JP4397810B2 - 炭酸エステルの製造方法 - Google Patents

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属化合物と二酸化炭素を用いる炭酸エステルの製造方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、炭酸エステルの製造方法であって、(1)分子内に金属−酸素−炭素結合を少なくとも2つ有する反応性有機金属化合物と、該反応性有機金属化合物に由来する再生不能な非反応性化合物からなる有機金属化合物混合物と二酸化炭素とを反応させて、該反応で形成された炭酸エステルと、該再生不能な非反応性化合物と、該反応性有機金属化合物に由来する再生可能な変性有機金属化合物とを含有する反応混合物を得、(2)該反応混合物を、該炭酸エステルと該再生不能な非反応性化合物を含有する第1の部分と、該再生可能な変性有機金属化合物を含有する第2の部分とに分離し、そして(3)反応混合物の該第2の部分をアルコールと反応させて、分子内に金属−酸素−炭素結合を少なくとも2つ有する反応性有機金属化合物と、該反応性有機金属化合物に由来する再生不能な非反応性化合物からなる有機金属化合物混合物と水を形成し、そして該水を該有機金属化合物混合物から除去する、ことを特徴とする方法に関する。
本発明の方法によると、分子内に金属−酸素−炭素結合を少なくとも2つ有する反応性有機金属化合物と二酸化炭素から高い収率で炭酸エステルを製造することができる。二酸化炭素は、毒性や腐食性がなく廉価であり、また、本発明の方法では該有機金属化合物を再生・リサイクルして繰り返し使用できるうえに、生成する再生不能な非反応性有機金属化合物を系外へ除去できるため、効率的で安定した生産を実現できる。更に、廃棄物となる大量の脱水剤を用いる必要もないため、本発明の製造方法は産業上に大いに有用であり、商業的価値が高い。
【背景技術】
【0002】
炭酸エステルは、オクタン価向上のためのガソリン添加剤、排ガス中のパーティクルを減少させるためのディーゼル燃料添加剤等の添加剤として使われるほか、ポリカーボネートやウレタン、医薬・農薬等の有機化合物を合成する際のアルキル化剤、カルボニル化剤、溶剤等、あるいはリチウム電池の電解質、潤滑油原料、ボイラー配管の防錆用の脱酸素剤の原料として使われるなど、有用な化合物である。
【0003】
従来の炭酸エステルの製造方法としては、ホスゲンをカルボニルソースとしてアルコールと反応させる方法が挙げられる。この方法は、極めて有害で腐食性の高いホスゲンを用いるため、その輸送や貯蔵等の取り扱いに細心の注意が必要であり、製造設備の維持管理及び安全性の確保のために多大なコストがかかっていた。更にこの方法では、副生する塩酸により、廃棄物処理等の問題もあった。
この他に、一酸化炭素をカルボニルソースとして、塩化銅などの触媒を用いてアルコール及び酸素と反応させる酸化的カルボニル化法も知られている。この方法も、極めて有害な一酸化炭素を高圧で用いるために、製造設備の維持管理及び安全性の確保のため、多大なコストがかかっていた。更に、一酸化炭素が酸化されて二酸化炭素を生成するなどの副反応が起こる問題があった。このため、より安全かつ効率的に炭酸エステルを製造する方法の開発が望まれていた。
【0004】
上記したホスゲンや一酸化炭素を原料として用いる場合、原料そのもの、あるいは触媒中に塩素などのハロゲンが含まれており、得られる炭酸エステル中には、簡単な精製工程で取り除くことのできない微量のハロゲンが含まれる。ガソリン添加剤、軽油添加剤、電子材料などの用途にあっては、ハロゲンの混入は腐食の原因となる懸念も存在する。含まれるハロゲンを極微量にするためには徹底的な精製工程が必須となり、この点からも原料や触媒にハロゲンを含まない製造方法が望まれている。
【0005】
二酸化炭素をエチレンオキシドなどと反応させて環状炭酸エステルを合成し、更にメタノールと反応させて炭酸ジメチルを得る方法が実用化されている。この方法は、原料である二酸化炭素に有害性が少なく、塩酸などの腐食性物質を使用したり、発生することがほとんどないので、優れた方法であるが、副生するエチレングリコールなどの有効利用が課せられており、またエチレンオキシドの原料であるエチレンや、エチレンオキシドの安全な輸送は困難であるため、これらエチレンとエチレンオキシドの製造工程用プラントに隣接して炭酸エステル製造工程用プラントを立地しなければならないといった制限もある。
また、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物からなる触媒の存在下に、二酸化炭素をカルボニルソースとしてアルコールと平衡反応させて、炭酸エステルと水を形成させる炭酸エステルの製造方法は知られている。この平衡反応は下記の式(3)で表される。
【0006】
【化3】
Figure 0004397810
【0007】
この方法は、原料である二酸化炭素とアルコールが無害であるという点では理想的プロセスと言える。この方法の特徴は、生成物として炭酸エステルと水が同時に生成する平衡反応を利用することである。一酸化炭素を利用する酸化的カルボニル化法でも水が生成するが、該酸化的カルボニル化法は平衡反応ではない。二酸化炭素を原料とする平衡反応は、熱力学的に原料系に偏っているので、高収率で炭酸エステルを得るために、例えば、生成物の炭酸エステルと水を反応系外へ除去しなければならないという課題がある。更に、この水が触媒を分解して反応を阻害するなどの問題があり、触媒のターンオーバー数(再生・再利用回数)が2〜3程度にとどまっていた。水を除去してこの問題を解決するために種々の脱水剤の添加、使用方法が試みられてきた。
例えば、金属アルコキシドを触媒とし、アルコールと二酸化炭素を反応させる際に、脱水剤として高価な有機脱水剤であるジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等を大量に使用する方法[Collect.Czech.Chem.Commun.Vol.60,687−692(1995)]が提案されているが、この脱水剤は、再生されず、多量の廃棄物となる問題点がある。
【0008】
有機脱水剤として、カルボン酸オルトエステルを用いて炭酸エステルを製造する方法がある(日本国特開平11−35521号公報)。(この公報においては、「カルボン酸オルトエステルと二酸化炭素を反応させる」という記載や、「アセタールを二酸化炭素と反応させる」という記載があるが、最近の研究によると、実際の反応経路は、「アルコールと二酸化炭素を反応させて炭酸エステルと水を得て、更に、水とカルボン酸オルトエステルを反応させる」というものと理解されている。)この方法も、脱水剤が高価なカルボン酸オルトエステルであり、また、酢酸メチルが副生成物として発生することが知られており[化学装置Vol.41,No.2,52−54(1999)]、上記と同様の問題点がある。
【0009】
更に、有機脱水剤として、多量のアセタール化合物を使用する方法も提案されている(独国特許第4310109号明細書)し、金属アルコキシドまたはジブチル酸化スズを触媒としてアセタールと二酸化炭素を反応させていると記載された例もある(日本国特開2001−31629号公報)。(後者の公報における反応については、最近の研究によると、実際の反応経路は、「アルコールと二酸化炭素を反応させて炭酸エステルと水を得て、水とアセタールを反応させる」というものと理解されている。)しかし、これらの公報には、このアセタール化合物を効率よく、廃棄物を出さずに合成する方法は明示されておらず、また、アセタール化合物を脱水剤として使用すると、副生物としてケトン、アルデヒドなど、多量の廃棄物を発生させるという問題点がある。
【0010】
これら有機脱水剤を使う方法は、触媒のターンオーバー数の向上を効果としているが、有機脱水剤は、炭酸エステルの生成(及び水の副生)に伴って、炭酸エステルと化学量論量消費されるので、大量の有機脱水剤を消費している。したがって、脱水反応に伴って変性した大量の有機脱水剤の処理及び再生を別途おこなわなければならない。更に、大量の有機脱水剤を使うにも関わらず、触媒の失活の懸念も存在する。すなわち、上記の式(3)で表される平衡反応を用いる従来の炭酸エステル製造方法では、二酸化炭素が超臨界状態となるので、一般に触媒の溶解度は低く、触媒分子が集合しやすい。この際、殊に、多量化しやすい有機スズを触媒として用いた場合には、多量化によって触媒の失活を引き起こす問題点がある。
固体脱水剤を使用した方法(Applied Catalysis Vol.142,L1−L3(1996))も提案されているが、この脱水剤は再生ができず、多量の廃棄物となる問題点がある。
【0011】
また、金属酸化物(ジブチル酸化スズ)の存在下にアルコール(メタノール)及び二酸化炭素を反応させて得られた反応液を、固体脱水剤を詰めた充填塔へ冷却循環させ、脱水しながら徐々に平衡を炭酸エステル側にずらして炭酸エステルを得る方法を採用した例(日本国特開2001−247519号公報)も知られている。これは公知の脱水剤(例えばMolecular Sieves)の水吸着性能の公知の温度依存性と脱水剤を使用する公知技術とを組み合わせた方法である。Molecular Sieves等の固体脱水剤への水の吸着特性は高温では低いため、溶媒として使用される大過剰の低分子量アルコール中に含まれている、平衡によって生成した微量水分を吸着除去するためには、高温高圧条件で平衡状態となった反応液を冷却した後に、固体脱水剤を詰めた充填塔に循環させて脱水することが必要である。原料アルコールの転化率を高めるためには、冷却した脱水反応液を再度高温高圧に戻して反応させる必要があり、極めてエネルギー消費が大きく、また大量の固体脱水剤が必要とする問題点がある。この方法は、平衡定数の比較的大きな脂肪族エステル合成には極めて一般的に用いられる方法であるが、二酸化炭素とアルコールを原料とした炭酸エステルの製造方法においては、反応の平衡は大きく原料系に偏っており、上記したような極めてエネルギー消費の大きな工程を繰り返さなければならないといった問題点は重大である。また、水を吸着飽和した脱水剤を再度使用するためには通常、数百度で焼成することが必要であって、この点からも工業的に有利なプロセスとは言えない。また、この方法は、平衡関係にある生成物のうちの水のみを除去する方法であるため、原料アルコールの消費が進み、炭酸エステル濃度が高まれば、反応は進みにくくなるといった平衡反応の規制を依然として受けるといった問題点もある。更に、触媒として記載されているジブチル酸化スズのメタノールへの溶解度は極めて低く、ほとんどが固体状態で存在する。従って、冷却工程で室温まで冷却された反応液は白色スラリー状となって、次いでおこなわれる脱水工程においては、脱水剤を詰めた脱水塔の閉塞を引き起こしてしまうなどの問題点がある。
【0012】
一般に、有機合成反応において、脱水方法として蒸留によって水を除去する方法は広く知られているが、二酸化炭素とアルコールを用いる炭酸エステルの合成においては、旭硝子工業技術奨励会研究報告VoL.33,31−45(1978)の中に検討中と書かれているのみで、これまでに蒸留による脱水方法を完成した記載及び報告は一切ない。
更に、二酸化炭素とアルコールを金属アルコキシド触媒の存在下に反応させることによって得られる、金属アルコキシドを含んだ反応液からの炭酸エステルの分離方法について、蒸留による分離を記載した例はあるが、金属アルコキシドを触媒として用いた場合、蒸留分離の際に逆反応が起こり、生成した炭酸エステルを反応液中から容易には蒸留分離できないことが知られており[日本化学会誌 No.10,1789−1794(1975)]、殊に、高い沸点の炭酸エステルを金属アルコキシドを含んだ反応液から高い収率で分離する方法は知られていない。
【0013】
また一方で、該方法で使用される金属アルコキシドは空気中の水分にさえ不安定であり、その取り扱いには厳密な注意をする必要があったため、金属アルコキシドを触媒として使用した従来技術は、炭酸エステルの工業的な製造方法として利用されていない。ひとたび失活した触媒から高価な金属アルコキシドを容易に再生する技術がなかったからである。
水分に安定なジブチル酸化スズを触媒原料として、反応系中でジブチルスズジアルコキシドを生成させた例もある(日本国特許第3128576号)が、最初の反応の仕込み時は安定な状態であっても、ひとたび反応を開始すれば、不安定なジブチルスズジアルコキシドになるため、上記した問題は解決されていない。炭酸エステルを単離するために反応混合物を反応系外に取り出せば、不安定なジブチルスズアルコキシドは失活してしまい、再生方法がないからである。従って、反応後は高価な触媒を廃棄するしか方法がなかった。
【0014】
一方、金属アルコキシド(例えばジアルキルスズジアルコキシド)を例えば180℃程度まで加熱すると、熱劣化してトリアルキルスズアルコキシドなどが生成することが知られている[工業化学雑誌 72巻 7号 1543−1549(1969)]。熱劣化で生成したトリアルキルスズアルコキシドは、炭酸エステル生成能力が極めて低いことが知られている[J.Org.Chem.、vol.64、4506−4508(1999)]。該トリアルキルスズアルコキシドを活性の高いジアルキルスズジアルコキシドへ再生することは困難(実質的に不可能)である。また、このような劣化物(再生不能な非反応性化合物)が生成すれば、繰り返して金属アルコキシドを使用した際に、活性な触媒濃度が減少するために反応速度や炭酸エステルの収率が変わり、安定した生産が難しい。このような場合、反応速度や収率を一定にするために新しい金属アルコキシドを少量添加する方法が一般的な反応でおこなわれるが、新しい金属アルコキシドを添加し続けるだけで劣化物を放置すれば、活性の低い劣化物が多量に反応系中に蓄積してしまう問題がある。この点からも、金属アルコキシドを繰り返して使用することは従来技術ではできず、反応後、金属アルコキシドは廃棄するしか方法がなく、高コストな製造方法となってしまう。
以上、金属アルコキシドと二酸化炭素とアルコールを用いた従来の炭酸エステル製造法では、高価な金属アルコキシドが加水分解等で触媒能を失ってしまうと、容易、かつ、効果的に再生して再度使用する方法がなく、少量の金属アルコキシドと多量の有機脱水剤又は固体脱水剤の組み合わせで炭酸エステルを得ることしかできないという問題点があった。
このように、炭酸エステル製造のための従来技術には、これら解決すべき課題が多く残されており、未だ実用に供されていないのが現状である。
【0015】
これらの問題点を解決すべく、本発明者らは、先に、WO03/055840号公報において新たな技術を提案した。該新技術は、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を、触媒としてではなく、炭酸エステルの前駆体として大量に使用し、該有機金属化合物を二酸化炭素と付加反応させて、形成される付加物を熱分解させることを含む反応経路を用いる、炭酸エステルの製造方法であり、この方法で炭酸エステルを高収率で製造できることを見出した。この方法によって、従来技術の上記問題はほとんど解決された。しかし、この方法によっても、再生不能な非反応性有機金属化合物が反応系中に蓄積してしまうという問題が残る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このような状況下、本発明者らは、上記の課題を解決するために上記WO03/055840号公報の技術についてさらに鋭意検討した。その結果、意外にも、炭酸エステルの製造方法であって、(1)分子内に金属−酸素−炭素結合を少なくとも2つ有する反応性有機金属化合物と、該反応性有機金属化合物に由来する再生不能な非反応性化合物からなる有機金属化合物混合物と二酸化炭素とを反応させて、該反応で形成された炭酸エステルと、該再生不能な非反応性化合物と、該反応性有機金属化合物に由来する再生可能な変性有機金属化合物とを含有する反応混合物を得、(2)該反応混合物を、該炭酸エステルと該再生不能な非反応性化合物を含有する第1の部分と、該再生可能な変性有機金属化合物を含有する第2の部分とに分離し、そして(3)反応混合物の該第2の部分をアルコールと反応させて、分子内に金属−酸素−炭素結合を少なくとも2つ有する反応性有機金属化合物と、該反応性有機金属化合物に由来する再生不能な非反応性化合物からなる有機金属化合物混合物と水を形成し、そして該水を該有機金属化合物混合物から除去する、ことを特徴とする方法によって上記目的を達成できることを見出した。工程(2)で得られる、反応混合物の該第1の部分からは、炭酸エステルを蒸留等の方法によって容易に単離できる。工程(3)で得られる該有機金属化合物混合物は、回収して、炭酸エステル形成のための上記反応(工程(1))にリサイクルして再利用できる。このような知見に基づき、本発明を完成させるに至った。
従って、本発明の主要な目的は、脱水剤を用いる必要なく反応性有機金属化合物をリサイクル使用でき、また、再生不能な非反応性有機金属化合物を系外へ抜き出しながら、高収率で炭酸エステルを工業的に製造するプロセスを連続して何度でも繰り返しておこなうことのできる方法を提供することである。
本発明の上記及びその他の諸目的、諸特徴ならびに諸利益は、添付の図面を参照しながらおこなう以下の詳細な説明及び請求の範囲から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によると、炭酸エステルの製造方法であって、
(1)下記式(1)で表される有機金属化合物及び下記式(2)で表される有機金属化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を包含する反応性有機金属化合物と、該反応性有機金属化合物に由来し、分子内に金属−炭素結合を少なくとも3つ有する再生不能な非反応性化合物からなる有機金属化合物混合物と二酸化炭素とを反応させて、該反応で形成された炭酸エステルと、該再生不能な非反応性化合物と、該反応性有機金属化合物に由来する再生可能な変性有機金属化合物とを含有する反応混合物を得、
(2)該反応混合物を、該炭酸エステルと該再生不能な非反応性化合物を含有する第1の部分と、該再生可能な変性有機金属化合物を含有する第2の部分とに分離し、そして
(3)反応混合物の該第2の部分を第1のアルコールと反応させて、分子内に金属−酸素−炭素結合を少なくとも2つ有する反応性有機金属化合物と、該反応性有機金属化合物に由来し、分子内に金属−炭素結合を少なくとも3つ有する再生不能な非反応性化合物からなる有機金属化合物混合物と水を形成し、そして該水を該有機金属化合物混合物から除去する、
ことを特徴とする方法が提供される。
【化1】
Figure 0004397810
(式中:
は、ケイ素を除く周期律表第4族と第14族の元素よりなる群から選ばれる金属原子を表し;
及びR は各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表し;
及びR は各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表し;そして
a及びbは各々0〜2の整数であり、a+b=0〜2、c及びdは各々0〜4の整数であり、a+b+c+d=4である。)
【化2】
Figure 0004397810
(式中:
及びM は各々独立に、ケイ素を除く周期律表第4族と第14族の元素よりなる群から選ばれる金属原子を表し;
、R 、R 及びR は各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表し;
及びR 10 は各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表し;そして
e、f、g、hは各々0〜2の整数であり、e+f=0〜2、g+h=0〜2、i及びjは各々1〜3の整数であり、e+f+i=3、g+h+j=3である。)
【0018】
次に、本発明の理解を容易にするために、本発明の基本的特徴及び好ましい態様を列挙する。
1.炭酸エステルの製造方法であって、
(1)前記式(1)で表される有機金属化合物及び前記式(2)で表される有機金属化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を包含する反応性有機金属化合物と、該反応性有機金属化合物に由来し、分子内に金属−炭素結合を少なくとも3つ有する再生不能な非反応性化合物からなる有機金属化合物混合物と二酸化炭素とを反応させて、
該反応で形成された炭酸エステルと、該再生不能な非反応性化合物と、該反応性有機金属化合物に由来する再生可能な変性有機金属化合物とを含有する反応混合物を得、
(2)該反応混合物を、該炭酸エステルと該再生不能な非反応性化合物を含有する第1の部分と、該再生可能な変性有機金属化合物を含有する第2の部分とに分離し、そして
(3)反応混合物の該第2の部分を第1のアルコールと反応させて、分子内に金属−酸素−炭素結合を少なくとも2つ有する反応性有機金属化合物と、該反応性有機金属化合物に由来し、分子内に金属−炭素結合を少なくとも3つ有する再生不能な非反応性化合物からなる有機金属化合物混合物と水を形成し、そして該水を該有機金属化合物混合物から除去する、
ことを特徴とする方法。
2.工程(3)の後に、工程(3)で得られた該有機金属化合物混合物を回収して工程(1)へリサイクルする工程(4)を更に包含することを特徴とする前項1に記載の方法。
.式(1)のRとR及び式(2)のRとR10が各々独立に、n−ブチル基、iso−ブチル基、直鎖状または分岐状の炭素数5〜12のアルキル基、または直鎖状または分岐状の炭素数4〜12のアルケニル基を表すことを特徴とする前項1又は2に記載の方法。
.式(1)のM及び式(2)のMとMがスズ原子を表すことを特徴とする前項1〜3のいずれかに記載の方法。
.工程(1)で用いる該反応性有機金属化合物が、有機スズオキサイドとアルコールから製造されることを特徴とする前項1〜4のいずれかに記載の方法。
.工程(1)において、該反応性有機金属化合物を、単量体、オリゴマー、ポリマー及び会合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の形態で用いることを特徴とする前項1〜5のいずれかに記載の方法。
.工程(1)における該反応性有機金属化合物の使用量が、該二酸化炭素に対する化学量論量の1/50〜1倍の範囲であることを特徴とする前項1〜6のいずれかに記載の方法。
.工程(1)の該反応を20℃以上で行うことを特徴とする前項1〜7のいずれかに記載の方法。
.工程(1)の該反応を、工程(3)で用いる第1のアルコールと同じかまたは異なる第2のアルコールの存在下で行うことを特徴とする前項1〜8のいずれかに記載の方法。
10.工程(2)において、該反応混合物の該第1の部分と該第2の部分への分離を、蒸留、抽出及び濾過よりなる群から選ばれる少なくとも1種の分離方法によって行うことを特徴とする前項1〜9のいずれかに記載の方法。
11.工程(2)において、該反応混合物の該第1の部分と該第2の部分への分離を、工程(3)で用いる第1のアルコールと同じかまたは異なる第3のアルコールの存在下で行うことを特徴とする前項1〜10のいずれかに記載の方法。
12.工程(3)で用いる該第1のアルコールが、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキルアルコール、炭素数5〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキルアルコール、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基を有するアルケニルアルコール、及び無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を有するアラルキルアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコールであることを特徴とする前項1〜11のいずれかに記載の方法。
13.該第1のアルコールの常圧での沸点が水よりも高いことを特徴とする前項12に記載の方法。
14.該第1のアルコールが、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、直鎖状または分岐状の炭素数5〜12のアルキル基を有するアルキルアルコール、直鎖状または分岐状の炭素数4〜12のアルケニル基を有するアルケニルアルコール、炭素数5〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキルアルコール、及び無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を有するアラルキルアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコールであることを特徴とする前項13に記載の方法。
15.工程(3)の該水の除去を、膜分離によって行うことを特徴とする前項1〜14のいずれかに記載の方法。
16.該膜分離がパーベーパレーションであることを特徴とする前項15に記載の方法。
17.工程(3)の該水の除去を、蒸留によって行うことを特徴とする前項1〜14のいずれかに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1は、実施例1の工程(1)で使用した2−エチルヘキシルオキシ基を有する反応性有機金属化合物の119Sn−NMRチャートであり;そして
図2は、実施例1の工程(2)で分離留去した再生不能な非反応性化合物の119Sn−NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
上記のように、従来技術(上記WO03/055840号公報において本発明者らが提案した方法以外の)では下記式(3)の平衡反応を利用している。
【0021】
【化3】
Figure 0004397810
【0022】
即ち、従来技術(上記WO03/055840号公報において本発明者らが提案した方法以外の)の方法は、炭酸エステルと水からなる生成物系を含む平衡反応系(上記式(3)で表される)を含有する反応液中に脱水剤を用いる方法や、上記の平衡反応系を含有する反応液をそのまま冷却して、固体脱水剤を充填塔に詰めた脱水工程に循環させて該平衡反応系の水を徐々に除去して触媒分解反応を抑制しながら極微量生成する炭酸エステルを反応液中に蓄積する方法である。
一方、本発明の方法は、このような従来技術の方法と技術思想を全く異にする新規な方法である。
本発明の方法で用いる反応は、本発明者らが先に上記WO03/055840号公報において提案した方法で用いる反応と基本的に同じである。そこで、本発明の方法を説明する前に、まず、WO03/055840号公報で提案した方法を簡単に説明する。
WO03/055840号公報で提案した方法の特徴は、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を、触媒としてではなく、炭酸エステルの前駆体として大量に使用し、該有機金属化合物を二酸化炭素と付加反応させて、形成される付加物を熱分解させることを含む反応経路による反応によって炭酸エステルを合成し(工程(1))、次に、上記の反応で得られた反応混合物から炭酸エステルを分離し(工程(2))、得られた残留液をアルコールと反応させることによって、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物と水を形成し、その水を蒸留等の方法によって容易に除去し、得られた該有機金属化合物を回収して(工程(3))、炭酸エステル形成のための上記反応にリサイクルして再利用することにある。この方法の工程(1)における反応と工程(3)における反応は、それぞれ、下記式(4)と式(5)で表される。
【0023】
【化4】
Figure 0004397810
【0024】
すなわち、WO03/055840号の方法は、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を炭酸エステルの前駆体として主に使用し、二酸化炭素との付加反応生成物を形成し、それを熱分解させて炭酸エステルを得た後に、反応混合物から炭酸エステルを分離し、次いで、残留液(金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物と二酸化炭素との付加反応生成物の熱分解物を含む)をアルコールと反応させて金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を再生した後に、それを炭酸エステル形成工程に戻すといったプロセスを繰り返して炭酸エステルを製造する方法である。
WO03/055840号の方法の工程(1)で、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物の少なくとも一部は熱分解物に変化するために、工程(1)の終了後においては、工程(1)に用いた金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を含まない反応液となる場合もあり、あるいは工程(2)の終了後には、熱分解物や加水分解物に変化しているため、工程(1)に用いた金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を含まない反応液となる場合もあるが、工程(3)の終了までに、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物が再生(再合成)される。
【0025】
上記の方法によれば、反応全体が平衡状態で支配される従来の方法とは異なり、式(3)で表される平衡反応を効果的に分割できるものであり、これによって、逐次反応を制御し、生成する炭酸エステルと水を反応系から除去しながら効率よく炭酸エステルを得ることができる。すなわち、上記の方法の工程(1)では、ほぼ水のない状態で反応をおこなうことができ、工程(2)においては、反応混合物から炭酸エステルを分離することによって、炭酸エステルとそれ以外の熱分解物との逆反応を抑止でき、工程(3)においては、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を再生した後、水を除去することによって該有機金属化合物が回収できる。更に、各工程において冷却、加熱、撹拌、加圧、減圧、分離などの公知の化学合成技術を適宜用いることによって、操作条件の最適化を容易に図ることができる。
【0026】
本発明の方法は、WO03/055840号で提案した上記方法の更なる向上を目指して鋭意検討を進めた結果開発されたものである。WO03/055840号の方法においては、再生不能な非反応性有機金属化合物(劣化物)が反応系中に徐々に蓄積していくという問題があるが、本発明の方法によってこの問題を容易に解決できる。有機金属化合物は一般に熱劣化しやすく、繰り返して使用する場合には活性な有機金属化合物と、著しく活性の低い有機金属化合物(再生不能な非反応性有機金属化合物、即ち、劣化物)の混合物となって、その比率は徐々に後者が多くなってしまい、安定な生産を続けるためには、活性な有機金属化合物またはその原料となる化合物を添加し続ける必要がある。二酸化炭素とアルコールのみを原料とした炭酸エステルの製造方法では、この劣化物の分離が困難であって、繰り返して使用した記載はあるが、これまでにこの劣化物を反応系から除去することはできなかった。一方で、使用後の全触媒から一部抜き出し、失活した成分に見合う量の触媒を系内に添加する方法は一般的な触媒を用いた製造方法で使用されている。しかし、該方法では、一部の活性の低い触媒を抜き出すために、その数倍から数十倍もの活性な触媒を抜き出さなければならない。このような方法を高価な触媒を用いる反応でおこなうことは、生産コストを押し上げてしまうために工業的な製造では殆ど採用されない。従って、繰り返して使用する際には、この劣化物を選択的に除去することが重要であった。本発明者らが鋭意検討した結果、劣化物は有用な有機金属化合物(即ち反応性有機金属化合物及び再生可能な変性有機金属化合物)と異なった物理的性質(沸点、固体液体状態など)や化学的性質(加水分解性など)をもつことを見いだして、反応性有機金属化合物の該劣化物の少なくとも一部を選択的に抜き出しながら繰り返して有機金属化合物を使用する方法を含んだ本発明を完成させた。
【0027】
本発明の方法は、炭酸エステルの製造方法であって、
(1)前記式(1)で表される有機金属化合物及び前記式(2)で表される有機金属化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を包含する反応性有機金属化合物と、該反応性有機金属化合物に由来し、分子内に金属−炭素結合を少なくとも3つ有する再生不能な非反応性化合物からなる有機金属化合物混合物と二酸化炭素とを反応させて、
該反応で形成された炭酸エステルと、該再生不能な非反応性化合物と、該反応性有機金属化合物に由来する再生可能な変性有機金属化合物とを含有する反応混合物を得、
(2)該反応混合物を、該炭酸エステルと該再生不能な非反応性化合物を含有する第1の部分と、該再生可能な変性有機金属化合物を含有する第2の部分とに分離し、そして
(3)反応混合物の該第2の部分を第1のアルコールと反応させて、分子内に金属−酸素−炭素結合を少なくとも2つ有する反応性有機金属化合物と、該反応性有機金属化合物に由来し、分子内に金属−炭素結合を少なくとも3つ有する再生不能な非反応性化合物からなる有機金属化合物混合物と水を形成し、そして該水を該有機金属化合物混合物から除去する、
ことを特徴とする方法である。
まず、本発明で使用する化合物について以下説明する。
本発明の方法の工程(1)で用いる該反応性有機金属化合物は、下記式(1)で表される有機金属化合物及び下記式(2)で表される有機金属化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を包含する。
【0028】
【化1】
Figure 0004397810
【0029】
(式中:
は、ケイ素を除く周期律表第4族と第14族の元素よりなる群から選ばれる金属原子を表し;
及びRは各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表し;
及びRは各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表し;そして
a及びbは各々0〜2の整数であり、a+b=0〜2、c及びdは各々0〜4の整数であり、a+b+c+d=4である。)
【0030】
【化2】
Figure 0004397810
【0031】
(式中:
及びMは各々独立に、ケイ素を除く周期律表第4族と第14族の元素よりなる群から選ばれる金属原子を表し;
、R、R及びRは各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表し;
及びR10は各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表し;そして
e、f、g、hは各々0〜2の整数であり、e+f=0〜2、g+h=0〜2、i及びjは各々1〜3の整数であり、e+f+i=3、g+h+j=3である。)
本発明でいう周期律表とは国際純正及び応用化学連合無機化学命名法(1989年)で定められた周期律表である。
【0032】
本発明の方法で用いるこれら有機金属化合物は単量体であっても、オリゴマー、ポリマー、または会合体であってもよい。
本発明に用いられる式(1)の有機金属化合物のM及び式(2)の有機金属化合物のMとMは、ケイ素を除く周期律表第4族と第14族の元素よりなる群から選ばれる金属原子であり、中でも、チタン、スズ及びジルコニアが好ましい。アルコールへの溶解性やアルコールとの反応性を考慮すれば、スズがより好ましい。
【0033】
本発明に用いられる式(1)の有機金属化合物のRとR、及び式(2)の有機金属化合物のR、R、R、Rの例としては、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル(各異性体)、ブチル(各異性体)、ペンチル(各異性体)、ヘキシル(各異性体)、ヘプチル(各異性体)、オクチル(各異性体)、ノニル(各異性体)、デシル(各異性体)、ウンデシル(各異性体)、ドデシル(各異性体)、2−ブテニル、シクロブテニル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル等の炭素数1から12の脂肪族炭化水素基であるアルキル基や炭素数5から12の脂環式炭化水素基であるシクロアルキル基、ベンジル、フェニルエチル等の炭素数7から20のアラルキル基、フェニル、トリル、ナフチル等の炭素数6から20のアリール基が挙げられる、またエーテル結合を含んでいてもいいし、ノナフルオロブチル、ヘプタフルオロブチル(各異性体)などのように炭化水素基の水素の全部あるいは一部がハロゲン原子に置換したハロゲン化炭化水素基であってもよいが、これらに限定されない。好ましくは、低級アルキル基であり。より好ましくは炭素数1から4の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。以上に示した炭素数以上のものも使用することができるが、流動性が悪くなったり、生産性を損なったりする場合がある。式(1)の有機金属化合物のRとR、及び式(2)の有機金属化合物のRとR10の例としては、メチル、エチル、プロピル(各異性体)、ブチル(各異性体)、2−ブテニル、ペンチル(各異性体)、ヘキシル(各異性体)、オクチル(各異性体)、ノニル(各異性体)、デシル(各異性体)、ウンデシル(各異性体)、ドデシル(各異性体)、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、メトキシエチル、エトキシメチル、エトキシエチル、メトキシエチル等の炭素数1から12の脂肪族炭化水素基であるアルキル基や炭素数5から12の脂環式炭化水素基であるシクロアルキル基、ベンジル、フェニルエチル等の炭素数7から20のアラルキル基が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、式(1)および/または式(2)であらわされる有機金属化合物におけるアルコキシ基が、常圧で水よりも沸点の高いアルコールから形成されたアルコキシ基である有機金属化合物である。工程(3)で反応性有機金属化合物を再生させて繰り返し使用する場合、最も好ましいのは、式(1)および/または式(2)であらわされる有機金属化合物の各アルコキシ基が、式(1)のRとR及び式(2)のRとR10が各々独立に、n−ブチル基、iso−ブチル基、直鎖状または分岐状の炭素数5〜12のアルキル基、または直鎖状または分岐状の炭素数4〜12のアルケニル基を表すものの場合である。
【0034】
式(1)で示される反応性有機金属化合物の例としては、テトラメトキシスズ、テトラエトキシスズ、テトラプロピルオキシスズ(各異性体)、テトラブトキシスズ(各異性体)、テトラペンチルオキシスズ(各異性体)、テトラヘキシルオキシスズ(各異性体)、テトラヘプチルオキシスズ(各異性体)、テトラオクチルオキシスズ(各異性体)、テトラノニルオキシスズ(各異性体)、ジ−メトキシ−ジエトキシスズ、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロピルオキシチタン、テトラ―イソ―プロピルオキシチタン、テトラ−2−エチル−1−ヘキシルオキシチタン、テトラベンジルオキシスズ、ジメトキシ−ジエトキシ−スズ、ジエトキシ−ジプロポキシ−スズ(各異性体)、ジメトキシ−ビスヘキシルオキシ−スズ(各異性体)、ジメチル−ジメトキシ−スズ、ジメチル−ジエトキシ−スズ、ジメチル−ジプロポキシ−スズ(各異性体)、ジメチル−ジブトキシ−スズ(各異性体)、ジメチル−ビスペンチルオキシ−スズ(各異性体)、ジメチル−ビスヘキシルオキシ−スズ(各異性体)、ジメチル−ビスヘプチルオキシ−スズ(各異性体)、ジメチル−ビスオクチルオキシ−スズ(各異性体)、ジメチル−ビスノニルオキシ−スズ(各異性体)、ジメチル−ビスデシルオキシ−スズ(各異性体)、ジブチル−ジメトキシ−スズ、ジブチル−ジエトキシ−スズ、ジブチル−ジプロポキシ−スズ(各異性体)、ジブチル−ジブトキシ−スズ(各異性体)、ジブチル−ビスペンチルオキシ−スズ(各異性体)、ジブチル−ビスヘキシルオキシ−スズ(各異性体)、ジブチル−ビスヘプチルオキシ−スズ(各異性体)、ジブチル−ビスオクチルオキシ−スズ(各異性体)、ジブチル−ビスノニルオキシ−スズ(各異性体)、ジブチル−ビスデシルオキシ−スズ(各異性体)、ジブチル−ビスベンジルオキシ−スズ、ジブチル−ビスフェニルエトキシ−スズ、ジフェニル−ジメトキシ−スズ、ジフェニル−ジエトキシ−スズ、ジフェニル−ジプロポキシ−スズ(各異性体)、ジフェニル−ジブトキシ−スズ(各異性体)、ジフェニル−ビスペンチルオキシ−スズ(各異性体)、ジフェニル−ビスヘキシルオキシ−スズ(各異性体)、ジフェニル−ビスヘプチルオキシ−スズ(各異性体)、ジフェニル−ビスオクチルオキシ−スズ(各異性体)、ジフェニル−ビスノニルオキシ−スズ(各異性体)、ジフェニル−ビスデシルオキシ−スズ(各異性体)、ジフェニル−ビスベンジルオキシ−スズ、ジフェニル−ビスフェニルエトキシ−スズ、ジメトキシ−ビス−(トリフルオロ−ブチル)−スズ、ジエトキシ−ビス−(トリフルオロ−ブチル)−スズ、ジプロポキシ−ビス−(トリフルオロ−ブチル)−スズ(各異性体)、ジブトキシ−ビス−(トリフルオロ−ブチル)−スズ(各異性体)等のアルコキシスズ、アルコキシチタン、アルキルアルコキシスズなどがあげられる。
【0035】
式(2)で示される反応性有機金属化合物の例としては、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジメトキシ−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジエトキシ−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジプロポキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジブトキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビスペンチルオキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビスヘキシルオキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビスヘプチルオキシ―ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビスオクチルオキシ―ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビスノニルオキシ―ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビスデシルオキシ―ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビスベンジルオキシ―ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビスフェニルエトキシ―ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジメトキシ―ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジエトキシ―ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジプロポキシ―ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジブトキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ビスペンチルオキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ビスヘキシルオキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ビスヘプチルオキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ビスオクチルオキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ビスノニルオキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ビスデシルオキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ビスベンジルオキシ−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ビスフェニルエトキシ−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジメトキシ−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジエトキシ−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジプロポキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジブトキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビスペンチルオキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビスヘキシルオキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビスヘプチルオキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビスオクチルオキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビスノニルオキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビスデシルオキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビスベンジルオキシ−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビスフェニルエトキシ―ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラ(トリフルオロブチル)−1,3−ジメトキシ―ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラ(トリフルオロブチル)−1,3−ジエトキシ−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラ(トリフルオロブチル)−1,3−ジプロポキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラ(トリフルオロブチル)−1,3−ジブトキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラ(ペンタフルオロブチル)−1,3−ジメトキシ−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラ(ペンタフルオロブチル)−1,3−ジエトキシ−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラ(ペンタフルオロブチル)−1,3−ジプロポキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラ(ペンタフルオロブチル)−1,3−ジブトキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラ(ペンタフルオロブチル)−1,3−ビスペンチルオキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラ(ペンタフルオロブチル)−1,3−ビスヘキシルオキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラ(ヘプタフルオロブチル)−1,3−ジメトキシ−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラ(ヘプタフルオロブチル)−1,3−ジエトキシ−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラ(ヘプタフルオロブチル)−1,3−ジプロポキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラ(ヘプタフルオロブチル)−1,3−ジブトキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、等が挙げられる。
【0036】
これらの反応性有機金属化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよいし、他の有機金属化合物や無機金属化合物を加えてもよい。これらの反応性有機金属化合物は市販されているものを使用してもよく、公知の方法(例えば、オランダ国特許6612421号)に記載の方法によって、ジブチル酸化スズと炭素数4以上のアルコールと共沸溶媒とを反応させた後、蒸留成分として式(1)で示される有機金属化合物を得て使用してもよい。該方法によれば、炭素数4より小さいアルコキシ基を有する有機金属化合物を得るためには該方法は適用できず、二塩化ジブチルスズとナトリウムアルコラートから得ると記載されている。日本国特許願2001−396537号又は日本国特許願2001−396545号に記載の方法によって、金属酸化物とアルコールから合成された式(1)で示される有機金属化合物や式(2)で示される有機金属化合物を使用してもよい。本方法によれば炭素数3以下の、例えばメトキシ基を有する有機金属化合物を得ることができる。例えば、メトキシ基を有する有機金属化合物を得るには、ジブチル酸化スズとメタノールとヘキサンから得ることができる。この場合、メタノール−ヘキサンが最低共沸となることが知られているが、驚くべきことに有機金属化合物を得られることを見いだすにいたり、水よりも沸点の低いアルコールからも有機金属化合物を得る方法を開発するにいたった。水よりも沸点の低いアルコールとジブチル酸化スズから得られる有機金属化合物は式(2)で表される成分が主となる場合が多いが、式(1)で示される有機金属化合物を多量に得たい場合には、得られた反応物を蒸留することによって、蒸留成分として式(1)で示される有機金属化合物を得ることもできる。塩化ジアルキルスズとアルコラートとの反応から得てもよい。
【0037】
本明細書中では、上記した反応性有機金属化合物に関連して、「反応性有機金属化合物に由来する再生可能な変性有機金属化合物」、と「反応性有機金属化合物に由来する再生不能な非反応性(有機金属)化合物」という用語を使用するが、これらについてここで説明する。本発明で使用する反応性有機金属化合物は、分子内に金属−酸素−炭素結合を少なくとも2つ有する有機金属化合物である。該反応性有機金属化合物に由来する再生可能な変性有機金属化合物とは、主に、該反応性有機金属化合物と二酸化炭素が反応して該反応性有機金属化合物の二酸化炭素付加体を生成し、該付加体が熱分解した際に、炭酸エステルと同時に形成される該付加体の分解物を指しており、構造の特定は難しい。また、該反応性有機金属化合物の加水分解物、及び該反応性有機金属化合物の二酸化炭素付加体の加水分解物も、本発明においては、再生可能な変性有機金属化合物の一つである。本明細書中では、「反応性有機金属化合物に由来する再生不能な非反応性(有機金属)化合物」を、しばしば、単に「劣化物」と称する。該再生不能な非反応性(有機金属)化合物とは、該反応性有機金属化合物および/または該反応性有機金属化合物の二酸化炭素付加体が熱劣化して、活性の著しく低い、再生不能な有機金属化合物に変化した化合物をさしている。該劣化物(再生不能な非反応性化合物)は、主に本発明の方法の工程(3)で生成するが、その他に、該反応性有機金属化合物の製造過程でも生成することがある。本発明でいう劣化物(再生不能な非反応性化合物)は主に、分子内に金属1原子あたりに金属−炭素結合を少なくとも3つ有する化合物である。このような化合物の例としては、下記式(6)であらわされる化合物があげられる。
【0038】
【化5】
Figure 0004397810
【0039】
(式中:
Mは、ケイ素を除く周期律表第4族と第14族の元素よりなる群から選ばれる金属原子を表し;
11、R12、R13は各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表し;
14は、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表し;そして
k、l、mは各々0〜4の整数であり、k+l+m=3または4、nは0または1の整数であり、k+l+m+n=4である。)
【0040】
このような化合物は、テトラアルキルスズ、トリアルキルスズアルコキシドなどである。また、更に含まれうる劣化物(非反応性化合物)の例として、酸化金属もあげられる。このような例としては、SnO、TiO、ZrOなどの化合物があげられる。
上記した分子内に金属−炭素結合を少なくとも3つ有する化合物(劣化物)は、本発明における有用な有機金属化合物(該反応性有機金属化合物及び再生可能な変性有機金属化合物)とは異なった物理的、化学的性質をもつ。主な特徴は、該劣化物は、該有用な有機金属化合物よりも沸点が低いことと、該有用な有機金属化合物よりも加水分解性が低いことである。
【0041】
次に、本発明で使用するアルコールについて説明する。本発明の方法においては、工程(3)で第1のアルコールを使用するほか、所望により工程(1)で第2のアルコールが使用でき、また、所望により工程(2)で第3のアルコールが使用できる。これらの第1のアルコール、第2のアルコール、第3のアルコールとしては、同じアルコールを使用してもよいし、異なるアルコールを使用してもよい。これらのアルコールの例としては、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキルアルコール、炭素数5〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキルアルコール、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基を有するアルケニルアルコール、及び無置換または置換された炭素数6〜19のアリール及び、直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を有するアラルキルアルコールなどが挙げられる。これらのアルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール(各異性体)、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、シクロブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール(各異性体)、3−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール(各異性体)、2−メチル−2−ブタノール(各異性体)、3−メチル−2−ブタノール(各異性体)、シクロペンタノール、2−メチル−1−シクロブタノール(各異性体)、3−メチル−1−シクロブタノール(各異性体)、1−メチル−1−シクロブタノール(各異性体)、シクロブチルメタノール(各異性体)、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール(各異性体)、3−ヘキサノール(各異性体)、4−メチル−1−ペンタノール(各異性体)、3−メチル−1−ペンタノール(各異性体)、2−メチル−1−ペンタノール(各異性体)、2−エチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ペンタノール(各異性体)、3−メチル−3−ペンタノール(各異性体)、シクロヘキサノール、1−メチル−1−シクロペンタノール(各異性体)、2−メチル−1−シクロペンタノール(各異性体)、シクロブチルメタノール(各異性体)、2−シクロブチルエタノール(各異性体)、1−シクロブチルエタノール(各異性体)、(1−メチル−シクロブチル)−メタノール(各異性体)、(2−メチル−シクロブチル)−メタノール(各異性体)、ヘプタノール(各異性体)、シクロヘキシルメタノール(各異性体)、(メチル−シクロヘキシル)メタノール(各異性体)、シクロヘキシルエタノール(各異性体)、(エチル−シクロブチル)−メタノール(各異性体)、(メチル−シクロプロピル)エタノール(各異性体)、(エチル−シクロプロピル)メタノール(各異性体)、オクタノール(各異性体)、ノナノール(各異性体)、デカノール(各異性体)、ウンデカノール(各異性体)、ドデカノール(各異性体)、プロペニルアルコール、ブテニルアルコール(各異性体)、ペンテニルアルコール(各異性体)、シクロペンテノール(各異性体)、シクロペンタジエニルアルコール、ヘキセノール(各異性体)、シクロヘキセノール(各異性体)等の炭素数1から12の脂肪族アルコールや炭素数5から12の脂環式アルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアラルキルアルコールが挙げられる。多価アルコールも使用できる。多価アルコールの例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロペンタンジオール等の炭素数1から12の脂肪族多価アルコールや炭素数5から12の脂環式多価アルコール等、ベンゼンジメタノール等のアラルキルアルコール等が挙げられる。
【0042】
これらのアルコールの中で、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール(各異性体)、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、シクロブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール(各異性体)、3−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール(各異性体)、2−メチル−2−ブタノール(各異性体)、3−メチル−2−ブタノール(各異性体)、シクロペンタノール、2−メチル−1−シクロブタノール(各異性体)、3−メチル−1−シクロブタノール(各異性体)、1−メチル−1−シクロブタノール(各異性体)、シクロブチルメタノール(各異性体)、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール(各異性体)、3−ヘキサノール(各異性体)、4−メチル−1−ペンタノール(各異性体)、3−メチル−1−ペンタノール(各異性体)、2−メチル−1−ペンタノール(各異性体)、2−エチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ペンタノール(各異性体)、3−メチル−3−ペンタノール(各異性体)、シクロヘキサノール、1−メチル−1−シクロペンタノール(各異性体)、2−メチル−1−シクロペンタノール(各異性体)、シクロブチルメタノール(各異性体)、2−シクロブチルエタノール(各異性体)、1−シクロブチルエタノール(各異性体)、(1−メチル−シクロブチル)−メタノール(各異性体)、(2−メチル−シクロブチル)−メタノール(各異性体)、ヘプタノール(各異性体)、シクロヘキシルメタノール(各異性体)、(メチル−シクロヘキシル)メタノール(各異性体)、シクロヘキシルエタノール(各異性体)、(エチル−シクロブチル)−メタノール(各異性体)、(メチル−シクロプロピル)エタノール(各異性体)、(エチル−シクロプロピル)メタノール(各異性体)、オクタノール(各異性体)、ヘキセノール等の炭素数1から8の1級または2級一価アルコール、ベンジルアルコール等の炭素数7か8の1級または2級のアラルキルアルコールが好ましい。
【0043】
更に好ましくは、上記した群のなかで常圧での沸点が水よりも高い該アルキルアルコール、該シクロアルキルアルコール、該アルケニルアルコール、該アラルキルアルコールである。その具体例としては、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、直鎖状または分岐状の炭素数5〜12のアルキル基を有するアルキルアルコール、直鎖状または分岐状の炭素数4〜12のアルケニル基を有するアルケニルアルコール、炭素数5〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキルアルコール、及び無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を有するアラルキルアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコールである。最も好ましいアルコールは、炭素数5から8のアルキルアルコールである。
【0044】
次に、本発明で使用する反応性有機金属化合物、および劣化物の分析方法について説明する。
式(1)の反応性有機金属化合物および式(2)の反応性有機金属化合物や、劣化物(再生不能な非反応性有機金属化合物)の分析方法は119Sn−NMRによる方法などが使用できる。有機金属化合物を分析する公知の方法(例えば、米国特許第5,545,600号)である。ただし、式(1)の有機金属化合物に相当する構造の119Sn−NMRのシフト値は、サンプル中での式(1)の有機金属化合物の濃度やアルコールの存在などによって大きく変化するのでH−NMR、13C−NMRを併用して決定することが好ましい。1例として2−エチル−1−ヘキサノールとジブチル酸化スズを使用して合成した式(1)の反応性有機金属化合物の1例の構造に相当する119Sn−NMRのシフト値を表1に示した。また、式(6)の劣化物(再生不能な非反応性有機金属化合物)の1例の構造に相当する119Sn−NMRのシフト値を表2に示した。該劣化物は濃度によるシフト値変化は少なく、主にアルキル基やアルコキシ基によるシフト値の違いが見られるが、δ90〜110ppmの範囲にシグナルが現れることが特徴である。
【0045】
【表1】
Figure 0004397810
【0046】
【表2】
Figure 0004397810
【0047】
以下、本発明の方法の各工程について詳しく説明する。
本発明の方法の工程(1)では、分子内に金属−酸素−炭素結合を少なくとも2つ有する反応性有機金属化合物と、該反応性有機金属化合物に由来し、分子内に金属−炭素結合を少なくとも3つ有する再生不能な非反応性化合物からなる有機金属化合物混合物と二酸化炭素とを反応させる。本発明の方法の工程(1)は、分子内に金属−酸素−炭素結合を少なくとも2つ有する反応性有機金属化合物の二酸化炭素付加体を生成させて、該付加体を熱分解して炭酸エステルを得ることを主反応とする工程である。即ち、工程(1)の反応が進行する反応経路は、二酸化炭素が反応性有機金属化合物に付加結合して付加物を形成し、該付加物が熱分解するものである。本発明の方法の工程(1)では、従来の技術とは異なり、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物を低い化学量論量の二酸化炭素と反応させることを特徴とする。従来の方法では、少量の金属触媒と高圧の二酸化炭素をジブチルスズジメトキシドの存在下で反応させた例(Polyhedron,19,p573−576(2000))では、180℃で数mmolのジブチルスズジメトキシドに対して約30MPaの二酸化炭素反応条件で反応させている。該条件での二酸化炭素の正確な数値は記載されていないが、メタノールの分圧を差し引いたとしても、金属−酸素−炭素結合を有する有機金属化合物に対して100倍以上の化学量論量比で二酸化炭素を反応させている。このような条件で強引に平衡をずらすことによって炭酸エステルの収率は触媒に対して多く得ることができているが、共に生成する水が遊離水として発生する。よって、この遊離水による触媒の加水分解が重大な問題となり、系内での脱水方法を構築する必要があった。このような条件においては、ジブチルスズジメトキシドの加水分解構造であるジブチル酸化スズが反応で生成し、ジブチル酸化スズが存在していると記されている。ジブチル酸化スズは室温では溶媒に溶解しないが、本発明においては、工程(1)終了後の反応液を室温まで冷却しても、多くの場合液状であるので、上記した大量の二酸化炭素と反応させた既存技術とは異なった反応状態であるといえる。
【0048】
一方で、高濃度で二酸化炭素を用いた場合は、必然的に高圧となり、リアクターからの反応液の取り出しに、多くの二酸化炭素をパージしなければ炭酸エステルを分離することができず、二酸化炭素の無駄、あるいはパージ後、常圧に戻った二酸化炭素を再利用する場合は、再加圧しなければならないといったエネルギーの無駄が発生する問題があった。別の観点では、高濃度の二酸化炭素を用いれば、二酸化炭素ガス層の密度が上昇し、溶媒や触媒、生成した炭酸エステルをも溶解して均一層を形成することが知られている。更に冷却すれば液化炭酸となって液状であるから、このような観点からも生成した炭酸エステルを反応液から分離することは極めて困難であるといった課題があった。
【0049】
本発明の方法の工程(1)では、二酸化炭素を、該反応性有機金属化合物に対して化学量論比で1から50の範囲で反応させることが好ましい。更に好ましくは1から20の範囲である。二酸化炭素の量が多くなれば、高圧反応となり、耐圧性の高いリアクター構造が必要であり、また工程(1)終了後に二酸化炭素をパージする際に多くの二酸化炭素をロスする。従って、上記化学量論比は1から10の範囲が更に好ましい。言い換えれば、工程(1)における該反応性有機金属化合物の使用量が、該二酸化炭素に対する化学量論量の1/50〜1倍の範囲であることが好ましく、1/20〜1倍の範囲であることが更に好ましい。本発明では、該反応性有機金属化合物の二酸化炭素付加体は、該反応性有機金属化合物を二酸化炭素に接触させることで容易に得ることができる、室温(20℃)では、常圧の二酸化炭素気流を接触させることで発熱的に二酸化炭素付加体が生成し、ほぼ100%二酸化炭素付加体を得ることができる。反応温度の上昇に伴って、該二酸化炭素付加体の生成量は減少するが、この際には接触させる二酸化炭素を高圧で接触させればよい。高圧で二酸化炭素を接触して工程(1)をおこなった場合、該二酸化炭素付加体の生成量の定量は困難であるが、炭酸エステルの生成速度、生成量によって所望の圧力で実施することが好ましい。この圧力範囲は常圧から200MPaの範囲である。工程(1)でおこなう反応で得る炭酸エステル生成量は、該反応性有機金属化合物に対して化学量論比で100%以下である範囲で実施することが好ましい。更に好ましくは50%以下の範囲である。本発明の方法で使用する反応性有機金属化合物は、得られる炭酸エステルよりも加水分解性が高く、該反応性有機金属化合物に対して100%以下、好ましくは50%以下の化学量論量比で炭酸エステルを得れば、炭酸エステルを加水分解するような水は反応液中に発生しないからである。従来技術では、該化学量論比が100%を超えるように反応させたために、遊離水が著しく問題となって系内に有機金属化合物よりも加水分解性の高い脱水剤や、吸着力の高い固体脱水剤を添加するか、その存在下で反応させていた。そのために複雑な工程や高価な脱水剤を使用しなければならず、工業的な製造法として採用されなかった。本発明の方法の工程(1)での主反応である分解反応は、該反応性有機金属化合物の二酸化炭素付加体の熱分解によって炭酸エステルを得る分解反応である。熱分解温度は20℃から300℃の範囲で実施できる。本発明の方法の工程(1)では、上記分解と共にアルコール交換反応、エステル交換反応を実施してもよい。即ち、第2のアルコールを工程(1)で用いれば、分子内に金属−酸素−炭素結合を少なくとも2つ有する反応性有機金属化合物の酸素−炭素結合部分とアルコール交換が起こり、添加したアルコールに対応する炭酸エステルを得ることができる。また、炭酸エステルが生成した後に第2のアルコールを添加してエステル交換反応で第2のアルコールに対応する炭酸エステルを得てもよい。
【0050】
以下、更に詳細に工程(1)について説明する。
本発明者らの研究結果によると、本発明の方法の工程(1)では、該反応性有機金属化合物と二酸化炭素から炭酸エステルが得られる。従って、第2のアルコールの使用は任意である。しかし、第2のアルコールを加えた方が、高い収率で炭酸エステルを得る観点から好ましい。これは工程(1)でおこなう反応の逆反応が存在するためであって、第2のアルコールを加えることによって、炭酸エステル以外の熱分解生成物と第2のアルコールとの間に新たな平衡反応が生じて、炭酸エステルの収率が高くなる場合があるからである。炭酸エステルの収率向上のために第2のアルコールを加えることは、該反応性有機金属化合物の主成分が式(2)で示される有機金属化合物である場合に特に有効である。該反応性有機金属化合物の主成分が式(1)で示されるものである場合は、工程(1)での熱分解反応の平衡が生成物系に偏り、炭酸エステルの収率がかなり高いので、さらなる向上が得られない場合がある。第2のアルコールに水分が大量に含まれると、得られる炭酸エステルの収量を悪化させるため、反応液中に加える第2のアルコール中に含まれる水分が、該反応性有機金属化合物の量に対して、化学量論量比で、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.01以下にすることが好ましい。工程(1)で式(1)の有機金属化合物を使用しておこなう反応においては、式(1)の有機金属化合物と二酸化炭素の付加物から熱分解して炭酸エステルが生成するわけであるが、式(1)の有機金属化合物の2量体から炭酸エステルが生成することは公知である(ECO INDUSTRY,vol.6,No.6,p11−18(2001))。公知技術では、該2量体から2分子の炭酸エステルが生成してジブチル酸化スズを得ていた。本発明者らが鋭意検討した結果、驚くべきことに、式(1)の有機金属化合物の二量体と二酸化炭素の付加物からは、1分子の炭酸エステルが素早く熱分解脱離され、式(2)の有機金属化合物および/またはその二酸化炭素付加物を主に得ることができることを見いだした。この際にアルコールの添加は必須ではない。こうして炭酸エステルと式(2)の有機金属化合物および/またはその二酸化炭素付加物が得られた後、すぐに工程(2)をおこなってもよいし、得られた式(2)の有機金属化合物および/またはその二酸化炭素付加物から更に炭酸エステルを得た後に工程(2)をおこなってもかまわない。工程(1)で使用する該反応性有機金属化合物は、好ましくは、式(1)の有機金属化合物および式(2)の有機金属化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種類であるが、工程(1)で使用する反応性有機金属化合物の少なくとも一部が式(1)の有機金属化合物であることが好ましい。更に好ましくは、工程(1)で使用する反応性有機金属化合物が、式(1)の有機金属化合物を金属原子に換算して5モル%以上含む場合である。
【0051】
工程(1)で添加する成分として、溶媒を用いてもよい。本発明の方法で使用する反応性有機金属化合物は多くの場合液体であるが、一部固体状の反応性有機金属化合物もある。または、反応性有機金属化合物が工程(1)において二酸化炭素付加体となった場合に固体状となる場合もある。固体状となった場合であっても工程(1)で炭酸エステルを生成することができるが、連続して炭酸エステルを製造する場合には、流動性が重要な場合がある。または二酸化炭素との反応速度を向上させるために液状とすることが好ましい場合もある。このような場合に、溶媒を添加して工程(1)を実施してよい。用いる溶媒は製造する炭酸エステルの有機基に対応するアルコールであってよい。また他の不活性溶媒であってもよい。不活性溶媒の例として、炭化水素類やエーテル類があげられる。このような例としてペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどの炭素数5から炭素数20の飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの炭素数1から炭素数14の飽和アルキル基や炭素数5から炭素数14の環状アルキル基を有してよい炭素数6から炭素数20の芳香族炭化水素、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテルなどの炭素数6から炭素数20の飽和アルキルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの炭素数4から炭素数20の環状アルキルエーテル、アニソール、エチルフェニルエーテル、イソプロピルフェニルエーテル、ベンジルメチルエーテル、4−メチルアニソールなどの炭素数0から炭素数8までの置換基を有するフェニル基と炭素数1から炭素数14のアルキル基または炭素数5から炭素数14のシクロアルキル基からなる炭素数7から炭素数28のフェニルエーテル類が使用できる。
工程(1)の反応温度は、通常、室温(20℃)から300℃であり、反応をはやく完結させる場合には、好ましくは80℃から200℃で、10分から500時間の範囲でおこなう。工程(1)の反応を高温(例えば200℃以上)で実施した場合、119Sn−NMR分析において、テトラメチルスズ基準で100ppm近辺に生成する成分が多く検出される場合があるが、この成分の生成が少ない条件あるいは抑制する添加剤の存在下で実施することが繰り返し反応においては好ましい。
【0052】
二酸化炭素は、工程(1)で使用される反応性有機金属化合物に対して、室温(20℃)であれば、化学量論量で充分である。室温(20℃)を超える温度で反応させる場合には、反応性有機金属化合物への二酸化炭素の付加反応が起こりにくくなり、炭酸エステルの生成が著しく遅くなる場合がある。工程(1)の反応圧力は、常圧から200MPa、好ましくは常圧から100MPaとし、必要により、二酸化炭素を充填しながら、または一部抜き出して反応をおこなう。二酸化炭素の充填は断続的に充填しても、連続的に充填してもよい。
【0053】
工程(1)において、他の成分が共存していてもよい。有効に用いられる他の成分としては、反応系内で脱水剤として機能する成分が挙げられる。添加することによって、工程(1)の反応系を非水系の状態に保てるからである。脱水剤として、公知の有機脱水剤を使用することができる。脱水剤の例としては、アセタール化合物、オルト酢酸トリメチル等のオルトエステル等が挙げられる。この他、ジシクロヘキシルカルボジイミドのような有機脱水剤も使用できる。脱水剤成分として、Molecular Sieves等の固体脱水剤を使用してもよい。固体脱水剤を用いる場合には、工程(3)を実施する前に固体脱水剤を除去することが好ましい。
【0054】
工程(1)では、第2のアルコールの使用は任意である。第2のアルコールを使用する場合には、得られる炭酸エステルの純度を高くするために、有機金属化合物のアルコキシドやアラルキルオキシドと同種の有機基を有する第2のアルコールの場合、第2のアルコールの量は反応性有機金属化合物の量に対して、化学量論量の1倍以上100000倍以下が好ましいが、反応性有機金属化合物とは異なる有機基を有するアルコールを使用する場合や、反応性有機金属化合物が式(2)のもののみである場合には、第2のアルコールの量は反応性有機金属化合物の量に対して、化学量論量の2倍以上1000倍以下が好ましく、より好ましくは10倍以上1000倍以下の範囲である。反応性有機金属化合物とは異なる有機基を有する第2のアルコールを使用すると、非対称炭酸エステルが得られる。なお、後述するように、第2のアルコールを使用すると炭酸エステルの収率が向上するが、その効果は、反応性有機金属化合物が式(2)のもののみである場合に特に顕著である。反応性有機金属化合物が式(2)のもののみである場合の第2のアルコールの上記の好ましい量は、その観点から設定されている。
後述する工程(4)に引き続き、工程(1)をおこなうばあいには、上記範囲となるように第2のアルコールを添加してもよく、場合によってはアルコールを除去して実施してもよい。
【0055】
工程(1)の反応によって、該反応で形成された炭酸エステルと、該再生不能な非反応性化合物(劣化物)と、該反応性有機金属化合物に由来する再生可能な変性有機金属化合物とを含有する反応混合物が得られる。
反応混合物を分析し、所望の炭酸エステルを得られていれば工程(1)を終了する。例えば、反応性有機金属化合物の量に対して化学量論比で5%以上の炭酸エステルが得られていれば、常圧に戻して反応液を取り出してもよいし、反応混合物をリアクターから直接抜き出してもよい。例えば、工程(1)、工程(2)、工程(3)を別のリアクターで実施する場合、工程(3)終了液を工程(1)のリアクターへ注入し、工程(1)のリアクターから工程(2)のリアクターへ、工程(2)のリアクターから工程(3)のリアクターへ連続して液を循環させる方法をおこなってもよい。反応液を循環させる方法は、二酸化炭素を充填した工程(1)のリアクターからの二酸化炭素パージ量をすくなくすることができるので好ましい形態である。各工程終了後の反応液は強制冷却してもよいし、自然冷却してもよいし、加熱してもよい。また後述するように、場合によっては、炭酸エステル合成反応である工程(1)と炭酸エステル分離工程である工程(2)を同時におこなうこともできる。
【0056】
本発明の方法の工程(2)は、工程(1)で得られた反応液混合物を、該炭酸エステルと該劣化物(再生不能な非反応性化合物)を含む第1の部分と、該再生可能な変性有機金属化合物を含む第2の部分とに分離する工程である。工程(2)において、炭酸エステルを含有する第1の部分に有機金属化合物の劣化物を含有させることにより、該劣化物が反応系内に蓄積することを避けることができる。こうして、従来技術の問題は本発明の方法によりすべて解決される。
【0057】
先に述べたように、式(3)で示した反応による従来の方法による二酸化炭素とアルコールからの炭酸エステルの製造の際には、炭酸エステルと共に水の発生が起こり、従来の方法では水を吸着剤あるいは脱水剤と接触させることによって反応系から除去し、平衡反応を生成物側へずらすものであった。該平衡は炭酸エステルを反応系外へ除去し続けても生成物側へ平衡をずらし、炭酸エステルの生成量を多くできるはずである。しかし、従来の方法では炭酸エステルを除けば、反応液内に水が蓄積し、周知のように水が蓄積すれば触媒が加水分解して触媒性能を失ってしまい、加水分解した触媒は溶媒への溶解性が極めて低いために、循環脱水の際の吸着塔を詰まらせてしまうなどの問題があるからである。また、触媒が水との反応で失活してしまえば、その再生方法が知られていなかった。このような理由で、従来の方法では炭酸エステルを効率よく分離することはできなかった。
本発明の方法の工程(2)は、本発明の効果を損なわない範囲で公知の分離方法が適用でき、一般におこなわれる濾過や溶媒抽出方法や蒸留や膜分離などの方法によっておこなうことができる。抽出溶媒は、炭酸エステルと反応しない溶媒、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族、エーテル、アニソール等のエーテルが好ましく使用できる。蒸留方法は、公知の方法が使用できる。このような方法として、一般に知られている常圧による蒸留方法、減圧蒸留、加圧蒸留、薄膜蒸留方法が使用できる。蒸留は、得られる炭酸エステルによって条件は異なるが、温度がマイナス20℃から200℃の間がよい。この際、他の溶媒を加えて蒸留したり、抽出蒸留してもよい。加熱蒸留の際には前記したように、逆反応によって炭酸エステルの回収率が低くなる場合があるので、反応混合物から高沸点の炭酸エステルを含有する第1の部分を蒸留分離する際には、炭酸エステルが逆反応で失われる速度よりも速い速度で反応液から留去すれば高い回収率で炭酸エステルを得ることができる。従って、その目的に合うように温度や減圧度を適宜調整して実施することが好ましい。
【0058】
工程(2)においては、所望により、第3のアルコールを用いることができる。第3のアルコールを加えることにより、工程(1)で得た炭酸エステルと第3のアルコールの間でエステル交換させて、工程(1)で得られた炭酸エステルとは異なった炭素数を有する炭酸エステルを製造することができる。加える第3のアルコールの量は、工程(1)で使用する反応性有機金属化合物に対して化学量論量で等量以上1000倍以下の範囲で実施できる。エステル交換反応温度は室温(約20℃)から200℃の範囲が好ましい。エステル交換反応の速度や、高温での炭酸エステルの分解反応を考えれば、50℃から150℃の範囲が更に好ましい。この際、公知のエステル交換反応触媒を加えてもよい。エステル交換と炭酸エステルの分離はバッチ式におこなってもよいし、同時におこなってもよい。エステル交換した後の炭酸エステルを含有する第1の部分の分離は、前記した分離方法(濾過や溶媒抽出、蒸留、膜分離など)が使用できる。
【0059】
本発明の方法によると、対称の炭酸エステルだけでなく、非対称の炭酸エステルをも製造することができる。従来、対称炭酸エステルを製造した後に別途エステル交換をおこなって非対称炭酸エステルを得る方法が提案されていたが、本発明では、非対称炭酸エステルを直接に製造できる方法であり、エネルギーコストおよび設備建設コスト上、好ましい製造方法である。非対称の炭酸エステルは以下のようにして製造できる。反応性有機金属化合物がアルコキシ基含有有機金属化合物である場合を例にとる。工程(1)と工程(2)のいずれにおいてもアルコール(第2のアルコールと第3のアルコール)を用いない場合は、工程(1)で用いる反応性有機金属化合物が異なる2種類のアルコキシ基を有する場合に、非対称炭酸エステルを得ることができる。また、工程(1)で用いる反応性有機金属化合物が1種類のアルコキシ基のみを有する場合には、該アルコキシ基とは異なる有機基を有するアルコール(第2のアルコール)の存在下で工程(1)をおこなうか、または、該アルコキシ基とは異なる有機基を有するアルコール(第3のアルコール)の存在下で工程(2)をおこなうことによって非対称炭酸エステルを得ることができる。また、工程(1)で用いる反応性有機金属化合物が1種類のアルコキシ基のみを有する場合か、異なる2種類のアルコキシ基を有する場合には、異なる2種類のアルコール(第2のアルコール)の存在下で工程(1)をおこなうか、または、異なる2種類のアルコール(第3のアルコール)の存在下で工程(2)をおこなうことによって非対称炭酸エステルを得ることができる。異なる2種類のアルコールを使用する際の比率は、アルコール種の組み合わせによって異なるが、化学量論比で2:8〜8:2の範囲である。非対称炭酸エステルを大きな割合で製造する場合には、異なる2種のアルコールの比率は近いことが好ましい。このような好ましい範囲は、化学量論比で3:7〜7:3、より好ましくは4:6〜6:4の範囲である。異なる2種類のアルコールを使用して非対称炭酸エステルを製造する場合には、反応性有機金属化合物に対して過剰量の、例えば化学量論量10倍以上の量のアルコールを使用すれば、反応性有機金属化合物のアルコキシ基の種類に関わらず、加えた異なる2種類のアルコールに対応する異なる2種類のアルコキシ基を有する非対称炭酸エステルを得ることができる。非対称炭酸エステルを含有する第1の部分の分離は、前記したのと同様の方法(濾過や溶媒抽出、蒸留、膜分離など)でおこなうことができる。非対称炭酸エステルと共に対称炭酸エステルが生成する場合が多いが、その場合には、該第1の部分から非対称炭酸エステルと対称炭酸エステルを分離した後、対称炭酸エステルを該第2の部分(再生可能な変性有機金属化合物を含有する)と合わせて工程(3)に付すか、対称炭酸エステルを工程(1)または工程(2)に戻してもよい。
【0060】
本発明の方法においては、前述した通り工程(2)で反応性有機金属化合物の劣化物が炭酸エステルとともに該第1の部分として分離される。劣化物の除去は、すべての劣化物を除去してもよいし、一部を除去しても構わない。リアクターの大きさや、繰り返して使用する回数によって除去量を変えて構わない。好ましくは、例えば、反応混合物中の劣化物の10%以上除去すればよいし、更に好ましくは50%以上除去してよい。
ここで、工程(2)の分離方法について、更に詳しく説明する。工程(1)で得られた反応混合物を該第1の部分と該第2の部分とに分離するには前記した公知の分離方法が適用できる。好ましい方法は、水を加えて相分離させる方法と、蒸留による方法である。以下に説明する。
【0061】
1)水を加えることによる分離方法。
水又は水を含んだ溶媒を、工程(1)で得られた反応混合物に加え、白色スラリーとした後に固形分を濾過分離すれば、該再生可能な変性有機金属化合物を含有する第2の部分は固形分として濾別でき、炭酸エステルと該劣化物を含有する第1の部分は濾液として分離することができる。水はいかなる水であってもよいが、好ましくは蒸留水及び脱イオン水である。
工程(2)において、水を加える場合の水の量は、工程(1)で使用した反応性有機金属化合物に対して化学量論量で1倍から100倍の範囲である。該再生可能な変性有機金属化合物を含有する第2の部分を反応混合物から相分離させるための水は、工程(1)で使用した反応性有機金属化合物に対して化学量論量で1倍あれば十分である。
工程(2)において、水を加える場合の水の温度は、添加する水が反応混合物中で固化しないような温度、例えば、マイナス20℃から100℃、好ましくは0℃から100℃の範囲である。更に好ましくは10℃から80℃に温度を調節してもよい。炭酸エステルの加水分解が起きるのを防止する観点からは、10℃から50℃がより好ましい。水のみを用いてもよいが、水と溶媒を用いる場合は、炭酸エステルと反応しない溶媒を用いることが好ましい。工程(1)で第2のアルコールを使用した場合には、使用した第2のアルコールと同じアルコールに水を溶解して使用すると、溶媒の分離が容易になる。工程(2)で第3のアルコールを加えてエステル交換した場合には、エステル交換後に、反応液中にあるアルコールと同じアルコールに水を溶解して使用することが好ましい。
劣化物も徐々に加水分解をうけて固化しうるので、水を加えてから濾別するまでの時間は、該再生可能な変性有機金属化合物を含有する第2の部分が固化した後、迅速におこなうことが好ましい。この間の時間は、使用した反応性有機金属化合物やアルコール種によって異なるが、室温であれば水を加えてから30秒から60分の間である。より好ましくは1分から10分の間である。
【0062】
2)蒸留によって分離する方法。
工程(1)で得られた反応混合物を、蒸留によって、炭酸エステルと該劣化物を含有する第1の部分と該再生可能な変性有機金属化合物を含有する第2の部分とに分離する。炭酸エステルおよび該劣化物は、該再生可能な変性有機金属化合物よりも沸点が低いので、一般に知られている蒸留による分離方法がすべて適用できる。たとえば、加圧、減圧、過熱による蒸留方法や、薄膜蒸留、膜を用いたパーベーパレーションの方法が好ましく使用できる。
蒸留温度は、劣化物が蒸気圧を持つ範囲であればどのような温度であってもかまわないが、好ましくは約20℃から300℃の間で実施できる。反応混合物には炭酸エステルも含まれているので、前記した逆反応による炭酸エステルの消失を少なくするためには、マイナス20℃から200℃の間で実施することが更に好ましい。この際、蒸留温度を調整するために加圧したり減圧してよい。連続して抜き出してもバッチ式に抜き出しても構わない。
【0063】
工程(2)で得た該第1の部分(炭酸エステルと再生不能な非反応性化合物を含有する)からの炭酸エステルの分離は、公知の分離方法(吸着、蒸留、濾過、膜分離など)を用いて容易におこなうことができる。
工程(3)は、分子内に金属−酸素−炭素結合を少なくとも2つ有する反応性有機金属化合物を合成(再生)する工程である。工程(2)で得られる該第2の部分中の化合物は、多くの場合は透明または不透明な液体であり、例えば、固体状のジブチル酸化スズ(これは室温(約20℃)でほとんどの有機溶媒に溶解性をもたず固体状となる)の存在は見られず、該第2の部分中の化合物がどのような構造であるか特定されていない。しかし、驚くべきことに、本発明の方法の工程(3)によって、式(1)で示される有機金属化合物および/または式(2)で示される有機金属化合物などの、該反応性有機金属化合物を得られることを見いだした。
【0064】
工程(3)は、工程(2)で得られた、反応混合物の該第2の部分を第1のアルコールと反応させて、分子内に金属−酸素−炭素結合を少なくとも2つ有する反応性有機金属化合物と、該反応性有機金属化合物に由来する再生不能な非反応性化合物からなる有機金属化合物混合物と水を形成し、そして該水を該有機金属化合物混合物から除去する工程である。所望により、工程(3)の後に、工程(3)で得られた該有機金属化合物混合物を回収して工程(1)へリサイクルする工程(4)を更におこなうことができる。
工程(3)で使用される第1のアルコールの例は前記の通りである。これらのアルコールを使用する際に、必要に応じて、精製、濃度調整のために蒸留操作をおこなうことがある。その観点から好ましいアルコールは、常圧における沸点が300℃以下のアルコールである。工程(3)での水の除去のしやすさを考慮すれば、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノールまたは炭素数5以上のアルキルアルコール、アラルキルアルコールが更に好ましい。
【0065】
多価アルコールを第1のアルコールとして工程(3)で使用した場合に得られる反応性有機金属化合物の構造は、特に限定されず、例えば、式(1)の有機金属化合物及び/または式(2)の有機金属化合物の架橋体であっても、本発明に使用することができる。
工程(3)で使用される第1のアルコールの量は、工程(1)で使用した反応性有機金属化合物の量に対して、好ましくは化学量論量の1から10000倍の範囲、より好ましくは2から100倍である。繰り返し反応方式で工程(1)から工程(4)を実施する場合には、工程(2)終了後の該第2の部分にアルコールが存在している場合がある。その際には、工程(3)で使用される第1のアルコールの上記の量の範囲となるようにアルコールを添加してもよいし、除いてもよい。
【0066】
工程(3)での水の除去は、公知の方法が使用できる。例えば、蒸留による方法や、Molecular Sievesのような固体脱水剤を充填した脱水塔、膜分離を利用したパーベーパレーションなどの方法等が使用できる。このうち、蒸留やパーベーパレーションなどの膜分離による方法が好ましい。アルコール中からの水分の除去にパーベーパレーションを用いる方法は公知である。本発明においても好適に利用できる。水の沸点よりも高い沸点を持つアルコールの場合には、加熱蒸留することによっても水を容易に留去することができる。また、水よりも沸点の低いアルコールの場合にも、水と共沸混合物を生成する共沸溶媒を添加することで、蒸留によって水を除くこともできる。即ち、固体脱水剤によって除去してもよく、蒸留や膜分離によって除去してもよいが、短時間で大量に該有機金属化合物混合物を得ようとすれば、蒸留によって脱水する方法が好ましい。蒸留方法は、公知の方法が使用できる。例えば常圧による蒸留方法、減圧蒸留、加圧蒸留、薄膜蒸留、抽出蒸留方法が使用できる。蒸留は、温度がマイナス20℃から工程(3)で用いる第1のアルコールの沸点の間で実施でき、好ましくは50℃から第1のアルコールの沸点の間である。この際、他の成分を加えてもよい。例えば、脱水を容易にするために、水と共沸するような溶媒を添加してもよいし、発生する水の気−液平衡を有利にするために反応液の疎水性をあげるような溶媒を添加してもよい。また、反応液の流動性を調整するような溶媒を添加してもよい。
【0067】
工程(3)の反応温度は、用いる第1のアルコールの種類によって異なるが、反応液の温度が、室温(約20℃)から300℃の範囲で実施できる。蒸留によって工程(3)の脱水をおこなう場合には、水が蒸気圧をもつ範囲であれば、どのような温度であってもよい。常圧で反応を速く完結させる場合には、蒸留液の蒸気温度が、水と第1のアルコールの共沸温度で実施することが好ましく、水と第1のアルコールが共沸混合物を生成しない場合には水の沸点で実施することが好ましい。更に反応を速く進行させたい場合には、オートクレーブなどを用いて第1のアルコールや水の沸点よりも高い温度で反応させて、気相部の水を徐々に抜き出してもよい。反応液の温度が極めて高くなる場合には、反応性有機金属化合物の劣化が起こる場合があるので、減圧蒸留などの方法で水を含んだ液を留去してもよい。
第1のアルコールが水と共沸混合物を形成しない場合であっても、水と共沸する溶媒を加えて、共沸蒸留によって水を除去することができ、この方法は、低温で水を留去できることから好ましい。このような溶媒の例としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、アニソール、1,4−ジオキサン、クロロホルム等の、一般に水と共沸混合物を生成するような飽和及び不飽和炭化水素、エーテル、ハロゲン化炭化水素等が使用できる。
共沸蒸留後の共沸混合物からの水の分離を考えれば、水の溶解度の低い飽和及び不飽和炭化水素を溶媒として使用することが好ましい。このような溶媒を使用する場合には、共沸によって水を充分除去できる量以上を使うことが必要である。蒸留塔等を用いて共沸蒸留をおこなう場合には、共沸混合物を蒸留塔で分離して、溶媒を反応液内に戻せるので、比較的少量の溶媒量でよいので好ましい方法である。
【0068】
工程(3)における反応によって、例えば、式(1)および/または式(2)の有機金属化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性有機金属化合物を含む有機金属化合物混合物を得ることができる。
工程(3)における反応からの水の生成が殆どなくなれば、工程(3)を終了することができる。水の除去量によって、繰り返しおこなう工程(1)で得られる炭酸エステルの収量が決まるために、なるべく多くの水を除去しておくことが好ましい。
通常、工程(3)で除去する水の量は、例えば、式(1)で表される有機金属化合物のみが生成したとして求めた理論量の0.01から1倍の範囲内であるが、通常、理論量の1倍よりも少ない量の水が除去される。本発明者らの検討によれば、ジブチル酸化スズとアルコールからの有機金属化合物を得て工程(1)から工程(4)を繰り返した際の工程(3)で除去される水の量は、最初のジブチル酸化スズとアルコールから反応性有機金属化合物を得る際に発生する水の量よりも少なかった。工程(2)で該第1の部分(炭酸エステルと該劣化物を含む)の分離のために水を加えた場合は、得られる白色固体が含水していて、工程(3)で除去される水の量は理論量の1倍を超える場合もある。繰り返し反応を実施した場合については、工程(1)で得られる反応混合物中の該再生可能な変性有機金属化合物の構造は未だ特定されていないために、理論量を求めることは難しい。この場合には、経時的に水の除去量を測定して、水の留去がほとんどなくなってから終了すればよい。
【0069】
工程(3)の終了後、必要に応じて、過剰量のアルコールを除去してもよい。繰り返しおこなう工程(1)で得られる炭酸エステルの純度を考えれば、除去することが好ましい。繰り返し行う工程(1)で、工程(3)と同じアルコールを使用する場合には、工程(3)の終了後にアルコールを除去しなくてもよいし、また、工程(1)の実施時に不足分を追加してもよい。
過剰量のアルコールの除去は、得られる有機金属化合物混合物が固体の場合には、濾過によって濾液として除くことができるが、有機金属化合物混合物が液体の場合は減圧蒸留による除去、窒素等の不活性ガスを送り込んで蒸気圧分のアルコールの除去をおこなうことができる。この際、充分に乾燥させた不活性ガスを使用しなければ、得られた有機金属化合物混合物が、金属酸化物とアルコールに加水分解し、繰り返しおこなう工程(1)で得られる炭酸エステルの収量が極めて低くなる場合がある。工程(1)から工程(3)は断続的におこなってもよいし、バッチ式におこなってもよい。
【0070】
前記のように、場合によっては、工程(1)と工程(2)は同時におこなうことができる。また、場合によっては、工程(2)と工程(3)は同時におこなうことができる。また、場合によっては、工程(1)から工程(3)は同時におこなうことができる。更に、本発明の方法を繰り返しておこなう際に、場合によっては、工程(3)と次のサイクルの工程(1)を同時におこなうことができる。これらについて以下説明する。
【0071】
(工程(1)と工程(2)を同時におこなう場合)
工程(1)の反応の実施時に、液相と気相部が存在する場合と、高温高圧で二酸化炭素が超臨界状態となって、反応液が均一状態となる場合があるが、工程(1)と工程(2)を同時におこなうことのできる場合は、液相と気相に分離している場合である。このような温度圧力は、反応性有機金属化合物のアルコキシ基の種類や、アルコールを使用する場合にはアルコールの種類によって異なるが、200℃以下、8MPa以下の場合である。すなわち、炭酸エステルは二酸化炭素への溶解度が高いので、気相部分へ一部溶解している。従って、工程(1)実施時に気相部分を一部抜き出しながら反応させれば、該第1の部分(炭酸エステルと再生不能な非反応性化合物を含有する)を反応混合物から分離することができる。
【0072】
(工程(2)と工程(3)を同時におこなう場合)
反応性有機金属化合物が、水よりも沸点の高いアルコールから得られた反応性有機金属化合物の場合であって、更に工程(1)あるいは工程(2)で炭素数1から3のアルキルアルコールを使用する場合に実施できる。工程(1)で得られた反応液を不活性気体、たとえば二酸化炭素気流下で、得られた炭酸エステルと該劣化物および水を不活性気体の気流と共に除くことで炭酸エステルと該劣化物と水を分離できる。また、公知の膜分離などの方法を使用してもよい。水と炭酸エステルと該劣化物を反応液から膜によって除去することで連続して炭酸エステルを分離することができる。
【0073】
(工程(1)から工程(3)を同時におこなう場合)
工程(1)の反応の実施時に、液相と気相部が存在する場合と、高温高圧で二酸化炭素が超臨界状態となって、反応液が均一状態となる場合があるが、工程(1)から工程(3)を同時におこなえる場合は、液相と気相に分離している場合であり、かつ、反応性有機金属化合物が、水よりも沸点の高いアルコールから得られた反応性有機金属化合物の場合であって、更に炭酸数1から3のアルキルアルコールを使用した場合に実施できる。更に好ましいアルキルアルコールはメタノール、エタノールである。また、このような温度圧力は、反応性有機金属化合物のアルコキシ基の種類や、アルコールを使用する場合にはアルコールの種類によって異なるが、150℃以下、5MPa以下の場合である。水及び炭酸エステルと該劣化物は二酸化炭素への溶解度が高いので、気相部分へ一部溶解しており、従って、気相部分を一部抜き出しながら反応させることによって、有機金属化合物を再生させながら炭酸エステルと該劣化物をも分離することができる。また、上記の方法以外に、該有機金属化合物混合物を使用して、固定床の反応をおこなってもよい。二酸化炭素と炭素数1から3のアルコールを固定化された該有機金属化合物混合物へ流通させて、二酸化炭素気流と共に水および炭酸エステルと該劣化物を得ることができる。該有機金属化合物混合物を固定化する担体としては公知の担体が使用できる。
【0074】
(本発明の方法を繰り返しておこなう際に工程(3)と次のサイクルの工程(1)を同時におこなう場合)
本発明の方法を繰り返しておこなう際に、工程(3)を二酸化炭素雰囲気中又は二酸化炭素存在下でおこなうことで、工程(3)と次のサイクルの工程(1)を同時に実施できる。即ち、工程(2)で得られた第2の部分をアルコールと反応させて反応性有機金属化合物を再生しながら、その際に発生する水を除去し、且つ再生された該反応性有機金属化合物を二酸化炭素と反応させて炭酸エステルを得ることができる。このように工程(3)と次のサイクルの工程(1)を同時におこなうことのできる場合は、反応系の状態が液相と気相に分離している場合である。これに適した温度と圧力は、反応性有機金属化合物のアルコキシ基の種類や、使用するアルコールの種類によって異なるが、200℃以下、1MPa以下の場合である。好ましくは、常圧で100℃より高い沸点をもつアルコールを使用して、反応温度が該沸点以下であって、常圧から0.5MPa以下の圧力下で該反応性有機金属化合物を二酸化炭素と反応させる場合である。更に好ましくは、常圧の二酸化炭素を工程(3)の反応液中に流しながら、発生する水を二酸化炭素と共に系外に抜きだす場合である。
【0075】
上記のように、工程(3)に引き続き、工程(3)で得られた該有機金属化合物混合物を回収して工程(1)へリサイクルする工程(4)を付加してよい。その後、工程(1)から工程(4)までを1回以上繰り返しておこなうことができる。リサイクルする際、該有機金属化合物混合物を冷却してもよく、加熱した後にリサイクルしてもよい。この工程(4)を連続的に実施しても、バッチ式に実施してもよい。
【0076】
工程(3)において、高温で加熱したり、長時間加熱しつづけると、該劣化物が多く生成する。この成分の生成がなるべく少なくなるような条件で実施することが好ましい。該劣化物(再生不能な非反応性化合物は)、上記式(1)の有機金属化合物及び式(2)の有機金属化合物を加熱した際に不均化反応で生成し、二酸化炭素雰囲気では、該不均化は遅いので、主にこの工程(3)で該再生不能な非反応性化合物は生成する。工程(3)以前に蓄積された該劣化物や、工程(3)実施中に新たに生成した該劣化物を工程(3)で抜き出すことができる。これは、工程(3)で得られる反応性有機金属化合物よりも式(6)であらわされる該劣化物の沸点が低いからである。工程(3)で該劣化物を抜き出すには、蒸留による方法や、膜分離による方法が使用できる。蒸留や膜分離の方法は公知の方法が好ましく適用でき、たとえば、加圧、減圧、過熱による蒸留方法や、薄膜蒸留、膜を用いたパーベーパレーションの方法が好ましく使用できる。工程(3)で水を除去した後に、減圧度を高めて劣化物を留去することが工程数の増加が少なく、更に好ましい方法である。蒸留温度は、劣化物が蒸気圧を持つ範囲であればどのような温度であってもかまわないが、好ましくは約20℃から300℃の間で実施できる。高温で加熱蒸留すれば更に劣化物が増加する恐れもあるので、20℃から200℃の間で実施することが更に好ましい。
上記した分子内に金属−炭素結合を少なくとも3つ有する再生不能な非反応性化合物以外に固形劣化物が生成する場合もある。これは、分子内に金属−炭素結合を少なくとも3つ有する再生不能な非反応性化合物の対となる不均化生成物に由来するものと推定される。主に例えば酸化チタン、酸化スズのような酸化金属である。このような固形劣化物は容易にろ過によって除去できる。本発明の方法の工程(1)、水を加えない場合の工程(2)、工程(3)では、反応液は均一な液体となっている場合が多く、繰り返して有機金属化合物を使用していて、それらの工程に固形分が析出してくれば、ろ過して固形劣化物を除去すればよい。ろ過方法は公知の方法が使用できる。たとえば、常圧でのろ過、減圧濾過、加圧ろ過、遠心分離法などである。ろ過中に水分が混入すれば、有用な有機金属化合物が加水分解して固化する場合があるので、十分注意して加水分解反応を抑制すれば、有用な有機金属化合物を共に除去することがないので好ましい。
【0077】
次に、反応器について説明する。
工程(1)および工程(2)および工程(3)で使用する反応器の形式に特に制限はなく、攪拌槽方式、多段攪拌槽方式、多段蒸留塔を用いる方式、及びこれらを組み合わせた方式等、公知の種々の方法が用いられる。これらの反応器はバッチ式、連続式のいずれでも使用できる。主に工程(1)および工程(3)は平衡を生成系側に効率的にずらすという点で、多段蒸留塔を用いる方法が好ましく、多段蒸留塔を用いた連続法が特に好ましい。多段蒸留塔とは、蒸留の理論段数が2段以上の多段を有する蒸留塔であって、連続蒸留が可能なものであるならばどのようなものであってもよい。このような多段蒸留塔としては、例えば泡鍾トレイ、多孔板トレイ、バルブトレイ、向流トレイ等のトレイを使用した棚段塔方式のものや、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、ヘリパック、スルザーパッキング、メラパック等の各種充填物を充填した充填塔方式のものなど、通常多段蒸留塔として用いられるものならばどのようなものでも使用することができる。さらには棚段部分と充填物の充填された部分とをあわせもつ棚段−充填混合塔方式のものも好ましく用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下、本発明を実施例と比較例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<分析方法>
(1)有機金属化合物のNMR分析方法
装置:日本国、日本電子(株)社製JNM−A400 FTNMRシステム
H−、13C−、119Sn−NMR分析サンプル溶液の作成:
反応溶液を0.1から1gの範囲で計り取り、更に0.05gのテトラメチルスズ、約0.85gの重クロロホルムを加えてサンプル溶液とする。
(2)炭酸エステルのガスクロマトグラフィー分析法
装置:日本国、(株)島津製作所製GC−2010システム
(i)分析サンプル溶液の作成
反応溶液を0.06gを計り取り、脱水されたジメチルホルムアミド又はアセトニトリルを約2.5ml加える。さらに内部標準としてジフェニルエーテル約0.06gを加えて、ガスクロマトグラフィー分析サンプル溶液とする。
(ii)ガスクロマトグラフィー分析条件
カラム:DB−1(米国、J&W Scientific)
液相:100%ジメチルポリシロキサン
カラム長さ:30m
カラム内径:0.25mm
フィルム厚さ:1μm
カラム温度:50℃(10℃/minで昇温)300℃
インジェクション温度:300℃
検出器温度:300℃
検出法:FID
(iii)定量分析法
炭酸エステルの標準サンプルについて分析を実施し作成した検量線を基に、分析サンプル溶液の定量分析を実施する。
(3)炭酸エステル(炭酸ジアルキル)の収率計算方法
炭酸ジアルキルの収率は、工程(1)で使用した反応性有機金属化合物に含まれる金属原子のモル数を基準にして、そのモル数に対して、得られた炭酸ジアルキルの生成モル%で求めた。
【実施例1】
【0079】
まず、以下のようにして、ジブチル酸化スズと2−エチル−1−ヘキサノールから2−エチルヘキシルオキシ基を有する反応性有機金属化合物を得た。
蒸留のための冷却管と内温を測定するための温度計、真空ポンプと真空度調節用の真空コントローラー(日本国、岡野製作所社製)を備えた容量1Lの4つ口フラスコに、ジブチル酸化スズ(米国、Aldrich社製)249g(1.0mol)および2−エチル−1−ヘキサノール(米国、Aldrich社製 脱水グレード)650g(5.0mol)および攪拌のための攪拌子を入れオイルバスに浸漬した。フラスコ内を窒素置換した後、攪拌を開始し、172℃まで加熱した。徐々に減圧しながら水および2−エチル−1−ヘキサノールをパージラインから抜き出しながら約7時間かけて反応させた。最終的な減圧度は28KPaであった。留出分がほとんどなくなった後、オイルバスからフラスコをあげて冷却し、窒素でフラスコ内部を常圧に戻した。以上の操作で約13gの水が留去されていた。410gの粘稠な液体が得られ、得られた粘稠な液をH−、13C−、119Sn−NMR分析して、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−(2−エチル−ヘキシルオキシ)−ジ−スタンオキサン、ジブチルスズジ(2−エチル−ヘキシルオキシド)、トリブチルスズ(2−エチル−ヘキシルオキシド)が含まれていることを確認した。
工程(1)
上記で得た液体のうち、404gを500mlオートクレーブ(日本国、東洋高圧社製)に入れて蓋をした。オートクレーブ内部を窒素置換した後、SUSチューブとバルブを介してオートクレーブに接続された二酸化炭素のボンベの2次圧を4MPaに設定した後、バルブを開け、オートクレーブへ二酸化炭素導入した。10分間攪拌し、バルブを閉め、オートクレーブを攪拌したまま、温度を120℃まで昇温した。この際、オートクレーブ内圧が4MPaとなるように背圧弁で調整した。この状態のまま3時間反応させ、その後、約30℃まで冷却し、パージラインから二酸化炭素を静かにパージして常圧に戻したところ、透明な反応液が得られた。炭酸ジ(2−エチル−ヘキシル)の収率は25%であった。この反応液をH−、13C−、119Sn−NMR分析して、トリブチルスズ(2−エチル−ヘキシルオキシド)およびその二酸化炭素付加体が併せて約0.1mol含まれていることを確認した(これらは再生不能な非反応性化合物である)。
工程(2)
工程(1)終了後の液約120gを130℃、約65Paとした薄膜蒸留装置(日本国、柴田科学社製 E−420)に送液ポンプ(日本国、島津製作所社製 LC−10AT)で3g/分でフィードして揮発成分を留去し、冷却して回収した。約14gが揮発成分として留去された。揮発成分中の炭酸ジ(2−エチル−ヘキシル)は、フィード液に含まれていた炭酸ジ(2−エチル−ヘキシル)の約50%であった。揮発成分液をH−、13C−、119Sn−NMR分析して、トリブチルスズ(2−エチル−ヘキシルオキシド)が約0.02mol含まれていることを確認した。
工程(3)
蒸留のための冷却管と内温を測定するための温度計、真空ポンプと真空度調節用の真空コントローラー(日本国、岡野製作所社製)を備えた容量300mlの4つ口フラスコに、上記工程で得られた非揮発成分約100gとジブチル酸化スズ(米国、Aldrich社製)5g(約2mmol)および2−エチル−1−ヘキサノール(米国、Aldrich社製 脱水グレード)216g(1.7mol)および攪拌のための攪拌子を入れオイルバスに浸漬した。フラスコ内を窒素置換した後、攪拌を開始し、172℃まで加熱した。徐々に減圧しながら水および2−エチル−1−ヘキサノールをパージラインから抜き出しながら約7時間かけて反応させた。最終的な減圧度は28KPaであった。留出分がほとんどなくなった後、オイルバスからフラスコをあげて冷却し、窒素でフラスコ内部を常圧に戻した。粘稠な液体が得られ、得られた粘稠な液をH−、13C−、119Sn−NMR分析して、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−(2−エチル−ヘキシルオキシ)−ジ−スタンオキサン、ジブチルスズジ(2−エチル−ヘキシルオキシド)、トリブチルスズ(2−エチル−ヘキシルオキシド)が含まれていることを確認した(これら3つの化合物のうち、最初の2つが再生可能な変性有機金属化合物で、最後の1つが再生不能な非反応性化合物である)。
工程(3)で得られた粘稠な液体を回収し、工程(1)をおこなう。
上記で得た液体のうち、79gを100mlオートクレーブ(日本国、東洋高圧社製)に入れて蓋をした。オートクレーブ内部を窒素置換した後、SUSチューブとバルブを介してオートクレーブに接続された二酸化炭素のボンベの2次圧を4MPaに設定した後、バルブを開け、オートクレーブへ二酸化炭素導入した。10分間攪拌し、バルブを閉め、オートクレーブを攪拌したまま、温度を120℃まで昇温した。この際、オートクレーブ内圧が4MPaとなるように背圧弁で調整した。この状態のまま3時間反応させ、その後、約30℃まで冷却し、パージラインから二酸化炭素を静かにパージして常圧に戻したところ、透明な反応液が得られた。炭酸ジ(2−エチル−1−ヘキシル)の収率は25%であった。
工程(1)終了後の液約25gを130℃、約65Paとした薄膜蒸留装置(日本国、柴田科学社製 E−420)に送液ポンプ(日本国、島津製作所社製 LC−10AT)で3g/分でフィードして揮発成分を留去し、冷却して回収した。約14gが揮発成分として留去された。揮発成分中の炭酸ジ(2−エチル−ヘキシル)は、フィード液に含まれていた炭酸ジ(2−エチル−ヘキシル)の約50%であった。揮発成分液をH−、13C−、119Sn−NMR分析して、トリブチルスズ(2−エチル−ヘキシルオキシド)が約0.005mol含まれていることを確認した。
【実施例2】
【0080】
まず、以下のようにして、ジブチル酸化スズとヘキサノールからヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物を得た。
200mlオートクレーブ(日本国、東洋高圧社製)にジブチル酸化スズ(米国、Aldrlch社製)24.9g(100mmol)及びヘキサノール(米国、Aldrich社製 脱水グレード)51.1g(500mmol)を入れて蓋をした。オートクレーブ内を窒素置換した後、攪拌を開始し、160℃まで加熱した。約30分後、オートクレーブのパージラインを開け、オートクレーブのボトムから窒素を少量流しながら、水及びヘキサノールをパージラインから4時間かけて留去した。留出分がほとんどなくなったらオートクレーブを約30℃まで冷却した。粘稠な反応混合物が得られた。反応混合物のH−、13C−、119Sn−NMR分析をおこなった。1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−ヘキシルオキシ−ジ−スタンオキサンが約40mmol、ジブチルスズジヘキシルオキシドを約6mmol、トリブチルスズヘキシルオキシドを約4mmol含んでいた。
工程(1)
上記で得られたヘキシルオキシ基を有する有機金属化合物の入った200mlオートクレーブに、ヘキサノール(米国、Aldrich社製、脱水グレード)61.5g(602mmol)を加えて蓋をした。SUSチューブとバルブを介してオートクレーブに接続された二酸化炭素のボンベの2次圧を5MPaに設定した後、バルブを開け、オートクレーブへ二酸化炭素導入した。10分間攪拌し、バルブを閉めた。オートクレーブを攪拌したまま、温度を180℃まで昇温した。このときの圧力は約7.5MPaであり、この状態のまま6時間反応させた。その後、約30℃まで冷却したのち、パージラインから二酸化炭素を静かにパージして常圧に戻し、透明な反応液の中に炭酸ジヘキシルを収率14%で得た。
工程(2)
工程(1)終了後、1%の水を含んだヘキサノールを10g調製してオートクレーブに静かに注入し、約1分攪拌した後、攪拌を止めた。オートクレーブをあけると白色のスラリー液になっていた。この白色スラリーをメンブランフィルター(日本国、ADVANTEC社製 H020A142C)で濾過し、白色固形物をヘキサノール20mlで2回洗浄した。得られた濾液を1Lなす形フラスコに移し、オイルバス温度160℃で加熱減圧蒸留した。ヘキサノールとトリブチルスズヘキシルオキシド、炭酸ジヘキシルが蒸留され、炭酸ジヘキシルを収率13%で得られた。トリブチルスズヘキシルオキシドは約2mmol留去されていた。フラスコには粘稠な液体が残った。
工程(3)
工程(2)で得られた白色固形物と、炭酸ジヘキシルを蒸留後にフラスコに残った粘稠な液体をあわせて200mlオートクレーブ(日本国、東洋高圧社製)に入れた。更に、ヘキサノール(米国、Aldrich社製、脱水グレード)51.1g(500mmol)を入れて蓋をした。オートクレーブ内を窒素置換した後、攪拌を開始し、160℃まで加熱した。約30分後、オートクレーブのパージラインを開け、オートクレーブのボトムから窒素を少量流しながら、水及びヘキサノールをパージラインから4時間かけて留去した。留出分がほとんどなくなった後、オートクレーブを約30℃まで冷却した。H−、13C−、119Sn−NMR分析した結果、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−ヘキシルオキシ−ジ−スタンオキサンを約40mmol、ジブチルスズジヘキシルオキシドを約7mmol、トリブチルスズヘキシルオキシドは約4mmol生成していた。
工程(3)を終了し、引き続き工程(1)を以下のようにおこなう。
工程(3)まで終了したオートクレーブに、ヘキサノール(米国、Aldrich社製、脱水グレード)61.5g(602mmol)を加えて蓋をした。SUSチューブとバルブを介してオートクレーブに接続された二酸化炭素のボンベの2次圧を5MPaに設定した後、バルブを開け、オートクレーブへ二酸化炭素導入した。10分間攪拌し、バルブを閉めた。オートクレーブを攪拌したまま、温度を180℃まで昇温した。このときの圧力は約7.5MPaであった。この状態のまま6時間反応させ、その後、約30℃まで冷却し、パージラインから二酸化炭素を静かにパージして常圧に戻した。透明な反応液が生成しており、炭酸ジヘキシルを収率14%で得た。
工程(1)終了後、1%の水を含んだヘキサノールを10g調製してオートクレーブに静かに注入し、約1分攪拌した後、攪拌を止め、オートクレーブをあけて白色のスラリー液を得た。この白色スラリーをメンブランフィルター(日本国、ADVANTEC社製 H020A142C)で濾過し、白色固形物をヘキサノール20mlで2回洗浄した。得られる濾液を1Lなす形フラスコに移し、オイルバス温度160℃で加熱減圧蒸留した。ヘキサノールとトリブチルスズヘキシルオキシド、炭酸ジヘキシルを蒸留し、炭酸ジヘキシルを収率13%で得た。トリブチルスズヘキシルオキシドは約2mmol留去されていた。
【実施例3】
【0081】
まず、以下のようにして、ジブチル酸化スズと3−メチル−1−ブタノールから3−メチル−ブトキシ基を有する反応性有機金属化合物を得た。
真空コントローラーおよび真空ポンプに接続した冷却管とディーンスターク管(Dean−Stark trap)を備えた1L4つ口フラスコにジブチル酸化スズ(米国、Aldrich社製)70.5g(0.28mol)及び3−メチル−1−ブタノール(米国、Aldrich社製)502g(5.7mol)、攪拌のための攪拌子を入れた。このフラスコを140℃としたオイルバスに浸漬し、攪拌を開始し、徐々に減圧して約90KPaとした。この状態で留出物を除去しながら徐々に減圧度を85KPaに下げた。反応開始から約12時間続けた。その後、徐々に減圧して未反応物を留去し、最終的に減圧度を約200Paとして30分間かけて未反応のアルコールを留去した。フラスコをオイルバスからあげて、冷却し、窒素で常圧に戻した。粘稠な液体127gを得た。留去された液体を分析したところ、約260mmolの水が留去されていた。得られた粘稠な液体をH−、13C−、119Sn−NMR分析したところ、ジブチル−ビス(3−メチル−ブトキシ)−スズと、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−(3−メチル−ブトキシ)−ジ−スタンオキサン、トリブチル−(3−メチル−ブトキシ)−スズが生成していた。
工程(1):
200mlオートクレーブ(日本国、東洋高圧社製)に上記で得られた粘稠な液体114gを入れて蓋をした。オートクレーブ内を窒素置換した後、SUSチューブとバルブを介してオートクレーブに接続された二酸化炭素のボンベの2次圧を5MPaに設定した後、バルブを開け、オートクレーブへ二酸化炭素導入した。10分間攪拌し、バルブを閉めた。オートクレーブを攪拌したまま、温度を120℃まで昇温した。オートクレーブの内圧が常に約4MPaとなるように調整しながら、この状態のまま4時間反応させた。途中サンプリングした結果、反応1時間後に、ジ(3−メチル−ブチル)カーボネートが18%生成し、4時間後の収率は20.4%であった。オートクレーブを放冷したのち、二酸化炭素をパージした。
工程(2):
工程(1)終了後、オートクレーブを室温(約20℃)まで冷却したのち、開放して反応混合液をとりだした。蒸留のための冷却管と真空ポンプおよび真空コントローラー(日本国、岡野製作所社製)を備えた300mlナスフラスコに入れ、攪拌のための攪拌子を入れた後、このナスフラスコをオイルバスに浸漬して攪拌を開始した。オイルバス温度を140℃として、徐々に減圧して、3−メチル−1−ブタノールを留去した後、ジ(3−メチル−ブチル)カーボネートを留去して約9gのジ(3−メチル−ブチル)カーボネートと約1mmolのトリブチル−(3−メチル−ブトキシ)−スズを得た。
工程(3):
真空コントローラーおよび真空ポンプに接続した冷却管とディーンスターク管(Dean−Stark trap)を備えた1L4つ口フラスコに上記工程(2)で得られた蒸留残さ液及び3−メチル−1−ブタノール(米国、Aldrich社製)502g(5.7mol)、攪拌のための攪拌子を入れた。このフラスコを140℃としたオイルバスに浸漬し、攪拌を開始し、徐々に減圧して約90KPaとした。この状態で留出物を除去しながら徐々に減圧度を85KPaに下げた。反応開始から約20時間続けた。その後、徐々に減圧して未反応物を留去し、最終的に減圧度を約200Paとして30分間かけて未反応のアルコールを留去した。反応液をサンプリングしてH−、13C−、119Sn−NMR分析したところ、ジブチル−ビス(3−メチル−ブトキシ)−スズと、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−(3−メチル−ブトキシ)−ジ−スタンオキサンが生成しており、さらにトリブチル−(3−メチル−ブトキシ)−スズが約2mmol生成していた。内部の液温が約93℃となるようにオイルバス温度をさげて、減圧度を50Paとして留出物を留去した。フラスコをオイルバスからあげて、冷却し、窒素で常圧に戻した。粘稠な液体110gを得た。得られた粘稠な液体をH−、13C−、119Sn−NMR分析したところ、ジブチル−ビス(3−メチル−ブトキシ)−スズと、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−(3−メチル−ブトキシ)−ジ−スタンオキサンが得られ、トリブチル−(3−メチル−ブトキシ)−スズが約1mmol留去されていた。
工程(1):
200mlオートクレーブ(日本国、東洋高圧社製)に上記で得られた粘稠な液体112gを入れて蓋をした。オートクレーブ内を窒素置換した後、SUSチューブとバルブを介してオートクレーブに接続された二酸化炭素のボンベの2次圧を5MPaに設定した後、バルブを開け、オートクレーブへ二酸化炭素導入した。10分間攪拌し、バルブを閉めた。オートクレーブを攪拌したまま、温度を120℃まで昇温した。オートクレーブの内圧が常に約4MPaとなるように調整しながら、この状態のまま4時間反応させた。途中サンプリングした結果、反応1時間後に、ジ(3−メチル−ブチル)カーボネートが18%生成し、4時間後の収率は20.4%であった。オートクレーブを放冷したのち、二酸化炭素をパージした。
工程(2):
工程(1)終了後、オートクレーブを室温(約20℃)まで冷却したのち、開放して反応混合液をとりだした。蒸留のための冷却管と真空ポンプおよび真空コントローラー(日本国、岡野製作所社製)を備えた300mlナスフラスコに入れ、攪拌のための攪拌子を入れた後、このナスフラスコをオイルバスに浸漬して攪拌を開始した。オイルバス温度を140℃として、徐々に減圧して、3−メチル−1−ブタノールを留去した後、ジ(3−メチル−ブチル)カーボネートを留去して約9gのジ(3−メチル−ブチル)カーボネートと約1mmolのトリブチル−(3−メチル−ブトキシ)−スズを得た。
工程(3):
真空コントローラーおよび真空ポンプに接続した冷却管とディーンスターク管(Dean−Stark trap)を備えた1L4つ口フラスコに上記工程(2)で得られた蒸留残さ液及び3−メチル−1−ブタノール(米国、Aldrich社製)502g(5.7mol)、ジブチル酸化スズ1g(4mmol)、攪拌のための攪拌子を入れた。このフラスコを140℃としたオイルバスに浸漬し、攪拌を開始し、徐々に減圧して約90KPaとした。この状態で留出物を除去しながら徐々に減圧度を85KPaに下げた。反応開始から約20時間続けた。その後、徐々に減圧して未反応物を留去し、最終的に減圧度を約200Paとして30分間かけて未反応のアルコールを留去した。得られた粘稠な液体をサンプリングしてH−、13C−、119Sn−NMR分析したところ、ジブチル−ビス(3−メチル−ブトキシ)−スズと、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−(3−メチル−ブトキシ)−ジ−スタンオキサンが生成しており、さらにトリブチル−(3−メチル−ブトキシ)−スズが約2mmol生成していた。内部の液温が約93℃となるようにオイルバス温度をさげて、減圧度を50Paとして留出物を留去した。フラスコをオイルバスからあげて、冷却し、窒素で常圧に戻した。粘稠な液体110gを得た。得られた粘稠な液体をH−、13C−、119Sn−NMR分析したところ、ジブチル−ビス(3−メチル−ブトキシ)−スズと、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ−(3−メチル−ブトキシ)−ジ−スタンオキサンが得られ、トリブチル−(3−メチル−ブトキシ)−スズが約1mmol留去されていた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の方法によると、分子内に金属−酸素−炭素結合を少なくとも2つ有する反応性有機金属化合物と二酸化炭素から高い収率で炭酸エステルを製造することができる。二酸化炭素は、毒性や腐食性がなく廉価であり、また、本発明の方法では該有機金属化合物を再生・リサイクルして繰り返し使用できるうえに、生成する再生不能な非反応性有機金属化合物を系外へ除去できるため、効率的で安定した生産を実現できる。更に、廃棄物となる大量の脱水剤を用いる必要もないため、本発明の製造方法は産業上に大いに有用であり、商業的価値が高い。

Claims (17)

  1. 炭酸エステルの製造方法であって、
    (1)下記式(1)で表される有機金属化合物及び下記式(2)で表される有機金属化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を包含する反応性有機金属化合物と、該反応性有機金属化合物に由来し、分子内に金属−炭素結合を少なくとも3つ有する再生不能な非反応性化合物からなる有機金属化合物混合物と二酸化炭素とを反応させて、
    該反応で形成された炭酸エステルと、該再生不能な非反応性化合物と、該反応性有機金属化合物に由来する再生可能な変性有機金属化合物とを含有する反応混合物を得、
    (2)該反応混合物を、該炭酸エステルと該再生不能な非反応性化合物を含有する第1の部分と、該再生可能な変性有機金属化合物を含有する第2の部分とに分離し、そして
    (3)反応混合物の該第2の部分を第1のアルコールと反応させて、分子内に金属−酸素−炭素結合を少なくとも2つ有する反応性有機金属化合物と、該反応性有機金属化合物に由来し、分子内に金属−炭素結合を少なくとも3つ有する再生不能な非反応性化合物からなる有機金属化合物混合物と水を形成し、そして該水を該有機金属化合物混合物から除去する、
    ことを特徴とする方法。
    Figure 0004397810
    (式中:
    は、ケイ素を除く周期律表第4族と第14族の元素よりなる群から選ばれる金属原子を表し;
    及びR は各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表し;
    及びR は各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表し;そして
    a及びbは各々0〜2の整数であり、a+b=0〜2、c及びdは各々0〜4の整数であり、a+b+c+d=4である。)
    Figure 0004397810
    (式中:
    及びM は各々独立に、ケイ素を除く周期律表第4族と第14族の元素よりなる群から選ばれる金属原子を表し;
    、R 、R 及びR は各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表し;
    及びR 10 は各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表し;そして
    e、f、g、hは各々0〜2の整数であり、e+f=0〜2、g+h=0〜2、i及びjは各々1〜3の整数であり、e+f+i=3、g+h+j=3である。)
  2. 工程(3)の後に、工程(3)で得られた該有機金属化合物混合物を回収して工程(1)へリサイクルする工程(4)を更に包含することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 式(1)のRとR及び式(2)のRとR10が各々独立に、n−ブチル基、iso−ブチル基、直鎖状または分岐状の炭素数5〜12のアルキル基、または直鎖状または分岐状の炭素数4〜12のアルケニル基を表すことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. 式(1)のM及び式(2)のMとMがスズ原子を表すことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 工程(1)で用いる該反応性有機金属化合物が、有機スズオキサイドとアルコールから製造されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 工程(1)において、該反応性有機金属化合物を、単量体、オリゴマー、ポリマー及び会合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の形態で用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 工程(1)における該反応性有機金属化合物の使用量が、該二酸化炭素に対する化学量論量の1/50〜1倍の範囲であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 工程(1)の該反応を20℃以上で行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 工程(1)の該反応を、工程(3)で用いる第1のアルコールと同じかまたは異なる第2のアルコールの存在下で行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  10. 工程(2)において、該反応混合物の該第1の部分と該第2の部分への分離を、蒸留、抽出及び濾過よりなる群から選ばれる少なくとも1種の分離方法によって行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
  11. 工程(2)において、該反応混合物の該第1の部分と該第2の部分への分離を、工程(3)で用いる第1のアルコールと同じかまたは異なる第3のアルコールの存在下で行うことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 工程(3)で用いる該第1のアルコールが、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキルアルコール、炭素数5〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキルアルコール、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基を有するアルケニルアルコール、及び無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を有するアラルキルアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコールであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
  13. 該第1のアルコールの常圧での沸点が水よりも高いことを特徴とする請求項12に記載の方法。
  14. 該第1のアルコールが、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、直鎖状または分岐状の炭素数5〜12のアルキル基を有するアルキルアルコール、直鎖状または分岐状の炭素数4〜12のアルケニル基を有するアルケニルアルコール、炭素数5〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキルアルコール、及び無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を有するアラルキルアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコールであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
  15. 工程(3)の該水の除去を、膜分離によって行うことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
  16. 該膜分離がパーベーパレーションであることを特徴とする請求項15に記載の方法。
  17. 工程(3)の該水の除去を、蒸留によって行うことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
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