JP5023412B2 - ホルムアルデヒド廃液の処理剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホルムアルデヒドを含有する廃液を処理して安全な廃棄物にするための処理剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
医療や薬理試験を行なう分野で、ホルマリン液すなわちホルムアルデヒドの水溶液が使用されている。使用済みのホルムアルデヒド溶液は、廃棄に先だって安全に処理しなければならないことは、いうまでもない。これまで、ホルムアルデヒド廃液を処理する方法として、旧厚生省は、次亜塩素酸塩または水酸化ナトリウム+過酸化水素を用いた酸化法と、燃焼法とを推奨していたが、コストのかかる処理法であり、あまり実際的ではない。別法としては、活性汚泥により処理する技術もあるが、大規模な設備を必要とする。一方、一度の処理すべきホルムアルデヒド廃液の量は、数十ないし百リットル程度であり、大規模な処理法は適しない。
【0003】
そこで、ホルムアルデヒドの重合による糖の生成反応(ホルモース反応)を利用した処理法が提案され(たとえば「病理技術」56巻7〜8頁の『消石灰を用いたホルマリン廃液処理法』)、簡易に実施できる方法として、これがむしろ広く採用されつつある。具体的な手法は、20%廃液であれば、その5重量%程度の消石灰を投入し、撹拌するものであるが、完全な糖化には常温で1週間以上という長期間を必要とする。
【0004】
市場で入手が容易な消石灰は、工業用または農業用に製造販売されたものであって、微粉末を含み、これが取り扱い時に粉塵となって飛散したり、液の表面に浮かんで容易に沈下しなかったりするという問題がある上、糖化完了後も廃液中に残滓が残って、処理液の取り扱いを面倒にする。ホルムアルデヒドの重合による糖化反応にとって、消石灰は直接反応剤となるものではなく、触媒的に作用するものであるから、本来は少量で足りるはずであるが、少量の投入では反応完結までに要する時間が不相当に長くなり、かえって不利である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の基本的な目的は、消石灰を利用するホルマリン廃液の糖化処理を容易にし、粉塵が飛散したり、液に混ざりにくかったり、塊を作ったりするという、消石灰粉末取り扱い上の問題を解消し、より少ない投入量でホルモース反応を進行させて、残滓の発生量が少なくて済む処理剤を提供することにある。
【0006】
本発明の進んだ目的の第一のものは、ホルマリン廃液に投入後速やかに崩壊して液中に分散し、ホルモース反応を促進し、従ってより少ない使用量で同じ効果を生じることができ、残滓の発生量が少ない処理剤を提供することにある。
【0007】
本発明の進んだ目的の第二のものは、ホルモース反応を促進する能力が高く、従ってより少ない使用量で、またはより短縮された処理時間で同じ効果を生じることができる処理剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の基本的な目的を達成する本発明のホルムアルデヒド廃液の処理剤は、カルシウムの酸化物CaOもしくは水酸化物Ca(OH)、またはそれにマグネシウムの酸化物MgOもしくは水酸化物Mg(OH)が加わった材料を、転動造粒または圧片造粒により、サイズが0.5〜10mmの範囲の粒子に成形するか、または打錠により一定の重量をもった錠剤に成形してなる処理剤である。
【0009】
【発明の実施形態】
処理剤の材料とするカルシウムの(水)酸化物とマグネシウムの(水)酸化物との混合物には、たとえば焼成ドロマイトがある。焼成ドロマイトも、カルシウムの(水)酸化物単独のものも、若干の炭酸塩を含んでいてもよい。一般に炭酸塩を焼成して酸化物にしたものは、焼成を比較的軽度にした場合の方が反応性が高いが、それには未焼成の炭酸塩が残りやすい。また、焼成後に環境中のCOと反応して、再炭酸化されることもある。あまりに多量の炭酸塩は、残滓の量が多くなって好ましくないが、数%程度の混入は実質上差し支えない。
【0010】
本発明の進んだ目的のうち、第一のものを達成するホルムアルデヒド廃液の処理剤は、上記の処理剤材料に、水中崩壊促進剤としてコロイド性含水ケイ酸アルミニウムを添加したものを粒子にしてなる処理剤である。コロイド性含水ケイ酸アルミニウムを配合した消石灰は、さきに発明者が共同研究者とともに開発し、「粒状消石灰とその製造方法」として開示した(特開昭63−281226)。
【0011】
消石灰に対して水中崩壊促進剤を配合する割合は、重量部で、78〜97:3〜22の範囲から選ぶのが適当である。コロイド性含水ケイ酸アルミニウムとしては、モンモリロナイトまたはそれを主成分とするNa型ベントナイトが好適である。
【0012】
本発明の進んだ目的のうち、第二のものを達成するホルムアルデヒド廃液の処理剤は、上記の処理剤材料に、反応促進剤としてゼオライトを10重量%以下添加したものを粒子にしてなる処理剤である。ゼオライトは高価であるから、多量の添加は経済的に不利になるが、投入する処理剤の量を減らすことができれば、残滓の量を減らすことができ、全体のコストにおいて競争できる場合も少なくない。ゼオライトとしては、Y型の人工ゼオライトがとくに効果的である。
【0013】
本発明の処理剤は、上記のように、粒子の形態と錠剤の形態とがある。粒子状のものは、製造が容易で加工のコストが安いという利点がある。造粒の代表的な手段は、転動造粒と圧片造粒であり、工業的な実施には、後者が有利である。圧片造粒の一般的な方法は、2本の鋼製ロールの間で粉末を圧延して板状体とし、これを解砕したのち分級して、所望の粒度のものを選ぶ。細粉は循環使用し、粗大粒は再度粉末圧延にかける。粒径は0.5〜10mmの範囲から選べるが、実用上は1〜5mmの範囲内のものが取り扱いやすく、かつ作用の発現が速くて好適である。
【0014】
一方、錠剤にすれば、1個の重量が一定になるから、処理すべきホルムアルデヒド廃液の量に対して適切な添加量を、錠剤の個数をもって決定することができ、使用に便利である。この場合は、打錠により粉末または粉末配合物が固くしまって溶けにくくなるから、水中崩壊促進剤を配合したものを原料とすることが好ましい。
【0015】
【実施例】
[原料の配合]
生石灰の消化によって得た消石灰(CaCO含量5%以下)を用いて、つぎの配合で処理剤原料を用意した。
A:消石灰100重量部
B:消石灰95重量部+Na型ベントナイト5重量部
C:消石灰95重量部+Y型ゼオライト(CEC400me/100g)5重量部
D:消石灰90重量部+Na型ベントナイト5重量部+Y型ゼオライト(上記)
5重量部
【0016】
[実施例1]
上記の原料A〜Dをロール圧延して厚さ2.5mmの板状体とし、解砕して、1mm以上5mm以下の粒子を選んだ。
【0017】
ホルムアルデヒド20重量%溶液各20Lに、上記粒状の処理剤を表のA〜D欄に記載の量投入し、室温で5分間撹拌してから静置した。数時間ないし数日経過後、液中のホルムアルデヒド濃度(%またはppm)を、「アセチレン吸光光度法」により測定した。比較のため、市販の消石灰を既知の技術に従って用いた場合についても、同じ試験をした。結果を、7日後の残滓量とともに、表にまとめて示す。
【0018】
Figure 0005023412
【0019】
[実施例2]
上記原料BおよびDを、打錠機にかけて、直径38mm、厚さ18mmの円盤状体に成形した。これらの錠剤は、1個の重量が約30gであり、実施例1で処理の対象としたホルムアルデヒド溶液20Lに対して20〜25個を投入すれば、迅速な処理が行なえる。
【0020】
【発明の効果】
本発明のホルムアルデヒド廃液処理剤を使用すれば、適当な量の処理剤を廃液に投入して撹拌し、常温に放置しただけで、2〜3日後にはほぼ全部のホルムアルデヒドが重合して無害な糖に変化し、廃棄に耐えるレベルに達している。従来の方法で市販の消石灰を投入した場合は、より多くの処理剤を使用しても長い時間がかかり、残滓の量もはるかに多いから、明らかに本発明の処理剤がまさる。粉塵として飛散することがないことをはじめとする、取り扱い上の利益はもちろんである。1個の量が一定である錠剤タイプの製品は、使用時に計量する必要がなく個数をきめて投入するだけでよいから、さらに便利である。
【0021】
消石灰にNa型ベントナイトを添加して圧片造粒した好ましい態様(B)も、消石灰にY型ゼオライトを添加して圧片造粒した好ましい態様(C)も、それぞれ反応が速やかに進み、かつ残滓の量が少ないことが、実施データから明らかである。Na型ベントナイトとY型ゼオライトの両方を添加した、最も好成績が期待される態様(D)は、期待どおりの好結果が得られる。

Claims (5)

  1. カルシウムの酸化物もしくは水酸化物、またはそれにマグネシウムの酸化物もしくは水酸化物が加わった材料に、水中崩壊促進剤としてコロイド性含水ケイ酸アルミニウムを3〜22重量%添加したものを、転動造粒または圧片造粒によりサイズが0.5〜10mmの範囲の粒子に成形するか、または打錠により一定の重量をもった錠剤に成形してなるホルムアルデヒド廃液の処理剤。
  2. コロイド性含水ケイ酸アルミニウムが、モンモリロナイトまたはそれを主成分とするNa型ベントナイトである請求項1の処理剤。
  3. カルシウムの酸化物もしくは水酸化物、またはそれにマグネシウムの酸化物もしくは水酸化物が加わった材料に、反応促進剤としてゼオライトを5〜10重量%添加したものを、転動造粒または圧片造粒によりサイズが0.5〜10mmの範囲の粒子に成形するか、または打錠により一定の重量をもった錠剤に成形してなるホルムアルデヒド廃液の処理剤。
  4. ゼオライトが、Y型の人工ゼオライトである請求項3の処理剤。
  5. カルシウムの酸化物もしくは水酸化物、またはそれにマグネシウムの酸化物もしくは水酸化物が加わった材料に、水中崩壊促進剤としてコロイド性含水ケイ酸アルミニウムを3〜22重量%添加するとともに、反応促進剤としてゼオライトを5〜10重量%添加したものを、転動造粒または圧片造粒によりサイズが0.5〜10mmの範囲の粒子に成形するか、または打錠により一定の重量をもった錠剤に成形してなるホルムアルデヒド廃液の処理剤。
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