JP4394221B2 - 水酸化カルシウムの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ごみ焼却施設等から発生する塩化水素、二酸化硫黄などの有害な酸性成分を有する排ガスを効率よく処理する排ガス処理剤に関し、特にこのような排ガス処理剤として好適な消石灰を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ごみ焼却施設から発生する塩化水素、二酸化硫黄等の有害な酸性成分を含有する排ガスを無害化する方法として、消石灰を中和剤として用い中和処理する方法が知られている。このような中和剤として用いられる消石灰は、有害な酸性成分と効率よく反応するように、比表面積が大きく反応性が高いことが求められる。例えば特公平6-8194号公報には、水に反応遅延性有機溶媒を混合した液体を用いて消化することにより比表面積が大きい水酸化カルシウムを製造する方法を開示している。また特開平9-156969号公報には、消化水にトリエタノールアミンのような水酸基を2個以上有する有機溶剤を1〜10重量%添加することにより微粉末消石灰を製造する方法について開示している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記従来の製造方法では、有機物質を添加物として用いているため次のような問題がある。1)有機物質としてメタノールやエーテルのような揮発性の高いものを用いた場合には、周囲への放散や発火の可能性があり、それを回収する装置が別途必要になる。2)比較的分子量が大きく揮発性のないものを用いた場合には、それら有機物質が生成される消石灰の表面に残存しているため、貯蔵中や排ガス処理のために煙道に投入した時に発熱したり発火する場合がある。3)残存する有機物質が酸性ガスと反応し2次的な有害物質が生成する可能性がある。
【0004】
そこで本発明は、有機物質を用いることなく、比表面積が大きく反応性の高い水酸化カルシウムを製造する方法を提供することを目的とする。また本発明は、高効率で排ガスを処理できる排ガス処理剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の水酸化カルシウムの製造方法は、酸化カルシウムを消化水で消化して水酸カルシウムを製造する際に、消化水に0.5重量%以上の過酸化水素を添加することを特徴とする。その際、酸化カルシウムと消化水とのモル比を1:1.2〜1:3の範囲とする。
本発明の製造方法において、消化水は過酸化水素を好ましくは1〜20重量%含む。
【0006】
また本発明の排ガス処理剤は、上記水酸化カルシウムの製造方法によって製造された水酸化カルシウムを含む排ガス処理剤であり、好適には水酸化カルシウムのBET比表面積が20m2/g以上である排ガス処理剤である。
【0007】
消化水に過酸化水素を含有せしめることにより、通常の水を使用した場合に比べ水酸化カルシウムの比表面積を大きくすることができる。また得られる水酸化カルシウムは、過酸化カルシウムを含有し、これにより酸性成分との高い反応性が得られる。さらに消化水は有機物質を含有しないので、有機物質に伴う諸問題、例えば周囲への放散や発火の問題、水酸化カルシウム表面への残存や発熱等がない。
【0008】
以下、本発明の水酸化カルシウムの製造方法について詳述する。
本発明の水酸化カルシウムの製造方法は、乾式粉砕された酸化カルシウムを消化水と混合機で混合し、次いで消化機で消化反応させ、さらに必要に応じて熟成機で熟成することにより連続的に水酸化カルシウムを製造する連続工程で行われる。
【0009】
原料として用いる酸化カルシウムは乾式粉砕されたものであれば特に限定されないが、好ましくは石灰石を焼成炉で焼成した後、ケージミル、振動ミル、ボールミル、ディスクミルなどの乾式粉砕機で粉砕したものが用いられる。粉体であれば粒径は特に限定されないが、好ましくは粒径600μm以下、より好ましくは500μm以下のものを用いる。消化発熱速度(tu)も特に限定されないが、通常tuが0.1〜5分程度のものを用いる。尚、tu は欧州域内規格(EN規格)459-2による数値である。
【0010】
消化水は、水と過酸化水素との混合物を用いる。水としては水道水が用いられるが、本発明の製造方法によって得られる水酸化カルシウムを排ガス処理剤として用いる場合には、工業用水でもよい。
過酸化水素は通常水溶液として用いられ、濃度30%〜50%のものを用いる。添加量は消化水の温度その他の消化条件によって異なるが、過酸化水素の含有量として、0.5重量%以上、好ましくは1〜20重量%とする。この範囲で過酸化水素を用いることによりBET比表面積が大きく反応性の高い水酸化カルシウムを得ることができる。
【0011】
酸化カルシウムと消化水の割合は、モル比で通常1:1.2〜1:3、好ましくは1:1.4〜1:2.5の範囲とする。このような範囲で混合することにより、酸化カルシウムが残留することなく消化することができ、しかも余分な水分による水酸化カルシウムの凝集を防止することができる。
【0012】
酸化カルシウムと消化水はよく混合した後、消化反応させることが好ましく、例えば両者を上述した割合でそれぞれ混合機に供給し、混合機中で均質に混合した後、消化機に供給し消化反応を行う。消化水の温度は通常30℃以下、好ましくは20℃以下で行う。消化水の温度が高い場合には急激に消化反応が起こり、均一な反応が行われない。
【0013】
混合機としては、すき刃型ミキサー、単一パドルスクリューミキサー、二重パドルスクリューミキサーなど公知の混合機を用いることができる。
【0014】
消化反応後の反応生成物は、その後、必要に応じて所定の時間熟成機に滞留させることにより熟成する。熟成することによって未反応の消石灰をなくすことができる。熟成のための滞留時間は、通常10〜180分、好ましくは30〜60分とする。また熟成機の温度は70〜120℃、好ましくは80〜110℃とする。熟成の際に、必要に応じて窒素、アルゴン等の不活性ガスや乾燥空気を熟成機内に連続的に供給する。不活性ガスや乾燥空気を連続的に熟成機に供給することにより生成した水酸化カルシウムから余分な水分を除去することができる。
【0015】
このようにして得られる水酸化カルシウムは、BET比表面積が20m2/g以上である。この水酸化カルシウムは、比表面積が大きいことに加え、その粒子中に過酸化カルシウムを含むので、酸性物質に対し高い反応性を有する。従って排ガス中の塩化水素や二酸化硫黄等の酸性物質を効率よく中和し、これらを無害化することができる。
【0016】
またこの水酸化カルシウムは通常の水を用いて合成した水酸化カルシウムに比べ水分量を多く含むことができ、その場合でも物性が変化しにくいという特性を有する。即ち通常の水酸化カルシウムの場合には、5%以上の水分を含む場合、粉体どうしが固結しやすく貯留槽などのタンク内でアーチング(ブリッジング)を起こしトラブルの原因となるが、本発明の方法によって製造された水酸化カルシウムは5%以上水分を含む場合でも、流動性が損なわれず粉体どうしが固結しにくい。
【0017】
このような本発明の水酸化カルシウムは排ガス処理剤として好適に用いることができ、例えば煙道中に吹き込んだ場合、比較的水分を多く含んでいるため、酸性ガスとの反応性が良好で、高い除去効果が得られる。また有機物質を含んでいないので、煙道内の高温(例えば200℃)の環境にさらされても発熱や発火のおそれがない。
【0018】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0019】
実施例1
3.1gの過酸化水素30%水溶液と水を混合し、水温を20℃に調整したものを消化水とした。一方、ベッケンバッハ炉で焼成し、乾式粉砕した粒子径600μm以下の微粉生石灰100g(tu=3.25分)を用意し、上記消化水とともに混合した後、消化反応させ、粉末状の消石灰を得た。この消石灰のBET比表面積(BET S.A.)は26.6m2/g、水分量は4.51重量%であった。
【0020】
実施例2
過酸化水素の量を15.43gに変えて、それ以外は実施例1と全く同様にして消化反応を行い、粉末状の消石灰を得た。この消石灰のBET 比表面積は37.5m2/g、水分量は8.71重量%であった。
【0021】
実施例3〜5
過酸化水素と水の量および消化水の温度を表1に示すように変えて、それ以外は実施例1と全く同様にして消化反応を行い、粉末状の消石灰を得た。これら消石灰のBET 比表面積および水分量も併せて表1に示す。
【0022】
実施例6
水の量を96.43gに変えて、それ以外は実施例4と全く同様にして消化反応を行った後、更に反応物を120℃で20分間熟成し、粉末状の消石灰を得た。これら消石灰のBET 比表面積および水分量も併せて表1に示す。
【0023】
実施例7
ロータリーキルン炉で焼成し、乾式粉砕した粒子径600μm以下の微粉生石灰100g(tu=0.1分)を用意し、実施例1と同様の消化水とともに混合した後、消化反応させ、粉末状の消石灰を得た。この消石灰のBET 比表面積は25.1m2/g、水分量は7.96重量%であった。
【0024】
実施例8、9
過酸化水素と水の量および消化水の温度を表1に示すように変えて、それ以外は実施例7と全く同様にして消化反応を行い、粉末状の消石灰を得た。これら消石灰のBET 比表面積および水分量も併せて表1に示す。
【0025】
比較例1
実施例1と同じ微粉生石灰100g(tu=3.25分)を用意し、これを過酸化水素を含まない水58g(水温10℃)ともに混合し、その他は実施例1と同様にして消化反応を行い、粉末状の消石灰を得た。この消石灰のBET 比表面積は16.9m2/g、水分量は0.79重量%であった。
【0026】
【表1】
Figure 0004394221
【0027】
表1に示す結果からもわかるように、消化水として過酸化水素を添加したものを用いた場合には、消化水の温度や原料となる生石灰の如何に関わらず、水のみを用いた場合に比べ比表面積の大きい消石灰が得られた。また実施例3、4、6以外は、水のみを用いた場合に比べ水分量が多かったが、それにも関わらず流動性は全く損なわれず、粉末を手で固めても固化することがなかった。
【0028】
応用例
本発明の排ガス処理剤の酸性ガスとの反応性を評価するために、実施例5で得られた消石灰と比較例1で得られた消石灰について、簡易酸性ガス反応試験(第9回廃棄物学会研究発表会(1998年)で発表のOAR testによる)を行った。
【0029】
尚、簡易酸性ガス反応試験は、次のような手順で行った。まず予め決定されたガス−試薬当量比に基づき、対象となる酸性ガスのガス濃度から試験に必要な試薬量(消石灰量)を計算し、この量の試薬を計り取った。次にサンプリング袋の一部を切断して、袋内に計り取った試薬を投入し、さらに所定の濃度の酸性ガスをサンプリング袋内に封入した後、ガスが漏れないようにビニールテープでもとどおり密封した。封入後サンプリング袋を1分間振とうした後、静置した。一定時間毎にガス濃度検知管を用いてサンプリング袋内のガス濃度を測定した。
【0030】
対象酸性ガスを二酸化硫黄、ガス濃度を1000ppm、ガス量を10リットル、ガス−試薬当量比を1:10として上記簡易酸性ガス反応試験を行った結果、比較例1で得られた消石灰は除去率10分値が53%であったのに対し、実施例5で得られた消石灰は75%であった。
【0031】
【発明の効果】
本発明の水酸化カルシウムの製造方法によれば、消化水に過酸化水素を加えることにより、比表面積が大きく反応性の高い水酸化カルシウムを得ることができる。またこの水酸化カルシウムは比較的多くの水分を含むことができ、その場合にも流動性が損なわれず、固化しにくい。従って排ガス処理剤として用いた場合に、酸性ガスとの反応性が高く、これを効率よく中和し無害化することができる。
また本発明の排ガス処理剤は、有機物質を含有しないので、貯蔵時や排ガス処理時の高温の環境においても発熱や発火のおそれがない。

Claims (3)

  1. 酸化カルシウムを消化水で消化して水酸カルシウムを製造する方法であって、前記酸化カルシウムと消化水とのモル比を1:1.2〜1:3の範囲とするとともに、前記消化水に0.5重量%以上の過酸化水素を添加することを特徴とする水酸カルシウムの製造方法。
  2. 前記消化水は過酸化水素を1〜20重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の水酸化カルシウムの製造方法。
  3. 請求項1記載の製造方法によって製造された水酸化カルシウムであって、BET比表面積が20m 2 /g以上である水酸化カルシウムを含む排ガス処理剤。
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