JP4395703B2 - モールディング用ポリエステル樹脂でモールディングした電気電子部品およびその製造方法 - Google Patents

モールディング用ポリエステル樹脂でモールディングした電気電子部品およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モールディング用ポリエステル樹脂、樹脂組成物及びそれらを用いた電気電子部品に関する。本発明のポリエステル樹脂、樹脂組成物は電気電子部品を固定し、防水する低圧モールディング用途に好適である。
【0002】
【従来の技術】
自動車・電化製品に広汎に使用されている電気電子部品は、その使用目的を達成する為に、外部との電気絶縁性が必須とされる。例えば、電線は電気絶縁性を有する樹脂で被覆されている。昨今、携帯電話等、小さい容量の中に複雑な電気電子部品を詰め込める必要がある用途が激増している中で、その電気絶縁は種々の方法が採用されている。特に電気絶縁体となる樹脂等を、回路基板等複雑な形状を有する部品にモールドする時は、その形状に追随できる特性が求められる。
その為には、被覆時の樹脂の粘度を下げる方法が一般的である。予め樹脂を溶剤に溶解して溶液状として、電気電子部品に含浸させ、その後溶媒を蒸発させる方法は、粘度を下げる方法の一つであるが、溶媒の蒸発時に、気泡が残存したり、溶媒として有機溶剤を使用したりすれば作業環境が劣悪になる等、問題点が多い。
【0003】
そこで、これまでは、モールド後の耐久性も加味して、多くの文献に提案されているように、2液のエポキシ樹脂が一般的に使用されてきた(例えば特許文献1、2参照)。これは主剤と硬化剤をモールド直前に、ある一定の割合に混合して、低い粘度でモールドし、加温して数日間保管することで硬化反応を促進させ、完全に固化させるものである。しかしこの方法においては、エポキシ樹脂に環境への悪影響を指摘されつつある、2液の混合比率を精密に調整する必要がある、混合前の使用可能期間が1〜2ヶ月と短く限定される等の問題点が知られている。また、硬化に数日間の養生期間を必要とするので、生産性が低い問題もある。さらに、硬化後の樹脂収縮による応力が、例えば電気電子部品と導線を接合するハンダ部分等の物理的強度の弱いところに集中して、その部分が剥離するという問題もあった。
【0004】
そのような問題点を含みながら使用されてきた2液エポキシ樹脂にかわるモールディング用樹脂として、ホットメルトタイプのものが挙げられる。モールド時の粘度を下げる為に樹脂を加温溶融させるだけのホットメルト接着剤は、溶剤含有系やエポキシ樹脂系における作業環境上の問題点が解決される。また、モールド後冷却するだけで固化して、性能を発現するので、生産性も高くなる。加えて、一般に熱可塑の樹脂を使用するので、製品としての寿命を終えた後も、加熱して樹脂を溶融除去することで、部材のリサイクルが容易に可能となる。しかし、モールディング用樹脂としての高い潜在能力を有しながら、これまで2液エポキシ樹脂を充分に代替する材料となり得ていなかったのは、それに適した素材が提案されていなかったことによる。
【0005】
例えば、ホットメルトとして比較的安価なエチレンビニルアセテート(EVA)は、耐熱性が不充分で、電気電子部品が使用される環境における耐久性を有しないだけでなく、接着性を発現する為に様々な添加剤が含まれる為に、電気電子部品への汚染による電気的性能の低下が起こる虞があり、不適である。また樹脂単体で種々の素材への高い接着性を発現するポリアミドは、低い溶融粘度と高い樹脂強度により低圧モールディング樹脂材料として優れてはいるが(例えば特許文献3参照)、基本的に吸湿性が高く、外部から徐々に吸湿することで、最も重要な特性である電気絶縁性が経時的に低下することが多い。
【0006】
また、これとは別に代表的なSn−Pb合金である63Sn−37Pb(63wt%Sn−37wt%Pbを意味し、共晶温度183℃)は鉛を有するので鉛公害を引き起こし、環境に対する負荷が大きいとして、近年鉛フリーのハンダに置き換える動きがある。63Sn−37Pbハンダに代わる鉛フリーハンダ合金としては、Sn−Ag合金(Sn−3.5Ag、共晶温度221℃)、Sn−Sb合金(Sn−9Sb、包晶温度246℃)等が挙げられる。
これらの合金は、ハンダ溶融点が高く、電子部品によっては接合時に耐熱性が問題となる。このため、溶融点が低く且つ鉛フリーの合金が電気電子部品に接合されるケースが増大している。例えば、Sn−7.5Bi−2.0Ag−0.5Cuの組成を有するSn−Bi系、42Sn−58Bi合金(共晶温度139℃)、52Sn−48In合金(共晶温度117℃)等が挙げられる。
【0007】
上記のような低溶融点ハンダを接合に使用した電気電子部品をモールドしようとすると、ハンダ接合部の接合が外れてしまったり、抵抗値が大きくなって、電気電子部品の性能を著しく低下させる虞があった。
【0008】
以上のように従来の技術では、複雑な形状を有する電気電子部品用のモールディング用樹脂として、種々の性能を充分満足する素材は提案されていなかった。
【0009】
【特許文献1】
特開平1−75517号公報([特許請求の範囲]他)
【特許文献2】
特開2000−239349号公報([特許請求の範囲]他)
【特許文献3】
欧州特許第1052595号明細書(第6〜8頁、[特許請求の範囲]他)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は複雑な形状を有する電気電子部品用のモールディング用ポリエステル樹脂あるいは樹脂組成物として、防水性・電気絶縁性・作業環境性・生産性・耐久性・難燃性等の種々の性能を充分満足する素材を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する為、本発明者等は鋭意検討し、以下の発明を提案するに至った。即ち本発明は、以下に示すモールディング用ポリエステル樹脂、樹脂組成物及びそれらを用いた電気電子部品である。
【0012】
(1) ハンダ合金により接合されている電気電子部品をモールディングするためのポリエステル樹脂において、該ハンダ合金の溶融点をX[℃]としたとき、融点(Tm)[℃]が下記の条件を満たし、かつガラス転移温度が−100〜15℃であることを特徴とするモールディング用ポリエステル樹脂。
70≦Tm≦{X+50} (但し、Tm≦250かつX≧20)
【0013】
(2) 255℃での溶融粘度が5〜1000dPa・sであることを特徴とする(1)に記載のポリエステル樹脂。
【0014】
(3) (1)または(2)に記載のポリエステル樹脂でモールディングしたことを特徴とする電気電子部品。
【0015】
(4) ハンダ合金により接合されている電気電子部品をモールディングするためのポリエステル樹脂組成物において、該ハンダ合金の溶融点をX[℃]としたとき、融点(Tm)[℃]が下記の条件を満たし、かつガラス転移温度が−100〜15℃であるポリエステル樹脂を含むことを特徴とするモールディング用ポリエステル樹脂組成物。
70≦Tm≦{X+50} (但し、Tm≦250かつX≧20)
【0016】
(5) さらに酸化防止剤を含むことを特徴とする(4)記載のモールディング用ポリエステル樹脂組成物。
【0017】
(6) さらに光安定剤を含むことを特徴とする(4)または(5)に記載のモールディング用ポリエステル樹脂組成物。
【0018】
(7) さらに難燃剤を含むことを特徴とする(4)〜(6)のいずれかに記載のモールディング用ポリエステル樹脂組成物。
【0019】
(8) (4)〜(7)のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物でモールディングしたことを特徴とする電気電子部品。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明で言うモールディングとは、10〜800N/cm2の低圧で射出される成型である。すなわち、従来一般的にプラスチックの成型に用いられている平均4000N/cm2程度での高圧での射出成型に比べて、非常に低圧で行われる成型方法である。原理としては通常の射出成型と同様、溶融した樹脂を、電気電子部品をセットした金型の中に射出して、部品を包み込むものであり、デリケートな部品を破壊することなくオーバーモールドすることができるものである。
【0021】
本発明のモールディング用ポリエステル樹脂、および樹脂組成物は、電気電子部品をセットした金型に注入することで成型される。より具体的には、加熱タンク中にて加熱溶融し、射出ノズルを通じて金型へ注入され、その後一定の冷却時間を経た後、成型物を金型から取り外して成型物を得ることが出来る。
【0022】
モールディングの設備としては特に限定されないが、例えば米国キャビスト社製Mold−man 8000、独国Nordson社製WS102/MX3006、米国ITW Dynatec社製ダイナメルトシリーズ等が挙げられる。
【0023】
また、ポリエステルの熱劣化をできるだけ生じさせずにモールドする為には、260℃以下での速やかな溶融が求められるので、ポリエステル樹脂の融点の上限は250℃が望ましく、より好ましくは230℃、さらに好ましくは200℃である。常温での取り扱い性と電気電子部品とした後の耐熱性を考慮すると下限は70℃以上であり、好ましくは100℃である。
【0024】
電気電子部品の中でもセンサーやコネクター、回路基板等にはハンダを用いて実装したものも多く、これらをモールディングする際には注意が必要である。すなわち電気電子部品の接合に使用されるハンダ合金として溶融点(X)が200℃を超えるものを用いる場合は、接合部が熱劣化する可能性が低いため、モールディング用ポリエステルの融点(Tm)としてはポリエステル樹脂が劣化しにくい250℃以下とすることが望ましい。また、電気電子部品の接合に使用されるハンダ合金の溶融点(X)が、20℃以上200℃以下の場合、モールディング用ポリエステル樹脂の融点の上限は、[ハンダ合金の溶融点+50]℃が望ましい。この温度を超える融点の樹脂でモールドした場合、ハンダの接合部が外れたり、電気電子部品とした後の回路抵抗の大幅な上昇を招く可能性が高いため、モールド後に電気電子部品の性能が著しく低下する虞がある。電気電子部品の接合に使用されるハンダ合金の溶融点(X)が、20℃未満である場合、常温での取り扱い性と通常の耐熱性を考慮すると、本用途に用いることが難しい。
【0025】
本発明のポリエステル樹脂の融点(Tm)は後述するモノマーを用いて、結晶セグメントと非晶セグメントのモノマー組成と共重合比を調整することで容易に調節が可能である。
【0026】
本発明のモールディング用ポリエステル樹脂に用いるジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、シュウ酸、ドデカンジ酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等のジカルボン酸及び/又はこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらは、単独、もしくは2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
【0027】
また、モールディング用ポリエステル樹脂に用いる脂肪族ジオール及び/又はそのエステル形成性誘導体としてはプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルヒドロキシピバリン酸エステル、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、1,9−ノナンジオール、2−メチルオクタンジオール、1,10−ドデカンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ポリエーテルグリコール及びこれらのエステル誘導体が挙げられる。これらは、単独、もしくは2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
【0028】
これらのうち、ポリエーテルグリコールを使うことが後述する冷熱サイクル耐久性を向上させる上で好ましい。ポリエーテルグリコールはポリエステル樹脂における全グリコール成分の1モル%以上であることが好ましく、さら好ましくは5モル%、より好ましくは10モル%、最も好ましくは20モル%以上である。1モル%未満であると、低温特性が劣る場合がある。上限は耐熱性やブロッキング等の取り扱い性を考慮すると80モル%以下、好ましくは70モル%以下、より好ましくは60モル%以下である。
【0029】
ポリエーテルグリコールとしてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ12−プロピレングリコール、ポリ2−メチル−1,3−プロピレングリコール、ポリ(テトラメチレングリコール−ネオペンチルグリコール)共重合体、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック又はランダム共重合体、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフランのランダム共重合体エチレンオキシドとテトラヒドロフランのブロック又はランダム共重合体等が挙げられる。これらは、単独、もしくは2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
【0030】
また、ポリエーテルグリコールの数平均分子量は400以上であることが好ましく、より好ましくは500以上、さらに好ましくは600以上、特に好ましくは700以上であり、上限は好ましくは10000、より好ましくは6000、さらに好ましくは4000、特に好ましくは3000である。ポリエーテルグリコールの数平均分子量が400未満であると、冷熱サイクル耐久性や耐加水分解性の低下することがある。一方10000を越えると、ポリエステル部分との相溶性が低下し、ブロック状に共重合することが難しくなる場合がある。
【0031】
ガラス転移温度を低くすることにより冷熱サイクル耐久性が向上するので、モールド後の耐久性が重要な場合はより好ましい方策である。ここで言う冷熱サイクル耐久性とは、高温と低温の間を何度も昇降温させて、線膨張係数の異なる電子部品等との界面部分の樹脂剥離や、樹脂亀裂が起こらないという性能である。
冷却時に樹脂の弾性率が上がると、剥離や亀裂が起こりやすくなる。冷熱サイクルに耐える素材を提供する為に、ガラス転移温度は15℃以下が好ましい。より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−10℃以下、最も好ましくは−30℃以下である。下限は接着性や耐ブロッキング性を考慮すると−100℃以上が現実的である。
【0032】
本発明のポリエステル樹脂の数平均分子量は3000以上であることが好ましく、より好ましくは5000以上、さらに好ましくは7000以上である。また、数平均分子量の上限は好ましくは50000以下、より好ましくは40000以下、さらに好ましくは30000以下である。数平均分子量が3000未満であると、機械的強度が弱くなる場合があり、50000を超えると、255℃での溶融粘度が高くなる場合がある。
【0033】
本発明のポリエステル樹脂は、255℃での溶融粘度が5〜1000dPa・sであることが望ましい。ここで255℃での溶融粘度は以下のようにして測定した値である。水分率0.1%以下に乾燥したサンプルを用いて、島津製作所株式会社製フローテスター(型番CFT−500C)にて、255℃に加温安定したポリエステル樹脂を、1.0mmの孔径を有する厚み10mmのダイを98N/cm2の圧力で通過させたときの粘度を測定した。1000dPa・s以上の高溶融粘度になると、高い樹脂凝集力や耐久性が得られるが、複雑な形状へのモールドには、高圧の射出成形が必要となるため、部品の破壊を生じることがある。1000dPa・s以下、好ましくは500dPa・s以下の溶融粘度を有するモールディング用ポリエステルを使用することで、数百N/cm2の比較的低い射出圧力で、電気絶縁性に優れたモールド部品が得られると共に、電気電子部品の特性も損ねない。また、255℃での溶融粘度は低いほうが好ましいが、樹脂の接着性や凝集力を考慮すると下限としては5dPa・s以上が望ましく、さらに好ましくは10dPa・s以上、より好ましくは50dPa・s以上、最も好ましくは100dPa・s以上であることが好ましい。
【0034】
また、長期耐久性を付与する上で、高温の水蒸気に耐える耐加水分解性を付与する為に、エステル基濃度の上限は8000当量/106gであることが望ましい。好ましい上限は7500当量/106g、より好ましくは7000当量/106gである。また、ポリエステルとしての耐薬品性(ガソリン、エンジンオイル、アルコール、汎用溶剤等)を確保する為に、下限は1000当量/106gであることが望ましい。好ましい下限は1500当量/106g、より好ましくは2000当量/106gである。ここでエステル基濃度の単位は、樹脂1tあたりの当量数で表し、ポリエステル樹脂の組成及びその共重合比から算出される値である。
【0035】
本発明のモールディング用ポリエステル樹脂は、不飽和基を含有していない飽和ポリエステル樹脂であることが望ましい。不飽和ポリエステルであれば、溶融時に架橋が起こる等の可能性があり、モールディング時の溶融安定性に劣る場合がある。
【0036】
また、ジカルボン酸やグリコールの一部としてポリカルボン酸や、多官能ヒドロキシ化合物、オキシ酸等が共重合されてもよい。多官能成分として用いることができるものには、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、グリセリン、ペンタエリスリトール及びそれらの酸無水物等を挙げることができる。
【0037】
本発明のポリエステル樹脂の組成及び組成比を決定する方法としてはポリエステル樹脂を重クロロホルム等の溶媒に溶解して測定する1H−NMRや13C−NMRによる積分値より算出するものとする。
【0038】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法としては、公知の方法をとることができるが、例えば、上記のジカルボン酸及びジオール成分を150〜250℃でエステル化反応後、減圧しながら230〜300℃で重縮合することにより、目的のポリエステルを得ることができる。あるいは、上記のジカルボン酸のジメチルエステル等の誘導体とジオール成分を用いて150℃〜250℃でエステル交換反応後、減圧しながら230℃〜300℃で重縮合することにより、目的のポリエステルを得ることができる。
【0039】
本発明のモールディング用ポリエステル樹脂が高温長期間曝される場合は、酸化防止剤を添加することが好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、燐系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられ、これらは、単独、もしくは2種以上組み合わせて使用してもかまわない。添加量はモールディング用ポリエステル樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上5重量部以下が好ましい。0.1重量部未満だと熱劣化防止効果に乏しくなることがある。5重量部を超えると、密着性等に悪影響を与える場合がある。
【0040】
本発明において配合できるヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−トルエン、n−オクタデシル−β−
(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6’−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、カルシウム(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル−モノエチル−フォスフェート)、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ビス〔3,3−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)酪酸〕グリコールエステル、トリフェノール、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、N,N’−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン、2,2’−オキサミドビス〔エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,1,3−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミックアヒドトリエステルウイズ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナアミド)、3,9−ビス〔2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンなどを挙げることができる。これらは、単独、もしくは2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
【0041】
本発明において配合できる硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3’−チオジウロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジラウリルチオジプロピオネート、ジオクタデシルサルファイド、ペンタエリストリール−テトラ(β−ラウリル−チオプロピオネート)エステル等を挙げることができる。これらは、単独、もしくは2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
【0042】
本発明において配合できる燐系酸化防止剤としては、トリス(ミックスド、モノ及びジノリルフェニル)フォスファイト、トリス(2,3−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)フォスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルフォスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンフォスファナイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストール−ジ−フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスフォナイト、トリフェニルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオクタデシルフォスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、トリドデシルトリチオホスファイト等を挙げることができる。これらは、単独、もしくは2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
【0043】
本発明において配合できるアミン系酸化防止剤としては、N,N−ジフェニルエチレンジアミン、N,N−ジフェニルアセトアミジン、N,N−ジフェニルフルムアミジン、N−フェニルピペリジン、ジベンジルエチレンジアミン、トリエタノールアミン、フェノチアジン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、4,4’−テトラメチル−ジアミノジフェニルメタン、P,P’−ジオクチル−ジフェニルアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチル−ペンチル)−p−フェニレンジアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β− ナフチルアミン、4,4’−ビス(4−α,α−ジメチル−ベンジル)ジフェニルアミン等のアミン類及びその誘導体やアミンとアルデヒドの反応生成物、アミンとケトンの反応生成物から挙げることができる。これらは、単独、もしくは2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
【0044】
さらには本発明のモールディング用ポリエステル樹脂には光安定剤を添加することが好ましい。ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアゾール系、ニッケル系、サリチル系光安定剤等が挙げられ、これらは、単独、もしくは2種以上組み合わせて使用してもかまわない。添加量はモールディング用ポリエステル樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上5重量部以下が好ましい。0.1重量部未満だと耐候性に乏しくなることがある。5重量部を超えると、密着性等に悪影響を与える場合がある。
【0045】
本発明において配合できるヒンダードアミン系光安定剤としては、琥珀酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミル〕〕、2−n−ブチルマロン酸のビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)エステル、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと1,2−ジブロモエタンとの重縮合物、ポリ〔(N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン)−(4−モノホリノ−1,3,5−トリアジン−2,6−ジイル)−ビス(3,3,5,5−テトラミチルピペラジノン)〕、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ドデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−ドデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,6,11−トリス〔{4,6−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2−イル)アミノ}ウンデカン、1−〔2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトロメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物などを挙げることができる。これらは、単独、もしくは2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
【0046】
本発明において配合できるベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアゾール系、ニッケル系、サリチル系光安定剤としては、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’、5’−ビス(α,α−ジメチルベンジルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンアゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾチリアゾール、2,5−ビス−〔5’−t−ブチルベンゾキサゾリル−(2)〕−チオフェン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル燐酸モノエチルエステル)ニッケル塩、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキサリックアシッド−ビス−アニリド85〜90%と2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチル−4’−t−ブチルオキサリックアシッド−ビス−アニリド10〜15%の混合物、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−エトキシ−2’−エチルオキサザリックアシッドビスアニリド、2−〔2’−ヒドロオキシ−5’−メチル−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミド−メチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−i−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシルオキシベンゾフェノン、サリチル酸フェニル等の光安定剤を挙げることができる。
これらは、単独、もしくは2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
【0047】
さらには本発明のモールディング用ポリエステル樹脂には難燃性を高める目的で難燃剤を添加することが好ましい。例えば、トリフェニルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、キシレニルジフェニルフォスフェート、クレジルビス(2、6−キシレニル)フォスフェート、2−エチルヘキシルフォスフェート、ジメチルメチルフォスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)フォスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)フォスフェート、ビスフェノールAビス(ジクレジル)フォスフェート、ジエチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、リン酸アミド、有機フォスフィンオキサイド、赤燐等のリン系難燃剤、ポリリン酸アンモニウム、フォスファゼン、シクロフォスファゼン、トリアジン、メラミンシアヌレート、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、トリグアナミン、シアヌル酸トリアジニル塩、メレム、メラム、トリス(β−シアノエチル)イソシアヌレート、アセトグアナミン、硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラム等の窒素系難燃剤、ジフェニルスルフォン−3−スルフォン酸カリウム、芳香族スルフォンイミドイミド金属塩、ポリスチレンスルフォン酸アルカリ金属塩等の金属塩系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化スズ等の水和金属系難燃剤、シリカ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の無機系難燃剤、シリコーンパウダー等のシリコン系難燃剤、テトラブロムビスフェノールA(TBA)、テトラブロムビスフェノールS(TBS)、ビス(ジブロモプロピル)テトラブロモビスフェノールAエーテル、TBAエポキシ、TBAエチルエーテルオリゴマー、TBAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、TBA(アリルエーテル)、TBAビス(2−ヒドロキシエチルエーテル)、TBAカーボネートオリゴマー、TBSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、ヘキサブロモベンゼン、テトラブロモ無水フタル酸、デカブロモジフェニルオキサイド、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、ブロム化フェノキシ、エチレンビス(テトラブロモフタル)イミド、臭素化ジフェニルオキサイド、ブロム化ポリスチレン等のハロゲン置換されたフェニル基を有する難燃剤等が挙げられる。これらは、単独、もしくは2種以上組み合わせて使用してもかまわない。添加量はモールディング用ポリエステル樹脂100重量部に対して、1重量部以上50重量部以下が好ましい。1重量部未満では難燃性に劣り、50重量部を超えると、密着性等に悪影響を与える場合がある。
【0048】
本発明のモールディング用ポリエステル樹脂には、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラス繊維、モンモリナイト、窒化アルミニウム、雲母等の充填材、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料を配合して、モールディング用途に用いてもよい。
【0049】
本発明のモールディング用ポリエステル樹脂には、密着性、柔軟性、耐久性等を改良する目的でその他の組成のポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、エポキシ、ポリカーボネート、アクリル、エチレンビニルアセテート、フェノール等の他の樹脂を配合して、樹脂組成物としてモールディング用途に用いても全く差し支えない。その際のポリエステルは組成物全体に対して50重量%以上含有することが好ましく、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%、特に好ましくは90重量%以上である。ポリエステルの含有量が50重量%未満であるとポリエステル樹脂自身が有する、優れた電気電子部品の固定密着性、種々の耐久性、耐水性を低下する虞がある。
【0050】
本発明におけるポリエステル樹脂でモールディングした電気電子部品とは、例えば自動車、船舶、飛行機、通信、コンピュータ、家電用途各種のセンサ、コントロールユニット、コネクター、ハーネス、プリント基板等であり、これらの部品にハンダによる接合部分があることが必要である。
【0051】
【実施例】
本発明をさらに詳細に説明するために以下に実施例を挙げるが、本発明は実施例によってなんら限定されるものではない。尚、実施例に記載された各測定値は次の方法によって測定したものである。
【0052】
融点、ガラス転移温度:セイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量分析計「DSC220型」にて、測定試料5mgをアルミパンに入れ、蓋を押さえて密封し、一度255℃で5分ホールドして試料を完全に溶融させた後、液体窒素で急冷して、その後−150℃から260℃まで、20℃/minの昇温速度で測定した。得られた曲線の変曲点をガラス転移温度、吸熱ピークを融点とした。
【0053】
溶融粘度:島津製作所製、フローテスター(CFT−500C型)にて、255℃に設定した加熱体中央のシリンダー中に水分率0.1%以下に乾燥した樹脂試料を充填し、充填1分経過後、プランジャーを介して試料に荷重(98N)をかけ、シリンダー底部のダイ(孔径:1.0mm、厚み:10mm)より、溶融した試料を押出し、プランジャーの降下距離と降下時間を記録し、溶融粘度を算出した。
【0054】
数平均分子量:クロロホルムを溶離液としたウォーターズ社製ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)150cを用いて、カラム温度35℃、流量1cm3/分にてGPC測定を行なった結果から計算して、ポリスチレン換算の測定値を得た。
【0055】
熱処理試験前後の溶融粘度保持率:サンプルを1cm×1cm×1cmに切り出し、そのサンプルをタバイエスペック社製プレッシャークッカー試験機、TTC−411型において、処理した。熱処理試験前後の溶融粘度を比較して保持率を求めた。尚、溶融粘度の測定は上述の方法に従った。
【0056】
ポリエステル樹脂の製造例
撹拌機、温度計、溜出用冷却器を装備した反応缶内にテレフタル酸166重量部、1,4−ブタンジオール180重量部、テトラブチルチタネート0.25重量部を加え、170〜220℃で2時間エステル化反応を行った。エステル化反応終了後、数平均分子量1000のポリテトラメチレングリコール「PTMG1000」(三菱化学社製)を300重量部とヒンダードフェノール系酸化防止剤「イルガノックス1330」(チバガイギー社製)を0.5重量部投入し、255℃まで昇温する一方、系内をゆっくり減圧にしてゆき、60分かけて255℃で665Paとした。そしてさらに133Pa以下で30分間重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂(A)を得た。このポリエステル樹脂(A)の融点は165℃で、溶融粘度は250dPa・sであった。
【0057】
ポリエステル樹脂(B)〜(H)は、ポリエステル樹脂(A)と同様な方法により合成した。それぞれの組成及び物性値を表1に示す。
【0058】
【表1】
Figure 0004395703
【0059】
表中の略号は以下の通りである。
TPA:テレフタル酸、NDCA:2,6−ナフタレンジカルボン酸、IPA:イソフタル酸、BD:1,4−ブタンジオール、EG:エチレングリコール、PTMG1000:ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量1000)、PTMG2000:ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2000)、NPG:ネオペンチルグリコール
【0060】
ポリエステル樹脂組成物の製造例
ポリエステル樹脂組成物(I)は、ポリエステル樹脂(A)100重量部、難燃剤としてデカブロモジフェニルオキサイド10重量部を均一に混合した後、二軸押し出し機を用いてダイ温度220℃において溶融混練することによって得た。
ポリエステル樹脂組成物(J)〜(P)までは、ポリエステル樹脂組成物(I)と同様な方法によって調整した。それぞれの組成物及び物性値を表2に示す。
【0061】
【表2】
Figure 0004395703
【0062】
モールディング用ポリエステル樹脂組成物として(I)〜(M)及び(O)、(P)の7種類を180℃にて溶融し、(N)は200℃以下では溶融しないので、210℃で溶融して、低圧(〜300N/cm2)射出成形用ノードソン社製アプリケーター「WS102/MX3006」にて射出成形を行った。被モールディング材料は塩ビのリード線2本を溶融点139℃である42Sn−58Biハンダ合金で接合された20mm×15mmの回路基板で、内寸25mm×20mm×5mmのモールド用アルミ製金型を使用してモールドした後、金型から成形品を形状欠損なく離型できるまでの時間(金型離型時間)、回路基板への成形状態を観察した。また、成型後の回路基板の導通テストに関してはテスターを用いて行なった。さらにその基板を80℃×95%RHにて100H放置し、回路抵抗の保持率を測定した。保持率が大きいほど電気電子部品の絶縁材料として好適であることを示す。また、各樹脂サンプルをプレッシャークッカーテスト(121℃、0.2MPa、100Hr)にかけて、溶融粘度の保持率を求めた。保持率が小さいほど、ポリエステル樹脂の加水分解性が悪く、長期の耐久性が低下する傾向にある。また、冷熱サイクルテスト(−40℃〜80℃を20回)後の成形品の外観を観察した。その結果を表3にまとめた。
【0063】
ポリエステル樹脂組成物(I)〜(M)は本特許の請求の範囲を満たすが、ポリエステル樹脂(N)は融点が201℃であって、[接合に使用されているハンダ合金の溶融点+50]℃以上であり、(O)はガラス転移温度が20℃であり、(P)は融点をもたないことにおいて本特許の請求の範囲を満たさない。
【0064】
【表3】
Figure 0004395703
【0065】
表3に示すように、特許請求の範囲を満たすポリエステル樹脂組成物(I)〜(M)までを用いたものにおいては成型品の特性はいずれも良好であったが、特許請求の範囲を満たさないポリエステル樹脂組成物(N)では、成型後に導通不良が起こり、80℃×95%RHにて100H放置した後の回路抵抗の保持率は測定できなかった。また、特許請求の範囲を満たさないポリエステル樹脂組成物(O)、(P)を用いたものにおいては成型品の耐久性が大きく低下した。
【0066】
【発明の効果】
本発明のポリエステル樹脂、樹脂組成物は、複雑な形状を有する電気電子部品のモールディング用として、種々の性能を充分満足する素材を提供することができ、例えば自動車、船舶、飛行機、通信、コンピュータ、家電用途各種のコネクター、ハーネスやあるいは電子部品、プリント基板を有するスイッチ、センサのモールド成型品として有用である。

Claims (8)

  1. ハンダ合金により接合されている電気電子部品をモールディングするためのポリエステル樹脂組成物において、
    該ハンダ合金の溶融点をX[℃]としたとき、融点(Tm)[℃]が下記の条件を満たしかつガラス転移温度が−100〜15℃であるポリエステル樹脂を含み、
    前記ポリエステル樹脂が、
    テレフタル酸、ナフタレンカルボン酸、またはテレフタル酸とイソフタル酸、からなるジカルボン酸成分と、
    1,4−ブタンジオールとポリテトラメチレングリコール、またはエチレングリコールとポリテトラメチレングリコール、からなるジオール成分と
    からなるものであることを特徴とするモールディング用ポリエステル樹脂組成物でモールディングしたことを特徴とする電気電子部品。
    70≦Tm≦{X+50} (但し、Tm≦250かつX≧20)
    なおここでモールディングとは、10〜800N/cmの低圧で射出される成型であり、電気電子部品をセットした金型の中に溶融した樹脂組成物を射出して該電気電子部品を包み込むものである。
  2. 前記ポリエステル樹脂100重量部に対し0.1重量部以上5重量部以下の酸化防止剤を含有するモールディング用ポリエステル樹脂組成物でモールドしたことを特徴とする請求項1記載の電気電子部品。
  3. 前記ポリエステル樹脂100重量部に対し0.1重量部以上5重量部以下の光安定剤を含有するモールディング用ポリエステル樹脂組成物でモールドしたことを特徴とする請求項1または2に記載の電気電子部品。
  4. 前記ポリエステル樹脂100重量部に対し1重量部以上50重量部以下の難燃剤を含有するモールディング用ポリエステル樹脂組成物でモールドしたことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の電気電子部品。
  5. 前記ポリエステル樹脂が、255℃での溶融粘度が5〜1000dPa・sであることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の電気電子部品。
  6. 前記ポリエステル樹脂が、数平均分子量3000以上50000以下である請求項1〜5いずれかに記載の電気電子部品。
  7. 前記ポリエステル樹脂における全グリコール成分の1モル%以上80モル%以下がポリテトラメチレングリコールであり、なおかつ数平均分子量が400以上10000以下である請求項1〜6いずれかに記載の電気電子部品。
  8. ハンダ合金により接合されている電気電子部品をモールディングするためのポリエステル樹脂組成物において、
    該ハンダ合金の溶融点をX[℃]としたとき、融点(Tm)[℃]が下記の条件を満たし、かつガラス転移温度が−100〜15℃であるポリエステル樹脂を含むことを特徴とするモールディング用ポリエステル樹脂組成物でモールディングすることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電気電子部品の製造方法。
    70≦Tm≦{X+50} (但し、Tm≦250かつX≧20)
    なおここでモールディングとは、溶融した樹脂組成物を、電気電子部品をセットした金型の中に射出して、該電気電子部品を包み込むものである。
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