1% BSA]、0.1%(w/v) SDS,100μg/ml変性サケ精子DNA、50%ホルムアミド〕25mlを加えて、50℃、2時間インキュベ−トした後、ハイブリダイゼ−ションバッファ−を除去し、新たに2ml〜6mlのハイブリダイゼ−ションバッファ−を添加する。更に上記プロ−ブを加え、50℃、一晩インキュベ−トする。ハイブリダイゼ−ションバッファ−としては、上記のほかに、市販のDIG EASY Hyb(ベ−リンガ−マンハイム社)等を用いることもできる。マクロアレイを取り出して、50ml〜100mlの2×SSC、0.1% SDSに浸し室温にて15分間程度インキュベ−トした後、さらに同じ操作を1回繰り返し行い、最後に50ml〜100mlの0.1×SSC、0.1% SDS中で68℃、30分間インキュベ−トする。マクロアレイ上の標識量を測定することにより、本遺伝子の転写物であるmRNAの量、即ち、本遺伝子の発現量を測定することができる。
(3−2.マイクロアレイによる定量)
本遺伝子の発現レベルを測定しようとする組織又は細胞から上記(1 ノ−ザンハイブリダイゼ−ション法)に記載された方法と同様の方法でmRNAを調製する。調製されたmRNAに、例えばMMLV(東洋紡社)等の逆転写酵素を添加し、反応緩衝液[例えば、50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.3)、3mM MgCl2、75mM KCl、及び10mM DTTを含む液]中、0.5mM dNTP、Cy3−dUTP、(又はCy5−dUTP)及び25μg/mlオリゴdT存在下で42℃、15分間〜1時間反応させる。アルカリバッファ−(例えば、1N NaOH、20mM EDTAを含む液)を加え、65℃10分間保温した後、MicroconYM−30等を用いて遊離のCy3又はCy5を除くことにより蛍光標識DNAを調製し、これをプロ−ブとする。得られたプロ−ブを用いてマイクロアレイに対して(3−1 DNAマクロアレイによる定量)に記載された方法と同様にしてハイブリダイゼ−ションを行う。アレイ上のシグナル量をスキャナ−により測定することによって、本遺伝子の転写物であるmRNAの量、即ち、本遺伝子の発現量を測定することができる。
(3−3.プロ−ブアレイによる定量)
本遺伝子の発現レベルを測定しようとする組織又は細胞から上記(1 ノ−ザンハイブリダイゼ−ション法)に記載された方法と同様の方法でmRNAを調製する。調製されたmRNAに、例えば、cDNA合成キット(GENSET社)等を用いてcDNAを調製する。調製されたcDNAを、例えば、ビオチンラベル化cRNA合成キット(In Vitro Transcription社)(Enzo社)等によりビオチン標識し、cRNA cleanup and quantitation キット(In Vitro Transcription社)により精製する。生成されたビオチン標識DNAをFragmentation バッファ−(200mMトリス酢酸(pH8.1)、500mM KOAc、150mM MgOAc)により断片化する。これに内部標準物質Contol Oligo B2 (Amersham社製)、100×Control cRNA Cocktail、Herring sperm DNA (Promega社製)、Acetylated BSA(Gibco−BRL社製)、2×MES Hybridization Buffer〔200mM MES、2M [Na], 40mM EDTA、0.02% Tween20 (Pierce社製)、pH6.5〜6.7〕及びDEPC処理滅菌蒸留水を加え、ハイブリカクテルを作製する。
1×MESハイブリダイゼ−ションバッファ−で満たしたプロ−ブアレイ[例えば、Genechip(Affymetrix社製)等]を、ハイブリオ−ブン内で、45℃、60rpm、10分間回転させた後、1×MESハイブリダイゼ−ションバッファ−を除去する。その後、当該プロ−ブアレイに上記のハイブリカクテル200μlを添加し、ハイブリオ−ブン内で45℃、60rpm、16時間回転させる(ハイブリダイゼ−ション)。続いてハイブリカクテルを除去し、Non−Stringent Wash Buffer〔6×SSPE[20×SSPE(ナカライテスク社製)を希釈]、0.01% Tween20、及び0.005% Antifoam0−30(Sigma社)を含む〕で満たした後、GeneChip Fluidics Station 400(Affymetrix社製)の所定の位置に上記プロ−ブアレイを装着し、プロトコ−ルに従って洗浄する。次いで、MicroArray Suite(Affymetrix社)の染色プロトコ−ルEuKGE−WS2に従って該プロ−ブアレイを染色する。HP GeneArray Scanner(Affymetrix社製)により570nmの蛍光輝度を測定することにより、本遺伝子の転写物であるmRNAの量、即ち、本遺伝子の発現量を測定することができる。
(4.インサイチュ−ハイブリダイゼ−ション法)
基本的には1)組織の固定、包埋、及び切片の作製、2)プロ−ブの調製、3)ハイブリダイゼ−ションによる検出からなり、あらかじめ放射性若しくは非放射性物質で標識されたRNA又はDNAをプロ−ブとすること以外は、例えば、Heiles,H.et al., Biotechniques,6,978,1988、遺伝子工学ハンドブック 羊土社 278 1991、細胞工学ハンドブック,羊土社,214,1992、細胞工学ハンドブック,羊土社,222,1992等に記載される方法に準じて行うことができる。
RNAプロ−ブを調製する場合には、まず、例えば、前記(1 ノ−ザンハイブリダイゼ−ション法)に記載した方法と同様にして本遺伝子のDNAを取得し、当該DNAをSP6、T7、T3RNAポリメラ−ゼプロモ−タ−をもったベクタ−(例えばStratagene社のBluescript、Promega社のpGEM等)に組み込んで大腸菌に導入し、プラスミドDNAを調製する。次いで、センス(ネガティブコントロ−ル用)、アンチセンス(ハイブリダイゼ−ション用)RNAができるようにプラスミドDNAを制限酵素で切断する。これらDNAを鋳型とし、放射性標識の場合はα−35S−UTP等、非放射性標識の場合にはディゴキシゲニンUTP又はフルオレセイン修飾UTP等を基質として、SP6、T7、T3RNAポリメラ−ゼを用いてRNAを合成しながら標識し、アルカリ加水分解によりハイブリダイゼ−ションに適したサイズに切断することによって、あらかじめ放射性若しくは非放射性物質で標識されたRNAを調製する。尚、これらの方法に基づいたキットとしては、例えば、放射性標識用にはRNAラベリングキット(アマシャム社)が、非放射性標識用にはDIG RNAラベリングキット(ベ−リンガ−・マンハイム社)やRNAカラ−キット(アマシャム社)が市販されている。
また、DNAプロ−ブを調製する場合には、例えば、32P等で標識した放射性ヌクレオチド又はビオチン、ディゴキシゲニン若しくはフルオレセインで標識したヌクレオチドを、ニックトランスレ−ション法(J.Mol.Biol.,113,237,Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.,10,6−10,12,Cold Spring Harbor Lab.)又はランダムプライム法(Anal.Biochem., 132,6,Anal.Biochem.,137,266)によって取り込ませることによって、あらかじめ放射性若しくは非放射性物質で標識されたDNAを調製する。これらの方法に基づいたキットとしては、例えば、放射性標識用にはニックトランスレ−ションキット(アマシャム社)やRandom Prime Labeling Kit(ベ−リンガ−マンハイム社)が、非放射性標識用にはDIG DNA標識キット(ベ−リンガ−マンハイム社)、DNAカラ−キット(アマシャム社)等が市販されている。
具体的には、本遺伝子の発現レベルを測定しようとする組織又は細胞をパラホルムアルデヒド等で固定し、パラフィン等に包埋した後、薄切切片を作製しスライドグラスに張り付ける。又は、上記の組織又は細胞をOCTコンパウンドに包埋後、液体窒素又は液体窒素で冷却したイソペンタン中にて凍結させ、その薄切切片を作製し、スライドグラスに張り付ける。このようにしてスライド標本を得る。
次に、上記の組織又は細胞中にあって使用されるプロ−ブと非特異的に反応する物質を除去するために、上記のようにして作製されたスライドグラス切片をプロテイナ−ゼK処理し、アセチル化する。次いで、当該スライドグラス切片と上記のようにして調製されたプロ−ブとのハイブリダイゼ−ションを行う。例えば、上記のプロ−ブを90℃で3分間加熱した後ハイブリダイゼ−ション溶液で希釈し、当該溶液を前処理の終了したスライドグラス切片上に滴下してフィルムでおおい、モイスチャ−チャンバ−中で45℃、16時間保温することにより、ハイブリッドを形成させる。ハイブリダイゼ−ションの後、非特異的吸着又は未反応プロ−ブを洗浄等(RNAプロ−ブを用いた場合はRNase処理も加える)により除去する。転写物量は、例えば、スライドグラス切片上の標識量を測定すること、或いは薄切切片中のラジオアイソト−プ若しくは蛍光活性を示す部分の面積若しくは細胞数をカウントすることにより、本遺伝子の転写物であるmRNAの量又はそれに相当する値を測定することができる。
次に、本遺伝子の翻訳産物量の測定方法についてさらに説明する。
生体試料として本タンパク質を含む溶液を利用する場合には、例えば、生体試料に含まれる本タンパク質を本タンパク質に対する抗体と反応させ、当該抗体と結合し得る本タンパク質の量を測定することにより実施することができる。
本タンパク質に対する抗体の由来動物種は特に限定は無いが、通常は本発明哺乳動物と同一種由来の抗原を用いて作製された抗体を用いる。
本タンパク質に対する抗体は、その形態に特に制限はなく、本タンパク質を免疫抗原とするポリクローナル抗体であってもよく、またそのモノクローナル抗体であってもよい。
これらの抗体の製造方法は、すでに周知であり、当該抗体はこれらの常法に従って製造することができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.12〜11.13)。具体的には、本タンパク質に対する抗体がポリクローナル抗体の場合には、例えば、通常の方法に従って大腸菌等で発現し精製した本タンパク質を用いて、或いは常法に従って合成された、当該いずれかの本タンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを用いて、家兎等の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って目的とするポリクローナル抗体を得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した本タンパク質、或いはこれらタンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドをマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から目的とするモノクローナル抗体を得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.4〜11.11)。
また、抗体の作製に使用される本タンパク質は、本遺伝子の配列情報に基づいて、DNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換体の培養及び培養物からの本タンパク質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、当業者に既知の方法、或いは文献記載の方法(Molecular Cloning, T.Maniatis et al., CSH Laboratory (1983), DNA Cloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985))等に準じて行うことができる。具体的には本タンパク質をコードする遺伝子が所望の宿主細胞中で発現できる組み換えDNA(発現ベクター)を作成し、これを宿主細胞に導入して形質転換し、該形質転換体を培養して、得られる培養物から、目的タンパク質を回収することによって実施することができる。また本タンパク質は、本発明により提供されるアミノ酸配列の情報に従って、一般的な化学合成法(ペプチド合成)によって製造することもできる。具体的には、「ペプチド合成の基礎と実験」(泉屋信夫ら著、丸善、1987年発行)に記載された液相合成法や固相合成法を用いることができる。
本発明探索方法の第3工程及び第4工程において、上記のようにして得られた前記検体における本遺伝子の発現レベルの測定値を当該遺伝子の発現レベルの対照値と比較し、その差異に基づいて前記検体における気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値を変動させる被験物質を選抜する。
本遺伝子の発現レベルの対照値としては、前記の如く、例えば、正常組織での細胞における当該遺伝子の発現レベルの値であってもよい。ここで「正常組織」とは、例えば、気分障害又は関連障害による疾患に冒されておらず、気分障害又は関連障害による疾患の家族暦をもたない個体由来の組織を意味する。
かかる対照値は、正常組織での細胞における本遺伝子の発現レベルを、検体における当該遺伝子の発現レベルと併行して測定して求めてもよいし、別途測定して求めてもよい。また、複数の正常組織での細胞における本遺伝子の発現レベルを測定してその平均値を対照値としてもよい。
例えば、正常組織での細胞における本遺伝子の発現レベルの値を対照値として、検体における本タンパク質の発現レベルの測定値が対照値よりも高ければ、検体に投与又は接触させた被験物質が気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果を有すると評価することができる。
同様に、本遺伝子の発現レベルの対照値としては、例えば、前記被験物質を接触させていない細胞における発現レベルの値をあげることができる。細胞は、上記の如く、正常組織での細胞における当該遺伝子の発現レベルの値を好ましくあげることができる。
かかる対照値は、前記被験物質を接触させていない細胞又は正常組織での細胞における本遺伝子の発現レベルを、被験物質と接触させた組織での細胞における当該遺伝子の発現レベルと併行して測定して求めてもよいし、別途測定して求めてもよい。例えば、被験物質と接触させる前の正常組織の一部を採取して本遺伝子の発現レベルを測定し、得られた値を対照値とすることもできる。また、被験物質と接触させる前の複数の正常組織での細胞における本遺伝子の発現レベルを測定してその平均値を対照値としてもよい。
例えば、被験物質と接触させた細胞における本遺伝子の発現レベルの測定値が、正常組織での細胞における本遺伝子の発現レベルの値よりも高ければ、前記被験物質との接触による気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果を意味し、当該被験物質は気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果を有すると評価することができる。
本発明決定方法としては、例えば、
(A)気分障害又は関連障害に対する哺乳動物の個体の羅病性を決定するための方法であって、(1)前記個体からタンパク質サンプルを取得する工程、及び(2)前記タンパク質サンプルにおける本タンパク質の存在量を測定する工程を有することを特徴とする方法(即ち、本発明決定方法1)や、
(B)気分障害又は関連障害に対する哺乳動物の個体の羅病性を決定するための方法であって、(1)前記個体から核酸サンプルを取得する工程、及び(2)前記核酸サンプルにおける本遺伝子の転写量を測定する工程、又は、前記核酸サンプルにおける本遺伝子の多型のタイプを検定する工程を有することを特徴とする方法(即ち、本発明決定方法2)
等を挙げられる。
そして本発明決定方法1及び2は、例えば、気分障害又は関連障害に対する哺乳動物の個体の羅病性の決定するための、いわゆる遺伝子診断(例えば、mRNAレベル診断、ゲノムレベル診断等を含む。)を含むものであり、気分障害又は関連障害による疾患の感受性を診断するための手段として、本遺伝子の多型のタイプを検定する工程を有する技術に関する。
当該方法として、基本的には前述と同様な方法等を用いればよく、具体的には例えば、本遺伝子のDNAがホースラデイッシュペルオキシダーゼ(HRP)等の酵素や放射性同位元素、蛍光物質、化学発光物質等で標識されたプローブを用いたハイブリダイゼーション法、又は、当該DNAの塩基配列に基づきデザインされたプライマーを用いたPCR法を利用することにより、個体から取得された核酸サンプルにおける本遺伝子の転写量を測定すればよい。
以下、本発明を実施例を示してより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1 (ヒトGm1タンパク質の発現プラスミドの構築)
ヒトGm1タンパク質を脳神経細胞で発現させるために、ヒトGm1タンパク質をコードする塩基配列が脳特異的エノラーゼ(NSE)プロモーターの下流に連結されてなるDNAを含有するプラスミドを作製した。
即ち、特開2003−193330号公報に記載されるプラスミドpCR−Gm1をEcoRV及びSpeIで二重消化した後、このDNAをアガロースゲル電気泳動した後、当該DNAをQlAquick GelExtraction Kit(QlAGEN社製)を用いて精製し、回収した。この精製・回収されたDNAをインサートDNAとした。pcDNA3.1(インビトロジェン社製)をEcoRV及びXbaIで二重消化したものをベクターとして用い、これに上記のインサートDNAを、ライゲースを用いて連結することにより、プラスミドpcDNA−Gm1を作製した。
NSEプロモーターを含むプラスミドpNSEをBamHI及びHindIIIで二重消化した後、このDNAをアガロースゲル電気泳動した後、当該DNAをQlAquick GelExtraction Kit(QlAGEN社製)を用いて精製し、回収した。この精製・回収されたDNAとBglII及びHindIIIで二重消化したプラスミドpcDNA−Gm1とをライゲースを用いて連結することにより、発現プラスミドpNSE−hGm1を作製した。
実施例2 (受精卵へ発現プラスミドの導入)
C57/BL6Nマウスの単細胞段階(one cell stage)の受精卵の雄性前核に、実施例1で作製されたGm1発現プラスミドpNSE−hGm1をマイクロマニュピュレーターを用いてマイクロインジェクションした。この受精卵を、予め精管結紮が施された雄性C57/BL6Nマウスと交配して偽妊娠を誘発しておいた雌性C57/BL6Nマウスの卵管に移植した。移植20日後、自然分娩で新生児マウスを得た。生後6週間の仔マウスの尾を切断してゲノムDNAを常法により抽出した。ヒトGm1をコードする塩基配列を有するDNAを増幅できるプライマーTg1及びTg2を用い抽出したゲノムDNA鋳型としてPCRを行うことにより、トランスジェニックマウスの選別を行った。即ち、生後6週のマウスの尾を55℃でプロテイナーゼK(150ug/ml)を含有する溶解バッファー(50mM Tris−HCl、pH7.0、100mM NaCl、20mM EDTA、1%SDS)中で一晩インキュベートした。この溶解液をフェノールで1回抽出した後、フェノール・クロロホルムで1回抽出し、続いてクロロフォルムで1回抽出した。この抽出物をイソプロパノールで沈殿させた後、得られた沈殿物を100μlの超純水に再懸濁した。この再懸濁されたゲノムDNA1μlを鋳型としてかつ10μMのフォワードプライマーTg1(5’−ATGCTGCGCGACCAGAAGCGCGACCT;(配列番号1)、10μMのリバースプライマーTg2(5’−AGTCAGTGATAGGGGCTATGCTCTT;配列番号2)及びTOYOBO KOD Taqポリメラーゼ(TOYOBO社)を用いてPCRを行った。得られたPCR産物を2%アガロースゲルにて電気泳動した後、当該ゲル上で約290bpのバンドが検出されたマウスをトランスジェニックマウスとした。このトランスジェニックマウスは室温23℃、湿度55%、明暗各12時間に維持された飼育室で飼育した。
実施例3 (Gm1タンパク質発現トランスジェニックマウスにおけるGm1発現量の確認)
実施例2で得られたトランスジェニックマウス及び野生型マウスを6週令まで、室温23℃、湿度55%、明暗各12時間に維持された飼育室で飼育した。これらのマウスを定法に従い解剖し、脳組織を摘出した。脳組織の半球にTrizol試薬(インピトロジェン社)を1ml加え、これをホモジナイザーでホモジナイズした。このホモジナイズされた溶液を室温で5分間保持した後、これに200μlのクロロホルムを加えた。得られた混合物をボルテックスで十分に混合した後、さらに室温で3分間保持した。その後、遠心分離(10,000rpm、10分間)することにより上清を得て、これをチューブに回収した。回収された上清に0.5mlのイソプロパノールを加えた後、遠心分離(10,000rpm、10分間)することによりRNAを沈殿させた。沈殿させたRNAを回収し、これを50μlのMilliQに懸濁した。この懸濁されたRNA溶液にDNAase処理を施し、フェノール・クロロフォルム抽出後、エタノール沈殿した。得られた沈殿物(RNA)を50μlのMilliQに懸濁した。得られた懸濁液中のRNA濃度を分光光度計を用いて測定した。そして、このようにして調製されたRNA1ngを鋳型に用いてかつ10μMのリバースプライマーTg2(5’−AGTCAGTGATAGGGGCTATGCTCTT;配列番号2)及びスーパースクリプトIIRNA逆転写酵素(インビトロジェン社)を用いて逆転写を行った。この逆転写産物2μlを鋳型に用いてかつ10μMのフォワードプライマーTg1(5’−ATGCTGCGCGACCAGAAGCGCGACCT;(配列番号1)、10μMのリバースプライマーTg2(5’−AGTCAGTGATAGGGGCTATGCTCTT;配列番号2)及びTOYOBO KOD Taqポリメラーゼ(TOYOBO社)を用いてPCRを行った。得られたPCR産物を2%アガロースゲルにて電気泳動した後、当該ゲルをエチジウムブロマイド染色した。エチジウムブロマイド染色により検出されたバンドをTyhoon(アマシャム社)を用い定量した。その結果、2〜5倍程度のGm1遺伝子の発現の増加を確認した。
実施例4 (ヒトGm1タンパク質発現トランスジェニックマウスの個別飼育試験)
実施例2により得られたトランスジェニックマウスを個別飼育を行うことによりストレスを負荷した。ストレス負荷時の情動性を観察し、ストレスに対する抵抗性の行動解析を行った。
即ち、トランスジェニックマウスを1ケージに1匹で飼育する個別飼育及び1ケージで3匹飼育する群飼育の2グループに分けて飼育した。飼育期間中、給水瓶、ケージ及び給餌器の交換は1週間に2回行った。ケージ交換前後に鼻先に差し出した棒に対する反応、空気を吹きかけた時の反応、捕獲や取り扱いに対する抵抗性、尾を鉗子で挟んだ時の反応及び鳴き声を観察することにより情動性の評価を行った。同腹由来の野生型マウスでも同様に個別飼育、群飼育を行い、トランスジェニックマウスの情動性行動解析を行う時に同時に情動性の評価を行った。
マウスの情動性は、下記に示す評価基準によって点数化した(図1参照)。それぞれの点数の合計が、19から24までを高情動性、11から18までを通常情動性、0から10までを低情動性とした(図2参照)。
<情動性評価基準>
A.鼻先につきだした棒に対する反応
0:無反応
1:対象への関心
2:対象への防御的または逃亡的行動
3:噛みつくなどの攻撃的な行動
4:激しい攻撃的行動
B.空気を吹きかけた時の反応
0:無反応
1:わずかに身体が動くだけ
2:驚愕反応
3:著名な驚愕反応を示すが、飛び上がらない
4:著名な驚愕反応を示すし、飛び上がる
C.捕獲や取り扱いに対する抵抗性
0:無抵抗,著名な筋弛緩
1:捕獲や取り扱いが容易
2:捕獲や取り扱いは容易だが、軽度の筋緊張
3:筋緊張有り、捕獲や取り扱いが困難
4:捕獲が極めて困難で著しい筋緊張
D.尾を鉗子で挟んだ時の反応
0:無反応
1:対象への関心
2:対象への防御的または逃亡的行動
3:噛みつくなどの攻撃的な行動
4:激しい攻撃的行動
E.テスト中(A~D)の鳴き声
0:全く鳴かない
1:時々鳴く
2:激しく鳴く
図2に示された結果から明らかな通り、個別飼育によるストレスによって野生型マウスで低下する情動性が、トランスジェニックマウスでは通常の状態を保っていた。このことより、Gm1の脳内での過剰発現はストレス性精神疾患の症状改善に有効であることが判明した。
実施例5 (ヒトGm1タンパク質発現トランスジェニックマウスの恐怖条件付け試験)
実施例2により得られたトランスジェニックマウスを用い、抗不安効果の行動解析に広く用いられている恐怖条件付け試験を行うことにより、不安に対する抵抗性を行動解析する。
即ち、トランスジェニックマウス又は野生型マウスを電気ショックなしの条件でフェア−コンディション計測装置(ACTI METRICS社)の中に入れる。翌日、トランスジェニックマウス又は野生型マウスを再度フェア−コンディション計測装置に入れ、電気ショックなしの条件で4分間の無動時間を測定する。これを恐怖条件なしでの無動時間とする。トランスジェニックマウス又は野生型マウスをフェア−コンディション計測装置に入れ、恐怖条件付けとして4分間の電気ショックを与える。この時の電気強度は0.2mA、刺激時間は10秒毎に1秒とする。翌日、マウスを再度フェア−コンディション計測装置に入れ、電気ショックなしの条件で4分間の無動時間を測定する。
測定された無動時間のトランスジェニックマウス又は野生型マウスにおける差異に基づき、恐怖条件付けによる不安により野生型マウスで低下する「不安に対する抵抗性」が、トランスジェニックマウスでは通常の状態を保っているのであれば、Gm1の脳内での過剰発現はストレス性精神疾患の症状改善に有効であることが確認される。
実施例6 (ヒトGm1タンパク質発現トランスジェニックマウスの敗北経験試験)
実施例2により得られたトランスジェニックマウスを用い、敗北経験試験を行うことにより、不安又はうつ状態に対する抵抗性を行動解析する。
即ち、以下の操作を行うことによりトランスジェニックマウス又は野生型マウスに敗北経験をさせる。10週齢の居住マウスの雄雌1対を5週間以上同居飼育する。同居飼育中に仔マウスが産まれたマウスのペアーより雌マウス及び仔マウスを除く。そこへトランスジェニックマウス又は野生型マウスのどちらか1匹を入れ、居住マウスが噛み付く行為を観察する。20回噛み付ついた時点で、トランスジェニックマウス又は野生型マウスを居住マウスより離す。この時、居住マウスがトランスジェニックマウス又は野生型マウスに20回噛み付くまでの時間を測定する。この敗北経験操作を1日1回、連続で10日間行う。
測定された20回噛み付くまでの時間のトランスジェニックマウス又は野生型マウスにおける差異に基づき、敗北経験による不安又はうつ状態により野生型マウスで低下する「不安又はうつ状態に対する抵抗性」が、トランスジェニックマウスでは通常の状態を保っているのであれば、Gm1の脳内での過剰発現はストレス性精神疾患の症状改善に有効であることが確認される。
実施例7 (ヒトGm1タンパク質発現トランスジェニックマウスの強制水泳試験)
実施例2により得られたトランスジェニックマウスを用い、抗うつ効果の行動解析に広く用いられている強制水泳試験を行うことにより、うつ状態に対する抵抗性を行動解析する。
即ち、トランスジェニックマウス又は野生型マウスを実験室に移動し、最低1時間実験室の環境に馴れさせる。直径20cm、高さ27cmの円筒状の筒に23℃から25℃の水を深さ10cmまで張ったところへトランスジェニックマウス又は野生型マウスをゆっくりと入れる。水に入れてから6分間中のマウスの行動をビデオに録画し、無動時間を計測する。
測定された無動時間のトランスジェニックマウス又は野生型マウスにおける差異に基づき、強制水泳によるうつ状態により野生型マウスで低下する「うつ状態に対する抵抗性」が、トランスジェニックマウスでは通常の状態を保っているのであれば、Gm1の脳内での過剰発現はストレス性精神疾患の症状改善に有効であることが確認される。
本発明により、例えば、うつ病又は不安症等の「気分障害又は関連障害」による疾患症状を改善させる方法等を提供することが可能となる。また、当該「気分障害又は関連障害」の治療に有効な医薬の有効成分である物質を探索する方法、及び、当該方法において利用されるモデル哺乳動物等を提供することも可能となる。
図1は、個別飼育試験にける情動性の評価基準を示す図である。 図2は、Gm1タンパク質を脳内で過剰発現させたGm1トランスジェニックマウスにおける個別飼育試験の結果を示す図である。
配列番号1
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号2
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー

Claims (19)

  1. 下記のいずれかのタンパク質類を哺乳動物における脳内で過剰に存在させる工程を有することを特徴とする気分障害または関連障害による疾患症状を改善させる方法。
    <タンパク質類>
    (a)Gm1タンパク質
    (b)Gm1タンパク質において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するタンパク質
    (c)Gm1タンパク質の一部を有し、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するポリペプチド
    (d)Gm1タンパク質と85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するポリペプチド
  2. 請求項1記載の方法が施されてなることを特徴とする哺乳動物又はその一部。
  3. トランスジェニック哺乳動物の個体又はその子孫動物或いはそれらの一部であって、下記のいずれかの遺伝子類の発現量が同種の野生型哺乳動物での同遺伝子の発現量よりも実質的に増加されてなることを特徴とするトランスジェニック哺乳動物又はその一部
    <遺伝子類>
    (a)Gm1遺伝子
    (b)Gm1遺伝子において、1若しくは複数の塩基が欠失、付加若しくは置換された塩基配列なり、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有する遺伝子
    (c)Gm1遺伝子の一部を有し、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有するポリヌクレオチド
    (d)Gm1遺伝子の塩基配列と85%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有するポリヌクレオチド
  4. トランスジェニック哺乳動物がマウスであることを特徴とする請求項3記載のトランスジェニック動物又はその一部
  5. トランスジェニック哺乳動物の個体又はその子孫動物或いはそれらの一部が、トランスジェニック哺乳動物由来の組織又は細胞であることを特徴とする請求項3又は4記載のトランスジェニック哺乳動物又はその一部
  6. 気分障害または関連障害の治療に有用な医薬を製造するための、下記のいずれかのタンパク質類の使用。
    <タンパク質類>
    (a)Gm1タンパク質
    (b)Gm1タンパク質において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するタンパク質
    (c)Gm1タンパク質の一部を有し、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するポリペプチド
    (d)Gm1タンパク質と85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するポリペプチド
  7. 気分障害または関連障害の治療において医薬として使用するための、下記のいずれかのタンパク質類。
    <タンパク質類>
    (a)Gm1タンパク質
    (b)Gm1タンパク質において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するタンパク質
    (c)Gm1タンパク質の一部を有し、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するポリペプチド
    (d)Gm1タンパク質と85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するポリペプチド
  8. 下記のいずれかのタンパク質類及び医薬的に許容しうる担体を含有することを特徴とする、気分障害または関連障害の治療用医薬組成物。
    <タンパク質類>
    (a)Gm1タンパク質
    (b)Gm1タンパク質において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するタンパク質
    (c)Gm1タンパク質の一部を有し、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するポリペプチド
    (d)Gm1タンパク質と85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するポリペプチド
  9. 気分障害または関連障害の治療に有用な医薬を製造するための、下記のいずれかのGm1遺伝子類の使用。
    <遺伝子類>
    (a)Gm1遺伝子
    (b)Gm1遺伝子において、1若しくは複数の塩基が欠失、付加若しくは置換された塩基配列なり、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有する遺伝子
    (c)Gm1遺伝子の一部を有し、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有するポリヌクレオチド
    (d)Gm1遺伝子の塩基配列と85%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有するポリヌクレオチド
    (e)上記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドを含有するベクター
  10. 気分障害または関連障害の治療において医薬として使用するための、下記のいずれかのGm1遺伝子類。
    <遺伝子類>
    (a)Gm1遺伝子
    (b)Gm1遺伝子において、1若しくは複数の塩基が欠失、付加若しくは置換された塩基配列なり、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有する遺伝子
    (c)Gm1遺伝子の一部を有し、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有するポリヌクレオチド
    (d)Gm1遺伝子の塩基配列と85%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有するポリヌクレオチド
    (e)上記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドを含有するベクター
  11. 下記のいずれかのGm1遺伝子類及び医薬的に許容しうる担体を含有することを特徴とする、気分障害または関連障害の治療用医薬組成物。
    <遺伝子類>
    (a)Gm1遺伝子
    (b)Gm1遺伝子において、1若しくは複数の塩基が欠失、付加若しくは置換された塩基配列なり、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有する遺伝子
    (c)Gm1遺伝子の一部を有し、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有するポリヌクレオチド
    (d)Gm1遺伝子の塩基配列と85%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有するポリヌクレオチド
    (e)上記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドを含有するベクター
  12. 気分障害または関連障害の治療に有用な医薬の有効成分である物質を探索する方法であって、
    (1)被験物質を請求項2〜5のいずれかの請求項記載の哺乳動物又はその一部に投与する又は接触させる第1工程、
    (2)前記被験物質が投与又は接触された哺乳動物又はその一部における、気分障害または関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値を測定する第2工程、
    (3)測定された効果又は指標値を対照と比較する第3工程、
    (4)比較して得られる差異に基づき、気分障害または関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値を変動させる被験物質を選択する第4工程
    を有することを特徴とする方法。
  13. 気分障害又は関連障害の治療に有用な医薬の有効成分である物質を探索する方法であって、
    (1)被験物質を哺乳動物又はその一部に投与する又は接触させる第1工程、
    (2)前記被験物質が投与又は接触された哺乳動物又はその一部における、気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値を測定する第2工程、
    (3)測定された効果又は指標値を対照と比較する第3工程(ここで、当該対照の少なくとも一つは、前項2〜5のいずれかの前項記載の哺乳動物又はその一部における、気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値である。)及び
    (4)比較して得られる差異に基づき、気分障害又は関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値を変動させる被験物質を選択する第4工程を有することを特徴とする方法。
  14. 対照が、前記哺乳動物と同種の被験物質が投与又は接触されていない哺乳動物又はその一部における、気分障害または関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値であることを特徴とする請求項12又は13記載の方法。
  15. 対照が、前記哺乳動物と同種の被験物質が投与又は接触された哺乳動物又はその一部における、気分障害または関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値であることを特徴とする請求項12又は13記載の方法。
  16. 対照が、被験物質が投与又は接触されていない請求項2〜5のいずれかの前項記載の哺乳動物又はその一部における、気分障害または関連障害による疾患症状を改善させる効果又はそれと相関する指標値であることを特徴とする請求項12記載の方法。
  17. 請求項12〜16記載のいずれかの請求項記載の探索方法により選択される物質を有効成分として含有することを特徴とする気分障害又は関連障害の治療に有用な医薬。
  18. 気分障害または関連障害に対する哺乳動物の個体の羅病性を決定するための方法であって、
    (1)前記個体からタンパク質サンプルを取得する工程、及び、
    (2)前記タンパク質サンプルにおける下記のいずれかのタンパク質類の存在量を測定する工程
    を有することを特徴とする方法。
    <タンパク質類>
    (a)Gm1タンパク質
    (b)Gm1タンパク質において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、付加若しくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するタンパク質
    (c)Gm1タンパク質の一部を有し、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するポリペプチド
    (d)Gm1タンパク質と85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、Gm1タンパク質としての機能を有するポリペプチド
  19. 気分障害または関連障害に対する哺乳動物の個体の羅病性を決定するための方法であって、
    (1)前記個体から核酸サンプルを取得する工程、及び
    (2)前記核酸サンプルにおける下記のいずれかのGm1遺伝子類の転写量を測定する工程、又は、前記核酸サンプルにおけるGm1遺伝子類の多型のタイプを検定する工程
    を有することを特徴とする方法。
    <遺伝子類>
    (a)Gm1遺伝子
    (b)Gm1遺伝子において、1若しくは複数の塩基が欠失、付加若しくは置換された塩基配列なり、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有する遺伝子
    (c)Gm1遺伝子の一部を有し、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有するポリヌクレオチド
    (d)Gm1遺伝子の塩基配列と85%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ、その翻訳産物がGm1タンパク質としての機能を有するポリヌクレオチド
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