JP4380874B2 - アルカリセルラーゼ遺伝子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗剤用酵素として有用なアルカリセルラーゼをコードする遺伝子に関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースは植物細胞壁の主成分で、衣料、紙、建築材料等に有効利用されるバイオマスの代表的存在である。セルロースはグルコースが直鎖状にβ−1,4結合した巨大分子であるため、分解によって燃料物質やより高付加価値の代謝物質に変換が可能である。そのためセルロースを分解する酵素として、セルラーゼ及びその反応産物の有効利用に関する研究が多岐に行われている。これらの研究対象となるセルラーゼは、一般に、中酸性に最適反応pHを有し、結晶性セルロースを良好に分解できる真菌類や嫌気性細菌由来の酵素が中心となっている。
【0003】
一方、掘越(特公昭50−28515号公報、Horikoshi & Akiba, Alkalophilic Microorganisms, Springer, Berlin, 1982)によって好アルカリ性バチルス属細菌由来のアルカリセルラーゼが見出されて以来、セルラーゼの衣料用重質洗剤への応用が可能となった。その後、実際に好アルカリ性バチルス属細菌の生産するアルカリセルラーゼ(特公昭60−23158号公報、特公平6−030578号公報、米国特許第4945053号等)が衣料用洗剤へ配合されるに至った。これ以降、真菌類由来のセルラーゼ配合洗剤も上市されるようになり、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼと並ぶ洗剤用酵素としての地位を確立してきた。
【0004】
さらに近年、遺伝子工学の発展に伴い、洗剤用酵素の生産も遺伝子組換えにより大量生産されるようになっている。アルカリセルラーゼについても既に数多くの遺伝子についてクローニング、塩基配列の決定がなされ、実生産に用いられている例もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、洗剤用酵素として有用なアルカリセルラーゼをコードする遺伝子及びその遺伝子を用いた大量かつ単一のアルカリセルラーゼを製造する方法を確立することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、自然界からアルカリセルラーゼ生産菌のスクリーニングを行ったところ、目的に適う酵素を生産する微生物を見出し、さらに当該微生物からアルカリセルラーゼをコードする遺伝子をクローン化することにより、本発明を完成した。
【0007】
本発明は、配列番号2に示すアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードするアルカリセルラーゼ遺伝子を提供するものである。
また、本発明は、配列番号4に示す塩基配列、又は該塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有するアルカリセルラーゼ遺伝子を提供するものである。
また、本発明は、上記のアルカリセルラーゼ遺伝子を含む組換えベクター、及び該組換えベクターを含む形質転換体を提供するものである。
また、本発明は、上記の形質転換体を培養することを特徴とするアルカリセルラーゼの製造法を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の遺伝子は、配列番号1若しくは2に示すアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードする配列を有する。アルカリセルラーゼ活性を失わない限り、該アミノ酸配列中のアミノ酸の欠失、置換又は付加(以下、変異ということがある)は特に制限されない。また、配列番号1又は2に示した成熟酵素のアミノ酸配列におけるアミノ末端には、1〜数個のアミノ酸が付加、欠失、置換していてもよい。
【0009】
本発明の配列番号1に示すアルカリセルラーゼ(以下、N131aセルラーゼと表記する)のアミノ酸配列と従来公知のセルラーゼのアミノ酸配列との相同性を比較すると、Bacillus sp. No.1139株の生産するセルラーゼ(Fukumoriら、J. Gen. Microbiol., 131, 3339-3345, 1985)との相同性は81.9%であり、Bacillus sp. KSM-64株由来のセルラーゼ(Sumitomoら、Biosci. Biotechnol. Biochem., 56, 872-877, 1992)との相同性は83.6%、Bacillus sp. KSM-S237株が生産するセルラーゼ(特願平11−013049号)との相同性は86.7%であり、本発明の遺伝子からコードされるN131aセルラーゼと最も高い相同性を示したが、完全に一致するものではなかった。このことは、N131aセルラーゼが新規なアルカリセルラーゼであることを示唆するものであり、従って配列番号1に示したアミノ酸配列と最大87%以上の相同性を有するセルラーゼは本発明に含まれる。
【0010】
次に、本発明の配列番号2に示すアルカリセルラーゼ(以下、N131bセルラーゼと表記する)のアミノ酸配列と従来公知のセルラーゼのアミノ酸配列との相同性を比較すると、上記のN131aセルラーゼとの相同性は83.6%、Bacillus sp. No.1139株の生産するセルラーゼとの相同性は88.0%、Bacillus sp. KSM-64株由来のセルラーゼとの相同性は90.9%であった。さらに、Bacillus sp. KSM-S237株が生産するセルラーゼとの相同性が94.7%と本発明の遺伝子からコードされるN131bと最も高い相同性を示した。このことは、N131bセルラーゼが従来公知のセルラーゼとは完全に一致するものではなく、新規な酵素であることを示唆するものであり、従って配列番号2に示したアミノ酸配列と最大95%以上の相同性を有するセルラーゼは本発明に含まれる。
尚、相同性の検索はGENENTYX−CDバイオデータソフトウェア[ソフトウェア開発社製、ver.36]を用いたマキシマムマッチング法にて行った。
【0011】
本発明のアルカリセルラーゼ遺伝子は、配列番号1若しくは2に示すアミノ酸配列又はその変異体をコードするものであればよいが、配列番号3若しくは4で示される塩基配列、又は該塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有するものが好ましい。
【0012】
本発明のアルカリセルラーゼ遺伝子は、バチルス属に属する微生物、例えば下記の菌学的性質を有するバチルス エスピー KSM−N131株等からクローン化することができる。
〔バチルス エスピー KSM−N131株の菌学的性質〕
A. 形態学的性質;
(a)細胞の形及び大きさ:桿菌(0.6〜0.8×2.8〜7.2μm)
(b)多形性:無し
(c)運動性:有り
(d)胞子の形、大きさ、位置、膨潤の有無:楕円形、0.7〜1.0×1.0〜1.8μm、中央準端、膨潤有り
(e)グラム染色:陽性
(f)抗酸性:陰性
【0013】
B. 培養学的性質;
(a)一般細菌用液体培地(pH5.7、培地1):生育せず
(b)一般細菌用液体培地(pH6.8、培地1):生育せず
(c)一般細菌用寒天培地(pH6.5、培地2):生育せず
(d)一般細菌用寒天培地(pH8.5、培地2):生育する
【0014】
C. 生理学的性質;
(a)硝酸塩の還元(培地3):陽性
(b)脱窒反応(培地3):陰性
(c)VPテスト(培地4):陰性
(d)インドールの生成(培地5):陰性
(e)硫化水素の生成(培地6):陰性
(f)デンプンの加水分解(培地7):陽性
(g)カゼインの加水分解(培地8):陰性
(h)ゼラチンの液化(培地9):陽性
(i)クエン酸の利用(培地10):陰性
(j)カタラーゼ:陽性
(k)オキシダーゼ(培地11):陽性
(l)生育の温度範囲(培地12):13−42℃、至適範囲:23−38℃
(m)生育のpH範囲(培地13):pH7.6−10.5、至適範囲:pH9−9.5
(n)生育における酸素の影響(培地14):嫌気条件下で微弱だが生育する。
(o)グルコースからのガス産生(培地15):陰性
(p)塩化ナトリウム耐性(培地16):10%塩化ナトリウム存在下で生育する。
(q)馬尿酸の加水分解(培地17):陰性
(r)4−メチルウンベリフェリル−β−D−グルクロニド(MUG)の加水分解(培地18):陰性
(s)糖の利用性(培地19):グルコース、アラビノース、キシロース、マンニトール、ガラクトース、シュークロース、マンノース、マルトース、ラクトース、トレハロース、フラクトース、メリビオース、リボース、サリシン、グリセロール、ソルビトール等を炭素源として生育可能である。
ラムノース、イノシトールを炭素源として利用できない。
【0015】
培地1:ニュートリエントブロス(ディフコ)指示量、希塩酸にてpHを調整
培地2:ニュートリエントアガー(ディフコ)指示量、炭酸ナトリウムにてpHを調整
培地3:ニュートリエントブロス0.8重量%、硝酸カリウム0.1重量%、炭酸ナトリウム0.1重量%(別滅菌)
培地4:バクトペプトン(ディフコ)0.7重量%、塩化ナトリウム0.5重量%、グルコース0.5重量%(別滅菌)、炭酸ナトリウム0.2重量%(別滅菌)
培地5:SIM培地(日水製薬)指示量、炭酸ナトリウム0.1重量%(別滅菌)、インドール産生試験用濾紙(日水製薬)
培地6:TSI寒天培地(栄研化学)指示量、炭酸ナトリウム0.1重量%(別滅菌)
培地7:バクトペプトン1.5重量%、酵母エキス0.5重量%、可溶性デンプン2.0重量%、リン酸1水素カリウム0.1重量%、硫酸マグネシウム7水塩0.02重量%、寒天1.5重量%、炭酸ナトリウム0.2重量%(別滅菌)
培地8:酵母エキス0.5重量%、グルコース2.0重量%、カゼイン0.5重量%、リン酸1水素カリウム0.1重量%、硫酸マグネシウム7水塩、0.02重量%、寒天1.5重量%、炭酸ナトリウム0.1重量%(別滅菌)
培地9:ニュートリエントブロス0.8重量%、ゼラチン1.2重量%、酵母エキス0.5重量%、炭酸ナトリウム0.2重量%(別滅菌)
培地10:リン酸1水素アンモニウム0.1重量%、リン酸2水素カリウム0.1重量%、硫酸マグネシウム7水塩、0.02重量%、クエン酸ナトリウム0.2重量%、寒天1.5重量%、炭酸ナトリウム0.1重量%(別滅菌)
培地11:チトクロムオキシダーゼ試験濾紙(日水製薬)
培地12:トリプティケース ソイ ブロス(BBL)指示量、炭酸ナトリウム0.1重量%(別滅菌)
培地13:トリプティケース ソイ ブロスに炭酸ナトリウムあるいは水酸化ナトリウムを別滅菌後に添加し、pHを調整
培地14:アナエロビックアガー(ディフコ)指示量、炭酸ナトリウム0.2重量%(別滅菌)
培地15:バクトペプトン1.0重量%、塩化ナトリウム0.5重量%、グルコース1.0重量%、フェノールレッド0.002重量%、水酸化ナトリウムにてpHを調整
培地16:バクトトリプトン(ディフコ)0.5重量%、酵母エキス1.5重量%、リン酸1水素カリウム0.3重量%、寒天2.0重量%、グルコース2.0重量%(別滅菌)、塩化ナトリウム0−16重量%、炭酸ナトリウム0.5重量%(別滅菌)
培地17:バクトトリプトン1.0重量%、肉エキス(ディフコ)0.3重量%、酵母エキス0.1重量%、グルコース0.1重量%、リン酸1水素ナトリウム0.5重量%、馬尿酸1.0重量%、炭酸ナトリウム1.0重量%(別滅菌)
培地18:バクトトリプトース(ディフコ)2.0重量%、塩化ナトリウム0.5重量%、システイン塩酸塩0.1重量%、寒天1.5重量%、MUG100ppm(濾過滅菌)、炭酸ナトリウム0.3重量%(別滅菌)
培地19:硝酸カリウム0.2重量%、リン酸1水素ナトリウム0.2重量%、塩化ナトリウム0.5重量%、硫酸マグネシウム7水塩0.005重量%、微量金属混液*0.2容量%、ビタミン混液**0.2容量%、炭酸緩衝液(pH10)0.1M、寒天0.3重量%(別滅菌)、糖類1.0重量%(濾過滅菌)
*、**;Nielsenら、Microbiology, 141, 1745-1761(1995)に準ずる。
【0016】
以上、KSM−N131株は中性培地に生育しない好アルカリ性細菌であり、且つグラム陽性、カタラーゼ陽性の有胞子桿菌であることから、好アルカリ性バチルス属細菌であると判断された。そこで本菌株の形態学、生理学的性質について、Nielsenらが新たに分類した好アルカリ性バチルス属細菌の記載(Microbiology、141、1745-1761、1995)に準じ比較検討した結果、本菌株はバチルス シュウドアルカロフィルスに近縁な菌種であると考えられた。しかし、その性質は既知のバチルス シュウドアルカロフィルスと完全には一致せず、他のバチルス属菌の諸性質とも一致しないため、新規なバチルス属細菌として本菌株を工業技術院生命工学研究所へ、バチルス エスピー KSM−N131株(FERM P−17475)として寄託した。
【0017】
上記のKSM−N131株からのアルカリセルラーゼ遺伝子のクローニング方法としては、既知の手段、例えばショットガン法、PCR法を用いて行うことができる。
【0018】
また、本発明のアルカリセルラーゼ遺伝子を含む組換えベクターを作製するには、宿主内で複製維持が可能で、該酵素を安定に発現させることができ、該遺伝子を安定に保持できるベクターにアルカリセルラーゼ遺伝子を組込めばよい。かかるベクターとしては大腸菌を宿主とする場合、pUC18、pBR322、pHY300PLK等が挙げられ、枯草菌を宿主にする場合、pUB110、pHSP64(Sumitomoら、Biosci. Biotechnol. Biochem., 59, 2172-2175, 1995)、pHY300PLK等が挙げられる。
【0019】
かくして得られた組換えベクターを用いて宿主菌を形質転換するには、プロトプラスト法、コンピテントセル法、エレクトロポレーション法等を用いて行うことができる。宿主菌としては特に制限されないが、Bacillus属(枯草菌)等のグラム陽性菌;Escherichia coli(大腸菌)等のグラム陰性菌;Streptomyces属(放線菌)、Saccharomyces属(酵母)、Aspergillus属(カビ)等の真菌が挙げられる。
【0020】
得られた形質転換体を培養し、当該培養液からアルカリセルラーゼを採取することにより、アルカリセルラーゼを得ることができる。培養は、宿主菌又は形質転換株が資化しうる炭素源、窒素源、金属塩、ビタミン等を含む培地を用いて適当な条件下で行なえばよい。かくして得られた培養液から、一般的な方法によって酵素の採取、精製を行い、凍結乾燥、噴霧乾燥、結晶化等により、所望の酵素形態とすることができる。
【0021】
【実施例】
実施例1(アルカリセルラーゼ生産菌のスクリーニング)
日本各地の土壌を滅菌水に懸濁したものを80℃、30分間熱処理し、以下の組成を有する寒天平板培地に塗布した[2.0重量%カルボキシメチルセルロース(A10MC;日本製紙社製)、1.0重量%肉エキス(オキソイド社製)、1.0重量%バクトペプトン(ディフコ社製)、1.0重量%塩化ナトリウム、0.1重量%リン酸2水素カリウム、0.5重量%炭酸ナトリウム(別滅菌)、0.005重量%トリパンブルー(別滅菌)]。30℃の培養器で3日間静置培養し、生育した菌の周辺にカルボキシメチルセルロースの分解に伴う溶解斑が検出されたものについて選抜し、シングルコロニー化を繰り返した。これらの菌株を、2.0重量%ポリペプトンS(日本製薬社製)、1.0重量%魚肉エキス(和光純薬社製)、0.15重量%リン酸1水素カリウム、0.1重量%酵母エキス(ディフコ社製)、0.07重量%硫酸マグネシウム7水塩、0.1重量%カルボキシメチルセルロース及び0.5重量%炭酸ナトリウム(別滅菌)から成る液体培地を用い、30℃、3日間振盪培養した。アルカリセルラーゼを生産している菌株を選択し、とりわけ高アルカリ性域で強力な活性を示したセルラーゼ生産菌としてバチルス エスピー KSM−N131株を取得した。
【0022】
実施例2(バチルス エスピー KSM−N131株のゲノムDNAの調製)
バチルス エスピー KSM−N131株の培養は、2.0重量%ポリペプトンS、0.1重量%カルボキシセルロース(A10MC)、0.1重量%酵母エキス、1重量%魚肉エキス、0.15重量%リン酸1水素カリウム、0.07重量%硫酸マグネシウム7水塩、0.5重量%グルタミン酸ナトリウム(別滅菌)及び0.5重量%炭酸ナトリウム(別滅菌)から成る培地を用い、30℃、40時間振盪(125rpm)して行った。得られた培養液約300mLから遠心分離(12000×g、15分、5℃)により菌体を回収し、この菌体から斉藤・三浦の方法によりゲノムDNAを調製した。
【0023】
実施例3(N131aセルラーゼ遺伝子断片のクローニング)
バチルス エスピー KSM−N131株の培養上清から精製したセルラーゼのアミノ末端配列を15番目まで決定した結果、Glu−Gly−Asn−Thr−Arg−Glu−Asp−Asn−Phe−Asp−His−Leu−Leu−Gly−Asnであった。この配列は、バチルス エスピー KSM−S237株やバチルス エスピー KSM−64株の生産するアルカリセルラーゼのアミノ末端配列Glu−Gly−Asn−Thr−Arg−Glu−Asp−Asn−Phe−Lys−His− Leu−Leu−Gly−Asnと極めて高い相同性を示した。そこで中間のアミノ酸配列も相同性が高い可能性があると予想し、S237セルラーゼのアミノ末端及び中間アミノ酸配列を基にプライマー1(配列番号5)及びプライマー2(配列番号6)を合成し、これらを用いてN131aセルラーゼをコードする遺伝子の増幅をPCR反応により試みた。
すなわち、バチルス エスピー KSM−N131株ゲノム溶液1μL(100ng)、プライマー1及び2各20μL(1μM)、PCR用緩衝液10μL、2.5mMdNTPミックス8μL、PyrobestDNAポリメラーゼ(タカラ社製)0.5μL(2.5単位)、及び脱イオン水40μLを混合し、サーマルサイクラー480(パーキンエルマー社製)にて94℃、2分間の熱変性後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で2分間を1サイクルとし、30サイクルの反応条件でDNAの増幅を行った。得られたPCR産物(約1kb)をGFX PCR DNA and Gel Band Purification Kit(ファルマシア社製)により精製し、得られたDNA断片の塩基配列をDNA Sequencing Kit(アプライドバイオシステム社製)及び377DNAシークエンサー(パーキンエルマーバイオシステム社製)を用いて決定した。
【0024】
実施例4(N131aセルラーゼ遺伝子のゲノムPCR法によるクローニング)実施例3で決定したN131aセルラーゼ遺伝子は不完全なものであったため、インバースPCR法により全遺伝子の取得を試みた。すなわち、バチルス エスピー KSM−N131株ゲノム溶液10μL(8μg)、PCR用緩衝液5μL、脱イオン水34μL及びEcoRI1μL(10単位)を混合し、37℃、2時間30分間制限酵素処理した。得られたゲノム分解産物を精製後、Ligation Kit Ver.2(タカラ社製)を用いて自己閉環した(16℃、2時間)。自己閉環したDNAを精製し、インバースPCR法の鋳型として用いた。PCR反応は、自己閉環溶液1μL、プライマー3(配列番号7)及びプライマー4(配列番号8)各20μL(1μM)、PCR用緩衝液10μL、2.5mMdNTPミックス8μL、Pyrobest DNAポリメラーゼ0.5μL(2.5単位)、及び脱イオン水40.5μLを混合した後、94℃、2分間の熱変性後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で3分間を1サイクルとし、30サイクル行った。増幅したDNA断片(約4kb)を精製し、このうち約2kbの塩基配列を決定した。この段階で完全なN131aセルラーゼ遺伝子及びその上流約500bの配列は決定されたので、次に構造遺伝子下流の塩基配列決定を進め、下流約200bの塩基配列を決定した。得られた塩基配列からセルラーゼ遺伝子の上流領域並びに下流領域の塩基配列を基に、プライマー5(配列番号9)及びプライマー6(配列番号10)を合成し、バチルス エスピー N131株のゲノムからPCR法によりN131aセルラーゼ遺伝子を増幅した。得られた遺伝子の塩基配列を決定し、アミノ酸配列を推定した(配列番号1及び3)。
【0025】
実施例5(形質転換枯草菌によるN131aセルラーゼの生産)
N131aセルラーゼのアミノ末端側からターミネーター下流までの遺伝子をプラスミド(pHSP64)のSalI/BamHI部位に連結し、構築した組換えプラスミドを枯草菌ISW1214株に導入して形質転換した。形質転換株を3.0重量%ポリペプトンS、3.0重量%マルトース、0.5重量%魚肉エキス、0.1重量%酵母エキス、0.1重量%リン酸2水素カリウム、0.02重量%硫酸マグネシウム7水塩及びテトラサイクリン(7.5μg/mL)から成る培地(PM培地、pH6.8)にて30℃、48時間振盪培養を行った。遠心分離(8000×g、20分間、4℃)により得られた培養上清中のセルラーゼの活性は、約20000U/Lであった。
【0026】
実施例6(N131bセルラーゼ遺伝子のゲノムPCR法によるクローニング)N131aセルラーゼのクローニングを行った際に、N131aセルラーゼの配列と類似した配列がバチルス エスピー KSM−N131株のゲノム上に存在する可能性が示唆された。そこで、N131aセルラーゼ遺伝子のクローニングの際に用いた方法と同様に、S237セルラーゼのアミノ末端及び中間アミノ酸配列を基にプライマー7〜12(配列番号11〜16)を合成し、PCR法によりN131bセルラーゼをコードする遺伝子の増幅を行った。
すなわち、バチルス エスピー KSM−N131株のゲノム溶液1μL(70ng)、プライマーの組合せを各10μL(0.3μM)、PCR用緩衝液10μL、2.5mMdNTPミックス8μL、脱イオン水60μL及びPwoDNAポリメラーゼ(ベーリンガーマンハイム社製)1μL(5単位)を混合し、94℃、2分間の熱変性後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で3分間を1サイクルとし、30サイクルの反応条件でDNAの増幅を行った。得られたPCR産物をHigh Pure PCR Product Purification Kit(ベーリンガーマンハイム社製)を用いて精製し、377DNAシークンサーにより塩基配列をそれぞれ決定した。得られた遺伝子断片の塩基配列をS237セルラーゼ遺伝子と比較すると、N131bセルラーゼのアミノ末端以降をコードすると考えらるいくつかの遺伝子断片及び停止コドンとその下流域と考えられる遺伝子断片の存在が示唆された。しかし、完全な塩基配列は決定されていないこと並びに開始コドン及びその近傍の領域については遺伝子断片として取得されていなかった。
まず、アミノ末端より上流の領域をコードする遺伝子を取得するためにバチルス エスピー KSM−N131株のゲノムDNA4μgを各種制限酵素(Sau3A、EcoRI、HindIII)により分解し、LA PCRインヴィトロクローニングキット(宝酒造)を用いてカセットと連結したものを鋳型にPCR反応[プライマー13(配列番号17)及びプライマー14(配列番号18)を使用]を行った。その結果、HindIIIにより処理したサンプルについてDNAの増幅が認められ、この増幅断片(約0.4kb)の塩基配列を決定した結果、N131bセルラーゼのアミノ末端より上流の領域をコードする遺伝子断片が確認された。しかし、その解析を行うと開始コドンから34塩基下流にアンバーコドン(TGA)が存在することが明らかになった。アンバーコドン(TGA)に関しては、枯草菌において極くまれにトリプトファンをコードするという報告もあることから(Lovettら、J. Bacteriol.,173,1810-1812,1991)、本遺伝子においてもトリプトファンをコードする可能性が示唆された。しかし、開始コドンの上流部にはリボソーム結合部位などの翻訳開始に必要な配列が見出されず、オーカーコドン(TAA)がいくつも存在することも明らかになった。従って、本遺伝子は細胞内で発現しない擬似遺伝子である可能性が高いと考えられた。
完全なN131bセルラーゼ遺伝子をコードする塩基配列を決定するためにプライマー15(配列番号19)及びプライマー16(配列番号20)を用いてPCR反応を行った。最終的に決定された塩基配列及び推定されるアミノ酸配列を配列番号2及び配列番号4に示した。
【0027】
実施例7(形質転換枯草菌によるN131bセルラーゼの生産)
細胞内で発現しない可能性のあるN131bセルラーゼを生産させる目的で、遺伝子の発現に必要な領域としてバチルス エスピー KSM−64株由来のアルカリセルラーゼ遺伝子(Sumitomoら、Biosci. Biotechnol. Biochem.,56,827-877,1992)の上流発現領域を増幅した[プライマー17(配列番号21)及びプライマー18(配列番号22)を使用]。得られたN131bセルラーゼ遺伝子断片と上流発現領域遺伝子断片を精製し、プライマー16(配列番号20)及びプライマー17(配列番号21)を用いてリコンビナントPCR法によりDNAの増幅を行った。取得したキメラ遺伝子を精製し、制限酵素BglIIびHindIIIで処理後、予め同じ制限酵素で処理しておいたプラスミドpHY300PLK(ヤクルト本社製)に連結した。得られた組換えプラスミドをプロトプラスト法により枯草菌ISW1214株に導入し、形質転換を行った。形質転換株をPM培地(テトラサイクリンは15μg/mLとした)中で30℃、72時間振盪培養した。遠心分離により得られた培養上清中のセルラーゼの活性は、約33000U/Lであった。
【0028】
[酵素活性測定法]
0.2mLの0.5Mグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH9.0)、0.4mLの2.5重量%カルボキシメチルセルロース(A01MC;日本製紙社製)及び0.3mLの脱イオン水から成る反応液に、適当に希釈した0.1mLの酵素液を加えて20分間反応させた後、1mLのジニトロサリチル酸試薬(0.5重量%ジニトロサリチル酸、30重量%ロッシェル塩、1.6重量%水酸化ナトリウム水溶液)を添加し、沸水中で5分間還元糖の発色を行った。氷水中で急冷し、4mLの脱イオン水を加え、535nmにおける吸光度を測定して還元糖の生成量を求めた。尚、ブランクは酵素液を加えずに処理した反応液にジニトロサリチル酸試薬を加えた後、酵素液を添加し、同様に発色させたものを用意した。酵素1単位(1U)は、上記反応条件下において1分間に1μmolのグルコース相当の還元糖を生成する量とした。
【0029】
参考例1(N131aセルラーゼの最適反応pH)
クエン酸緩衝液(pH4−7)、リン酸緩衝液(pH6−8)、トリス−塩酸緩衝液(pH7−9)、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH8−11)、リン酸−水酸化ナトリウム緩衝液(pH12−12.5)の各緩衝液(100mM)を用いて最適反応pHを調べた結果、N131aセルラーゼはpH9−9.5のグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液中で最も高い反応速度を示した。また、pH7から11の間で最大活性の50%以上の活性を有していた(図1)。
【0030】
参考例2(N131bセルラーゼの最適反応pH)
参考例1と同様にしてN131bセルラーゼの最適反応pHを調べた結果、pH9−9.5のグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液中で最も高い反応速度を示した。また、pH7から11の間で最大活性の50%以上の活性を有していた(図2)。
【0031】
【発明の効果】
本発明のアルカリセルラーゼ遺伝子を用いれば、衣料用洗剤、繊維処理剤等として有用なアルカリセルラーゼを単一且つ大量に生産することが可能である。
【0032】
【配列表】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルカリセルラーゼ(N131a)活性に及ぼすpHの影響を示す図である。
【図2】本発明のアルカリセルラーゼ(N131b)活性に及ぼすpHの影響を示す図である。
Claims (6)
- 配列番号2に示すアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードするアルカリセルラーゼ遺伝子。
- 配列番号4に示す塩基配列、又は該塩基配列の1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基酸配列を有するアルカリセルラーゼ遺伝子。
- 請求項1又は2記載の遺伝子を含む組換えベクター。
- 請求項3記載の組換えベクターを含む形質転換体。
- 宿主が微生物である請求項4記載の形質転換体。
- 請求項4又は5に記載の形質転換体を培養することを特徴とするアルカリセルラーゼの製造法。
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