JP4395954B2 - α−アミノ酸アミド類の製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はα−アミノ酸アミド類の製法に関する。α−アミノ酸アミド類は各種工業薬品などの中間体ならびに、農薬、化粧品、飼料添加物、食品添加物、および医薬品として重要なα−アミノ酸類の製造原料として極めて重要な物質である。
【0002】
【従来の技術】
α−アミノ酸アミド類の製法としては、従来、カルボニル化合物の存在下α−アミノニトリルよりα−アミノ酸アミド類を製造する方法が知られている。例えば、α−アミノニトリルとケトンとを水性媒体中PH11〜14に於いて反応させ、α−アミノ酸アミドを得る方法(特公昭59−36899)、α−アミノニトリル1モルに対して0.05〜0.3モルの水酸基イオンの存在に於いてカルボニル誘導体とα−アミノニトリルとを反応させ、α−アミノ酸アミドを得る方法(特開昭53−82707)、および強塩基性物質の使用量をα−アミノニトリル1モルに対して0.01モル以下の割合とし、反応液のPHが14を越えるように反応系へケトン類を添加してα−アミノ酸アミドを得る方法(特開昭57−158743)、などが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来のα−アミノ酸アミド類の製造方法は、いずれもα−アミノニトリルを原料としているが、α−アミノニトリルはシアン化水素、アルデヒドおよびアンモニアから、あるいはシアン化水素とアルデヒドからシアンヒドリンを合成した後アンモニアと反応させる、といった方法により合成される。しかし、アミノニトリル類は極めて不安定であり、室温以下に保存していても次第に赤褐色に着色し、ついには黒変しタール状物を生成する、という取り扱い上の問題点を有する。本発明の目的は、これらの問題点を有するα−アミノニトリル合成工程を必要としない、α−アミノ酸アミド類の簡略化された製法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の如き課題を有するα−アミノ酸アミド類の製法について鋭意検討を行った結果、アルデヒド類とケトンのシアンヒドリン類とを反応させ、アルデヒドのシアンヒドリン類を生成せしめた後、アンモニア水と反応させることにより、α−アミノニトリル合成工程を必要とすることなく、α−アミノ酸アミド類が容易に高収率で得られることを見出し、本発明に到達した。
【0005】
即ち本発明は、一般式(1)で表されるアルデヒド類と一般式(2)で表されるケトンのシアンヒドリン類とを反応させ、一般式(3)で表されるアルデヒドのシアンヒドリン類を生成せしめた後、生成したアルデヒドのシアンヒドリン類とアンモニア水とを反応させることを特徴とする一般式(4)で表されるα−アミノ酸アミド類の製法であり、好ましくは、有機あるいは無機の強塩基性物質からなる触媒の存在下、一般式(1)で表されるアルデヒド類と一般式(2)で表されるケトンのシアンヒドリン類とを反応させ、一般式(3)で表されるアルデヒドのシアンヒドリン類を生成せしめた後、生成したアルデヒドのシアンヒドリン類とアンモニア水とを、同一系内で前記触媒の存在下反応させる。
【0006】
R1 CHO (1)
(R1 は水素原子、低級アルキル基、置換低級アルキル基、シクロヘキシル基、置換シクロヘキシル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基、複素環基および置換複素環基である)
【0007】
【化2】
(R2 およびR3 はC1 〜C4 の直鎖あるいは分岐した低級アルキル基であり、それぞれ同一でも異なっても良く、また、R2 およびR3 は結合し五員環あるいは六員環を形成しても良い)
【0008】
R1 CH(OH)CN (3)
(R1 は水素原子、低級アルキル基、置換低級アルキル基、シクロヘキシル基、置換シクロヘキシル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基、複素環基および置換複素環基である)
【0009】
R1 CH(NH2 )CONH2 (4)
(R1 は水素原子、低級アルキル基、置換低級アルキル基、シクロヘキシル基、置換シクロヘキシル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基、複素環基および置換複素環基である)
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の反応は通常、アルデヒド類とケトンのシアンヒドリン類の混合液へ触媒を添加し反応させてアルデヒドのシアンヒドリン類を生成せしめ、次いでアンモニア水を添加することにより行われる。
【0011】
最初のアルデヒドのシアンヒドリン類の合成で使用される、一般式(1)で示されるアルデヒド類のR1 の低級アルキル基には特に制限はないが、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルなどのC1 〜C4 の直鎖または分枝した低級アルキル基であり、複素環基としては、フリル基、ピリジル基、チアゾリル基、イミダゾリル基およびインドリル基であり、また、置換低級アルキル基、置換シクロヘキシル基、置換フェニル基、置換ベンジル基および置換複素環基のそれぞれに含まれる置換基は、例えばヒドロキシ、メトキシ、メルカプト、メチルメルカプト、アセタール、カルボキシル、カルボクサミド、ハロゲン、イミダゾリルおよびインドリルなどである。
【0012】
一般式(2)で示されるケトンのシアンヒドリン類のR2 ,R3 の低級アルキル基には特に制限はないが、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルなどである。
【0013】
アルデヒド類とケトンのシアンヒドリン類との反応で生成する、一般式(3)で示されるアルデヒドのシアンヒドリン類は原料アルデヒド類に対応し、R1 で示される低級アルキル基は、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルなどのC1 〜C4 の直鎖または分枝した低級アルキル基であり、複素環基としては、フリル基、ピリジル基、チアゾリル基、イミダゾリル基およびインドリル基であり、また、置換低級アルキル基、置換シクロヘキシル基、置換フェニル基、置換ベンジル基および置換複素環基のそれぞれに含まれる置換基は、例えばヒドロキシ、メトキシ、メルカプト、メチルメルカプト、アセタール、カルボキシル、カルボクサミド、ハロゲン、イミダゾリルおよびインドリルなどである。
【0014】
最初の反応で使用されるアルデヒド類とケトンのシアンヒドリン類との比率は、アルデヒド類1モルに対してケトンのシアンヒドリン類0.5〜2モルの範囲、好ましくは1モルである。少なければ未反応アルデヒドが多く、多ければ未反応のケトンのシアンヒドリンが多くなり、経済的に好ましくない上、これらの未反応物が次に行われるアンモニア水との反応で副反応を生じ、得られるα−アミノ酸アミドの品質が低下する。
【0015】
アルデヒド類とケトンのシアンヒドリン類との反応は塩基性下であれば進行することから、有機および無機の広範囲な触媒を使用することができるが、引き続いて行われるアルデヒドのシアンヒドリン類とアンモニア水との反応によるα−アミノ酸アミド生成反応は、そのままでも進行するが反応が遅いことから、有機あるいは無機の強塩基性物質を使用する必要がある。従って、アルデヒドのシアンヒドリン合成および引き続いて行われるα−アミノ酸アミド合成の共通触媒として有機あるいは無機の強塩基性物質を使用することが効率的である。使用される触媒としては、実用上、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、ならびに水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウムおよび水酸化テトラ−n−プロピルアンモニウムなどの有機第四級アンモニウム化合物、および強塩基性イオン交換樹脂などが挙げられる。使用量は少ない方が経済的には有利であるが、少な過ぎると反応が遅いことから、原料アルデヒド1モルに対して0.001〜0.5モルの範囲、好適には0.01〜0.1モルである。
【0016】
本発明の方法は溶媒を必要としないが、溶媒を使用することを除くものではない。
アルデヒド類とケトンのシアンヒドリン類との反応の温度は、高いと遊離HCNの蒸気が発生することから、HCNの沸点以下、通常は0〜20℃である。アルデヒド類とケトンのシアンヒドリン類との反応速度は非常に速く、通常は触媒添加後1時間以内に完結する。
【0017】
次いで行われる、アルデヒドのシアンヒドリン類とアンモニア水との反応で生成する、一般式(4)で示されるα−アミノ酸アミド類の代表例としては、グリシンアミド、アラニンアミド、バリンアミド、ロイシンアミド、イソロイシンアミド、t-ロイシンアミド、セリンアミド、スレオニンアミド、システインアミド、シスチンアミド、メチオニンアミド、アリシンエチレンアセタールアミド、アスパラギンアミド、グルタミンアミド、フェニルグリシンアミド、フェニルアラニンアミド、チロシンアミド、トリプトファンアミドおよびヒスチジンアミドなどが挙げられる。用いられるアンモニア水のアンモニア濃度は、特に限定されないが、通常は市販の25〜28wt%アンモニア水が用いられる。アンモニア水の使用量は、アルデヒドのシアンヒドリン1モルに対してアンモニア1〜10モルの範囲、好適には2〜5モルである。
【0018】
本発明の反応は触媒を用いなくとも進行するが、反応が遅いことから触媒を用いることが好ましく、通常は最初のアルデヒドのシアンヒドリン合成で使用した触媒をそのまま用いる。
【0019】
アルデヒドのシアンヒドリン類とアンモニア水との反応の温度は、高いと生成するα−アミノ酸アミドの過剰加水分解によりα−アミノ酸の生成が増大し、このため反応系へ加えられる強塩基性物質がα−アミノ酸の塩となって消費され好ましくないことから、反応温度は比較的低温とされ、0〜20℃が好適である。
反応時間は、原料のアルデヒドのシアンヒドリン類の種類、触媒の種類および量、反応温度などにより異なるが、通常は1〜30時間である。
【0020】
反応で生成したα−アミノ酸アミド含有液は、反応に使用した強塩基性物質を酸で中和後、過剰のアンモニアおよび最初の反応で副生するケトンを減圧蒸発により除去した後、そのまま、あるいは抽出等により不純物を分離精製後、アミノ酸生成反応原料として使用することができる。
【0021】
【実施例】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例により限定されるものではない。
実施例1
撹拌機および温度計を付した50ml三ツ口フラスコに、アセトアルデヒド4.41g(0.100モル)およびアセトンシアンヒドリン8.51g(0.100モル)を加え、5℃で撹拌下、水酸化ナトリウム0.08g(0.002モル)を添加し、そのまま5℃で30分間撹拌後、28%アンモニア水18.2g(NH3 0.300モル)を添加し、5℃で10時間撹拌した。反応終了後、反応液組成を液体クロマトグラフィーで分析したところ、アラニンアミド8.02gが生成していた。
この結果は、仕込アセトアルデヒドに対するアラニンアミドの収率91%である。
【0022】
実施例2
実施例1と同様な反応器に、イソブチルアルデヒド7.21g(0.100モル)およびメチルエチルケトンシアンヒドリン9.91g(0.100モル)を加え、5℃で撹拌下、水酸化カリウム0.17g(0.003モル)を添加し、そのまま5℃で30分間撹拌後、28%アンモニア水30.4g(NH3 0.500モル)を添加し、そのまま5℃で5時間撹拌した。反応終了後、反応液組成を液体クロマトグラフィーで分析したところ、バリンアミド10.7gが生成していた。
この結果は、仕込イソブチルアルデヒドに対するバリンアミドの収率92%である。
【0023】
実施例3
実施例1と同様な反応器に、ベンズアルデヒド10.61g(0.100モル)およびシクロヘキサノンシアンヒドリン12.52g(0.100モル)を加え、15℃で撹拌下、10%水酸化テトラメチルアンモニウム/MeOH溶液4.56g(0.005モル)を添加し、そのまま15℃10分間撹拌後、28%アンモニア水18.2g(NH3 0.300モル)を添加し、そのまま15℃で20時間撹拌した。反応終了後、反応液組成を液体クロマトグラフィーで分析したところ、フェニルグリシンアミド13.1gが生成していた。
この結果は、仕込ベンズアルデヒドに対するフェニルグリシンアミドの収率87%である。
【0024】
実施例4〜10
原料アルデヒドに各種アルデヒドを使用した以外は実施例1と同様にして反応を行った。結果を表1に示す。
【0025】
【0026】
比較例1
触媒を使用しないで、反応時間を20時間とした以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、反応液組成を液体クロマトグラフィーで分析したところ、アラニンアミド5.37gが生成していた。
この結果は、仕込アセトアルデヒドに対するアラニンアミドの収率61%である。
【0027】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、アルデヒド類とケトンのシアンヒドリン類とアンモニア水から、α−アミノ酸アミド類が、アミノニトリル合成工程を必要とすることなく簡略化された方法にて、容易に高収率で製造できる。
Claims (2)
- 一般式(1)で表されるアルデヒド類と一般式(2)で表されるケトンのシアンヒドリン類の混合液へ触媒を添加し反応させて一般式(3)で表されるアルデヒドのシアンヒドリン類を生成せしめ、次いでアンモニア水を添加し、10〜20℃で反応させることを特徴とする一般式(4)で表されるα−アミノ酸アミド類の製法。
R1CHO (1)
(R1は水素原子、低級アルキル基、置換低級アルキル基、シクロヘキシル基、置換シクロヘキシル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基、複素環基および置換複素環基である)
R1CH(OH)CN (3)
(R1は水素原子、低級アルキル基、置換低級アルキル基、シクロヘキシル基、置換シクロヘキシル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基、複素環基および置換複素環基である)
R1CH(NH2)CONH2 (4)
(R1は水素原子、低級アルキル基、置換低級アルキル基、シクロヘキシル基、置換シクロヘキシル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基、複素環基および置換複素環基である) - 前記触媒として有機あるいは無機の強塩基性物質を使用する請求項1記載の製法。
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