JP4398041B2 - 自動車用アームレスト及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車ドアの内側或いは座席と座席の間に形成される自動車用アームレスト及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種自動車用アームレストにあっては、硬質樹脂よりなるコアと、このコアを被覆する軟質弾性樹脂よりなる表皮層にて構成されることが多く、表皮層の弾性にて乗員の肘、腕をクッション性をもって支えるのである。かかる構造は、例えば特開平9−277863号公報に開示されており、アームレスト表皮を軟質PVC樹脂の射出成形体にて構成し、この裏面にスペーサリブを一体形成し、これをアームレストコアに手作業にて被覆一体化する旨記載がなされている。スペーサリブは、アームレストに良好な衝撃吸収機能を付与するために設けられるものである。すなわち、軟質表皮とコアとの間に空間が形成され、アームレスト表皮の裏面に形成されたスペーサリブの先端をアームレストコアに接触させて、表皮表面の形状を維持するとともに、衝撃の加わったときリブの変形により、大きな衝撃吸収機能が得られるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報に開示の構造は、アームレスト表皮とアームレストコアの間に空間が形成され、この空間をスペーサリブにて維持する構造であるから、表皮とコアを同時に成形することができない。上記構造にあっては、表皮及びコアは別々に成形され、手作業で結合されるのである。それ故、組立作業に時間がかかり、またその作業も面倒なものであるという問題がある。
【0004】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、前述の衝撃吸収機能を生じる空間及び突起(リブ)を有し、かつ、硬質樹脂よりなるコアと軟質弾性樹脂よりなる表皮層との一体成形が可能な自動車用アームレスト及びその製造方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明(請求項1)は、硬質樹脂材料よりなるコアと、該コアを被覆して形成された軟質弾性樹脂材料よりなる表皮層とを備えてドア内側パネル又はアームレストの設置面に載置固定されるとともに、上記設置面の平坦面に対応して上記表皮層に設けられて乗員の肘、腕を支える平坦な肘掛け部を有してなる自動車用アームレストにおいて、上記コアの上記肘掛け部対応部位に開口が形成されるとともに、該開口を被覆する上記表皮層の裏面であって上記開口対応部位に上記設置面の平坦面に直接接する複数の突起が一体形成されてなるものである。
【0006】
かかる構成において、アームレストはドア内側パネル等に固定される。アームレストの表皮層に形成された突起は、ドア内側パネル等の平坦面に直接接する。表皮層に加わる外力は、その軟質弾性及び突起の変形により吸収される。
【0007】
本発明(請求項2)に係る自動車用アームレストにあっては、上記突起が、上記開口周辺部に形成される複数の衝立状の第1突起と、該第1突起の内側に複数形成された円柱状の第2突起よりなるものである。かかる構成において、軟質弾性樹脂材料よりなる表皮層の第1突起は、第2突起より変形に対する力が大きく、表皮層のコア開口境界での変形が防止される。
【0008】
本発明(請求項3)に係る自動車用アームレストの製造方法は、請求項1又は請求項2記載の自動車用アームレストを製造する自動車用アームレストの製造方法であって、上記コアを成形する金型Aと金型Bのうち金型Aには、コアの裏面形状に対応する成形面を有するとともに、コアの開口に対応する成形面には表皮層側の突起を成形するための凹部が形成され、該凹部が形成された部分が上記金型Bにより密閉される形状を有することによって上記凹部には溶融した樹脂材料が流れ込まないように構成して、硬質樹脂材料よりなるコアを射出成形法にて成形する工程、金型Aのキャビティ内に上記コアを装着した状態で金型Bを表皮層の表面側形状に対応した成形面を有する金型Cに交換して、軟質弾性樹脂材料の射出成形法により上記コアを被覆する表皮層を成形し、両者を一体化する工程とを有するものである。かかる構成において、表皮層は、その成形と同時にコアに被着される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1〜図7において、1は自動車のドア内側パネル2に設けられたドアトリムで、これには乗員が腕や肘を掛けてくつろいだ姿勢をとれるようになるアームレスト3が付設形成され、かつアームレスト3にはドア4を内側から開閉するときに、乗員の手先が入るポケット部5が備わっている構造となっている。
【0011】
そして、アームレスト3は、図2〜図7に示すように、ポリプロピレン(PP)等の硬質樹脂よりなるコア6と、このコア6を被覆する軟質のポリ塩化ビニル(PVC)樹脂等よりなる表皮層7とにて構成されている。コア6を上記表皮層7で覆うことにより、乗員が肘を掛けたときの感触が柔らかくクッション性のある肘掛け部8が形成される。
【0012】
ドアトリム1は、図1,図6等に示すように、上面が車内側へ水平に突出し、その下方部がドア4の前後方向にかけて舟形状に突出する膨出部9を、ドア内側パネル2に一体形成することで成っている。
【0013】
上記膨出部9の上面を形成するドア内側パネル2の平坦面10は、アームレスト3が載置固定される設置面となるもので、またこの平坦面10の前側には、図5,図7に示すように、上記アームレスト3に設けられているポケット部5を組み入れるための挿入口11が開穿されている。
【0014】
図4は、コア6の外観を示す斜視図で、いくらか上方に膨らんで曲がった所要形状のコア上面12を有すとともに、そのコア上面12のうち、上記肘掛け部8に対応する部位には開口13が形成されている。また上記開口13の前側に隣接して、コア上面12に開口し下方に窪んだポケット部5が一体に形成されている。14,15は、コア6を上記ドア内側パネル2の平坦面10に載置固定する複数個の係止片で、コア上面12の周辺部から下向きに突設形成されている。これら係止片14,15のうち、長手方向の左右側縁に設けられる係止片14には、下端に爪部14aが形成されている。また、図5に示すように、ポケット部5のコア底部裏面には、ドア内側パネル2の膨出部9内に別途設けた水平な固定壁9aの固定孔9bに挿入され、取り付け金具16で抜け止め固定される固定用突片17が垂設形成されている。
【0015】
上記コア6の上面12に被着される表皮層7は、図5〜図7に示すように、コア6の上面12を一様に覆うように、後述する成形法によって、コア6と一体化されて被着形成される。
【0016】
ここで、表皮層7はコア6のポケット部5部分に内側から被着して、ポケット口を存在させる一方、コア6の上記開口13を塞ぐように形成される。そして、コア6の上記開口13に対応する表皮層7の裏面には、図3,図6及び図7に示すように、複数の突起18が一体形成されている。
【0017】
上記突起18には2種類の形の突起があり、1つは、開口13の周辺部にほぼ等間隔に形成された複数の衝立状の第1突起18aであり、もう1つは上記第1突起18aの内側にほぼ等間隔に複数形成された円柱状の第2突起18bである。このような突起18を表皮層7の裏側に設けることにより、コア6の開口13を覆う表皮層7のその対応部位(肘掛け部8)の補強がなされるとともに、衝立状の第1突起18aは、円柱状の第2突起18bより変形に対する力が大きく、表皮層7のコア開口13境界での変形が防止される。
【0018】
したがって、コア6は開口13が形成されることで軽くなり、その分強度の弱まる弱点は、裏面に多数の突起18を設けた構造の表皮層7で、補われることとなる。
【0019】
次に、コア6に表皮層7を一体化形成する方法について説明する。図8はその成形方法を示している。
【0020】
本実施形態の成形方法は、前述したポリプロピレン(PP)等の硬質樹脂材料よりなるコア6を射出成形法にて成形する図8(a)図示の一次成形工程と、金型Aのキャビティ内に上記コア6を装着した状態で軟質のポリ塩化ビニル(PVC)樹脂等よりなる軟質弾性樹脂材料の射出成形法により上記コア6を被覆する表皮層7を成形し、両者を一体化する図8(b)図示の二次成形工程とから成る。
【0021】
すなわち、図8(a)に示すように、コア6を成形する金型Aと金型Bのうち金型Aには、コア6の裏面形状に対応する成形面を有するとともに、コア6の開口13に対応する成形面には表皮層7側の第1突起18a,第2突起18bを成形するための凹部19a,19bが形成されており、一次成形時には上記凹部19a,19bには溶融した樹脂材料が流れ込まないように構成されている。なお、20a,20bは、コア6の係止片14に爪部14aを型抜き可能に形成するためのスライドコアである。上記構成により、一次成形時には、金型Aと金型Bにてコア6が成形される。
【0022】
そして、二次成形時には、図8(b)に示すように金型Aのキャビティ内にコア6を取り付けたまま、上記一次成形時に用いた金型Bを表皮層7の表面側形状に対応した成形面を有する金型Cに交換し、金型Aと金型Cにて、表皮層7を成形すると同時に表皮層7とコア6と一体化させる。以上により、コア6と表皮層7が一体化したアームレスト3が形成される。
【0023】
ここで、上述してきた実施形態の作用効果を、実施した具体的な数値で示すと、従来の表皮層とコアを手作業で組み立てた場合、約2分かかったが、本実施形態で、この時間はゼロであり、作業時間がその分短縮できる。
【0024】
また、アームレスト3が載置固定されるドア内側パネル2の平坦面10は、パネル2の剛性を維持する必要があることから、コア6に設けられるような大きな開口13は形成することができない。したがって、従来構造(表皮層とコアの間に空間を設け、かつリブを形成した構造)では、パネルに多数の小孔を形成して、剛性を維持しつつ軽量化を図ったものでも、アームレスト(表皮層+コア)の重量は重くなる。具体的数値で示すと、従来構造で302gなのに対して、本発明構造では、コア6側に大きな開口13を形成することができるから、更なる軽量化が図れ、本実施形態では261gとすることができた。
【0025】
ところで、上記実施形態では本発明をドアトリム1に設けられるアームレスト3に適用した場合について説明したが、図9に示すような座席と座席の間に備えられるコンソールボックス31の蓋上面に備えられるアームレスト32にも適用できる。
【0026】
従来、この部分は図15に示すように構成されている。すなわち、コンソールボックス31の上面に凹設される小物入れ33の蓋部材34に対応して形成された硬質樹脂よりなるコア35と、このコア35を被覆する軟質弾性樹脂よりなる表皮層36にてアームレスト32が構成されている。
【0027】
上記アームレスト32は、蓋部材34の上にビス止め等により固定されるとともに、前部側(図15の右側)の蓋部材34とコア35との間にバネ37で内側に付勢されるクランプ38が設けられて、後部側(図15の左側)をヒンジ39で小物入れ33後部側のパネル40上面に開閉自在に取り付けられる。小物入れ33前部側のパネル40上面には、上記クランプ38の爪部38aが引っかかる係止孔41が設けられており、クランプ38のレバー38bを上方に操作することにより開閉できるように構成されている。
【0028】
上記アームレスト32の表皮層36は軟質PVC樹脂の射出成形体にて構成され、この裏面にスペーサリブ42を一体形成し、これをアームレストコア35に手作業にて被覆一体化されている。したがって、上記従来技術で述べたのと同様の問題が生じる。
【0029】
図10〜図14は上記のようなコンソールボックス31のアームレスト32に本発明を適用した実施形態を示す図であり、上記図15と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0030】
このアームレスト32も上記実施形態と同様に、ポリプロピレン(PP)等の硬質樹脂よりなるコア46と、このコア46を被覆する軟質のポリ塩化ビニル(PVC)樹脂等よりなる表皮層47とにて構成されている。コア46を上記表皮層47で覆うことにより、表皮層47のほぼ全面に、乗員が肘を掛けたときの感触が柔らかくクッション性のある肘掛け部48が形成される。
【0031】
上記コア46には、図13に示すように、その上面52のうち周辺部を除くほぼ全面,すなわち上記肘掛け部48に対応する部位に開口53が形成されている。上記コア46の上面52に被着される表皮層47は、図10〜図12に示すように、コア46の上面52をほぼ一様に覆うように、前述したとほぼ同様の成形法によって、コア46と一体化されて被着形成される。また、コア46の開口53に対応する表皮層47の裏面には、複数の突起58が一体形成されている。
【0032】
上記実施形態同様、上記突起58には2種類の形の突起があり、1つは、開口53の周辺部にほぼ等間隔に形成された複数の衝立状の第1突起58aであり、もう1つは上記第1突起58aの内側にほぼ等間隔に複数形成された円柱状の第2突起58bである。このような突起58を表皮層47の裏側に設けることにより、コア46の開口53を覆う表皮層47のその対応部位(肘掛け部48)の補強がなされとともに、第1突起58aは、第2突起58bより変形に対する力が大きく、表皮層47のコア開口53境界での変形が防止される。
【0033】
すなわち、コア46は開口53が形成されることで軽くなり、その分強度の弱まる弱点は、裏面に多数の突起58を設けた構造の表皮層47で、補われることとなる。
【0034】
上記のように構成されたアームレスト32は、図14に示すように上面が平坦面50となった蓋部材34の上に、従来と同様に、ビス61により固定される。この際、図13に示すように、コア46の前部側裏面に取付ピン62に捻りバネ37を装着してクランプ38が取り付けられる。なお、63は、アームレスト32が取り付けられた蓋部材34の最大開放角度を決定するストッパーである。
【0035】
以上のように、本発明をコンソールボックス31の蓋部材34上面に取り付けられるアームレスト32に適用しても、上記実施形態と同様な作用効果が得られる。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、アームレストの表皮層に、優れた衝撃緩衝機能が得られる複数の突起を形成し、かつこれをコアと一体成形することができるから、組立作業の簡略化及び作業時間の短縮化を図ることができる。さらに、本発明によれば、コアに開口が形成されることにより、ドアパネル側等の剛性を損なうことなく、コアの軽量化、したがってアームレストの重量の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかるアームレストが取り付けられたドアトリム部分を示す斜視図である。
【図2】上記アームレストを示す斜視図である。
【図3】上記図2のA方向(裏面)から見た図である。
【図4】上記アームレストを構成するコアの斜視図である。
【図5】上記図1のV−V断面図である。
【図6】同じく図1のVI−VI断面図である。
【図7】同じく図1のVII−VII断面図である。
【図8】本発明の成形方法を示す断面図で、(a)は一次成形時、(b)は二次成形時を示している。
【図9】本発明の他の実施形態にかかるアームレストが取り付けられるコンソールボックス部分を示す斜視図である。
【図10】上記図9のX−X断面図である。
【図11】同じく図9のXI−XI断面図である。
【図12】同じく図9のXII−XII断面図である。
【図13】上記実施形態のアームレスト部分の分解斜視図である。
【図14】上記アームレストが取り付けられる蓋部材の斜視図である。
【図15】コンソールボックスに取り付けられるアームレストの従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ドアトリム
2 ドア内側パネル
3,32 アームレスト
4 ドア
5 ポケット部
6,46 コア
7,47 表皮層
8,48 肘掛け部
9 膨出部
9a 固定壁
9b 固定孔
10,50 平坦面
11 挿入口
12,52 コア上面
13,53 開口
14,15 係止片
14a 爪部
16 取り付け金具
17 固定用突片
18,58 突起
18a,58a 第1突起
18b,58b 第2突起
A,B,C 金型
19a,19b 凹部
20a,20b スライドコア
31 コンソールボックス
33 小物入れ
34 蓋部材
Claims (3)
- 硬質樹脂材料よりなるコアと、該コアを被覆して形成された軟質弾性樹脂材料よりなる表皮層とを備えてドア内側パネル又はアームレストの設置面に載置固定されるとともに、上記設置面の平坦面に対応して上記表皮層に設けられて乗員の肘、腕を支える平坦な肘掛け部を有してなる自動車用アームレストにおいて、
上記コアの上記肘掛け部対応部位に開口が形成されるとともに、該開口を被覆する上記表皮層の裏面であって上記開口対応部位に上記設置面の平坦面に直接接する複数の突起が一体形成されてなることを特徴とする自動車用アームレスト。 - 上記突起は、上記開口周辺部に形成された複数の衝立状の第1突起と、該第1突起の内側に複数形成された円柱状の第2突起よりなることを特徴とする請求項1記載の自動車用アームレスト。
- 請求項1又は請求項2記載の自動車用アームレストを製造する自動車用アームレストの製造方法であって、
上記コアを成形する金型Aと金型Bのうち金型Aには、コアの裏面形状に対応する成形面を有するとともに、コアの開口に対応する成形面には表皮層側の突起を成形するための凹部が形成され、該凹部が形成された部分が上記金型Bにより密閉される形状を有することによって上記凹部には溶融した樹脂材料が流れ込まないように構成して、硬質樹脂材料よりなるコアを射出成形法にて成形する工程、金型Aのキャビティ内に上記コアを装着した状態で金型Bを表皮層の表面側形状に対応した成形面を有する金型Cに交換して、軟質弾性樹脂材料の射出成形法により上記コアを被覆する表皮層を成形し、両者を一体化する工程とを有することを特徴とする自動車用アームレストの製造方法。
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