JP2004121257A - 耐熱性キシラナーゼ - Google Patents

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Abstract

【課題】 バチルス属由来の耐熱性キシラナーゼの提供。
【解決手段】 以下の理化学的性質を有する、バチルス属に属する微生物由来の耐熱性キシラナーゼXP2。
(1)作用:キシランの1,4-β-D-キシロシド結合を加水分解し、キシロース及びキシロオリゴ糖の還元糖を生成する。
(2)基質特異性:カバキシラン、小麦キシラン等の調製キシランの他、キシランを含有する広葉樹クラフトパルプ、小麦フスマ等に作用する。
(3)至適pH及び安定pH範囲:反応の至適pH範囲はpH5〜8であり、安定pH範囲は4.5〜9である。
(4)作用適温の範囲:60〜90℃の範囲にある。
(5)至適温度:80℃である。
(6)熱安定性:70℃、30分の処理で約90%以上の残存活性を示す。
(7)等電点:8.5付近である。
(8)分子量:SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定した結果、約32,000である。
(9)阻害:Mn2+、Co2+、Cu2+、EDTA、ヨード酢酸により弱く阻害を受け、Hg2+、SDSにより強く阻害される。
【選択図】 なし

Description

 本発明は、新規な耐熱性キシラナーゼ、その製造方法及びその用途、耐熱性キシラナーゼ遺伝子並びに耐熱性キシラナーゼを生産する微生物に関する。
 キシラナーゼはキシランを分解する酵素であり、製紙用パルプの漂白前処理用酵素として、又は機能性キシロオリゴ糖の製造用として用いられる有用酵素である。Viikari らがキシラナーゼによりクラフトパルプの漂白性が向上することを報告(非特許文献1)して以来、紙パルプ産業においてキシラナーゼが注目され始めているが、パルプ製造工程中にはクラフト蒸解や漂白工程等高温条件が多いことから、これらの工程中に効率よくキシラナーゼを用いるにあたっては耐熱性の高いキシラナーゼが求められている。耐熱性キシラナーゼを用いることで、高温での酵素反応が可能になるために冷却の設備やエネルギーが削減できると共に酵素反応中の雑菌の繁殖も防ぐことができるからである。
 一方、微生物の有する酵素生産能力が高い方が酵素製造のコストダウンに有利であることは自明である。そこで、耐熱性の高いキシラナーゼとその酵素を高生産する微生物が求められている。キシラナーゼを生産する微生物としてはキシラナーゼの総説(非特許文献2)等によれば、アスペルギルス(Aspergillus)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、アウレオバシデウム(Aureobasidium)属、スエヒロタケ(Schizophyllum commune)等の糸状菌、バチルス(Bacillus)属やクロストリジウム(Clostridium)属、ストレプトミセス(Streptomyces)属等の細菌類等数多くの微生物が知られている。そして、これらの微生物から生産されるキシラナーゼの反応pHは酸性乃至中性、反応温度は40℃〜80℃である。また、アルカリ側で活性を有するアルカリキシラナーゼを生産する微生物も知られており、例えば、バチルス(Bacillus)属(非特許文献3及び4)、アエロモナス(Aeromonas)属(非特許文献5)又はストレプトミセス(Streptomyces)属(非特許文献6)に属する微生物等が知られている。
 これらのキシラナーゼを生産する微生物のうち、糸状菌では、キシラナーゼの他にセルラーゼを生産するものが多く、紙パルプ製造工程に使用する上で紙の収率や強度の低下をきたす恐れがある等の問題点がある。しかも、糸状菌は細菌に比べて培養期間が長い。また、細菌ではキシラナーゼ生産性が低いという問題点がある。
 近年、Viikari らは、耐アルカリ性のバチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)VTT-E-87305 株を用い、pH8〜8.5、30℃、2日間の培養で高収量(400U/ml)のキシラナーゼを生産させたことを報告している(非特許文献7)。しかし、この酵素についての耐熱性は明らかではなく、培養温度も30℃と低いことから、高温下での酵素反応を行うことは困難である。
 一方、バチルス属に属する微生物の生産する耐熱性キシラナーゼの精製については、好アルカリ好熱性バチルスW−1およびW−2から、分子量21,500、等電点8.5、反応至適pH6.0、反応至適温度65℃のW1−I耐熱性キシラナーゼ、及び、分子量22,500、等電点8.3、反応至適pH6.0、反応至適温度65℃のW2−I耐熱性キシラナーゼがそれぞれ報告されている(非特許文献8)。
また、好熱性バチルスとして知られるバチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)については、T.Nanmori らがStrain 21 の培養濾液から分子量39,500、等電点5.1、反応至適pH7.0、反応至適温度60℃の耐熱性キシラナーゼを精製し、生産したことを報告している(非特許文献9)。しかし、その生産量は55℃、2日間の培養で1.96 U/ml に過ぎない。
さらに、キシラナーゼの利用法について、パルプにキシラナーゼを作用させて漂白薬品やAOX(吸着性有機ハロゲン化合物、特に有機塩素化合物)を低減させようとする試みがいくつか報告されている(例えば、特許文献1〜7、非特許文献10〜13)。
 しかし、これらの試みでは、紙パルプ製造工程における漂白工程では40〜100℃の高温処理が必要とされる一方、その工程中に酵素処理を組み込むために耐熱性を持たない酵素を使用しなければならないことも多く、この場合は、その反応至適温度までパルプを冷却し、また次の工程のために加温しなければならず、多大なエネルギーが必要になる。
従って、高温条件下で製造することによって冷却設備を不要とするか又は冷却水の節約を可能とし、しかも雑菌混入の可能性を少なくさせ、低コストで製造することが可能な酵素である耐熱性のキシラナーゼが望まれている。さらに、遺伝子組換え技術により耐熱性キシラナーゼをコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を発現させることによりキシラナーゼを大量に得ることも望まれている。
 キシラナーゼ遺伝子については現在までに多数の報告がなされている。例えば、細菌由来についてはバチルス・サーキュランス(Bacillus circulans; 非特許文献14)、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis; 非特許文献15)、シュードモナス・フルオレッセンス (Pseudomonas fluorescens; 非特許文献16)およびルミノコッカス・フラベファシエンス (Ruminococcus flavefaciens; 非特許文献17)などが、カビ由来についてはクロストリジウム・アセトブチリカム (Clostridium acetobutylicum; 非特許文献18)、アスペルギルス・アワモリ (Aspergillus awamori; 非特許文献19)およびストレプトミセス・リビダンス (Streptomyces lividans; 非特許文献20)などがある。しかしながら、これらの遺伝子を用いた組換え体により製造された酵素は、漂白に適したものであるか否か明らかでない。
特開平2-210085号公報 特開平2-210086号公報 特開平2-221482号公報 特開平2-264087号公報 特開平2-293486号公報 特開平3-40887号公報 特開平3-505785号公報 3rd international conference on biotechnology in the pulp and paper industry 1986年 講演要旨集 p.67 Wong et al., Microbiological Reviews, Sept.,305,1988 Honda et al., System. Appl. Microbiol., 8,152,1986, Okazaki et al., Appl. Microbiol. and Biotechnol., 19,335,1984 Ohkoshi et al., Agric.Biol.Chem.,49,3037,1985 Vyas et al., Biotechnol.Let.,12,225,1990 Appl.Microbiol. Biotechnol., 37,470,1992 Okazaki et al., Agric.Biol.Chem., 49,2033,1985 J.Bacteriol.,172,6669,1990 L.S.Pederson et al., Production of bleached chemical pulp in the future international pulp bleaching conference, Vol.2,107,1991 紙パルプ技術タイムズ,5,20,1992 S. Hogman et al., Biotechnology in Pulp and Paper Industry, Uni Publishers Co.,Ltd.,p.107,1992 Viikari et al., Biotechnology in Pulp and Paper Industry, Uni Publishers Co.,Ltd.,p.101,1992 YANGR.C.A. et al., NUCLEIC ACIDS RES. 16:7187-7187(1988) PAICE M.G. et al., ARCH.MICROBIOL.144:201-206(1986) KELLETT L.E. et al.,BIOCHEM.J.272:369-376(1990) ZHANG J.-X. et al., MOL.MICROBIOL. 6:1013-1023(1992) ZAPPE. et al., NUCLEIC ACIDS RES. 18:2179-2179-(1990) ITO K. et al., BIOSCI.BIOTECHNOL.BIOCHEM. 56:1338-1340(1992) SHARECK F. et al., GENE 107:75-82(1991)
 本発明は、新規な耐熱性キシラナーゼ、その製造方法及びその用途、耐熱性キシラナーゼ遺伝子並びに耐熱性キシラナーゼを生産する微生物を提供することを目的とする。
 本発明者らは上記課題に基づいて鋭意研究を行い、耐熱性キシラナーゼ高生産菌を求め、鋭意広範なスクリーニングを行なった結果、東京都江東区東雲の土壌中から耐熱性キシラナーゼを生産する微生物を見い出し、該微生物の培養物中から耐熱性において優れた性質を有する耐熱性キシラナーゼXP1及びXP2を見い出し、更に該耐熱性キシラナーゼをコードする遺伝子をクローニングし、高発現させることに成功し、本発明を完成するに至った。
 すなわち、本発明は、以下の理化学的性質を有する耐熱性キシラナーゼXP1又はXP2から選ばれる耐熱性キシラナーゼである。
(1)以下の理化学的性質を有する耐熱性キシラナーゼXP1(以下、単にXP1という)。
 (1) 作用:キシランの1,4-β-D-キシロシド結合を加水分解し、キシロオリゴ糖の還元糖を生成する。
 (2) 基質特異性:カバキシラン、小麦キシラン等の調製キシランの他、キシランを含有する広葉樹クラフトパルプ、小麦フスマ等に作用する。
 (3) 至適pH及び安定pH範囲:反応の至適pH範囲はpH5〜8であり、安定pH範囲は3〜9である。
 (4) 作用適温の範囲:50〜80℃の範囲にある。
 (5) 熱安定性:50℃、30分の処理で約90%以上の酵素活性を保持し、60℃、30分の処理でも約50%以上の残存活性を示す。
 (6) 等電点:8.1付近である。
 (7) 分子量:SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定した結果、約22,500である。
 (8) 阻害:ヨード酢酸、EDTAにより弱く阻害を受け、Hg2+、SDSにより強く阻害される。
(2)以下の理化学的性質を有する耐熱性キシラナーゼXP2(以下、単にXP2という)。
 (1) 作用:キシランの1,4-β-D-キシロシド結合を加水分解し、キシロース及びキシロオリゴ糖の還元糖を生成する。
 (2) 基質特異性:カバキシラン、小麦キシラン等の調製キシランの他、キシランを含有する広葉樹クラフトパルプ、小麦フスマ等に作用する。
 (3) 至適pH及び安定pH範囲:反応の至適pH範囲はpH5〜8であり、安定pH範囲は4.5〜9である。
 (4) 作用適温の範囲:60〜90℃の範囲にある。
 (5) 熱安定性:70℃、30分の処理で約90%の残存活性を示す。
 (6) 等電点:8.5付近である。
 (7) 分子量:SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定した結果、約32,000である。
 (8) 阻害:Mn2+、Co2+、Cu2+、EDTA、ヨード酢酸により弱く阻害を受け、Hg2+、SDSにより強く阻害される。
さらに、本発明は、上記耐熱性キシラナーゼを生産するバチルス(Bacillus)属に属する微生物を培地に培養し、得られる培養物から該耐熱性キシラナーゼを採取することを特徴とする前記耐熱性キシラナーゼの製造方法である。ここで、微生物としては、例えばバチルス・エスピー2113又はバチルス・エスピー208が挙げられる。
さらに、本発明は、耐熱性キシラーゼの生産能を有するバチルス・エスピー2113又はバチルス・エスピー208である。さらに、本発明は、配列番号1で表されるアミノ酸配列を実質的にコードする塩基配列又は配列番号2で表される塩基配列を実質的に含む耐熱性キシラナーゼ遺伝子である。
ここで、「実質的に」とあるのは、このペプチドが耐熱性キシラナーゼ酵素活性を有する限り、又は塩基配列が耐熱性キシラナーゼをコードするものである限り、アミノ酸若しくは塩基配列に欠失、置換又は付加等の変化があってもよいことを意味するものである。さらに、本発明は、以下の理化学的性質を有する遺伝子組換え型耐熱性キシラナーゼXP1又は遺伝子組換え型耐熱性キシラナーゼXP2から選ばれる耐熱性キシラナーゼである。
(1)下記の理化学的性質を有する遺伝子組換え型耐熱性キシラナーゼXP1
 (1) 作用:キシランの1,4-β-D-キシロシド結合を加水分解し、キシロオリゴ糖の還元糖を生成する。
 (2) 基質特異性:カバキシラン、小麦キシラン等の調製キシランの他、キシランを含有する広葉樹クラフトパルプ、小麦フスマ等に作用する。
 (3) 至適pH及び安定pH範囲:反応の至適pH範囲はpH5〜8であり、安定pH範囲は3〜9である。
 (4) 作用適温の範囲:50〜80℃の範囲にある。
 (5) 熱安定性:50℃、30分の処理で約90%以上の酵素活性を保持し、60℃、30分の処理でも約50%以上の残存活性を示す。
 (6) 等電点:8.1付近である。
 (7) 分子量:SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定した結果、約22,500である。
 (8) 阻害:ヨード酢酸、EDTAにより弱く阻害を受け、Hg2+、SDSにより強く阻害される。
(2)下記の理化学的性質を有する遺伝子組換え型耐熱性キシラナーゼXP2
 (1) 作用:キシランの1,4-β-D-キシロシド結合を加水分解し、キシロース及びキシロオリゴ糖の還元糖を生成する。
 (2) 基質特異性:カバキシラン、小麦キシラン等の調製キシランの他、キシランを含有する広葉樹クラフトパルプ、小麦フスマ等に作用する。
 (3) 至適pH及び安定pH範囲:反応の至適pH範囲はpH5〜8であり、安定pH範囲は4.5〜9である。
 (4) 作用適温の範囲:60〜90℃の範囲にある。
 (5) 熱安定性:70℃、30分の処理で約90%以上の残存活性を示す。
 (6) 等電点:8.5付近である。
 (7) 分子量:SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定した結果、約32,000である。
 (8) 阻害:Mn2+、Co2+、Cu2+、EDTA、ヨード酢酸により弱く阻害を受け、Hg2+、SDSにより強く阻害される。
 さらに、本発明は、配列番号1で表されるアミノ酸配列を実質的に含む遺伝子組換え型耐熱性キシラナーゼである。さらに、本発明は、前記耐熱性キシラナーゼ遺伝子を含む組換えベクターである。さらに、本発明は、前記組換えベクターによって形質転換された形質転換体である。
 さらに、本発明は、前記形質転換体を培地に培養し、得られる培養物から遺伝子組換え型耐熱性キシラナーゼを採取することを特徴とする遺伝子組換え型耐熱性キシラナーゼの製造方法である。さらに、本発明は、前記耐熱性キシラナーゼを生産するバチルス属に属する微生物又は前記形質転換体を培地に培養して得られる培養物、あるいは以下の理化学的性質を有する耐熱性キシラナーゼXP1若しくは遺伝子組換え型耐熱性キシラナーゼXP1および/又は耐熱性キシラナーゼXP2若しくは遺伝子組換え型耐熱性キシラナーゼXP2を有効成分として含む漂白剤である。
(1)下記の理化学的性質を有する耐熱性キシラナーゼXP1又は遺伝子組換え型耐熱性キシラナーゼXP1
 (1) 作用:キシランの1,4-β-D-キシロシド結合を加水分解し、キシロオリゴ糖の還元糖を生成する。
 (2) 基質特異性:カバキシラン、小麦キシラン等の調製キシランの他、キシランを含有する広葉樹クラフトパルプ、小麦フスマ等に作用する。
 (3) 至適pH及び安定pH範囲:反応の至適pH範囲はpH5〜8であり、安定pH範囲は3〜9である。
 (4) 作用適温の範囲:50〜80℃の範囲にある。
 (5) 熱安定性:50℃、30分の処理で約90%以上の酵素活性を保持し、60℃、30分の処理でも約50%以上の残存活性を示す。
 (6) 等電点:8.1付近である。
 (7) 分子量:SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定した結果、約22,500である。
 (8) 阻害:ヨード酢酸、EDTAにより弱く阻害を受け、Hg2+、SDSにより強く阻害される。
(2)下記の理化学的性質を有する耐熱性キシラナーゼXP2又は遺伝子組換え型耐熱性キシラナーゼXP2
 (1) 作用:キシランの1,4-β-D-キシロシド結合を加水分解し、キシロース及びキシロオリゴ糖の還元糖を生成する。
 (2) 基質特異性:カバキシラン、小麦キシラン等の調製キシランの他、キシランを含有する広葉樹クラフトパルプ、小麦フスマ等に作用する。
 (3) 至適pH及び安定pH範囲:反応の至適pH範囲はpH5〜8であり、安定pH範囲は4.5〜9である。
 (4) 作用適温の範囲:60〜90℃の範囲にある。
 (5) 熱安定性:70℃、30分の処理で約90%以上の残存活性を示す。
 (6) 等電点:8.5付近である。
 (7) 分子量:SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定した結果、約32,000である。
 (8) 阻害:Mn2+、Co2+、Cu2+、EDTA、ヨード酢酸により弱く阻害を受け、Hg2+、SDSにより強く阻害される。
 さらに、本発明は、前記漂白剤を用いてパルプを処理することを特徴とするパルプの漂白方法である。さらに、本発明は、前記漂白剤を用いてパルプを処理するにあたり、化学漂白及び/またはアルカリ抽出を、パルプ処理前、処理後又は処理中のいずれかに行うことを特徴とするパルプの漂白方法である。
 本発明により、新規な耐熱性キシラナーゼ及びその遺伝子、耐熱性キシラナーゼのその製造方法並びにその用途を提供することができる。本発明により、耐熱性キシラナーゼを生産することが可能になり、耐熱性キシラナーゼの工業的生産に貢献するものである。また、本発明の耐熱性キシラナーゼ及び/または本発明の菌株の培養物をパルプに処理することにより、パルプの漂白性を向上させ、紙パルプ製造において塩素等の薬品低減、排水中のAOX低減等に貢献するものである。
 以下、本発明を詳細に説明する。
(1)酵素の理化学的性質
 先ず、本発明の耐熱性キシラナーゼXP1と耐熱性キシラナーゼXP2の理化学的性質について説明すると、以下の通りである。
 (1) 作用
 キシラン(カバ材由来、シグマ社製)の1%溶液(pH7.0、40mMリン酸ナトリウム緩衝液)5mlにXP1及びXP2をそれぞれ10 Uずつ添加し、60℃にて反応させた。所定時間反応後に煮沸して反応を停止し、10μlを薄層クロマトグラフィーに供した。薄層はメルク社製のHPTLC Kieselgel60 F254を用い、展開溶媒はn−ブタノール:酢酸:水=10:5:1とした。発色はジフェニルアミン−アニリン試薬を噴霧し、120℃にて10分間加熱して行った。
結果を図1に示す。図中の時間は酵素の反応時間を表す。この結果から、キシランに作用してXP1はキシロオリゴ糖を、XP2はキシロース及びキシロオリゴ糖を生成することが明らかである。
 (2) 基質特異性
 カバキシラン、小麦キシラン等の調製キシランの他、キシランを含有する広葉樹クラフトパルプ、小麦フスマ等に作用する。
 (3) 至適pH及び安定pH範囲
 各酵素の反応至適pH及びpH安定性を、グリシン−塩酸緩衝液(pH3以下)、酢酸緩衝液(pH4〜5)、リン酸ナトリウム緩衝液(pH6〜7)、トリス−塩酸緩衝液(pH8〜9)、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH9.1〜10.1)を用いて測定した。それぞれのpHで各酵素の酵素活性を測定した。
 結果を図2に示す。図中、「○」はXP1、「■」はXP2を表す。図2より、XP1、XP2ともに酵素反応の至適pHは5〜8であった。また、各酵素をそれぞれ50mMの所定緩衝液中に4℃で二晩保持した後に酵素活性を測定した。結果を図3に示す。図中、「○」はXP1、「■」はXP2を表す。図3より、XP1はpH3.0〜9.0で安定であり、XP2はpH4.5〜9.0で安定であった。
 (4) 力価の測定法
 キシラナーゼ活性の測定は次のように行った。キシラン(カバ材由来、シグマ社製)の1%溶液(pH6.5、1/10 McIlvaine緩衝液)200μlに被検液50μlを添加し、70℃にて5分間反応させる。DNS試薬を500μl添加して5分間煮沸した後、直ちに氷冷して4mlの蒸留水を加えて500nmの吸光度を測定する。検量線は濃度既知のキシロースを用いて作製する。キシラナーゼの活性単位については上記の条件で1分間に1μmolの還元糖を生成する酵素量を1Unit(ユニット:U)とした。
 (5) 作用適温の範囲
 反応温度を変えて各酵素の酵素活性を測定した。結果を図4に示す。図中、「○」はXP1、「■」はXP2を表す。図4より、至適温度はXP1では70℃、XP2では80℃であった。また、所定の温度で50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.2)中に各酵素を30分間放置した後に酵素活性を測定した。
 結果を図5に示す。図中、「○」はXP1、「■」はXP2を表す。図5より、XP1は 50℃、30分の処理で約90%以上の酵素活性を保持し、60℃、30分の処理でも約50%以上の残存活性を示した。一方、XP2は、70℃、30分の処理で約90%以上の残存活性を示した。
 (6) 等電点
 SERVA社製PRECOAT pH3〜10による等電点電気泳動を行った結果、XP1の等電点は8.1、XP2の等電点は8.5であった。
(7) 分子量
 SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定し、XP1の分子量は約22,500、XP2の分子量は約32,000であった。
(8) 金属イオン、阻害剤の影響
 種々の金属塩を1mMになるように酵素液に添加して4℃で一晩保持した後、反応液中にも同種の金属塩を1mMになるように添加してXP1及びXP2の酵素活性を測定した。
 結果を表1に示す。表1より、XP1はHg2+で強く阻害され、XP2はMn2+、Co2+、Cu2+により弱く阻害され、Hg2+で強く阻害された。
Figure 2004121257
阻害剤等種々の物質を1mMになるように酵素液中に添加し、4℃で一晩保持した後、反応液中にも同種の物質を1mMになるようにXP1、XP2の各酵素液中に添加して活性を測定した。結果を表2に示す。表2より、XP1は、ヨード酢酸、EDTAにより弱く阻害され、SDSで強く阻害された。また、XP2はEDTA、ヨード酢酸により弱く阻害され、SDSで強く阻害された。
Figure 2004121257
ところで、本発明の酵素は反応至適温度が70℃以上の耐熱性キシラナーゼであって、従来のものと相違する理化学的性質を有する新規な耐熱性キシラナーゼである。従来公知の耐熱性キシラナーゼとしては以下の報告がある。Johnらはアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)Strain 21 由来の反応至適pHが5.5〜6、反応至適温度が65℃〜80℃のキシラナーゼIAを報告(Can.J.Biochem.,57,125,1979)しているが、等電点の記載はなく、分子量は50,000である。
Berengerらは、クロストリジウム・ステルコラリウム(Clostridium stercorarium)由来の反応至適pHが6〜7、反応至適温度が75℃のキシラナーゼを3種類(A、B、C)を単離(Can.J.Microbiol.,31,635,1985)しているが、いずれも等電点が4.5付近であり、また分子量も44,000〜72,000である。Wangらはストレプトミセス・シアネウス(Streptomyces cyaneus)由来の反応至適pHが8.5、反応至適温度72℃のキシラナーゼIを単離(J.Gen.Microbiol.,139,1987,1993)しているが、分子量が37,000であり、等電点が5.1 である。
バチルスについては、Hondaらがバチルス(Bacillus)C-125 株から反応至適pHが6〜7で反応至適温度が70℃のキシラナーゼNと反応至適pHが6〜10で反応至適温度が70℃のキシラナーゼAを単離している(Can.J.Microbiol.,31,538,1985)が、分子量がそれぞれ16,000と43,000である。特表平6-506107号公報では、バチルス由来の反応至適pH4.8〜7の60℃で安定なキシラナーゼについて記載されているが、分子量は22,000で等電点が7.7であり、反応至適温度については記載がない。
以上より、これらのキシラナーゼは至適温度、至適pH、分子量、等電点等が本発明のキシラナーゼとは異なることから、本発明のXP1及びXP2は何れも新規な耐熱性キシラナーゼであると認定した。
 本発明の酵素を従来のキシラナーゼと比較した結果を表3に示す。
Figure 2004121257
(2)微生物
 次に、本発明の耐熱性キシラナーゼを生産する微生物について説明する。本発明において使用される微生物は、バチルス属に属し、耐熱性キシラナーゼ生産能を有する菌株であって、その具体例としては、バチルス・エスピー2113又はバチルス・エスピー208が挙げられる。
 以下それぞれの微生物について説明する。
A.バチルス・エスピー2113
 バチルス・エスピー2113は、本発明者らが土壌中から分離した菌株であり、カバキシランまたはコムギキシラン1%、ペプトン0.5%、酵母抽出物0.5%、K2HPO4 0.1%、MgSO4・7H2O 0.02%、pH7.0の培地を用いた45℃の培養でよく生育する。本菌株の菌学的性質は次の通りである。
 (1) 形態的性質について
 i) 0.3〜0.6×2〜5μmの運動性を有する桿菌である。2〜3連の連鎖形態を示すことがある。菌体の中央に胞子を形成する。
 ii) グラム染色性は不定で抗酸性は陰性である。
 (2) 各種培地における生育状態等は以下に示す通りである。なお、培養温度は45℃とした。
 i) 肉汁寒天平板培地(Difco Beef Extract 1%、Bacto Peptone 1%、NaCl 0.5 %、寒天1.5%、pH7.0)では、コロニーの形はほぼ円形であり、その周縁はやや波状である。やや光沢のある半透明のコロニーである。肉汁寒天斜面培地(Difco Beef Extract 1%、Bacto Peptone 1%、NaCl 0.5%、寒天1.5%、pH7.0)では、やや光沢が有り、薄く拡布状に生育する。肉汁液体培地(Difco Beef Extract 1%、Bacto Peptone 1%、NaCl 0.5%、寒天1.5%、pH7.0)において、液面ではほとんど生育せず沈渣する。いずれも生育はあまり良くない。Difco 社のNutrient Brothを用いた肉汁寒天培地(Difco Nutrient Broth 0.8%、寒天1.5%、pH7.0)ではさらに生育は悪い。
 ii) 肉汁寒天平板培地(Difco Beef Extract 1%、Bacto Peptone 1%、NaCl 0.5%、寒天1.5%、pH7.0)にNaClを2%添加した培地では生育するが、5%添加すると生育しない。
 iii) 肉汁ゼラチン培地(Difco beef extract 1%、ペプトン1%、NaCl 0.5%、ゼラチン12% pH7.0)では液化しない。
(3) 生理学的性質を表4に示す。
Figure 2004121257
以上の菌学的性質をもとにバーギーズマニュアルシステマティックバクテリオロジー(Bergey's Manual of Systematic Bacteriology)を参考にして本菌株の同定を行った。その結果、本菌株は胞子を形成するグラム染色性不定の桿菌であり、カタラーゼ陽性であることからバチルス(Bacillus)属に属することは明らかである。種についてはバチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)に近いが、本発明の菌株はオキシダーゼが陽性であり、55℃でも生育できるのに対し、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)はオキシダーゼが陰性であり、50℃以上では生育できないことから、本発明の菌株はバチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)とは異なる。
耐熱性キシラナーゼの報告(T.Nanmori et al.,J.Bacteriol.,172 ,6669,1990)があるバチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)と比較しても、本発明の菌株は胞子の位置が中央であり、ゼラチンを加水分解できず、65℃では生育できないのに対し、バチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)は胞子の位置が端であり、ゼラチンを加水分解でき、65℃でも生育できることから、本発明の菌株はバチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)とは異なる。
また、特表平6-506107号公報に記載のキシラナーゼを生産するバチルス(Bacillus)No.I-1017 及びNo.I-1018 は、生育至適温度が62℃であり、フルクトース、アラビノースを利用しない。これに対し、本発明の菌株は生育至適温度が35〜50℃であり、またフルクトース、アラビノースを利用することから、本発明の菌株はバチルス(Bacillus)No.I-1017 及びNo.I-1018 とは異なる。
以上のことから、本発明の菌株に該当する菌種が無いため該菌株を新菌株と判断し、バチルス・エスピー2113と命名した。該バチルス・エスピー2113は、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に、FERM BP-5264として寄託されている。
B.バチルス・エスピー208
 バチルス・エスピー208は、カバキシランまたはコムギキシラン1%、ペプトン 0.5%、酵母抽出物 0.5%、K2HPO4 0.1 %、MgSO4・7H2O 0.02%、pH 7.0の培地を用いた45℃の培養でよく生育する。本菌の菌学的性質は次の通りである。
 (1) 形態的性質について
 1) 0.3〜0.6 × 2〜5μmの運動性を有する桿菌である。2〜3連の連鎖形態を示すことがある。菌体の中央に胞子を形成する。
2)グラム染色性は不定で抗酸性は陰性である。
(2) 各種培地における成育状況等は以下に示す通りである。なお培養温度は45℃とした。
1) 肉汁寒天培地(Difco Nutrient Broth 0.8%, 寒天 1.5%, pH 7.0) ではコロニーの形はほぼ円形であり、その周縁はやや波状である。やや光沢のある半透明のコロニーであり生育はよい。
2) 肉汁寒天平板培地(Difco Nutrient Broth 0.8 %, 寒天 1.5%, pH 7) にNaClを2%添加した培地では生育するが、5%添加すると生育しない。
3) 肉汁ゼラチン培地(Difco Beef Extract 1%, ゼラチン 12%, pH7.0)では液化しない。
(3)生理学的性質を表5に示す。
Figure 2004121257
 以上の菌学的性質についてバーギーズマニュアルシステマティックバクテリオロジー(Bergey's Manual of Systematic Bacteriology)を参考にして同定を行った。その結果、本発明菌株は胞子を形成する好気性のグラム染色不定の桿菌であり、カタラーゼ陽性であることからバチルス(Bacillus)属に属することは明らかである。
 種については、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)の持つ性質と類似するが、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)の生育温度範囲は10〜40℃であり、オキシダーゼが陰性であるのに対し、本発明菌の菌株バチルス・エスピー208の生育温度は、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)では生育することができない高温下(40〜60℃)でも生育可能であり、オキシダーゼ陽性であることから、本発明菌株は、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)とは異なる。
 また、耐熱性キシラナーゼ生産の報告(T.Nanmori et al., J. Bacteriol., 172, 6669, 1990)があるバチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)と比較すると、本発明菌株は胞子の位置が中央であり、ゼラチンを加水分解できないことに対し、バチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)は胞子の位置が端であり、ゼラチンを加水分解できることから本発明菌株は、バチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)とは異なる。
 また、特表平6-506107号公報に記載のキシラナーゼを生産するバチルス(Bacillus) NO.I-1017及びNO.I-1018は、アラビノースを利用しないのに対し、本発明菌株はアラビノースを利用することから本発明菌株はバチルス(Bacillus) NO.I-1017及びNO.I-1018とは異なる。従って、本発明菌株は、前記バチルス・エスピー2113に類似する菌株である。但し、バチルス・エスピー2113株は肉汁培地(Nutrient Broth 0.8%, 寒天 1.5%)で生育が悪いのに対し、本菌株は肉汁培地で生育が良いことから、本菌株はバチルス・エスピー2113株と区別し得ると考え、本菌株を新菌株として判断し、バチルス・エスピー208と命名した。
 バチルス・エスピー208は、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号FERM BP-5321として寄託されている。
(3)耐熱性キシラナーゼ遺伝子のクローニング
 キシラナーゼ遺伝子をクローニングするためにDNAライブラリーの作製を行う。DNAライブラリーは、バチルス・エスピー2113株又は208株から染色体DNAを抽出し、適当な制限酵素で処理したものを適当なベクターにつないだ後、適合する宿主に導入することで作製することができる。
 バチルス・エスピー2113株又は208株から染色体DNAを抽出するには、通常の方法を用いることができる(例えば、Molecular Cloning; Cold Spring Harbor Laboratory (1982)1のBlinとStaffordの方法) 。次に、得られた染色体DNAを適当な制限酵素で処理し、部分消化を行った後、ショ糖密度勾配遠心法により3〜5kbp の断片画分を得る。同じ接着末端を生じさせる制限酵素で処理したクローニングベクターに、上記で得られたDNA断片を挿入する。ライブラリー作製に用いられるベクターとしては、例えばプラスミドベクター、ファージベクター等が挙げられ、宿主としては、例えば大腸菌、酵母等が挙げられる。
 また、クローニングベクターとしては、例えばpUC系クローニングベクターを用いることができる。上記で得られたDNAライブラリーからの目的とする遺伝子の単離にあたっては、前記DNAライブラリーを用いて大腸菌を形質転換した後、キシラン培地に塗布し、ハローの形成を指標に行う。このようにしてクローニングされたDNAの塩基配列は、放射標識又は蛍光標識を用いるジデオキシ法、マキサム−ギルバート法等により解析することができる。
(4)酵素の製造方法
 次に、本発明の酵素の製造方法について説明する。
 (1) 耐熱性キシラナーゼ生産菌の培養液からの本発明の酵素の精製
 本発明のバチルス・エスピー2113株又は208株を培養することにより耐熱性キシラナーゼを生産することができる。培養のための炭素源、窒素源には、資化して耐熱性キシラナーゼを生産することのできるものであればいずれも用いることができる。例えば、炭素源としては、キシラン若しくはキシランを含む小麦ふすま、パルプ、バガス、コーンファイバー、稲わら等の農産廃棄物又は植物繊維等を使用することができる。窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、各種アミノ酸、大豆、コーンスティープリカー、各種無機窒素等の窒素化合物を用いることができる。また、各種の塩類やビタミン、ミネラル等を適宜用いることができる。
 培養温度およびpHは、菌が生育して耐熱性キシラナーゼを生産する範囲であればいずれでも良く、培養温度は20〜55℃、好ましくは35〜50℃、pHは5〜9、好ましくは6〜8である。本発明の微生物を培養した後、菌体を分離し、培養濾液をそのまま耐熱性キシラナーゼ粗酵素液として使用することができる。かかる耐熱性キシラナーゼ粗酵素液は、反応至適温度が60〜80℃、至適pHが5〜7である。
 また、透析、塩析、限外濾過、凍結乾燥等により、耐熱性キシラナーゼを濃縮又は固体化することができる。さらに、培養濾液を硫安分画、ゲル濾過による分子量分画や各種イオン交換樹脂、ハイドロキシアパタイト、等電点分画等を適宜組み合わせ、また繰り返すことにより耐熱性キシラナーゼXP1とXP2を精製することができる。具体的な精製方法については、実施例に示す。
 (2) 遺伝子工学的手法による遺伝子組換え型耐熱性キシラナーゼの精製
本発明の耐熱性キシラナーゼは、クローニングされた遺伝子を発現させることにより精製することもできる(本発明において、遺伝子を発現させて得られた酵素を「遺伝子組換え型耐熱性キシラナーゼ」という)。その手法は、前記(3) によって得られたキシラナーゼ遺伝子を、適当な宿主・ベクターを用いて発現することにより高生産することができる。発現に用いられるベクターとしては、プラスミドベクター、ファージベクター等が主に使われる。宿主として、大腸菌、枯草菌、酵母等が主に使われる。培養のための炭素源、窒素源には、資化して耐熱性キシラナーゼを生産することができるものであればいずれも用いることができる。例えば、炭素源としては、キシラン若しくはキシランを含む小麦ふすま、パルプ、バカス、コーンファイバー、稲わら等の農業廃棄物又は植物繊維等を使用することができる。窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、各種アミノ酸、大豆、コーンスティープリカー、各種無機窒素等の窒素化合物を用いることができる。また、各種塩類、ビタミン、ミネラル等を適宜用いることができる。培養温度及びpHは、菌が耐熱性キシラナーゼを生産する範囲であればいずれでも良く、培養温度は好ましくは37℃、pHは好ましくは7である。酵素の精製方法としては、硫安分画、ゲル濾過による分子量分画や各種イオン交換樹脂、ハイドロキシアパタイト、等電点分画等を適宜組み合わせ、また繰り返すことにより精製することができる。得られた精製酵素が求めるキシラナーゼであるかの確認は、得られた精製酵素の分子量、至適pH、至適温度、N末端アミノ酸配列等をバチルス・エスピー2113株の生産した耐熱性キシラナーゼと比較することにより判断できる。具体的な酵素の取得については、実施例に示す。
(5)パルプの漂白方法
 次に、本発明の酵素を用いたパルプの漂白方法について説明する。化学パルプ及び機械パルプ製造工程において、本発明の耐熱性キシラナーゼXP1(遺伝子組換え型を含む)及び/またはXP2(遺伝子組換え型を含む)及び/またはバチルス(Bacillus)属に属する菌株バチルス・エスピー2113若しくはバチルス・エスピー208の培養物でパルプを処理することで漂白を行うことができる。さらに酵素処理の前後、あるいは途中に化学漂白及び/またはアルカリ抽出を行うことでパルプの漂白を行うことができる。
 パルプに処理する培養物又は酵素量については、耐熱性キシラナーゼ単位としてパルプの絶乾重量1gあたり0.1〜5U、好ましくは0.5〜3U添加すればよい。反応条件は培養濾液(粗酵素液)の場合、反応温度50〜90℃、pH5〜8であり、精製酵素の場合はXP1では反応温度50〜80℃、pH5〜8である。XP2では反応温度60〜90℃、pH5〜8である。反応時間は、0.2〜24時間、好ましくは0.5〜8時間である。化学漂白に用いる試薬としては、塩素、二酸化塩素、二酸化窒素、次亜塩素酸塩、酸素、過酸化水素、オゾン等が挙げられる。またアルカリ抽出には、当業者として公知の多くのアルカリ性化合物を用いることができる。アルカリ抽出には、水酸化ナトリウム換算で0.5〜3%(対絶乾パルプ)のアルカリを用い、酸素や過酸化水素等を添加しながらアルカリ処理を行うことができる。
 以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されない。
  〔実施例1〕粗酵素液の調製(1)
 キシラン(カバ材由来、シグマ社製)0.6%、ペプトン0.5%、酵母抽出物0.5%、K2HPO40.1%、MgSO4・7H2O 0.02%を含む液体培地10ml(pH7.0 )を、内径25mm試験管に採り、紙栓をした後121℃で15分間蒸気滅菌した。これにバチルス・エスピー2113を1白金耳植菌し、45℃で往復振盪培養した(振幅25mm、300往復/分)。培養終了後、遠心分離(10,000rpm ×10分)して培養上清を分離し、耐熱性キシラナーゼの粗酵素液を得た。
1%キシラン溶液(ブナ材キシラン、シグマ社製 1/10 McIlvaine Buffer pH6.5)200μlに酵素溶液50μlを添加し、70℃にて5分間反応させた。DNS試薬を500μl添加して5分間煮沸した後直ちに氷冷し、4mlの蒸留水を加えて500nmの吸光度を測定した。検量線は濃度既知のキシロースを用いて作成した。
 キシラナーゼ活性は、上記の条件で1分間に1μmolの還元糖を生成する酵素量を1ユニット(Unit)とした。その結果、培養上清中の耐熱性キシラナーゼ活性は、培養開始後24時間で400U/ml、48時間で500 U/mlであった。
  〔実施例2〕粗酵素液の調製(2)
 キシラン(カバ材由来、シグマ社製)0.6%、ペプトン0.5%、酵母抽出物0.5%、K2HPO40.1 %、MgSO4・7H2O 0.02%を含む液体培地(pH 7)10mlを内径25mmの試験管に採り、紙栓をした後121℃で15分間蒸気滅菌した。これにバチルス・エスピー208を1白金耳植菌し、45℃で往復振盪培養した(振幅25mm、300往復/分)。培養終了後、遠心分離(10,000rpm×10分)して培養上清を分離し、耐熱性キシラナーゼの粗酵素液を得た。培養上清中の耐熱性キシラナーゼ活性を次の方法により測定した。
 1%キシラン溶液(ブナ材キシラン、シグマ社製 1/10 McIlvaine Buffer pH6.3)200μlに酵素溶液50μlを添加し、70℃にて5分間反応させる。DNS試薬を500μl添加して5分間煮沸した後直ちに氷冷し、4mlの蒸留水を加えて500nmの吸光度を測定した。検量線は濃度既知のキシロースを用いて作成した。
 キシラナーゼ活性は、上記の条件で1分間に1μmolの還元糖を生成する酵素量を1ユニット(Unit)とした。その結果、培養上清中の耐熱性キシラナーゼ活性は、培養開始後24時間で400U/ml、48時間後で500U/mlであった。
  〔実施例3〕耐熱性キシラナーゼの精製
キシラン(カバ材由来、シグマ社製)0.6 %、ペプトン0.5 %、酵母抽出物0.5 %、K2HPO40.1%、MgSO4・7H2O 0.02 %、pH7.0 の液体培地50mlを500 ml容坂口フラスコに取り綿栓をした後、121 ℃で15分間蒸気滅菌した。これに実施例1で得られた培養液を1ml加え、45℃、3日往復振盪培養(振幅10cm、100 往復/分)した。培養終了後、遠心分離(8,000rpm×10分) により培養上清を得た。この培養上清を硫安分画し、20〜60%画分を遠心分離(20,000rpm ×10分)にて回収した後、20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.2)を外液として透析を行った。得られた粗酵素液について、20mM酢酸緩衝液(pH5.0)で平衡化したCMトヨパール650-C (直径2.5cm ×30cm)を用いてイオン交換クロマトグラフィーを行った。
吸着画分を0M〜0.3Mまでの濃度勾配でNaClを含む該緩衝液にて溶出し、5.3mlずつ分画した。その結果、キシラナーゼ活性は2つのピークに分かれて溶出し、前半に溶出した活性画分をキシラナーゼXP1、後半に溶出した活性画分をキシラナーゼXP2とした。
それぞれの活性画分を集め、再度硫安分画を行い、20〜60%画分を遠心分離(20,000rpm ×10分)により回収した後、20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.2)に50mMのNaClを含む緩衝液で平衡化したSephacryl S-200(直径2.5cm×93cm)を用いて該緩衝液により溶出し、ゲル濾過を行った。XP1については流速34ml/hr とし、5mlずつ分画した。また、XP2については流速34ml/hr とし、6.7mlずつ分画した。
それぞれ活性画分を集め、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、均一に精製されていることが確認できた。培養濾液に対する各精製酵素の収率はXP1が47.8%、XP2が7.8%であった。また比活性はXP1が1420 U/mg、XP2が919 U/mgであった。
  〔実施例4〕耐熱性キシラナーゼ遺伝子のクローニング
(1) 染色体遺伝子ライブラリーの作製
 キシラン(カバ材由来、シグマ社製)0.6%、ペプトン0.5%、酵母抽出物0.5%、K2HPO40.1%、MgSO4・7H2O 0.02%、pH7.0の液体培地50mlを500ml 容坂口フラスコに取り綿栓をした後、121℃で15分間蒸気滅菌した。これにバチルス・エスピー2113株を1白金耳植菌し、45℃で一晩往復振盪培養(振幅10cm、100 往復/分)した。培養終了後、遠心分離(10,000 rpm×10分)により菌体を得た。
本菌体を5mlのグルコース−リゾチーム溶液(50mMグルコース、10mM EDTA 、25mM Tris-HCl 緩衝液(pH8.0)、4mg/ml リゾチーム)に懸濁し、室温で15分放置した。5mlのアルカリ溶液(02N NaOH、1% SDS)を加え、穏やかに混ぜ、氷中にて15分間冷却した。この後、フェノール抽出、クロロホルム抽出を行ない、抽出した水層部分にエタノールを徐々に添加しDNAが析出したところで染色体DNAをガラス棒にて巻取り、TE溶液に懸濁した。得られた染色体DNA 100μg を制限酵素EcoRIで部分消化し、3〜20%ショ糖密度勾配超遠心分離法(22,500rpm, 16 時間)により分画し、3〜5kbp 断片画分をエタノール沈澱により回収した。
 (2) 耐熱性遺伝子の大腸菌への形質転換
 大腸菌クローニングベクターpUC19 (宝酒造社製)、1μgを制限酵素EcoRIで完全消化した後、アルカリホスファターゼ(Calf intestine由来)により脱リン酸化し、上記エタノール沈澱後のDNA500ng 及びT4 DNAリガーゼ2.5ユニットを含むライゲーションバッファー中で16℃、16時間反応させ、本発明の遺伝子とベクターとを連結した。
 得られたDNAライブラリーを用いて、塩化カルシウム法により大腸菌JM109株を形質転換した。
 (3) DNAライブラリーからのキシラナーゼ遺伝子の単離
 XP1遺伝子のクローニング
 上記染色体DNAライブラリーからのXP1キシラナーゼ遺伝子を含むクローンの選抜は、該DNAライブラリーを用いて大腸菌を形質転換した後、キシラン培地に塗布し、コロニー周辺のハロー形成を指標に行った。すなわち、該DNAライブラリーを用いて大腸菌を形質転換した後、100 μg/mlのアンピシリンを含むキシラン培地(1%キシラン(コムギ由来;シグマ社製)、1%ペプトン、0.5%酵母抽出物、0.5% NaCl、2%寒天(pH 7.0))に塗布し、37℃で一晩培養し、ハロー形成を観察した。得られたクローンよりプラスミドDNAをアルカリ抽出法により大量に調製し、超遠心分離(16時間, 20℃)により精製し、塩基配列を決定した。塩基配列の決定はUnited States Biochemical 社製のシーケナーゼのキットを用いて行なった。
 その結果を配列番号2に示す。上記XP1キシラナーゼ遺伝子の塩基配列からXP1キシラナーゼのアミノ酸配列を推定した結果を配列番号1に示す。また、上記クローニングにより得られたキシラナーゼ(XP1)をコードする遺伝子を含むDNA断片の制限酵素地図を図6に示す。
 なお、得られたXP1キシラナーゼ遺伝子を含む大腸菌形質転換株E. coli JM109/pUCXP1は、工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP-5320として寄託されている。
 (4) XP1のN末端配列の決定
 XP1のN末端アミノ酸配列の決定は、バチルス・エスピー2113の培養上清より精製したXP1を試料とし、プロテインシーケンサー(Applied Biosystems(パーキンエルマー社)477A)及びPTHアナライザー(Applied Biosystems(パーキンエルマー社)120A)を用いて行った。その結果、成熟型キシラナーゼXP1のN末端配列は配列番号3に示す通りであった。
  〔実施例5〕遺伝子組換え型耐熱性キシラナーゼの製造
 本実施例では、遺伝子組換え型耐熱性キシラナーゼXP1の製造を行った。プラスミドpUCXP1を、EcoRI消化して得られた本発明の遺伝子EcoRI断片500 ngと制限酵素EcoRIで完全消化した後、アルカリフォスファターゼ(Calf Intestine由来)により脱リン酸化した大腸菌・枯草菌シャトルベクターpHY3000PLK(宝酒造社製)1μgと、T4リガーゼ2.5 ユニットとをライゲーションバッファー中、16℃、2時間反応させ、連結させた。これを用いて塩化カルシウム法にて大腸菌JM109を形質転換した。
 50μg/ml のテトラサイクリンを含むL培地(1%ペプトン、0.5 %酵母エキス、0.5 %NaCl(pH7.0))中に植菌し、37℃、一晩培養した。得られた形質転換体よりアルカリ抽出法にてプラスミドDNAを大量調製した。これをpHYXP1とし、その結果を図8に示す。上記プラスミドDNAを用いて枯草菌ISW1214株をプロトプラスト法にて形質転換した。得られた形質転換体を500 ml容坂口フラスコにて50μg/mlのテトラサイクリンを含む50ml液体キシラン培地(0.6 %カバキシラン(シグマ社製)、1%ペプトン、0.5 %酵母エキス、0.5 % NaCl(pH7.0)) 中に植菌し、37℃、3日間培養した。培養終了後、遠心分離(10,000rpm ×10分) を行い培養上清を回収した。培養上清中の耐熱性キシラナーゼの活性は、培養開始後48時間で160U/ml であった。
 この培養上清を硫安分画し、20〜60%画分を遠心分離(20,000rpm ×10分) にて回収した後、20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.2 )を外液として透析を行った。得られた粗酵素液について、20mM酢酸緩衝液(pH5.0 )で平衡化したCMトヨパール650-C(直径1.0cm ×17cm) を用いてイオン交換クロマトグラフィーを行った。
吸着画分を0M 〜0.3Mまでの濃度勾配でNaClを含む20mM酢酸緩衝液(pH5.0)にて溶出し、1.5 mlずつ分画した。活性画分を集め、SDSポリアクリルアミド電気泳動を行い、均一に精製されていることを確認した。本酵素は、分子量約22,500、反応至適pH5〜8、安定pH範囲3〜9、作用適温範囲50〜80℃であり、XP1であると断定した。
 〔実施例6〕パルプの漂白(1)
 広葉樹酸素晒クラフトパルプ(カッパー価8.5、白色度46.0%)に実施例1で得られたバチルス・エスピー2113の培養上清(500 U/mlの耐熱性キシラナーゼを含む)をパルプ絶乾重量1gあたり2μl添加してパルプ濃度3%、pH7.0、70℃にて2時間反応させた。反応終了後、パルプ濃度を10%に調製して塩素−アルカリ−次亜塩素酸塩−二酸化塩素の順で漂白を行なった。なお、培養上清を添加せずに同様に処理したものを対照の漂白パルプとした。漂白の標準条件は次の通りである。
 塩素処理:添加率はパルプ絶乾重量あたり1.6%で40℃、30分間処理
 アルカリ抽出:アルカリ添加率は絶乾パルプあたり1.0%で60℃、100分間処理
 次亜塩素酸塩処理:添加率は0.5%で45℃、120分間処理
 二酸化塩素処理:添加率は0.2%で70℃、180分間処理
この標準の漂白条件に対し、塩素およびアルカリ、あるいは次亜塩素酸塩の添加量を減らして漂白した。その結果、対照の漂白パルプと同等の白色度(85.6%)を得るために必要な塩素及びアルカリ量を25%減添することができた。また、次亜塩素酸塩については、50%削減することができた。
 また、漂白排水中のAOX量をハロゲン分析装置TOX−10(三菱化学製)を用いて定量した結果、培養上清処理によりAOXを25%減らすことができた。塩素、次亜塩素酸塩、アルカリ又はAOX等を削減できたことは、本酵素の作用によりパルプの漂白性が改善されたことを示すものであり、このことによって薬品コストを削減できるとともに、有機塩素化合物の生成を抑制することができる点で有用である。
  〔実施例7〕パルプの漂白(2)
 広葉樹酸素晒しクラフトパルプ(カッパー価8.5、白色度46.0%)に、実施例2で得られたバチルス・エスピー208の培養上清(500U/mlの耐熱キシラナーゼを含む)をパルプ絶乾重量1gあたり2μl添加してパルプ濃度3%、pH7.0、70℃にて2時間反応させた。反応終了後、パルプ濃度を10%に調整して塩素−アルカリ抽出−次亜塩素酸−二酸化塩素の順で常法により漂白を行った。なお、培養上清を添加せずに同様に処理したものを対照の漂白パルプとした。漂白の標準条件は次の通りである。
 塩素処理:塩素添加率はパルプ絶乾重量あたり1.6%で40℃、30分間処理
アルカリ抽出:アルカリ添加率は絶乾パルプあたり1.0 %で60℃、100分間処理
次亜塩素酸処理:次亜塩素酸添加率は0.5 %で45℃、120分間処理
 二酸化塩素処理:二酸化塩素添加率は0.2 %で70℃、180分間処理
 この標準の漂白条件に対し、酵素前処理パルプの漂白では、塩素及びアルカリ、あるいは次亜塩素酸の添加量を減らして漂白した。その結果、酵素無処理の対照の漂白パルプと同等の白色度(85.6 %)を得るために必要な塩素及びアルカリの量を27%軽減することができた。また次亜塩素酸塩については、53%削減することができた。
 また漂白排水中のAOX量をハロゲン分析装置TOX-10(三菱化学製)を用いて定量した結果、培養上清処理によりAOXを28%減らすことができた。
  〔比較例1〜5〕パルプの漂白(市販酵素との比較)
 各種市販酵素を用いてパルプの酵素処理及び漂白処理を行い、塩素、次亜塩素酸塩及びAOXの削減率を実施例6及び7の結果と比較した。比較例1としてチバガイギー(Chiba-Geigy)社製のIrgazyme 40-X4、比較例2として同社のIrgazyme 10A-X4 、比較例3としてノボ(Novo) 社製のPulpzyme HC 、比較例4としてアルコ(Alko) 社製のEcopulp 、比較例5としてサンド(Sandoz) 社製のCartazyme HSを用い、実施例6及び7で行った処理と同様の処理を行った。実施例6及び7で得られた結果並びに各比較例の結果を表6に示す。
Figure 2004121257
 表6より、本発明の酵素は、従来の酵素と比較して、pH7.0 、70℃という条件では塩素及び二酸化塩素、AOXの削減率が高いことがわかった。特に、このような高い温度では活性がほとんどない酵素もあり、本発明の酵素は耐熱性において優れていることがわかった。
カバキシランに本発明の酵素を作用させたときの反応生成物の薄層クロマトグラフィー分析の結果を示す図である。 本発明の酵素の反応至適pHを示す図である。 本発明の酵素のpH安定性を示す図である。 本発明の酵素の反応至適温度を示す図である。 本発明の酵素の熱安定性を示す図である。 キシラナーゼXP1をコードする遺伝子を含むDNA断片の制限酵素地図である。 プラスミドpUCXP1の構築図である。 プラスミドpHYXP1の構築図である。
配列番号:1
配列の長さ:211
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:タンパク質
起源
 生物名:バチルス・エスピー(Bacillus sp.)
 株名:2113株
配列の特徴
 1-23 S sig peptide
24-211 S mat peptide
配列番号:2
配列の長さ:1207
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:Genomic DNA
起源
 生物名:バチルス・エスピー(Bacillus sp.)
株名:2113株
配列の特徴
 特徴を表す記号:P CDS
存在位置:379..1029
 特徴を決定した方法:E
配列番号:3
配列の長さ:10
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
起源
 生物名:バチルス・エスピー(Bacillus sp.)
株名:2113株

Claims (3)

  1.  以下の理化学的性質を有する、バチルス属に属する微生物由来の耐熱性キシラナーゼXP2。
    (1)作用:キシランの1,4-β-D-キシロシド結合を加水分解し、キシロース及びキシロオリゴ糖の還元糖を生成する。
    (2)基質特異性:カバキシラン、小麦キシラン等の調製キシランの他、キシランを含有する広葉樹クラフトパルプ、小麦フスマ等に作用する。
    (3)至適pH及び安定pH範囲:反応の至適pH範囲はpH5〜8であり、安定pH範囲は4.5〜9である。
    (4)作用適温の範囲:60〜90℃の範囲にある。
    (5)至適温度:80℃である。
    (6)熱安定性:70℃、30分の処理で約90%以上の残存活性を示す。
    (7)等電点:8.5付近である。
    (8)分子量:SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定した結果、約32,000である。
    (9)阻害:Mn2+、Co2+、Cu2+、EDTA、ヨード酢酸により弱く阻害を受け、Hg2+、SDSにより強く阻害される。
  2.  バチルス属に属する微生物を培養し、得られる培養物から耐熱性キシラナーゼXP2を採取することを特徴とする請求項1記載の耐熱性キシラナーゼXP2の製造方法。
  3.  請求項1記載の耐熱性キシラナーゼXP2の生産能を有するバチルス属に属する微生物。
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