JP4393841B2 - 積層型誘電素子及びその製造方法 - Google Patents

積層型誘電素子及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば積層型セラミックコンデンサ、積層型圧電アクチュエータ等の積層型誘電素子及びその製造方法に関する。
従来より、各種優れた誘電特性を有するPZT系材料等よりなる誘電セラミック層と、銅等の卑金属よりなる卑金属電極層とを交互に積層してなる積層型誘電素子は、コンデンサやアクチュエータ等に広く利用されている。
このような積層型誘電素子を製造する方法は、通常下記のような複数の工程にて行われる。
まず、PZT等のセラミック材料よりなるグリーンシートを準備し、このグリーンシートにスクリーン印刷等にて金属酸化物よりなる電極ペースト材料を塗布する。続いて、電極ペースト材料が塗布されたグリーンシートを積層して積層体を作製し、さらにこの積層体を脱脂する。
次に、脱脂後の積層体を加熱炉内にて還元条件下で加熱することにより上記電極ペースト材料中の金属酸化物を還元し、導電性を有する金属電極層にする(電極還元工程)。その後、積層体を焼成してセラミック材料を緻密化し、最終的な積層型誘電素子を得る(焼成工程)。
ところが、上記焼成工程において、上記電極ペースト材料と上記セラミック材料とは、相反する雰囲気条件を要求する。即ち、例えばPZT等のセラミック材料は、酸化物であるため酸化雰囲気にて焼成することが好ましいのに対し、上記ペースト材料は、電極還元工程にて得られた導電性を保持するために還元雰囲気にて焼成を行うことが好ましい。
したがって、上記焼成工程において、上記セラミック材料を充分に焼成させるために、酸化雰囲気にて焼成を行うと、予め上記電極還元工程において還元された銅等よりなる金属電極層が再び酸化されて導電性が低下してしまうおそれがある。一方、還元雰囲気にて焼成を行うと、上記セラミック材料が還元されてしまい、焼成後の積層体の特性が低下してしまうという問題がある。
このような問題を解決するために、水素ガスを含む雰囲気中で導電ペーストを還元した後、続く焼成工程においては、酸素分圧を特定の範囲に制御した雰囲気下にて、上記積層体を焼成する方法がある(特許文献1参照)。
また、焼成温度よりも低い温度で導電ペーストを還元し、続く焼成工程においては、N2−H2−H2O−O2混合ガスを使用し、O2分圧を特定の範囲に制御した雰囲気下にて、上記積層体を焼成する方法が開示されている(特許文献2参照)。
そしてこのような従来の方法によれば、上記電極還元工程において還元された銅等よりなる金属電極を、上記焼成工程においてもほとんど酸化させることなくセラミック材料を緻密化させることができる。
特開平5−82387号公報 特公平7−34417号公報
しかしながら、上記電極還元工程においては、化学平衡論的な還元反応と反応速度論的な還元反応の二つが共存しているため、上記従来の方法では充分とはいえない。
例えばCu酸化物を含有してなる導電ペーストと、PZT系材料よりなるセラミック材料とを用いて作製する場合を考えると、上記電極還元工程においては、化学平衡論的なCu酸化物の還元反応(2CuxO⇔2xCu+O2)と、水素ガスによる反応速度論的なCu酸化物の還元反応(CuxO+H2⇒xCu+H2O)とが共存する。
そして、上記2つの反応のうち上記反応速度論的な反応によれば、水素ガス濃度又は量が少ないときにはCu酸化物が還元されずに導電ペースト中に残留してしまう。逆に、多いときにはCu酸化物は還元されるがセラミック材料中のPZTをも還元してしまい、組成中のPb等が遊離するという不具合を発生する。
上記のように、Cu酸化物が還元されず残存してしまった場合には、上記焼成工程中に、残存しているCu酸化物のCu2OがPZT等のセラミック材料中にわずかに残存するPbO等と反応して液相の共晶物質を形成し、この液相がセラミック材料中に拡散してしまう。その結果、焼成後の絶縁抵抗が低下するという問題が発生する。さらに、液相が生じた箇所は周囲に比べて収縮が起こりやすいため、焼成中にデラミネーションが発生するという問題を生じる。
一方、PZTを還元して組成中のPbが遊離してしまった場合には、遊離したPbと電極還元工程の還元によって生じたCuとが、これらの共晶点である327℃以上で、液相の共晶物質を形成してしまうおそれがある。そのため、高温の加熱処理を行う上記焼成工程中に、金属電極が溶融してしまうおそれがある。また、上述のように、液相が形成された箇所は周囲よりも収縮が起こりやすくなっているため、焼成工程中にデラミネーションを発生するという問題がある。
そして、このようなデラミネーションの発生は、ヤング率及び絶縁抵抗等の積層誘電体素子の重要な特性を低下させてしまう。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、デラミネーションがなく、高品質な積層型誘電素子及びその製造方法を提供しようとするものである。
第1の発明は、組成中に鉛を含有する誘電セラミック層と、卑金属としての銅からなる卑金属電極層とを交互に積層した積層型誘電素子を製造する方法において、
鉛酸化物を含む金属酸化物よりなるセラミック材料をシート状に成形してなるセラミックグリーンシートの少なくとも一方の面に、卑金属酸化物を含有してなる卑金属電極用ペースト材料を塗布する電極印刷工程と、
上記卑金属電極用ペースト材料が塗布されたセラミックグリーンシートを積層し圧着して積層体を作製する圧着工程と、
上記積層体を雰囲気ガスの流通下にて加熱炉内で加熱し、上記卑金属電極用ペースト材料を還元して卑金属電極層とする電極還元工程と、
上記積層体を焼成する焼成工程とを有し、
上記電極還元工程においては、上記卑金属電極層中に含まれる卑金属酸化物の残存量が20wt%以下であり、かつ上記卑金属電極層の表面から5000Å以内における、上記セラミック材料から遊離した鉛の量が、30atomic%以下となるように上記卑金属電極用ペースト材料を還元し、
上記電極還元工程における上記雰囲気ガスは、上記卑金属電極用ペースト材料を還元する還元ガスとしての水素と、酸化ガスとしての酸素を含有し、
上記電極還元工程においては、昇温速度200℃/h以下で加熱を開始し、続いて300℃〜400℃の最高保持温度にて0.5〜15時間保持し、その後炉冷し、90℃以下の温度にて上記積層体を上記加熱炉内より取り出し、かつ加熱を開始してから上記加熱炉内より上記積層体を取り出すときまでの上記雰囲気ガス中の酸素の分圧を1×10 -23.9 〜1×10 -22 atmにし、
上記電極還元工程における酸素流量f O (ml/min)と水素流量f H (ml/min)とは、上記雰囲気ガスを構成する各ガスの流量の合計量を全流量F(ml/min)とするとき、酸素流量f O =A×水素流量f H /全流量F−B(但し、20≦A≦24、12≦B≦16、8≦A−B≦8.22)の関係を有していることを特徴とする積層型誘電素子の製造方法にある(請求項1)。
上記第1の発明においては,上記焼成工程中に発生するデラミネーションの原因の1つが,焼成工程の前に行う上記電極還元工程にあることに注目し,電極還元工程における上記卑金属電極用ペースト材料の還元を上記のような特定の条件で行っている。
具体的には,上記電極還元工程にて,上記卑金属電極層中に含まれる卑金属酸化物の残存量が20wt%以下で,かつ上記卑金属電極層の表面から5000Å以内における,上記セラミック材料から遊離した鉛の量が,30atomic%以下となるように上記卑金属電極用ペースト材料を還元する。
上記電極還元工程における卑金属酸化物の残存量を20wt%以下にすることにより,残存している卑金属酸化物がセラミック材料中の,鉛酸化物を含有する金属酸化物と反応して液相の共晶物質を形成することを防止することができる。そのため,この液相がセラミック材料中に拡散し,焼成後の絶縁抵抗を低下させることもおこりにくくなる。また,デラミネーションの発生も防止できる。
また,上記卑金属電極層表面から5000Å以内における,セラミック材料から遊離した鉛の量を30atomic%以下という少ない量に抑えることにより,セラミック材料から遊離した鉛と上記卑金属電極層中に含まれる卑金属とが,上記焼成工程中に反応して,上記卑金属電極層を溶融させてしまうという不具合を防止することができる。
ここで,上記電極還元工程における上記卑金属酸化物の残存量を20wt%以下としている。
上記卑金属酸化物の残存量が20wt%を超える場合には,残存した卑金属酸化物が上記セラミック材料中に含まれる,鉛酸化物を含有する金属酸化物と反応し,液相の共晶物質を形成してしまうおそれがある。その結果,焼成工程後の上記積層体の絶縁抵抗が低下し,また,デラミネーションが発生するおそれがある。
また,上記卑金属電極層の表面から5000Å以内における,上記セラミック材料から遊離する鉛の量を30atomic%以下となるようにしている。
上記範囲内におけるセラミック材料から遊離する鉛の量が30atomic%を超える場合には,遊離した鉛と上記卑金属電極層中の卑金属とが反応し,卑金属電解層が溶融してしまうおそれがある。そのため,卑金属電極層の導電性が損なわれるとともに,液相の形成によりデラミネーションが発生するおそれがある。
このように,本発明によれば,デラミネーションがなく,高品質な積層型誘電素子の製造方法を提供することができる。
第2の発明は、組成中に鉛を含有する誘電セラミック層と、卑金属としての銅からなる卑金属電極層とを交互に積層した積層型誘電素子を製造する方法において、
鉛酸化物を含む金属酸化物よりなるセラミック材料をシート状に成形してなるセラミックグリーンシートの少なくとも一方の面に、卑金属酸化物を含有してなる卑金属電極用ペースト材料を塗布する電極印刷工程と、
上記卑金属電極用ペースト材料が塗布されたセラミックグリーンシートを積層し圧着して積層体を作製する圧着工程と、
上記積層体を雰囲気ガスの流通下にて加熱炉内で加熱し、上記卑金属電極用ペースト材料を還元して卑金属電極層とする電極還元工程と、
上記積層体を焼成する焼成工程とを有し、
上記電極還元工程においては、上記卑金属電極層中に含まれる卑金属酸化物の残存量をM(wt%)(ただし、残存量Mは、薄膜X線回折法で定量した値である)、
かつ上記卑金属電極層の表面から5000Å以内における、上記セラミック材料から遊離した鉛の量をN(atomic%)(ただし、鉛の量Nは、上記卑金属電極層の表面から5000Åの範囲をX線光電子分光法により定量した値である)とすると、
上記M(wt%)とN(atomic%)との間には、
N=C×M+D、0≦M<20なる関係が成立(ただし、C及びDはM及びNに依存しない値であり、それぞれ−1.5≦C<−1.0、30≦D<36の範囲にある。)
上記電極還元工程における上記雰囲気ガスは、上記卑金属電極用ペースト材料を還元する還元ガスとしての水素と、酸化ガスとしての酸素を含有し、
上記電極還元工程においては、昇温速度200℃/h以下で加熱を開始し、続いて300℃〜400℃の最高保持温度にて0.5〜15時間保持し、その後炉冷し、90℃以下の温度にて上記積層体を上記加熱炉内より取り出し、かつ加熱を開始してから上記加熱炉内より上記積層体を取り出すときまでの上記雰囲気ガス中の酸素の分圧を1×10 -23.9 〜1×10 -22 atmにし、
上記電極還元工程における酸素流量f O (ml/min)と水素流量f H (ml/min)とは、上記雰囲気ガスを構成する各ガスの流量の合計量を全流量F(ml/min)とするとき、酸素流量f O =A×水素流量f H /全流量F−B(但し、20≦A≦24、12≦B≦16、8≦A−B≦8.22)の関係を有していることを特徴とする積層型誘電素子の製造方法にある(請求項2)。
上記第2の発明においては、上記焼成工程中に発生するデラミネーションの原因の1つが、焼成工程の前に行う上記電極還元工程にあることに注目し、電極還元工程における上記卑金属電極用ペースト材料の還元を上記のような特定の条件で行っている。
具体的には、上記電極還元工程にて、上記卑金属電極層中に含まれる卑金属酸化物の残存量Nが20wt%未満で、かつ上記卑金属電極層の表面から5000Å以内における、上記セラミック材料から遊離した鉛の量Mが、C×N+Dに等しくなるように上記卑金属電極用ペースト材料を還元する。ここにCは−1.5≦C<−1.0、Dは30≦D<36の範囲内の適当な値をとる。
更に、上記残存量Nは、薄膜X線回折法にて定量した値であり、上記鉛の量Mは、X線光電子分光法にて定量した値である。薄膜X線回折法に用いる測定器具として、(株)島津製作所製XRD6100等を使用することができる。また、X線光電子分光法に用いる測定器具として、VGシステムズジャパン(株)製の測定器を使用することができる。
上記電極還元工程における卑金属酸化物の残存量を20wt%未満にすることにより、残存している卑金属酸化物がセラミック材料中の、鉛酸化物を含有する金属酸化物と反応して液相の共晶物質を形成することを防止することができる。そのため、この液相がセラミック材料中に拡散し、焼成後の絶縁抵抗を低下させることもおこりにくくなる。また、デラミネーションの発生も防止できる。
また、上記卑金属電極層表面から5000Å以内におけるセラミック材料から遊離した鉛の量MはC×N+D(atomic%)と等しい、少ない量に抑えることにより、セラミック材料から遊離した鉛と上記卑金属電極層中に含まれる卑金属とが、上記焼成工程中に反応して、上記卑金属電極層を溶融させてしまうという不具合を防止することができる。
ここで、上記電極還元工程における上記卑金属酸化物の残存量を20wt%未満としている。
上記卑金属酸化物の残存量が20wt%以上である場合には、残存した卑金属酸化物が上記セラミック材料中に含まれる、鉛酸化物を含有する金属酸化物と反応し、液相の共晶物質を形成してしまうおそれがある。その結果、焼成工程後の上記積層体の絶縁抵抗が低下し、また、デラミネーションが発生するおそれがある。
また、上記卑金属電極層の表面から5000Å以内における、上記セラミック材料から遊離する鉛の量MをC×N+D(atomic%)と等しくし、−1.5≦C<−1.0、30≦D<36としている。
上記範囲内におけるセラミック材料から遊離する鉛の量がC×N+D(atomic%)と等しくなくなった場合は、遊離した鉛と上記卑金属電極層中の卑金属とが反応し、卑金属電解層が溶融してしまうおそれがある。そのため、卑金属電極層の導電性が損なわれるとともに、液相の形成によりデラミネーションが発生するおそれがある。
このように、本発明によれば、デラミネーションがなく、高品質な積層型誘電素子の製造方法を提供することができる。
第5の発明は、上記第1、第2の発明の製造方法によって作製されることを特徴とする積層型誘電素子にある(請求項7)。
第5の発明の積層型誘電素子は、上記第1の発明(請求項1)、上記第2発明(請求項2)製造方法によって作製されている。
そのため、上記積層型誘電素子は、上記誘電セラミック層と上記卑金属電極層との間にデラミネーションがほとんどなく、ヤング率や絶縁抵抗が高く高品質である。
まず、上記第1の発明(請求項1)についての好ましい実施の形態について説明する。
上記第1の発明において、上記セラミック材料としては、PZT系材料が好ましい。
この場合には、PZT系材料が有する優れた圧電及び誘電特性を利用して、高性能の積層型セラミックコンデンサ及び積層型圧電アクチュエータ等に利用できる積層型誘電素子を作製することができる。
次に、上記電極還元工程における上記雰囲気ガスは、上記卑金属電極用ペースト材料を還元する還元ガスと、酸素又は/及び酸素を形成するガスよりなる酸化ガスとを含有する。これにより、上記電極還元工程において、上記還元ガスの還元力が酸化ガスにより適度に抑制され、上記卑金属電極用ペースト材料を充分に還元することができ、その一方で、上記セラミック材料中の金属酸化物が還元されることを防止することができる。
一般に、セラミック材料は、卑金属電極ペーストよりも還元されにくい。そのため、上記のように、電極還元工程の際に、還元ガスと酸化ガスとの2つのガスを雰囲気ガスとして用いて還元ガスの還元力を制御することにより、上記卑金属電極用ペースト材料を優先的に還元することができるのである。
次に、上記還元ガスは水素であり、かつ上記酸化ガスは酸素である。これにより、上記の還元ガスと酸化ガスとの両者を含有することによる効果をより効果的に得ることができる。
次に、上記電極還元工程においては、昇温速度200℃/h以下で加熱を開始し、続いて300℃〜400℃の最高保持温度にて0.5〜15時間保持し、その後炉冷し、90℃以下の温度にて上記積層体を上記加熱炉内より取り出し、かつ加熱を開始してから上記加熱炉内より上記積層体を取り出すときまでの上記雰囲気ガス中の酸素の分圧を1×10-23.9〜1×10-22atmにする
この場合には、上記酸化ガスとしての酸素と上記還元ガスとしての水素とが、上記加熱炉内にて、下の式(1)で表される平行雰囲気に達する。
2+1/2O2⇔H2O (1)
そのため、安定した酸素分圧を実現できる。それ故、上記電極還元工程において、上記卑金属電極層中に含まれる卑金属酸化物の残存量が20wt%以下であり、かつ上記卑金属電極層の表面から5000Å以内における、上記セラミック材料から遊離した鉛の量を30atomic%以下とすることが容易になる。
また、上記の式(1)からわかるように、上記加熱炉内には水蒸気が発生する。そのため、例えばPZT系材料等のように、上記セラミック材料として鉛を含有するものを用いる場合には、セラミック材料中に酸化物として存在している鉛等が過剰に金属化することを抑制することができる。
なお、上記炉冷とは、加熱を停止した後も処理材を炉内に保持し、その処理材を自然放冷よりも緩やかに徐冷することである。
上記雰囲気ガス中の酸素の分圧が1×10-22atmを超える場合には、雰囲気中の酸素分圧が高いため、上記卑金属酸化物が充分に還元できず、焼成時に未還元の卑金属酸化物が誘電セラミック層に拡散するおそれがある。
一方、1×10-23.9atm未満の場合には、上記卑金属電極用ペースト材料中の卑金属酸化物が還元されると同時に、上記セラミック材料中の鉛を含む金属酸化物までもが還元され、過剰の鉛が遊離するおそれがある。この遊離した鉛は、上記卑金属電極層中の例えば銅等の卑金属と反応し、卑金属電極層を溶融させるおそれがある。
また、上記昇温速度が200℃/hを超える場合には、上記電極還元工程中に上記積層体が熱衝撃でわれるおそれがある。
また、上記最高保持温度が、300℃未満の場合には、上記卑金属電極用ペースト材料を充分に還元することができず、大量の卑金属酸化物が残留してしまうおそれがある。
一方、400℃を超える場合には、セラミック材料から遊離した鉛と卑金属電極層の金属とが反応して卑金属電極層を溶融してしまうおそれがある。
また、上記最高保持温度の保持時間が0.5時間未満の場合には、上記卑金属電極用ペースト材料を充分に還元できないおそれがある。
一方、15時間を超える場合には、上記電極還元工程中にセラミック材料が還元され、セラミック材料が有する圧電性及び誘電性などの性質が損なわれてしまうおそれがある。
また、上記積層体を取り出す温度が90℃を超える場合には、上記電極還元工程において還元された上記卑金属電極層が、その大気に接触する露出部で、大気中の酸素により酸化されてしまうおそれがある。
次に、上記電極還元工程における酸素流量fO(ml/min)と水素流量fH(ml/min)とは、上記雰囲気ガスを構成する各ガスの流量の合計量を全流量F(ml/min)とするとき、酸素流量fO=A×水素流量fH/全流量F−B(但し、20≦A≦24、12≦B≦16、8≦A−B≦8.22)の関係を有している
この場合には、上記電極還元工程において、上記セラミック材料が過剰に還元されることを防止することができると共に、その一方で、上記卑金属電極用ペースト材料を充分に還元させることができる。
即ち、この場合には、上記電極還元工程において、上記卑金属電極層中に含まれる卑金属酸化物の残存量が20wt%以下で、かつ上記卑金属電極層の表面から5000Å以内における、上記セラミック材料から遊離する鉛の量を、30atomic%以下とすることが容易になる。
上記酸素流量fOが、上記の範囲を超えて酸素過剰になった場合には、上記卑金属電極用ペーストの還元が不十分となり、非金属酸化物が残留する。そして、上記焼成工程の際に、残留した非金属酸化物がセラミック材料中に拡散してしまうおそれがある。一方、上記酸素流量fOが上記の範囲よりも小さくなり酸素不足になった場合には、上記セラミック材料中の金属酸化物までもが還元されてしまうおそれがある。
次に、上記電極還元工程で最高温度に保持される際、水素と酸素とが反応して生成する水のモル流量をW、残存する余剰の水素のモル流量をHとすると、両者の値は下記の範囲内にあることが好ましい(請求項3)。
0.0012≦H≦0.0018(H:mol/min)
0.0002≦W≦0.001(W:mol/min)
これにより、鉛酸化物を含む誘電材料を用いた積層体が、水素により還元されて鉛を析出する現象を最小限に抑制でき、かつ卑金属電極層中の卑金属酸化物を還元することができる。
仮にHが0.0012未満である場合は、卑金属電極層中の卑金属酸化物を還元に要する時間が長くなるという問題が生じるおそれがあり、Hが0.0018より大である場合は、誘電材料が水素により還元されて鉛を析出する量が多くなり、焼成中に卑金属電極層と反応して電極層を形成できなくなるという問題が生じるおそれがある。
次に、上記電極還元工程で、最高温度に保持される際、保持時間における水素モル流量の積分値hは、下記の範囲内にあることが好ましい(請求項4)。
29000≦h≦31000(h:mol/min)
これにより、鉛酸化物を含む誘電材料を用いた積層体の卑金属電極層が焼成中に卑金属電極層と反応することなく、かつ卑金属電極層中の卑金属酸化物が残存量を最低限として焼成中に卑金属酸化物が誘電材料と反応する量を最小限とすることが可能になる。
仮にhが、29000未満である場合は、卑金属電極層中に未還元の卑金属酸化物が20wt%以上残存するという問題が生じるおそれがある。
hが31000より大である場合は、誘電材料より誘電材料が水素により還元されて鉛を析出する量が卑金属電極層の表面から5000Å以内における鉛量が30atomic%を超え焼成中に卑金属電極層と反応して電極層を形成できなくなるおそれがある。
次に、上記電極印刷工程においては、上記卑金属電極用ペースト材料を厚み2〜14μmにて塗布することが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記電極還元工程において、充分に上記卑金属電極用ペースト材料を還元することができると共に、充分な導電性を有する卑金属電極層を作製することができる。また、この場合には、上記電極還元工程を行うときに、上記セラミック材料をほとんど還元させることなく、その一方で、上記卑金属電極用ペースト材料は、充分に還元させることができる。
上記卑金属電極用ペースト材料の厚みが2μm未満の場合には、上記電極還元工程又は上記焼成工程中に、卑金属電極層がとぎれやすくなるおそれがある。
一方、14μmを超える場合には、上記電極還元工程において、上記卑金属電極用ペースト材料が還元されにくくなり、残留した卑金属酸化物がセラミック材料中の金属酸化物と液相を形成し、デラミネーションを発生してしまうおそれがある。
次に、上記電極還元工程と上記焼成工程とは1回の加熱で同時に行うことができる(請求項6)。
この場合には、製造工程が簡便化し、上記積層型誘電素子を簡単に製造することができる。
次に、上記第1、第2の発明のすべてにおいて、上記卑金属は銅である。これにより、導電性に優れた上記卑金属電極層を安価に作製することができると共に、上述した発明の効果をより顕著にすることができる。
次に、上記第1、第2の発明のすべてにおいて、上記圧着工程後、積層体に含まれる有機物を除去する脱脂工程を行うことが好ましい(請求項7)。
これにより、有機物を除去し、電極還元及び還元焼成を可能にすることができる。
(実施例1)
次に、第1の発明の実施例にかかる、積層型誘電素子の製造方法につき、図1〜図9を用いて説明する。
本例においては、図1に示すごとく、誘電セラミック層12と、卑金属からなる卑金属電極層13とを交互に積層した積層型誘電素子1を製造する。
そして、本例の製造方法は、後述するごとく、電極印刷工程と、圧着工程と、脱脂工程と、電極還元工程と、焼成工程とを有する。
上記電極印刷工程は、鉛酸化物を含む金属酸化物よりなるセラミック材料をシート状に成形してなるセラミックグリーンシートの少なくとも一方の面に、卑金属酸化物を含有してなる卑金属電極用ペースト材料を塗布する工程である。
また、上記圧着工程は、上記卑金属電極用ペースト材料が塗布されたセラミックグリーンシートを積層し圧着して積層体を作製する工程である。
また、脱脂工程は、上記積層体を脱脂する工程である。
上記電極還元工程は、上記積層体を雰囲気ガスの流通下にて加熱炉内で加熱し、上記卑金属電極用ペースト材料を還元して卑金属電極層とする工程である。
また、上記焼成工程は、上記積層体を焼成する工程である。
そして、本例の上記電極還元工程においては、上記卑金属電極層中に含まれる卑金属酸化物の残存量が20wt%以下であり、かつ上記卑金属電極層の表面から5000Å以内における、上記セラミック材料から遊離した金属の量が、30atomic%以下となるように上記卑金属電極用ペースト材料を還元する。
以下、本例の製造方法につき、詳細に説明する。
まず、以下のようにしてセラミック材料を作製する。
酸化鉛と酸化タングステンとをそれぞれ83.5mol%と16.5mol%ずつ秤量し乾式混合した後、500℃にて2時間焼成することにより、酸化鉛と酸化タングステンの一部を反応させた助剤酸化物粉(化学式:Pb0.8350.1651.33)を作製した。次に、この助剤酸化物粉を媒体攪拌ミルにより微粒化し乾燥して反応性を高めた。
一方、PbO、SrCO3、ZrO2、TiO2、Y23、Nb25、Mn23の各金属酸化物を混合し、これらを乾式混合した後、890℃にて7時間焼成することにより、誘電体仮焼成粉を作製した。
次に、この誘電体仮焼成粉4.7kgに対して、水5.5L添加し、さらに分散剤としてのD134(第一工業製薬株式会社製)を上記誘電体仮焼成粉に対して5wt%の割合で添加し、1時間混合して誘電体仮焼成粉の粉砕用スラリーを作製した。
この粉砕用スラリーを媒体攪拌ミルにて8時間粉砕してメジアン径を0.2μm以下とした。さらにこの粉砕用スラリーをスプレードライヤにて220℃で乾燥して誘電体仮焼成粉の粉砕粉を得た。この粉砕分には分散剤が残るため、この粉砕分をさらに650℃で5時間熱処理することにより、分散剤を脱脂し、誘電体仮焼成粉を得た。
次に、誘電体仮焼成粉700gに、上記のようにして予め準備した助剤酸化物3.5gを添加して原料粉を作製し、さらにこの原料粉に対し、溶剤としてエタノールを16wt%、2−ブタノールを16wt%、酢酸イソアミルを16wt%、また分散剤としてのソルビタントリオレートを0.6wt%、可塑剤としてのBBP(ベンジルブチルフタレート、和光純薬工業株式会社製)を5wt%、さらにバインダとしてのPVB(ポリビニルブチラール 電気化学工業株式会社製)を7.5wt%添加して72時間ボールミルで混合し、誘電セラミック材料のスラリーを得た。
次に、上記セラミック材料のスラリーをドクターブレード法によりブレード間隔125μmでシート状に成形した。その後、80℃にて乾燥した後、シートカッターにて100mm×150mmに切断し、セラミックグリーンシートとした。
次に、上記電極印刷工程及び圧着工程につき図2及び図3を用いて説明する。
まず、以下のようにして卑金属電極用ペースト材料を作製する。
上記卑金属電極用ペースト材料の作製にあたっては、まず上記卑金属電極用ペースト材料の固形分を準備する。固形分の組成としては、上記卑金属酸化物としてのCuO粉(比表面積10〜15m2/g、高純度化学社製)が28wt%、Cu粉(平均粒子径0.5μm以下、三菱マテリアル株式会社製)が56.6wt%、及び上記誘電体仮焼成粉と同じ組成であり粒子径20μm以下に造粒してなる共粉が15wt%である。
次に、バインダとしてのセルロール5.5〜15wt%と、分散剤としての高級脂肪酸0.7〜2wt%と、残りの成分として溶剤であるフチルカルビトールとを、これらの合計が22wt%となるように、上記固形分78wt%に対して添加し、遠心力攪拌脱泡装置により混合して卑金属電極用ペースト材料を作製した。
次に、図2に示すごとく、この卑金属電極用ペースト材料23を複数の上記セラミックグリーンシート22に塗布する。このとき、卑金属電極用ペースト材料23は、上記セラミックグリーンシート22の一方の表面に、スクリーン印刷により塗布した。なお、印刷の厚みは6μmとした。同図には、印刷後のグリーンシートの一例を示す。
続いて、図3に示すごとく、上記卑金属電極用ペースト材料23が印刷されたセラミックグリーンシート22を積層していく。このとき、卑金属電極用ペースト材料23が交互に左右の側面に到達するようにした。このようにして、セラミックグリーンシート22を順次積層し、図4に示すごとく、合計26枚のセラミックグリーンシート22を積層したユニット25を得た。さらに、同様にしてセラミックグリーンシートを積層し、26枚のセラミックグリーンシート22を積層してなるユニット25を10個作製した。
なお、この10個のユニット25のうち1個は、セラミックグリーンシート22を積層する際に、卑金属電極用ペースト材料を印刷していないセラミックグリーンシートを1枚準備し、最上段にこのペースト材料を印刷していないセラミックグリーンシートを積層したものである。
そして、上記10個のユニット25をそれぞれ圧着治具に固定し、110℃にて1分間16MPaにて熱圧着した。熱圧着した各ユニット25は、シートカッターにて縦9mm、横9.5mmの大きさに切断した後、常温において、7.8MPaの加圧力で積層方向に加圧して平坦化を行った。
さらに、図5に示すごとく、上記10個のユニット25を積み重ね、ラミネート装置にて125℃で10分間、1.6kN(16.5MPa)の加圧力で熱圧着して、縦10.2mm、横9.5mm、高さ20mmの積層体27を作製した。なお、上記10個のユニットを積み重ねる際には、最上端及び最下端の表面に、上記卑金属電極用ペースト材料23が露出しないように積み重ねた。
続いて、上記積層体27を気体循環式脱脂炉中に入れ、図6に示すような温度設定にて積層体27を加熱し、脱脂を行った。図6は、横軸は経過時間(h)をとり、縦軸に積層体近傍の温度(℃)をとり、温度パターンP1を示したものである。
次に、上記積層体27の卑金属電極用ペースト材料23の還元を行う(電極還元工程)。
この電極還元工程は、図7に示すような加熱炉3によって行われる。
図7に示すごとく、上記加熱炉3は、上記積層体27を載置して加熱を行う炉室30と、該炉室30に差し込まれた炉内酸素分圧センサ315及びこのセンサ315からの検出値を得る炉内酸素分圧計316を有し、上記炉室30にAr−H2(或いはAr−CO)、CO2、O2をそれぞれ導入するための各マスフローコントローラー311、312、313及び該マスフローコントローラー311、312、313から炉室30への流路を適宜切り替える電磁弁314を設けた流路31を有する。
また、炉室30から炉外へ向かう排気計310の途中に炉外酸素分圧センサ317と、該センサ317からの出力値を得る炉外酸素分圧計318を設置した。
そして、炉室30の酸素分圧の制御は炉外酸素分圧センサ317及び分圧計318及び炉内酸素分圧センサ315及び分圧計316により行う。
炉外酸素分圧センサ317は、ジルコニアO2センサで、内蔵するヒーターでセンサが600℃以上に常に加熱されており、炉外酸素分圧センサ317に導入されたガス中の酸素分圧を全温度範囲で計測する。
一方、炉内酸素分圧センサ315はジルコニアO2センサであるがヒーターを内蔵せず、焼成炉3の炉室の温度が400〜500℃程度以上に加熱されたときに炉室30の酸素分圧が計測可能になる。そのため、この焼成炉においては、炉外酸素分圧センサ317は炉内温度が炉内酸素分圧センサ315の測定温度範囲から外れているときに用いた。
上記電極還元工程においては、まず上記積層体27を炉室30内に載置し、昇温速度180℃/h(上記積層体近辺は155℃/h)にて加熱を開始し、上記積層体近傍の最高保持温度を330℃にして14時間加熱した。そして、炉冷速度で降温し、炉室30内の温度が90℃まで冷却されたときに、上記積層体を取り出した。このときの温度制御の様子を図8に示す。図8は、横軸に加熱開始からの時間をとり、縦軸に上記積層体近傍の温度をとり、温度パターンP2を示すものである。
また、上記加熱の際には、雰囲気ガスとして、Ar及び水素の混合気体であるAr−H2と、酸素分圧を調整するためO2を導入した。Ar−H2ガス中の水素ガスの濃度は、0.99(%)である。そして、雰囲気ガス導入時のAr−H2の流量は5000ml/minであり、O2の流量は8.0ml/minである。この時の炉外酸素分圧計318は、1×10-23.7atm近傍を維持していた。
酸素流量の決定にあたっては、酸素流量fO=A×水素流量fH/全流量F−B(但し、20≦A≦24、12≦B≦16)の式を適用した。なお、本例においては、上記式中のA及びBの値をA=22.22、B=14として酸素流量foを決定した。
このようにして、上記卑金属電極用ペースト材料中に含まれるCuOをCuに還元し、卑金属電極層とした。
次に、上記電極還元工程と同じ加熱炉3を用いて上記積層体の焼成を行った(焼成工程)。以下、この焼成工程について、図7を用いて説明する。
この焼成工程においては、上記加熱炉3の炉室30内に上記電極還元工程終了後の上記積層体27を載置し、昇温速度300℃/hにて加熱を開始し、最高保持温度970℃にて2時間加熱した。このとき、雰囲気ガスとしては、CO2(ベースガス)と、不活性ガスとしてのArと還元ガスとしてのCOとからなるAr−CO(CO濃度は10体積%)と、酸素分圧を調整するためのO2(酸化ガス)をそれぞれ一定の流量で炉室30内に導入した。このときのCO2及びAr−CO流量は、それぞれ5000ml/min及び150ml/minであり、O2の流量は、2〜8ml/minの範囲とした。
室温から600℃近傍まで炉外酸素分圧センサ317及び分圧計318で酸素分圧の制御を行い、炉外酸素分圧センサ317の指示値が10-12.9〜10-16.0atmとなるようにした。
一方、600℃以上からは酸素分圧の制御を炉内酸素分圧センサ315及び分圧計316に切り替えて行った。切り替え時の炉内酸素分圧センサ315の指示値は10-10〜10-14atmであった。切り替え後から最高保持温度までは、酸素分圧を直線的に上昇させ、最高保持温度では酸素分圧10-6.0〜10-8.0atmの範囲に保持して雰囲気制御を行った。
この制御の様子を時間と温度と、酸素分圧(炉内酸素分圧センサ及び炉外酸素分圧センサの示す値)との関係として図9に示した。図9は、横軸は時間、左側の縦軸は温度を、さらに右側の縦軸は酸素分圧を10xatmで表した際のxの値であり、炉内酸素分圧S1、炉内目標酸素分圧S2、炉外酸素分圧S3、及び温度パターンP3を示すものである。なお、10xatmは1.013×105×10xPaに等しい。
このようにして積層体27を焼成し、図1に示すごとく本例にかかる、積層型誘電素子1を得た。これを試料E1とした。
本例の積層型誘電素子1は、図1に示すごとく、誘電セラミック層12と卑金属からなる卑金属電極層13とを交互に積層してなる。誘電セラミック層12は、積層型誘電素子1中に240個積層されており、1層当たりの厚みは90μmである。
また、本例では、上記電極還元工程における雰囲気ガスの制御条件を、試料E1を作製したときと変えて、積層型誘電素子を作製した。これらを試料E2〜E4、及び試料C1〜C3とする。
そして、これら各試料E1〜E4、及び試料C1〜C3を作製する際に、電極還元工程終了後の試料をそれぞれ別途準備し、これらを試料E1a〜E2a及び試料C1a〜C3aとした。
各試料の雰囲気ガスの制御条件は、後述する表1に示すとおりである。雰囲気ガスの制御条件のうち酸素流量は、試料E1〜E4については、酸素流量fO=A×水素流量fH/全流量F−B(但し、20≦A≦24、12≦B≦16)を用いて決定した。このときの、A及びBの値は、試料E2については、A=22.22、B=14を、試料E3については、A=20.22、B=12を、試料E4については、A=24.22、B=16を採用した。
また、試料C1〜試料C3は、上記の式の範囲から外れた酸素流量にて作製したものである。
次に、上記電極還元工程直後に得られた試料E1a〜E4a及び試料C1a〜C3aに関して、卑金属電極層中に残存するCu酸化物の量を薄膜X線回折法により求めた。また、上記セラミックグリーンシートから卑金属電極層に遊離した鉛の濃度を測定した。
まず、上記試料E1aを卑金属電極層とセラミックグリーンシートとの界面で剥がれるように分解し、卑金属電極層を両面テープ上に1層分転写した。この転写した卑金属電極層をX線回折装置(株式会社島津製作所製のXRD6100)を用いて薄膜X線回折法により測定を行った。
この結果、図16及び図17に示すごとき、卑金属電極層に含まれる成分のX線回折スペクトルを得た。このスペクトルより、卑金属電極層に含まれている成分は、共粉である誘電セラミックス材料及び電極還元工程で還元された導電成分であるCu、及び未還元のCu酸化物であるCu2Oと稀にCuOが検出されたことが分かった。
この結果からCu酸化物残存量をコランダム比より求め、このCu酸化物残存量からCu還元量(wt%)を求めた。
なお、図16がスペクトルを示す線図であり、図17は、図16におけるピーク位置を示す線図である。
この時の定量手段としては、上記のようにコランダム比を元にした簡易的な定量手段と、検定用試料の濃度を検定する、定量精度に優れた定量手段がある。本例においては、上記卑金属電極層に含まれるCu濃度は、少なくとも50wt%以上の高濃度であるため、定量精度はさほど問題にならない。そのため、上記のようにコランダム比による定量を採用した。
次に、X線回折にて用いた試料E1aを8mm四方に加工して、X線光電子分光分析(XPS:VGシステムズジャパン(株) X線ビーム径φ2mm)用試料を作成した。そして卑金属電極層の露出面の最表面から5000Åに含まれるCuとPbの原子割合を測定した。そして、X線光電子分光分析にかかる結果を図18にかかる線図に記載した。ここに縦軸は頻度(cps)、横軸はエネルギー(eV)である。
また、範囲970〜920eV及び範囲150〜130eVについて更に精密にスキャンして、CuとPbの原子割合を測定し、それぞれ図19、図20に結果を記載した。
この検出結果からCu検出ピーク面積に対するPb検出ピーク面積の比を求め、Pb発生量(atmic%)を算出した。なお、上記卑金属電極層とセラミックグリーンシートとは接しているため、分析結果に干渉が起こるおそれがある。これを回避するため、予め卑金属電極層表面を約30秒間Arにてエッチングした。
さらに、上記と同様の作業をE2a〜E4a及びC1a〜C3aに対して実施した。
そして、各試料E1a〜E4a及び試料C1a〜C3aのPb生成量と銅還元量の結果を図10にプロットした。
図10は、横軸がCu還元量(wt%)を、縦軸がPb生成量(atmic%)を示す。
図10より知られるごとく、試料E1a〜試料E4aにおいては、いずれもCuOが85wt%以上還元されており、卑金属電極用ペースト材料が充分に還元されていることがわかる。また、このときのセラミックグリーンシートから遊離した鉛の生成量は、いずれも30atmic%以下であった。
これに対し、試料C1a及びC2aは、卑金属電極用ペースト材料が充分に還元されている反面、セラミックグリーンシートも還元されて、鉛が30atmic%を超えて遊離している。
また、試料C3aは、鉛の生成量が低いレベルに抑えられている反面、卑金属電極用ペースト材料が充分に還元されておらず、Cu還元量は80wt%を下回っている。
次に、試料E1a〜E4a及び試料C1a〜C3aを、上記焼成工程により焼成して得られた試料E1〜E4及び試料C1〜C3のうち、試料E1及び試料C
3について、その内部のCu分布を明らかにするために、X線マイクロアナライザーの一種であるEPMA(Electron probe microanalyser)にて、試料E1及び試料C3のCu分布を調べた。
その結果を図11(試料E1)及び図12(試料C3)に示す。なお、同図中、又は後述する図15、図23及び図24において、Cu又はO原子の分布は、5種類のハッチングパターンにて、その分布量の大小を表現している。ハッチングパターンの種類は各図の右下の四角内に示してあり、一番上のハッチングパターンが最も分布量が大きい部分を示し、上から順に分布量は小さくなる。
図11及び図12より知られるごとく、試料E1においては、Cu分布は卑金属電極層13にだけあるのに対し、試料C3においては、誘電セラミック層12内にCuが拡散して分布している。
また、この試料C3においては、図13に示すごとく、積層型誘電素子1内部に大きなデラミネーション9が発生していた。そして、このデラミネーション9は、上記卑金属電極層13と、誘電セラミック層12とがその界面で剥離して開口部95を生じていた。
また、試料C3について、そのデラミネーション9が発生した部分を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。その結果を図14に示す。図14の真ん中の図は、デラミネーションが発生したときに生じた開口部95の下側を観察した結果である。同図中における右下方向へ斜めに示された境界線よりも上の部分が
デラミネーションにより発生した開口部であり、下の部分が誘電セラミック層12である。右側の図は、開口部95の上側を観察した結果である。なお、図14の左側の図は、比較のためデラミネーション9が発生していない正常な部分を観察した結果である。
さらに、SEMにて観察した部分と同じ部分におけるCu分布の様子を図15に示す。
図14及び図15に示すごとく、試料C3のデラミネーションが発生した部分においては、誘電セラミック層12の開口部95側表面に、玉状になったCuが存在していた。
なお、図15の真ん中及び右側の図に示した斜め実線は、誘電セラミック層12と開口部95との境界部のおよその位置を示すものである。
次に、上記E1〜E4及びC1〜C3の静電容量及び絶縁抵抗を測定した。
(静電容量)
静電容量は、インピーダンスアナライザーを用い、温度条件を室温とし、測定周波数1kHzにて測定した。その結果を表1に示す。
(絶縁抵抗)
絶縁抵抗は、室温で150Vの電圧を印可し、印可してから2分後抵抗を絶縁抵抗計を用いて測定した。その結果を表1に示す。
Figure 0004393841
表1より知られるごとく、本例の試料E1〜E4は、いずれも1300nFを超える高い静電容量を有し、また、絶縁抵抗も誘電セラミック層1層あたり550MΩを超え優れていた。
一方、試料C1〜試料C3は、静電容量が900μF未満と小さかった。また、試料C3及び試料4は絶縁抵抗が非常に小さく、いずれも13MΩ以下であった。
(実施例2)
本例では、上記電極印刷工程における、卑金属電極用ペースト材料を塗布する厚み、及び上記電極還元工程における、雰囲気ガスの制御条件を変えて実施例1と同様な積層型誘電素子を作製し、静電容量及び絶縁抵抗及び歩留まりを測定した。
まず、上記各種条件を変え、他は実施例1と同様にして26種類の積層型誘電素子を作製した。具体的には、上記電極印刷工程における卑金属電極用ペースト材料を塗布する厚み(印刷厚)、上記電極還元工程におけるAr−H2中の水素ガス濃度、酸化ガスとしての酸素の流量、最高保持温度、及び保持時間を、後述する表2に示すように変更して複数の積層型誘電素子を作製した。このとき、得られた各積層型誘電素子を試料E5〜試料E18、及び試料C5〜試料C16とした。
また、試料E5〜試料E18、及び試料C5〜試料C16を作製する条件での歩留まりを調べた。
歩留まりは、各試料と同条件で同様の試料を40個作製して、このうちデラミネーションの発生したものを不良品として歩留まりを算出した。
その結果を表2に示す。
次に、試料E5〜試料E18、及び試料C5〜試料C16の静電容量及び絶縁抵抗を測定した。これらの測定方法は、上記実施例1と同様である。その結果を表2に示す。
また、比較のため、実施例1で得られた試料E1についても、静電容量、絶縁抵抗、及び歩留まりを測定し、その結果を表2に示した。
Figure 0004393841
表2より知られるごとく、試料E5〜試料E18は、試料E1と同程度の静電容量及び絶縁抵抗を有し、歩留まりも80%以上と優れていた。
一方、試料C5〜試料C16においては、静電容量や絶縁抵抗が悪化した。
特に、試料C14〜試料C16のように、印刷厚が16μmを超えるものについては、デラミネーションが多発し、歩留まりが悪かった。これは、電極還元工程において、上記卑金属電極用ペースト材料が還元されにくくなり、残留Cu酸化物が誘電セラミック層に拡散するためであると考えられる。
さらに、表2中には示していないが、印刷厚を2μm未満にした場合には、図21に示すごとく、焼成後に、卑金属電極層13がとぎれてしまう。これは、セラミック材料から遊離した鉛により電極が溶融したためであると考えられる。
また、表2中には示していないが、上記試料E5〜E18は、上記卑金属電極層13中に含まれる卑金属酸化物の残存量が20wt%以下であり、かつ上記卑金属電極層13の表面から5000Å以内における、上記セラミック材料から遊離した鉛の量が、30atomic%以下となるものであった。
一方、上記試料C5〜C16は、上記卑金属電極層13中に含まれる卑金属酸化物の残存量が20wt%を超えるものや、上記卑金属電極層13の表面から5000Å以内における、上記セラミック材料から遊離した鉛の量が、30atomic%を超えるものであった。
(実施例3)
次に、第2の発明の実施例にかかる、積層型誘電素子の製造方法につき、説明する。
本例においては、図22に示すごとく、誘電セラミック層62と卑金属からなる卑金属電極層63とを交互に積層した積層型誘電素子6を製造する。
そして、本例の製造方法は、後述するごとく、電極印刷工程と、圧着工程と、脱脂工程と、電極還元工程と、焼成工程とを有する。
上記電極印刷工程は、金属酸化物よりなるセラミック材料をシート状に成形してなるセラミックグリーンシートの少なくとも一方の面に、卑金属酸化物を含有してなる卑金属電極用ペースト材料を塗布する工程である。
また、上記圧着工程は、上記卑金属電極用ペースト材料が塗布されたセラミックグリーンシートを積層し圧着して積層体を作製する工程である。
また、脱脂工程は、上記積層体を脱脂する工程である。
上記電極還元工程は、上記積層体を雰囲気ガスの流通下にて加熱炉内で加熱し、上記卑金属電極用ペースト材料を還元して卑金属電極層とする工程である。
また、上記焼成工程は、上記積層体を焼成する工程である。
そして、本例の上記電極還元工程においては、上記電極還元工程における上記雰囲気ガスは、上記卑金属電極用ペースト材料を還元する還元ガスと酸素又は/及び酸素を形成するガスよりなる酸化ガスとを含有する。
また、上記電極還元工程における上記加熱は、上記卑金属電極用ペースト材料中の上記卑金属と上記セラミックグリーンシート中の少なくとも1つの金属との共晶点付近の温度を最高保持温度としておこない、かつ該最高保持温度における上記還元ガスは、上記雰囲気ガス中に0.2〜0.3体積%含まれる。
以下、本例の製造方法につき、詳細に説明する。
まず、以下のようにして卑金属電極用ペースト材料を作製する。
平均粒径0.5μmの略球形のCu粉をプレスし、板状にした板状Cu粉と、平均粒径1〜2μmの略球形のCuO粉とを準備した。
また、実施例1のセラミック材料と同様の材質からPb量を2atomic%だけ減らして得られる材料よりなる共材を準備した。
次に、樹脂材としてのエチルセルロース18.3wt%と、溶剤としてのブチルカルビトール79.3wt%と、分散材としての高級脂肪酸0.7wt%とを混合して、卑金属電極用ペースト材料のベース材料とした。
このベース材料に、上記のように予め準備していたCuO粉(平均粒径1〜2μm、略球形)と、板状Cu粉(平均粒径0.5μm、略球形)と、共材とを下記の表3に示す割合で添加し、混練し、卑金属電極用ペースト材料を作製した。
Figure 0004393841
次に、実施例1と同様にして、実施例1と同じ組成のセラミック材料のスラリーを準備した。このセラミック材料のスラリーを用いて、実施例1と同様のドクターブレード法によりシート状に成形し、セラミックグリーンシートを作製した。
続いて、実施例1と同様に、上記卑金属電極用ペースト材料をセラミックグリーンシートに印刷する。さらに、この卑金属電極用ペースト材料が印刷されたセラミックグリーンシートを実施例1と同様にして、卑金属ペースト材料が交互に左右の側面に到達するように積層し圧着し、所定の寸法にカットした。本例においては、脱脂工程における脱脂時間を短縮させるために、積層数を25層に抑制した、2mmの積層体(80μm/層)を作製した。
そして、この積層体を実施例1と同様にして脱脂した。
次に、上記電極還元工程を行う。
本例の電極還元工程は、図7に示すごとく、実施例1と同様の加熱炉3を用いて行った。本例においては、上記セラミックグリーンシートがその組成物中に鉛を含有し、上記卑金属電極用ペースト材料が銅を含有してなるため、鉛と銅との共晶点である326℃付近を最高保持温度に設定し、12時間加熱した。
また、上記加熱の際には、上記加熱炉3の炉室30内に雰囲気ガスを導入した。導入する雰囲気ガスとしては、Ar−H2とO2とを用いた。Ar−H2中の水素ガスの濃度は1%である。そして、雰囲気ガス導入時のAr−H2の流量は5000ml/minとし、O2の流量は5〜10ml/minとした。この電極還元工程により、セラミックグリーンシートに印刷された卑金属電極用ペースト材料は還元されて卑金属電極層となる。
なお、上記電極還元工程における酸素分圧は、最高保持温度において10-23.8atmとなるように設定した。
次に、上記電極還元工程と同じ加熱炉3を用いて上記電極還元工程後の積層体の焼成を行った。
本例においては、上記積層体の焼成は、焼成温度950℃で4時間、雰囲気ガスの流通下にて行った。このとき、上記雰囲気ガスとしては、上記電極還元工程と同様に、Ar−H2(還元ガス)とO2(酸化ガス)とを用いたが、本例では、誘電セラミック層が還元されないような雰囲気に調整して行った。なお、焼成の際の酸素分圧は、温度950℃において約10-6になるように設定した。
このようにして、図22に示すごとく、誘電セラミック層62と卑金属からなる卑金属電極層63とを交互に積層した積層型誘電素子6を作製した。これを試料X1とした。
また、本例においては、比較用として上記電極還元工程において、水素ガスを1%含有するAr−H2と、O2と、N2とを雰囲気ガスとして用いて、他は試料X1と同様にして比較用の積層型誘電素子(試料Y1)を作製した。試料Y1を作製するにあたっては、Ar−H2の流量を1000ml/min、O2の流量5〜10ml/min、N2の流量を4000ml/minとして、上記電極還元工程を行った。
次に、上記試料X1及び試料Y1を各誘電セラミック層と垂直な面で切断し、それぞれの断面における銅と酸素原子の分布をEPMAにより分析し比較した。
その結果をそれぞれ図23(試料X1)及び図24(試料Y1)に示す。
図23より知られるごとく、試料X1においては、Cuが分布する卑金属電極層63には、Oはほとんど分布していない。即ち、上記電極還元工程において、卑金属電極用ペースト材料は充分に還元されていたことがわかる。また、試料X1中にはデラミネーションも発生していなかった。
一方、試料Y1においては、図24より知られるごとく、Cuが分布する卑金属電極層63にもOが分布している。即ち、試料Y1は、試料X1に比べて卑金属電極用ペースト材料の還元度合いが極度に低いことがわかる。
このように、本例の製造方法によれば、デラミネーションがなく、高品質な積層型誘電素子を製造することができる。
(実施例4)
本例では、実施例3の電極還元工程における、温度及び雰囲気ガス条件を変更して、実施例3と同様の積層型誘電素子を作製する。
まず、実施例3と同様にして、2mmの積層体を6個作製し、さらに、実施例3と同様に脱脂をおこなった。
続いて、この脱脂済みの6個の積層体に、実施例3と同様にして、電極還元工程及び焼成工程を施し、積層型誘電素子を作製した。
本例の上記電極還元工程においては、最高保持温度を330℃に設定し、12時間加熱した。そして、加熱時には、実施例3と同様に雰囲気ガスを流通させた。本例では、このときの雰囲気ガスの全流量を5005〜5010ml/minとし、上記の6つの積層体それぞれについて、雰囲気ガス中の水素ガスの比率を変化させて加熱を行い、その後実施例3と同様にして焼成を行って6個の積層型誘電素子を得た。これらをそれぞれ試料X2〜X5、試料Y2、及び試料Y3とした。なお、試料X2〜X5、試料Y2、及び試料Y3をそれぞれ作製したときの水素ガスの比率は、それぞれ後述する表4の通りである。
また、上記雰囲気ガスの構成は、H2ガス比率1%以上という雰囲気条件で作製した上記試料X2、試料X5、及び試料Y2については、上記雰囲気ガスとして、Ar−H2ガス及び酸素ガスとを用いた。そして、雰囲気ガス中のAr−H2ガスの流量、或いはAr−H2ガス中のArガスとH2ガスとの比率を調整して流量5000ml/minにて流通させ、雰囲気ガス中のH2ガスの比率が1%以上という雰囲気条件に設定した。なお、この雰囲気ガスには、酸素ガスを5〜10ml/minを流通させて、全雰囲気ガスの流量を5005〜5010ml/minとした。
一方、H2ガス比率1%未満という雰囲気条件で作製した上記試料X3、試料X4、及び試料Y1については、上記雰囲気ガスとして、Ar−H2ガス、酸素ガス、及びN2ガスとを用いた。そして、雰囲気ガス中のAr−H2ガスとN2ガスとを調整し、雰囲気ガス中のH2ガスの比率が1%未満となるように雰囲気条件を設定した。また、これらAr−H2ガスとN2ガスとの合計流量は5000ml/minとなるようにし、さらに、酸素ガスを5〜10ml/minにて流通させ、全雰囲気ガスの流量を5005〜5010ml/minとなるようにした。
上記のようにして作製した試料X2〜X5、試料Y1、及び試料Y2について、卑金属電極層中のCu酸化物の残留率及び誘電セラミック層中の共晶物質の形成率を調べた。
Cu酸化物の残留率は、上記電極還元工程後の卑金属電極層中に含まれるCu酸化物の残留率を示すものである。このCu酸化物の残留率が多い場合には、卑金属電極層の導電性が低下し、誘電素子として用いることができないおそれがある。
また、上記電極還元工程及び焼成工程中には、卑金属電極層中に含まれるCu、CuO又はCu2Oと、誘電セラミック層から遊離したPb、PbO又はPbO2とが反応して、CuとPbとの共晶物質Cu6PbO8等が形成されることがある。この共晶物質の形成率が多い場合には、共晶物質が誘電セラミック層中に浸透してしまう。この共晶物質は、多くの場合、圧電材料ではないため、圧電特性を低下させる。また、駆動時の発生原因ともなり得る。
以下、Cu酸化物の残留率及び共晶物質の形成率の測定方法をにつき、説明する。
(Cu酸化物の残留率)
焼成後の上記積層型誘電素子(試料X2〜X5、試料Y1及び試料Y2)を誘電セラミック層と卑金属電極層との界面で剥がし、卑金属電極層の膜をテープに貼り取り、X線回折装置(株式会社島津製作所製のXRD−6100)により計測する。計測は、簡易定量計算(同定された化合物でコランダム比をもっているものに対して計算をおこなうもの)により行い、その結果をCu量とCu酸化物量の比率として得た。
このようにして、Cu酸化物の残留率を測定し、その結果を表4に示す。
(共晶物質の形成率)
上記Cu酸化物の残留率の計測と同様に、上記卑金属電極層の膜をテープで貼り取った後、誘電セラミック層側を上記X線回折装置を用いて、計測する。計測は、上記簡易定量計算により行い、その結果をCu6PbO8量とPb酸化物量の比率として得た。
このようにして、共晶物質(Cu6PbO8等)の形成率を測定し、その結果を表4に示す。
なお、表4において、上記Cu酸化物の残留率及び共晶物質の形成率は、いずれも原子の個数の比率(atomic%)で表示してある。
Figure 0004393841
表4より知られるごとく、試料X2〜試料X5については、Cu酸化物残留率及び共晶物質形成率は非常に低かった。
一方、試料Y1は、卑金属電極層中のCu酸化物形成率が非常に高く、PbとCuとの共晶物質の形成率も大きくなっている。また、試料Y2においても、共晶物質の形成率が大きかった。
以下、これらの結果について検討する。
本例において、上記試料X2〜試料X5、試料Y1及び試料Y2は、それぞれ上記電極還元工程における雰囲気ガス中のH2ガスの比率を変化させて作製したものである。
ここで、試料Y1は、0.2%という低いH2ガス比率の条件下で作製したものである。このような低い水素ガス濃度を用いると、上記電極還元工程において卑金属電極用ペースト材料は充分に還元されず、表4に示すごとくCu酸化物が残留してしまう。さらに、残留したCuO等のCu酸化物は、電極還元工程後に行われる焼成工程において、誘電セラミック層中のPbOと共晶物質を形成する。その結果、表4に示すごとく共晶物質の形成率も高くなってしまう。
また、試料Y2は、3.0%という高いH2ガス比率の条件下で作製したものである。このような高い水素ガス濃度を用いると、上記電極還元工程において、卑金属電極用ペースト材料のみならず、セラミックグリーンシートも還元されてしまい、Pbが遊離する。この遊離したPbは、卑金属電極層中のCuと共晶物質を形成するため、表4に示すごとく、共晶物質の形成率が高くなってしまう。
このように、共晶物質の形成は、電極還元工程において、還元条件を厳しくしても弱くしてもおこると考えられる。そして表4より知られるごとく、上記電極還元工程において、上記雰囲気ガス中のH2ガスの比率は、0.2%より多く、3.0%より小さくなるように設定することが好ましいのがわかる。
また、図7に示すごとく、本例の上記電極還元工程で用いた加熱炉3は、炉室30の形状が円柱状であり、雰囲気ガスの進行方向を垂線とする円柱の断面形状は直径φ184mmの略円形である。したがって、雰囲気ガス中のH2ガス比率は、上記の表4に示すごとく、H2ガスの線密度(H2ガスの流量÷通過す媒体(炉室)の断面積)に換算することができる。但し、表4においては、雰囲気ガス中にごく少量含まれる酸素の流量は考慮していない。
そして、表4の結果をH2ガスの線密度の観点から検討すると、上記電極還元工程における、上記雰囲気ガス中のH2ガスの線密度は、0.0376cm/minより多く、0.564cm/minより少ない範囲に設定することが好ましいのがわかる。
(実施例5)
本例は、上記実施例4において検討した、雰囲気ガス中の水素ガスの好ましい比率の範囲についてさらに検討した例である。
まず、上記実施例3及び実施例4と同様にして、2mmの積層体を2個作製し、さらにこれらの脱脂を行った。
次に、この脱脂済みの2個の積層体に、実施例3及び4と同様にして、電極還元工程及び焼成工程を施し、積層型誘電素子を作製する。
本例の電極還元工程においては、加熱時に、上記実施例3と同様に雰囲気ガスを流通させた。このとき、本例では、上記の2個の積層体それぞれについて、雰囲気ガス中の水素ガスの線密度を以下のように変化させて加熱を行った。
一つ目の積層体は、上記電極還元工程において、雰囲気ガスとして1%の水素ガスを含有するAr−H2ガスを1000ml/min、酸素分圧を調整するための酸素ガスを1〜4ml/minにて流通させる条件(全雰囲気ガスの流量は1001〜1004ml/min)で、最高保持温度を320℃にて、8時間加熱した。このときの加熱炉としては、実施例4と同様のものを用いているため、上記雰囲気ガス中の水素ガスの線密度は0.0376cm/minとなっている。そして、その後実施例3及び4と同様にして焼成を行い、積層型誘電素子を得た。これを試料X6とした。
また、もう一方の積層体は、雰囲気ガスとして2%の水素ガスを含有するAr−H2ガスを7500ml/min、酸素ガスを8〜15/minにて流通させる条件(全雰囲気ガスの流量は7508〜7515ml/min)で、最高保持温度を330℃にて、12時間加熱した。このときの加熱炉は、実施例4と同様のものを用いているため、上記雰囲気ガス中の水素ガスの線密度は0.564cm/minとなっている。その後、実施例3及び4と同様にして焼成、積層型誘電素子を得た。これを試料X7とした。
次に、上記試料X8及び試料X9について、実施例4と同様に、卑金属電極層中のCu酸化物残存率、及びPbとCuとの共晶物質の形成率を測定した。
その結果を上記の表4に示す。
なお、表4中にあるH2ガスの線密度の算出方法は、上記実施例4と同様であり、雰囲気ガス中に含まれる微量の酸素ガスの流量は考慮せずに算出した。
表4より知られるごとく、本例の試料X6及び試料X7は、いずれもCu酸化物が0%で、また共晶物質の形成も比較的小さいものであった。
上記実施例4においては、好ましいH2ガスの線密度の範囲として、下限を0.0376cm/min、上限を0.564cm/minとしたが、本例の試料X6及び試料X7は、この範囲を逸脱する線密度のH2ガスにて作製されたものである。それにもかかわらず、試料X6及び試料X7のCu酸化物及び共晶物質の形成率が表4に示すごとく低く抑えられているのは、雰囲気ガス中のH2比率が、上述のように0.2より多く、3.0より少ないという範囲に設定されているからである。
このように、本例によれば、上記電極還元工程においては、雰囲気ガス中の還元ガスとしての水素ガスの含有量を0.2%より多く、3.0%より少ない範囲に設定することが重要であることがわかる。
(実施例6)
本例は、上記水素ガスの線密度の好ましい範囲についてさらに検討した例である。
まず、上記実施例5と同様にして、2mmの積層体を2個作製し、さらにこれらの脱脂を行った。
次に、この脱脂済みの2個の積層体に、実施例5と同様にして、電極還元工程及び焼成工程を施し、積層型誘電素子を作製する。
本例の電極還元工程においては、加熱時に、上記の2個の積層体それぞれについて、雰囲気ガス中の水素ガスの比率を以下のように変化させて加熱を行った。
一つ目の積層体は、上記電極還元工程において、雰囲気ガスとして1%の水素ガスを含有するAr−H2ガスにN2ガスを水素ガス比率が0.2%となるように混合した混合ガスを10000ml/min、及び酸素分圧を調整するための酸素ガスを10〜20ml/minにて流通させ(全雰囲気ガスの流量は10010〜10020ml/min)、最高保持温度を332℃にて、16時間加熱した。このときの加熱炉としては、実施例4と同様のものを用いているため、上記雰囲気ガス中の水素ガスの線密度は0.0752cm/minとなっている。そして、その後実施例3及び4と同様にして焼成を行い、積層型誘電素子を得た。これを試料X8とした。
また、もう一方の積層体は、雰囲気ガスとして3%の水素ガスを含有するAr−H2ガスを2000ml/min、及び酸素ガスを2〜5/minにて流通させる条件(全雰囲気ガスの流量は2002〜2005ml/min)で、最高保持温度を330℃にて、12時間加熱した。このときの加熱炉は、実施例4と同様のものを用いているため、上記雰囲気ガス中の水素ガスの線密度は0.226cm/minとなっている。その後、実施例3及び4と同様にして焼成し積層型誘電素子を得た。これを試料X9とした。
次に、上記試料X6及び試料X7について、実施例4と同様に、卑金属電極層中のCu酸化物残存率、及びPbとCuとの共晶物質の形成率を測定した。
その結果を上記の表4に示す。
なお、表4中にあるH2ガスの線密度の算出方法は、上記実施例4と同様であり、雰囲気ガス中に含まれる微量の酸素ガスの流量は考慮せずに算出した。
表4より知られるごとく、本例の試料X8及び試料X9は、それぞれCu酸化物の形成率が1%及び0%で非常に小さく、また共晶物質の形成も比較的小さいものであった。
上記実施例4においては、雰囲気ガス中のH2ガス比率の好ましい範囲として、0.2%を越え、3%未満の範囲を設定したが、本例の試料X8及び試料X9は、この範囲を逸脱するH2ガス比率にて作製されたものである。それにもかかわらず、試料X8及び試料X9のCu酸化物及び共晶物質の形成率が表4に示すごとく低く抑えられているのは、雰囲気ガス中のH2ガスの線密度が、上述のように0.0376cm/minより多く、0.564cm/minより少ないという範囲に設定されているからである。
このように、本例によれば、上記電極還元工程においては、雰囲気ガス中の還元ガスとしての水素ガスの線密度を0.0376cm/minより多く、0.564cm/minより少ない範囲に設定することが重要であることがわかる。
そして、実施例5及び実施例6の結果より、上記電極還元工程においては、雰囲気ガス中の水素ガスの比率を、0.2%を越え、3%未満の範囲とするか、又は雰囲気ガス中の水素ガスの線密度を0.0376cm/minより多く、0.564cm/minより少ない範囲に設定することが重要であることがわかる。
(実施例7)
本例では、上記電極還元工程における、加熱温度を検討する。
まず、本例においては、電極還元工程における上記最高保持温度を310℃、加熱時間を12時間として、他は実施例6における上記試料X9と同様の作製方法及び条件にて積層型誘電素子を作製した。これを試料Y3とした。
また、上記試料Y3と電極還元工程における上記最高保持温度だけが異なる条件で同様の積層型誘電素子を作製した。これを試料Y4とした。なお。試料Y4においては、上記最高保持温度は340℃とした。
次に、上記試料Y3及びY4について、実施例4〜6と同様に、卑金属電極層中のCu酸化物残存率、及びPbとCuとの共晶物質の形成率を測定した。
その結果、上記試料Y3は、卑金属電極層中にCu酸化物がほぼ100%残存していた。
また、試料Y4を目視により観察すると、上記電極還元工程後にはすでに卑金属電極層が消失しており、誘電セラミック層だけが積層された状態になっていた。
このように、上記電極還元工程においては、上記卑金属電極用ペースト材料中の卑金属と上記セラミックグリーンシート中の少なくとも1つの金属との共晶点付近の温度を最高保持温度としておこなうことが好ましい。特に、セラミック材料としてPZT系材料を、卑金属電極層として銅を用いる場合には、上記最高保持温度は、PbとCuの共晶点である326℃よりも16℃低い310℃を下限とし、かつ14℃高い340℃を上限とすることができる。
実施例1にかかる、積層型誘電素子の全体を示す斜視説明図。 実施例1にかかる、セラミックグリーンシートに卑金属電極用ペースト材料を印刷した状態を示す説明図。 実施例1にかかる、上記圧着工程におけるセラミックグリーンシートを積層する様子を示す説明図。 実施例1にかかる、上記セラミックグリーンシートのユニットを示す説明図。 実施例1にかかる、上記圧着工程後の積層体を示す説明図。 実施例1にかかる、上記脱脂工程の温度設定条件を示す説明図。 実施例1にかかる、上記加熱炉の構成を示す説明図。 実施例1にかかる、上記電極還元工程における温度制御の様子を示す説明図。 実施例1にかかる、上記焼成工程中における温度及び酸素分圧の制御の様子を示す説明図。 実施例1にかかる、各試料Ea1〜Ea4及び試料Ca1〜Ca4のCu発生量と銅還元量の結果を示す説明図。 実施例1にかかる、試料E1中のCu分布の様子を示す説明図。 実施例1にかかる、試料C3中のCu分布の様子を示す説明図。 実施例1にかかる、試料C3中に発生したデラミネーションの様子を示す説明図。 実施例1にかかる、試料C3を走査型顕微鏡にて観察したときの、正常な部分を観察したときの様子を示す図(左)、デラミネーションの開口部の下側を観察したときの様子を示す説明図(真ん中)、及びデラミネーションの開口部の上側を観察したときの様子を示す説明図(右)。 実施例1にかかる、図14に示す、走査型顕微鏡にて観察した部分と同じ部分におけるCu分布の様子を示す説明図。 実施例1にかかる、卑金属電極層に含まれる成分のX線回折スペクトルを示す線図。 実施例1にかかる、図16における各成分のピーク位置とピーク強度を示す説明図。 実施例1にかかる、X線光電子分光分析における測定結果を示す線図。 実施例1にかかる、図18における範囲970〜920の拡大図。 実施例1にかかる、図18における範囲150〜130の拡大図。 実施例2にかかる、上記積層型誘電素子中にて、上記卑金属電極層がとぎれた様子を示す説明図。 実施例3にかかる、積層型誘電素子の全体を示す説明図。 実施例3にかかる、試料X1における、銅と酸素原子の分布状態を示す説明図。 実施例3にかかる、試料Y1における、銅と酸素原子の分布状態を示す説明図。
符号の説明
1 積層型誘電素子
12 誘電セラミック層
13 卑金属電極層

Claims (8)

  1. 組成中に鉛を含有する誘電セラミック層と、卑金属としての銅からなる卑金属電極層とを交互に積層した積層型誘電素子を製造する方法において、
    鉛酸化物を含む金属酸化物よりなるセラミック材料をシート状に成形してなるセラミックグリーンシートの少なくとも一方の面に、卑金属酸化物を含有してなる卑金属電極用ペースト材料を塗布する電極印刷工程と、
    上記卑金属電極用ペースト材料が塗布されたセラミックグリーンシートを積層し圧着して積層体を作製する圧着工程と、
    上記積層体を雰囲気ガスの流通下にて加熱炉内で加熱し、上記卑金属電極用ペースト材料を還元して卑金属電極層とする電極還元工程と、
    上記積層体を焼成する焼成工程とを有し、
    上記電極還元工程においては、上記卑金属電極層中に含まれる卑金属酸化物の残存量が20wt%以下であり、かつ上記卑金属電極層の表面から5000Å以内における、上記セラミック材料から遊離した鉛の量が、30atomic%以下となるように上記卑金属電極用ペースト材料を還元し、
    上記電極還元工程における上記雰囲気ガスは、上記卑金属電極用ペースト材料を還元する還元ガスとしての水素と、酸化ガスとしての酸素を含有し、
    上記電極還元工程においては、昇温速度200℃/h以下で加熱を開始し、続いて300℃〜400℃の最高保持温度にて0.5〜15時間保持し、その後炉冷し、90℃以下の温度にて上記積層体を上記加熱炉内より取り出し、かつ加熱を開始してから上記加熱炉内より上記積層体を取り出すときまでの上記雰囲気ガス中の酸素の分圧を1×10 -23.9 〜1×10 -22 atmにし、
    上記電極還元工程における酸素流量f O (ml/min)と水素流量f H (ml/min)とは、上記雰囲気ガスを構成する各ガスの流量の合計量を全流量F(ml/min)とするとき、酸素流量f O =A×水素流量f H /全流量F−B(但し、20≦A≦24、12≦B≦16、8≦A−B≦8.22)の関係を有していることを特徴とする積層型誘電素子の製造方法。
  2. 組成中に鉛を含有する誘電セラミック層と、卑金属としての銅からなる卑金属電極層とを交互に積層した積層型誘電素子を製造する方法において、
    鉛酸化物を含む金属酸化物よりなるセラミック材料をシート状に成形してなるセラミックグリーンシートの少なくとも一方の面に、卑金属酸化物を含有してなる卑金属電極用ペースト材料を塗布する電極印刷工程と、
    上記卑金属電極用ペースト材料が塗布されたセラミックグリーンシートを積層し圧着して積層体を作製する圧着工程と、
    上記積層体を雰囲気ガスの流通下にて加熱炉内で加熱し、上記卑金属電極用ペースト材料を還元して卑金属電極層とする電極還元工程と、
    上記積層体を焼成する焼成工程とを有し、
    上記電極還元工程においては、上記卑金属電極層中に含まれる卑金属酸化物の残存量をM(wt%)(ただし、残存量Mは、薄膜X線回折法で定量した値である)、
    かつ上記卑金属電極層の表面から5000Å以内における、上記セラミック材料から遊離した鉛の量をN(atomic%)(ただし、鉛の量Nは、上記卑金属電極層の表面から5000Åの範囲をX線光電子分光法により定量した値である)とすると、
    上記M(wt%)とN(atomic%)との間には、
    N=C×M+D、0≦M<20なる関係が成立(ただし、C及びDはM及びNに依存しない値であり、それぞれ−1.5≦C<−1.0、30≦D<36の範囲にある。)
    上記電極還元工程における上記雰囲気ガスは、上記卑金属電極用ペースト材料を還元する還元ガスとしての水素と、酸化ガスとしての酸素を含有し、
    上記電極還元工程においては、昇温速度200℃/h以下で加熱を開始し、続いて300℃〜400℃の最高保持温度にて0.5〜15時間保持し、その後炉冷し、90℃以下の温度にて上記積層体を上記加熱炉内より取り出し、かつ加熱を開始してから上記加熱炉内より上記積層体を取り出すときまでの上記雰囲気ガス中の酸素の分圧を1×10 -23.9 〜1×10 -22 atmにし、
    上記電極還元工程における酸素流量f O (ml/min)と水素流量f H (ml/min)とは、上記雰囲気ガスを構成する各ガスの流量の合計量を全流量F(ml/min)とするとき、酸素流量f O =A×水素流量f H /全流量F−B(但し、20≦A≦24、12≦B≦16、8≦A−B≦8.22)の関係を有していることを特徴とする積層型誘電素子の製造方法。
  3. 請求項1又は2において、上記電極還元工程で最高温度に保持される際、水素と酸素とが反応して生成する水のモル流量をW、残存する余剰の水素のモル流量をHとすると、両者の値は下記の範囲内にあることを特徴とする積層型誘電素子の製造方法。
    0.0012≦H≦0.0018(H:mol/min)
    0.0002≦W≦0.001(W:mol/min)
  4. 請求項1〜3のいずれか1項において、上記電極還元工程で、最高温度に保持される際、保持時間における水素モル流量の積分値hは、下記の範囲内にあることを特徴とする積層型誘電素子の製造方法。
    29000≦h≦31000(h:mol/min)
  5. 請求項1〜4のいずれか1項において、上記電極印刷工程においては、上記卑金属電極用ペースト材料を厚み2〜14μmにて塗布することを特徴とする積層型誘電素子の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項において、上記電極還元工程と上記焼成工程とは1回の加熱で同時に行うことを特徴とする積層型誘電素子の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項において、上記圧着工程後、積層体に含まれる有機物を除去する脱脂工程を行うことを特徴とする積層型誘電素子の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法によって作製されることを特徴とする積層型誘電素子。
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