JP4400039B2 - 魚鱗由来コラーゲンペプチド及びカルシウムアパタイトの製造方法 - Google Patents

魚鱗由来コラーゲンペプチド及びカルシウムアパタイトの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は魚鱗からコラーゲンペプチド及びカルシウムアパタイトを製造する方法に関する。詳しくは、工程が簡単で耐酸仕様の材質を必要とせず一般的な装置で実施可能な、低廉なコストで魚鱗由来のコラーゲンペプチド及びカルシウムアパタイトを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、コラーゲンペプチドの製造方法としては、動物の骨や魚骨原料の場合、化学的に脱脂、脱灰処理(カルシウム成分を化学的に除去処理することをいう)した後、無機酸または蛋白分解酵素で加水分解する等の方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、魚類または家畜由来のコラーゲンまたはケラチンを脱脂や脱灰の前処理後に、プロテアーゼにて加水分解してオリゴペプチドを得ることが報告されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、これら脱灰処理を伴う方法は、工程が煩雑でコストもかかるため改善が求められていた。尚、魚鱗よりカルシウムアパタイトを得る方法は、魚鱗を焼成して有機物を除き粉砕する方法及び魚鱗を酸で溶解して不溶解成分であるコラーゲンを除き、アルカリ物質を添加して再沈殿させる方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭52−111600号公報
【特許文献2】
特開2001−211895号公報
【特許文献3】
特開平8−104508号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、工程が簡単で耐酸仕様の材質を必要とせず一般的な装置で実施可能な、低廉なコストで魚鱗由来のコラーゲンペプチド及びカルシウムアパタイトを製造する方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の課題を解決するため鋭意研究した。その結果、魚鱗原料を必要に応じて洗浄し、乾燥し、機械的に乾式または湿式粉砕して綿状乃至粉末状とした後、脱灰処理なしにこの魚鱗に蛋白分解酵素を作用させるコラーゲンペプチドの製造方法、及びコラーゲンペプチド製造後の魚鱗残さを用いるカルシウムアパタイトの製造方法によって課題が解決されることを知り、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0006】
本発明は以下によって構成される。
(1)魚鱗に、脱灰処理をせずに、蛋白分解酵素を作用させることを特徴とするコラーゲンペプチドの製造方法。
【0007】
(2)魚鱗が、機械的に乾式または湿式粉砕された綿状乃至粉末状の鱗であることを特徴とする(1)項記載のコラーゲンペプチドの製造方法。
【0008】
(3)魚鱗に蛋白分解酵素を作用させる前に、魚鱗を30℃以上100℃未満の温度の水中に、10時間以下浸漬した後、魚鱗に30℃〜80℃の温度で10時間以下、蛋白分解酵素を作用させることを特徴とする(1)または(2)項記載のコラーゲンペプチドの製造方法。
【0009】
(4)(1)〜(3)項のいずれか1項記載の製造方法によるコラーゲンペプチドの製造方法により得られたコラーゲンペプチド溶液から不溶解成分を分離した溶液に対して、下記(A)の操作を1回以上行うことを特徴とするコラーゲンペプチドの製造方法。
(A):魚鱗を加えて30℃以上100℃未満の温度で10時間以下保持した後、30℃〜80℃の温度で10時間以下、蛋白分解酵素を作用させ、次に不溶解成分を分離する。
【0010】
(5)(1)〜(4)項のいずれか1項記載の製造方法によるコラーゲンペプチドの製造で生じる魚鱗残さを用いることを特徴とするカルシウムアパタイトの製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、必要に応じて機械的に乾式または湿式粉砕した魚鱗を、化学的な脱灰処理(カルシウム成分を化学的に除去処理することをいう)なしに、水中で蛋白分解酵素と接触させることにより、蛋白分解酵素の加水分解作用によって魚鱗中のコラーゲン蛋白質からコラーゲンペプチドを製造する方法である。
また本発明では、前記の蛋白分解酵素による加水分解後に、ろ過等の方法で分離することにより、粗製カルシウムアパタイト(カルシウムアパタイトを主成分とする混合物)を製造することができる。次いで、得られた粗製カルシウムアパタイトを精製することによって高純度カルシウムアパタイトを製造することもできる。
本発明の方法で製造されるコラーゲンペプチドは食品、健康食品、化粧品として利用できる。また、カルシウムアパタイトは食品、健康食品、歯磨き粉、触媒担体として利用できる。
尚、本発明における粗製カルシウムアパタイトとは、カルシウムアパタイトを主成分とし有機化合物を少量含む未精製の混合物をいう。主成分とは、混合物中に占めるカルシウムアパタイトの重量比が最も大きいことを意味する。また、高純度カルシウムアパタイトとは、粗製カルシウムアパタイトを精製したものをいう。
【0012】
本発明で用いられる魚鱗の種類は特に限定されない。水産加工場の選別ラインよりロータリースクリーン等で現在も回収されている鰯や秋刀魚の鱗や、水産加工場でフィーレや切り身加工の際にジェット水流で鱗を剥ぐ真鯛等の鱗を例示することができる。この他にもスケソウ鱈、エソ、鮭、ニシン、鯉、テラピア等の鱗も使用することができる。本発明で用いられる魚鱗はその鮮度及び純度ができるだけ高いものが好ましい。青魚である秋刀魚や鰯の水産加工場より回収された魚鱗中には魚体や魚肉、巻き網漁で混在した鰭、海藻、その他の夾雑物が含まれる場合が多く、回収後直ちに、これらの夾雑物を水洗等により除くことが好ましい。魚肉の自己消化や鱗粉により発生した有臭物質付着や着色が鱗に生じると、得られるコラーゲンペプチド及びカルシウムアパタイトの品質が損なわれる恐れがある。高純度のコラーゲンペプチド及び粗製カルシウムアパタイトを得るためには、かかる魚肉や鰭、海藻等の夾雑物は、できるだけ少ないことが好ましい。
【0013】
本発明では、魚鱗の粉砕をしなくてもコラーゲンペプチドを製造することができる。しかし、コラーゲンペプチドの回収率を高めるため、予め洗浄して夾雑物を除いた後の洗浄鱗を、機械的に粉砕することが好ましい。粉砕方法は、水分を含んだままの魚鱗を粉砕する湿式粉砕、魚鱗を乾燥させた後に粉砕する乾式粉砕の何れの方法であってもよい。
魚鱗の粉砕に用いる粉砕機の種類は特に限定されない。具体的には中速回転運動機構を備えた衝撃やせん断で粉砕するタイプや高速回転運動機構を備えた衝撃にて粉砕するタイプが好ましい。より具体的に例示すれば、セイシン企業社製インペラーミル及び中央化工機社製振動ミルが好適に使用できる。魚鱗の湿式粉砕には、振動ミルやボールミル等が好適に使用できる。粉砕時の温度は、魚鱗の鮮度低下を避けるため100℃未満が好ましく、30℃以下がより好ましい。粉砕時の温度上昇を抑える目的で液体窒素等にて鱗を冷凍状態にして粉砕することも可能である。冷凍状態であれば、中高速回転運動機構以外の往復、旋回、低速回転、ロール、自公転、容器回転、容器振動、ジェット噴射等の運動機構を備えた粉砕機機種も使用可能となる。
乾式または湿式粉砕された魚鱗は、一般に綿状乃至粉末状の形状となる。
【0014】
本発明は、化学的な脱灰処理(カルシウム成分を化学的に除去処理することをいう)なしに、魚鱗を水中で蛋白分解酵素と接触させることにより、蛋白分解酵素の加水分解作用によって魚鱗中のコラーゲン蛋白質からコラーゲンペプチドを製造する方法である。
本発明は、脱灰処理に用いる酸の使用がないため、従来法に比べ工程が短く、得られるコラーゲンペプチドの脱塩処理が不要であり、コストを低くすることができる。また、脱灰処理に伴うコラーゲンペプチドのロスがないため、これらの回収率が高くなり効率的である。
尚、得られるコラーゲンペプチドを、必要に応じて公知の方法により脱脂、脱色、脱臭して精製することもできる。
本発明で用いられる水は、飲料水、工業用水、蒸留水、イオン交換水等特に限定はされないが、酸またはEDTAのようなカルシウムと反応して溶解させる物質を含まないことが好ましい。
【0015】
本発明で用いられる蛋白分解酵素は、化学的な脱灰処理なしに、魚鱗中のコラーゲン蛋白質を加水分解することができるものであれば特に制限されない。好ましくは、食品に使用できるものであり、高分解率で多量製造され比較的安く入手可能で、アミノ酸生成が殆どない蛋白分解酵素である。これらの諸要求を満たす蛋白分解酵素は、コラーゲンのゼラチン化温度より高い温度で加水分解が容易に進行し、pH6.5〜pH12で使用できるものであることが必要である。具体的には、バチルス(Bacillus)属由来の細菌アルカリ性プロテアーゼが該当する。市販品として入手可能なものとして、ノボノルディスクバイオインダストリー(株)製「アルカラーゼ(商標)」、長瀬産業(株)製「ビオプラーゼ(商標)SP−15FG」及び天野エンザイム(株)製「プロレザー(商標)FG−F」を挙げることができる。
しかし、その他の条件にて使用する蛋白分解酵素や2種以上の分解酵素を混合して使用することもできる。
【0016】
本発明において、魚鱗中のコラーゲン蛋白質からコラーゲンペプチドを製造する条件は、使用される蛋白分解酵素に最適な温度、pH、時間等を適宜選択することができる。一般的な温度は30℃〜80℃の範囲である。時間は10時間以下、好ましくは1時間以下である。
【0017】
本発明においては、魚鱗に蛋白分解酵素を作用させる前に、魚鱗を、30℃以上100℃未満、好ましくは50℃以上100℃未満、特に好ましくは80℃以上100℃未満の温度の水中に、10時間以下、好ましくは2時間以下、浸漬、保持することが好ましい。30℃以上100℃未満の温度の水中に浸漬、保持して前処理することで魚鱗中のコラーゲン成分がゼラチン化し、その一部が水に溶出するので蛋白質分解酵素による加水分解がスムーズに行われる。しかし使用する蛋白分解酵素の最適温度が50℃〜80℃であれば、蛋白分解酵素作用前の魚鱗の前処理は省略も可能である。また、コラーゲンペプチドの製造に使用する水の温度は100℃未満であり、大気圧下で実施可能なため製造設備も特殊な仕様を必要としない。
【0018】
本発明においては、洗浄乾燥鱗及び粉砕鱗は嵩高いために、コラーゲンペプチドを製造する際の1回の魚鱗仕込み量が制限される。そこで、これら嵩高い鱗を水中で加温して減容化させ、更に魚鱗を追加仕込みして水中の魚鱗濃度を高めた後に蛋白分解酵素で加水分解すれば、必然的に高濃度のコラーゲンペプチド溶液の製造が可能となり、コラーゲンペプチド及び粗製カルシウムアパタイトを得るのに有利である。また、蛋白分解酵素の加水分解作用で得られたコラーゲンペプチド溶液から魚鱗残さ等の不溶解成分をろ過等により分離し、得られたろ液を仕込み液として使用し、魚鱗の仕込と蛋白分解酵素による加水分解を繰り返して、加水分解溶液中のコラーゲンペプチド濃度を高める方法は、希薄なコラーゲンペプチド溶液を真空濃縮等の方法で濃縮するのに比べてエネルギーを費やさず有益である。
【0019】
本発明により製造されるコラーゲンペプチドは、美容訴求や関節痛の緩和、骨強化目的等に用いることができる。また、水に溶解させて飲料の形態での使用や固形食品等の担体に添加して固形食品の形態で使用してもよい。この他、健康食品として他の有用成分と混合したタブレットや粉末としても利用でき、更には、液状の食品や嗜好品、例えば菓子類、粉末茶、アイスクリ−ム、ヨ−グルト、アルコ−ル飲料、スポ−ツ飲料等の形態としてもよい。また毛髪用化粧料として毛髪の保護や痛んだ髪の修復目的等で好適に用いられる。
【0020】
本発明により製造されるカルシウムアパタイトは、非晶性及び/または結晶性カルシウムアパタイト(カルシウム欠損の炭酸型を含む)、非晶性及び/または結晶性第三燐酸カルシウムその他燐酸カルシウム化合物の混合物である。そして、これら化合物の含有比率は魚種、漁期及び抽出分離後の精製法により異なる。
本発明により製造されるカルシウムアパタイトの粉末は、ポーラスで比表面積が大きく、重金属捕捉能力が高い。また生体適合性に優れるので歯科用充填材等の医学的な用途に適している。カルシウム補強の食品や健康食品としても最適である。
【0021】
粗製カルシウムアパタイトを精製して高純度カルシウムアパタイトを製造する方法としては、空気中で600℃以上の温度で焼成して、少量含まれる有機物を熱分解除去する方法、または酸溶解後に不溶解成分をろ過等の手段で分離した溶解液にアルカリ物質を添加して高純度カルシウムアパタイトを再沈殿させる方法が好ましい。また、アルカリにて残存せる蛋白質を溶解除去する方法も好ましい。酸を用いる処理の場合は、カルシウム等と反応して不溶性の塩を生成しない酸の使用が好ましい。本発明で好ましい酸の種類は塩酸と酢酸であり、該酸の濃度は処理温度によっても変動するが、一般的に0.1mol/l〜10mol/l程度の濃度が好ましい。
【0022】
粗製カルシウムアパタイト中に残存する蛋白質の溶解除去に好適に用いられるアルカリとしては、食品に使用可能であれば特に制限されない。例えば水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの食品に用いられるグレードが挙げられる。使用する濃度はその後のアルカリ除去または中和を考え極力希薄な方が望ましい。使用するアルカリ濃度と作用時間は粗製カルシウムアパタイトの粒度が細かい程、低アルカリ濃度、短作用時間であることは勿論であるが蛋白質の溶解除去には相応のアルカリ濃度と処理時間が必要である。また、アルカリ処理を軽減する目的にて1種の酵素または複合酵素の使用を妨げるものではない。使用する酵素の種類は食品に使用できるものであれば特に制限されないが、一般的には細菌プロテアーゼ等が使用できる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
実施例及び比較例中、特に断らない限り%は重量%を表す。
【0024】
実施例1
片口鰯鱗由来コラーゲンペプチド及び粗製カルシウムアパタイトの製造
(鱗の採取、洗浄、乾燥)
水産加工場の選別ラインの末端に取り付けられたロータリースクリーンから排出された片口鰯鱗は夾雑物を目視除去した後、洗浄乾燥しダルトン社製パワーミルにてほぐして(平均水分10.5%)綺麗な洗浄乾燥鱗を得た。この片口鰯鱗を更に105℃で12時間乾燥し水分を除き組成を分析した。コラーゲンペプチド量はケルダール法窒素測定値に1963年米国農商務省発表食品成分表の窒素分からのコラーゲン換算係数5.55を掛けて算出した。またカルシウムアパタイト量は鱗を硝酸、過塩素酸ソーダ分解後に塩酸に溶解し、ICP分析にてCaとP量を測定、P量をPO4に換算した値にCa量をプラス、この合計量からカルシウムアパタイトの分子式がCa10(PO46(OH)2とした場合の水酸基を補正して求めた。その結果、片口鰯鱗は、コラ−ゲン36.6重量%、カルシウムアパタイト54.2重量%であり、この数値を基準値に用いて回収率を算出した。
【0025】
(鱗の粉砕)
洗浄乾燥後ほぐした鱗を、室温20℃でインペラーミル(IMP−250型、セイシン企業社製)で回転数3,000rpmで粉砕した。尚、ミルの外筒温度が30℃以下になる様にフィードコントロールした。得られた粉砕鱗を篩分測定した粒度分布は、8mm〜2mmが63.8%、2mm〜1mmが20.3%、1mmパスが16%であった。
【0026】
(加水分解)
上記の洗浄乾燥鱗と粉砕鱗をそれぞれ別個に20g秤量し、それぞれに蒸留水250ml加えた後、50℃で2時間前処理を行った。前処理した後の液の温度を60℃にした後に水酸化ナトリウム溶液にてpH8.0に調整した。この溶液にプロテアーゼ(天野エンザイム(株)製プロレザー(商標)FG−F)を0.285g加え、液を60℃、pH8.0に保ち、60分攪拌混合して加水分解した。尚、コラーゲンペプチド量は粗製カルシウムアパタイト粉末をろ過分離した酵素分解溶液を凍結乾燥して得た粉末重量を測定して求めた。粗製カルシウムアパタイト量は酵素分解後の液よりろ過分離洗浄して得た不溶解粉末の重量を105℃で12時間乾燥して求めた。
【0027】
(結果)
各前処理温度に於ける洗浄乾燥鱗と粉砕鱗のコラーゲンペプチドと粗製カルシウムアパタイトの回収率の結果は表1に示した。
尚、片口鰯鱗を原料鱗とするコラーゲンペプチドと粗製カルシウムアパタイトの回収率は、コラーゲンペプチド36.6重量%、粗製カルシウムアパタイト54.2重量%が回収されたときの回収率をそれぞれ100%として計算により求めた。
【0028】
実施例2
加水分解における前処理温度を50℃から60℃に変更したこと以外、実施例1と同様の操作を行った。結果は表1に示した。
【0029】
実施例3
加水分解における前処理温度を50℃から80℃に変更したこと以外、実施例1と同様の操作を行った。結果は表1に示した。
【0030】
実施例4
加水分解における前処理温度を50℃から94℃に変更したこと以外、実施例1と同様の操作を行った。結果は表1に示した。
【0031】
実施例5
加水分解において前処理を行わなずに、溶液を60℃に加温しpH8.0となし60分加水分解したこと以外、実施例1と同様の操作を行った。結果は表1に示した。
【0032】
比較例1
実施例1と同様の片口鰯乾燥鱗100gを、0.6mol/l塩酸1,500mlに投入し、室温(20〜25℃)で24時間緩攪拌しながら脱カルシウム処理を行った。不溶解分であるコラーゲン成分をろ過して集め、0.3mol/l塩酸にて2回、水にて1回洗浄した。得られた粗コラーゲンに蒸留水1,250ml加え、液を60℃に加温し溶液を水酸化ナトリウムにてpHを8.0に調整した。溶液にプロテアーゼ(天野エンザイム(株)製プロレザー(商標)FG−F)を1.42g加え、この溶液のpHを8.0に維持し60℃で60分間攪拌混合して加水分解した。結果を表1に示した。
【0033】
【表1】
Figure 0004400039
CP*=コラーゲンペプチド、Ca**=粗製カルシウムアパタイト
【0034】
表1の結果より、洗浄乾燥鱗より粉砕鱗の方がコラーゲンペプチド回収率高い。また、前処理なしでも高い回収率が得られるが、80℃や94℃での前処理を入れる方がより高い回収率が得られるのが明らかである。本発明の製造方法であれば、耐酸設備を要する脱灰処理なしに高い回収率でコラーゲンペプチドが得られることが分かる。尚、表1で粗製カルシウムアパタイト回収率が100%を超えた結果は、コラーゲンペプチド溶液より不溶解成分を除いた際に、未回収の一部有機成分が無機成分と一緒に分離され、そのためにコラーゲンペプチド回収率が低く、粗製カルシウムアパタイト回収率が100%を超えたと解釈される。
【0035】
実施例6
オイルバス加熱器を備えた500ml四口フラスコには還流冷却器、pHコントローラー接続したpHセンサーとアルカリフィード管及び攪拌羽根を装着した。蒸留水250mlを加え60℃に加温して攪拌下に実施例1と同様の粉砕鱗20gを仕込み、アルカリにてpH8.0に調節した。プロレザーFG−F酵素0.285gを加え60℃、pH8.0を維持しながら60分加水分解した(1回目)。加水分解終了溶液に新たに鱗原料20gを仕込み、1回目と同様に加水分解した(2回目)。更に3回目として2回目と同様に処理した。3回目の加水分解液をろ過してろ液と不溶解分を得た。ろ液は凍結乾燥してペプチド重量を測定してろ液中ペプチド濃度と抽出率を算出した。また、ろ残は熱水洗浄後105℃で12時間乾燥して重量測定し、粗製カルシウムアパタイト量を求めた。尚、粗製カルシウムアパタイトは600℃で6時間焼成した灰分も求めた。
灰分の測定法:粗製カルシウムアパタイトの乾燥粉末約10gを予め600℃で恒量とした磁性ルツボ中に精秤した。該ルツボを200℃電気炉に入れて600℃まで昇温させ、600℃で6時間焼成した後デシケーター中で放冷、灰分重量を測定した。
結果を表2に示した。
【0036】
【表2】
Figure 0004400039
【0037】
実施例7
実施例5で得られた片口鰯鱗由来の粗製カルシウムアパタイトを乳鉢にて粉砕し100メッシュパス粉末とした。この粉末約20gを200mlビーカーに精秤し、5mol/l水酸化ナトリウム100mlを加え、室温(20〜25℃)にてマグネットスターラー攪拌を24時間行いろ過、水洗してろ液中に溶出した蛋白質量をケルダール窒素分析値より求めた。結果を表3に示した。
5mol/l水酸化ナトリウムの常温24時間処理で粗製カルシウムアパタイト中の窒素分はゼロになった。
【0038】
【表3】
Figure 0004400039
【0039】
【発明の効果】
本発明の製造方法は、必要に応じて魚鱗を機械的に乾式または湿式粉砕処理した後に、脱灰処理(カルシウム成分の化学的除去処理)なしに、大気圧下、40℃以上100℃未満の温度の水で前処理後に、または前処理なしに、大気圧下、30℃〜80℃の温度の水中で蛋白分解酵素と接触させる方法である。このため、耐酸仕様の装置材質を必要とせず、一般的な装置材質でのコラーゲンペプチドの製造が可能である。加えて工程数が酸等を用いる脱灰処理プロセスより少なく、低廉なコストでのコラーゲンペプチド及び粗製カルシウムアパタイト及び高純度カルシウムアパタイトを好適に製造する方法である。

Claims (4)

  1. 魚鱗に、脱灰処理をせずに、蛋白分解酵素を作用させる前に、魚鱗を30℃以上100℃未満の温度の水中に、2〜10時間浸漬した後、30℃〜80℃の温度で10時間以下、蛋白分解酵素を作用させることを特徴とするコラーゲンペプチドの製造方法。
  2. 魚鱗が、機械的に乾式または湿式粉砕された綿状乃至粉末状の鱗であることを特徴とする請求項1記載のコラーゲンペプチドの製造方法。
  3. 請求項1または2記載の製造方法によるコラーゲンペプチドの製造方法により得られたコラーゲンペプチド溶液から不溶解成分を分離した溶液に対して、下記(A)の操作を1回以上行うことを特徴とするコラーゲンペプチドの製造方法。
    (A):魚鱗を加えて30℃以上100℃未満の温度で2〜10時間保持した後、30℃〜80℃の温度で10時間以下、蛋白分解酵素を作用させ、次に不溶解成分を分離する。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法によるコラーゲンペプチドの製造で生じる魚鱗残さを用いることを特徴とするカルシウムアパタイトの製造方法。
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