JP4384748B2 - 光学活性2−ピペラジンカルボン酸の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学分割による光学活性2−ピペラジンカルボン酸の製造法に関する。光学活性2−ピペラジンカルボン酸は医薬品合成の原料として有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
従来、光学分割による光学活性2−ピペラジンカルボン酸の製造法としては、分割剤として光学活性カンファースルホン酸を用いる方法が知られている[Helvetica Chimica Acta,43,888(1960)]。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来法においては、ラセミ体の2−ピペラジンカルボン酸及び分割剤の光学活性カンファースルホン酸を溶媒に溶解し、得られた溶液を活性炭で処理して脱色した後、光学活性−2−ピペラジンカルボン酸及び光学活性カンファースルホン酸からなるジアステレオマー塩の結晶を析出させている。即ち、ラセミ体の2−ピペラジンカルボン酸及び光学活性カンファースルホン酸を溶媒に溶解すると溶液が着色し、当該溶液からそのまま結晶を析出させると着色したジアステレオマー塩が得られ、最終的に得られる光学活性2−ピペラジンカルボン酸が着色する恐れがあるので、これを防止するために上記のように活性炭で脱色処理を行っているのである。
【0004】
したがって本発明は、(RS)−2−ピペラジンカルボン酸の光学分割による光学活性2−ピペラジンカルボン酸の製造において、脱色処理を行わなくても、着色がない光学活性2−ピペラジンカルボン酸を製造できる方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するために(RS)−2−ピペラジンカルボン酸の光学分割について鋭意検討した。その結果、分割剤として光学活性N−ベンゼンスルホニル−フェニルアラニンを用いると、当該分割剤及び(RS)−2−ピペラジンカルボン酸を溶媒に溶解した溶液が着色せず、脱色処理を行わなくても、着色がなくしかも光学純度の高い光学活性2−ピペラジンカルボン酸が得られることを見出し本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち本発明は、(RS)−2−ピペラジンカルボン酸の光学分割により光学活性2−ピペラジンカルボン酸を製造するにあたり、分割剤として光学活性N−ベンゼンスルホニル−L−フェニルアラニンを用いることを特徴とする光学活性2−ピペラジンカルボン酸の製造法に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本明細書において(RS)−2−ピペラジンカルボン酸とは、(R)−2−ピペラジンカルボン酸と(S)−2−ピペラジンカルボン酸の両者を含むものを意味し、本発明には両者を等量含むもの(即ちラセミ体)のほか、(R)体と(S)体のいずれか一方を多く含むものを用いることができる。(RS)−2−ピペラジンカルボン酸は、公知の方法によって製造することができる。一例を挙げると、Helvetica Chimica Acta,43,888(1960)に記載の方法のようにして、2−ピラジンカルボン酸を、触媒の存在下、水素と反応させることによって容易に製造できる。
【0008】
本発明においては、分割剤として光学活性N−ベンゼンスルホニル−フェニルアラニン(以下、光学活性BS−PhAと略す。)を用いる。光学活性BS−PhAは、光学活性フェニルアラニンから公知の方法で容易に製造することができる。一例を挙げると、Journal of Medical Chemistry,38,4263(1995)に記載の方法のようにして、光学活性フェニルアラニンをベンゼンスルホニルクロリドと反応させれば、光学活性BS−PhAが容易に製造できる。光学活性フェニルアラニンとしてL−フェニルアラニンを使用すればベンゼンスルホニル−L−フェニルアラニン(BS−L−PhAと略す。)が得られ、D−フェニルアラニンを使用すればベンゼンスルホニル−D−フェニルアラニン(BS−D−PhAと略す。)が得られる。
【0009】
本発明の光学分割には、通常溶媒を用いる。溶媒としては、水、水及び水と混合する有機溶媒の混合溶媒が挙げられ、好ましくは水又は水とアルコール(特にメタノール)の混合溶媒である。
【0010】
本発明を実施するには、例えば、溶媒に(RS)−2−ピペラジンカルボン酸及び光学活性BS−PhAを加え、撹拌下、80℃程度に加熱して溶解し、次に冷却して光学活性2−ピペラジンカルボン酸と光学活性BS−PhAとにより形成されたジアステレオマー塩のうちの難溶性塩の結晶を析出させる。析出した難溶性塩の結晶を濾別し、得られた難溶性塩を塩分解すれば、分割剤である光学活性BS−PhAから遊離した光学活性2−ピペラジンカルボン酸を得ることができる。
【0011】
本発明の光学分割における光学活性BS−PhAの使用量は、(RS)−2−ピペラジンカルボン酸1モルに対して0.3〜3.0モルが適当である。尚、光学活性BS−PhAは実質的に水に不溶であるが、(RS)−2−ピペラジンカルボン酸1モルに対する光学活性BS−PhAの使用量が0.5〜1.2モルの範囲では、(RS)−2−ピペラジンカルボン酸及び光学活性BS−PhAを水に溶解した溶液が得られる。また分割剤である光学活性BS−PhAを水に溶解させるため、アンモニアやアミンのような弱塩基性物質を加え(RS)−2−ピペラジンカルボン酸1モルに対して光学活性BS−PhAを1.2モルより多く使用して実施することができる。
【0012】
本発明で難溶性塩として析出するジアステレオマー塩は、光学活性2−ピペラジンカルボン酸1分子及び光学活性BS−PhA2分子からなる塩である。そして分割剤として用いた光学活性BS−PhAがBS−L−PhAの場合は、これと難溶性の塩を生成するのは(R)−2−ピペラジンカルボン酸である。
【0013】
上記のようにして得られる難溶性ジアステレオマー塩を塩分解すれば、分割剤である光学活性BS−PhAから光学活性2−ピペラジンカルボン酸を遊離させることができる。塩分解は、一般に公知の方法で行えばよく、例えば、難溶性ジアステレオマー塩をアルコール等の溶媒に溶解した溶液に、難溶性ジアステレオマー塩中の光学活性2−ピペラジンカルボン酸1モルに対して2モルの塩酸を加えると、光学活性2−ピペラジンカルボン酸2塩酸塩が析出する。次いで析出物を濾過し、濾滓をメタノールで洗浄後、乾燥すれば光学活性2−ピペラジンカルボン酸2塩酸塩の白色結晶が単離できる。一方、上記光学活性2−ピペラジンカルボン酸2塩酸塩を濾別した濾液からは、これを濃縮乾固すれば残渣として分割剤である光学活性BS−PhAを回収することができる。
【0014】
【実施例】
次に実施例を示し本発明を説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
尚、以下の実施例において光学純度は下記条件で測定した。(R)−2−ピペラジンカルボン酸の保持時間は6.1分であり、(S)−2−ピペラジンカルボン酸の保持時間は10.8分であった。
【0015】
高速液体クロマトグラフィー分析条件
カラム:SUMICHIRAL OA−5000L(内径4.6mm×150mm)
溶離液:酢酸銅1.0ミリモル及び酢酸アンモニウム100ミリモルを水1リットルに溶解した溶液
流速:1.0ml/分
検出:UV 254nm
【0016】
実施例1
ラセミ体である(RS)−2−ピペラジンカルボン酸4.26g(32.75ミリモル)及びBS−L−PhA5.0g(16.38ミリモル)を水30gに加え、撹拌下、80℃に加熱して溶解した。このとき溶液に着色は見られなかった。得られた溶液を徐々に30℃まで冷却して結晶を析出させ、析出した結晶を濾別し、少量の水で洗浄した後、乾燥してジアステレオマー塩3.73g[4.91ミリモル、収率15.0%:(RS)−2−ピペラジンカルボン酸基準]を得た。得られたジアステレオマー塩をメタノール19gに加え、撹拌下、60℃まで加熱して溶解した後、36%塩酸0.99g(9.82ミリモル)を加え、同温度に30分間保った。次いで25℃まで冷却して同温度に30分間保ち、析出した結晶を濾別して少量のメタノールで洗浄した後、乾燥して光学純度98.2%の(R)−2−ピペラジンカルボン酸2塩酸塩の白色結晶0.91g[4.47ミリモル、ジアステレオマー塩からの収率91.0%]を得た。また(R)−2−ピペラジンカルボン酸2塩酸塩を濾別した濾液を濃縮乾固して、分割剤のBS−L−PhA3.04g[9.94ミリモル、ジアステレオマー塩からの回収率98.0%]を得た。
【0017】
実施例2
ラセミ体である(RS)−2−ピペラジンカルボン酸2.13g(16.37ミリモル)及びBS−L−PhA5.0g(16.38ミリモル)を水32とメタノール32gの混合液に加え、撹拌下80℃まで加熱して溶解した。このとき溶液に着色は見られなかった。得られた溶液を徐々に30℃まで冷却し、次いで析出したジアステレオマー塩を濾別して少量の水で洗浄し、乾燥してジアステレオマー塩の白色結晶2.61g(3.33ミリモル)を得た。得られたジアステレオマー塩は、光学純度87.6%の(R)−2−ピペラジンカルボン酸・2(BS−L−PhA)であった。
Claims (1)
- (RS)−2−ピペラジンカルボン酸の光学分割により光学活性2−ピペラジンカルボン酸を製造するにあたり、分割剤として光学活性N−ベンゼンスルホニル−L−フェニルアラニンを用いることを特徴とする光学活性2−ピペラジンカルボン酸の製造法。
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