JP4397563B2 - 多層構造体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた抗菌性、汚れ防止機能および成形性を有する多層構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、内装材として、安価で丈夫なポリ塩化ビニル樹脂を含む積層体が用いられている。しかしこれらポリ塩化ビニル樹脂層を含む壁紙や、一般家庭、病院、医院、飲食店、工場、船舶、電車、自動車などの天井材、壁面材、床材などに用いられる化粧板(以下壁紙と総称する)は、たばこの煙、手垢、落書き、各種食品中の色素などで汚染されやすい。またポリ塩化ビニル樹脂用の可塑剤が、壁紙の表面にブリードする。このブリードした可塑剤に埃が付着し、ポリ塩化ビニル樹脂層を含む壁紙はさらに汚れ易くなる。また病院や医院などで問題となっている院内感染を防ぐ、菌の増殖抑制効果がないという問題もある。
【0003】
これらの問題を解決するために、エチレン含有率20〜65モル%、ビニルエステル成分の鹸化度90モル%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体90〜99.9重量%、および抗菌性の金属イオンを有する無機オキソ酸塩10〜0.1重量%からなる組成物、ならびに前記組成物からなる層を、可塑剤を含有するポリ塩化ビニル樹脂層の少なくとも一面に有する壁紙または化粧板が提案されている(特開平6−263933号公報)。
【0004】
上記壁紙は、汚れ防止性、耐可塑剤移行性に優れている。しかしながら、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略記することがある)は極めてバリア性に優れた樹脂であるため、樹脂中に練り込まれた抗菌剤粒子と菌体とが、実質的に接触することがなく、前記粒子のうち、現実的に抗菌作用を奏するのはEVOH樹脂組成物層の表面に付近に存在するものに限られる。このため、充分な抗菌作用をEVOH樹脂組成物層に付与するためには、多量の抗菌剤粒子を配合する必要があり、コストアップの要因となっていた。
【0005】
また、前記抗菌剤粒子をEVOHに大量に配合した場合、EVOH組成物層の成形性が低下することがあり、厚みむら等が発生する虞があった。このような厚みむらは、前記壁紙のエンボス加工性および耐可塑剤移行性を低下させる要因となっていた。このため、壁紙に使用されるEVOH樹脂組成物に強力な抗菌性を付与すると同時に、前記EVOH樹脂組成物の成形性を維持することは、必ずしも容易ではなかった。
【0006】
さらに、前記壁紙に高級感を持たせるために、EVOHおよび抗菌剤粒子からなる樹脂組成物に、カルボン酸変性ポリオレフィンを配合して艶消し層にすることが多い。ところが、樹脂組成物にカルボン酸変性ポリオレフィンを配合した場合には、抗菌剤粒子の過剰な配合によるEVOH樹脂組成物の成形性の低下がより顕著に生じる。このような実施態様においても、抗菌性および成形性のいずれにおいても優れた特性を示す壁紙が求められていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、優れた抗菌性、汚れ防止機能および成形性を有する多層構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、バリア性樹脂(A)および光触媒(B)からなる樹脂組成物(C)層、およびバリア性樹脂(D)層からなる多層構造体であって、光触媒(B)が、粒子径が0.01μm〜0.07μmの光触媒(b1)20〜80重量%および粒子径が0.1μm〜0.7μmの光触媒(b2)20〜80重量%からなる光触媒である多層構造体によって解決される。
【0009】
好適な実施態様では、本発明の多層構造体の樹脂組成物(C)層は、表面を化学的処理または物理的処理されてなる。より好適な実施態様では、前記の化学的処理または物理的処理が、溶媒処理、火炎処理およびコロナ処理から選ばれる少なくとも一種である。
【0010】
好適な実施態様では、前記バリア性樹脂(A)が、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である。
【0011】
好適な実施態様では、前記光触媒(B)が酸化チタンまたは酸化亜鉛である
【0012】
好適な実施態様では、前記樹脂組成物(C)が、バリア性樹脂(A)100重量部に対して光触媒(B)2〜30重量部を配合してなる樹脂組成物である。
【0013】
好適な実施態様では、前記バリア性樹脂(D)が、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である。さらに好ましくは、バリア性樹脂(D)が、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂ならびにポリオレフィン系樹脂からなる樹脂組成物である。
【0014】
好適な実施態様では、本発明の多層構造体は、樹脂組成物(C)およびバリア性樹脂(D)を共押出成形してなる多層構造体である。また、好適な実施態様では、多層構造体が、樹脂組成物(C)層とバリア性樹脂(D)層とが直接接触するように配置してなる多層構造体である。
【0015】
好適な実施態様では、本発明の多層構造体は樹脂組成物(C)層およびバリア性樹脂(D)層の合計厚みが5〜50μmである多層構造体である。
【0016】
好適な実施態様では、本発明の多層構造体は、ポリオレフィン系樹脂またはポリ塩化ビニル系樹脂からなる基材に対して、本発明の多層構造体を、樹脂組成物(C)層/バリア性樹脂(D)層/基材層の順番で積層して用いられる。
【0017】
好適な実施態様では、本発明の多層構造体は、内装材として用いられる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるバリア性樹脂(A)は、ガスバリア性を有する樹脂である。かかるバリア性樹脂(A)としては、酸素透過量が100ml・20μm/m・day(20℃−65%RHで測定した値)以下である樹脂が好ましい。酸素透過量の上限はより好適には10ml・20μm/m・day・atm以下であり、さらに好適には5ml・20μm/m・day・atm以下であり、特に好適には2ml・20μm/m・day・atm以下である。
【0019】
また、本発明に用いられるバリア性樹脂(A)として、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を用いることも好適である。
【0020】
本発明におけるポリビニルアルコール系樹脂とは、ビニルエステル重合体、またはビニルエステルと他の単量体との共重合体をアルカリ触媒等を用いてケン化して得られる樹脂のことを指す。
ビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。
【0021】
また、本発明のポリビニルアルコール系樹脂のビニルエステル成分のケン化度は好適には90%以上であり、より好適には95%以上であり、更に好適には99%以上である。ケン化度が90モル%未満では、樹脂組成物(C)層の汚れ防止機能および成形性が不充分となる虞がある。
なおここで、ポリビニルアルコール系樹脂がケン化度の異なる2種類以上のポリビニルアルコール系樹脂の配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をケン化度とする。かかるポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
【0022】
本発明のポリビニルアルコール系樹脂としては、溶融成形が可能で、かつ優れた汚れ防止機能を有する観点から、EVOHが好適である。また、本発明の多層構造体は、好適には壁紙等の内装材として用いられ、特に好適にはポリ塩化ビニル樹脂層を含む壁紙として用いられるが、EVOHを用いることにより、極めて優れた耐可塑剤移行性を多層構造体に付与することができる。
【0023】
本発明に用いられるEVOHとしては、エチレン−ビニルエステル共重合体をケン化して得られるものが好ましく、その中でも、エチレン含有量は0.5〜60モル%であることが好ましい。エチレン含有量の下限はより好適には5モル%以上であり、さらに好適には10モル%以上であり、特に好適には15モル%以上である。エチレン含有量の上限はより好適には55モル%以下であり、さらに好適には50モル%以下である。エチレン含有量が0.5モル%未満の場合は溶融成形性が悪化する虞があり、60モル%を超えると汚れ防止機能が不足する虞がある。
【0024】
さらに、本発明に用いられるEVOHのビニルエステル成分のケン化度は90%以上であることが好ましい。ビニルエステル成分のケン化度は、より好ましくは95%以上であり、最適には99%以上である。ケン化度が90%未満の場合は、樹脂組成物(C)層の汚れ防止機能および成形性が不充分となる虞がある。
【0025】
EVOH製造時に用いるビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。また、EVOHは共重合成分としてビニルシラン化合物0.0002〜0.2モル%を含有することができる。ここで、ビニルシラン系化合物としては、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシランが挙げられる。なかでも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。さらに、本発明の目的が阻害されない範囲で、他の共単量体、例えば、プロピレン、ブチレン、あるいは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチルもしくは(メタ)アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸またはそのエステル、及び、N−ビニルピロリドンなどのビニルピロリドンを共重合することも出来る。
【0026】
さらに、EVOHとしてホウ素化合物をブレンドしたEVOHを用いることもできる。ホウ素化合物をEVOHにブレンドする場合、前記EVOHのホウ素化合物の含有量は好ましくはホウ素元素換算で20〜2000ppm、より好ましくは50〜1000ppmである。この範囲にあることで加熱溶融時のトルク変動が抑制されたEVOHを得ることが可能であり、樹脂組成物(C)層の成形性を向上させることができる。20ppm未満ではそのような効果が小さく、2000ppmを超えるとゲル化しやすく、成形性不良となる場合がある。
【0027】
ここでホウ素化合物としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられる。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などが挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これらの化合物のうちでもオルトホウ酸(以下、単にホウ酸と表示する場合がある)が好ましい。
【0028】
また、本発明に用いられるEVOHとして、アルカリ金属塩をアルカリ金属元素換算で5〜5000ppmブレンドしたEVOHを用いることも層間接着性や相容性の改善のために効果的であることから好ましい。
前記EVOHのアルカリ金属塩のより好適な含有量は、アルカリ金属元素換算で20〜1000ppm、さらに好適には30〜500ppmである。ここでアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられ、アルカリ金属塩としては、一価金属の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、燐酸塩、金属錯体等が挙げられる。例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩等が挙げられる。中でも酢酸ナトリウム、酢酸カリウムが好適である。
【0029】
また、本発明に用いられるEVOHとして、リン酸化合物をリン酸根換算で20〜500ppmブレンドしたEVOHを用いても良い。前記EVOHのリン酸化合物のより好適な含有量は、リン酸根換算で30〜300ppmであり、最適には50〜200ppmである。かかる範囲でEVOHにリン酸化合物を含有させることにより、EVOHの溶融成形性や熱安定性を改善することができる。特に、かかる範囲でリン酸化合物を含有させることにより、EVOHを用いて長時間に渡る溶融成形を行なう際に、ゲル状ブツの発生や着色の発生を、効果的に抑制することが出来る。
【0030】
EVOH中に配合するリン酸化合物の種類は特に限定されるものではない。リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等を用いることができる。リン酸塩としては第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれの形で含まれていても良く、そのカチオン種も特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩であることが好ましい。中でもリン酸2水素ナトリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウムの形でリン酸化合物を添加することが好ましい。
【0031】
また本発明の目的を阻外しない範囲であれば、EVOHとして、熱安定剤、酸化防止剤、あるいはグリセリンやグリセリンモノステアレートなどの可塑剤をブレンドしたEVOHを用いても良い。
【0032】
本発明に用いられるEVOHの好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は0.1〜50g/10分であり、より好適には0.3〜40g/10分、更に好適には0.5〜30g/10分である。但し、融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値で表す。これらのEVOH樹脂は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0033】
本発明のバリア性樹脂(A)として用いられるポリアミド系樹脂は、アミド結合を有する重合体であって、例えば、ポリカプロアミド(ナイロン−6)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,12)の如き単独重合体、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ナイロン−6/11)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン−6,9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド共重合体(ナイロン−6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンセバカミド共重合体(ナイロン−6/6,6/6,12)、ポリメタキシリレンアジパミド(以下、MXD−6と略記することがある)、あるいはヘキサメチレンジアミンとm,p−フタル酸との重合体である芳香族系ナイロンなどが挙げられる。これらのポリアミド系樹脂は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0034】
これらのポリアミド系樹脂の中でも、成形性の観点からナイロン6成分を含むポリアミド樹脂(例えば、ナイロン−6、ナイロン−6,12、ナイロン−6/12、ナイロン−6/6,6等)が好ましく、ナイロン−6がより好ましい。本発明の多層構造体は、好適には壁紙等の内装材として用いられるが、上記に示したようなナイロン6成分を含むポリアミド樹脂を用いることにより、優れたエンボス加工性を得ることができる。
【0035】
本発明のバリア性樹脂(A)として用いられるポリエステル系樹脂としては特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましく、シクロヘキサンジメチルアルコール変性(30〜40モル%)ポリエチレンテレフタレートを用いることがより好ましい。
【0036】
以上に例示されたバリア性樹脂(A)の中でも、汚れ防止機能等の観点からポリビニルアルコール系樹脂またはポリアミド系樹脂が好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく、特にEVOHを用いることが好ましい。
【0037】
本発明の多層構造体は、好適な実施態様では壁紙などの内装材に用いられる。すなわち、本発明の多層構造体は、長時間に渡り光に晒されることが多い。本発明に用いられる光触媒(B)は、好ましくは酸化チタンであるが、本発明者らの詳細な検討の結果、酸化チタンなどの光触媒(B)およびバリア性樹脂(A)からなる樹脂組成物(C)でなる成形物(フィルムなど)を長時間、光に晒していた場合、バリア性樹脂(A)からなる成形物が黄変し易くなる傾向があることが明らかになった。そこで、ポリビニルアルコール系樹脂とポリアミドを比較した場合、バリア性樹脂(A)としてポリビニルアルコール系樹脂を用いた場合に、かかる黄変の発生が抑制され、特にバリア性樹脂(A)としてEVOHを用いることにより、光触媒(B)として酸化チタンを用いた場合においても、長時間の光曝露に耐え、黄変を顕著に抑制することが可能である。かかる観点からも、バリア性樹脂(A)としてEVOHを用いることが好ましい。
【0038】
本発明の効果を阻害しない範囲であれば、本発明に用いられるバリア性樹脂(A)として、バリア性樹脂(A)および前記(A)以外の熱可塑性樹脂をブレンドしてなる樹脂組成物を用いることもできる。前記熱可塑性樹脂としては各種ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体、ポリオレフィンと無水マレイン酸との共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、またはこれらを不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性した変性ポリオレフィンなど)、ポリウレタン、ポリアセタールなどが挙げられる。
【0039】
しかしながら、樹脂組成物(C)層の汚れ防止機能および成形性の観点からは、本発明に用いられるバリア性樹脂(A)としては、前記(A)以外の熱可塑性樹脂の配合量が少ないものが好ましい。具体的には、前記(A)以外の熱可塑性樹脂の配合量が20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることがさらに好ましく、3重量%以下であることが特に好ましく、実質的に(A)以外の熱可塑性樹脂を含有しないことが最適である。
【0040】
本発明に用いられる光触媒(B)としては、バンドギャップが1.3〜4.0eVの範囲にある化合物が好ましく、酸化物であることがより好ましい。中でも、酸化チタンまたは酸化亜鉛であることが好ましく、アナターゼ型の酸化チタンが最適である。光触媒(B)として、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いた場合、得られる多層構造体は極めて優れた抗菌性を有するのみならず、消臭性にも優れる。このため、光触媒(B)として酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いた場合、本発明の多層構造体は壁紙等の内装材に極めて適したものとなる。特に、臭気の発生しやすい場所や、臭気がたまりやすい場所における内装材として用いるのに適しており、例えば、病院等における建築用内装材や、車両用内装材として用いることが特に好ましいものとなる。
【0041】
光触媒(B)の粒子径は、0.01〜0.7μmであることが好ましい。粒子径が0.01μm未満の場合は入手および製造が必ずしも容易ではない。また、0.01μm未満の場合は、光触媒(B)同士が不均一な凝集を起こすことがあり、樹脂組成物(C)層の成形性を悪化させることがある。一方、粒子径が0.7μmを超える場合も、樹脂組成物(C)層の成形性が不充分となる虞がある。本発明の多層構造体は、好適には壁紙等の内装材として用いられる。そして、前記壁紙はしばしばエンボス加工を施されるが、光触媒(B)の粒子径が0.7μmを超える場合は、エンボス加工性に悪影響を及ぼす虞がある。
【0042】
より好適な実施態様では、本発明に用いられる光触媒(B)が、粒子径が0.01μm〜0.07μmの光触媒(b1)20〜80重量%および粒子径が0.1μm〜0.7μmの光触媒(b2)20〜80重量%からなる。このように、粒子径の異なる二種の光触媒を用いることにより、本発明の多層構造体の抗菌性がさらに向上する。前記(b1)および(b2)の配合量比は、より好ましくは(b1)30〜70重量%および(b2)30〜70重量%であり、さらに好ましくは(b1)40〜60重量%および(b2)40〜60重量%である。
【0043】
粒子径が0.01μm〜0.07μmの光触媒(b1)の粒子径は、より好ましくは0.015〜0.05μmであり、さらに好ましくは0.02〜0.04μmである。
【0044】
粒子径が0.1μm〜0.7μmの光触媒(b2)の粒子径は、より好ましくは0.15〜0.5μmであり、さらに好ましくは0.2〜0.4μmである。
【0045】
本発明における光触媒(B)の粒子径とは、透過型電子顕微鏡を用いて5万倍で観察し、1μm角視野内の粒子(二次凝集している場合は、それを構成している一次粒子)の内、任意の20個の直径を測定した値の平均値である。
【0046】
上記に示すような粒子径を有する光触媒(B)は、光触媒をミルなどにより粉砕することでも得られるが、特に限定されない。好適な光触媒(B)の製造方法としては、光触媒(B)が酸化チタンである場合は、四塩化チタンを気相で酸素・水素炎中で加水分解する方法、チタンのアルコキシドを霧化した後、含酸素炎中で加水分解する方法、硫酸チタニルを加水分解して得られた水酸化チタンを焼成する方法などが挙げられる。
【0047】
また、上記の光触媒(B)が酸化亜鉛である場合は、塩基性炭酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、水酸化亜鉛などを加熱分解するか、脱水温度で仮焼する方法が挙げられる。
【0048】
これらの光触媒(B)の表面は、多層構造体の抗菌性を重視する観点からは、実質的に被覆されていないことが好ましい。酸化アルミ(アルミナ)、有機シロキサン、酸化珪素、脂肪酸などで表面処理されたものを使用した場合、充分な抗菌性が得られない虞がある。
【0049】
また、樹脂組成物(C)層の成形性の観点からは、上述の粒子径が0.01μm〜0.07μmの光触媒(b1)および粒子径が0.1μm〜0.7μmの光触媒(b2)は、粒子径のみが異なる同一の化合物であることが好ましい。詳細な理由は不明であるが、(b1)および(b2)がそれぞれ異なる化合物である場合は、樹脂組成物(C)の成形性に好ましくない影響を与えることがある。
【0050】
好適な実施態様では、本発明の多層構造体の樹脂組成物(C)層が、バリア性樹脂(A)100重量部に対して光触媒(B)2〜30重量部からなる。前記(A)および(B)の配合量比は、(A)100重量部に対して(B)3〜25重量部であることがより好ましく、(A)100重量部に対して(B)3〜20重量部であることがさらに好ましく、(A)100重量部に対して(B)4〜15重量部であることが特に好ましい。(A)100重量部に対して、(B)の配合量が2重量部に満たない場合は、多層構造体の抗菌性および汚れ防止機能が不充分となる虞がある。一方、(A)100重量部に対して、(B)の配合量が30重量部を超える場合は、多層構造体の成形性(厚みむらの抑制など)が不充分となる虞がある。
【0051】
また、好適な実施態様では、本発明の多層構造体の樹脂組成物(C)層が、バリア性樹脂(A)100重量部に対して光触媒(B)2〜30重量部および炭素数4〜24の高級脂肪酸、その金属塩、エステルおよびアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物0.05〜0.5重量部を配合してなる樹脂組成物である。かかる樹脂組成物を用いることにより、光触媒(B)のバリア性樹脂(A)中での分散性が向上し、樹脂組成物(C)層の成形性が向上する。また、炭素数4〜24の高級脂肪酸、その金属塩、エステルおよびアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の添加は、樹脂組成物(C)の加熱溶融時のトルク変動が抑制される観点からも好適である。
【0052】
本発明に用いられる炭素数4〜24の高級脂肪酸、その金属塩、エステルおよびアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物において、炭素数4〜24の高級脂肪酸としては、直鎖または分岐を持つ飽和および不飽和脂肪酸であり、酪酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、エライジン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リシノール酸、エルカ酸、ベヘニン酸などが例示される。
【0053】
上記化合物の炭素数が4未満の場合は、光触媒(B)のバリア性樹脂(A)への分散性が悪く、ブツが発生しやすくなる。一方、上記化合物の炭素数が24を超える場合は上記化合物自身のバリア性樹脂(A)への分散性が悪くなり、樹脂組成物(C)の加熱溶融時のトルク変動が抑制される効果が充分に得られないことがある。光触媒(B)のバリア性樹脂(A)への分散性の観点から、上記化合物の炭素数は10以上であることが特に好ましい。
【0054】
炭素数4〜24の高級脂肪酸の金属塩としては、上記高級脂肪酸とリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛などの金属との塩が例示される。
【0055】
炭素数4〜24の高級脂肪酸のエステルとは、前記高級脂肪酸と水酸基を持つ化合物とのエステルであり、水酸基を持つ化合物としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、蔗糖、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、オクタノール、エチルヘキシルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコールなどのアルコールが例示される。
【0056】
炭素数4〜24の高級脂肪酸のアミドとは、前記高級脂肪酸とアミノ基を持つ化合物とのアミドであり、アミノ基を持つ化合物としては、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、エチレンジアミン、メチロールアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、オクチルアミン、エチルヘキシルアミン、ラウリルアミン、オレイルアミン、ステアリルアミンなどのアミンが例示される。
【0057】
本発明における炭素数4〜24の高級脂肪酸、その金属塩、エステルおよびアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物としては、上記に例示したものの中でも、特にエチレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムを用いることが好ましい。
【0058】
本発明に用いられる炭素数4〜24の高級脂肪酸、その金属塩、エステルおよびアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の添加量は、バリア性樹脂(A)100重量部に対して0.05〜0.5重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.4重量部、さらに好ましくは0.15〜0.3重量部である。上記化合物の添加量が0.05重量部未満では光触媒(B)の分散性の改善効果が不充分になることがあり、0.5重量部を超える場合は上記化合物自身の分散不良によりブツが発生することがある。
【0059】
さらに好適な実施態様では、本発明の多層構造体の樹脂組成物(C)層が、バリア性樹脂(A)100重量部に対して光触媒(B)2〜30重量部、炭素数4〜24の高級脂肪酸、その金属塩、エステルおよびアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物0.05〜0.5重量部、およびハイドロタルサイト類化合物0.01〜0.5重量部を配合してなる樹脂組成物である。
【0060】
本発明に用いられるハイドロタルサイト類化合物としては、特にMAl(OH)2x+3y−2z(A)・aHO(MはMg、CaまたはZn、AはCOまたはHPO、x、y、z、aは正数)で示される複塩であるハイドロタルサイト類化合物を挙げることができる。特に好適なものとして以下のハイドロタルサイト類化合物が例示される。
【0061】
MgAl(OH)16CO・4H
MgAl(OH)20CO・5H
MgAl(OH)14CO・4H
Mg10Al(OH)22(CO・4H
MgAl(OH)16HPO・4H
CaAl(OH)16CO・4H
ZnAl(OH)16CO・4H
Mg . Al(OH)13CO・3.5H
【0062】
また、ハイドロタルサイト類化合物として、特開平1−308439号(USP4954557)に記載されているハイドロタルサイト系固溶体である、[Mg0.75Zn0.250.67Al0.33(OH)(CO0.167・0.45HOのようなものも用いることができる。
【0063】
樹脂組成物(C)層に、ハイドロタルサイト類化合物を適切に配合することにより、溶融成形時の樹脂組成物(C)層の着色を抑制することが可能である。ハイドロタルサイト類化合物の配合量は、バリア性樹脂(A)100重量部に対して0.01〜0.5重量部であることが好ましく、0.015〜0.4重量部であることがより好ましく、0.02〜0.3重量部であることがさらに好ましい。
【0064】
本発明の多層構造体の樹脂組成物(C)層は、バリア性樹脂(A)および光触媒(B)からなるが、その製造方法は特に限定されない。(A)および(B)をドライブレンドした後、二軸押出機等を用いてブレンドペレット化する方法、バリア性樹脂(A)の溶液に光触媒(B)を添加、混合した後、溶剤を除去してペレットまたはフィルムを得る方法などが好適なものとして例示される。バリア性樹脂(A)の溶液に用いられる溶剤としては、バリア性樹脂(A)がEVOHである場合は水−アルコール混合溶媒が特に好ましい。前記の水−アルコール混合溶媒に用いられるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール(イソプロパノール、ノルマルプロパノール)等が好適なものとして例示される。生産性および樹脂組成物(C)層の成形性の観点からは、(A)および(B)をドライブレンドした後、二軸押出機等を用いてブレンドペレット化する方法が特に好ましい。溶融配合操作においては、ブレンドが不均一になったり、ゲル、ブツが発生、混入したりする可能性があるので、ブレンドペレット化はなるべく混練度の高い押出機を使用し、ホッパー口を窒素ガスでシールし、低温で押出しすることが望ましい。
【0065】
本発明に用いられるバリア性樹脂(D)としては、酸素透過量が100ml・20μm/m・day(20℃−65%RHで測定した値)以下である樹脂が好ましい。酸素透過量の上限はより好適には10ml・20μm/m・day・atm以下であり、さらに好適には5ml・20μm/m・day・atm以下であり、特に好適には2ml・20μm/m・day・atm以下である。
【0066】
また、本発明に用いられるバリア性樹脂(D)として、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を用いることも好適である。ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂としては、上述のバリア性樹脂(A)と同様のものを使用することができる。
【0067】
以上に例示されたバリア性樹脂(D)の中でも、ポリビニルアルコール系樹脂またはポリアミド系樹脂が好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく、特にEVOHを用いることが好ましい。本発明の多層構造体は、好適には壁紙、特に好適にはポリ塩化ビニル系樹脂を基材とする壁紙に用いられる。かかる実施態様においては、優れたエンボス加工性および耐可塑剤移行性が要求されるため、バリア性樹脂(D)として、特にEVOHを用いることが好ましい。バリア性樹脂(D)として用いられるEVOHのエチレン含有量は0.5〜60モル%であることが好ましい。エチレン含有量の下限はより好適には5モル%以上であり、さらに好適には10モル%以上であり、特に好適には15モル%以上である。エチレン含有量の上限はより好適には55モル%以下であり、さらに好適には50モル%以下である。エチレン含有量が5モル%未満の場合は溶融成形性が悪化する虞があり、60モル%を超えるとバリア性樹脂(D)層の耐可塑剤移行性が不足する虞がある。
【0068】
さらに、本発明に用いられるEVOHのビニルエステル成分のケン化度は90%以上であることが好ましい。ビニルエステル成分のケン化度は、より好ましくは95%以上であり、最適には99%以上である。ケン化度が90%未満の場合は、バリア性樹脂(D)層の耐可塑剤移行性および成形性が不充分となる虞がある。
【0069】
本発明の多層構造体は、バリア性樹脂(A)および光触媒(B)からなる樹脂組成物(C)層、およびバリア性樹脂(D)層からなる。このような多層構成を有することにより、従来のEVOHおよび抗菌剤粒子からなる樹脂組成物を成形してなる単層フィルムと比べて以下のような利点がある。
【0070】
一つ目の利点は、使用する光触媒(B)の量を低減できることである。従来の、EVOHおよび抗菌剤粒子からなる樹脂組成物からなる単層フィルムを表面層とする壁紙の場合、充分な耐可塑剤移行性およびエンボス加工性を確保するためには、前記樹脂組成物層がある程度の厚みを有していることが必要である。その結果、樹脂組成物層中に練りこまれ、抗菌作用を発現できない状態で存在する抗菌剤粒子が多く存在することになる。一方、本発明の多層構造体においては、バリア性樹脂(D)の厚みをある程度大きくすることにより、樹脂組成物(C)層の厚みを小さくした場合においても、充分な耐可塑剤移行性およびエンボス加工性を確保することが可能である。そして、樹脂組成物(C)層の厚みを薄くすることにより、相対的に、必要な光触媒(B)の量を小さくすることが可能となる。このため、コスト的に有利になる。
【0071】
二つ目の利点は、従来品よりもさらに優れた抗菌性を有する成形物を得ることができることである。従来のEVOHおよび抗菌剤粒子からなる樹脂組成物を成形してなる単層フィルムを表面層とする壁紙の場合、前記壁紙にさらに強力な抗菌性を付与するためにはより多量の抗菌剤粒子をEVOHに配合する必要があった。しかしながら、前記抗菌剤粒子をEVOHに大量に配合した場合、EVOH組成物層の成形性が低下することがあり、厚みむら等が発生する虞があった。このような厚みむらは、前記壁紙のエンボス加工性および耐可塑剤移行性を低下させる要因となっていたため、抗菌剤粒子を添加量の増加による抗菌性の強化にはおのずから限界があった。また、従来の抗菌剤粒子の替わりに光触媒(B)をEVOHに配合した場合も、配合量が多量である場合は、やはり厚みむら等が発生する虞があった。ところが、本発明の多層構造体の場合は、多量に添加した場合には厚みむらの原因となる光触媒(B)を、バリア性樹脂(D)層に添加する必要が無い。このため、特に、バリア性樹脂(D)として光触媒の配合量が少ない樹脂を用い、かつその厚みを樹脂組成物(C)層よりも大きくすることにより、多層構造体全体で見た場合に、厚みむらの少ない成形性に優れた成形物を得ることができる。したがって、本発明の多層構造体を用いることにより、従来品よりもさらに優れた抗菌性を有する成形物を得ることができる。
【0072】
三つ目の利点は、従来品よりも成形性に優れる成形物が得られることである。上述の通り、EVOH樹脂組成物を積層してなる壁紙は、表面層を艶消し層として高級感を付与するために、EVOH樹脂組成物として、EVOHおよびカルボン酸変性ポリオレフィンからなる樹脂組成物を用いることが多い。しかしながら、カルボン酸変性ポリオレフィンをEVOHに添加した場合は、光触媒(B)あるいは従来の抗菌剤粒子等の、無機粒子の配合によるEVOH樹脂組成物の成形性の低下がより顕著に現れる。ところが、本発明の多層構造体は、光触媒(B)を配合してなる樹脂組成物(C)と、バリア性樹脂(D)層が別々に存在しているため、バリア性樹脂(D)層をバリア性樹脂(D)およびカルボン酸変性ポリオレフィンからなる樹脂組成物とし、かつ当該樹脂組成物に含まれる光触媒(B)の量を少なくすることにより、成形物の成形性を維持したまま、成形物に艶消し感を付与することができる。
【0073】
また、本発明の多層構造体はバリア性樹脂(A)および光触媒(B)からなる樹脂組成物(C)層、およびバリア性樹脂(D)層からなり、好適には、壁紙などの内装材に用いられる。壁紙などの内装材は、通常、長時間に渡り光に晒されるため、長時間の光への曝露により、光触媒を含有するバリア性樹脂が、光反応によって劣化を生じ、耐可塑剤移行性が低下する虞があるが、バリア性樹脂(D)層に含まれる光触媒(B)の量を少なくすることにより、耐可塑剤移行性が低下を効果的に抑制することができる。
【0074】
以上の観点から、本発明に用いられるバリア性樹脂(D)としては、光触媒(B)の含有量が5重量%以下であるバリア性樹脂(D)を用いることが好ましい。光触媒(B)の含有量は、3重量%以下であることがより好ましく、2重量%以下であることがさらに好ましく、1重量%以下であることが特に好ましく、バリア性樹脂(D)が光触媒(B)を実質的に含有しないことが最も好ましい。
【0075】
また、本発明の多層構造体が壁紙等の内装材として用いられ、艶消し感が要求される場合は、バリア性樹脂(D)がポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂ならびにポリオレフィン系樹脂からなる樹脂組成物であることが好ましい。前記のポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂としてはポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく、特にEVOHが好ましい。また、ポリオレフィン系樹脂としては、カルボン酸変性ポリオレフィンが好ましく、特にカルボン酸変性ポリエチレンが好ましい。
【0076】
ここでカルボン酸変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィン系樹脂にα,β−不飽和カルボン酸または該カルボン酸無水物をグラフト重合したものである。またα,β−不飽和カルボン酸または該カルボン酸無水物含量(グラフト量)は0.0005〜0.5モル%、好ましくは0.001〜0.4モル%である。0.0005モル%未満ではバリア性樹脂(D)とのブレンドに際して分散性が悪くなり、フィルムの艶消し効果に乏しく、0.5モル%を超えるとブレンド操作中の増粘が大きく、製膜性が悪くなる。全てのポリオレフィン系樹脂にα,β−不飽和カルボン酸または該カルボン酸無水物がグラフト変性している方が望ましいが、高濃度カルボン酸変性の種ポリマーと未変性ポリマーとのブレンド物で、最終的なグラフト量が上記範囲内にあっても良い。α,β−不飽和カルボン酸または該カルボン酸無水物とは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられるが、無水マレン酸が好適である。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられるが、高密度ポリエチレンが好適である。
【0077】
前記のポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂と、ポリオレフィン系樹脂の配合量比は、前記のポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂50〜95重量%およびポリオレフィン系樹脂5〜50重量%であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂の配合量が5重量%未満では充分な艶消し感が得られない虞がある。一方、ポリオレフィン系樹脂の配合量が50重量%を超えると、バリア性樹脂(D)層の耐可塑剤移行性および成形性が不充分となる虞がある。
【0078】
本発明の多層構造体を製造する方法は特に限定されない。樹脂組成物(C)およびバリア性樹脂(D)を共押出成形により成形する方法や、樹脂組成物(C)とバリア性樹脂(D)を、それぞれフィルムまたはシートなどの成形物に成形した後、ラミネートする方法、バリア性樹脂(D)からなるフィルムまたはシートの表面を、樹脂組成物(C)を溶液コートまたはエマルジョンコートで被覆する方法などが好適なものとして挙げられる。これらの中でも、生産性に優れ、厚みむらの少ない外観に優れた成形物を得ることができる観点から、樹脂組成物(C)およびバリア性樹脂(D)を共押出成形により成形する方法により本発明の多層構造体を製造することが好ましい。
【0079】
本発明の多層構造体の層構成も特に限定されない。例えば、樹脂組成物(C)層とバリア性樹脂(D)層とを、接着性樹脂層を介して積層してなる層構成も採用可能である。しかしながら、樹脂組成物(C)層とバリア性樹脂(D)層とが直接接触するように配置してなる多層構造体を用いることにより、多層構造体のエンボス加工性がさらに向上する。また、接着剤層を使用しないことにより、コスト的に有利になる。
【0080】
以上のように、本発明の多層構造体は、樹脂組成物(C)層とバリア性樹脂(D)層とが直接接触するように配置してなる多層構造体であることが好ましく、当該多層構造体は共押出成形により製造することが好ましい。この場合、樹脂組成物(C)層とバリア性樹脂(D)層とを強固に接着させる観点からは、樹脂組成物(C)層を構成するバリア性樹脂(A)の主成分と、バリア性樹脂(D)の主成分とが同一の樹脂であることが好ましい。ここで、主成分とは、樹脂成分の50重量%以上を構成する成分を示す。
【0081】
本発明の多層構造体において、樹脂組成物(C)層およびバリア性樹脂(D)層の合計厚みが5〜50μmであることが特に好ましい。樹脂組成物(C)層およびバリア性樹脂(D)層の合計厚みが5μm未満の場合は、強度が不充分になり破れ等が発生しやすくなる他、充分な汚れ防止機能が得られない場合がある。また、本発明の多層構造体がポリ塩化ビニル系樹脂と積層され、壁紙等の内装材に用いられる実施態様では、耐可塑剤移行性が不充分になる虞がある。一方、前記の合計厚みが50μmを超える場合は、エンボス加工性が不充分となる虞がある他、コスト的に不利になる虞がある。また、多層構造体のエンボス加工性を重視する場合は、前記の合計厚みが7〜40μmであることがより好ましく、10〜30μmであることがさらに好ましい。
【0082】
また、本発明の多層構造体において、樹脂組成物(C)層の厚みが1〜7μmであり、バリア性樹脂(D)層の厚みが4〜30μmであることが好ましい。光触媒(B)の使用量の低減を重視する場合は、樹脂組成物(C)層の厚みが1〜6μmであることがより好ましく、1〜5μmであることがさらに好ましく、1〜4μmであることが特に好ましい。また、多層構造体のエンボス加工性を重視する場合は、バリア性樹脂(D)層の厚みが7〜25μmであることがより好ましく、7〜20μmであることがさらに好ましい。
【0083】
また、本発明の効果をより顕著に奏するためには、(D)層の厚みが(C)層の厚みよりも大きいことが好ましい。より好ましくは、(D)層の厚みが(C)層の厚みの1.5倍以上であり、さらに好ましくは2倍以上であり、特に好ましくは2.5倍以上である。
【0084】
本発明の多層構造体の抗菌性をさらに向上させる観点からは、本発明の多層構造体の樹脂組成物(C)層の表面を化学的処理または物理的処理してなることが好ましい。前記化学的処理または物理的処理を樹脂組成物(C)層の表面に施すことにより、光触媒(B)を多層構造体の表面に露出させ、多層構造体の抗菌性を向上させることが可能となる。
【0085】
前記化学的処理または物理的処理は特に限定されないが、前記化学的処理または物理的処理を行う際には、樹脂組成物(C)層の表面に、なるべく圧力が掛からない方法が望ましい。そのような化学的処理または物理的処理としては、溶媒処理、火炎処理およびコロナ処理から選ばれる少なくとも一種が好適なものとして例示される。上述の通り、光触媒(B)の配合量を低減する観点からは、樹脂組成物(C)層の厚みを薄くすることが好ましい。しかしながら、層厚みを薄くした場合は、機械強度が小さくなり、破れ等が発生しやすくなる。このため、樹脂組成物(C)層の表面に、なるべく圧力が掛からない方法で化学的処理または物理的処理を行うことが望ましい。
【0086】
溶媒処理を行う場合は、バリア性樹脂(A)の良溶媒を溶媒として用いることが好ましい。本発明に用いられるバリア性樹脂(A)は、好適にはポリビニルアルコール系樹脂であるが、バリア性樹脂(A)としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合は、溶媒処理において水−アルコール混合溶媒を用いることが好ましい。特にポリビニルアルコール系樹脂がEVOHである場合に、水−アルコール混合溶媒を用いることが好適である。前記アルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール(イソプロパノール、ノルマルプロパノール)等が好適なものとして例示される。また、前記水−アルコール混合溶媒は、水10〜50重量%およびアルコール50〜90重量%からなることが好ましく、水15〜45重量%およびアルコール55〜85重量%からなることがより好ましく、水20〜40重量%およびアルコール60〜80重量%からなることがさらに好ましい。
【0087】
また、バリア性樹脂(A)としてポリアミド系樹脂を用いる場合は、溶媒処理において、水/フェノール混合溶媒を用いることが好ましい。また、前記水−アルコール混合溶媒は、水5〜10重量%およびフェノール90〜95重量%からなることが好ましい。さらに、バリア性樹脂(A)としてポリエステル系樹脂を用いる場合は、溶媒処理において、トリフルオロ酢酸、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール等を用いることが好ましい。
【0088】
溶媒処理の方法も特に限定されないが、バーコーター等を用いて溶媒を樹脂組成物(C)層の表面に塗布し、一定の保持時間放置した後に、熱風乾燥等により多層構造体から溶媒を除去する方法が好ましい。前記保持時間も特に限定されないが、10秒〜5分程度であることが好ましい。
【0089】
火炎処理の方法も特に限定されず、一般的な方法が使用できる。前記火炎処理を安定に行うためには、火炎処理を施される多層構造体を一定の速度で動かしながら火炎処理を行うことが好ましい。火炎処理を行う際の多層構造体の移動速度は特に限定されず、装置の規模等によっても異なるが、移動速度が5〜50m/分であることが好ましく、10〜40m/分であることがより好ましい。また、火炎を発生させる装置も特に限定されない。充分な火力が安定的に得られる観点からは、LPG用バーナー等が好適な火炎発生装置として例示される。
【0090】
コロナ処理の方法も特に限定されず、一般的な方法が使用可能である。処理条件も特に限定されないが、コロナ処理密度が25〜90W・分/mの処理条件でコロナ処理を行うことが好ましい。なお、前記コロナ処理密度とは、処理幅(m)当たりの処理電力(W)を走行速度(m/分)で割った値である。
【0091】
本発明の多層構造体は、ポリオレフィン系樹脂またはポリ塩化ビニル系樹脂からなる基材に対して樹脂組成物(C)層/バリア性樹脂(D)層/基材層の順番で積層してなる多層構造体として有効に使用される。前記ポリ塩化ビニル系樹脂としては、可塑剤を25〜55重量%含有するポリ塩化ビニル系樹脂が特に好ましい。本発明の多層構造体と、ポリオレフィン系樹脂またはポリ塩化ビニル系樹脂からなる基材との積層方法は特に限定されないが、好適には、本発明の多層構造体と前記基材とを、ドライラミ、熱ラミ、ポリサンドラミすることによって積層することができる。
【0092】
本発明の多層構造体は、汚れ防止機能および抗菌性に優れているため、好適には内装材または表層材として用いられる。内装材としては、壁紙または化粧シート等の建築用内装材や、車両用内装材等が好適なものとして挙げられる。また、表層材としては、家具用表層材が好適なものとして例示される。
【0093】
また本発明の多層構造体の代表的な使用例としては、本発明の多層構造体を可塑剤を含有するポリ塩化ビニル樹脂層を含む壁紙に積層したものがあげられる。ここで可塑剤を含有するポリ塩化ビニル樹脂層を含む壁紙とは、難燃紙、不織布、ガラス繊維、アスベスト紙などからなる支持体の上に、ポリ塩化ビニル樹脂に、可塑剤、必要に応じ、顔料、充填剤、安定剤などを配合した組成物をカレンダー法、コーティング法などにて積層した物、さらにはこれら積層物の上に印刷加工が施された物、また発泡剤を配合させることにより、最終製品で1.5〜15倍にポリ塩化ビニル樹脂を発泡させた物などがあげられる。また本発明において、他の積層体の例として本発明の組成物層を積層した化粧板があげられる。ここで化粧板とは、プリント化粧板、化粧石膏ボード、塩ビ化粧板、塩ビ鋼板、塩ビ不燃板などを総称した物である。プリント化粧板とは、薄葉紙などに印刷を施し、これを合板、パーティクルボードなどからなる支持体に積層した物である。また立体感を強調するために、エンボス加工が施されていることがある。また化粧石膏ボード、塩ビ化粧板、塩ビ鋼板、塩ビ不燃板などとは、可塑剤などを含有するポリ塩化ビニル樹脂製のシートに印刷を施し、これを石膏ボード、合板、パーティクルボード、鋼板、コンクリート板などからなる支持体に積層した物である。プリント化粧板の場合と同様、立体感を強調するために、エンボス加工が施されていることがある。
【0094】
本発明の多層構造体は、優れた抗菌性、汚れ防止機能および成形性を有し、可塑剤を含有するポリ塩化ビニル樹脂層と積層した場合においても優れた耐可塑剤移行性とエンボス加工性を有することから、可塑剤を含有するポリ塩化ビニル樹脂層を含む壁紙として用いることが特に好適である。
【0095】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、これにより何ら限定されるものではない。本発明における各種試験方法は以下の方法にしたがって行った。なお部、%とあるのは、特に断りのない限りいずれも重量基準である。
【0096】
<バリア性樹脂(A)およびバリア性樹脂(D)の酸素透過量>
MODERN CONTROLS INC.製酸素透過量測定装置MOCONOX−TRAN2/20型を用い、20℃−65%RH条件でJIS K7126(等圧法)に記載の方法に準じて測定した。なお、本発明でいう酸素透過量は、単一の層からなるフィルムについて任意の膜厚で測定した酸素透過量(ml/m・day・atm)を、膜厚20μmでの酸素透過量に換算した値(ml・20μm/m・day・atm)である。
【0097】
実施例1
バリア樹脂(A)として、エチレン含量44モル%、ケン化度99.5%のEVOH(MFR:5.5g/10分[190℃、2160g荷重下]、酸素透過量:1.5ml・20μm/m・day・atm)を用いた。また、炭素数4〜24の高級脂肪酸、その金属塩、エステルおよびアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物として、エチレンビスステアリン酸アミド(日本油脂(株)「アルフロー」H−50T)を用い、ハイドロタルサイト類化合物として、協和化学(株)DHT−4Aを用いた。
【0098】
光触媒(B)としては、粒子径が0.01μm〜0.07μmの光触媒(b1)および粒子径が0.1μm〜0.7μmの光触媒(b2)を用いた。前記(b1)としては、粒子径0.02μmの酸化チタン(ST−21、石原産業製)を用い、前記(b2)としては、粒子径0.2μmの酸化チタン(ST−41、石原産業製)を用いた。
【0099】
上記EVOH100重量部に対して、上記の粒子径0.02μmの酸化チタン3重量部、上記の粒子径0.2μmの酸化チタン3重量部、上記のエチレンビスステアリン酸アミド0.1重量部および上記のハイドロタルサイト類化合物0.05重量部を一括してドライブレンドした後、ホッパー口を窒素ガスでシールしながら、二軸押出機で220℃にてブレンドペレット化を行い、樹脂組成物(C)ペレットを得た。
【0100】
一方、エチレン含量44モル%、ケン化度99.5%のEVOH(MFR:5.5g/10分[190℃、2160g荷重下]、酸素透過量:1.5ml・20μm/m・day・atm)75重量部と、カルボン酸変性ポリエチレン系樹脂(「アドマー」NF500、三井化学社製)25重量部をドライブレンドしたのちホッパー口を窒素ガスでシールしながら、二軸押出機で220℃にてブレンドペレット化を行い、EVOHおよびカルボン酸変性ポリエチレン系樹脂からなる樹脂組成物ペレットを得た。前記樹脂組成物を、バリア性樹脂(D)として用いた。
【0101】
上記作製した樹脂組成物(C)ペレットおよびバリア性樹脂(D)ペレットを、それぞれ別個に230℃で溶融押出して、共押出多層ダイを用いて、(C)/(D)の2層構成((C)層厚み3μm、(D)層厚み12μm、全層厚み15μm)を有する多層フィルムを作製した。得られた多層フィルムは厚みむらがなく着色も見られず、外観に優れたものであった。
【0102】
得られた多層フィルムの樹脂組成物(C)層の表面に水30%/ノルマルプロパノール70%の混合溶媒(温度60℃)をバーコーター(テスター産業(株)SA−203,#3)を用いて、塗布量が6g/mとなるように塗布して、30秒間保持した。次いで、前記多層フィルムを熱風(温度80℃、風速25m/分)で乾燥した。当該多層フィルムを用いて以下の方法に従って、抗菌性、汚れ防止機能、光沢度および消臭性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
<多層フィルムの抗菌性>
Escherichia coliのIFO 3972株を用い、JIS Z2801に準じてフィルム密着法により抗菌性の評価を行った。判定基準を以下に示す。
判定 基準
◎ (合格) :菌体が完全に死滅している。または、大部分が死滅している。
○ (合格) :菌体の一部が死滅し、個体数が減少している。
× (不合格):菌体が増殖し、個体数が増加している。
【0104】
<多層フィルムの汚れ防止機能>
前記多層フィルムを寸法10cm×10cmに切断した後、当該多層フィルムを内容量18リットルの金属容器の内壁に貼り付けた。しかる後に、容器内をタバコ(「ハイライト」)4本の煙で1時間汚染させた。汚染後の多層フィルムを容器から取出し、27W1本の白色蛍光灯から15cm離して静置し、24時間後放置した。24時間放置後、当該多層フィルムの表面の状態を目視で判定した。判定基準を以下に示す。
判定 基準
◎ (合格) :ヤニによる着色が見られない。
○ (合格) :ヤニによる着色がごくわずかに見られる。
× (不合格):ヤニによる着色が顕著にみとめられる。
【0105】
<多層フィルムの光沢度>
20℃−65%RHの条件で村上式光沢度計(75゜)を用いてフィルム表面の光沢度を測定した。
【0106】
<多層フィルムの消臭性>
テドラーバッグ(容積5リットル)にフィルム3gを入れて密封し、次いでシリンジを用いて所定のアンモニアを含む空気(アンモニアの初期濃度:40ppm)を、全ガス量3リットルとなるようにテドラーバッグ内へ注入した。当該テトラ−バッグを、27W1本の白色蛍光灯から15cm離した場所に静置し、フィルム全体が明所下に有るようにした。
【0107】
前記白色蛍光灯の照射を開始してから24時間後に、テドラーバッグ内のアンモニアのガス濃度をガス検知管(ガステック社製、アンモニア用3L型)を用いて直接テドラーバッグ内のガス濃度を測定することによって定量した。以上のようにして得られた試験後のアンモニアのガス濃度から、下記式により臭気成分の除去率を求めた。
除去率(%)={(C0−C)/C0}×100
ただし、C0:アンモニアの初期濃度、
C:試験開始から24時間経過後のアンモニアの濃度
である。
【0108】
実施例2
実施例1において、作製した多層フィルムを溶媒処理するかわりに、以下の方法にしたがって、前記多層フィルムの樹脂組成物(C)層を火炎処理した。すなわち、前記多層フィルムを速度20m/分で走行させ、LPG用バーナー(魚尾型拡炎器付き、増田理化(株))の火炎を前記多層フィルムの樹脂組成物(C)層の表面に放射した。なお、前記火炎処理においては、火炎放射後、多層フィルムが30cm走行した位置で、樹脂組成物(C)層の表面温度が約180℃〜200℃になるような条件で火炎処理を行った。得られた火炎処理後の多層フィルムについて、実施例1と同様にして抗菌性、汚れ防止機能、光沢度および消臭性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0109】
実施例3
実施例1において、作製した多層フィルムを溶媒処理するかわりに、コロナ処理装置(米国ピラー社製、2.1KVA型)で70W・分/mの処理条件で多層フィルムの樹脂組成物(C)層をコロナ処理して多層フィルムを得た。得られたコロナ処理後の多層フィルムについて、実施例1と同様にして抗菌性、汚れ防止機能、光沢度および消臭性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0110】
参考例1
実施例1において、樹脂組成物(C)として、EVOH100重量部に対して、上記の粒子径0.2μmの酸化チタン6重量部、上記のエチレンビスステアリン酸アミド0.1重量部および上記のハイドロタルサイト類化合物0.05重量部を一括してドライブレンドした後、ホッパー口を窒素ガスでシールしながら、二軸押出機で220℃にてブレンドペレット化して得た樹脂組成物ペレットを用いた以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを作製した。得られた多層フィルムの樹脂組成物(C)層の表面を実施例1と同様にして溶媒処理した。溶媒処理後の前記多層フィルムについて、実施例1と同様にして抗菌性、汚れ防止機能、光沢度および消臭性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0111】
実施例5
実施例1において得られた多層フィルムの樹脂組成物(C)層の表面に一切の処理を施さなかった以外は、実施例1と同様にして各種評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0112】
参考例2
参考例1において得られた多層フィルムの樹脂組成物(C)層の表面に一切の処理を施さなかった以外は、実施例1と同様にして各種評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0113】
比較例1
硝酸銀3.2gと硫酸銅5.7gを5lの純水に溶解し、pHを5に調整した。この水溶液にメタ珪酸アルミン酸マグネシウム(Al・MgO・2SiO↓・7HO、平均粒径0.02μm、水分率20重量%)125gを添加し、再度pHを5に調整し、60℃で1時間撹拌した。その後、5当量の温水で洗浄し、100℃で4時間乾燥し、さらに600℃で2時間焼成して、抗菌剤を得た。
【0114】
次にエチレン含量44モル%、ケン化度99.5%のEVOH(MFR:5.5g/10分[190℃、2160g荷重下]、酸素透過量:1.5ml・20μm/m・day・atm)を75重量部、カルボン酸変性高密度ポリエチレン(「アドマー」NF500、三井化学社製)を25重量部、および上記抗菌剤1重量部をドライブレンドした後、二軸押出機を用い、220℃でブレンドペレット化した。該ブレンドペレットを一軸スクリューの押出機を用い、220℃で厚さ15μmの抗菌性EVOHフィルムを得た。
【0115】
前記抗菌性EVOHフィルムと、実施例1で作製した多層フィルムの外観を目視による観察を行って比較したところ、実施例1で作製した多層フィルムの方が厚みむらが明らかに少なく、成形性に優れていた。
【0116】
また、前記抗菌性EVOHフィルムを用いて、実施例1と同様にして抗菌性、汚れ防止機能、光沢度および消臭性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0117】
比較例2
実施例1で作製した樹脂組成物(C)ペレットを用いて、一軸スクリューの押出機を用い、220℃で厚さ15μmの抗菌性EVOHフィルムを得た。前記抗菌性EVOHフィルムと、実施例1で作製した多層フィルムの外観を目視による観察を行って比較したところ、実施例1で作製した多層フィルムの方が厚みむらが少なく、成形性に優れていた。
【0118】
また、前記抗菌性EVOHフィルムを用いて、実施例1と同様にして抗菌性、汚れ防止機能、光沢度および消臭性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0119】
【表1】
Figure 0004397563
【0120】
【発明の効果】
本発明の多層構造体は、抗菌性、汚れ防止機能および成形性に優れている。

Claims (13)

  1. リア性樹脂(A)および光触媒(B)からなる樹脂組成物(C)層、およびバリア性樹脂(D)層からなる多層構造体であって、
    光触媒(B)が、粒子径が0.01μm〜0.07μmの光触媒(b1)20〜80重量%および粒子径が0.1μm〜0.7μmの光触媒(b2)20〜80重量%からなる光触媒である多層構造体
  2. 前記樹脂組成物(C)層の表面を化学的処理または物理的処理してなる請求項1に記載の多層構造体。
  3. 前記の化学的処理または物理的処理が、溶媒処理、火炎処理およびコロナ処理から選ばれる少なくとも一種である請求項2に記載の多層構造体。
  4. バリア性樹脂(A)が、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層構造体。
  5. 光触媒(B)が酸化チタンまたは酸化亜鉛である請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層構造体。
  6. 樹脂組成物(C)が、バリア性樹脂(A)100重量部に対して光触媒(B)2〜30重量部を配合してなる樹脂組成物である請求項1〜のいずれか1項に記載の多層構造体。
  7. バリア性樹脂(D)が、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である請求項1〜のいずれか1項に記載の多層構造体。
  8. バリア性樹脂(D)が、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂ならびにポリオレフィン系樹脂からなる樹脂組成物である請求項1〜のいずれか1項に記載の多層構造体。
  9. 多層構造体が、樹脂組成物(C)およびバリア性樹脂(D)を共押出成形してなる多層構造体である、請求項1〜のいずれか1項に記載の多層構造体。
  10. 多層構造体が、樹脂組成物(C)層とバリア性樹脂(D)層とが直接接触するように配置されてなる多層構造体である請求項1〜のいずれか1項に記載の多層構造体。
  11. 樹脂組成物(C)層およびバリア性樹脂(D)層の合計厚みが5〜50μmである請求項1〜10のいずれか1項に記載の多層構造体。
  12. ポリオレフィン系樹脂またはポリ塩化ビニル系樹脂からなる基材に対して、請求項1〜11のいずれか1項に記載の多層構造体を、樹脂組成物(C)層/バリア性樹脂(D)層/基材層の順番で積層してなる多層構造体。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の多層構造体からなる内装材。
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