本発明は、概して、定速走行制御機能を備えた車両においてアクセルペダル反力の大きさを制御する車両用走行制御装置に係り、特に、クルーズ走行時の運転者の運転(操作)負荷を軽減する車両用走行制御装置に関する。
運転者によるアクセルペダル操作無しで自動的にスロットル開度を制御し、車速が一定となるように又は先行車との車間時間が一定となるようにクルーズ走行を行う定速走行制御機能を搭載した車両が周知である。
また、従来、車両においてアクセルペダル反力の大きさを制御する車両用走行制御装置が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
特許文献1には、定速走行制御時に所定のアクセルペダル開度においてアクセルペダル反力を運転者の右足の自重だけでは越えられないほどに急増させて、運転者が右足をアクセルペダル上に自然に載置できるようにし、アクセルペダルをフットレスト化させる機能が開示されている。
また、特許文献2には、定速走行制御時に、制御目標車速に応じて設定されたアクセルペダル・ストローク範囲を越えるアクセルペダル操作に対して、通常よりも大きいアクセルペダル反力を付与する装置が開示されている。
特開2000−54860号公報
特開2003−25870号公報
上記のような定速走行制御機能、特に車速一定型の制御においては、運転者が周辺環境等に応じてクルーズ走行中に制御目標とする車速(=設定車速)を増加/減少させたいと考える場面が生じ得る。
従来の定速走行制御は、通常、クルーズ走行中の設定車速を増加させたい場合、例えばリジューム・スイッチなどの呼称で知られるスイッチを押すと加速し、指を離すとその時点での速度が新たな設定車速としてセットされる。同様に、クルーズ走行中の車速を減少させたい場合、例えばコースト・スイッチなどの呼称で知られるスイッチを押すと減速し、指を離すとその時点での速度が新たな設定車速としてセットされる。また、上記のリジューム・スイッチやコースト・スイッチなどにワンタッチ機能が備えられ、軽く触れるごとに所定単位速度(例えば1km/h)ずつ加減速が微調整できる機能も提案・実施されている。
すなわち、従来の定速走行制御機能では、クルーズ走行の設定車速を上下させるのに手動によるスイッチ操作が必要であり、操作性が良好ではないという印象を運転者に与える可能性がある。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、クルーズ走行時の運転者の運転(操作)負荷を軽減する車両用走行制御装置を提供することを主たる目的とする。
上記目的を達成するための本発明の一態様は、定速走行制御機能を備えた車両においてアクセルペダル反力の大きさを制御する車両用走行制御装置であって、運転者によるアクセルペダル操作の状態を検出するアクセルペダル操作検出手段と、アクセルペダル反力の大きさを制御するアクセルペダル反力制御手段と、定速走行制御中、自車両の車速が設定車速に維持されるようにスロットル開度を制御するスロットル開度制御手段とを有し、
前記アクセルペダル反力制御手段は、定速走行制御中、アクセルペダル開度に対してアクセルペダル反力が急増する第一の領域を設け、前記スロットル開度制御手段は、前記アクセルペダル操作検出手段により検出された前記第一の領域における又は該第一の領域よりもアクセルペダル開度が小さい第二の領域におけるアクセルペダル操作により、前記アクセルペダル開度がアクセルペダル開度に対するアクセルペダル反力特性にアクセルペダル反力の少なくとも一の減少及び前記減少の両端に連続する増加を加えたクリック点を含む所定のアクセルペダル開度範囲を通過した回数に応じて前記設定車速を変更する、ことを特徴とする車両用走行制御装置である。
また、この一態様において、上記設定車速の変更(増加)は、例えば、E)上記アクセルペダル反力制御手段が定速走行制御中に上記第一の領域内において、第一の前記クリック点を形成し、上記アクセルペダル操作検出手段が定速走行制御中に運転者によるアクセルペダル操作が上記第一の前記クリック点をアクセルペダル開度が増加する方向に通過した第一の回数を計数し、上記スロットル開度制御手段が該第一の回数の大きさに応じて上記設定車速を増加させる、ことによって実行される。
また、この一態様において、上記設定車速の変更(減少)は、例えば、F)上記アクセルペダル反力制御手段が定速走行制御中に上記第二の領域内において、第二の前記クリック点を形成し、上記アクセルペダル操作検出手段が定速走行制御中に運転者によるアクセルペダル操作が上記第二の前記クリック点をアクセルペダル開度が増加する方向に通過した第二の回数を計数し、上記スロットル開度制御手段が該第二の回数の大きさに応じて上記設定車速を減少させる、ことによって実行される。
さらに、この一態様において、上記設定車速の変更(減少)は、例えば、G)上記アクセルペダル反力制御手段が定速走行制御中に上記第一の領域内において、第三の前記クリック点を形成し、上記アクセルペダル操作検出手段が定速走行制御中に運転者によるアクセルペダル操作が上記第三の前記クリック点をアクセルペダル開度が増加する方向に通過した第三の回数を計数し、上記スロットル開度制御手段が該第三の回数の大きさに応じて上記設定車速を減少させる、ことによって実行される。
この一態様によれば、定速走行制御に関する運転者操作がアクセルペダルに集約され、アクセルペダルの操作のみで定速走行制御時の設定車速を変更することができるため、スイッチ操作などの手動での操作が不要となり、操作性の向上及びクルーズ走行時の運転者の運転(操作)負荷の軽減が実現される。
本発明によれば、クルーズ走行時の運転者の運転(操作)負荷を軽減する車両用走行制御装置を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を4つ挙げて説明する。なお、定速走行制御機能を備えた車両においてアクセルペダル反力の大きさを制御する車両用走行制御装置の基本概念、主要なハードウェア構成、作動原理、及び基本的な制御手法等については当業者には既知であるため、詳しい説明を省略する。
図1〜3を参照して、本発明の一実施例(実施例1)に係る車両用走行制御装置について説明する。まず、図1を用いて、本実施例に係る車両用走行制御装置100の概略構成を説明する。
車両用走行制御装置100は、エンジンのスロットル・バルブの弁開度を調整してエンジン出力を制御するスロットル開度制御部101と、例えばアクチュエータを利用してアクセルペダルの操作反力を制御するアクセルペダル反力制御部102とを有する。
アクセルペダル反力制御部102がアクセルペダルの操作反力を制御する具体的な構造・機構については、既に様々な提案がなされており、当業者には既知であるため、説明を省略する。本実施例では、任意の構造・機構を採用することができる。
車両用走行制御装置100は、更に、スロットル開度制御部101及びアクセルペダル反力制御部102の作動を制御する制御部103を有する。制御部103には例えば車輪速センサ(図示せず)などから自車両の車速情報が伝達され、定速走行制御時には自車両の車速が設定車速に維持されるようにスロットル開度制御部101を制御する。アクセルペダル反力制御部102に対する制御については後述する。
車両用走行制御装置100は、更に、例えばペダルストローク角センサなどであり、アクセルペダルのストローク角(ペダル開度)を検出するアクセルペダル開度検出部104と、運転者によるアクセルペダルの踏み込み踏力を検出するアクセルペダル踏力検出部105とを有する。検出されたアクセルペダル開度及び踏力は、制御部103に伝達される。
次いで、このような概略構成を持つ車両用走行制御装置100の定速走行制御時の動作について、特に設定車速の変更方法について、図2及び3を用いて説明する。
図2は、クルーズ走行時に制御部103がアクセルペダル反力制御部102に実現させるアクセルペダル開度に対するアクセルペダル反力特性を示す。図示するように、制御部103は、アクセルペダル開度が所定の大きさになったときに、アクセルペダル反力制御部102にアクセルペダル反力を急増させ、アクセルペダルを踏み込む運転者に触覚的に「壁感」を与え、アクセルペダルをフットレスト化する。
このフットレスト化時のアクセルペダル反力の増加の程度は、運転者がアクセルペダルを操作する足(通常は右足)を自然とアクセルペダル上に載置し、右足の自重だけをアクセルペダルに掛けた状態では踏み越えることができない程度の大きさに設定される。
このフットレスト化により、運転者は、クルーズ走行中、アクセルペダルの上に右足を楽に軽く載置しておくことができるため、運転負荷が軽減される。
本実施例においては、図2に示すように、上記のアクセルペダル反力を急増させる領域内に、フットレストとして機能する領域に加えて、運転者の加速意思を検出するための領域(以下、「加速検出領域」と称す)が設定される。本実施例では、一例として、フットレスト化された領域からアクセルペダルを更に踏み込んでこの加速検出領域に入ると、アクセルペダル反力がF1からF2へ一気に増加する。
本実施例においては、運転者がアクセルペダルをフットレスト領域から更に踏み込んでアクセルペダル反力がこの加速検出領域内に収まるアクセルペダル踏力を維持することが従来のレジューム・スイッチを押下することと等価に機能する。
すなわち、アクセルペダル反力(踏力)の大きさが加速検出領域内に留まる間、制御部103はスロットル開度制御部101にスロットル開度を一定の勾配で増加させ、車速を徐々に上昇させる。そして、アクセルペダル反力(踏力)の大きさが加速検出領域を出たとき、制御部103はその時点での自車両の車速を新たなクルーズ走行中の設定車速とする。
換言すれば、クルーズ走行中の運転者は、設定車速を上げたい場合、まず、従来の手動によるレジューム・スイッチの押下に代えて、アクセルペダルをフットレスト化された領域よりも更に踏み込んで加速検出領域内に保持する。すると、車速が徐々に上昇するため、運転者は車速が新たな設定車速として所望の速度になったときにアクセルペダル反力(踏力)が加速検出領域から出るように例えばアクセルペダル踏力を弱めてフットレスト化された領域まで戻すことによって設定車速を所望の速度まで増加させることができる。
また、本実施例においては、図2に示すように、上記のアクセルペダル反力を急増させる領域よりもアクセルペダル開度が小さい領域内のアクセルペダル開度A1〜A2の領域を運転者の減速意思を検出するための領域(以下、「減速検出領域」と称す)に設定する。本実施例では、一例として、フットレスト化された領域よりアクセルペダル開度が小さい領域では、アクセルペダル反力が、運転者の右足の自重だけで容易にフットレスト化された領域まで踏み込まれるが、右足を完全にアクセルペダルから放すとアクセルペダル開度0まで戻る程度の大きさで略一定であるものとする。
本実施例においては、運転者がアクセルペダルをフットレスト化された領域からアクセルペダル開度を戻してアクセルペダル開度(ペダルストローク角)をこの減速検出領域内に収めることが従来のコースト・スイッチを押下することと等価に機能する。
すなわち、アクセルペダル開度の大きさが減速検出領域内に留まる間、制御部103はスロットル開度制御部101にスロットル開度を一定の勾配で減少させ、車速を徐々に下降させる。そして、アクセルペダル開度の大きさが減速検出領域を出たとき、制御部103はその時点での自車両の車速を新たなクルーズ走行中の設定車速とする。
換言すれば、クルーズ走行中の運転者は、設定車速を下げたい場合、まず、従来の手動によるコースト・スイッチの押下に代えて、アクセルペダルをフットレスト化された領域よりも戻して減速検出領域内に保持する。すると、車速が徐々に下降するため、運転者は車速が新たな設定車速として所望の速度になったときにアクセルペダル開度が減速検出領域から出るように例えばアクセルペダルから完全に足を放す又はフットレスト化された領域までアクセルペダル開度を増加させることによって設定車速を所望の速度まで減少させることができる。
以上のような本実施例によるクルーズ走行中の設定車速の変更について、アクセルペダル反力、アクセルペダル開度、及び車速の変化の一例を図3に示す。
図3に示す一例では、まず、時刻t1までは運転者はアクセルペダルをフットレストとして利用しており、アクセルペダルの操作状態は、アクセルペダル反力がF1よりやや小さく、アクセルペダル開度がA2よりやや大きいフットレスト化された領域に維持されており、現在車速も設定車速であるV2を保っている。
時刻t1において、運転者は、設定車速を上げるために、アクセルペダルをフットレスト化された領域から更に踏み込み、アクセルペダル反力がF1〜F2の間を維持するアクセルペダル踏力を保持する。
制御部103は、アクセルペダル反力が加速検出領域内に維持されている間、車速を徐々に上昇させる。そして、制御部103は、運転者がアクセルペダルを戻してアクセルペダル反力がF1より小さくなった時刻t2における現在車速V3を新たな設定車速としてセットする。以降、運転者が再びアクセルペダルをフットレストとして利用し、クルーズ走行が続けられると、制御部103は、車速がこの速度V3に維持されるようにスロットル開度制御部101を制御する。
その後、時刻t3において、運転者は、設定車速を下げるために、アクセルペダルをフットレスト化された領域から戻して、アクセルペダル開度がA1〜A2の間を維持するようにアクセルペダルを操作する。
制御部103は、アクセルペダル開度が減速検出領域内に維持されている間、車速を徐々に下降させる。そして、制御部103は、運転者がアクセルペダルを再びフットレスト化された領域まで踏み込んでアクセルペダル開度がA2より大きくなった時刻t4における現在車速V1を新たな設定車速としてセットする。以降、運転者が再びアクセルペダルをフットレストとして利用し、クルーズ走行が続けられると、制御部103は、車速がこの速度V1に維持されるようにスロットル開度制御部101を制御する。
このように、本実施例によれば、アクセルペダル反力(踏力)を図2に示すように設定された加速検出領域F1〜F2内に維持することによってクルーズ走行中の設定車速を上げることができると共に、アクセルペダル開度を図2に示すように設定された減速検出領域A1〜A2内に維持することによって設定車速を下げることができる。これにより、設定車速変更に手動のスイッチ操作等が不要となり、アクセルペダルのみで変更が可能となるため、操作性が向上し、運転者の運転(操作)負荷が軽減される。
なお、本実施例においては、アクセルペダル反力又はアクセルペダル開度が加減速検出領域に入ると直ちに車速が増減するものとしたが、これは一例に過ぎず、例えば、運転者の意図しない設定車速の変更が行われることを防止するために、所定時間以上領域内に保持されて初めて車速を増減させるようにしてもよい。
また、本実施例において、同じく運転者の意図しない設定車速の変更が行われることを防止するために、検出された加減速検出領域内での保持時間を一定時間フィルタリングしてもよい。
さらに、本実施例においては、図2に示すように設定された加速検出領域においてアクセルペダル開度の変化はないものとしたが、これは一例に過ぎず、例えば、フットレスト化された領域よりも急な増加勾配を有するようにしてもよい。さらにその場合、加速検出領域をアクセルペダル開度範囲で定義してもよい。
次いで、図4を参照して、本発明の別の一実施例(実施例2)に係る車両用走行制御装置について説明する。本実施例に係る車両用走行制御装置の概略構成は、図1に示した上述の実施例1に係るものと同一であるため、図示及び説明を省略する。また、本実施例に係る車両用走行制御装置の制御部103がクルーズ走行時にアクセルペダル反力制御部102に実現させるアクセルペダル開度に対するアクセルペダル反力特性は、図2に示した上述の実施例1に係るものと同一であるため、図示及び説明を省略する。
本実施例が上記実施例1と異なる点は、上記実施例1ではアクセルペダル操作の状態が加減速検出領域(図2参照)内にあるときにリニアに現在車速を変化させたのに対し、本実施例では、アクセルペダル反力(踏力)又はアクセルペダル開度が加減速検出領域(図2参照)内に保持・維持された時間期間の長さに応じて、設定車速を変更する点にある。
図4は、本実施例によるクルーズ走行中の設定車速の変更について、アクセルペダル反力、アクセルペダル開度、及び車速の変化の一例を示す。
図4に示す一例では、まず、時刻t1までは運転者はアクセルペダルをフットレストとして利用しており、アクセルペダルの操作状態は、アクセルペダル反力がF1よりやや小さく、アクセルペダル開度がA2よりやや大きいフットレスト化された領域に維持されており、現在車速も設定車速であるV2を保っている。
時刻t1において、運転者は、設定車速を上げるために、アクセルペダルをフットレスト化された領域から更に踏み込み、アクセルペダル反力がF1〜F2の間を維持するアクセルペダル踏力を保持する。所望する設定車速増分量が大きいほど、長い時間保持する。
制御部103は、時刻t1から、アクセルペダル反力が加速検出領域内に維持されている間、時間長を計数し、運転者がアクセルペダルを戻してアクセルペダル反力がF1より小さくなった時刻t2にこの計数を停止し、時刻t1〜t2の時間長を検出する。そしてこの時刻t1〜t2間の時間長の長さに応じて新たな設定車速V3をセットする。すなわち、車速V2からV3への増分量(V3−V2)は、時刻t1〜t2間の時間長に比例する。これは例えば単位時間当たりの設定車速増分量を予め決めておくことによって容易に算出される。
時刻t2後、運転者が再びアクセルペダルをフットレストとして利用し、クルーズ走行が続けられると、制御部103は、車速がこの速度V3に維持されるようにスロットル開度制御部101を制御するため、現在車速はV2から徐々に上昇し、やがて速度V3で略一定に保たれることになる。
その後、時刻t3において、運転者は、設定車速を下げるために、アクセルペダルをフットレスト化された領域から戻して、アクセルペダル開度がA1〜A2の間を維持するようにアクセルペダルを操作する。所望する設定車速減分量が大きいほど、長い時間保持する。
制御部103は、時刻t3から、アクセルペダル開度が減速検出領域内に維持されている間、時間長を計数し、運転者がアクセルペダルを再びフットレスト化された領域まで踏み込んでアクセルペダル開度がA2より大きくなった時刻t4にこの計数を停止し、時刻t3〜t4間の時間長の長さに応じて新たな設定車速V1をセットする。すなわち、車速V3からV1への減分量(V3−V1)は、時刻t3〜t4間の時間長に比例する。これは例えば単位時間当たりの設定車速減分量を予め決めておくことによって容易に算出される。
時刻t4後、運転者が再びアクセルペダルをフットレストとして利用し、クルーズ走行が続けられると、制御部103は、車速がこの速度V1に維持されるようにスロットル開度制御部101を制御するため、現在車速はV3から徐々に下降し、やがて速度V1で略一定に保たれることになる。
このように、本実施例によれば、アクセルペダル反力(踏力)を図2に示すように設定された加速検出領域F1〜F2内に維持した時間の長さに応じてクルーズ走行中の設定車速を上げることができると共に、アクセルペダル開度を図2に示すように設定された減速検出領域A1〜A2内に維持した時間の長さに応じて設定車速を下げることができる。これにより、設定車速変更に手動のスイッチ操作等が不要となり、アクセルペダルのみで変更が可能となるため、操作性が向上し、運転者の運転(操作)負荷が軽減される。
なお、本実施例において、運転者の意図しない設定車速の変更が行われることを防止するために、検出された加減速検出領域内での保持時間を一定時間フィルタリングしてもよい。また、応答遅れを防ぐために、単位時間ごとに区切り、段階的に設定車速を変更するようにしてもよい。
次いで、図5及び6を参照して、本発明の更に別の一実施例(実施例3)に係る車両用走行制御装置について説明する。本実施例に係る車両用走行制御装置の概略構成は、図1に示した上述の実施例1に係るものと同一であるため、図示及び説明を省略する。
本実施例が上記実施例1及び2と異なる点は、上記実施例1及び2では減速検出領域がフットレスト化された領域よりもアクセルペダル開度が小さい領域にアクセルペダル開度範囲として定義されたのに対し、本実施例では、主としてフットレスト化のためにアクセルペダル反力を急増させる領域内に、短時間内にアクセルペダル反力を急峻且つ連続的に増加及び減少させて運転者に触覚的に「クリック感」を与えるクリック点を設け、これを運転者の減速意思の検出に用いる点にある。
図5は、クルーズ走行時に制御部103がアクセルペダル反力制御部102に実現させるアクセルペダル開度に対するアクセルペダル反力特性を示す。図示するように、制御部103は、上記実施例1及び2と同様に、アクセルペダル開度が所定の大きさになったときに、アクセルペダル反力制御部102にアクセルペダル反力を急増させ、アクセルペダルを踏み込む運転者に触覚的に「壁感」を与え、アクセルペダルをフットレスト化する。
このフットレスト化時のアクセルペダル反力の増加の程度は、上記実施例1及び2と同様に、運転者がアクセルペダルを操作する足(通常は右足)を自然とアクセルペダル上に載置し、右足の自重だけをアクセルペダルに掛けた状態では踏み越えることができない程度の大きさに設定される。
このフットレスト化により、運転者は、クルーズ走行中、アクセルペダルの上に右足を楽に軽く載置しておくことができるため、運転負荷が軽減される。
本実施例においても、図5に示すように、上記のアクセルペダル反力を急増させる領域内に、フットレストとして機能する領域に加えて、運転者の加速意思を検出するための加速検出領域が設定される。本実施例では、一例として、フットレスト化された領域からアクセルペダルを更に踏み込んでこの加速検出領域に入ると、アクセルペダル反力がF1からF2へフットレスト化された領域内よりも急激な勾配で増加する。
本実施例においては、運転者がアクセルペダルをフットレスト領域から更に踏み込んでアクセルペダル反力がこの加速検出領域内に収まるアクセルペダル踏力を維持することが従来のレジューム・スイッチを押下することと等価に機能する。
すなわち、制御部103は、アクセルペダル反力(踏力)の大きさが加速検出領域内に保持された時間長に応じて、新たなクルーズ走行中の設定車速を決定する。
換言すれば、クルーズ走行中の運転者は、設定車速を上げたい場合、まず、従来の手動によるレジューム・スイッチの押下に代えて、アクセルペダルをフットレスト化された領域よりも更に踏み込んで加速検出領域内に保持する。所望する設定車速増分量が大きいほど、長い時間保持する。単位時間当たりの車速増分量を予め決定しておくことにより、保持時間の長さに応じた車速増分が算出され、現在の設定車速にこの算出された車速増分が加えられた値が新しい設定車速にセットされる。
また、本実施例においては、図5に示すように、上記のアクセルペダル反力を急増させる領域内のアクセルペダル反力F2〜F3の領域内に、運転者の減速意思を検出するための減速検出用クリック点を設ける。
本実施例においては、運転者がアクセルペダルを加速検出領域から更に踏み込んでこの減速検出用クリック点をクリックすることが従来のコースト・スイッチを押下することと等価に機能する。
すなわち、制御部103は、運転者がアクセルペダル開度を増減させてこのクリック点を通過しクリック感を触覚的に感知した回数に応じて、新たなクルーズ走行中の設定車速を決定する。
換言すれば、クルーズ走行中の運転者は、設定車速を下げたい場合、まず、従来の手動によるコースト・スイッチの押下に代えて、アクセルペダルを加速検出領域よりも更に踏み込んで減速検出用クリック点をクリックする。所望する設定車速減分量が大きいほど、数多くクリックする。1クリック当たりの車速減分量TAを予め決定しておくことにより、クリック回数nに応じた車速減分(=TA×n)が算出され、現在の設定車速からこの算出された車速減分が引かれた値が新しい設定車速にセットされる。
図6は、本実施例によるクルーズ走行中の設定車速の変更について、アクセルペダル反力及び車速の変化の一例を示す。
図6に示す一例では、まず、時刻t1までは運転者はアクセルペダルをフットレストとして利用しており、アクセルペダルの操作状態は、アクセルペダル反力がF1よりやや小さいフットレスト化された領域に維持されており、現在車速も設定車速であるV2を保っている。
時刻t1において、運転者は、設定車速を上げるために、アクセルペダルをフットレスト化された領域から更に踏み込み、アクセルペダル反力がF1〜F2の間を維持するアクセルペダル踏力を保持する。
制御部103は、時刻t1から、アクセルペダル反力が加速検出領域内に維持されている間、時間長を計数し、運転者がアクセルペダルを戻してアクセルペダル反力がF1より小さくなった時刻t2にこの計数を停止し、時刻t1〜t2の時間長を検出する。そしてこの時刻t1〜t2間の時間長の長さに応じて新たな設定車速V3をセットする。すなわち、車速V2からV3への増分量(V3−V2)は、時刻t1〜t2間の時間長に比例する。これは例えば単位時間当たりの設定車速増分量を予め決めておくことによって容易に算出される。
時刻t2後、運転者が再びアクセルペダルをフットレストとして利用し、クルーズ走行が続けられると、制御部103は、車速がこの速度V3に維持されるようにスロットル開度制御部101を制御するため、現在車速はV2から徐々に上昇し、やがて速度V3で略一定に保たれることになる。
その後、時刻t3において、運転者は、設定車速を下げるために、アクセルペダルをフットレスト化された領域から加速検出領域を越えて更に踏み込む。
アクセルペダル反力がF2〜F3の間に入ると、制御部103は、運転者によるアクセルペダル開度の増減操作を監視し、減速検出量クリック点をアクセルペダル開度が増加する方向に(すなわち、アクセルペダルを踏み込むことによって)越えた回数を計数する。制御部103は、運転者がアクセルペダルを再び戻し、アクセルペダル反力(踏力)がF2を下回った時刻t4においてクリック回数nの計数を停止し、設定車速をV1へ変更する。すなわち、車速V3からV1への減分量(V3−V1)は、時刻t3〜t4間のクリック回数nに比例する。これは例えば1クリック当たりの設定車速減分量TAを予め決めておくことによって容易に算出される。
時刻t4後、運転者が再びアクセルペダルをフットレストとして利用し、クルーズ走行が続けられると、制御部103は、車速がこの速度V1に維持されるようにスロットル開度制御部101を制御するため、現在車速はV3から徐々に下降し、やがて速度V1で略一定に保たれることになる。
このように、本実施例によれば、アクセルペダル反力(踏力)を図5に示すように設定された加速検出領域F1〜F2内に維持した時間の長さに応じてクルーズ走行中の設定車速を上げることができると共に、図5に示すように設けられた減速検出用クリック点をクリックした回数に応じて設定車速を下げることができる。これにより、設定車速変更に手動のスイッチ操作等が不要となり、アクセルペダルのみで変更が可能となるため、操作性が向上し、運転者の運転(操作)負荷が軽減される。
なお、本実施例においては、アクセルペダル反力(踏力)が加速検出領域であるF1〜F2の間にあるか、或いは、減速検出用クリック点が設けられたF2〜F3の間にあるかを明確に区別するために、加速踏力保持時間(図6)は一定値でフィルタリングすることが好ましい。
また、本実施例において、減速検出用クリック点は、アクセルペダル開度範囲で定義されてもよく、或いは、アクセルペダル反力(踏力)変化で定義されてもよい。換言すれば、減速検出用クリック点がクリックされたか否かは、アクセルペダル開度検出部104によって検出されるようにしてもよく、或いは、アクセルペダル踏力検出部105によって検出されるようにしてもよい。
次いで、図7及び8を参照して、本発明の更に別の一実施例(実施例4)に係る車両用走行制御装置について説明する。本実施例に係る車両用走行制御装置の概略構成は、図1に示した上述の実施例1に係るものと同一であるため、図示及び説明を省略する。
本実施例が上記実施例3と異なる点は、上記実施例3ではアクセルペダル反力(踏力)が加速検出領域内に保持された時間長に応じて設定車速増分が決定されたの対し、本実施例ではクリック点を用いて運転者の加速意思を検出する点、及び、上記実施例3では主としてフットレスト化のためにアクセルペダル反力を急増させる領域内に設けられた減速検出用クリック点をフットレスト化される領域よりもアクセルペダル開度が小さい領域内に設けた点、の2点にある。
図7は、クルーズ走行時に制御部103がアクセルペダル反力制御部102に実現させるアクセルペダル開度に対するアクセルペダル反力特性を示す。図示するように、制御部103は、上記実施例1〜3と同様に、アクセルペダル開度が所定の大きさになったときに、アクセルペダル反力制御部102にアクセルペダル反力を急増させ、アクセルペダルを踏み込む運転者に触覚的に「壁感」を与え、アクセルペダルをフットレスト化する。
このフットレスト化時のアクセルペダル反力の増加の程度は、上記実施例1〜3と同様に、運転者がアクセルペダルを操作する足(通常は右足)を自然とアクセルペダル上に載置し、右足の自重だけをアクセルペダルに掛けた状態では踏み越えることができない程度の大きさに設定される。
このフットレスト化により、運転者は、クルーズ走行中、アクセルペダルの上に右足を楽に軽く載置しておくことができるため、運転負荷が軽減される。
本実施例においては、図7に示すように、上記のアクセルペダル反力を急増させる領域内に、運転者の加速意思を検出するための加速検出用クリック点を設ける。
本実施例においては、運転者がアクセルペダルをフットレスト化された領域から更に踏み込んでこの加速検出用クリック点をクリックすることが従来のレジューム・スイッチを押下することと等価に機能する。
すなわち、制御部103は、運転者がアクセルペダル開度を増減させてこの加速検出用クリック点を通過しクリック感を触覚的に感知した回数n1に応じて、新たなクルーズ走行中の設定車速を決定する。
換言すれば、クルーズ走行中の運転者は、設定車速を上げたい場合、まず、従来の手動によるレジューム・スイッチの押下に代えて、アクセルペダルをフットレスト化された領域よりも更に踏み込んで加速検出用クリック点をクリックする。所望する設定車速増分量が大きいほど、数多くクリックする。1クリック当たりの車速増分量TA1を予め決定しておくことにより、クリック回数n1に応じた車速増分(=TA1×n1)が算出され、現在の設定車速にこの算出された車速増分が加えられた値が新しい設定車速にセットされる。
また、本実施例においては、図7に示すように、フットレスト化された領域よりアクセルペダル開度が小さい領域内に、運転者の減速意思を検出するための減速検出用クリック点を設ける。
本実施例においては、運転者がアクセルペダルをフットレスト化された領域から戻してこの減速検出用クリック点をクリックすることが従来のコースト・スイッチを押下することと等価に機能する。
すなわち、制御部103は、運転者がアクセルペダル開度を増減させてこのクリック点を通過しクリック感を触覚的に感知した回数に応じて、新たなクルーズ走行中の設定車速を決定する。
換言すれば、クルーズ走行中の運転者は、設定車速を下げたい場合、まず、従来の手動によるコースト・スイッチの押下に代えて、アクセルペダルをフットレスト化された領域よりアクセルペダル開度を小さくして減速検出用クリック点をクリックする。所望する設定車速減分量が大きいほど、数多くクリックする。1クリック当たりの車速減分量TA2を予め決定しておくことにより、クリック回数n2に応じた車速減分(=TA2×n2)が算出され、現在の設定車速からこの算出された車速減分が引かれた値が新しい設定車速にセットされる。
図8は、本実施例によるクルーズ走行中の設定車速の変更について、アクセルペダル反力及び車速の変化の一例を示す。
図8に示す一例では、まず、時刻t1までは運転者はアクセルペダルをフットレストとして利用しており、アクセルペダルの操作状態は、アクセルペダル反力がF1よりやや小さいフットレスト化された領域に維持されている。
時刻t1において、運転者は、設定車速を上げるために、アクセルペダルをフットレスト化された領域から更に踏み込む。
アクセルペダル開度がフットレスト化された領域を越えると、制御部103は、運転者によるアクセルペダル開度の増減操作を監視し、加速検出量クリック点をアクセルペダル開度が増加する方向に(すなわち、アクセルペダルを踏み込むことによって)越えた回数n1を計数する。制御部103は、運転者がアクセルペダルを再び戻し、アクセルペダルがフットレスト化された領域に戻った時刻t2においてクリック回数n1の計数を停止し、設定車速をV3へ変更する。すなわち、車速V2からV3への増分量(V3−V2)は、時刻t1〜t2間のクリック回数n1に比例する。これは例えば1クリック当たりの設定車速増分量TA1を予め決めておくことによって容易に算出される。
時刻t2後、運転者が再びアクセルペダルをフットレストとして利用し、クルーズ走行が続けられると、制御部103は、車速がこの速度V3に維持されるようにスロットル開度制御部101を制御するため、現在車速はV2から徐々に上昇し、やがて速度V3で略一定に保たれることになる。
その後、時刻t3において、運転者は、設定車速を下げるために、アクセルペダルを戻してアクセルペダル開度をフットレスト化された領域よりも小さくする。
アクセルペダル開度がフットレスト化された領域よりも小さくなると、制御部103は、運転者によるアクセルペダル開度の増減操作を監視し、減速検出量クリック点をアクセルペダル開度が増加する方向に(すなわち、アクセルペダルを踏み込むことによって)越えた回数n2を計数する。制御部103は、運転者がアクセルペダルに再び自重を掛け、フットレスト化された領域に戻った時刻t4においてクリック回数n2の計数を停止し、設定車速をV1へ変更する。すなわち、車速V3からV1への減分量(V3−V1)は、時刻t3〜t4間のクリック回数n2に比例する。これは例えば1クリック当たりの設定車速減分量TA2を予め決めておくことによって容易に算出される。
時刻t4後、運転者が再びアクセルペダルをフットレストとして利用し、クルーズ走行が続けられると、制御部103は、車速がこの速度V1に維持されるようにスロットル開度制御部101を制御するため、現在車速はV3から徐々に下降し、やがて速度V1で略一定に保たれることになる。
このように、本実施例によれば、図7に示すように設けられた加速検出用クリック点をクリックした回数に応じて設定車速を上げることができると共に、図7に示すように設けられた減速検出用クリック点をクリックした回数に応じて設定車速を下げることができる。これにより、設定車速変更に手動のスイッチ操作等が不要となり、アクセルペダルのみで変更が可能となるため、操作性が向上し、運転者の運転(操作)負荷が軽減される。
なお、本実施例において、クリック回数n1、n2は、運転者の意図しない設定車速の変更が行われることを防止するために、検出回数マイナス1回(n1−1、又は、n2−1)を設定車速増減分量の演算に用いるなどしてフィルタリングしてもよい。この場合、一定時間に連続して検出された回数でまとめて加減速分を計算するロジックが必要となる。
また、本実施例において、加減速検出用クリック点は、アクセルペダル開度範囲で定義されてもよく、或いは、アクセルペダル反力(踏力)変化で定義されてもよい。換言すれば、加減速検出用クリック点がクリックされたか否かは、アクセルペダル開度検出部104によって検出されるようにしてもよく、或いは、アクセルペダル踏力検出部105によって検出されるようにしてもよい。
本発明は、定速走行制御機能を備えた車両においてアクセルペダル反力の大きさを制御する車両用走行制御装置に利用できる。搭載される車両の外観、重量、サイズ、走行性能等は問わない。
本発明の実施例1〜4に係る車両用走行制御装置の概略構成図である。
本発明の実施例1及び2におけるアクセルペダル開度に対するアクセルペダル反力特性の一例を示すグラフである。
本発明の実施例1におけるアクセルペダル反力、アクセルペダル開度、及び車速の相対的変化の一例を示すグラフである。
本発明の実施例2におけるアクセルペダル反力、アクセルペダル開度、及び車速の相対的変化の一例を示すグラフである。
本発明の実施例3におけるアクセルペダル開度に対するアクセルペダル反力特性の一例を示すグラフである。
本発明の実施例3におけるアクセルペダル反力及び車速の相対的変化の一例を示すグラフである。
本発明の実施例4におけるアクセルペダル開度に対するアクセルペダル反力特性の一例を示すグラフである。
本発明の実施例4におけるアクセルペダル反力及び車速の相対的変化の一例を示すグラフである。
符号の説明
100 車両用走行制御装置
101 スロットル開度制御部
102 アクセルペダル反力制御部
103 制御部
104 アクセルペダル開度検出部
105 アクセルペダル踏力検出部