明 細 書
新規糖尿病関連因子
技術分野
[0001] 本発明は、糖尿病の治療または予防薬のスクリーニング方法、糖尿病に対する医 薬組成物、糖尿病の診断薬および診断方法ならびに糖尿病の診断キット等に関する 背景技術
[0002] 糖尿病は、多飲、多尿、体重減少などの症状、慢性の高血糖を主な特徴とし、一般 的に、網膜症、腎症、末梢神経障害などの合併症を伴う疾患である。糖尿病は、病 因により、一次性糖尿病 (インスリン依存性糖尿病(I型糖尿病)、インスリン非依存性 糖尿病 (π型糖尿病) )、二次性糖尿病 (脾臓性糖尿病、脾外性 Z内分泌性糖尿病、 薬剤誘発性糖尿病)などに分類されている。さらに、糖尿病は、心筋梗塞、脳梗塞な どの動脈硬化性疾患の危険因子となることが知られている。
[0003] 従来、糖尿病の治療方法として、例えば、食事療法、運動療法などによる生活改善 をはじめ、インスリン注射、インスリン分泌調節因子またはインスリン感受性調節因子 などの糖代謝に関連する因子の制御、 OC ダルコシダーゼなどの糖吸収に関連する 因子の機能の制御などを標的とする治療方法が行われていた。
[0004] 一方、マウス KLF7 (KruppeHike transcription factor 7)は、神経発生に重要な役割 を果たすことが報告されている (例えば、非特許文献 1参照)。また、前記 KLF7は、末 梢神経系における TrkA (神経成長因子 (NGF)に対するレセプター)遺伝子発現を調 節し得ることも報告されている。(例えば、非特許文献 2参照)。
非特許文献 l : Laub, F.ら、 Dev, Biol. 2001 May 15;233(2):305- 18
非特許文献 2 : Lei L.ら、 Development. 2001 Apr:128(7)1147-58
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0005] しかしながら、従来の糖尿病の治療方法を適用しても、所望の効果が得られない症 例もある。
[0006] ヒト KLF7は、そのアミノ酸配列力 転写因子であると推測されるが、その詳細な機能 については明らかになっていない。さらに、 KLF7が糖尿病の発症にどのように関連し て ヽるかにつ ヽては未だ不明である。
[0007] 従って、本発明は、 KLF7の発現またはその活性を評価することによる、糖尿病の治 療または予防薬の効率的なスクリーニング方法、前記スクリーニング方法を簡便かつ 迅速に行い得るスクリーニング用キットを提供することを目的とする。
[0008] また、本発明は、前記スクリーニング方法により得られる、糖尿病の治療または予防 薬として好適に使用される物質、糖尿病の治療または予防に好適な前記物質を有効 成分とする医薬組成物を提供することを目的とする。
[0009] さらに、本発明は、糖尿病患者カゝら得られた被検試料から、糖尿病の発症に寄与 する核酸を、容易に検出する検出方法を提供することを目的とする。
[0010] さらにまた、本発明は、被検個体由来の被検試料を用いた、糖尿病に罹患する可 能性が高 ヽ被検個体の選別方法を提供することを目的とする。
[0011] さらにまた、本発明は、糖尿病の診断用キットを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0012] すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕被検物質の存在下に、 KLF7の発現または活性を評価することを特徴とする、糖 尿病の治療または予防薬のスクリーニング方法、
〔2〕(1) KLF7、
(2) KLF7をコードする核酸、
(3) KLF7をコードする核酸が導入された細胞、および
(4) KLF7に対する抗体またはその断片
力もなる群より選択される少なくとも 1種を含有してなる、前記〔1〕記載のスクリーニン グ方法に用いるためのキット、
〔3〕前記〔1〕記載の方法により得られる物質を有効成分として含有してなる糖尿病を 治療するための医薬組成物、
〔4〕KLF7遺伝子の第 2イントロンの塩基配列における変異を検出することを特徴とす る、糖尿病の発症に寄与する核酸の検出方法、
〔5〕被検個体由来の被検試料中の KLF7遺伝子の第 2イントロンに存在する塩基配 列における変異を検出することを特徴とする、糖尿病に罹患する可能性が高い被検 個体の選別方法、
〔6〕 KLF7遺伝子の第 2イントロンに存在する 35092番目の塩基における変異を検出 するための試薬を含む、糖尿病の診断用キット、
〔7〕被検個体由来の被検試料中の KLF7の発現量を測定することを特徴とする、糖尿 病に罹患する可能性が高!、被検個体の選別方法、並びに
〔8〕 KLF7の発現量を測定するための試薬を含む、糖尿病の診断用キット に関する。
発明の効果
[0013] 本発明の糖尿病の治療または予防薬のスクリーニング方法によれば、糖尿病患者 において、糖尿病を治療し得、かつ KLF7に基づく糖尿病に対して作用し得る物質を 、簡便に、効率よくスクリーニングすることができるという優れた効果を奏する。また、 本発明の糖尿病に対する医薬組成物によれば、糖尿病患者において、糖尿病を治 療または該糖尿病の発症を予防することができ、 KLF7に基づく糖尿病に対して症状 を軽減または発症を予防することができるという優れた効果を奏する。さらに、本発明 の糖尿病の発症に寄与する核酸の検出方法によれば、糖尿病患者から得られた被 検試料カも該核酸を容易に検出することができるという効果を奏する。さらにまた、本 発明の糖尿病に罹患する可能性が高い被検個体の選別方法によれば、被験個体が 、糖尿病を発症しているか、あるいは、将来発症する可能性が高いと判断することが できるという効果が奏される。さらにまた、本発明の糖尿病の診断用キットは、糖尿病 の診断にお 1、て優れた効果を奏する。
図面の簡単な説明
[0014] [図 1]図 1は、 KLF7遺伝子周辺における連鎖不平衡マッピングを示す。
[図 2]図 2は、 HPAにおいて KLF7遺伝子を過剰発現させた際の、レプチン、アディポ ネクチンおよび IL-6発現への影響を示す図である。
[図 3]図 3は、 HIT-T15において KLF7遺伝子を過剰発現させた際の、インスリン遺伝 子発現への影響を示す図である。
[図 4]図 4は、 HIT-T15において KLF7遺伝子を過剰発現させた際の、インスリン分泌 量への影響を示す図である。
[図 5]図 5は、 L6において KLF7遺伝子を過剰発現させた際の、へキソキナーゼ遺伝 子発現への影響を示す図である。
[図 6A]図 6Aは、分ィ匕誘導 13日目の HPAのオイルレッド 0アツセィ後の顕微鏡写真( X 100)である。
[図 6B]図 6Bは、分化誘導 13日目の HPAのオイルレッド 0アツセィを数値化した図で ある。
[図 7A]図 7Aは、 3T3-L1のオイルレッド 0アツセィ後の顕微鏡写真( X 100)である。
[図 7B]図 7Bは、 3T3-L1のオイルレッド 0アツセィを数値化した図である。
発明を実施するための最良の形態
[0015] 本発明のスクリーニング方法は、被検物質の存在下に、 KLF7遺伝子の発現または
KLF7の活性を評価することを 1つの大きな特徴とする。
[0016] 従来の糖尿病関連遺伝子は、インスリン発現、インスリン分泌またはインスリン応答 性などに関与する個々の因子をコードする遺伝子であった力 KLF7はその全てに関 与する転写因子であることより、全ての糖尿病患者に使用可能な薬物をスクリーニン グできるという効果が奏される。
[0017] すなわち、糖尿病の発症との関連が認められる KLF7の発現またはその活性に対す る被検物質による影響を調べることにより、糖尿病に対する治療または予防薬として 有効な物質のスクリーニングを効率的に行うものである。 KLF7の発現またはその活性 に対する被検物質による影響は、被検物質の非存在下における該発現を対照として 調べるのが好適である。
[0018] また、本発明のスクリーニング方法は、糖尿病に対する治療または予防薬の候補物 質の薬理評価に用いることができる。
[0019] 本発明に用いられる KLF7は、神経発生または末梢神経系における TrkA遺伝子発 現の調節に関与していることが知られている因子であり、配列番号: 2に示されるアミ ノ酸配列を有するポリペプチドである。
[0020] 本発明は、 II型糖尿病患者において、 KLF7遺伝子の第 2イントロンにおいて、驚く
べきことに、 35092番目が Aとなる遺伝子型が高い頻度で見られ、 KLF7の過剰状態が 糖尿病の発症に深く関わるという本発明者らの知見に基づく。すなわち、本発明は、 神経系に作用することが知られて 、た KLF7が、予想外にも糖尿病に関連すると!/、う 本発明者らの新たな知見に基づく。
[0021] なお、 KLFファミリーに属する KLF2、 KLF5及び 15は、糖尿病との関連が指摘されて いる O.Biol.Chem(2003)278,2581- 4、 Cell Metab.(2005)l,27- 39、 J.Biol.Chem(2002)2 77,34322-8)。し力し、 KLF2、 5又は 15と KLF7とのアミノ酸レベルでの相同性は、 20% 程度という低い値であるため、前記指摘は KLF7と糖尿病との関連を示唆するもので はない。
[0022] 本発明に用いられる KLF7遺伝子は、例えば、以下のようにして得ることができる。
[0023] Human Adipocyte Marathon-Ready cDNA (CLONTECH社製)を铸型としヒト KLF7 特異的プライマーを用いて PCRをおこなうことによりヒト KLF7 cDNAのクローニングを 行う。ヒト KLF7特異的プライマーはセンス鎖 5'- TGAGCCAGACAGACTGACAA- 3' ( 配列番号: 3)、アンチセンス鎖 5'- CCTTTAGACACTAGCCGATG- 3' (配列番号: 4) を用い、 PCRは KOD- PLUS (TOYOBO社製)を使用し、 95°Cで 2分を 1サイクル、 94°C で 15秒、 55°Cで 30秒、 68°Cで 2分を 30サイクル行う。その後、 Ex Taq (タカラバイオ社 製)を少量添加し、 72°Cで 2分間反応させる。得られた PCR産物を 0.8%ァガロースゲ ルで電気泳動し目的の DNA断片を MinElute Gel Extraction Kit (QIAGEN社製)を用 いて精製した後、 TA Cloning Kit (Invitrogen社製)を用いて pCR2.1 vectorへ組み込 む。得られたプラスミド PCR2.1-KLF7のヒト KLF7領域の塩基配列を M13- Forwardプラ イマ一: 5'- GTAAAACGACGGCCAGTG- 3' (配列番号: 5)および M13- Reverseプラ イマ一: 5'- CAGGAAACAGCTATGACC- 3' (配列番号: 6)を用いたシークェンスを おこなうことにより確認する。シークェンス反応は BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequ encing Kit (Applied Biosystems社製)を用い、電気泳動および解析は Applied Biosyst ems 3700 DNA Analyzerを用いて行う。
[0024] 本発明のスクリーニング方法に用いられる「被検物質」としては、例えば、生物の細 胞抽出物、該生物の無細胞抽出物、該生物の細胞培養上清などの試料中に含まれ た物質、生物学的に産生された物質、化学的に合成された化合物などが挙げられる
[0025] 被検物質としては、より具体的には、化合物、ペプチド、ペプチドミメテイツタス、各 種タンパク質、核酸、核酸アナログ、抗体、抗体断片などが挙げられる。なお、前記 化合物には、コンビナトリアルケミストリ一により得られたコンビナトリアルライブラリー の化合物も含まれる。また、前記抗体および抗体断片には、モノクローナル抗体、ポ リクローナル抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、 Fabフラグメントなどが含まれる 。前記核酸および核酸アナログには、アンチセンス核酸、リボザィム、 PNAなどが含ま れる。
[0026] ここで、前記生物としては、例えば、植物、動物、微生物などが挙げられる。
[0027] 前記「KLF7の活性」とは、「KLF7を発現させることにより引き起こされる事象」を意味 する。具体的には、種々の遺伝子発現の調節、インスリンの分泌抑制、脂肪細胞へ の分ィ匕抑制などが挙げられる。本発明のスクリーニング方法においては、これらの事 象を KLF7の活性の指標として評価することにより、簡便に被検物質の糖尿病に対す る治療及び予防効果を評価することができる。
[0028] 「種々の遺伝子発現の調節」とは KLF7の転写調節活性を意味する。 KLF7は、実施 例にも示すとおり、インスリン遺伝子、へキソキナーゼ遺伝子、レブチン遺伝子、アデ ィポネクチン遺伝子、 IL-6遺伝子など糖尿病関連遺伝子の発現調節を直接的もしく は間接的に行っている。また、この他にも p27kipl遺伝子や、 p21waf/cip遺伝子など 神経の形態形成に関連した遺伝子の発現の調節に関与していることも知られている (Mol Cell Biol. 2005年; 25(13):5699-711)。そこで、これらの遺伝子の発現量を測定 することにより、 KLF7の有する遺伝子発現の調節活性を測定することができる。この とき、測定対象となる遺伝子は、 KLF7により発現が影響を受けるように動作可能に連 結されている必要がある。例えば、発現可能な形でプロモーターと接続されるように ベクターに挿入し、得られたベクターを細胞に導入すると良い。
[0029] 本発明のスクリーニング方法は、具体的には、 KLF7遺伝子を発現させることにより 引き起こされる事象を、被検物質の存在下に評価する。
[0030] 本発明のスクリーニング方法は、より具体的には、(I)被検物質の存在下、 KLF7を コードする核酸を導入した細胞において KLF7の発現量または活性を測定する工程、
および
(II)被検物質の非存在下で測定した KLF7の発現量または活性と比較し、それにより 、発現の抑制または活性の阻害をもたらす被検物質を糖尿病の治療または予防薬 の候補物質として選択する工程、
を含む。
力かるスクリーニング方法の例としては、例えば、
(i) KLF7をコードする核酸を細胞に導入する工程、
(ii)被検物質の存在下、工程 (i)で得られた細胞にぉ ヽて KLF7の発現量または活性 を測定する工程、および
(iii)被検物質の非存在下で測定した KLF7の発現量または活性と比較し、それにより 、発現の抑制または活性の阻害をもたらす被検物質を糖尿病の治療または予防薬 の候補物質として選択する工程、
を含む方法が挙げられる。
[0031] KLF7をコードする核酸は、 KLF7をコードする遺伝子を含む核酸であってもよい。 K LF7をコードする遺伝子を含む核酸としては、配列番号: 2に示されるアミノ酸配列を 有するポリペプチドをコードする核酸、例えば、配列番号: 1に示される塩基配列を有 する核酸などが挙げられる。
[0032] なお、本発明においては、コードされるポリペプチドが、配列番号: 2に示されるアミ ノ酸配列を有するポリペプチド (以下、野生型 KLF7ともいう)と同等の生物学的活性 を呈するものであれば、前記 KLF7をコードする核酸は、前記配列番号: 2に示される アミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸のノリアントであってもよい。
[0033] 野生型 KLF7と同等の生物学的活性とは、それらの性質が性質的に(例、生理学的 に、または薬理学的に)同質であることを示す。従って、上記活性が同等 (例えば、約 0.01〜100倍、好ましくは約 0.1〜10倍、より好ましくは 0.5〜2倍)であることが好ましい 力 これらの活性の程度、タンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい
[0034] 前記野生型 KLF7をコードする核酸のバリアントとしては、例えば、
1)配列番号: 2に示されるアミノ酸配列において、少なくとも 1残基、具体的には、 1個
もしくは複数個、好ましくは、 1個もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、付加また は挿入を有するアミノ酸配列をコードする核酸、
2)野生型 KLF7をコードする核酸のアンチセンス鎖とストリンジヱントな条件下にハイ ブリダィズし得る核酸、
3)配列番号: 2に示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列に対し、 Lipman-pearso n法(Science, 227, pl435(1985))により、最適な状態にアラインメントされ、算出された 値であり、少なくとも 50%、好ましくは 80%以上、より好ましくは 90%以上である塩基配 列からなる核酸
などが挙げられる。
[0035] 前記 1)の核酸は、天然由来のバリアントであってもよぐ人為的な変異を有する変 異体であってもよい。人為的な変異を有する変異体は、例えば、モレキュラークロー ユング ·ァ ·ラボラトリーマ-ユアル第 3版などの記載に準じ、部位特異的変異導入法 などにより作製され得る。
[0036] 本明細書において、前記ストリンジェントな条件としては、例えば、 6 X SSC (1 X SSC の組成: 0.15M NaCl、 0.015Mクェン酸ナトリウム、 pH7.0)と 0.5%SDSと 5 Xデンハルト と 100 g/ml変性サケ精子 DNAと 50%ホルムアミドとを含む溶液中、 50°C、よりストリン ジェントには、 60°Cで 12時間インキュベーションし、低イオン強度、例えば、 0.5 X SSC 、よりストリンジェントには、 0.1 X SSCなどの条件および Zまたはより高温、 50°C以上、 よりストリンジェントには、 55°C、さらにストリンジェントには、 60°C、より一層ストリンジェ ントには、 65°Cなどの条件下での洗浄を行う条件が挙げられる。
[0037] なお、前記工程 (I)にお 、て使用される、前記 KLF7をコードする核酸を導入した細 胞を調製する際、該核酸を適切なベクターに連結し、得られた組換えベクターを慣用 の遺伝子導入法により、細胞に導入してもよい。また、その際、前記核酸を、いわゆる naked-DNAとして用いてもよぐリボソーム、金粒子、ウィルス抽出物などの慣用の担 体に担持させ、得られた産物(以下、核酸導入用担体ともいう)を用いてもよい。
[0038] 前記ベクターとしては、安定発現細胞株を榭立する観点から、好ましくは、抗生物 質耐性遺伝子を含有しているベクターが望ましぐ例えば、 pcDNA3.1、 pCDM8、 pRE P、 pUC19、 pTrxFus (商品名、 Invitrogen社製)、 pET— 3、 pET— 11、 pBluescriptll SK (+
)、 pBluescriptll SK (-)、 pCMV— Script (STRATAGENE社製)、 pCFneo (プロメガ社製 )、 pAxCAwr、 pUC118、 pSTV28 (タカラバィォ社製)などが挙げられる。
[0039] 前記遺伝子導入方法としては、例えば、エレクト口ポレーシヨン法(Cytotechnology, 3(2),133-140(1990))、リン酸カルシウム法(特開平 2-227075号公報)、リポフエクショ ン法(Proceedings of the National Academy of Sciences USA,84,7413(1987) ; Vilology ,52,456(1973))、 DEAEデキストラン法、パーティクルガン法、ウィルスを利用した方法 などが挙げられる。
[0040] ウィルスを使用した方法を使用する場合、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウ ィルスなどを用いることが好まし!/、。
[0041] 前記細胞としては、哺乳動物細胞が好ましぐ例えば、 HIT-T15 (ハムスター β細胞 、大日本製薬社製)、 ΗΡΑ (ヒト前駆脂肪細胞、 Zen- Βίο,Ιη 社製)、 L6 (ラット骨格筋 細胞、 ATCC : CRL- 1458)、 3T3- L1 (マウス線維芽細胞、 ATCC : CL- 173)、ヒト由来 株細胞の HEK293 (ヒト胎児腎細胞、 ATCC : CRL-1573)、 HeLa (子宮頸部癌細胞、 A TCC : CCL-2) HBT5637 (白血病細胞、特開昭 63_299)、 BALL-1 (白血病細胞)およ び HCT-15 (大腸癌細胞)、ヒト腎糸球体上皮細胞、マウス由来株細胞の Sp2/0-Agl4 (マウス骨髄種細胞、 ATCC: CRL-1581)および NSO (マウス骨髄種細胞)、マウス腎 糸球体上皮細胞、サル由来株細胞の COS-1 (アフリカミドリザル腎細胞 (SV40形質転 換細胞)、 ATCC: CRL-1650)および COS-7 (アフリカミドリザル腎細胞(SV40形質転 換細胞)、 ATCC : CRL- 1651)、ハムスター由来株細胞の CHO- K1 (チャイニーズハム スター卵巣細胞、 ATCC : CCL- 61)および BHK- 21 (C- 13) (シシリアンハムスター仔 腎細胞、 ATCC : CCL-10)、ラット由来株細胞の PC12 (副腎褐色細胞腫、 ATCC : CR L-1721)および YB2/0 (ラット骨髄種細胞、 ATCC : CRL-1662)、ラット腎糸球体上皮 細胞などが挙げられる。なかでも、治療薬スクリーニングのする観点から、好ましくは、 ヒト由来細胞が望ましい。
[0042] 工程 (I)にお!/、て、被検物質の存在下に、 KLF7を発現する細胞における KLF7の 発現量または活性を測定する。
[0043] 工程 (I)にお 、て、 KLF7の発現量または活性は、例えば、
ー被検物質を含有した培地で細胞を培養し、得られた細胞から total RNAを抽出し、
得られた total RNAを铸型とし、 KLF7、インスリン、へキソキナーゼ、レプチン、アディ ポネクチンおよび IL_6 (本明細書において、評価対象という場合がある)に応じたブラ イマ一(対)を用いて RT- PCRを行う方法;
ー被検物質を含有した培地で細胞を培養し、得られた細胞から total RNAを抽出し、 得られた total RNAを铸型として cDNAを合成し、評価対象に応じたプライマーおよび プローブを用いてリアルタイム定量 PCRを行う方法;
評価対照のプロモーター領域にレポーター遺伝子を連結したものを細胞に導入し 、被検物質を含有した培地で培養して得られた細胞を用いてレポーターアツセィを行 う方法;
ー被検物質を含有した培地で細胞を培養し、得られた細胞から total RNAを抽出し、 評価対象に応じたプローブを用いて、ノーザンプロット解析を行う方法;
被検物質を含有した培地で細胞を培養し、得られた細胞から無細胞抽出液を調 製し、得られた無細胞抽出液と評価対象に対する抗体とを用いて、ィムノアツセィを 行う方法;
ー被検物質を含有した培地で細胞を培養し、得られた培養上清と評価対象に対する 抗体とを用いて、ィムノアツセィを行う方法;
ー被検物質を含有した培地で細胞を培養し、得られた細胞または細胞上清における 評価対象の量を定量することのできるアツセィキットを用いる方法;
ー被検物質を含有した培地で細胞を培養し、得られた細胞における脂肪細胞への 分ィ匕を評価することのできるアツセィに供する方法;
などにより、測定され得る。なかでも、スクリーニングを迅速かつ多量に行う観点から、 迅速かつ多量に処理可能な方法が望ましぐ好ましくは、ィムノアッセィおよびレポ一 ターアツセィが望ましい。
[0044] 前記培地としては、哺乳動物由来細胞の培養に適した培地であればよぐ例えば、 MEM培地(Science, 130, 432 (1959) )、 DMEM培地(Virology, 8, 396 (1959) )、 RPMI 1640培地(The Journal of the American Medical Association, 199, 519 (1967) )など にゥシ胎仔血清 (FCS)を適量添加したものなどが挙げられる。
[0045] 培養は、例えば、振盪培養または深部通気攪拌培養などの好気的条件で行うこと
ができる。培養温度、培養時間および培養液の pHは、各種宿主に適した範囲に設 定される。例えば、培養は、通常、 15〜40°C、 5時間〜 7日間、 pH3.0〜9.0、 5% CO
2 存在下などの条件で行われ得る。 pHの調整は、無機酸または有機酸、アルカリ溶液 、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行い得る。また、所望により抗生物 質を培地に添加してもよい。
[0046] 本発明にお 、て用いられるプライマーは、例えば、 Tm値など、公知配列、核酸の二 次構造の形成などを考慮し、プライマーのデザインを支援する慣用のソフトウェアな どにより作製され得る。プライマーの鎖長は、特に限定はないが、例えば、 15〜40ヌク レオチド長であり、好ましくは、 17〜30ヌクレオチド長であることが望ましい。
[0047] 用いられ得るプライマー対としては、例えば、 KLF7遺伝子について、配列番号: 30 に示される塩基配列を有するプライマーと配列番号 : 31に示される塩基配列を有す るプライマーとからなるプライマー対;インスリン遺伝子について、配列番号: 7に示さ れる塩基配列を有するプライマーと配列番号: 8に示される塩基配列を有するプライ マーとからなるプライマー対;へキソキナーゼ遺伝子につ 、て、配列番号: 9に示され る塩基配列を有するプライマーと配列番号: 10に示される塩基配列を有するプライマ 一とからなるプライマー対;アディポネクチン遺伝子について、配列番号: 11に示され る塩基配列を有するプライマーと配列番号: 12に示される塩基配列を有するプライマ 一とからなるプライマー対; IL-6遺伝子について、配列番号: 13に示される塩基配列 を有するプライマーと配列番号: 14に示される塩基配列を有するプライマーとからな るプライマー対;レブチン遺伝子について、配列番号: 15に示される塩基配列を有す るプライマーと配列番号:16に示される塩基配列を有するプライマーとからなるプライ マー対などが挙げられる。
[0048] 本発明において用いられるプローブは、前記プライマーと同様に、例えば、 Tm値な ど、公知配列、核酸の二次構造の形成などを考慮し、慣用のソフトウェアなどにより作 製され得る。前記プローブの鎖長は、特に限定はないが、非特異的なノ、イブリダィゼ ーシヨンを防止する観点から、連続した 15ヌクレオチド長以上であり、好ましくは、 18ヌ クレオチド長以上であることが望ましい。前記プローブとしては、検出対象のポリぺプ チドをコードする核酸の塩基配列のうち、データベースの公知配列に存在しな 、塩
基配列からなる核酸またはそのアンチセンス鎖、該塩基配列中の連続した 15ヌクレオ チド長以上の塩基配列を有する核酸またはそのアンチセンス鎖などが挙げられる。
[0049] 本発明において用いられるレポーター遺伝子としては、 j8 -ガラクトシダーゼ、クロラ ムフエ-コールァセチルトランスフェラーゼ、ルシフェラーゼなどが挙げられる。レポ一 ターアツセィの具体例を以下に説明する。インスリン遺伝子のプロモーター領域の下 流にルシフェラーゼ遺伝子を連結させたベクターを構築し、これを HIT-T15細胞に導 入する。この細胞に KLF7アデノウイルスを感染させることにより KLF7を過剰発現させ ると共に被検物質を培地中に添加する。 KLF7過剰発現により抑制されるルシフ ラ ーゼ活性力 未感染の HIT-T15細胞で認められるルシフェラーゼ活性にまで回復す る被検物質を選択する。
[0050] 本発明に用いられる抗体は、例えば、 1992年、 John Weily & Sons, Inc発行、 John E . Coligan編、 Current Protocols in Immunologyに記載の方法により、検出対象のポリ ペプチドを用いて、ゥサギやマウスなどを免疫することにより、容易に作製され得る。 本発明に用いられる抗体は、検出対象のポリペプチドに特異的に結合する能力を有 するものであれば、ポリクローナル抗体であってもよぐモノクローナル抗体であっても よぐモノクローナル抗体を精製後、ぺプチダーゼなどにより処理することにより得ら れた抗体の断片であってもよい。さらに、本発明に用いられる抗体は、前記抗体の誘 導体、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、 Fabフラグメント、単鎖抗体などや公知技術に より修飾された抗体などであってもよい。なお、本発明に用いられる抗体の特異性は 、例えば、検出対象のポリペプチドおよび他のポリペプチドを用い、ォクタ口-一法に より、検出対象のポリペプチドとは反応して、沈降線を示し、他のポリペプチドとは反 応せず、沈降線を示さないことを指標として評価され得る。
[0051] 本発明に用いられるアツセィキットとしては、評価対象を測定することのできるキット であれば限定されず、例えば、インスリンを測定する場合であれば、インスリン測定キ ット (森永生化学研究所社製)、レビスインスリン測定用 ELISAキット (シバヤギ社製)な どが挙げられる。
[0052] 本発明に用いられる脂肪細胞への分ィ匕を評価することのできるアツセィとしては、 当該分野で公知のアツセィが挙げられる。例えば、以下の工程:
コラーゲンコート 6穴プレート(IWAKI社製)に細胞をまき、コンフルェントになるまで 培養する工程;
細胞の分化誘導をおこない、分化誘導後各日数経過した細胞を PBSで 3回洗浄後 lmlの 10%ホルマリン含有 PBSで固定する工程;
4°Cで lhr以上放置した後 10%ホルマリン含有 PBSを取り除き風乾する工程; lmlの オイルレッド 0液(0.5%オイルレッド 0イソプロパノール液:蒸留水 =6: 4 (w/w) )を各ゥ エルに添加し室温で 15分間放置後、蒸留水で 3回洗浄をおこなう工程;ならびに 写真撮影した後、各ゥエルに 100 1のイソプロパノールを添加することによりオイル レッド 0を溶出し吸光度測定 (OD540)をおこない脂肪蓄積量を測定する工程 を有するオイルレッド 0アツセィなどが挙げられる。
[0053] 続 、て、工程 (II)にお 、て、被検物質の非存在下で測定した発現量または活性と 工程 (I)において測定した発現量または活性とを比較して、それにより、発現の抑制 または活性の阻害をもたらす被検物質を糖尿病治療または予防薬の候補物質として 選択する。
[0054] なお、「被検物質の非存在下で測定した」とは、工程 (I)にお 、て、被検物質の非存 在下に、工程 (I)で使用される KLF7をコードする核酸を導入された細胞において KL F7を発現させて測定したことを 、、被検物質の存在下における KLF7の発現の抑 制または活性の阻害を把握するための基準となる。具体的には、かかる場合の細胞 、または該細胞の抽出液などを対照として用いる。
[0055] KLF7の発現または活性を測定した結果、対照と比較して KLF7の発現の抑制また は活性の阻害が認められた場合、該被検物質が糖尿病治療または予防薬の候補物 質であると判定され、該被検物質が候補物質として選択される。
[0056] 選択された候補物質は、細胞レベルにおいて KLF7の発現を抑制する、または細胞 レベルにおいて KLF7の活性を阻害するという特徴的な性質を有するものと考えられ 、 KLF7の発現を特異的に抑制することができる、または KLF7の活性を特異的に阻害 することができるという優れた効果を奏する。
[0057] また、本発明は、糖尿病の治療または予防薬のスクリーニングに用いられる KLF7、 該 KLF7をコードする核酸、該核酸が導入された細胞、 KLF7の抗体などを含むスクリ
一ユング用キットを提供する。
[0058] 本発明のスクリーニング用キットとしては、具体的には、
- KLF7を含有してなるキット、
- KLF7をコードする核酸を含有してなるキット、
- KLF7をコードする核酸が導入された細胞を含有してなるキット、
- KLF7に対する抗体またはその断片を含有してなるキット、
などが挙げられる。
[0059] また、各キットには、所望により、本発明のスクリーニング方法に好適に使用され得 る前記プローブおよび Zまたはプライマー対を含有させてもよい。さらには、所望によ り検出用試薬、緩衝液、標準物質、本発明のスクリーニング方法を実施するための説 明書などを含有させてもよい。
[0060] 本発明のスクリーニング用キットによれば、前記スクリーニング方法を簡便かつ迅速 に、高処理量で行うことができるという優れた効果が奏される。
[0061] KLF7が、予想外にも、糖尿病と関連するという本発明者らの知見により、 KLF7の発 現を抑制または活性を阻害する物質により、糖尿病の治療または予防に用いるため の医薬組成物が提供される。
[0062] 本発明の医薬組成物は、本発明のスクリーニング方法により得られた物質を有効成 分として含有することに 1つの特徴がある。したがって、本発明の医薬組成物は、糖 尿病に対し、 KLF7の発現の抑制または活性の阻害を介して治療または予防効果を 奏する。
[0063] 本発明の医薬組成物中における前記物質の含有量は、治療目的の疾患、患者の 年齢、体重などにより適宜調節することができ、治療上有効量であればよい。含有量 は当該物質の種類によっても異なるので一概にはいえないが、当該物質が低分子化 合物または高分子化合物の場合、例えば、 0.0001〜1000mg、好ましくは、 0.001〜10 0mg、当該物質がポリペプチドまたはその誘導体の場合、例えば、 0.0001〜1000mg、 好ましくは、 0.001〜100mg、当該物質が核酸またはその誘導体の場合、例えば、 0.0 001〜1000mg、好ましくは、 0.001〜100mgであることが望ましい。
[0064] 本発明の医薬組成物は、前記物質を安定に保持し得る種々の助剤をさらに含有し
てもよい。具体的には、有効成分の送達対象となる部位に到達するまでの間に、有 効成分が分解することを抑制する性質を呈する薬学的に許容され得る助剤、賦形剤 、結合剤、安定剤、緩衝剤、溶解補助剤、等張剤などが挙げられる。
[0065] 本発明の医薬組成物の投与形態は、有効成分の種類;投与対象となる個体、器官 、局所部位、組織;投与対象となる個体の年齢、体重などに応じて、適宜選択される 。前記投与形態としては、皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射、局所投与などが挙 げられる。
[0066] また、本発明の医薬組成物の投与量も、有効成分の種類;投与対象となる個体、器 官、局所部位、組織;投与対象となる個体の年齢、体重などに応じて、適宜選択され る。投与方法としては、特に限定されないが、有効成分が、低分子化合物または高分 子化合物である場合、前記有効成分の量として、 0.0001〜1000mg/kg体重、好ましく は 0.001〜100mg/kg体重、ポリペプチドまたはその誘導体である場合、例えば、 0.000 l〜1000mg/kg体重、好ましくは、 0.001〜100mg/kg体重、核酸またはその誘導体で ある場合、例えば、 0.0001〜1000mg/kg体重、好ましくは、 0.001〜100mg/kg体重の 1 回投与量となるように、 1日にっき、複数回、例えば、 1〜3回投与することなどが挙げ られる。
[0067] 本発明の医薬組成物の薬理評価は、例えば、血中インスリン値、血糖値、血中 IL-6
、血中 Cペプチド、尿 Cペプチドなどを指標として行われ得る。
[0068] さらに、本発明によれば、 II型糖尿病を発症した患者において、 KLF7遺伝子の第 2 イントロンにおいて、驚くべきことに、 35092番目が Aである遺伝子型が高い頻度で見 られるという本発明者らの知見に基づき、 II型糖尿病疾患感受性の診断方法が提供 される。カゝかる診断方法も本発明に含まれる。
[0069] 本発明の診断方法は、 KLF7遺伝子の第 2イントロンにおける多型を検出することを
1つの大きな特徴とする。
[0070] 本発明の診断方法においては、具体的には、配列番号: 17の塩基配列における 多型、すなわち、変異を検出する。
[0071] また、本発明の診断方法は、 KLF7遺伝子の第 2イントロンにおける多型、すなわち
、変異を指標とするため、被験個体における II型糖尿病疾患感受性を高い信頼度で
診断することができ、被験個体における II型糖尿病疾患感受性を容易に、迅速に診 断することができるという優れた効果を奏する。
[0072] 前記多型、すなわち、変異とは、少なくとも 1塩基の多型を意味し、例えば、少なくと も 1塩基の置換、欠失、付加または挿入を有することを意味する。
[0073] なお、本明細書において、「少なくとも 1塩基」とは、 1塩基〜数百塩基、好ましくは、 1個もしくは複数個、好ましくは、 1個もしくは数個を意味する。
[0074] 前記多型は、核酸多型解析手段などを行うことにより検出され得る。
[0075] 具体的には、前記多型は、例えば、(I) KLF7遺伝子の第 2イントロン、または (Π) KL F7遺伝子の第 2イントロンの塩基配列を有する核酸 (センス核酸)もしくはそのアンチ センス鎖にストリンジヱントな条件下にハイブリダィズし得る核酸力 なる群より選ばれ た核酸を用いて、ダイレクトシーケンス法、タックマン法、 Allele specific oligonucleotid e hybridization(ASO)法、 SSCP法、 DGGE法、 MALDI- TOF/MS法による解析、 clevag eを用いた解析などを行うこと、あるいは
(III)前記 (I)の核酸を増幅し得るプライマー対を用いて、 PCRなどを行うこと などにより検出され得る。
[0076] なお、前記 (Π)の核酸は、少なくとも数ヌクレオチド長、好ましくは、数ヌクレオチド 長〜数十ヌクレオチド長であることが望ましい。具体的には、前記 (Π)の核酸は、少 なくとも 12ヌクレオチド長、好ましくは、 18ヌクレオチド長以上である。
[0077] 前記 (III)のプライマー対は、例えば、 Tm値など、公知配列、核酸の二次構造の形 成などを考慮し、プライマーのデザインを支援する慣用のソフトウェアなどにより作製 され得る。プライマーの鎖長は、特に限定はないが、例えば、 15〜40ヌクレオチド長 であり、好ましくは、 17〜30ヌクレオチド長であることが望ましい。
[0078] 前記多型の検出に用い得る核酸およびプライマー対としては、例えば、
KLF7第 2イントロン +35092が Aであるポリヌクレオチド(配列番号: 18):
GTTGGGTGTAATCCCTTTTG-3';
KLF7第 2イントロン +35092の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライ
マー(配列番号: 19) :
5し TTTCCTTTCTGCCTGGACTG- 3';
KLF7遺伝子第 2イントロン +35092の部分を含むポリヌクレオチドを検出するための プライマー (配列番号 : 20) :
5し CTCCTCCCTAGCCCATCAAC- 3';
KLF7遺伝子第 2イントロン +35092の塩基が Cであるものを検出するためのプロ一 ブ (配列番号: 21) :
5し ATGACGTGGCAGACCCAGCCCTTTCCCAAGCCTG- 3';
KLF7遺伝子第 2イントロン +35092の塩基力 であるものを検出するためのプロ一 ブ (配列番号: 22) :
5し CGCGCCGAGGACAGCCCTTTCCCAAGCCTG- 3';
KLF7遺伝子第 2イントロン +35092の塩基が Cである力 Aであるかを検出するための インベーダープローブ(配列番号: 23):
5 ' -GTCTTTC AGGAATGAGTTAAN-3 ';
などが挙げられる。
[0079] 前記被験個体としては、哺乳動物、具体的には、ヒト、非ヒト哺乳動物、例えば、マ ウス、ラット、ゥサギ、サル、ィヌなどが挙げられる。
[0080] 本発明の診断方法に用いられる試料としては、前記被験個体から得られた生物学 的試料、例えば、だ液、皮膚、末梢血、摘出された臓器、各種組織、毛髪、体液など が挙げられる。
[0081] 本発明の診断方法においては、前記多型が検出された場合、被検個体が、糖尿病 を発症していること、あるいは将来の発症が予想されることの指標となる。
[0082] 即ち、本発明は、糖尿病に罹患する可能性が高い被検個体の選別方法にも関する
[0083] 一態様において、本発明の選別方法は、被検個体由来の被検試料中の KLF7遺伝 子の第 2イントロンに存在する塩基配列における変異を検出することを特徴とする。好 ましくは、前記変異は、 35092番目の塩基の置換である。即ち、 KLF7遺伝子の第 2 イントロンに存在する塩基配列における変異が認められた個体は、糖尿病を発症し
ているか、又は発症していない場合は、糖尿病に罹患する可能性が高いものとして 選別され得る。
[0084] また、別の態様において、本発明の選別方法は、被検個体由来の被検試料中の K LF7の発現量を測定することを特徴とする。ここで、被検試料中の KLF7の発現量が、 例えば、健常人由来の測定値と比較して大きい場合に、該試料が由来する個体は、 糖尿病を発症している力、又は発症していない場合は、糖尿病に罹患する可能性が 高!、ものとして選別され得る。
[0085] なお、本発明の選別方法における、被検個体、試料、変異の検出方法及び発現量 の測定方法は前述の通りである。
[0086] また、本発明により、被検核酸試料中における糖尿病の発症に寄与する核酸の検 出方法が提供される。
[0087] 本発明の検出方法によれば、前記多型を検出しているため、被検核酸試料から、 糖尿病の発症に寄与する核酸を、容易に迅速に検出することができると!、う優れた 効果を奏する。
[0088] 本発明の検出方法に用いられる被検核酸試料は、慣用の方法で、個体の細胞また は組織より調製され得る。
[0089] 本発明の検出方法は、例えば、輸血用血液、採血された血液の検査などに適用さ れ得る。
[0090] 本発明の検出方法は、前記 (I)〜 (III)力 なる群より選ばれた少なくとも 1種を含有 した検出キットにより、より容易かつ迅速に行うことができる。力かる検出キットも本発 明に含まれる。
[0091] 本発明の検出キットは、前記 (I)の核酸、前記 (Π)の核酸および前記 (III)のプライ マー対力もなる群より選ばれた少なくとも 1種を含有するものである。
[0092] 本発明の検出キットは、前記核酸、プライマー対などを含有するため、 II型糖尿病 疾患感受性を容易かつ迅速に診断することができ、糖尿病および糖尿病の疑 ヽのぁ る患者から得られた被検試料から、糖尿病の発症に寄与する核酸を、容易かつ迅速 に検出することができるという優れた効果を奏する。したがって、本発明の検出キット は、本発明の診断方法および本発明の検出方法に有用である。
[0093] さらに、本発明により、糖尿病の診断用キットが提供される。力かるキットは、例えば 、被検者由来の試料中に含まれる KLF7の発現量を測定することにより、被検者が 糖尿病に罹患するリスクを簡便に診断することができるという優れた効果を奏するた め、本発明の診断方法において有用に使用され得る。
[0094] 一態様において、本発明の診断用キットは、 KLF7遺伝子の第 2イントロンに存在す る 35092番目の塩基における変異を検出するための試薬を含む。かかる試薬の具 体例としては、例えば KLF7の第 2イントロン +35092の部分を検出するためのプライ マーやプローブなどが挙げられる。
[0095] また、別の態様において、本発明の診断用キットは、 KLF7の発現量を測定するた めの試薬を含む。力かる試薬の具体例としては、例えば KLF7に対するモノクローナ ル抗体又はポリクローナル抗体等が挙げられる。
実施例
[0096] 本発明を、下記実施例などにより説明するが、本発明は、力かる実施例に限定され るものではない。また、以下の実施例において、遺伝子操作、細胞培養などには、特 に断りのない限り、 Molecular Cloning : A Laboratory Manual, Second Edition (1989) ( Cold Spring Harbor Laboratory Press)、 Current Protocols in Molecular Biology (Gr eene Publishing Associates and Wiley— Interscience)などに己載された方法を用いた
[0097] 参考例 1
インフォームドコンセントの下、滋賀医科大学、東京女子医科大学、順天堂大学ま たは川崎医科大学に定期的に来診する II型糖尿病患者、ならびに日本の幾つかの 医療施設を介して募集した 564人の対照患者を対象として実験を行った。
[0098] 前記 II型糖尿病患者および対照患者の末梢血液を採血し、得られた末梢血液 7ml を 3000回転で 10分間遠心分離して、血漿を除去した。ついで、得られた産物に、赤 血球溶解液を添加して、室温で 20分間インキュベートした。その後、インキュベーショ ン後の混合物を、 3000回転で 5分間遠心分離して、上清を除去した。得られた沈殿に 、プロティナーゼ Kを添加し、 37°C4時間以上インキュベートした。得られた産物を、フ エノールークロロホルムで処理し、得られた上層(水層)に、イソプロパノールを添カロし
て、 DNAの沈殿を生じさせた。ついで、遠心分離(12000回転、 10分)を行ない、 DNA を回収し、 lml 70%エタノールを添カ卩し、得られた DNAのペレットを TE緩衝液(組成: 10mM Tris- HC1、 ImM EDTA(pH8.0) )に溶解し、 DNA試料を得た。
[0099] 前記 DNA試料を用いて、インベーダー法により遺伝子型の判定を行った。解析す る SNPは、 JSNPデータベース(IMS- JST SNPsデータベース: http:〃 snp.ims.u-tokyo. ac.jp)から無作為に選択した。各 SNP遺伝子座の遺伝子型を、 Multiplex PCRと組み 合わせたインベーダー法(例えば、 Ohnishi Y.ら、 J.Human.Genet., 46, 471-477, 200 1などを参照のこと)により解析した。
[0100] より詳細な遺伝子多型の検索をダイレクトシーケンス法にて行った。 KLF7を含むゲ ノム配列に関連する GenBankの情報(ァクセッション番号: NM003709および BC01291 9)を基にデザインした PCRプライマーを用いて、標的部位を増幅した。また、 PCRブラ イマ一のデザインに際して、 Bedellら、 Bioinformatics, 16, 1040-1041, 2000に記載さ れたように、商品名: REPEATMASKERプログラム(ワシントン大学より供給、ウェブべ ~~ンァトレス: http://repeaTmasker.genome.washington.eduにて禾 IJ用 Bjffejにより、検 索対象力も反復エレメントを排除した。
[0101] Multiplex PCRにおける反応条件は、反応溶液(組成: 16.6mM (NH ) SO、 67mM
4 2 4
Tris (pH8.8)、 6.7mM MgCl、 lOmM 2—メルカプトエタノール、 6.7 μ Μ EDTA、 1.5mM
2
dNTP、 lOxTaqミックス(2.5U/ μ 1 Taq DNAポリメラーゼ、 31.25U/ μ 1 Taq Antibody)、 0または 10% DMSO、各 0.25 μ Mプライマー)、 95°C、 5分の反応後、 95°Cで 15秒と 60 °Cで 45秒と 72°Cで 3分とを 1サイクルとする 40サイクルの反応を行った。
[0102] 増幅された産物を dH 0で、 1: 11に希釈し、 384プレートの各ゥエルに分注した。つ
2
いで、プレートを風乾させ、プレート上の各ゥエルに、 3 1インベーダー反応液(組成 : 10 X緩衝液、 10 X FRETプローブ、 10 X clevase、アレルプローブ)を添カ卩した。その 後、 63°Cで 20分間インキュベートし、ついで、プレートの各ゥエルについて、蛍光(520 nm、 546nm)を測定した。
[0103] 糖尿病症例の 188人の患者および対照群の 564人の患者のそれぞれに対し、 83,54 0個の SNP座について遺伝子タイピングを行った。ついで、 2 X 3または 2 X 2分割表を 用いた統計学的データを評価することにより、糖尿病症例の患者と対照群個体との
間の遺伝子型または対立遺伝子頻度に有意な差異を示した SNPを選択した。
[0104] なお、相関解析、ハプロタイプ頻度および Hardy-Weinberg平衡の統計解析ならび に連鎖不平衡係数(D')の算出は、 Devlin B.ら Genomics, 29, 311-322, 1995および N ielsen DM.ら Am.J.Hum.Genet.,63, 1531-1540, 1998のように行った。
[0105] スクリーニングにおいて、糖尿病患者と対照患者との間で 0.01未満の P値を示した 2,
015個の SNP座を、さらに多数の患者について、解析した。
S «
[0106] [表 1]
KLF7遺伝子におけるランドマーク SNPの関連 (第 2イントロン +35092A/C)
AA AC CC A C HWE'
11型糖尿病患者 0.91 0.09 P=0.87
s « 対照患者 0.87
X2 P値 ォッズ比 (95%CI) 遺伝子型 16.3 0.0002
A対 C 16.3 0,00005 1.51 (1.23-1.85)
AA対 AC+CC 14.8 0.0001 1.54 (1.23-1.92)
AA+AC対 CC 4.1 0.04 2.35 (1.00-5.53)
*Hardy-Weinberg平衡の統計解析
[0107] その結果、表 1に示されるように、第 2染色体短腕 32の KLF7遺伝子の第 2イントロン における 1つの SNP座の遺伝子型の分布が、 II型糖尿病との強い関連性を示した (A 対 c 2=16.3、 P=0.000053、オッス、比 =1.51、 95%CI 1.23〜1.85)。
[0108] また、図 1に示されるように、 KLF7遺伝子におけるランドマーク SNP周辺の領域の連 鎖不平衡マッピングにより、ランドマーク部位の約 20kb上流および 60kb下流において 、この領域における連鎖不平衡が広がって 、ることが示された。
[0109] したがって、 II型糖尿病の罹病性に重要な領域は、おそらぐこの 80kbの高連鎖不 平衡ブロック内に存在すると考えられる。また、この連鎖不平衡ブロック内に、 KLF7 の他に遺伝子がないため、 KLF7自体力 糖尿病の罹病性に関する候補であると考 えられる。
[0110] 参考例 2
KLF7遺伝子の発現による影響を調べるため、種々の細胞に KLF7遺伝子を導入し 、各細胞の挙動を確認した。
[0111] 1.ヒト KLF7 cDNAのクロー-ング
Human Adipocyte Marathon-Ready cDNA(CLONTECH社製)を铸型としヒト KLF7 遺伝子特異的プライマーを用いて PCRをおこなうことによりヒト KLF7 cDNAのクロー二 ングを行った。ヒト KLF7遺伝子特異的プライマーはセンス鎖 5'-TGAGCCAGACAGA CTGACAA- 3' (配列番号: 3)、アンチセンス鎖 5'- CCTTTAGACACTAGCCGATG- 3 ' (配列番号: 4)を用い、 PCRは KOD- PLUS (TOYOBO社製)を使用し、 95°Cで 2分を 1 サイクル、 94°Cで 15秒、 55°Cで 30秒、 68°Cで 2分を 30サイクル行った。その後、 Ex Ta q (タカラバイオ社製)を少量添加し、 72°Cで 2分間反応させた。得られた PCR産物を 0. 8%ァガロースゲルで電気泳動し目的の DNA断片を MinElute Gel Extraction Kit (QI AGEN社製)を用いて精製した後、 TA Cloning Kit (Invitrogen社製)を用いて pCR2.1 vector 組み込んだ。得られたプラスミド pCR2.1-KLF7のヒト KLF7領域の塩基配列 を M13- Forwardプライマー: 5 GTAAAACGACGGCCAGTG- 3' (配列番号: 5)およ び Ml 3- Reverseプライマー: 5'- CAGGAAACAGCTATGACC- 3' (配列番号: 6)を用 いたシークェンスをおこなうことにより確認した。シークェンス反応は BigDye Terminat or v3.1 Cycle Sequencing Kit (Applied Biosystems社製)を用い、電気泳動および解 析は Applied Biosystems 3700 DNA Analyzerを用いて行った。得られたヒト KLF7 cD NAの塩基配列を配列番号: 1に示す。
[0112] 2.アデノウイルスの作製
各細胞に KLF7遺伝子を導入するためのヒト KLF7アデノウイルスを、 Adenovirus Ex pression Vector Kit (TaKaRa社製)を使用して作製した。コスミドベクター pAxCAwtに 1.でクローユングしたヒト KLF7 cDNAを組み込み、プロトコールに従いヒト KLF7ァ デノウィルスを作製した。
[0113] 3.細胞培養
HPAを Zen- Bio, Inc., HIT- T15を大日本製薬、 3T3-L1および L6を American Type Culture Collectionから購入した。 HPAを DMEM : HAM F- 10=1 : 1 (10% FBS 50U/ml
ペニシリン G、 50 g/mlストレプトマイシン)、 HIT- T15を RPMI1640 (10% FBS、 50U/m 1ペニシリン G、 50 g/mlストレプトマイシン)、 3T3- LIおよび L6を DMEM (10% FBS、 5 OU/mlペニシリン G、 50 g/mlストレプトマイシン)で 37°C、 5% CO環境下で培養した
2
[0114] 4. HPAにおける mRNA発現量の確認
分化誘導後 13日目の HPAに LacZまたは KLF7アデノウイルスを終夜感染させ、 5日 後に各細胞から RNeasy Mini Kit (QIAGEN社製)を用いて total RNAを調製した。得ら れ 7こ total RNAを ¾uper¾cript First-strand synthesis System for RT— Pし R (Invitrogen 社製)を用いて cDNAを合成し、これを铸型として KLF7特異的プライマー、レプチン 特異的プライマー、アディポネクチン特異的プライマーおよび IL-6特異的プライマー (それぞれ、配列番号: 30および 31、配列番号: 15および 16、配列番号: 11および 12、ならびに配列番号 13および 14)を用いて定量 PCRをおこなうことにより各遺伝子 mRNA発現量の検討をおこなった。定量結果の補正には j8 -ァクチンを用いた。 KLF 7に対する PCRは、 95°Cで 2分を 1サイクル、 95°Cで 30秒、 68°Cで 30秒、 72°Cで 30秒を 40サイクル、レプチン、アディポネクチン、 IL-6および j8 -ァクチンに対する PCRは、 95 °Cで 2分を 1サイクル、 95°Cで 30秒、 60°Cで 30秒、 72°Cで 30秒を 40サイクルで、 Mx300 OP Multiplex Quantitative PCR System (STRATAGENE社製)を用いて反応および解 析をおこなった。その結果を図 2に示す。なお、 |8 -ァクチンについては、配列番号: 24に示される塩基配列を有するプライマーと配列番号 : 25に示される塩基配列を有 するプライマーとからなるプライマー対を使用した。
[0115] HPAにおける各種遺伝子発現への影響
この結果、ウィルス感染により、 KLF7は約 196倍の発現亢進が認められ、この KLF7 過剰発現に伴 、、アディポネクチンおよびレプチンはそれぞれ 54%および 78%の発 現抑制、 IL-6は 17倍の発現亢進が確認された。
[0116] 5. HIT- T15におけるインスリン mRNA発現量の確認
6穴プレート(CORNING社製)に HIT- T15を 5 X 105/welほきこみ 2日間培養後、 0、 1 、 3、 10および 30MOIで KLF7アデノウイルスを 1時間感染させた。感染 2日後に細胞を PBSで洗浄後、 RNeasy Mini Kit (QIAGEN社製)を用いて total RNAを精製した。この t
otalRNA力ら Superscript First-strand Synthesis System for RT— PCR (Invitrogen社製 )を用いて cDNAを合成し、得られた cDNAを铸型とし KLF7特異的プライマー(配列番 号: 30および 31)およびインスリン特異的プライマー(配列番号: 7および 8)を用いて 定量 PCRをおこなうことにより、各遺伝子 mRNA発現量を測定した。定量結果の補正 には mGAPDHを用いた。 PCRは、 95°Cで 2分を 1サイクル、 95°Cで 30秒、 68°Cで 30秒 、 72°Cで 30秒を 40サイクル、 mGAPDHに対する PCRは、 95°Cで 2分を 1サイクル、 95°C で 30秒、 60°Cで 30秒、 72°Cで 30秒を 40サイクルで、 Mx3000P Multiplex Quantitative PCR System (STRATAGENE社製)を用いて反応および解析をおこなった。その結果 を図 3に示す。なお、 mGAPDHについては、配列番号: 26に示される塩基配列を有 するプライマーと配列番号: 27に示される塩基配列を有するプライマーとからなるプ ライマー対を使用した。
[0117] HIT- T15における mRNA発現への影響
この結果、感染 MOI数の増加にともな 、KLF7の著 U、発現亢進が認められた(図 3 の A)。また、この KLF7の発現亢進にともないインスリン発現量の減少が確認され、 30 MOIの KLF7アデノウイルス感染時には約 74%のインスリン発現量の減少が認められた (図 3の: B)。
[0118] 6. HIT- T15におけるインスリン分泌量の確認
24穴プレート(CORNING社製)に HIT- T15を 1 X 105/wellでまきこみ 2日間培養後、 1 0MOIの LacZアデノウイルスまたは KLF7アデノウイルスを 1時間感染させた。感染 2日 後に Hepes— Krebs buffer (119mM NaCl、 4.75mM KC1、 5mM NaHCO、 2.54mM CaCl
3
、 1.2mM MgSO、 20mM Hepes pH7.4) /0.2%BSAで 3回洗浄後、 1mlの Hepes- Krebs
2 4
buffer/0.2%BSAを添カ卩し COインキュベーターで 37°C、 2時間培養した。その後、 0m
2
M、 2.7mM、 10mMまたは 16.7mMグルコース濃度の Hepes- Krebs buffer/0.2% BSAを 500 1添カ卩し COインキュベーターで 37°C、 1時間培養後培養液を回収した。得られ
2
た培養液中に分泌されたインスリン量をインスリン測定キット (森永生化学研究所社製 )を用いて測定した。また、各ゥエルの細胞を RIPA bufferで溶解後 Bio-Rad Dc Protei n Assay Kit (Bio-Rad社製)を用いてタンパク質量測定をおこない、タンパク質量で補 正をおこなった。その結果を図 4に示す。
[0119] HIT- T15におけるインスリン分泌への影響
この結果、 HIT- T15および HIT- T15/LacZではグルコース濃度の増加にともないィ ンスリン分泌亢進が認められ、 16.7mMグルコース刺激時には非刺激時の約 2.6倍の インスリン分泌が確認された力 HIT-T15/KLF7ではグルコース刺激によるインスリン 分泌が著しく抑制された。
[0120] 7. L6におけるへキソキナーゼ mRNA発現量の確認
6穴プレート(CORNING社製)に L6を 5 X 105/welほきこみ 2日間培養後、 0、 1、 3、 10 、 30および 100MOIで KLF7アデノウイルスを終夜感染させた。感染 2日後に細胞を PB Sで洗浄後、 RNeasy Mini Kit (QIAGEN社製)を用いて totalRNAを調製し、得られた to talRNAより ¾uper¾cript First-strand synthesis System for RT— Pし R (Invitrogen社製) を用いて cDNAを合成した。この cDNAを铸型とし KLF7特異的プライマー(配列番号: 30および 31)およびへキソキナーゼ特異的プライマー(配列番号 9および 10)を用い て定量 PCRをおこなうことにより各遺伝子 mRNA発現量の検討をおこなった。定量結 果の補正には rGAPDHを用いた。 PCRは 95°Cで 2分を 1サイクル、 95°Cで 30秒、 68°C で 30秒、 72°Cで 30秒を 40サイクルとし、 Mx3000P Multiplex Quantitative PCR System (STRATAGENE社製)を用いて反応および解析をおこなった。その結果を図 5に示 す。なお、 rGAPDHについては、配列番号: 28に示される塩基配列を有するプライマ 一と配列番号: 29に示される塩基配列を有するプライマーとからなるプライマー対を 使用した。
[0121] L6におけるへキソキナーゼ mRNA発現への影響
この結果、 MOI数の増加にともない KLF7の発現亢進が認められた(図 5の A)。また 、この KLF7の発現亢進にともないへキソキナーゼ発現量の減少が確認され、 100MO Iの KLF7アデノウイルス感染時には約 47%のへキソキナーゼ発現量の減少が認めら れた(図 5の: B)。
[0122] 8.脂肪細胞分化への影響
以下のようなオイルレッド 0アツセィを使用して脂肪細胞への分ィ匕を確認した。 コラーゲンコート 6穴プレート(IWAKI社製)に 3T3-L1または HPAを 1 X 105/wellまきこ みコンフルェントになるまで培養後、 100MOIの LacZアデノウイルスまたは KLF7アデノ
ウィルスを終夜感染させた。感染 2日後に 3T3- L1は DMEM (10%FBS、 50U/mlぺ-シ リン G、 50 μ g/mlストレプトマイシン、 0.5mM 3-イソブチル -1-メチルキサンチン、 1 μ Μ デキサメタゾン、 1 μ Μインスリン)に、 ΗΡΑは DMEM : HAM F- 10=1: 1 (10%FBS、 50U /mlペニシリン G、 50 μ g/mlストレプトマイシン、 0.2mMインドメタシン、 2 μ Μインスリン、 1 μ Μデキサメタゾン、 0.5mM 3-イソブチル -1-メチルキサンチン)で培養することによ り分化誘導をおこない、その後各日数経過した細胞を PBSで 3回洗浄後 lmlの 10%ホ ルマリン含有 PBSで固定した。 4°Cで 1時間以上放置した後 10%ホルマリン含有 PBSを 取り除き風乾させた。 lmlのオイルレッド 0液(0.5%オイルレッド 0イソプロパノール液: 蒸留水 =6 :4)を添加し室温で 15分間放置後、蒸留水で 3回洗浄をおこなった。写真 撮影した後、各ゥエルに 100 1のイソプロパノールを添加することによりオイルレッド 0 を溶出し吸光度測定 (OD540)をおこなうことにより脂肪蓄積量を判定した。
[0123] 13日目の HPAおよび HPA/LacZでは脂肪滴の蓄積が観察された(それぞれ図 6A の aおよび b)力 HPA/KLF7では脂肪滴の蓄積がほとんど観察されなかった(図 6A のじ)。なお、図 6Aの dは染色時の全体像を示したものである。
[0124] また、イソプロパノールを用いてオイルレッド 0を抽出しその吸光度を測定すること により脂肪滴量を数値ィ匕したところ、 KLF7過剰発現により著しい脂肪滴蓄積量の減 少が認められた(図 6B)。このこと力 KLF7過剰発現により HPAの脂肪細胞への分 化が抑制されることが示唆された。
[0125] 3T3-L1にお!/、ては、図 7Aに示すように、未処理(ウィルスによる感染を行わなかつ た) 3T3- LI (3T3-L1/-)および LacZアデノウイルス感染 3T3-L1 (3T3- Ll/LacZ)では 分ィ匕誘導後 3日目で脂肪滴の蓄積が観察され始め、大部分の細胞で日数の経過と 共に脂肪滴の蓄積量の増大が確認された (それぞれ図 7Aの aおよび b)。一方、 KLF 7アデノウイルス感染 3T3-L1 (3T3-L1/KLF7)では分化誘導後 10日目においても脂 肪滴の蓄積がほとんど観察されなカゝつた(図 7Aの c)。なお、図 7Aの dは染色時の全 体像を示したものである。
[0126] また、イソプロパノールを用いてオイルレッド 0を抽出しその吸光度を測定すること により各経過日数での脂肪滴量を数値ィ匕したところ、 KLF7過剰発現により著しい脂 肪滴蓄積量の減少が認められた(図 7B)。このこと力 KLF7過剰発現により 3T3-L1
の脂肪細胞への分化が抑制されることが示唆された。
[0127] 実施例 1
Adenovirus Expression Vector Kit (TaKaRa社製)を使用して、コスミドベクター pAx CAwtに、ヒト KLF7 cDNAを組み込み、プロトコールに従いヒト KLF7アデノウイルスを 作製する。この KLF7アデノウイルスを 3T3-L1細胞に感染させることにより、得られた 形質転換細胞を、化合物ライブラリーの化合物を含有した DMEM培地において、 5% CO、 37°Cで 4〜24時間培養する。また、対照として、前記化合物ライブラリーの化合
2
物を含まない DMEM培地において、同様に培養する。培養後の細胞から、 total RNA を抽出する。ついで、 total RNAを铸型とし、前記参考例 2と同様に、 KLF7,インスリン 、へキソキナーゼ、レプチン、アディポネクチン、 IL-6、 β -ァクチン、 rGAPDHおよび mGAPDHのそれぞれに対するプライマーを用いて、定量的 RT-PCRを行う。 β -ァク チン、 rGAPDHおよび mGAPDHの結果により、数値を正規化し、化合物存在下およ び非存在下における KLF7、インスリン、へキソキナーゼ、レプチン、アディポネクチン および IL-6それぞれの発現量を評価する。
[0128] HIT-T15細胞、 L6細胞または HPA細胞の形質転換細胞における KLF7遺伝子、ィ ンスリン遺伝子、へキソキナーゼ遺伝子、レブチン遺伝子、アディポネクチン遺伝子 および IL-6遺伝子の発現量を、非形質転換細胞における発現量と比較して、化合物 の存在により、形質転換細胞における KLF7遺伝子および IL-6遺伝子の発現量の亢 進が阻害され、インスリン遺伝子、レブチン遺伝子、アディポネクチン遺伝子および へキソキナーゼ遺伝子の発現量の抑制が阻害されることを指標として、糖尿病の治 療または予防薬の候補物質をスクリーニングする。
[0129] 実施例 2
被験個体の末梢血より、慣用の核酸抽出法で核酸含有試料を調製する。 KLF7遺 伝子の第 2イントロンの領域の核酸を基に作製された SNP検出用マイクロアレイに、前 記核酸含有試料を供して、ハイブリダィズさせ、生じる DNAノヽイブリツドの一方の DNA 鎖について、 4種の蛍光標識ジデォキシヌクレオチドと DNAポリメラーゼとを用いて、 プライマー伸長させる。 SNPが、存在する部分の塩基に取り込まれた蛍光を指標とし て検出されることに基づき、核酸含有試料が、糖尿病の発症に寄与する核酸を含む
ことが示され、被験個体が、糖尿病を発症している力、あるいは、将来発症する可能 性があると判断される。
産業上の利用可能性
[0130] 本発明のスクリーニング方法は、糖尿病の治療または予防の手段の開発に有用で ある。また、本発明の診断方法及び糖尿病に罹患する可能性が高い被検個体の選 別方法は、糖尿病に対する治療計画または予防処置を立てるに際して有用である。 さらに、本発明の検出キット及び診断用キットは、糖尿病の診断などに用いられ得る。 配列フリーテキスト
[0131] 配列番号: 3は、ヒト KLF7 cDNAのクローニング用センスプライマーの配列を示す。
配列番号: 4は、ヒト KLF7 cDNAのクローニング用アンチセンスプライマーの配列を 示す。
配列番号: 5は、 M13-Forwardプライマーの配列を示す。
配列番号: 6は、 M13- Reverseプライマーの配列を示す。
配列番号: 7は、インスリン遺伝子に対するセンスプライマーの配列を示す。 配列番号: 8は、インスリン遺伝子に対するアンチセンスプライマーの配列を示す。 配列番号: 9は、へキソキナーゼ遺伝子に対するセンスプライマーの配列を示す。 配列番号: 10は、へキソキナーゼ遺伝子に対するアンチセンスプライマーの配列を 示す。
配列番号: 11は、アディポネクチン遺伝子に対するセンスプライマーの配列を示す 配列番号: 12は、アディポネクチン遺伝子に対するアンチセンスプライマーの配列 を示す。
配列番号: 13は、 IL-6遺伝子に対するセンスプライマーの配列を示す。 配列番号: 14は、 IL-6遺伝子に対するアンチセンスプライマーの配列を示す。 配列番号: 15は、レブチン遺伝子に対するセンスプライマーの配列を示す。
配列番号: 16は、レプチン遺伝子に対するアンチセンスプライマーの配列を示す。 配列番号: 19は、 KLF7第 2イントロン +35092の部分を含むポリヌクレオチドを検出 するためのプライマーの配列を示す。
配列番号: 20は、 KLF7第 2イントロン +35092の部分を含むポリヌクレオチドを検出 するためのプライマーの配列を示す。
配列番号: 21は、 KLF7第 2イントロン +35092の塩基が Cであるものを検出するため のプローブの配列を示す。
配列番号: 22は、 KLF7第 2イントロン +35092の塩基力 であるものを検出するため のプローブの配列を示す。
配列番号: 23は、 KLF7第 2イントロン +35092の塩基が Cである力 Aであるかを検出 するためのインベーダープローブの配列を示す。 nは任意の塩基である。
配列番号: 24は、 /3 -ァクチン遺伝子に対するセンスプライマーの配列を示す。 配列番号: 25は、 β -ァクチン遺伝子に対するアンチセンスプライマーの配列を示 す。
配列番号: 26は、 mGAPDH遺伝子に対するセンスプライマーの配列を示す。 配列番号: 27は、 mGAPDH遺伝子に対するアンチセンスプライマーの配列を示す 配列番号: 28は、 rGAPDH遺伝子に対するセンスプライマーの配列を示す。
配列番号: 29は、 rGAPDH遺伝子に対するアンチセンスプライマーの配列を示す。 配列番号: 30は、 KLF7遺伝子に対するセンスプライマーの配列を示す。
配列番号: 31は、 KLF7遺伝子に対するアンチセンスプライマーの配列を示す。