JP4386718B2 - 光学素子及びその製造方法、並びに液晶配向用基板及び液晶表示装置 - Google Patents

光学素子及びその製造方法、並びに液晶配向用基板及び液晶表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、複屈折率層を有する光学素子及びその製造方法、並びに前記の複屈折率層を有する液晶配向用基板及びこの液晶配向用基板を備えた液晶表示装置に関する。
液晶表示装置は、薄型化及び軽量化が容易で消費電力も小さいことから、またフリッカーの発生を抑え易いことから、フラットパネルディスプレイとして注目されており、パーソナルコンピュータの表示装置として、あるいはテレビ受信機として、市場が急速に拡大してきている。また、液晶表示装置の大型化も進んでいる。
種々の表示モードの液晶表示装置が開発されているが、液晶が複屈折性を有していることから、いずれの表示モードの液晶表示装置も基本的に視角依存性を有している。大型の液晶表示装置では小型の液晶表示装置に比べて実用上の視野角度が広くなるので、液晶表示装置の大型化が進むほど視野角依存性の向上に対する要望が高くなる。このため、液晶表示装置の開発と並行して、その視角特性を向上させるための種々の技術が開発されている。
例えば、液晶分子の配向を制御して広視角化を図った液晶表示装置として、画素内の液晶を少なくとも中間調表示時に配向方向が異なる複数の領域に分割するマルチドメイン方式の液晶表示装置や、液晶セル内に横電界(基板面と平行な電界)を形成して液晶分子の配向を制御するIPS(In−Plane Switching)方式の液晶表示装置が知られている。
また、液晶セルへの入射光又は液晶セルからの出射光を光学的に補償して広視角化を図るために、複屈折性を有する種々の光学素子が開発されている。この光学素子としては、従来より、光学補償用液晶セルや、光学的に1軸性又は2軸性の延伸樹脂フィルムからなる光学補償フィルムが用いられているが、近年では液晶材料により形成された複屈折率層を有する光学素子やその製造方法も開発されている。
例えば特許文献1には、フィルム面の法線方向に分子鎖を配向させた固有屈折率値が正のネマチック液晶ポリマーからなる視角補償フイルムが記載されている。また、特許文献2には、長鎖アルキル型デンドリマー誘導体を用いて垂直配向膜を形成し、この垂直配向膜上に重合性液晶化合物を塗工して、光学フィルムとして用いることができるホメオトロピック配向液晶層を製造するという方法が記載されている。
特許文献3には、垂直配向膜の設けられていない基板上に、液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニットと非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニットとを含有する側鎖型液晶ポリマーを塗工し、さらに当該液晶ポリマーを液晶状態においてホメオトロピック配向させた後、その配向状態を維持した状態で固定化して、光学フィルムとして用いることができるホメオトロピック配向液晶フィルムを製造するという方法が記載されている。
そして、特許文献4には、基板上にバインダー層及びアンカーコート層をこの順番で形成し、アンカーコート層に特定の側鎖型液晶ポリマーを塗工してホメオトロピック配向させた後にホメオトロピック配向状態を維持したまま固定化して、光学フィルムとして用いることができるホメオトロピック配向液晶フィルムを製造するという方法が記載されている。
特開平5−142531号公報 特開2002−174724号公報 特開2002−174725号公報 特開2003−121852号公報
しかしながら、特許文献1に記載された視角補償フィルムを得るためには、各々が垂直配向膜を有する2枚の基板を用いて空セルを作製し、この空セル内にネマチック液晶モノマーを充填して当該ネマチック液晶モノマーを垂直配向させてから光重合し、その後、セル内からネマチック液晶ポリマー(視角補償フィルム)を取り出さなければならい。このため、特許文献1に記載されている視角補償フィルムには、プロセス工程が長く、生産コストが増大するという問題がある。
特許文献2に記載された方法によりホメオトロピック配向液晶層を製造するためには、垂直配向膜を必ず設けなければならず、しかも、長鎖アルキル型デンドリマー誘導体という特殊で入手し難い材料を用いて垂直配向膜を形成しなければならない。このため、特許文献2に記載されているホメオトロピック配向液晶層の製造方法には、生産コストが増大し易いという問題がある。
特許文献3に記載された方法により得られるホメオトロピック配向液晶フィルムは側鎖型液晶ポリマーからなるので、その複屈折特性が熱による影響を受け易く、所望の複屈折特性を維持することができる温度範囲が比較的狭い。このため、例えば車載用の液晶表示装置のように比較的高い耐熱性が求められる液晶表示装置に用いることは困難である。特許文献3に記載されている方法により得られるホメオトロピック配向液晶フィルムには、このホメオトロピック配向液晶フィルムを使用可能な液晶表示装置の用途が限られるという問題がある。
また、側鎖型液晶ポリマーは、分子をホメオトロピック配向の状態で固定しても昇温に伴って流動性が増すので、下地層との密着性が低下したり、残留応力によって複屈折特性が著しく低下したりする。したがって、上記のホメオトロピック配向液晶フィルムを液晶表示装置に用いる場合には、一旦形成したホメオトロピック配向液晶フィルムが高温環境に曝されないように、液晶セルの製造後に液晶セルの外側に形成しなければならない。このため、特許文献3に記載された方法により得られるホメオトロピック配向液晶フィルムには、このホメオトロピック配向液晶フィルムを形成することができる部材の選択の自由度が低いという問題もある。
特許文献4に記載された方法により得られるホメオトロピック配向液晶フィルムは側鎖型液晶ポリマーからなるので、上述した特許文献3に記載されている方法により得られるホメオトロピック配向液晶フィルムと同様の問題を有している。また、特許文献4に記載されている方法によりホメオトロピック配向液晶フィルムを得るためには、基板上にバインダー層及びアンカー層をこの順番で形成しなければならい。このため、特許文献4に記載されたホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法には、生産コストが増大し易いという問題もある。
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、その第1の目的は、生産コストを抑えることが容易であると共に複屈折特性が熱による影響を受け難い光学素子を提供することにある。
本発明の第2の目的は、生産コストを抑えることが容易であると共に複屈折特性が熱による影響を受け難い光学素子の製造方法を提供することにある。
本発明の第3の目的は、視角特性又は光利用効率に優れると共に比較的高い耐熱性を有する液晶表示装置を低コストの下に得ることが可能な液晶配向用基板を提供することにある。
そして、本発明の第4の目的は、視角特性又は光利用効率に優れると共に比較的高い耐熱性を有するものを低コストの下に得ることが可能な液晶表示装置を提供することにある。
上記第1の目的を達成する本発明の光学素子は、光透過性を有する基材と、該基材上に形成された垂直配向膜と、該垂直配向膜上に形成された第1複屈折率層とを有する光学素子であって、前記垂直配向膜が長鎖アルキル基を有する界面活性剤により形成され、前記第1複屈折率層が、分子形状が棒状の重合性液晶がホメオトロピック配向の状態を保ったまま三次元架橋した構造を有し、前記基材が光吸収型カラーフィルタを有し、該光吸収型カラーフィルタ上に前記垂直配向膜が形成されていることを特徴とする。
本発明の光学素子では、コーティング液の塗布及び乾燥という簡単な方法により上記の垂直配向膜を形成することができる。同様に、コーティング組成物の塗布、配向処理、及び架橋処理を順次施すという比較簡単な方法により第1複屈折率層を形成することができる。特許文献1に記載されている視角補償フィルムは、垂直配向膜を有する空セルにネマチック液晶モノマーを充填して当該ネマチック液晶モノマーを垂直配向させるものであるが、本発明の光学素子では重合性液晶をホメオトロピック配向させるにあたって空セルを利用する必要がないので、その製造が容易である。更に、第1複屈折率層が三次元架橋した構造を有しているので、その複屈折特性が熱による影響を受け難い。したがって、本発明の光学素子によれば、生産コストを抑えることが容易であると共に複屈折特性が熱による影響を受け難い光学素子を提供することができる。
本発明の光学素子においては、(1)前記長鎖アルキル基の少なくとも一部がフッ素置換されていること、が好ましい。
上記(1)の発明によれば、第1複屈折率層を形成する際に上述の重合性液晶をホメオトロピック配向させることが容易になる。また、第1複屈折率層の膜厚についての選択の自由度が高まるので、リタデーションの異なる種々の光学素子を得易くなる。
本発明の光学素子においては、(2)前記第1複屈折率層における構造単位としての重合性液晶分子のチルト角が、前記第1複屈折率層の厚さ方向に実質的に均一であること、(3)更に、前記第1複屈折率層とは異なる複屈折特性を有する第2複屈折率層を備えていること、()前記()の光学素子における第2複屈折率層が、光学的に1軸性で光軸が面内にある複屈折率層であること、とすることができる。なお、本発明でいう「第1複屈折率層の厚さ方向」とは、第1複屈折率層表面の法線方向を意味する。
前述した第2の目的を達成する本発明の光学素子の製造方法は、上述した本発明の光学素子の製造方法であって、光吸収型カラーフィルタが形成された光透過性を有する基材と、長鎖アルキル基を有する界面活性剤によって前記基材上に形成された垂直配向膜とを有する部材を用意する準備工程と、前記垂直配向膜上に、分子形状が棒状の重合性液晶を含有したコーティング組成物の塗膜を形成し、該塗膜中の重合性液晶をホメオトロピック配向させる配向工程と、前記塗膜中の前記重合性液晶をホメオトロピック配向させたまま、該重合性液晶を三次元架橋させる架橋工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の光学素子の製造方法によれば、上記の準備工程、配向工程、及び架橋工程が比較簡単であるので、上述した本発明の光学素子を容易に製造することができる。
前述した第3の目的を達成する本発明の液晶配向用基板は、光透過性を有する基材と、該基材の片面上に形成された配向膜とを少なくとも備えた液晶配向用基板であって、前記基材と前記配向膜との間に、上述した本発明の光学素子における垂直配向膜及び第1複屈折率層がこの順番で積層され、前記基材が光吸収型カラーフィルタを有し、該光吸収型カラーフィルタ上に前記垂直配向膜と前記第1複屈折率層とがこの順番で積層されていることを特徴とする。
本発明の液晶配向用基板によれば、上記の第1複屈折率層を光学補償層や位相差層等、光の偏光状態を制御するための層として利用することができるので、視角特性又は光利用効率に優れると共に比較的高い耐熱性を有する液晶表示装置を低コストの下に得ることが可能になる。
前述した第4の目的を達成する本発明の液晶表示装置は、表示面側に位置する第1の液晶配向用基板と背面側に位置する第2の液晶配向用基板とを有する表示用液晶パネルを備えた液晶表示装置であって、前記第1の液晶配向用基板及び前記第2の液晶配向用基板のうちの少なくとも一方が、上述した本発明の液晶配向用基板であることを特徴とする。
本発明の液晶表示装置によれば、上述した本発明の液晶配向用基板を有しているので、視角特性又は光利用効率に優れると共に比較的高い耐熱性を有するものを低コストの下に得ることが可能になる。
本発明の光学素子、及び本発明の光学素子の製造方法によれば、生産コストを抑えることが容易であると共に複屈折特性が熱による影響を受け難い光学素子を提供することが可能になるので、種々の分野において光の偏光状態を制御するために用いられる特定の光学素子、すなわち光学的に1軸性で光軸が素子の厚さ方向にある光学素子を安価に提供することが容易になると共に、その信頼性を高めることが容易になる。
また、本発明の液晶配向用基板によれば、視角特性又は光利用効率に優れると共に比較的高い耐熱性を有する液晶表示装置を低コストの下に得ることが可能になるので、表示特性が高く、かつ種々の用途に用いることが可能な液晶表示装置を安価に提供することが容易になる。
そして、本発明の液晶表示装置によれば、視角特性又は光利用効率に優れると共に比較的高い耐熱性を有するものを低コストの下に得ることが可能になるので、表示特性が高く、かつ種々の用途に用いることが可能なものを安価に提供することが容易になる。
以下、本発明の光学素子及びその製造方法、並びに本発明の液晶配向用基板及び液晶表示装置それぞれの形態について、図面を適宜参照しつつ詳述する。
<光学素子(第1形態)>
図1(a)は、本発明の光学素子の基本的な断面構造の一例を示す概略図である。同図に示す光学素子30は、光透過性を有する基材10Aと、基材10A上に形成された垂直配向膜15と、垂直配向膜15上に形成された第1複屈折率層20とを有している。
基材10Aは、光学素子30の用途等に応じて、単層構造とすることもできるし、複数層構造とすることもできる。基材10Aを単層構造とする場合、この基材10Aは、ガラス等の無機材料や樹脂等の有機材料により形成することができる。基材10Aを複数層構造とする場合、その構造は、光学素子30の用途等に応じて適宜選定可能であり、この場合でも、垂直配向膜15の下地となる層はガラス等の無機材料や樹脂等の有機材料により形成することができる。基材10Aは、光学的に等方性のものであることが好ましいが、必要に応じて、局所的に遮光性領域を設けることもできる。基材10Aの光透過率は、光学素子30の用途等に応じて適宜選定可能である。
垂直配向膜15は、第1複屈折率層20の形成過程で重合性液晶をホメオトロピック配向させるためのものであり、この垂直配向膜15は、長鎖アルキル基を有する界面活性剤により形成されている。ここで、本発明でいう「長鎖アルキル基」とは、炭素数が3〜20のアルキル基を意味する。
上記の界面活性剤は、分子形状が棒状の重合性液晶をホメオトロピック配向させることが可能な膜を形成することができるものであればノニオン系、カチオン系、アニオン系等、どのような系の界面活性剤であってもよい。また、垂直配向膜15を形成している界面活性剤の種類数は1種類のみであってもよいし、複数種類であってもよい。ただし、重合性液晶をホメオトロピック配向させるためには、重合性液晶を一旦液晶相(ネマチック相)にまで加熱しなければならないので、界面活性剤はこのとき分解されない程度の耐熱性を有していることが必要である。また、有機溶剤に可溶のものであることが好ましい。
このような界面活性剤の具体例としては、(i)レシチン、(ii)オクタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、、(iii)ヘキサデシルアミン、(iv)アデカミン4DAC−85(旭電化工業社製の界面活性剤の商品名)、(v)ドライポン600E(日華化学社製の界面活性剤の商品名)、(vi)ドライポンZ−7(日華化学社製の界面活性剤の商品名)、及び、(vii)NKガード NDN−7E(日華化学社製の界面活性剤の商品名)等が挙げられる。
上述した界面活性剤により形成される垂直配向膜15は、撥水性又は撥油性の強い膜であることが好ましい。このような垂直配向膜15を形成するためには、上記の界面活性剤として、長鎖アルキル基の少なくとも一部がフッ素置換された界面活性剤を用いることが好ましい。
垂直配向膜15の撥水性又は撥油性が強いと、第1複屈折率層20を形成する際に重合性液晶をホメオトロピック配向させることが容易になる。また、第1複屈折率層20の膜厚を厚くした場合でも重合性液晶をホメオトロピック配向させることが可能になるので、第1複屈折率層20の膜厚についての選択の自由度が高まり、光学素子30のリタデーションを種々制御することが容易になる。
垂直配向膜15は、例えば、所望の界面活性剤をイソプロピルアルコール等の有機溶媒に溶解させてコーティング液を調製し、このコーティング液を所望箇所にスピンコーティング等の方法により塗布して塗膜を形成した後、この塗膜を乾燥(硬化)させることによって得られる。垂直配向膜15の膜厚は0.01〜1μm程度の範囲内で適宜選定可能である。
垂直配向膜15上に形成されている第1複屈折率層20は、分子形状が棒状の重合性液晶がホメオトロピック配向の状態を保ったまま三次元架橋した構造を有している。
図1(b)は、第1複屈折率層20の構造を模式的に示す断面図である。同図に示すように、第1複屈折率層20は、分子形状が棒状の重合性液晶がホメオトロピック配向の状態を保ったまま三次元架橋した構造を有している。同図中に参照符号22で示すものが、構造単位としての棒状の重合性液晶分子である。なお、図1(b)では、便宜上、各重合性液晶分子22における結合手の図示を省略している。
第1複屈折率層20における構造単位としての各重合性液晶分子22のチルト角は、光学素子30の厚さ方向のリタデーションが10nm程度以下であれば、第1複屈折率層20の厚さ方向に実質的に均一でなくてもよいが、第1複屈折率層20の厚さ方向に実質的に均一であることが好ましい。
ここで、本発明でいう「構造単位としての重合性液晶分子のチルト角が第1複屈折率層の厚さ方向に実質的に均一である」とは、第1複屈折率層20の厚さ方向のリタデーションが10nm程度以下であることを意味する。
第1複屈折率層20において重合性液晶がホメオトロピック配向の状態を保ったまま三次元架橋していることから、この第1複屈折率層20の厚さ方向をz軸にしてxyz直交座標を想定したとき、x軸方向の屈折率nxとy軸方向の屈折率nはほぼ同じ値になり、z軸方向の屈折率は、屈折率n、nよりも大きくなる。すなわち、第1複屈折率層20は、厚さ方向(z軸方向)に光軸を有する1軸性の複屈折率層であり、いわゆる「+Cプレート」として機能する。
第1複屈折率層20に0°よりも大きな入射角で入射した光には、リタデーションが生じる。リタデーションは、第1複屈折率層20における常光と異常光との光路差であるので、第1複屈折率層20の膜厚、重合性液晶分子22の複屈折Δn(常光の屈折率nと異常光の屈折率neとの差)、及び重合性液晶分子22の配向秩序度を適宜選定することにより、光学素子30のリタデーションを制御することができる。
第1複屈折率層20は、分子形状が棒状で分子内に2つ以上の重合性官能基を有する重合性液晶(以下、この重合性液晶を「多官能重合性液晶」という。)を用いて形成することが好ましい。また、この多官能重合性液晶における分子(重合性液晶分子)の複屈折Δnは、0.03〜0.30程度であることが好ましく、0.05〜0.20程度であることが更に好ましい。このような多官能重合性液晶の具体例としては、図2(a)〜図2(e)に示す式(I)〜(V)によって表される各多官能重合性液晶が挙げられる。なお、式(I)〜(V)中のnは、いずれも2〜6の数値を示す。
必要に応じて、分子形状が棒状で分子内に重合性官能基を1つのみ有する重合性液晶(以下、この重合性液晶を「単官能重合性液晶」という。)を上記の多官能重合性液晶と併用することができる。この場合、単官能重合性液晶の使用量は、重合性液晶の総量に対して1〜50モル%程度の範囲内とすることが好ましく、5〜20モル%程度の範囲内とすることが更に好ましい。単官能重合性液晶を併用することにより、重合性液晶全体の配向性を向上又は低下させることが可能になるので、重合性液晶全体の配向性を制御し易くなる。単官能重合性液晶の具体例としては、図2(f)〜図2(i)に示す式(i)〜(iv)によって表される各重合性液晶が挙げられる。なお、式(i)〜(iv)中のnは、いずれも2〜6の数値を示す。
第1複屈折率層20は、上述した重合性液晶を少なくとも含有したコーティング組成物の塗膜を形成し、この塗膜中の重合性液晶をホメオトロピック配向させた後に、この状態のまま重合性液晶を三次元架橋させることにより得られる。必要に応じて、上記のコーティング組成物には光重合開始剤、増感剤、界面活性剤、多官能モノマー等を含有させることができる。界面活性剤を含有させることにより、レベリング性を向上させることができる。また、多官能モノマーを含有させることにより、第1複屈折率層20の架橋性を向上させることができる。
第1複屈折率層20の架橋度は80程度以上とすることが好ましく、90程度以上とすることが更に好ましい。また、第1複屈折率層20の膜厚は、重合性液晶をホメオトロピック配向させることが可能な範囲内、具体的には厚さ方向のリタデーション(ただし、光学素子30としてのリタデーションを意味する。)が10nm程度以下となる範囲内で適宜選定することが好ましく、前記のリタデーション5nm程度以下となる範囲内で適宜選定することが更に好ましい。
上述した光学素子30においては、比較簡単に垂直配向膜15及び第1複屈折率層20を形成することができるので、その生産コストを抑え易い。また、第1複屈折率層20が三次元架橋した構造を有しているので、複屈折特性が熱による影響を受け難い。
この光学素子30は、例えば位相差素子、光学補償素子等、光の偏光状態を制御するための素子として用いることができ、しかも耐熱性が比較的高いので、例えば車内のように比較的高温になり易い環境下で使用される光学機器にも用いることができる。更に、耐熱性が比較的高いので、表示用液晶パネル中に設けることも可能である。
<光学素子(第2形態)>
図3(a)は、本発明の光学素子の基本的な断面構造の更に他の例を示す概略図である。同図に示す光学素子40は、例えば液晶配向用基板の構成部材として用いることができるものであり、光透過性を有する基材10B上に垂直配向膜15が形成され、この垂直配向膜15上に第1複屈折率層20が形成されている。この光学素子40は、基材10Bの構成に特徴を有するものであり、垂直配向膜15及び第1複屈折率層20それぞれの構成は、上述した第1形態の光学素子30での構成と同じである。図3(a)に示した構成部材のうちで図1(a)又は図1(b)に示した構成部材と共通するものについては、図1(a)又は図1(b)で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
図示の基材10Bは、光透過性基板1の片面に光吸収型カラーフィルタ3(以下、単に「カラーフィルタ3」という。)と遮光層(ブラックマトリクス)5とが形成されたものである。
光透過性基板1としては、例えばガラス等の透明無機材料により形成された板又はシートを用いることができる。また、透明樹脂により形成された板、シート、又はフィルムを光透過性基板1として用いることもできる。光透過性基板1としては、光学的に等方性のものが好ましい。光透過性基板1には、カラーフィルタ3及び遮光膜5の他に、所望の層を設けることもできる。
カラーフィルタ3は、赤色のマイクロカラーフィルタ3R、緑色のマイクロカラーフィルタ3G、及び青色のマイクロカラーフィルタ3Bを所定のパターンで配置した原色系のものであり、各色のマイクロカラーフィルタ3R、3G、3Bの配置形態により、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型等と称される種々のタイプのカラーフィルタが知られている。原色系のカラーフィルタに代えて、補色系のカラーフィルタを用いることも可能である。
このカラーフィルタ3は、例えば、各色のマイクロカラーフィルタ3R、3G、3B毎に、その材料となるカラーレジンの塗膜を例えばフォトリソグラフィー法で所定形状にパターニングすることによって、あるいは、各色のマイクロカラーフィルタ3R、3G、3B毎に、その材料となるカラーフィルタ用インキを所定形状に塗布することによって、形成することができる。
遮光層5は、表示用液晶パネルにおける画素間からの光の漏れ(漏れ光)や、アクティブマトリクス駆動方式の表示用液晶パネルにおけるアクティブ素子の光劣化等を防止するためのものであり、表示用液晶パネルにおいて個々の画素を平面視上画定する。各色のマイクロカラーフィルタ3R、3G、3Bは、それぞれ、遮光膜5により画定される所定の画素を平面視上覆うようにして配置される。
この遮光層5は、例えば、金属クロム薄膜やタングステン薄膜等、遮光性又は光吸収性を有する金属薄膜を所定形状にパターニングすることにより、形成することができる。黒色樹脂等の有機材料を所定形状に印刷することにより遮光層5を形成することも可能である。なお、カラーフィルタ3として単色のカラーフィルタを用いることも可能であり、この場合には遮光層5を省略することもできる。
本形態の光学素子40においては、上述のカラーフィルタ3及び遮光層5を覆うようにして垂直配向膜15が形成され、この垂直配向膜15上に第1複屈折率層20が形成されている。第1複屈折率層20は、光透過性基板1と平面視上重なる大きさ及び形状を有している。したがって、第1複屈折率層20は、表示用液晶パネルにおける表示領域よりも大形である。
このような構成を有する光学素子40を液晶配向用基板の構成部材にすると、第1複屈折率層20の耐熱性が比較的高いことから、第1複屈折率層20が液晶セル内に配置された表示用液晶パネルを得ることができ、液晶表示装置を作製する過程で第1複屈折率層20が損傷してしまうことを抑制し易くなる。第1複屈折率層20は、いわゆる「+Cプレート」として利用することができる。
また、光学素子40を液晶配向用基板の構成部材にすると、第1複屈折率層20の生産コストを抑えることが容易で、かつ、第1複屈折率層20の複屈折特性が熱による影響を受け難いので、表示特性が高く、かつ、種々の用途に用いることが可能な液晶表示装置を安価に提供することが容易になる。
<光学素子(第3形態)>
図3(b)は、本発明の光学素子の基本的な断面構造の更に他の例を示す概略図である。同図に示す光学素子45は、例えば液晶配向用基板の構成部材として用いることができるものであり、垂直配向膜及び第1複屈折率層が表示用液晶パネルにおける表示領域に対応する領域DRにのみ設けられているという点で、上述した第2形態の光学素子40(図3(a)参照)と異なる。他の構成は第2形態の光学素子30の構成と同様であるので、垂直配向膜に新たな参照符号「15A」を付すと共に第1複屈折率層に新たな参照符号「20A」を付し、他の構成部材については図3(a)で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
この光学素子45を液晶配向用基板の構成部材にした場合には、第2形態の光学素子40を液晶配向用基板の構成部材にした場合と同様の技術的効果を得ることができる。
<光学素子(第4形態)>
図3(c)は、本発明の光学素子の基本的な断面構造の更に他の例を示す概略図である。同図に示す光学素子50は、例えば液晶配向用基板の構成部材として用いることができるものであり、個々のマイクロカラーフィルタ3R、3G、3B上にのみ垂直配向膜15aが形成され、かつ、各垂直配向膜15a上に所定膜厚の第1複屈折率層20R、20G、又は20Bが形成されているという点で、前述した第2形態の光学素子40(図3(a)参照)と異なる。マイクロカラーフィルタ3R上に垂直配向膜15aを介して第1複屈折率層20Rが形成され、マイクロカラーフィルタ3G上に垂直配向膜15aを介して第1複屈折率層20Gが形成され、マイクロカラーフィルタ3B上に垂直配向膜15aを介して第1複屈折率層20Bが形成されている。他の構成は第2形態の光学素子40の構成と同様であるので、垂直配向膜15a、及び、第1複屈折率層20R、20G、20Bをそれぞれ除いた構成部材には図3(a)で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
光の屈折率は、同じ媒質に入射した場合でも、波長によって異なる。したがって、例えば図1(a)に示した第1複屈折率層20の複屈折Δnも、入射する光の波長によって異なる。各色のマイクロカラーフィルタ3R、3G、3B上にそれぞれが所定の膜厚を有する第1複屈折率層20R、20G、又は20Bを設けることにより、赤色、緑色、及び青色の各色の光のリタデーションを別個に制御することができる。したがって、本形態の光学素子50によれば、前述した第2形態の光学素子40又は第3形態の光学素子45に比べてより精密に、光の偏光状態を制御することができる。
なお、垂直配向膜15aを所定のパターンで配置するにあたっては、例えばフォトリソグラフィー法を利用することができる。同様に、各第1複屈折率層20R、20G、20Bをそれぞれ所定の箇所に形成するにあたっても、例えばフォトリソグラフィー法を利用することができる。
光学素子50を液晶配向用基板の構成部材にした場合には、第2形態の光学素子40を液晶配向用基板の構成部材にした場合と同様の技術的効果を得ることができる。更に、第2形態の光学素子40を液晶配向用基板の構成部材にした場合に比べて、より表示特性の高い液晶表示装置を得ることが容易になる。
<光学素子(第5形態)>
図4(a)は、本発明の光学素子の基本的な断面構造の更に他の例を示す概略図である。同図に示す光学素子60は、例えば液晶配向用基板の構成部材として用いることができるものであり、光透過性を有する基材10C上に垂直配向膜15が形成され、この垂直配向膜15上に第1複屈折率層20が形成されている。この光学素子60は、基材10Cの構成に特徴を有するものであり、垂直配向膜15及び第1複屈折率層20それぞれの構成は、前述した第1形態の光学素子30での構成と同じである。図4(a)に示した構成部材のうちで図1(a)又は図1(b)に示した構成部材と共通するものについては、図1(a)又は図1(b)で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
図示の基材10Cは、光透過性基板1の片面に水平配向膜6と第2複屈折率層7とがこの順番で積層されたものである。光透過性基板1の構成は、図3(a)に示した第2形態の光学素子40での光透過性基板1の構成と同様である。水平配向膜6は、液晶分子を水平配向させることが可能なものであり、例えば樹脂材料により形成された膜の表面にラビング処理や光配向処理を施すことによって得ることができる。第2複屈折率層7は、例えば重合性液晶をホモジニアス配向の状態で固定した高分子からなり、光学的に1軸性で光軸が面内にある複屈折率層(いわゆる「+Aプレート」)として機能する。第2複屈折率層7は、第1複屈折率層20と異なる複屈折特性を有している。
この光学素子60を含んだ液晶配向用基板は、第1複屈折率層20及び第2複屈折率層7を有しているので、検光子の遅相軸と45°又は135°の角度をなす方位角方向の視角特性を向上させることができる。
また、光学素子60を含んだ液晶配向用基板を用いて表示用液晶パネルを作製すると、第1複屈折率層20の生産コストを抑えることが容易で、かつ、第1複屈折率層20の複屈折特性が熱による影響を受け難いので、表示特性が高く、かつ、種々の用途に用いることが可能な液晶表示装置を安価に提供することが容易になる。
なお、第2複屈折率層7としては、延伸樹脂フィルム製の+Aプレートを用いることもできる。この場合、水平配向膜6は省略される。延伸樹脂フィルム製の+Aプレートは、粘着剤により光透過性基板1上に貼付される。
また、第2複屈折率層7上にカラーフィルタ及び遮光層を形成し、これらカラーフィルタ及び遮光層を覆うようにして垂直配向膜15を設けることも可能である。更には、光透過性基板1の片面に第2複屈折率層7を設け、この光透過性基板1における前記の片面とは反対側の面にカラーフィルタ、遮光層、垂直配向膜15、及び第1複屈折率層20を形成することも可能である。
<光学素子(第6形態)>
図4(b)は、本発明の光学素子の基本的な断面構造の更に他の例を示す概略図である。同図に示す光学素子70は、例えば液晶配向用基板の構成部材として用いることができるものであり、光透過性を有する基材10D上に垂直配向膜15が形成され、この垂直配向膜15上に第1複屈折率層20が形成されている。この光学素子70は、基材10Dの構成に特徴を有するものであり、垂直配向膜15及び第1複屈折率層20それぞれの構成は、前述した第1形態の光学素子30での構成と同じである。図4(b)に示した構成部材のうちで図1(a)又は図1(b)に示した構成部材と共通するものについては、図1(a)又は図1(b)で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
図示の基材10Dは、光透過性基板1の片面に直線偏光素子8と1/4波長板9とがこの順番で積層されたものである。光透過性基板1の構成は、図3(a)に示した第2形態の光学素子40での光透過性基板1の構成と同様である。直線偏光素子8は、表示用液晶パネルにおいて偏光子として機能するものであり、1/4波長板9は、円偏光を直線偏光に変換するための光学素子である。
この光学素子70を含んだ液晶配向用基板では、自然光から特定の円偏光を取り出すための第2複屈折率層を第1複屈折率層20上に設けることにより、偏光子として機能する直線偏光素子8への入射光量を増大させることができる。したがって、光学素子70を含んだ液晶配向用基板を用いて表示用液晶パネルを作製すると、光利用効率を高めることができる。この理由については、後述する。
また、光学素子70を含んだ液晶配向用基板を用いて表示用液晶パネルを作製すると、第1複屈折率層20の生産コストを抑えることが容易で、かつ、第1複屈折率層20の複屈折特性が熱による影響を受け難いので、光利用効率が高く、かつ、種々の用途に用いることが可能な液晶表示装置を安価に提供することが容易になる。
<光学素子(第7形態)>
図5は、本発明の光学素子の基本的な断面構造の更に他の例を示す概略図である。同図に示す光学素子80は、例えば液晶配向用基板の構成部材にすることができるものであり、第1複屈折率層20が保護層75によって覆われているという点で、図3(a)に示した第2形態の光学素子40と異なる。他の構成は第2形態の光学素子40の構成と同様であるので、光学素子80を構成する保護層75以外の各部材には図3(a)で用いた参照符号と同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
保護層75は、平坦性、耐薬品性、耐熱性、耐ITO(酸化インジウムスズ)性等を向上させるための層である。この保護層75は、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド等、種々の光硬化型樹脂又は熱硬化型樹脂、あるいは2液硬化型樹脂により形成することができる。保護層75は、その材料に応じて、スピンコート、印刷、フォトリソグラフィー等の方法により形成することができる。保護層75の膜厚は0.3〜5.0μm程度の範囲内で適宜選定可能であり、0.5〜3.0μm程度の範囲内で適宜選定することが好ましい。
本形態の光学素子80は、第2形態の光学素子40と同様の技術的効果を奏する他に、保護層75を有しているので、複屈折特性について信頼性が向上するという技術的効果も奏する。
なお、保護層100は、既に説明した第3形態〜第6形態の各光学素子45、50、60、70に設けることもできるし、後述する第8形態〜第11形態の各光学素子に設けることもできる。
<光学素子(第8形態〜第10形態)>
図6(a)は、本発明の光学素子の基本的な断面構造の更に他の例を示す概略図である。同図に示す第8形態の光学素子100は、例えば液晶配向用基板の構成部材にすることができるものであり、第1複屈折率層20上にカラーフィルタ及び遮光層(ブラックマトリクス)が形成されているという点で、図1(a)に示した第1形態の光学素子30と異なる。
他の構成は第1形態の光学素子30の構成と同様であるので、光学素子100の構成部材のうちでカラーフィルタ及び遮光層を共に除いた残りの構成部材については、図1(a)で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。また、カラーフィルタ及び遮光層それぞれの構成は、例えば図3(a)に示したカラーフィルタ3又は遮光層5の構成と同様にすることができるので、これらのカラーフィルタ及び遮光膜については、図3(a)で用いた参照符号の数値部分に「90」を加えた参照符号を付してその説明を省略する。本形態の光学素子100は、図3(a)に示した第2形態の光学素子40と同様の技術的効果を奏する。
図6(b)は、本発明の光学素子の基本的な断面構造の更に他の例を示す概略図である。同図に示す第9形態の光学素子110は、例えば液晶配向用基板の構成部材にすることができるものであり、垂直配向膜及び第1複屈折率層が表示用液晶パネルでの表示領域に対応する領域DRにのみ設けられているという点で、図6(a)に示した第8形態の光学素子100と異なる。
他の構成は第8形態の光学素子100の構成と同様であるので、垂直配向膜に新たな参照符号「15B」を付すと共に第1複屈折率層に新たな参照符号「20C」を付し、他の構成部材については図6(a)で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。本形態の光学素子110は、図3(b)に示した第3形態の光学素子45と同様の技術的効果を奏する。
図6(c)は、本発明の光学素子の基本的な断面構造の更に他の例を示す概略図である。同図に示す第10形態の光学素子150は、例えば液晶配向用基板の構成部材にすることができるものであり、光透過性を有する基材130の片面に多数の垂直配向膜135が形成され、個々の垂直配向膜135上に第1複屈折率層140R、140G、又は140Bが形成されている。また、個々の第1複屈折率層140R上に赤色のマクロカラーフィルタ143Rが形成され、個々の第1複屈折率層140G上に緑色のマクロカラーフィルタ143Gが形成され、個々の第1複屈折率層140B上に青色のマクロカラーフィルタ143Bが形成されている。これらのマイクロカラーフィルタ143R、143G、143Bにより、カラーフィルタ140が構成されている。
上記の基材130は、光透過性基板121と、その一表面に形成された遮光膜(ブラックマトリクス)125とを有している。光透過性基板121の構成は、図3(c)に示した第4形態の光学素子50における光透過性基板1の構成と同様であり、遮光膜125の構成は、第4形態の光学素子50における遮光膜5の構成と同様である。
上記の垂直配向膜135は、本形態の光学素子150を利用して表示用液晶パネルを作製したときに遮光膜125によって平面視上画定される画素に1つずつ対応するようにして配置されており、各垂直配向膜135の構成は、第4形態の光学素子50における垂直配向膜15aの構成と同様である。また、各第1複屈折率層140R、140G、140Bの構成は、第4形態の光学素子50における第1複屈折率層20R、20G、又は20Bの構成と同様である。本形態の光学素子150は、第4形態の光学素子50と同様の技術的効果を奏する。
<光学素子(第11形態)>
図7は、本発明の光学素子の基本的な断面構造の更に他の例を示す概略図である。同図に示す光学素子160は、例えば液晶配向用基板の構成部材にすることができるものであり、第1複屈折率層20上にカラーフィルタ93及び遮光層95が形成されているという点で、図4(a)に示した第5形態の光学素子60と異なる。カラーフィルタ93及び遮光層95を共に除いた構成は第5形態の光学素子60の構成と同様であるので、光学素子160の構成部材のうちでカラーフィルタ93及び遮光層95を共に除いた残りの構成部材には図4(a)で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。また、カラーフィルタ93及び遮光層95それぞれの構成は、図6(a)に示したカラーフィルタ93又は遮光層95の構成と同様であるので、これらの部材については図6(a)で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。本形態の光学素子160は、図4(a)に示した第5形態の光学素子60と同様の技術的効果を奏する。
<光学素子(第12形態)>
図8は、本発明の光学素子の基本的な断面構造の更に他の例を示す概略図である。同図に示す光学素子180は、例えば液晶配向用基板の構成部材にすることができるものであり、第1複屈折率層20上に第2複屈折率層170が形成されているという点で、図4(b)に示した第6形態の光学素子70と異なる。第2複屈折率層170を除いた構成は第6形態の光学素子70の構成と同様であるので、光学素子180の構成部材のうちで第2複屈折率層170以外の構成部材には図4(b)で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
第2複屈折率層170は、自然光から所定の円偏光を取り出すための複屈折率層であり、例えば、架橋によって分子配列が固定されたコレステリック液晶により形成されている。第2複屈折率層170を得るにあたっては、ネマチック液晶にカイラル剤を添加して得られるカイラルネマチック液晶を用いることが好ましく、このとき、カイラル剤としては重合性のカイラル剤を用いることが好ましい。第2複屈折率層170は、第1複屈折率層20と異なる複屈折特性を有している。
本形態の光学素子180を含んだ液晶配向用基板は、直線偏光素子8、1/4波長板9、垂直配向膜15、第1複屈折率層20、及び第2複屈折率層170が外側となる向きで配置されて、表示用液晶パネルを構成する。この液晶配向用基板は、透過型液晶表示装置における表示用液晶パネルの背面側の基板として用いられる。
上記の液晶配向用基板を用いて表示用液晶パネルを作製すると、以下の理由から、バックライトの照度が低くても光利用効率を高めて明るい画像表示を行うことができる。
すなわち、バックライトからの放射光の利用効率を高めるためには、1/4波長板9に入射する円偏光の光量を増大させることが望ましく、そのためには、上記の放射光から所定の円偏光(左円偏光及び右円偏光のいずれか一方)を第2複屈折率層170により取り出すことが望まれる。このとき、他方の円偏光は第2複屈折率層170に入射できずに反射されるが、例えばバックライトの背後にミラーを配置すれば、第2複屈折率層170で反射された上記他方の円偏光がミラーで反射したときにその位相が反転して、上記一方の円偏光となる。したがって、上記の放射光の多くを上記一方の円偏光として1/4波長板9に入射させることが可能である。
ただし、第2複屈折率層170への入射角が大きな自然光は、第2複屈折率層170により楕円偏光に変換されてしまう。この楕円偏光には、左円偏光及び右円偏光の両方が含まれおり、そのうちの上記他方の円偏光に相当するものは、1/4波長板9で直線偏光に変換されずに楕円偏光となってしまったり、直線偏光素子8によって吸収されてしまったりする。第2複屈折率層170と1/4波長板9との間に第1複屈折率層20を設けることにより、第2複屈折率層128によって楕円偏光に変換された光を円偏光に変換することができる。その結果として、1/4波長板9に入射する円偏光の光量が増大するので、バックライトの照度が低くても光利用効率を高めて明るい画像表示を行うことが可能になる。
また、本形態の光学素子180を含んだ液晶配向用基板を作製し、この液晶配向用基板を用いて表示用液晶パネルを作製すると、第1複屈折率層20の生産コストを抑えることが容易で、かつ、第1複屈折率層20の複屈折特性が熱による影響を受け難いので、表示特性が高く、かつ、種々の用途に用いることが可能な液晶表示装置を安価に提供することが容易になる。
なお、直線偏光素子8から第2複屈折率層170にかけての積層順を図示の順番と逆にすることにより、直線偏光素子8、1/4波長板9、垂直配向膜15、第1複屈折率層20、及び第2複屈折率層170を表示用液晶パネルの内側に配置することも可能になる。
また、光透過性基板1上に垂直配向膜15、第1複屈折率層20、1/4波長板9、及び直線偏光素子8をこの順番で積層すれば、反射型液晶表示装置における表示用液晶パネルの表示面側の基板として用いられる液晶配向用基板に利用可能な光学素子を得ることができる。同様に、光透過性基板1の片面に垂直配向膜15及び第1複屈折率層20をこの順番で積層し、光透過性基板1における他方の面に1/4波長板9及び直線偏光素子8をこの順番で積層しても、反射型液晶表示装置における表示用液晶パネルの表示面側の基板として用いられる液晶配向用基板に利用可能な光学素子を得ることができる。これらの光学素子を液晶配向用基板の一部として含んだ反射型液晶表示装置では、リフレクターに入射する光の偏光状態を真の円偏光に近づけることができるので、コントラストの高い表示を行うことが容易になる。
<光学素子の製造方法>
本発明の光学素子の製造方法は、上述した本発明の光学素子の製造方法である。この方法は、前述したように、準備工程、配向工程、及び架橋工程を含んでいる。以下、これらの工程について詳述する。
(1)準備工程;
準備工程では、光透過性を有する基材と、長鎖アルキル基を有する界面活性剤によって前記の基材上に形成された垂直配向膜とを有する部材を用意する。基材の構造は単層構造であってもよいし、複数層構造であってもよい。基材を単層構造とする場合、この基材は、ガラス等の無機材料や樹脂等の有機材料により形成することができる。基材を複数層構造とする場合、その構造は、製造しようとする光学素子の用途等に応じて適宜選定可能であり、この場合でも、垂直配向膜の下地となる層はガラス等の無機材料や樹脂等の有機材料により形成することができる。基材は、光学的に等方性のものであることが好ましいが、必要に応じて、局所的に遮光性領域等を設けることもできる。基材の光透過率は、製造しようとする光学素子の用途等に応じて適宜選定可能である。
基材上に形成された垂直配向膜は、後述する配向工程で重合性液晶をホメオトロピック配向させるためのものである。この垂直配向膜を形成する上記の界面活性剤については、本発明の光学素子に係る第1形態の説明の中で既に述べたので、ここでは省略する。
垂直配向膜は、例えば、所望の界面活性剤をイソプロピルアルコール等の有機溶媒に溶解させてコーティング液を調製し、このコーティング液を所望箇所にスピンコーティング等の方法により塗布して塗膜を形成した後、この塗膜を乾燥(硬化)させることによって得られる。垂直配向膜の膜厚があまりに薄いと、重合性液晶をホメオトロピック配向させることが困難になる。一方、垂直配向膜の膜厚があまりに厚いと、この垂直配向膜が着色して光学素子の光透過率が大きく低下するようになる。垂直配向膜の膜厚は0.01〜1μm程度の範囲内で適宜選定することが好ましい。
準備工程で用意する上記の部材は、自ら作製してもよいし、他人又は他社が製造したものを購入してもよい。
(2)配向工程;
配向工程では、上述した垂直配向膜上に、分子形状が棒状の重合性液晶を含有したコーティング組成物の塗膜を形成し、この塗膜中の重合性液晶をホメオトロピック配向させる。
上記のコーティング組成物を調製するにあたっては、多官能重合性液晶と有機溶媒とを必須成分として用い、他に、単官能重合性液晶、光重合開始剤、増感剤等を任意成分として用いる。多官能重合性液晶、単官能重合性液晶、光重合開始剤、及び増感剤は、それぞれ、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。多官能重合性液晶及び単官能重合性液晶については、本発明の光学素子に係る第1形態の説明の中で既に述べたので、ここでは省略する。
有機溶媒は、重合性液晶を溶解させることができるものであればよく、その種類は適宜選択可能である。また、任意成分である光重合開始剤としては、例えば、ベンジル(もしくはビベンゾイル)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジルー2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタンー1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオサントン等を挙げることができる。増感剤は、本発明の目的が損なわれない範囲で、適宜添加することができる。
コーティング組成物における重合性液晶の濃度は、コーティング方法、形成しようとする塗膜の膜厚、有機溶媒の種類等に応じて異なるが、10〜50重量%の範囲内程度することが好ましい。また、光重合開始剤を用いる場合、コーティング組成物における光重合開始剤の濃度は、重合性液晶の配向を大きく損なわない範囲で適宜選定可能であり、例えば0.01〜10重量%程度の範囲内で選定される。光重合開始剤の濃度は、0.1〜7重量%程度の範囲内で選定することが好ましく、0.5〜5重量%程度の範囲内で選定することがより好ましい。増感剤を用いる場合、コーティング組成物における増感剤の濃度は、重合性液晶の配向を大きく損なわない範囲で適宜選定可能であり、例えば0.01〜1重量%程度の範囲内で選定される。
上述したコーティング組成物による塗膜は、このコーティング組成物をスピンコートや各種の印刷法(例えばダイコート、バーコート、スライドコート、ロールコート等)等の方法で基材上に塗布することにより、形成することができる。基材表面の撥水性又は撥油性が高い場合には、重合性液晶をホメオトロピック配向させることが可能な範囲内で、UV洗浄やプラズマ処理により予め表面(塗布面)の濡れ性を高めてもよい。
上述のようにして形成した塗膜中の重合性液晶をホメオトロピック配向させるにあたっては、塗膜中の重合性液晶が液晶相となる温度以上であって等方相(液体相)となる温度未満の温度(以下、この温度を「第1架橋温度」という。)にまで塗膜を加熱する。塗膜中の重合性液晶の相転移温度は、任意成分を添加したときには、重合性液晶単独のときの相転移温度とは異なることがある。重合性液晶が液晶相になると、垂直配向膜の作用により重合性液晶がホメオトロピック配向する。
また、例えば塗膜を減圧乾燥すると、その後、重合性液晶が本来液晶相を示す温度よりも低温にまで塗膜を冷却しても、重合性液晶が過冷却状態となってホメオトロピック配向が保持される。
塗膜の膜厚が厚いほど、塗膜の上面側において重合性液晶がホメオトロピック配向し難くなる。塗膜の膜厚は、垂直配向膜が重合性液晶に及ぼす配向規制力(重合性液晶をホメオトロピック配向させる作用の強さを意味する。)や、製造しようとする光学素子に求められる複屈折特性等に応じて、適宜選定される。
(3)架橋工程;
架橋工程では、塗膜中の重合性液晶をホメオトロピック配向させたまま、この重合性液晶を三次元架橋させる。この際、重合性液晶のホメオトロピック配向が乱れないようにするためには、不活性ガス雰囲気中で塗膜を第1架橋温度にまで加熱しながら、重合性液晶の感光波長の光を塗膜に照射することが好ましい。あるいは、空気雰囲気中で塗膜を第1架橋温度にまで加熱しながら重合性液晶の感光波長の光を塗膜に照射して架橋反応を部分的に進行させた後、重合性液晶が結晶相となる温度にまで塗膜を空気雰囲気中で冷却し、この状態で上記感光波長の光を塗膜に照射して架橋反応を実質的に完了させることが好ましい。なお、上記「重合性液晶が結晶相となる温度」とは、架橋させる前の塗膜において重合性液晶が結晶相となる温度を意味する。
重合性液晶の感光波長は、重合性液晶の種類により異なるので、照射すべき光の波長は、塗膜中に含有されている重合性液晶の種類に応じて適宜選定される。塗膜に照射する光は単色光である必要性はなく、重合性液晶の感光波長の光を含んだ波長域の光を照射することができる。
この架橋工程まで行うことにより、光透過性を有する基材と、長鎖アルキル基を有する界面活性剤により前記の基材上に形成された垂直配向膜と、この垂直配向膜上に形成された第1複屈折率層であって、分子形状が棒状の重合性液晶がホメオトロピック配向の状態を保ったまま三次元架橋した構造を有する第1複屈折率層とを有する光学素子を得ることができる。
<液晶配向用基板(第1形態)>
図9(a)は、本発明の液晶配向用基板の基本的な断面構造の一例を示す概略図である。同図に示す液晶配向用基板210は、図3(a)に示した第2形態の光学素子40における第1複屈折率層20上に平坦化膜203を形成し、その上に水平配向膜205を設けた構造を有するものであるので、液晶配向用基板210の構成部材のうちで図3(a)に既に示した構成部材については図3(a)で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
この液晶配向用基板210における平坦化膜203は、例えば、図5に示した第7形態の光学素子80における保護層75と同様にして形成することができる。水平配向膜205は、液晶配向用基板210を用いて表示用液晶パネルを作製したときに、液晶セル中の液晶分子を水平配向させるためのものであり、例えば有機材料により形成された膜の表面(上面)にラビング処理や光配向処理等を施すことによって得ることができる。
このような構造を有する液晶配向用基板210は、例えばIPS方式の液晶表示装置における表示用液晶パネルの表示面側の基板として用いることができる。液晶配向用基板210が第1複屈折率層20を有しているので、例えば基材1の外表面(表示用液晶パネルを構成したときの外表面を意味する。)上に光学的に1軸性で光軸が面内にある位相差板又は位相差フィルム(いわゆる「+Aプレート」。)を設けることにより、表示用液晶パネルを構成する検光子(図示せず。)の遅相軸と45°又は135°の角度をなす方位角方向の視角特性を向上させることができる。
既に説明したように、第1複屈折率層20は、その生産コストを抑え易い。また、第1複屈折率層20の耐熱性は比較的高い。したがって、液晶配向用基板210を用いることにより、視角特性に優れると共に比較的高い耐熱性を有する液晶表示装置を低コストの下に得ることが可能になる。また、表示特性が高く、かつ、種々の用途に用いることが可能な液晶表示装置を安価に提供することが容易になる。
なお、平坦化膜203は、省略することも可能である。また、光学素子40に代えて、図3(b)に示した第3形態の光学素子45、又は図3(c)に示した第4形態の光学素子50を用いることもできる。
<液晶配向用基板(第2形態)>
図9(b)は、本発明の液晶配向用基板の基本的な断面構造の他の例を示す概略図である。同図に示す液晶配向用基板230は、図7に示した第11形態の光学素子160上に平坦化膜223を設け、その上に更に水平配向膜225を設けた構造を有するものであるので、液晶配向用基板230の構成部材のうちで図7に既に示した構成部材については図7で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
図示の液晶配向用基板230においては、カラーフィルタ93及び遮光層95を覆うようにして平坦化膜223が設けられている。この平坦化膜223は、例えば、図9(a)に示した第1形態の液晶配向用基板210における平坦化膜203と同様にして形成することができる。また、液晶配向用基板230における水平配向膜225も、第1形態の液晶配向用基板210における水平配向膜205と同様にして形成することができる。
本形態の液晶配向用基板230は、第1形態の液晶配向用基板210と同様に、例えばIPS方式の液晶表示装置における表示用液晶パネルの表示面側の基板として用いることができる。液晶配向用基板230が第2複屈折率層7を有しているので、この液晶配向用基板230の外表面に+Aプレートを別途設けなくても、表示用液晶パネルを構成する検光子(図示せず。)の遅相軸と45°又は135°の角度をなす方位角方向の視角特性を向上させることができる。
なお、平坦化膜223は、省略することも可能である。また、光学素子160に代えて、図6(a)に示した第8形態の光学素子100、図6(b)に示した第9形態の光学素子110、又は図6(c)に示した第10形態の光学素子150を用いることもできる。
<液晶配向用基板(第3形態)>
図10(a)は、本発明の液晶配向用基板の基本的な断面構造の更に他の例を示す概略図である。同図に示す液晶配向用基板260は、図8に示した第12形態の光学素子180における光透過性基板1上に、走査線、層間絶縁膜241、マトリクス状に配置された多数の画素電極243aによって構成された透明電極パターン243、信号線245、保護膜(パッシベーション膜)247、スイッチング回路部、平坦化膜249、及び配向膜251を設けた構造を有するものである。液晶配向用基板260の構成部材のうちで図8に既に示した構成部材については、図8で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
走査線は、図10(a)に現れていないが、マトリクス状に配置された多数の画素電極243aの1つの行に1本ずつ対応するようにして配置されて、前記の行の長手方向に延びている。各走査線は、例えばタンタル(Ta)、チタン(Ti)等の金属により形成することができる。これらの走査線は、層間絶縁膜241により覆われている。
層間絶縁膜241は、例えばシリコン酸化物等の電気絶縁性物質により形成されて、走査線と信号線245とを電気的に分離していると共に、画素電極243aと走査線とを電気的に分離している。
各画素電極243aは、表示用液晶パネルにおける1つの画素に1つずつ対応するようにして、例えば酸化インジウムスズ(ITO)等の透明電極材料により形成されている。個々の画素電極243aの平面視上の形状は、例えば、四角形、四角形の1つの角部を矩形に切り欠いてできる六角形等の多角形とすることができる。
信号線245は、マトリクス状に配置された多数の画素電極243aの1つの列に1本ずつ対応するようにして配置されて、前記の列の長手方向に延びている。各信号線245は、例えばタンタル(Ta)、チタン(Ti)等の金属により形成することができる。これらの信号線245は、保護膜247により覆われている。
保護膜247は、例えばシリコン窒化物等により形成されて、その下の部材を保護している。また、信号線245と画素電極243aとを電気的に分離している。
スイッチング回路部は、図10(a)に現れていないが、1つの画素電極243aに1つずつ対応して配置されて、このスイッチング回路部が対応している画素電極243aと走査線及び信号線245とを電気的に接続している。個々のスイッチング回路部は、対応する走査線から信号の供給を受けて、信号線245と画素電極243aとの導通を制御する。各スイッチング回路部は、例えば1個のアクティブ素子を用いて構成することができる。前記のアクティブ素子としては、例えば薄膜トランジスタ等の3端子型素子やMIM(Metal Insulator Metal)ダイオード等の2端子型素子が用いられる。
平坦化膜249は、保護膜247及び透明電極パターン243を覆うようにして形成されて、配向膜251を形成するための平坦面を提供している。この平坦化膜249は、例えば図9(a)に示した第1形態の液晶配向用基板210における平坦化膜203と同様にして形成することができる。
配向膜251は、液晶配向用基板260を用いて表示用液晶パネルを作製したときに、液晶セル中の液晶分子を水平配向させるための水平配向膜、又は、前記の液晶分子を垂直配向させるための垂直配向膜である。配向膜251として水平配向膜及び垂直配向膜のどちらを用いるかは、液晶配向用基板260を用いて作製しようとする表示用液晶パネルの動作モード等に応じて適宜選択可能である。
このような構造を有する液晶配向用基板260は、例えばアクティブマトリクス駆動方式の透過型液晶表示装置における表示用液晶パネルの背面側の基板として用いることができる。液晶配向用基板260に第1複屈折率層20及び第2複屈折率層170が形成されているので、この液晶配向用基板260を用いれば光利用効率の高い透過型液晶表示装置を得ることができる。また、液晶配向用基板260が第1複屈折率層20を有しているので、この液晶配向用基板260を用いれば比較的高い耐熱性を有する透過型液晶表示装置を低コストの下に得ることが可能になると共に、表示特性が高く、かつ、種々の用途に用いることが可能な透過型液晶表示装置を安価に提供することが容易になる。なお、平坦化膜249は省略することも可能である。
<液晶配向用基板(第4形態)>
図10(b)は、本発明の液晶配向用基板の基本的な断面構造の更に他の例を示す概略図である。同図に示す液晶配向用基板280は、図8に示した第12形態の光学素子180における光透過性基板1上に、カラーフィルタ273及び遮光層(ブラックマトリクス)275を設け、これらカラーフィルタ273及び遮光層275を覆うようにして平坦化膜276を形成し、この平坦化膜276上に透明電極パターン277及び配向膜278をこの順番で積層した構造を有するものである。これらのカラーフィルタ273、遮光層275、平坦化膜276、透明電極パターン277、及び配向膜278は、いずれも、光透過性基板1において直線偏光素子8が設けられている面とは反対の側の面に設けられている。
液晶配向用基板280の構成部材のうちで図8に既に示した構成部材については、図8で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。また、カラーフィルタ273及び遮光層275は、それぞれ、図3(a)に示した第2形態の光学素子40におけるカラーフィルタ3又は遮光層5と同様にして構成することができるので、これらのカラーフィルタ273及び遮光層275については、図3(a)で用いた参照符号の数値部分に「270」を加えた参照符号を付してその説明を省略する。
平坦化膜276は、カラーフィルタ273及び遮光層275を覆うようにして形成されて、透明電極パターン277を形成するための平坦面を提供している。この平坦化膜276は、例えば図9(a)に示した第1形態の液晶配向用基板210における平坦化膜203と同様にして形成することができる。
透明電極パターン277は、液晶配向用基板280を用いた表示用液晶パネルにおいて液晶分子の配向を制御するための電圧が印加されるものであり、例えばITO等の透明電極材料により形成されて、表示用液晶パネルにおける全ての画素に共通の電極(コモン電極)として用いられる。
配向膜278は、液晶配向用基板280を用いて表示用液晶パネルを作製したときに、液晶セル中の液晶分子を水平配向させるための水平配向膜、又は、前記の液晶分子を垂直配向させるための垂直配向膜である。配向膜278として水平配向膜及び垂直配向膜のどちらを用いるかは、液晶配向用基板280を用いて作製しようとする表示用液晶パネルの動作モード等に応じて適宜選択可能である。
このような構造を有する液晶配向用基板280は、例えば反射型液晶表示装置における表示用液晶パネルの表示面側の基板として用いることができる。液晶配向用基板280に第1複屈折率層20及び第2複屈折率層170が形成されているので、この液晶配向用基板280を用いれば光利用効率の高い反射型液晶表示装置を得ることができる。また、液晶配向用基板280が第1複屈折率層20を有しているので、この液晶配向用基板280を用いれば比較的高い耐熱性を有する反射型液晶表示装置を低コストの下に得ることが可能になると共に、表示特性が高く、かつ、種々の用途に用いることが可能な反射型液晶表示装置を安価に提供することが容易になる。なお、平坦化膜276は省略することも可能である。
<液晶表示装置(第1形態)>
図11は、本発明の液晶表示装置の一例を概略的に示す部分断面図である。図示の液晶表示装置400は、表示用液晶パネル300と、この表示用液晶パネル300の背後に設置されたバックライト部380と、図示を省略した外部回路とを備えたIPS方式の透過型液晶表示装置である。
表示用液晶パネル300は、図9(a)に示した第1形態の液晶配向用基板210を表示面側の基板(第1の液晶配向用基板)として備え、背面側の基板(第2の液晶配向用基板)として液晶配向用基板350を備えたものである。
上記の液晶配向基板350は、光透過性基板305、光透過性基板305の片面に所定のパターンで配置された多数の対向電極310、これらの対向電極310を覆う層間絶縁膜315、表示用液晶パネル300における1つの画素に1つずつ対応するようにして層間絶縁膜315上に形成された画素電極320、層間絶縁膜315及び各画素電極320を覆う保護層325、及び保護層325上に形成された水平配向膜330を有している。
対向電極310は、表示用液晶パネル300における1つの画素列に2つずつ対応するようにして、対応する画素列の両側に分かれて配置されている。これらの対向電極310は、例えばタンタル(Ta)、チタン(Ti)等の金属により形成することができる。各画素電極320は、例えばITO等の透明電極材料により形成されて、平面視上、対応する画素のほぼ中央部を縦断する。保護層325は、例えば図9(a)に示した第1形態の液晶配向用基板210における平坦化膜203と同様にして形成することができる。水平配向膜330は、例えば、第1形態の液晶配向用基板210における水平配向膜205と同様にして形成することができる。
なお、図11には現れていないが、液晶配向用基板350には、表示用液晶パネル300における1つの画素行に1つずつ対応するようにして配置されたゲート配線(走査線)、ドレイン配線、及び保持容量配線、並びに、1つの画素に1つずつ対応するようにして配置されたスイッチング回路部等も形成されている。個々のスイッチング回路部は、複数のスイッチング素子(例えば薄膜トランジスタ、MIMダイオード等)により構成される。
上述の構造を有する液晶配向基板350と前述した液晶配向用基板210とは、液晶配向用基板210における水平配向膜205と液晶配向用基板350における水平配向膜330とが互いに対向するようにして、間隔をあけた状態でシール材(熱硬化性樹脂)360により貼り合わされている。これらの液晶配向用基板210、350同士の間隔(セルギャップ)は、図示を省略したスペーサ(例えば球状スペーサ又は柱状スペーサ)により一定に保たれており、両者の間の空隙には液晶材料が充填されて液晶層370を形成している。
また、液晶配向用基板210の外表面には、光学的に1軸性で光軸が面内にある位相差フィルム(いわゆる「+Aプレート」)372が貼付されており、その上には検光子374が貼付されている。一方、液晶配向用基板350の外表面には、偏光子376が貼付されている。検光子374と偏光子376とは、互いに直交ニコルの関係となるように配置することもできるし、互いに平行ニコルの関係となるように配置することもできる。バックライト部380は、偏光子376の背後に配置されている。
このような構成を有する液晶表示装置400では、液晶配向用基板210に第1複屈折率層20が形成され、かつ、液晶配向用基板210の外表面に位相差フィルム372が貼付されているので、視角特性を容易に向上させることができる。また、第1複屈折率層20の耐熱性が比較的高いことから、液晶表示装置400は、室内用の液晶表示装置として用いることができることは勿論、比較的高温環境に曝される車載用の液晶表示装置としても用いることができる。また、第1複屈折率層20の生産コストを抑え易いことから、液晶表示装置400を安価に提供することも可能である。なお、液晶配向用基板210に代えて、図9(b)に示した第2形態の液晶配向用基板230を用いることも可能である。
<液晶表示装置(第2形態)>
図12は、本発明の液晶表示装置の他の例を概略的に示す部分断面図である。図示の液晶表示装置600は、表示用液晶パネル500と、この表示用液晶パネル500の背後に設置されたバックライト部580と、図示を省略した外部回路とを備えたアクティブマトリクス駆動方式の透過型液晶表示装置である。
表示用液晶パネル500は、背面側の基板(第2の液晶配向用基板)として図10(a)に示した第3形態の液晶配向用基板260を備え、表示面側の基板(第1の液晶配向用基板)として液晶配向用基板550を備えたものである。液晶配向基板550は、図10(b)に示した第4形態の液晶配向用基板280から直線偏光素子8、1/4波長板9、垂直配向膜15、第1複屈折率層20、及び第2複屈折率層170をそれぞれ除いた構成を有している。
液晶配向用基板550と液晶配向基板260とは、液晶配向用基板550における配向膜278と液晶配向用基板260における配向膜251とが互いに対向するようにして、間隔をあけた状態でシール材(熱硬化性樹脂)560により貼り合わされている。配向膜278としては、水平配向膜及び垂直配向膜のいずれも用いることができるが、配向膜278として水平配向膜を設けた場合には配向膜251としても水平配向膜が用いられ、配向膜278として垂直配向膜を設けた場合には配向膜251としても垂直配向膜が用いられる。
液晶配向用基板550、260同士の間隔(セルギャップ)は、図示を省略したスペーサ(例えば球状スペーサ又は柱状スペーサ)により一定に保たれており、両者の間の空隙には液晶材料が充填されて液晶層570を形成している。また、液晶配向用基板550の外表面には検光子575が貼付されている。この検光子575と、液晶配向用基板260における直線偏光素子8とは、互いに直交ニコルの関係となるように配置することもできるし、互いに平行ニコルの関係となるように配置することもできる。バックライト部580は、液晶配向用基板260の背後に配置されている。
このような構成を有する液晶表示装置600では、液晶配向用基板260に第1複屈折率層20と第2複屈折率層170とが形成されているので、バックライト部580からの放射光の利用効率を容易に高めることができる。また、第1複屈折率層20の耐熱性が比較的高いことから、液晶表示装置600は、室内用の液晶表示装置として用いることができることは勿論、比較的高温環境に曝される車載用の液晶表示装置としても用いることができる。更に、第1複屈折率層20の生産コストを抑え易いことから、液晶表示装置600を安価に提供することも可能である。
参考例1;光学素子の製造>
(準備工程)
まず、イソプロピルアルコールにオクタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドを1重量%の割合で溶解させて、垂直配向膜形成用のコーティング液を調製した。次いで、光透過性を有する基材として厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板(NHテクノグラス社製のNA35)を用意し、このガラス基板の片面に上記のコーティング液を塗布して塗膜を形成してから、150℃で10分間乾燥した。これにより、オクタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドからなる厚さ0.1μmの垂直配向膜が上記のガラス基板の片面に形成されて、光透過性を有する基材(ガラス基板)と、この基材上に形成された垂直配向膜とを有する部材が得られた。前記の垂直配向膜は、分子形状が棒状の重合性液晶を垂直配向させることが可能なものである。
(配向工程)
まず、図2(d)に示した式(IV)で表される重合性液晶25重量部と、光重合開始剤1重量部とをクロロベンゼン74重量部に溶解させて、第1複屈折率層形成用のコーティング組成物を調製した。このとき、光重合開始剤としてはチバスペシャリティケミカルズ社製のIrg907(商品名)を用いた。
次に、準備工程で形成した垂直配向膜上に上記第1複屈折率層形成用のコーティング組成物をスピンコートして塗膜を形成し、この塗膜を120℃で3分間加熱した。塗膜は、加熱されるにつれて白濁状態から透明状態へと変化した。このことから、塗膜中の重合性液晶が加熱により結晶相から液晶相に相転移したことが確認された。
(架橋工程)
重合性液晶が相転移した塗膜を120℃に加熱したまま、この塗膜に窒素ガス雰囲気中で紫外線を照射して、塗膜中の重合性液晶を三次元架橋させた。このとき、紫外線の照射は、超高圧水銀灯を光源として備えた紫外線照射装置を用いて、照射強度30mW/cm、照射時間1分の条件の下に行った。
上記の架橋工程まで行うことにより、前記の式(IV)で表される重合性液晶が三次元架橋した高分子からなる第1複屈折率層が形成され、目的とする光学素子が得られた。この光学素子における第1複屈折率層の膜厚を触針式段差計により測定したところ、約1.5μmであった。
(評価)
得られた光学素子の厚さ方向のリタデーションをRETS(大塚電子社製)を用いて測定(測定波長は550nm)したところ、ほぼ0nmであった。光学素子を水平に配置したときの厚さ方向を基準とし、この方向から任意の方向に光学素子をあおると、リタデーションが現れた。これらのことから、第1複屈折率層においては、重合性液晶がホメオトロピック配向していることが確認された。
また、光学素子を200℃に加熱しても、第1複屈折率層の複屈折特性は殆ど変化しなかった。このことから、第1複屈折率層は、重合性液晶が三次元架橋して構造を有しているものと判断される。
参考例2;光学素子の製造>
(準備工程)
垂直配向膜を形成するにあたって、オクタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドに代えてNKガード NDN−7E(日華化学社製の界面活性剤の商品名)を用い、かつ、この界面活性剤をガラス基板上に直接塗布した。他は参考例1での準備工程と同様にして、光透過性を有する基材(ガラス基板)と、この基材上に形成された垂直配向膜とを有する部材を得た。前記の垂直配向膜は、分子形状が棒状の重合性液晶を垂直配向させることが可能なものであり、その膜厚は0.1μmである。
(配向工程及び架橋工程)
光学素子の構成部材として上記の部材を用いた以外は参考例1での配向工程と同じ条件の下に配向工程を行い、更に、参考例1での架橋工程と同じ条件の下に架橋工程を行って、前記の式(IV)で表される重合性液晶が三次元架橋した高分子からなる第1複屈折率層を上記の垂直配向膜上に形成した。ただし、第1複屈折率層の膜厚は、触針式段差計による測定値で、約1.0μmとした。架橋工程まで行うことにより、目的とする光学素子が得られた。
(評価)
得られた光学素子の厚さ方向のリタデーションを参考例1と同じ条件の下に測定したところ、ほぼ0nm(厳密には4nm)であった。また、光学素子を水平に配置したときの厚さ方向を基準とし、この方向から任意の方向に光学素子をあおると、リタデーションが現れた。これらのことから、第1複屈折率層においては、重合性液晶がホメオトロピック配向していることが確認された。
また、光学素子を200℃に加熱しても、第1複屈折率層の複屈折特性は殆ど変化しなかった。このことから、第1複屈折率層は、重合性液晶が三次元架橋して構造を有しているものと判断される。
参考例3;光学素子の製造>
(準備工程及び配向工程)
垂直配向膜形成用のコーティング液を調製するにあたって、オクタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドに代えてNKガード NDN−7E(日華化学社製の界面活性剤の商品名)とアデカミン4DAC−85(旭電化工業社製の界面活性剤の商品名)との1:1(質量比)混合物を用いた。他は参考例1での準備工程と同様にして、光透過性を有する基材(ガラス基板)と、この基材上に形成された垂直配向膜とを有する部材を得た。前記の垂直配向膜は、分子形状が棒状の重合性液晶を垂直配向させることが可能なものであり、その膜厚は0.2μmである。
(配向工程及び架橋工程)
光学素子の構成部材として上記の部材を用いた以外は参考例1での配向工程と同じ条件の下に配向工程を行い、更に、参考例1での架橋工程と同じ条件の下に架橋工程を行って、前記の式(IV)で表される重合性液晶が三次元架橋した高分子からなる第1複屈折率層を上記の垂直配向膜上に形成した。ただし、第1複屈折率層の膜厚は、触針式段差計による測定値で、約3.0μmとした。架橋工程まで行うことにより、目的とする光学素子が得られた。
(評価)
参考例1で用いた測定装置により、上記の光学素子の厚さ方向のリタデーションを測定波長589nmの条件の下に測定したところ、10nmであった。また、光学素子を水平に配置したときの厚さ方向を基準とし、この方向から任意の方向に光学素子をあおると、更に大きなリタデーションが現れた。これらのことから、第1複屈折率層においては、構造単位としての各重合性液晶分子のチルト角が第1複屈折率層の厚さ方向に実質的に均一ではないことが判る。
垂直配向膜は、重合性液晶をホメオトロピック配向させることが可能なものではあるが、第1複屈折率層の膜厚が厚いことから、この第1複屈折率層の上面近傍においては垂直配向膜の配向規制力が弱く、構造単位としての各重合性液晶分子のチルト角が比較的不規則になっているものと推察される。
この光学素子を200℃に加熱しても、第1複屈折率層の複屈折特性は殆ど変化しなかった。このことから、第1複屈折率層は、重合性液晶が三次元架橋した構造を有しているものと判断される。
参考例4;光学素子の製造>
(準備工程及び配向工程)
参考例1での準備工程と同じ条件の下に準備工程を行って、光透過性を有する基材(ガラス基板)と、この基材上に形成された垂直配向膜とを有する部材を得た。また、参考例1での配向工程と同じ条件の下に配向工程を行って、上記の垂直配向膜上に第1複屈折率層形成用のコーティング組成物の塗膜を形成し、更に、この塗膜中の重合性液晶を結晶相から液晶相に相転移させた。ただし、塗膜の膜厚は、架橋工程後に約2.0μmとなる厚さとした。
(架橋工程)
まず、重合性液晶が相転移した塗膜を120℃に加熱したまま、参考例1の架橋工程で用いた紫外線照射装置と同じ装置を用いて空気雰囲気中で前記の塗膜に紫外線を照射した。このときの紫外線の照射条件は、照射強度30mW/cm、照射時間2秒とした。これにより、塗膜中の重合性液晶の架橋反応が部分的に進行した。
次に、塗膜が形成されたガラス基板を一旦室温に戻してから、上記の紫外線照射装置を用いて空気雰囲気中で前記の塗膜に再び紫外線を照射した。このときの紫外線の照射条件は、照射強度30mW/cm、照射時間1分とした。なお、ガラス基板を室温に戻しても、塗膜中の重合性液晶の相転移は認められなかった。
このようにして紫外線照射を2段階に分けて行うことにより、塗膜中の重合性液晶が空気雰囲気中においてもホメオトロピック配向の状態を保ったまま三次元架橋して、前記の式(IV)で表される重合性液晶が三次元架橋した高分子からなる第1複屈折率層が形成され、目的とする光学素子が得られた。この光学素子における第1複屈折率層の膜厚を触針式段差計により測定したところ、約2.0μmであった。
(評価)
得られた光学素子の厚さ方向のリタデーションを参考例1と同じ条件の下に測定したところ、ほぼ0nm(厳密には5nm)であった。また、光学素子を水平に配置したときの厚さ方向を基準とし、この方向から任意の方向に光学素子をあおると、リタデーションが現れた。これらのことから、第1複屈折率層においては、重合性液晶がホメオトロピック配向していることが確認された。
この光学素子を200℃に加熱しても、第1複屈折率層の複屈折特性は殆ど変化しなかった。このことから、第1複屈折率層は、重合性液晶が三次元架橋した構造を有しているものと判断される。
<比較例1>
参考例1の準備工程で用いたオクタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドに代えて、長鎖アルキル基を有していない界面活性剤(旭電化社製のCOA)を用いた以外は参考例1と同じ条件の下に準備工程、配向工程、及び架橋工程を行って、光学素子を作製した。
この光学素子の厚さ方向のリタデーションを参考例1と同じ条件の下に測定したところ、5nmであった。また、光学素子を水平に配置したときの厚さ方向を基準とし、この方向から任意の方向に光学素子をあおっても、リタデーションが殆ど大きくならなかった。これらのことから、重合性液晶を用いて形成された層では、重合性液晶がホメオトロピック配向していないことが確認された。
図1(a)は、本発明の光学素子の基本的な断面構造の一例を示す概略図であり、図1(b)は、図1(a)に示した第1複屈折率層の構造を模式的に示す断面図である。 図2(a)〜図2(f)は、それぞれ、多官能重合性液晶を表す式であり、図2(g)〜図2(j)は、それぞれ、単官能重合性液晶を表す式である。 図3(a)〜図3(b)は、それぞれ、本発明の光学素子の基本的な断面構造の他の例を示す概略図である。 図4(a)及び図4(b)は、それぞれ、本発明の光学素子の基本的な断面構造の更に他の例を示す概略図である。 本発明の光学素子の基本的な断面構造の更に他の例を示す概略図である。 図6(a)〜図6(b)は、それぞれ、本発明の光学素子の基本的な断面構造の更に他の例を示す概略図である。 本発明の光学素子の基本的な断面構造の更に他の例を示す概略図である。 本発明の光学素子の基本的な断面構造の更に他の例を示す概略図である。 図9(a)は、本発明の液晶配向用基板の基本的な断面構造の一例を示す概略図であり、図9(b)は、本発明の液晶配向用基板の基本的な断面構造の他の例を示す概略図である。 図10(a)及び図10(b)は、それぞれ、本発明の液晶配向用基板の基本的な断面構造の更に他の例を示す概略図である。 本発明の液晶表示装置の一例を概略的に示す部分断面図である。 本発明の液晶表示装置の他の例を概略的に示す部分断面図である。
符号の説明
3、93、143 光吸収型カラーフィルタ
7、170 第2複屈折率層
10A、10B、10C、10D、130 光透過性を有する基材
15、15A、15a、15B 垂直配向膜
20、20A、20R、20G、20B、20C 第1複屈折率層
22 構造単位としての重合性液晶分子
30、40、45、50、60、70、80 光学素子
100、110、150、160、180 光学素子
205、225 水平配向膜
210、230、260、280 液晶配向用基板
251 配向膜
210、550 第1の液晶配向用基板
260、350 第2の液晶配向用基板
400、600 液晶表示装置

Claims (8)

  1. 光透過性を有する基材と、該基材上に形成された垂直配向膜と、該垂直配向膜上に形成された第1複屈折率層とを有する光学素子であって、
    前記垂直配向膜が長鎖アルキル基を有する界面活性剤により形成され、前記第1複屈折率層が、分子形状が棒状の重合性液晶がホメオトロピック配向の状態を保ったまま三次元架橋した構造を有し、
    前記基材が光吸収型カラーフィルタを有し、該光吸収型カラーフィルタ上に前記垂直配向膜が形成されていることを特徴とする光学素子。
  2. 前記長鎖アルキル基の少なくとも一部がフッ素置換されていることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
  3. 前記第1複屈折率層における構造単位としての重合性液晶分子のチルト角が、前記第1複屈折率層の厚さ方向に実質的に均一であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子。
  4. 更に、前記第1複屈折率層とは異なる複屈折特性を有する第2複屈折率層を備えていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の光学素子。
  5. 前記第2複屈折率層が、光学的に1軸性で光軸が面内にある複屈折率層であることを特徴とする請求項に記載の光学素子。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載された光学素子の製造方法であって、
    光吸収型カラーフィルタが形成された光透過性を有する基材と、長鎖アルキル基を有する界面活性剤によって前記基材上に形成された垂直配向膜とを有する部材を用意する準備工程と、
    前記垂直配向膜上に、分子形状が棒状の重合性液晶を含有したコーティング組成物の塗膜を形成し、該塗膜中の重合性液晶をホメオトロピック配向させる配向工程と、
    前記塗膜中の前記重合性液晶をホメオトロピック配向させたまま、該重合性液晶を三次元架橋させる架橋工程と、
    を含むことを特徴とする光学素子の製造方法。
  7. 光透過性を有する基材と、該基材の片面上に形成された配向膜とを少なくとも備えた液晶配向用基板であって、
    前記基材と前記配向膜との間に、請求項1〜のいずれか1項に記載された垂直配向膜及び第1複屈折率層がこの順番で積層され
    前記基材が光吸収型カラーフィルタを有し、該光吸収型カラーフィルタ上に前記垂直配向膜と前記第1複屈折率層とがこの順番で積層されていることを特徴とする液晶配向用基板。
  8. 表示面側に位置する第1の液晶配向用基板と背面側に位置する第2の液晶配向用基板とを有する表示用液晶パネルを備えた液晶表示装置であって、
    前記第1の液晶配向用基板及び前記第2の液晶配向用基板のうちの少なくとも一方が、請求項に記載の液晶配向用基板であることを特徴とする液晶表示装置。
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