[トナー定着液]
本発明のトナー定着液は、水に不溶なハイドロフルオロエーテルおよび該ハイドロフルオロエーテルに分散混合可能でありかつトナーを膨潤および/または軟化させることができる有機化合物を含む。
本明細書において、「水に不溶」とは、ハイドロフルオロエーテルにおける水の溶解度が200ppm以下であることを意味する。水の溶解度が200ppmを超えると、空気中の水分が溶け込み、長期の使用時にトナー定着液が水分を含むようになる。その結果、記録紙がセルロース繊維を含む紙類である場合に、水分によりセルロース繊維の収縮が起こり、しわ、反りなどが発生する。
ハイドロフルオロエーテルは、たとえば、下記(1)〜(6)のような特性を有し、本発明のトナー定着液の成分として好適に使用できる。
(1)表面張力および粘度が小さいので、トナー粒子間、紙を構成するセルロース繊維の間などに容易に浸透し、浸透剤としての作用を示す。したがって、ハイドロフルオロエーテルとともに、トナーを膨潤・軟化させる有機化合物がトナー粒子同士の界面、トナー粒子と紙との界面などに急速に浸透し、瞬時にかつ均一にトナーを膨潤・軟化させることができる。
(2)蒸発潜熱が小さく、室温でも短時間で乾燥する。
(3)水との相溶性がほとんどないことから、トナー定着液中には水分が含まれず、またトナー定着液の保存中に、空気中の水分がトナー定着液中に溶解することがないので、セルロース繊維を含む紙などの記録紙において、セルロース繊維の収縮を引き起こすことがなく、セルロース繊維の収縮によるしわ、反りなどが発生しない。
(4)オゾン破壊係数が0であるので、オゾン破壊作用を示さない。また、OHラジカルとの反応速度により評価される大気寿命が6年程度またはそれ以下と比較的短いので、大気の温暖化作用も小さい。
(5)可燃性がなく安全であり、臭気もほとんどない。
(6)鉄、アルミニウムなどの金属材料、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネートなどの樹脂材料、ゴム材料などに対する侵食性がないので、これらの材料からなる画像形成装置の構成部材に損傷を与えることがない。
ハイドロフルオロエーテルとしては公知のものを使用でき、たとえば、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル(C4F9OCH3)、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル(C4F9OC2H5)、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(CHF2CF2OCH2CF3)などが挙げられる。これらの大気寿命、表面張力、絶対粘度、蒸発潜熱、沸点および水に対する溶解度(水溶解度)を表1に示す。
ハイドロフルオロエーテルは、沸点が55〜100℃のものが好ましく、55〜90℃のものが特に好ましい。また、ハイドロフルオロエーテルは、大気寿命が6年以下のものが好ましく、3年以下のものがさらに好ましく、0.5〜3年のものが特に好ましい。沸点がこの範囲にある場合には、沸点が、画像形成装置内部でのトナー貯蔵時の流動可能温度よりも高くなるので、トナー貯蔵時に、密閉状態で画像形成装置内部に存在させても沸騰することがない。沸点が100℃を超えると、使用環境および保存環境で沸騰するので、高価な高耐圧容器が必要になり、取り扱いが困難になる。また、沸点を100℃以下、好ましくは90℃以下にすることによって、乾燥時の蒸発熱が小さくなり、乾燥時間が早くなる。さらに、大気寿命は6年または6年未満であれば、大気の温暖化作用が充分に小さい。また大気寿命が0.5年未満では、化学物質としての安定性が不充分になり、長期保存性が低下する。
このようなハイドロフルオロエーテルとしては、メチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテルなどが挙げられる。なお、メチルノナフルオロブチルエーテルは、沸点が61℃で乾燥が速く、大気寿命も4.1年と短い。また、エチルノナフルオロブチルエーテルも沸点が76℃で乾燥が速く、大気寿命が0.8年と非常に短い。しかも、メチルノナフルオロブチルエーテルよりも溶解性に優れ、分子量がより高いエステル、アルコールなどを溶解し得るので、トナーの定着強度と速乾性とを両立させる溶質(有機化合物)の選択肢が広くなる。これらのハイドロフルオロエーテルを用いると、トナー定着液の保存温度範囲を広げることができるとともに、温暖化作用のさらなる低減化および速乾性のさらなる向上を図ることができる。ハイドロフルオロエーテルは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
本発明トナー定着液におけるハイドロフルオロエーテルの含有量は特に制限されないが、好ましくはトナー定着液全量の50〜99重量%、より好ましくは50〜95重量%、さらに好ましくは60〜90重量%、特に好ましくは80〜90重量%である。50重量%未満では、トナー定着液の浸透力が小さくなり、特にトナー量が多い場合に、表面のトナーのみが膨潤軟化し、紙の表面付近のトナーは膨潤軟化が不充分になり、トナーの記録紙への定着強度が低くなるおそれがある。99重量%を超えると、相対的に有機化合物の含有量が少なくなり、定着液のトナー膨潤・軟化作用が低下し、トナーの記録紙への定着強度が不充分になるおそれがある。
本発明のトナー定着液において、ハイドロフルオロエーテルと併用される有機化合物は、ハイドロフルオロエーテルに混合分散可能または溶解可能であり、たとえば、トナーを膨潤および/または軟化させる作用を有し、トナーを記録紙に定着させる定着剤として用いられる。
有機化合物としては、トナーを膨潤および/または軟化させる作用を有しかつハイドロフルオロエーテルに分散または溶解可能なものであれば特に制限されないけれども、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどの炭素数4以下のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトンなどの炭素数6以下のケトン類、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルイソブチルエーテル、ジメチルエーテルなどの炭素数6以下のエーテル類、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などのカルボン酸とメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコールとから形成される炭素数8以下のエステル類などが挙げられる。これらの中でも、炭素数6以下のエーテル類、炭素数8以下のエステル類などが好ましく、炭素数8以下のエステル類が特に好ましい。炭素数6以下のエーテル類の中では、ジエチルエーテルが好ましく、炭素数8以下のエステル類の中では、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチルなどが好ましい。アルコール類の炭素数が4、ケトン類の炭素数が6、エーテル類の炭素数が6またはエステル類の炭素数が8を超えると、常温での揮発性が低下するために定着トナー像の乾燥時間が長くなるとともに、トナーを膨潤軟化させる作用も低下する。
有機化合物は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。
本発明トナー定着液における有機化合物の含有量は特に制限されないが、好ましくはトナー定着液全量の1〜50重量%、より好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは10〜20重量%である。1重量%未満では、トナー定着液のトナー膨潤・軟化作用が不充分になり、トナーの記録紙への定着強度が低下するおそれがある。50重量%を超えると、トナー定着液の浸透性が低下し、記録紙上に担持されるトナーの表層のみに定着液が浸透し、トナーと記録紙との接触面などには定着液は浸透しない。その結果、表層のトナーのみが膨潤・軟化するので、トナーと記録紙との接着強度が低下し、充分な定着強度が得られないおそれがある。このような現象は特に記録紙上のトナー担持量が多い場合に起こり易い。
本発明のトナー定着液は、その好ましい特性を損なわない範囲で、たとえば、トナーとの濡れ性などを向上させるために、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては公知のものを使用でき、たとえば、脂肪酸誘導体硫酸エステル、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、四級アンモニウム塩、複素環アミンなどのカチオン性界面活性剤、アミノ酸エステル、アミノ酸などのノニオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどの非イオン性界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
本発明のトナー定着液は、ハイドロフルオロエーテルおよび有機化合物、ならびに必要に応じて界面活性剤のそれぞれ適量を混合することによって製造できる。
[画像形成装置]
図1は、本発明の実施の第1形態である画像形成装置1の構成を概略的に示す断面図である。なお、画像形成装置1は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナー像を順次、重ね合わせて転写する、いわゆるタンデム構成を採用するものである。
画像形成装置1は、画像記録紙10を貯留しかつ後述のトナー像形成部3に記録紙10を送給する用紙供給部2、用紙供給部2から送給される記録紙10にトナー像を担持させるトナー像形成部3、トナー像形成部3において記録紙10上に担持されるトナー像を記録紙10に定着させる定着装置4、および定着装置4においてトナー像が定着され、画像が形成された記録紙を外部に排出する用紙排出部5とを含んで構成される。
用紙供給部2は、記録紙10を収容する用紙カセット11と、用紙カセット11内の記録紙10を1枚ずつ取り出すピックアップローラ12と、用紙搬送路Pに沿って設けられ、ピックアップローラ12により用紙カセット11から取り出される記録紙10を、トナー像形成部3に送給するレジストローラ13とを含んで構成される。用紙カセット11は、普通紙、カラーコピー用紙、OHPフィルムなどの記録紙10を収容するトレイである。用紙カセット11への記録紙10の補給は、たとえば、画像形成装置1の正面側(操作側)に、用紙カセット11を引き出して行われる。
用紙供給部2では、用紙カセット11内の記録紙10は、ピックアップローラ12により1枚ずつ用紙カセット11から取り出され、レジストローラ13により、後述するトナー像形成部3における中間転写ベルト22へのトナー像転写のタイミングに同期し、用紙搬送路Pに沿ってトナー像形成部3の中間転写ベルト22と二次転写ローラ26との圧接部に送給される。
トナー像形成部3は、作像ユニット14b,14y,14m,14cと、中間転写ユニット15と、二次転写ローラ26と、ベルトクリーナ27とを含んで構成される。
作像ユニット14は、各色相の画像データに対応する静電潜像を形成し、該静電潜像を現像して、各色のトナー像を形成するものであり、ブラック色の画像データに対応するトナー像を形成する作像ユニット14b、イエロー色の画像データに対応するトナー像を形成する作像ユニット14y、マゼンタ色の画像データに対応するトナー像を形成する作像ユニット14mおよびシアン色の画像データに対応するトナー像を形成する作像ユニット14cを含む。
図2は、作像ユニット14bの構成を概略的に示す断面図である。作像ユニット14bは、ブラック色の画像データに対応する静電潜像がその周面に形成される感光体ドラム16bと、感光体ドラム16b周面上の静電潜像にブラックトナー6bを供給してブラックトナー像を形成する現像装置17bと、感光体ドラム16b周面に圧接するように設けられ、該周面を所定電位に帯電させる帯電ローラ18bと、ブラックトナー像転写後に感光体ドラム16b周面上に残留するブラックトナー6bを除去するドラムクリーナ19bと、所定電位に帯電した感光体ドラム16b周面に信号光21bを照射し、該周面にブラック色の画像データに対応する静電潜像を形成する光走査ユニット20とを含んで構成される。
感光体ドラム16bは、矢符51の方向に回転駆動可能に支持され、図示しない、円筒状または円柱状の導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含んで構成される。その具体例としては、たとえば、導電性基体としてのアルミニウム素管と、アルミニウム素管の周面に形成される有機光感光層とを含み、アルミニウム素管はGND電位に接続された、直径30mmの感光体ドラムが挙げられる。有機感光層は、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層して形成される。有機感光層は電荷発生物質と電荷輸送物質とを1つの層に含むものであってもよい。有機感光層以外には、酸化亜鉛、セレン、アモルファスシリコンなどを含む感光層を使用できる。感光体ドラム16bは、たとえば、周速度100mm/sで矢符51の方向に回転駆動する。
現像装置17bは、感光体ドラム16b周面に圧接しかつ矢符52の方向に回転駆動可能に設けられ、ブラック色トナー6bを感光体ドラム16b周面上の静電潜像に供給する現像ローラ28bと、現像ローラ28bの周面に圧接するように設けられ、該周面に形成されるブラックトナー層の厚みを調節する規制ブレード29bと、ブラック色トナー6bを収容するトナーホッパー30bと、トナーホッパー30b内に収容されるブラック色トナー6bを攪拌し、現像ローラ28bの周面にブラック色トナー6bを供給する撹拌スクリュー31bとを含んで構成される。現像ローラ28bは、固定磁極を内包し、たとえば、感光体ドラム16bの周速度の1.5倍である150mm/sの周速度で、矢符52の方向に回転駆動する。ここで用いられるブラック色トナー6bは、そのまま1成分現像剤として使用できるけれども、本実施の形態では磁性キァリアを混合し、2成分現像剤として用いる。現像装置17bによれば、まず、トナーホッパー30bに投入されるブラック色トナー6bおよび図示しない磁性キャリアが、撹拌スクリュー31bによって均一に撹拌混合され、現像ローラ28bの外周面に付着し、該外周面に図示しないトナー層が形成される。現像ローラ28bの矢符52の方向への回転駆動により、現像ローラ28b外周面上のトナー層は規制ブレード29bに接触し、層厚を均一にされる。引き続く矢符52方向の回転駆動により、層厚を均一にされたトナー層は、感光体ドラム16bと現像ローラ28bとの圧接部(現像ニップ部)において感光体ドムラ16b外周面に接触する。このとき、感光体ドラム16bと現像ローラ28bとは、圧接部(現像ニップ部)において、それぞれの外周面が互いに同じ方向に移動するように回転し、それに伴って、現像ローラ28b外周面のトナー層のブラック色トナー6bが、感光体ドラム16b外周面の静電潜像に供給され、トナー像が形成される。
帯電ローラ18bは、感光体ドラム16bの周面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電ローラ18bに代えて、ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、スコロトロンなどのコロナ帯電器なども使用できる。
ドラムクリーナ19bは、感光体ドラム16b周面のブラック色トナー像が中間転写ユニット15に一次転写された後に、該周面に残存するブラック色トナーを除去、回収する。
光走査ユニット20は、たとえば、半導体レーザなどからなる図示しないレーザ照射手段と、図示しないポリゴンミラーと、図示しない各色毎の反射ミラーとを含んで構成される。レーザ照射手段から照射されるレーザ光は、ポリゴンミラーにより、各色の画像データに基づいて変調され、各色毎の反射ミラーに反射される。ブラック色の画像情報は信号光21bに変調され、所定の極性および電位に帯電された感光体ドラム16b周面に照射され、ブラック色の画像データに基づく静電潜像が形成される。
作像ユニット14bによれば、感光体ドムラ16bを矢符51の方向に回転駆動しながら、まず帯電ローラ18bにより感光体ドラム16bの周面を−600Vに帯電する。次に、帯電状態にある感光体ドラム16bの周面に、光走査ユニット20から信号光21bを照射し、露光電位−70Vの静電潜像が形成される。このトナー像が形成された感光体ドラム16bの周面に、現像ローラ28bに担持されたブラック色トナー層が接触する。現像ローラ28bには現像電位として−240Vの直流電圧が印加されるので、静電潜像にブラック色トナー6bが付着し、静電潜像が現像され、感光体ドラム16b周面にブラック色トナー像が形成される。感光体ドラム16b上に形成されるブラック色トナー像は、中間転写ローラ23bに電圧を印加することにより、中間転写ユニット15の中間転写ベルト22に一次転写される。一次転写の詳細については後述する。一次転写されずに感光体ドラム16aの周面に残留するブラック色トナー6bはドラムクリーナ19bにより除去、回収される。感光体ドラム16bは、ドラムクリーナ19b通過後に、帯電ローラ18bによって再び帯電され、ブラック色トナー像作成動作が繰り返し実行される。
作像ユニット14y,14m,14cは、それぞれイエロー色トナー6y、マゼンタ色トナー6mまたはシアン色トナー6cを使用する以外は、作像ユニット14bに類似の構造を有するので、同一の参照符号を付し、さらに各参照符号の末尾にブラック色を示す「b」に代えて、イエロー色を示す「y」、マゼンタ色を示す「m」またはシアン色を示す「c」を付し、説明を省略する。なお、画像形成ユニット14b,14y,14m,14cは、中間転写ベルト22の移動方向(副走査方向)上流側からこの順番で一列に配列される。
中間転写ユニット15は、中間転写ベルト22と、中間転写ローラ23b,23y,23m,23cと、駆動ローラ24と、従動ローラ25と、ベルトクリーナ27とを含んで構成される。
中間転写ベルト22は、駆動ローラ24と従動ローラ25との間に張架されてループ状の移動経路を形成する。中間転写ベルト22は、樹脂製フィルムなどのフィルムを無端状に形成したものを使用する。その具体例としては、厚さ100μmのポリイミドフィルムの表面に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)との8:2(重量比)混合物を含む厚さ20μmのコート層を形成したものが挙げられる。ポリイミドフィルムおよび/またはPTFEとPFAとの混合物には、電気抵抗を調節するために、カーボンなどの導電剤を配合できる。中間転写ベルト22の外周面22aは、感光体ドラム16b,16y,16m,16cにこの順番で対向する。中間転写ベルト22を介して感光体ドラム16c,16y,16m,16cに対向する位置に、中間転写ローラ23b,23y,23m,23cが配置される。中間転写ベルト22の感光体ドラム16c,16y,16m,16cに対向する位置が中間転写位置である。
中間転写ローラ23b,23y,23m,23cは、それぞれ、中間転写ベルト22の外周面22aに圧接しかつその軸線まわりに回転駆動可能に設けられ、たとえば、金属製軸体と、該軸体の表面に被覆される導電性層とを含んで構成される。軸体は、たとえば、ステンレス鋼などにより形成される。その直径は特に制限されないけれども、好ましくは8〜10mmである。導電性層は、導電性弾性体などにより形成される。導電性弾性体としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、カーボンブラックなどの導電性材料を含む、EPDM、発泡EPDM、発泡ウレタンなどが挙げられる。導電性層によって、中間転写ベルト22に均一に高電圧が印加される。
中間転写ローラ23b,23y,23m,23cには、感光体ドラム16b,16y,16m,16cの表面に形成されるトナー像を中間転写ベルト22上に転写するために、トナーの帯電極性と逆極性の中間転写バイアスが定電圧制御によって印加される。これによって、感光体ドラム16b,16y,16m,16cに形成されるブラック色、イエロー色、マゼンタ色およびシアン色の各色相のトナー像が中間転写ベルト22の外周面22aに順次重ねて転写され、中間転写ベルト22の外周面22aに多色トナー像が形成される。但し、ブラック、イエロー、マゼンタおよびシアンの色相の一部のみの画像データが入力される場合には、作像ユニット14b,14y,14m,14cのうち、入力される画像データの色相に対応する作像ユニットのみにおいてトナー像が形成される。たとえば、モノクロ画像形成時には、ブラックの色相に対応する画像形成ユニット14bのみにおいてトナー像が形成され、中間転写ベルト22の外周面22aにはブラックのトナー像のみが転写される。
ベルトクリーナ27は、中間転写ベルト22の外周面22aに形成される多色または単色のトナー像を二次転写ローラ26により記録紙10に転写した後に、中間転写ベルト22の外周面22aに残存するトナーを除去するためのものであり、中間転写ベルト22に圧接するように設けられる。このようなベルトクリーナ27の具体例としては、中間転写ベルト22の外周面22aに圧接するようにもうけられ、外周面22a上に残存するトナーを掻き取るクリーニングブレードと、クリーニングブレードにより掻き取られるトナーを貯留するトナー貯留容器とを含む構成のものが挙げられる。この構成のベルトクリーナにおいて、クリーニングブレードには、たとえば、弾性を有するゴム材料(たとえば、ウレタンゴム)などからなるブレードが使用できる。
中間転写ユニット15によれば、感光体ドラム16b,16y,16m,16cで形成される各色のトナー像が、中間転写ベルト22の外周面22aの所定位置に重ね合わせて転写され、該外周面22a上に多色または単色トナー像が形成される。外周面22a上のトナー像が後述の二次転写ローラ26により記録紙10に転写された後、外周面22a上に残存するトナーはベルトクリーナ27により除去され、再度トナー像が形成される。
二次転写ローラ26は、中間転写ベルト22の外周面22a上に形成される多色または単色のトナー像を用紙供給部2から送給される記録紙10に転写するものであり、中間転写ベルト22を介して駆動ローラ24に対向し、中間転写ベルト22の外周面22aに所定のニップ圧で圧接しかつその軸線回りに回転駆動可能に設けられる。二次転写ローラ26は、中間転写ローラ23b,23y,23m,23cと同様に、たとえば、ステンレス鋼などからなる金属製軸体(芯金)と、該金属製軸体の表面に形成され、カーボンブラックなどの導電性材料を含むエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム、EPDM発泡体、ウレタンゴム発泡体などからなる導電性層とを含んで構成される。その具体例としては、径10mmの芯金の外周に厚さ4mmのウレタンゴム層を設け、ウレタンゴム層にはカーボンが分散され、トナー像の記録紙10への転写時には、+1kVの電圧を芯金に印加する構成を有するものが挙げられる。
二次転写ローラ26による二次転写は、たとえば、次のようにして行われる。即ち、まず記録紙10は、中間転写ベルト22の外周面22aにトナー像が転写されるのに同期して、レジストローラ13により、中間転写ベルト22と二次転写ローラ26との圧接位置に送給される。それと同時に、中間転写ベルト22と二次転写ローラ26との圧接位置には、中間転写ベルト22の矢符50方向への回転によって、トナー像形成部3において中間転写ベルト22の外周面22aに形成されるトナー像が搬送される。このとき、二次転写ローラ26にトナーの帯電極性とは逆極性の高電圧を印加することによって、中間転写ベルト22の外周面22aから記録紙10の表面にトナー像が転写される。トナー像が転写された記録紙10は、定着装置4に送給される。
図3は、図1に示す定着装置4の構成を概略的に示す要部断面図である。図4は、図1に示す定着装置4における、定着ローラ32の構成を概略的に示す断面図である。
定着装置4は、トナー像形成部3においてトナー像が担持された記録紙10にトナー像を定着させるための定着液7を供給する定着ローラ32と、矢符54の方向に回転可能に設けられかつ定着ローラ32に圧接するように設けられる加圧ローラ33と、定着液7を貯留する定着液タンク34と、定着液7を貯留し、後述の供給ローラ36に付着させる定着液溜35と、矢符55の方向に回転駆動可能に設けられ、定着ローラ32の周面32aに定着液7を供給する供給ローラ36と、供給ローラ36の外周面36aに圧接するように設けられ、該外周面36a上の定着液層を適量に規制する規制ブレード37とを含んで構成される。
定着ローラ32は、図示しない駆動装置により、矢符53の方向に回転駆動する。定着ローラ32は、芯金32xと、芯金32xの表面に順次積層される弾性層32yおよび表層32zとを含んで構成される。
弾性層32yには、ハイドロフルオロカーボンにより膨潤および/または軟化を受けない弾性材料を好ましく使用でき、たとえば、EPDMゴムの他、ブチルゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴムなどが挙げられる。弾性層32yが膨潤すると、定着ローラ32の外径が変化し、これによって記録紙10の搬送速度が変わるのを防止できる。
表層32zには、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などのフッ素樹脂を好ましく使用できる。これらのフッ素樹脂はハイドロフルオロエーテルとの親和性が高いので、定着ローラ32の外周面32aに、定着液7を薄い層として保持させ得る。このため、少量の定着液7を広い範囲に塗布することができるので、定着液7の消費量を低減できると共に、過剰な定着液7が未定着のトナー6を押し流して画像を乱すのを防止できる。また、フッ素樹脂は表面エネルギーが低いので、トナー6の表層32zへの付着を防止できる。このため、定着ローラ32の外周面32aに付着するトナー6が画像形成部分以外の画像面に付着するオフセット現象を、長期間にわたって防止できる。これにより、少量の定着液7で安定した画像を長期間得ることができる。これらのフッ素樹脂のうち、PTFEは主鎖の炭素の結合手に全てフッ素が結合しているので、トナー6が最も付着しにくく、ハイドロフルオロエーテルとの親和性も高い。このため、最も少量の定着液7で定着ローラ32の外周面32aに広範囲に塗布できると同時に、使用時のトナー6の経時的な付着を防止できる。したがって、定着ローラ32の表層32zには、PTFEを用いることが最も好ましい。
定着ローラ32の具体例としては、たとえば、弾性層32yが厚さ3mm、硬度20度(JIS−A)のEPDMゴム層、表層32xが厚さ80μmのPFA層、および外径が30mmである定着ローラが挙げられる。勿論PFAの代わりにPTFEを用いてもかまわない。
加圧ローラ33は、定着ローラ32と同様に、図示しない芯金と、芯金表面に順次積層される弾性層および表層とを含んで構成される。加圧ローラ33の具体例としては、たとえば、弾性層が厚さ3mm、硬度50度(JIS−A)のEPDMゴム層、表層が厚さ80μmのPFA層および外径が30mmである加圧ローラが挙げられる。加圧ローラ33は、その軸線が定着ローラ32の軸線と平行になりかつ定着ローラ32の外周面32aに圧接するように設けられ、定着ローラ32の回転に従動回転する。加圧ローラ33の定着ローラ32への圧接圧力は、たとえば、10N/cmである。
定着ローラ32と加圧ローラ33との圧接部分には、トナー像形成部3においてトナー像が担持された記録紙10が送給される。記録紙10は、トナー像の担持された面が定着ローラ32の外周面32aに対向するように送給され、定着ローラ32と加圧ローラ33との圧接部において、定着ローラ32から定着液7の供給を受け、それと同時に加圧ローラ33による加圧を受ける。これによって、記録紙10表面のトナー像は、記録紙10に定着する。
定着液タンク34は、定着液7を貯留するタンクである。定着液7の消費状況に伴い、定着液タンク34には、定着液7が随時追加補給される。また、定着液タンク34は、定着液7が満杯状態で充填されたカートリッジ形式にしてもよい。
定着液溜35は、供給ローラ36に定着液7を付着させるために、供給ローラ36の一部が定着液7に浸漬するように定着液7を貯留する容器である。定着液溜35においては、内部の定着液7の液量が常に一定になるように、図示しない定着液補給手段により定着液タンク34から定着液7が補給される。
供給ローラ36は、定着ローラ32の外周面32aに圧接し、かつ定着液溜35の開口部35aに、その一部が定着液7中に浸漬するように配置され、図示しない駆動手段により矢符55の方向に回転駆動する。供給ローラ36の回転方向(矢符55の方向)は、供給ローラ36と定着ローラ32との圧接部において、定着ローラ32の回転方向(矢符53の方向)と同方向である。また、供給ローラ36の周速度は、定着ローラ32の周速度とほぼ等速に設定される。供給ローラ36は、たとえば、芯金と、芯金の外周面に形成される表層とを含んで構成される。表層の材料としては、良好な弾性を有し、定着液7を担持するために、定着液7に含まれるハイドロフルオロエーテルとの親和性が高く、膨潤するものが好ましい。このような材料としては、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。これらの中でも、シリコンゴムおよびフッ素ゴムは表面エネルギーが小さく、トナーが付着し難いので、特に好適に使用できる。供給ローラ36の具体例としては、たとえば、表層が厚さ3mm、硬度20度(JIS−A)のシリコンゴム層であり、外径が20mmである供給ローラが挙げられる。また、供給ローラ36の定着ローラ32への圧接圧力は、たとえば、1N/cmである。
規制ブレード37は、供給ローラ36の外周面36aに圧接するように設けられる板状部材であり、供給ローラ36の外周面36a上の定着液量を適量に規制する。規制ブレード37には、たとえば、厚さ30μmのステンレス鋼製規制ブレードを使用できる。
定着液溜35の開口部35aに、その一部が定着液7に浸漬するように配置される供給ローラ36は、回転駆動によりその外周面36aに定着液7を付着させ、さらに規制ブレード37によって外周面36a上の定着液7の液量が調節される。たとえば、定着液7の液量は、供給ローラ36の外周面36aへの付着量として、24g/m2に調節される。供給ローラ36の外周面36aに付着する定着液7は、定着ローラ32との圧接部で定着ローラ32の外周面32aに移行する。このとき、供給ローラ36の外周面36aに付着する定着液7のほぼ半分が定着ローラ32の外周面32aに移行する。したがって、定着ローラ32の外周面32a上には、付着量として12g/m2である定着液層が形成される。この定着液が、未定着トナーを担持する記録紙10へ付与されると、トナー6bが定着液7中の有機化合物の作用により膨潤および/または軟化すると同時に、定着ローラ32と加圧ローラ33との圧接部(定着ニップ)での押圧力により記録紙10に定着される。
定着装置4によれば、トナー像が担持された記録紙10が、定着ローラ32と加圧ローラ33との圧接部を通過する際に、定着液7の供給および加圧を受けることにより、トナー像が記録紙10に定着し、記録紙10上に画像が形成される。
このような定着装置4においては、定着液7が供給ローラ36を介して定着ローラ32に塗布されるので、供給ローラ36にトナーが付着しない。このため、定着液溜35内の定着液7にトナーが混入することがない。これにより、定着液7の汚れによる画像乱れが生じることがないので、長期間にわたって高品質な画像を安定して得ることが出来る。
用紙排出部5は、排出ローラ38と、画像形成装置1の外部上面に設けられる排出トレイ39とを含んで構成される。定着装置4により画像が形成された記録紙10は、排出ローラ38に送給され、排出ローラ38を介して排出トレイ39に排出される。
画像形成装置1によれば、記録紙10は、用紙供給部2から用紙搬送路Pに沿って送給され、トナー像形成部3でトナー像が担持され、次いで定着装置4においてトナー像が定着されて画像が形成され、さらに用紙排出部5から画像形成装置1の外部に排出され、一連の画像形成動作が終了する。
本実施の形態において、定着液7としては本発明の定着液であれば特に制限されないけれども、たとえば、以下に示す配合比率のものが挙げられる。
〔配合例1〕 メチルノナフルオロブチルエーテル 80重量%
ジエチルエーテル 15重量%
アセトン 5重量%
〔配合例2〕 メチルノナフルオロブチルエーテル 70重量%
ジエチルエーテル 25重量%
イソプロピルアルコール 5重量%
〔配合例3〕 メチルノナフルオロブチルエーテル 60重量%
酢酸メチル 20重量%
イソプロピルアルコール 20重量%
上記配合例1〜3において、メチルノナフルオロブチルエーテルに代えてメチルノナフルオロイソブチルエーテルを使用できる。
〔配合例4〕 エチルノナフルオロブチルエーテル 80重量%
ジエチルエーテル 15重量%
1−ブタノール 5重量%
〔配合例5〕 エチルノナフルオロブチルエーテル 70重量%
ジエチルエーテル 25重量%
酢酸エチル 5重量%
〔配合例6〕 エチルノナフルオロブチルエーテル 60重量%
酢酸メチル 20重量%
イソプロピルアルコール 20重量%
上記配合例4〜6において、エチルノナフルオロブチルエーテルに代えてエチルノナフルオロイソブチルエーテルを使用できる。
配合例1〜6の定着液は、所定配合比率の各成分を混合し、ハイドロフルオロエーテル中に有機化合物(有機溶媒)を分散させることにより製造できる。
本実施の形態において、トナー6は、結着樹脂、着色剤および離型剤を含有するトナーである。トナー6の軟化点温度は特に制限されないけれども、好ましくは100〜150℃である。軟化点温度が前記のような相対的に高い温度のトナーを使用することによって、現像時の負荷による劣化を防止でき、長期間にわたって、安定して高品位な画像を形成できる。軟化点温度の高いトナーは熱定着では充分に定着および発色しにくいけれども、定着液7によるトナーの化学的な膨潤および/または軟化により、定着を良好に実施できる。このため、軟化点温度の高いトナーを用いても、高品位な定着画像を安定して形成できる。
なお、軟化点温度は、島津製作所社製フローテスターCFT−500により以下の条件下に測定する値である。
ノズル 1mmφ×10.0mm
荷重 約29.42×55Pa(30kg・f)
昇温速度 3.0℃/分
サンプル量 1.0g
また、トナー6の体積平均粒子径は、好ましくは2〜7μm(2μm以上7μm以下)である。このように、粒径が一般的なトナーよりも相対的に小さいものを用いることによって、トナー6の単位体積当たりの表面積が大きくなるので、定着液7との接触面積が増え、記録紙10に定着しやすくなる。これにより、定着液7の使用量を低減できると同時に、短時間で定着、乾燥させることができる。また、トナー6の粒径が小さいほど、重量は同じ場合でも記録紙10に対する被覆率が向上するので、低付着量で、高画質化およびトナー消費量の低減を実現でき、定着液7の消費量を一層低減できる。ところで、小粒径トナー6は流動性が低いため、一般的にはトナー層への熱などのストレスが大きくなり、劣化し易くなる。しかしながら、本発明においてはトナー6の軟化点が高いため、熱どのストレスを受けてもトナー6は劣化し難い。このため、小粒径トナー6を用いても、長時間にわたって安定した画像を形成できる。
なお、体積平均粒径が7μmを超えると、粒子の中心まで膨潤しにくい大粒径のトナー6が多くなるので、定着画像の発色が悪くなると共に、OHPの透過画像が暗くなる。一方、粒径が2μm未満では、トナー6の流動性が低下し、現像動作での供給、攪拌、帯電が充分円滑に行えなくなる。このために、トナー量の不足、逆極性トナーの増加などか発生し、現像時に高画質なトナー像を得ることができない。
トナー粒子の体積平均粒子径は、精密粒度分布測定装置(商品名:コールターマルチサイザII、コールター社製)を用いて測定される。
ここで、トナー6の一例を挙げれば、体積平均粒径:6μm、軟化点:120℃、着色剤の含有率:結着樹脂、着色剤および離型剤の合計量の15重量%、離型剤(ワックス)含有率:結着樹脂、着色剤および離型剤の合計量の3重量%である、負帯電性の絶縁性非磁性トナーである。この負帯電性の絶縁性非磁性トナーにおいて所定の画像濃度(X−Rite社製310による反射濃度測定値が1.4)を得るためには、単位面積当たりのトナー量4g/m2、トナー密度1.0×53kg/m3が必要である。
トナー6に含まれる結着樹脂としては、定着液7に含まれる成分により膨潤および/または軟化可能な樹脂であれば特に制限はなく、たとえば、ポリスチレン(スチレンまたはその置換体の単独重合体)、スチレン系共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。特にフルカラートナー用の結着樹脂としては、保存性、耐久性、定着液7による膨潤特性制御などから、軟化点100〜150℃の樹脂が好ましく、前記軟化点範囲を有するポリエステルがさらに好ましい。ポリエステルは有機溶剤によって膨潤および/または軟化し易く、膨潤および/または軟化した状態で透明になる特性を有する。この特性により、重ね合わせた多色カラートナー像を定着液7で定着すると、減法混色による発色が充分に得られる。また、結着樹脂として、熱定着用のトナーよりも軟化点および/または分子量の高い樹脂を用いても、本発明の定着液7を用いれば、定着が可能である。このため、たとえば軟化点の高い樹脂を用いることにより、現像での負荷による劣化が防止され、長期間にわたって特性が安定したトナー像を得ることができる。これにより、長期間にわたって安定した画像を形成できる。
着色剤としては、電子写真技術で常用されるトナー用顔料および染料、好ましくはトナー用顔料を使用でき、たとえば、カーボンブラック、アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ぺリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体系顔料などの有機系顔料、酸化チタン、モリブデンレッド、クロムイエロー、チタンイエロー、酸化クロムおよびベルリンブルーなどの無機系顔料、アルミニウム粉などの金属粉などか挙げられる。顔料は定着液7の成分に溶解しないので、定着液7よる滲みを防止するという観点から好ましい。一方、ニグロシン染料などの染料は、顔料とは異なり、定着液7の成分に溶解するので、形成される画像に滲みが発生するおそれがある。着色剤は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。
離型剤としては、定着液7に含まれるの有機化合物により膨潤および/または軟化可能なワックスを好ましく使用でき、たとえば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックスなどが挙げられる。ワックスは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
なお、この実施形態で使用されるトナー6には、必要に応じて、帯電制御剤、流動性向上剤、定着促進剤、導電剤などの一般的なトナー添加剤が適宜選択して配合されてもよい。
トナー6は、一般的なトナーの製造方法に従って製造できる。たとえば、着色剤、離型剤などを結着樹脂に混合分散し、得られる混合物を粉砕する粉砕法、結着樹脂のモノマーおよび/またはオリゴマー或はこれらを含む溶液に、着色剤、離型剤などを分散させた後に、モノマーおよび/またはオリゴマーを重合させる重合法などが挙げられる。ただし、いずれの製造方法においても、トナーの表面積を大きくするために、トナー粒子の形状が完全球形よりは不定形になるように調整するのが好ましい。これにより、定着液7と接触しやすくなるので、定着液7の使用量を低減できると同時に、短時間で定着、乾燥できる。
前述のように、本実施の形態によれば、オゾン層の破壊、温暖化の進展を抑制しながら、少量の定着液7を用いることにより、定着時間および乾燥時間が短縮化され、トナーの定着を迅速にかつ容易に実施でき、安定した高品位の定着画像を長期間にわたって形成できる。
図5は、本発明の実施の第2形態である画像形成装置40の構成を概略的に示す断面図である。図6は、図5に示す画像形成装置40の要部拡大断面図である。画像形成装置40は、画像形成装置1に類似し、対応する部分については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
画像形成装置40は、中間転写ベルト22の外周面22aに形成される多色または単色のトナー像を記録紙10に二次転写する際に、中間転写ベルト22の外周面に形成されるトナー像に予め定着液を付着させておき、該トナー像と定着液7とを同時に記録紙10に転写することを特徴とする。
具体的には、画像形成装置40は、トナー像形成部3aにおいて、駆動ローラ24と従動ローラ25とにより張架される中間転写ベルト22の、作像ユニット14b,14y,14m,14cと中間転写ローラ23b,23y,23m,23cとによるトナー像転写位置よりも下流側に、駆動ローラ24に対向して中間転写ベルト22に圧接するように定着液塗布装置41が設けられることを特徴とする。
また、画像形成装置40は、二次転写ローラ26aが、トナー像を記録紙10に転写するだけでなく、定着させる機能をも有することを特徴とする。また、画像形成装置40は、定着装置4aが加圧ローラ44と対向ローラ45とを含んで構成されることを特徴とする。このように、二次転写ローラ26aにある程度のトナー定着機能を持たせるとともに、別に定着装置4aを設けることにより、二次転写時の全量転写に最適な押圧力の実現と、記録紙10への定着に必要な押圧力の充分な付与を両立できる。
定着液塗布装置41は、中間転写ベルト22の外周面22aに形成される多色または単色のトナー像に定着液7を供給する塗布ローラ42と、塗布ローラ42の外周面42a上の定着液量を調整する規制ブレード37と、塗布ローラ42の外周面42aに付着させる定着液7を貯留する定着液溜35と、定着液7を貯留する定着液タンク34と、定着液タンク34から定着液溜35に定着液7を供給する定着液供給管43とを含んで構成される。
塗布ローラ42は、図示しない駆動手段により矢符56の方向に回転駆動可能に設けられ、かつ駆動ローラ24に対向し、中間転写ベルト22の外周面22aに圧接するように、定着液溜35の開口部35aに設けられる。すなわち、塗布ローラ42の一部は、定着液溜35の内部で定着液7の中に浸漬し、他の一部は定着液溜35の外方に突出して中間転写ベルト22の外周面22aに圧接する。このとき、圧接圧はたとえば1N/cmである。また、塗布ローラ42の回転速度は、中間転写ベルト22の表面速度に対して2%遅い速度である。塗布ローラ42は、たとえば、芯金と、芯金の外周面に順次形成される弾性層および表層とを含んで構成される。表層を構成する材料としては、たとえば、PTFE、PFA、FEP、ETFE、PVDF、PCTFEなどのフッ素樹脂を好ましく使用できる。これらのフッ素樹脂はハイドロフルオロエーテルとの親和性が高いので、定着液7を塗布ローラ42の外周面42aに膜厚が均一で薄い層として保持できる。このため、少量の定着液7を広い範囲に塗布することができるので、定着液7の消費量を低減できると共に、過剰な定着液7が未定着のトナー6を押し流して画像を乱すことを防止できる。また、フッ素樹脂は表面エネルギーが低いので、トナー6の付着を防止できる。このため、長期間にわたって、塗布ローラ42にトナー6が付着するのを防止できる。これにより、少量の定着液7で安定した高画質品位の画像を長期間得ることができる。塗布ローラ42の一例としては、外径が20mm、弾性層が厚さ3mmで硬度20度(JIS−A)のEPDMゴム層および表層が厚さ80μmのPFA層であるローラが挙げられる。塗布ローラ42は、矢符56の方向への回転駆動により、外周面42aの一部分が連続的に定着液7中に浸漬され、定着液7が付着する。外周面42aに付着する定着液7は、塗布ローラ42と中間転写ベルト22との圧接部分で、中間転写ベルト22の外周面22a上に形成されるトナー像に移行し、トナー6を膨潤および/または軟化させる。
規制ブレード37は、塗布ローラ42の回転方向において、塗布ローラ42と中間転写ベルト22との圧接部よりも上流側に、塗布ローラ42の外周面42aに圧接するように配置される。規制ブレード37には、たとえば、厚さ50μmのステンレス鋼製板状部材が使用できる。規制ブレード37によって、塗布ローラ42の外周面42aに付着する定着液7の液量が調節され、定着液7の均一な薄層が形成される。定着液7の適量を中間転写ベルト22上のトナー像に供給できるとともに、定着液7の消費量を低減化できる。
定着液溜35には、図示しない制御手段によって、定着液7の消費に応じて、定着液タンク34から定着液供給管43を介して定着液7を補充する構成を採るので、常にほぼ一定量の定着液7が貯留され、定着液7の液面高さがほぼ一定になる。これによって、塗布ローラ42の回転駆動に伴って、塗布ローラ42の外周面42aにほぼ一定量の定着液7が供給される。
定着液タンク34は、画像形成装置1の場合と同様に、定着液1の消費に応じて適宜補充する構成を採る。本実施の形態では、それ以外にも、カートリッジ方式とすることもできる。
なお、中間転写ベルト22は、画像形成装置1と同様に、厚さ100μmのポリイミドフィルム表面にPTFEとPFAとを8:2(重量比)で混合した厚さ20μmのコート層を設けた物である。ポリイミドフィルムおよび/またはコート層には、中間転写ベルト22としての電気抵抗値を調節するためのカーボンなどの導電剤が配合される。なお、中間転写ベルト22は前記の構成に限定されるものではなく、たとえば、導電性を付与したポリカーボネート、フッ素ゴムなどのフィルム基材にPTFE、PFAなどのフッ素樹脂を単独または混合して用いるコート層を積層した、定着液7を浸透しない構成が好ましい。このような構成の中間転写ベルト22は、定着液7が浸透しないので、付与される定着液7の大部分をトナー6の表面に付着させることができる。これにより、定着液7の記録紙10への浸透を防止できるので、定着液7の使用量を低減できる。また、中間転写体としては、ベルト状に限る物ではなく、ドラム形態などの他の形態とすることもできる。
定着液塗布装置41によれば、定着液溜35内に貯留される定着液7は、塗布ローラ42の回転駆動と規制ブレード37の塗布ローラ42への圧接によって、塗布ローラ42の外周面42a上にて均一で薄い定着液層になる。この定着液層を有する塗布ローラ42が、中間転写ベルト22の外周面22aに圧接することによって、定着液7が中間転写ベルト22の外周面22aに移行し、該外周面22aに形成されているトナー像に付着し、トナーを膨潤および/または軟化させる。
このような構成を採れば、定着液7は中間転写ベルト22を介して記録紙10に塗布されるので、塗布ローラ42に紙繊維などの紙粉が付着しない。このため、定着液溜35内の定着液7に紙粉が混入することがない。ひいては、規制ブレード37への紙粉のかみ込みによる塗布ローラ42上の定着液層に不均一が生じることがないので、長期間にわたって高品質な画像を安定して得ることが出来る。
二次転写ローラ26aは、中間転写ベルト22上のトナー像を図示しない駆動手段により矢符57の方向に回転駆動可能に設けられ、かつ中間転写ベルト22を介して駆動ローラ24に対向し、中間転写ベルト22の外周面22aに圧接するように設けられる。二次転写ローラ26aと中間転写ベルト22との圧接力は、たとえば、5N/cmに設定される。また、二次転写ローラ26aには電圧は印加しない。二次転写ローラ26aの一例としては、外径が28mmで、芯金に弾性層として厚さ3mmで硬度50度(JIS−A)のEPDMゴム層と、表層として厚さ80μmのPFA層を積層してなるローラが挙げられる。
二次転写ローラ26aと中間転写ベルト22との圧接部には、中間転写ベルト22の外周面22aの、定着液により膨潤および/または軟化されたトナーからなるトナー像が運ばれ、用紙供給部2からレジストローラ13を介して送給される記録紙10と重ね合わされて押圧される。中間転写ベルト22は、画像形成装置1の場合と同様に、その表面に、トナー6との付着力が小さいフッ素樹脂層が設けられるので、トナー6は記録紙10に転写される。このトナー6は膨潤および/または軟化しているので、転写時の押圧により、記録紙10に付着する。トナー6が付着した記録紙10は、定着装置4aに送給される。
定着装置4aは、図示しない駆動手段によりその軸線方向に回転駆動可能に設けられる加圧ローラ44と、加圧ローラ44に圧接し、やはり図示しない駆動手段によりその軸線方向に回転駆動可能に設けられる対向ローラ45とを含む。ここで、加圧ローラ44は、画像形成装置1の定着ローラ32と同様の構成を有し、対向ローラ45は画像形成装置1の加圧ローラ33と同様の構成を有する。
加圧ローラ44と対向ローラ45との圧接部(圧接ニップ)には、トナー像形成部3aから、トナー6がある程度定着した記録紙10が搬送される。この圧接部でトナー6は強く加圧され、記録紙10の繊維内に強く入り込むと同時に、トナー粒子同士が融合し、トナー像の表面が平滑になる。これにより、トナー6が完全に定着するとともに、減法混色による発色性と表面の光沢性に優れた高品位なカラー画像を得ることができる。
本実施の形態において、定着液7としては本発明の定着液を使用できる。表1に示すように、定着液中のハイドロフルオロエーテルは表面張力が小さく、粘度も小さいので、トナー粒子間、中間転写ベルト22とトナー6との間などにも浸透する。このため、定着液7の有機化合物がトナー6の界面、中間転写ベルト22との接触面などに運ばれ、瞬時にトナー6を膨潤および/または軟化させ得る。また、定着液中のハイドロフルオロエーテルは蒸発潜熱が小さいので、室温でも短時間で乾燥する。さらに、ハイドロフルオロエーテルは水と不溶なので定着液中に水分を含有しないため、紙繊維の収縮を引き起こさない。これにより、紙の伸縮によるカールやしわが発生しない。また、トナー6としては、画像形成装置1で用いるのと同じトナー6を使用できる。
画像形成装置40によれば、二次転写ローラ26aと中間転写ベルト22との圧接部において、本発明の定着液7により膨潤および/または軟化されるトナー6からなるトナー像が記録紙10に転写および定着され、さらに定着装置4aにおいてトナー像が記録紙10に強固に定着され、その後用紙排出部5から画像形成装置1外部に画像形成済記録紙10として排出される。
各実施の形態において、画像形成装置はカラーのタンデム方式の画像形成装置であるけれども、中間転写ベルトの1回転毎に1色の画像を重ね合わせる、所謂4回転方式のカラー画像形成装置、単色の作像ユニットを用いる単色の画像形成装置などであってもよい。
各実施の形態において、静電潜像保持体として感光体ドラムを用いるけれども、ベルト形態のものも使用できる。
各実施の形態において、塗布部材にローラ形態の塗布ローラを用いるけれども、ベルト形態などの無端状形態のものも使用できる。
各実施の形態において、本発明の定着方法を採用する画像形成装置によれば、オゾン層の破壊、温暖化の進展を抑制しながら、少量の短時間で乾燥する定着液を用いることにより、安定した高品位な定着画像を長期間にわたって得ることができる。
なお、このような画像形成装置は、具体的にはたとえば、複写機、プリンター、ファクシミリ、これらの機能の複合機などとして具現化される。