JP5649025B2 - 魚由来のコラーゲンペプチドの抽出方法 - Google Patents

魚由来のコラーゲンペプチドの抽出方法 Download PDF

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Description

本発明は、魚由来のコラーゲンペプチドの抽出方法に関する。
コラーゲンは食品から医薬品・化粧品に至るまで幅広い分野で利用され、年間300億円の市場があるといわれている。このコラーゲンは、従来は牛や豚などの哺乳動物由来のものが主であったが、牛海綿状脳症、口蹄疫が発生して以来、利用が敬遠されるようになっている。特に化粧品に使われるコラーゲンは、水生動物由来のものが大半を占めるようになっている。
コラーゲン及びこの変性物であるゼラチンは、体内や肌への吸収率向上や機能性を付与する目的で、酵素等により低分子化(加水分解)処理が行なわれる。なお、この処理を受けた試料をコラーゲンペプチドという。
水生動物からコラーゲンペプチドを抽出する方法として、未脱灰の魚鱗を粉砕処理することでコラーゲンの可溶化及び酵素との接触を促進し、コラーゲンペプチドを抽出する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
特開2004−57196号公報
しかしながら、当該抽出方法によってコラーゲン抽出を行なうには、堅い三重螺旋構造を持ったコラーゲン、特に内部コラーゲン線維を可溶化するため、粉砕処理をした魚鱗を酵素処理する前に、90℃以上で2時間以上の加熱処理を行ないゼラチン化する処理を必要とする。このため、コラーゲン抽出処理と後の酵素による加水分解処理を別工程としなければならず、また両工程の間には冷却工程も必要となる。当該加熱処理は省略することもできるが、省略した場合にはコラーゲンペプチドの回収率が著しく減少する。また、当該抽出方法における粉砕処理は、魚鱗の嵩が増すため、一度に高濃度のコラーゲンペプチドが得られないという欠点もあり、さらなる改良が望まれる。
そこで、本発明は、かかる不都合を解消して、処理時間の短縮しつつ、コラーゲンペプチドを効率よく高回収率で回収できる魚由来のコラーゲンペプチドの抽出方法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために、本発明の魚由来のコラーゲンペプチドの抽出方法は、魚由来の原料である鰯の鱗を、Cu/Kα線をX線源としたX線回折法において得られるヒドロキシアパタイト結晶のミラー指数(002)の回折強度が粉砕前を基準とした減少率が3.82%〜13.7%の範囲に収まるように、コンバージミルの原理を利用した高速粉体反応装置を用いて微粉砕する原料微粉砕工程と、30℃〜70℃の温度の水中において前記微粉砕した魚由来の原料からコラーゲンタンパク質を抽出する処理及び抽出されたコラーゲンタンパク質をタンパク質分解酵素によってコラーゲンペプチドに加水分解する処理を一の工程として行うコラーゲンペプチド抽出工程を有ることを特徴とする。
また、かかる目的を達成するために、本発明の魚由来のコラーゲンペプチドの抽出方法は、魚由来の原料である秋刀魚の鱗を、Cu/Kα線をX線源としたX線回折法において得られるヒドロキシアパタイト結晶のミラー指数(002)の回折強度が粉砕前を基準とした減少率が13.4%〜37.2%の範囲に収まるように、コンバージミルの原理を利用した高速粉体反応装置を用いて微粉砕をする原料微粉砕工程と、30℃〜70℃の温度の水中において前記微粉砕した魚由来の原料からコラーゲンタンパク質を抽出する処理及び抽出されたコラーゲンタンパク質をタンパク質分解酵素によってコラーゲンペプチドに加水分解する処理を一の工程として行うコラーゲンペプチド抽出工程とを有することを特徴とする。
発明者は、魚由来の原料に対して、十分なメカノケミカル効果が与えられるように粉砕処理が実行されることにより、コラーゲンの抽出率を向上させうることを知見した。ここで「メカノケミカル効果」とは、粉砕過程で微粒子化した試料に機械的エネルギー(衝撃又は摩擦)を与えることにより、機械的エネルギーの一部が粒子内に蓄積され、結晶構造の歪み又は化学結合の切断等を引き起こす効果である。
また発明者は、メカノケミカル効果が発生する程度と、X線回折法によって測定できる魚由来の原料に含まれるヒドロキシアパタイト結晶のc軸に属する回折強度の減少の程度とが比例関係にあることを知見した。
具体的には、発明者は、魚由来の原料は、六方晶系に属するイオン結晶であるヒドロキシアパタイトと、当該結晶のc軸に沿って整列したコラーゲン繊維とからなるために機械的強度に優れた構造をしているのに対して、当該原料に与えられるメカノケミカル効果がが高くなるほど、当該結晶のc軸に属するミラー指数(002)におけるX線回折法によって得られる回折強度が、粉砕前の回折強度と比較して低くなることを知見した。
この知見に基づくことにより、前記c軸に属するミラー指数(002)における回折強度が粉砕前の回折強度と比較して所定の割合以上減少するように原料を微粉砕する処理を実行しうる。
前記所定割合の下限値は、本来、工業上の要請としてコラーゲンペプチドの回収率は75%以上必要とされていることから、この75%を超えるように設定する。
一方、コラーゲンペプチドの回収率はほぼ100%(95%〜98%)に到達する程度に微粉砕する処理を実行すれば十分であり、それ以上に回収率を上昇させるために処理工程を追加又は継続して実行することは、却って工業上の作業効率の点から無駄が生じる結果となる。したがって、前記所定範囲の上限値は、コラーゲンペプチドの回収率が95%を超えないように、前記回折強度の減少率に対するコラーゲンペプチドの回収率の比率の増加を0.34以上に維持しうるように設定する。
なお、このコラーゲンペプチドの回収率は、原料に含まれるコラーゲンペプチドを100としたときの、回収したコラーゲンペプチドの質量の相対的割合を意味する。
そして、前記微粉砕処理を実行した後、コラーゲンタンパク質を抽出する処理と抽出されたコラーゲンタンパク質をタンパク質分解酵素によってコラーゲンペプチドに加水分解する処理が実行される。
前記微粉砕処理を実行により、十分なメカノケミカル効果が与えられた魚由来の原料は、酵素活性が維持される30℃〜70℃の温度の水中でコラーゲンの可溶化、抽出化が実行することができる。したがって、従来別工程で行なわれていた前記コラーゲンタンパク質を抽出する処理及び前記加水分解処理を同時に行なうことができるとともに、前記抽出する工程と前記加水分解処理工程の間に、冷却工程を省略することができる。
しかも、この粉砕処理によれば、嵩が従来と比較して著しく低いので、前記コラーゲンタンパク質を抽出する処理及び前記加水分解処理に際して、一度により多量の粉砕原料を対象としてコラーゲンペプチドの抽出をすることができる。
この結果、本発明の魚由来のコラーゲンペプチドの抽出方法によれば、処理時間の短縮しつつ、コラーゲンペプチドを効率よく高回収率で回収することができる。
なお、前記コラーゲンペプチドの回収率は、単位質量あたりの魚鱗から回収可能なコラーゲンペプチドの最大値が、回収率100%として定義される。この最大値は実験により定められる。たとえば、コンバージミルで魚鱗を粉砕処理する継続時間を延ばしても、回収率が向上しなくなったときの値が当該最大値として定められる。
秋刀魚の鱗を試料とする実施例3〜5及び比較例2のX線回折測定で得られた回折パターンを示す図。 鰯の鱗を試料とする実施例1、2及び比較例1のX線回折測定で得られたミラー指数(002)の回折強度の減少率とコラーゲンペプチドの抽出率との関係説明図。 秋刀魚の鱗を試料とする実施例3〜5及び比較例2のX線回折測定で得られたミラー指数(002)の回折強度の減少率とコラーゲンペプチドの抽出率との関係説明図。
次に、本発明の実施の形態について図を用いて、さらに詳しく説明する。
図1は、X線回折法によって測定した、秋刀魚由来の原料に含まれるヒドロキシアパタイト結晶のc軸に属する回折強度を示すグラフである。図1(a)は、粉砕処理として、カッターミルによる一次粉砕のみをした場合の回折強度のグラフである。図1(b)は、前記一次粉砕に加え、後述のコンバージミルによって20分の微粉砕処理を実行した場合の回折強度のグラフである。図1(c)は、同様に40分の微粉砕処理を実行した場合の回折強度のグラフである。図1(d)は、同様に60分の微粉砕処理を実行した場合の回折強度のグラフである。
この図1(a)乃至図1(c)から明らかなように、コンバージミルによる微粉砕処理の実行時間が長くなり、原料に与えられるメカノケミカル効果が高くなるほど、当該結晶のc軸に属するミラー指数(002)における回折強度が、粉砕前の回折強度と比較して低くなることがわかる。
また、図1(c)及び図1(d)から明らかなように、回折強度の減少率は、所定の程度まで達すると、それ以上時間を掛けて微粉砕処理を継続しても、回折強度の減少率はほとんど変化しないということがわかる。
本実施形態は、これらの実験結果に基づいて、前記c軸に属するミラー指数(002)における回折強度の粉砕前の回折強度を基準とした減少率が、所定範囲に収まるように原料を微粉砕する処理を実行するものである。
本実施形態における魚由来のコラーゲンペプチドの抽出方法で用いられる魚由来の原料の種類は、特に限定されず、例えば平目、鮭、鱸、鰯、秋刀魚、真鯛などの魚類である。前記知見された傾向は、いずれの魚類であっても同様に示される。また、魚由来の原料であれば、魚皮であってもよいが、魚鱗が比較的魚臭さが少ないことから好ましい。
本実施形態の魚由来の原料の微粉砕工程においては、あらかじめ洗浄して不純物を除去した未脱灰の魚由来の原料をカッターミルで90秒程度一次粉砕した後、微粉砕手段によって、X線回折法によって得られたヒドロキシアパタイト結晶のミラー指数(002)における回折強度が粉砕前の回折強度と比較して13.4%〜37.2%減少するように微粉砕する。
前記微粉砕手段は、特に限定されないが、複数個の粉砕媒体ボールと粉体とを収納した処理容器の回転により、該粉体を微粒子化する高速粉体反応装置が好ましく用いられ、特に特許第3486682号又は特許第3533526号に開示されているコンバージミルの原理を利用した高速粉体反応装置を用いるのが好ましい。
この高速粉体反応装置は、粉砕用容器や粉砕用ボールの衝突による磨耗分の混入を軽減でき、スケールアップも容易であるので、本実施形態の微粉砕手段として好ましい。但し、前記高速粉体反応装置の規模、性能により、前記所定の回折強度の減少率(13.4%〜37.2%)になるのに必要な粉砕処理の実行時間は異なるため、予め実験で当該装置の運転時間と減少率との関係を求めておくことが好ましい。
本実施形態のコラーゲンペプチド抽出工程では、前記微粉砕した魚由来の原料からコラーゲンタンパク質を抽出する処理と抽出されたコラーゲンタンパク質をタンパク質分解酵素によってコラーゲンペプチドに加水分解する処理とを一の工程として行う。
まず、前記コラーゲンタンパク質を抽出する処理として、前記微粉砕した魚由来の原料を水中に浸漬する。これにより、魚由来の原料のコラーゲンタンパク質の大半がゼラチン化して水に溶出するので、後述のタンパク質分解酵素による加水分解を行いうる。このコラーゲンタンパク質を短時間でゼラチン化して水に溶出させるためには、水温が30℃以上であることが好ましい。一方で、前記水温が70℃を超えてしまうと、後述のタンパク質を加水分解する酵素が活性を失ってしまうため、60℃以下であることが好ましい。
次に、前記コラーゲンタンパク質を加水分解する処理は、前記水に溶出したコラーゲンタンパク質をタンパク質分解酵素によって、加水分解することにより行われる。本加水分解処理は、水に可溶化したコラーゲン(ゼラチン)のみならず、上記温度条件で可溶化できないコラーゲンにも作用することができるため、さらにコラーゲンペプチドの回収率を上げることができる。
本実施形態に用いられるタンパク質分解酵素は、化学的な脱灰処理なしに、コラーゲンタンパク質を加水分解することができるものであれば特に制限されない。例えば、天野エンザイム株式会社製「プロテアーゼNアマノG(商標)」、「プロレザーFG−F(商標)」やナガセケムテックス株式会社製「デナプシン2P(商標)」など、食品に使用できるものが好ましい。なお、これらの酵素を変性させ活性を失わせることは、沸騰水浴下(95℃)で10分間加熱処理することにより行なうことができる。
本実施形態の魚由来のコラーゲンペプチドの抽出方法によって得られたコラーゲンペプチドは、公知の手段によって更に濃縮・精製することができる。例えば、濃縮には遠心濃縮や凍結乾燥など、精製には活性炭や合成吸着樹脂などを挙げることができる。なお、活性炭による精製の場合、補助剤(例えば、珪藻土(ダイアトマイト))とともに用いることが好ましい。
本実施形態の魚由来のコラーゲンペプチドの抽出方法によれば、X線回折法によって魚由来の原料に含まれるヒドロキシアパタイト結晶のミラー指数(002)における回折強度を測定し、微粉砕前の回折強度を基準とした回折強度の減少率を把握することにより、メカノケミカル効果の発生の程度を認識することができる。そして、メカノケミカル効果の発生の程度により、コラーゲンペプチドの回収率が変化することから、工業上効率的にコラーゲンペプチドの回収率が達成できる程度のメカノケミカル効果が発生させるために、必要最小限の前記微粉砕処理をすべき程度を認識することができる。
また、メカノケミカル効果が与えられるように微粉砕処理された魚由来の原料は、30℃〜60℃という酵素が活性を失わない温度域でコラーゲンの可溶化及び高抽出化が実現できるため、従来別工程で行なわれていた加熱によるコラーゲンタンパク質抽出処理と酵素による加水分解処理を同時に行なうことができる。
しかも、この微粉砕処理によれば、発生する嵩が従来の粉砕処理で発生する嵩と比較して著しく少ないので、前記コラーゲンタンパク質を抽出する処理及び前記加水分解処理に際して、一度により多量の粉砕原料を対象としてコラーゲンの抽出をすることができる。
この結果、本実施形態の魚由来のコラーゲンペプチドの抽出方法によれば、処理時間の短縮しつつ、コラーゲンペプチドを効率よく高回収率で回収することができる。
[鰯を原料とした実験例]
<実施例1>
(鱗の採取、洗浄、脱脂、乾燥)
鮮度低下を防ぐため−35度で凍結保存しておいた鰯の鱗に対し、水道水で十分洗浄処理を施した。この洗浄済みの鱗にアセトンを添加し脱脂処理を行ない、これを数回繰り返した。さらに、この鰯の鱗をドラフト内で自然乾燥後、シリカゲル入りのデシケーター内で2〜3日間乾燥させ、洗浄乾燥鱗を得た。
(鱗の一次粉砕)
前記洗浄乾燥鱗を、室温20〜25℃でPower grinder(カッターミル、Master社製)を回転数30000rpmで90秒の粉砕処理を行った。
(鱗の二次粉砕)
前記粗粉砕鱗を、特許第3486682号及び特許第3533526号に記載されたコンバージミルの原理を利用した高速粉体反応装置(株式会社真壁技研社製)を用いて微粉砕した。具体的には、上記高速粉体反応装置のジルコニア製粉砕容器(1000ml)に、原料粉として粗粉砕鱗30gと、媒体ボールとして直径10mmのジルコニアボール271g(80ml)とを投入し、空気雰囲気下、回転数700rpmにて60分の粉砕処理を行った。
これにより、得られた微粉砕鱗の平均粒子径は36μmであった。また、X線回折法によるヒドロキシアパタイト結晶のミラー指数(002)に帰属する回折強度は、粉砕前の回折強度と比較すると35.8%減少した。
(抽出・加水分解)
上記の微粉砕鱗を0.1g秤量し、これに蒸留水10mlと14mg/mlに調製したプロテアーゼ(天野エンザイム(株)製プロレザー(商標)FG−F)を0.1ml加え、酵素製剤終濃度約140μg/mlとし、当該液体を60℃に保ち、60分攪拌混合して加水分解した。
(固液分離)
加水分解後の懸濁液を12000×g、20分の条件で遠心分離を行ない、コラーゲンペプチドを含む上清液を回収した。
(酵素の変性)
沸騰水浴下で10分間加熱することで酵素の失活・変性処理を行なった。
(変性酵素の除去)
固液分離と同条件で遠心分離を行ない、変性酵素を除去し上清液(コラーゲンペプチド)を得た。
上記溶液のコラーゲンペプチド濃度はウシ血清アルブミンを標準タンパク質とするLowry法(非特許文献:Lowryら (1951) J. Biol. Chem. 192巻, p263−275)により定量することで求めた。得られた濃度に酵素の変性処理後の液量を乗じてコラーゲンペプチド量を算出した。なお、上記固液分離操作前に酵素の変性処理を施せば、固液分離の際ヒドロキシアパタイトと変性酵素の除去を同時に行なうことができるが、本実施例では抽出・加水分解工程で得られるコラーゲンペプチド量を純粋に評価するため、上記手順に従って処理を行なった。
(X線回折強度の測定)
X線回折強度の測定に用いた魚鱗粉末試料は、タンパク質が共存すると回折強度のベースラインが大きく乱れるため、これを回避するため十分に除タンパクされたものを使用した。具体的には、魚鱗粉末試料に対して、特開2004‐57196の実施例1と同様の操作を施し、得られる残渣(ヒドロキシアパタイト)を洗浄・乾燥して測定用試料を得た。X線回折強度の測定には日本電子株式会社製のJDX−3530を用い、X線源:Cu/Kα線、管電圧:30kV、管電流:30mA、測定範囲:2θ=70°まで、X線のスキャンスピード:0.04°×0.5secの条件で測定した。
(コラーゲンペプチドの回収率)
ヒドロキシアパタイト結晶のミラー指数(002)における粉砕前の回折強度からの回折強度の減少率とコラーゲンペプチドの回収率の結果は、図2(a)に示された表1の実施例1の欄に示した。なお、実施例1におけるコラーゲンペプチドの回収率は、97.8%であった。
なお、前記コラーゲンペプチドの回収率は、単位質量あたりの魚鱗から回収可能なコラーゲンペプチドの最大値が、回収率100%として定義される。この最大値は実験により定められる。たとえば、コンバージミルで魚鱗を粉砕処理する継続時間を延ばしても、回収率が向上しなくなったときの値が当該最大値として定められる。なお、コラーゲンペプチドの回収率が向上しなくなった状態では、ミラー指数(002)の回折強度の減少率も40%以上には向上しなくなった。このことから、回折強度の減少率は40%が上限であり、減少率が40%に到達すれば、コラーゲンペプチドの回収率は100%となることが推測される。
<実施例2>
二次粉砕の時間を180分に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
ヒドロキシアパタイト結晶のミラー指数(002)における粉砕前の回折強度からの回折強度の減少率とコラーゲンペプチドの回収率の結果は、図2(a)に示された表1の実施例2の欄に示した。なお、実施例2におけるコラーゲンペプチドの回収率は、99.8%であった。
<比較例1>
二次粉砕を行わなかった以外は、実施例1と同様の操作を行った。
ヒドロキシアパタイト結晶のミラー指数(002)における粉砕前の回折強度からの回折強度の減少率とコラーゲンペプチドの回収率の結果は、図2(a)に示された表1の比較例1欄に示した。なお、比較例1におけるコラーゲンペプチドの回収率は、60.3%であった。
<考察>
鰯の魚鱗を試料に用いた実施例1、2及び比較例1のヒドロキシアパタイト結晶のミラー指数(002)における回折強度の減少率とコラーゲンペプチドの回収率の関係を図2(b)に示した。なお、回折強度の減少率は、比較例1の回折強度を基準として各実験例の回折強度の減少の割合を算出することによって求めた。
図2(b)によれば、鰯を原料とした実験より求めた前記回折強度の減少率とコラーゲンペプチドの回収率との近似曲線として、近似式(1)が算出される。
上述のとおり、本来、工業上の要請としてコラーゲンペプチドの回収率は75%以上必要とされている。そのため、当該近似式(1)に基づいて計算すると、前記回折強度の減少率が3.82%以上であれば、コラーゲンペプチドの回収率は75%を超えることがわかる。
また、コラーゲンペプチドの回収率はほぼ100%(95%〜98%)に到達する程度に微粉砕する処理を実行すれば十分であり、それ以上に回収率を上昇させるために処理工程を追加又は継続して実行することは、却って工業上の作業効率の点から好ましくない。
そのため、当該式(1)に基づいて計算すると、前記回折強度の減少率が13.7%以下であれば、コラーゲンペプチドの回収率を95%以内に調整でき、工業上の作業効率の観点から好ましくない余分な微粉砕処理を回避しうることがわかる。なお、前記回折強度の減少率が13.7%であるときのコラーゲンペプチドの回収率の比率の増加の割合、すなわち、前記回折強度の減少率が13.7%であるときの近似式(1)の接線の傾きは、0.81であることがわかる。
[秋刀魚を原料とした実験例]
<実施例3>
試料を鰯の鱗から秋刀魚の魚鱗に変更した。また、二次粉砕としてコンバージミルを用いて20分間微粉砕した。それ以外の操作は実施例1と同様に行った。
ヒドロキシアパタイト結晶のミラー指数(002)における粉砕前の回折強度からの回折強度の減少率とコラーゲンペプチドの回収率の結果は、図3(a)に示された表2の実施例3の欄に示した。なお、実施例3におけるコラーゲンペプチドの回収率は、80.3%であった。
<実施例4>
二次粉砕の時間を40分とした以外は、実施例3と同様の操作を行った。
ヒドロキシアパタイト結晶のミラー指数(002)における粉砕前の回折強度からの回折強度の減少率とコラーゲンペプチドの回収率の結果は、図3(a)に示された表2の実施例4の欄に示した。なお、実施例4におけるコラーゲンペプチドの回収率は、92.9%であった。
<実施例5>
二次粉砕の時間を60分とした以外は、実施例6と同様の操作を行った。
ヒドロキシアパタイト結晶のミラー指数(002)における粉砕前の回折強度からの回折強度の減少率とコラーゲンペプチドの回収率の結果は、図3(a)に示された表2の実施例5の欄に示した。なお、実施例5におけるコラーゲンペプチドの回収率は、99.9%であった。
<比較例2>
二次粉砕を行わなかった以外は、実施例3と同様の操作を行った。
ヒドロキシアパタイト結晶のミラー指数(002)における粉砕前の回折強度からの回折強度の減少率とコラーゲンペプチドの回収率の結果は、図3(a)に示された表2の比較例2欄に示した。なお、比較例2におけるコラーゲンペプチドの回収率は、37.9%であった。
<考察>
秋刀魚の魚鱗を試料に用いた実施例3〜5及び比較例2のヒドロキシアパタイト結晶のミラー指数(002)における回折強度の減少率とコラーゲンペプチドの回収率の関係を図3(b)に示した。なお、回折強度の減少率は、比較例2の回折強度を基準として各実験例の回折強度の減少の割合を算出することによって求めた。
図3(b)によれば、秋刀魚を原料とした実験より求めた前記回折強度の減少率とコラーゲンペプチドの回収率との近似曲線として、近似式(2)が算出される。
そして、同様に近似式(2)に基づいて計算すると、前記回折強度の減少率が13.4%以上であれば、コラーゲンペプチドの回収率は75%を超えることがわかる。
また、当該式(2)に基づいて計算すると、前記回折強度の減少率が37.2%以下であれば、コラーゲンペプチドの回収率を95%以内に調整できることがわかる。なお、前記回折強度の減少率が37.2%であるときのコラーゲンペプチドの回収率の比率の増加の割合、すなわち、前記回折強度の減少率が37.2%であるときの近似式(2)の接線の傾きは、0.34であることがわかる。
<結果>
図2(b)及び図3(b)によれば、一次粉砕後の魚鱗にメカノケミカル効果を付与できる粉砕機により二次粉砕すると、鰯及び秋刀魚の両魚鱗とも粉砕処理時間の経過とともにヒドロキシアパタイト結晶のミラー指数(002)における回折強度の減少率が増加することがわかる。
また、図2(b)及び図3(b)によれば、回折強度の減少率は、所定の程度まで達すると、それ以上時間を掛けて微粉砕処理を継続しても、回折強度の減少率はほとんど変化しないということがわかる。
この結果、前記回折強度の減少率が所定範囲(例えば鰯であれば、3.82%〜13.7%、例えば秋刀魚であれば、13.4%〜37.2%)に収まるように微粉砕処理を実行する魚由来のコラーゲンペプチドの抽出方法によれば、処理時間の短縮しつつ、コラーゲンペプチドを効率よく高回収率で回収することができることが明らかとなった。

Claims (2)

  1. 魚由来の原料である鰯の鱗を、Cu/Kα線をX線源としたX線回折法において得られるヒドロキシアパタイト結晶のミラー指数(002)の回折強度が粉砕前を基準とした減少率が3.82%〜13.7%の範囲に収まるように、コンバージミルの原理を利用した高速粉体反応装置を用いて微粉砕する原料微粉砕工程と、
    30℃〜70℃の温度の水中において前記微粉砕した魚由来の原料からコラーゲンタンパク質を抽出する処理及び抽出されたコラーゲンタンパク質をタンパク質分解酵素によってコラーゲンペプチドに加水分解する処理を一の工程として行うコラーゲンペプチド抽出工程を有ることを特徴とする魚由来のコラーゲンペプチドの抽出方法。
  2. 魚由来の原料である秋刀魚の鱗を、Cu/Kα線をX線源としたX線回折法において得られるヒドロキシアパタイト結晶のミラー指数(002)の回折強度が粉砕前を基準とした減少率が13.4%〜37.2%の範囲に収まるように、コンバージミルの原理を利用した高速粉体反応装置を用いて微粉砕する原料微粉砕工程と、
    30℃〜70℃の温度の水中において前記微粉砕した魚由来の原料からコラーゲンタンパク質を抽出する処理及び抽出されたコラーゲンタンパク質をタンパク質分解酵素によってコラーゲンペプチドに加水分解する処理を一の工程として行うコラーゲンペプチド抽出工程を有ることを特徴とする魚由来のコラーゲンペプチドの抽出方法。
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