以下、本発明の最良な実施の形態について、それぞれ図面を用いて説明する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態である定格電力65[W](定格電圧110[V])のハロゲン電球1は、石英ガラスや硬質ガラス等からなるバルブ2と、このバルブ2の後述する封止部9側に公知の接着剤3によって固着された例えばE形の口金4とを備えている。
バルブ2には、封止切りの残痕であるチップオフ部5、略回転楕円体形状のバルブ発光部6、縮径部7、略円筒状の筒部8および公知のピンチシール法によって形成された封止部9がそれぞれ順次連なるように形成されている。
このバルブ2の外面のうち、チップオフ部5、バルブ発光部6および縮径部7の外面には、可視光透過赤外線反射膜10が形成されている。また、必要に応じてバルブ2、特にバルブ発光部6の外面に酸化コバルトを含む酸化膜(図示せず)を形成することにより、高色温度の発光色を実現することができる。
なお、ここで言う「略回転楕円体形状」とは、完全な回転楕円体形状の場合はもちろんのこと、ガラスの加工上のばらつきによって完全な回転楕円体形状からずれてしまう場合も含むことを意味している。
バルブ2内には、封入ガス、すなわちハロゲン物質と希ガス、またはハロゲン物質と希ガスと窒素ガスとがそれぞれ所定量封入されているとともに、特にバルブ発光部6の領域内には発光体11が配置されている。
ハロゲン物質は、ハロゲンサイクルによって、点灯中、発光体11から蒸発したその構成物質であるタングステンを再び発光体11に戻し、バルブ2の黒化を防止するためのものであって、その濃度は10[ppm]〜300[ppm]の範囲内にあることが好ましい。また、ハロゲンサイクルを活性化させるためには、バルブ2内面における最冷点温度が200[℃]以上であることが好ましい。さらに、ハロゲンサイクルを適切に機能させるためには、バルブ2内の酸素濃度を100[ppm]以下にすることが好ましい。
希ガスには、クリプトンガスを用いることが好ましい。これにより、集光効率を高めるために後述するように個々の発光部15,16を近接配置し、発光体11をコンパクト化しているにもかかわらず、点灯時に個々の発光部15,16間でアーク放電が発生し、それらが断線するのを抑制することができる。
特に、封入ガスは、クリプトンガスを主成分として、窒素ガスおよびハロゲン物質を含み、バルブ2内のガス圧は、常温時において、2[atm]〜10[atm]の範囲内にあることが好ましい。この場合において、ガス圧が適正に抑えられているため、万一バルブ2が破損したとしても、その破片の勢いが照明器具に破損をおよぼすほど大きくならず、その一方でガス圧が適切に高いために、発光部15,16の構成材料であるタングステンが蒸発しにくく、長寿命化を実現することができ、さらには点灯時に個々の発光部15,16間でアーク放電が発生し、それらが断線するのを一層抑制することができる。バルブ2内のガス圧が2[atm]未満の場合、発光部15,16の構成材料であるタングステンの蒸発を抑えにくく、短寿命になるおそれがある。逆に、ガス圧が10[atm]を超える場合、万一バルブ2が破損したとき、その破片の勢いで照明器具を破損させるおそれがある。
また、封入ガスに窒素ガスを含む場合、その窒素ガスの組成比率は8[%]〜40[%]の範囲内にあることが好ましい。窒素ガスが適切に含まれているために、点灯時に個々の発光部15,16間でアーク放電が発生し、それらが断線するのをより一層抑制することができ、その一方で窒素ガスの組成比率が適切に抑えられているために、点灯中、発光体11の熱が窒素ガスを介して過度に放熱され、効率が低下するのを防止することができる。窒素ガスの組成比率が8[%]未満の場合、点灯時に個々の発光部15,16間でアーク放電が発生し、それらが断線するのをより一層抑制する効果を十分に発揮できない。逆に、窒素ガスの組成比率が40[%]を超えると、点灯中、発光体11の熱が窒素ガスを介して過度に放熱され、効率が低下するおそれがある。
発光体11の両端部には、例えばタングステン製の内部リード線12の一端部がそれぞれ接続されている。内部リード線12の他端部は、封止部9に封止されているモリブデン製の金属箔13を介して外部リード線14の一端部に接続されている。外部リード線14の他端部は、バルブ2の外部に導出しており、口金4の端子部分4a,4bにそれぞれ電気的に接続されている。
ここで、少なくとも一方の外部リード線14と口金4の端子部分4a(端子部分4b)との間には、万一、発光部15,16が断線し、その断線箇所でアーク放電が発生し、その衝撃でバルブ2が破損等するのを防止するために、ヒューズ(図示せず)を設けておくことが好ましい。後述するように発光部15,16を近接して配置する場合、発光部15,16が断線しなくとも個々の発光部15,16間でアーク放電が発生するおそれがあるので、両方の外部リード線14と口金4の端子部分4a,4bとの間にヒューズをそれぞれ設けることが好ましい。
封止部9には、放熱性を高めて封止部9に封止されている金属箔13が酸化し、バルブ2の気密性が損なわれるのを防止するために、凹凸が形成されていることが好ましい。
発光体11は、図2および図3に示すように、二つの発光部15,16を有している。これらの発光部15,16は、いずれもタングステン製であって、略直線状に伸びた略扁平状の一重巻きコイルからなり、各々が電気的に直列に接続されている。この一重巻きコイルを構成しているタングステン線の線径は0.015[mm]〜0.100[mm]、例えば0.050[mm]である。
なお、図2および図3では、発光部15,16をそれぞれ模式的に柱体として描いている。
図3は、発光体11を発光部15,16の長手方向から見たときの図であるが、「扁平状」の発光部15,16とは、具体的にその外形形状が、例えば曲線部が外側に向くように互いに対向する2つの半円部とそれらをつなぐ平行な2つの直線部とからなる略トラック形状であることを示している。もっともこのような略トラック形状以外に、単に真円を押し潰した形状、略楕円形状、および略扁平楕円形状等であってもよい。それらの形状は、発光部の作製プロセスにおいて、素線を巻き付ける芯線数、芯線の形状、それら芯線の配置等を適宜変更することによって実現することができる。
また、これら二つの発光部15,16は、図2および図3に示すように、その長手方向の中心軸b,cがバルブ2の長手方向の中心軸Xと略平行であり、かつバルブ2の長手方向の中心軸Xを挟むように互いに隣接した状態であって、各々の長手方向の中心軸b,cとバルブ2の長手方向の中心軸Xとは同一平面P(図3参照)上にある。また、扁平状である発光部15,16の長軸は、互いに略並行な位置関係にあり、発光部15,16の短軸は、平面Pに含まれる同一線上にある。
このような発光体11は、図3に示すように、各発光部15,16が外径(最大外径)r[mm]を有する一つの円柱体17内に収まり、この円柱体17を、仮想的に各発光部15,16を一体化した一つのフィラメントとしてみなすことができる。そうした場合において、バルブ2のうち、発光体11が位置している部分の最大内径をR(図1参照)[mm]、1つのフィラメントとみなした発光体11の最大外径をr[mm]としたとき、後述する理由により、0.25≦r/R≦0.75なる関係式を満たすように設定されている。
その際、個々の発光部15,16の外形形状およびその寸法、ならびにコイル長LS(図2参照)は、各発光部15,16から照射面へ照射される照度が一様になるようにするために、外形形状およびその寸法、ならびにコイル長LSのうちの少なくとも一つを同じものにすることが好ましく、いずれも同じにすることがさらに好ましい。もっとも、その外形形状およびその寸法、ならびにコイル長LSは、発光部15,16の製造工程における加工ばらつきによって、個々の発光部15,16間でばらつく場合がある。
また、各発光部15,16の端のうち、封止部9とは反対側の端は、それぞれ略同一平面内に位置していることが好ましい。これにより、各発光部15,16によって照射される照射面への照度を一様にし、均一な配光曲線を得ることができる。
ここで、最大外径rは、各発光部15,16の外形形状、その寸法、配置方法、および発光部15,16間の距離D1を適宜変更することによって調整することができる。また一般的に、発光体11のコイルを構成するタングステン線の長さはハロゲン電球の定格電力に応じて決定される。一例として、定格電力65[W]のハロゲン電球に用いられるもののタングステン線の長さは例えば420[mm]〜480[mm]、定格電力20[W]のハロゲン電球に用いられるもののタングステン線の長さは例えば250[mm]〜300[mm]、定格電力100Wのハロゲン電球に用いられるもののタングステン線の長さは例えば540[mm]〜620[mm]である。また一例として、定格電力65Wのハロゲン電球に用いられるものの場合、図2および図3に示すように、発光体11が同寸法の一重巻きコイルからなる二つの発光部15,16から構成されているとして、コイル長LSは5[mm]〜7[mm]の範囲に設定されている。また、コイルのピッチは、0.02[mm]〜0.15[mm]の範囲に設定されている。
次に、バルブ2のうち、発光体11が位置している部分の最大内径をR([mm]、発光体11の最大外径をr[mm]とした場合、0.25≦r/R≦0.75なる関係式を満たすように規定した理由について説明する。
まず、上記した定格電力65[W]のハロゲン電球1において、バルブ2のうち、発光体11が位置している部分の最大内径Rを12[mm]と一定にし、発光体11の最大外径r[mm]を、二つの発光部15,16の間の距離D1を適宜変えることによって表1に示すとおり種々変化させたものをそれぞれ10本ずつ作製した。そして、各々作製したものを定格電力で点灯させ、3500時間点灯経過時までと4000時間点灯経過時までとに発光体11が断線したものの本数、および発光体11が断線しなかったもののうち、4000時間点灯経過時においてバルブ2の内面に黒化が発生したものの本数についてそれぞれ調べたところ、同じく表1に示すとおりの結果が得られた。
なお、表1中、「断線の有無」欄において、分母が全サンプル数を、分子が全サンプル数のうち発光体11が断線したものの本数をそれぞれ示している。また、「黒化の有無」欄についても、分母が全サンプル数を、分子が全サンプル数のうちバルブ2の内面に黒化が発生したものの本数をそれぞれ示している。ただし、黒化の判定は、目視においてバルブ2の内面に黒い着色物が付着していることを確認できた場合を「黒化有り」と判定している。この黒い着色物は、発光体11の構成材料であるタングステンが点灯中に蒸発し、付着したものである。
また、点灯方法としては、5.5時間点灯、0.5時間消灯を1サイクルとしてこれを繰り返した。「点灯経過時間」とはその点灯時間の累積時間である。
また、作製した各サンプルにおいて、発光部15,16はいずれも同じ形状、同じ寸法の一重巻きコイルからなり、その素線径が0.05[mm]、ピッチpが0.05[mm]〜0.07[mm]、コイル長LSが6[mm]である。また、このコイルは、四つの直径0.35[mm]の芯棒を密着して並置したものに巻きつけて形成されている。
表1から明らかなように、0.25≦r/R≦0.75なる関係式を満たす場合、例えばr/R=(0.25,0.35,0.50,0.75)の場合、いずれのサンプルについても3500時間点灯経過時までに発光体11が断線したものはなく、また4000時間点灯経過時までにバルブ2の内面に黒化が発生したものもなかった。特に、0.35≦r/R≦0.75なる関係式を満たす場合、例えばr/R=(0.35,0.50,0.75)の場合、いずれのサンプルについても4000時間点灯経過時までに発光体11が断線したものはなかった。
一方、0.25>r/Rなる関係式を満たす場合、例えばr/R=(0.20)の場合、10本中7本のサンプルは4000時間点灯経過時までに発光体11が断線してしまったが、断線せずに残った3本のサンプルはいずれもバルブ2の内面に黒化が発生していなかった。また、r/R>0.75なる関係式を満たす場合、例えばr/R=(0.80)の場合、10本中全サンプルにおいて4000時間点灯経過時までに発光体11が断線したものはなかったものの、10本中全てのものにおいてバルブ2の内面に黒化が発生していた。
なお、断線した場所は、いずれのサンプルも発光部15,16の中央付近であった。
このような結果となった理由については次のように考えられる。
つまり、0.25>r/Rなる関係式を満たす場合、バルブ2と発光体11との間の隙間が大きくなり、点灯中、バルブ2と発光体11との間で発生する対流層が厚くなる。その結果、点灯中に蒸発した発光体11の構成材料であるタングステンの移動速度が速くなり、それに応じてタングステンの蒸発量が増加する。したがって、発光体11を構成するコイルのタングステン線(以下、単に「タングステン線」という)がこのタングステンの蒸発によって細り、断線に至ったと考えられる。一方、r/R>0.75なる関係式を満たす場合、バルブ2と発光体11との間の隙間は小さくなるものの、バルブ2が発光体11に近接しすぎて、点灯中、バルブの温度がかなり高温になる。そして、逆に高温となったバルブ2からの輻射熱によって発光体11の温度が異常に上昇し、発光体11の構成材料であるタングステンの蒸発が促進されてしまい、蒸発したタングステンがバルブ2の内面に付着してしまったと考えられる。もっとも、後者の場合でもタングステンの蒸発によってタングステン線が細るという現象は見られたものの、断線にまでは至っていない。これは、後者の場合、前者の場合に比して対流層が薄く、タングステンの蒸発速度が遅いためであると考えられる。なお、今回の実験では、バルブ2の破損は見られなかったものの、このようにバルブ2の内面が黒化すると熱を吸収しやすくなるので、バルブ2の温度がさらに高温になり、バルブ2が破損してしまうおそれがある。
これらに対して、0.25≦r/R≦0.75なる関係式を満たす場合、バルブ2と発光体11との間の隙間が適度に小さいので、バルブ2と発光体11との間で発生する対流層が極めて薄くなり、その結果、点灯中に蒸発したタングステンの移動速度が遅くなり、それに応じてタングステンの蒸発量が著しく低減したためであると考えられる。しかも、バルブ2が発光体11に近接しすぎていないので、点灯中、バルブ2の温度が過剰に高温となることはなく、それ故、発光体11の温度も異常に上昇することはなかったためであると考えられる。
したがって、バルブ2のうち、発光体11が位置している部分の最大内径をR[mm]、発光体11の最大外径をr[mm]とした場合、バルブ2の内面が黒化するのを防止しつつ、発光体11の断線を防止し、長寿命化を図るために、0.25≦r/R≦0.75なる関係式を満たせばよいことがわかった。特に、一層の長寿命化を図るために、0.35≦r/R≦0.75なる関係式を満たせばよいことがわかった。
以上のとおり本発明の第1の実施の形態にかかるハロゲン電球1の構成によれば、バルブ2と発光体11との間で発生する対流層を極めて薄くすることができるので、発光体11の構成材料であるタングステンの蒸発量を著しく低減することができ、その結果、発光体11を構成するコイルのタングステン線が細って断線するのを防止することができ、長寿命化を図ることができる。しかも、バルブ2と発光体11との間の隙間が適度に保たれているので、点灯中、バルブ2と発光体11とが共に異常に高温になるのを抑制することができるので、バルブ2が破損したり、発光体11の構成材料であるタングステンの過剰な蒸発によってバルブ2の内面が黒化したりするのを防止することができる。
なお、上記第1の実施の形態では、バルブ2の形状としてチップオフ部5、略回転楕円体形状のバルブ発光部6、縮径部7、筒部8および封止部9がそれぞれ順次連なって形成されたものを用いた場合について説明したが、これに限らずチップオフ部(場合によっては無い場合もある)、略回転楕円体形状の発光部、縮径部および封止部が順次連なって形成されたバルブや、チップオフ部(場合によっては無い場合もある)、略回転楕円体形状の発光部および封止部が順次連なって形成されたバルブ、またはチップオフ部(場合によっては無い場合もある)、略円筒形状の発光部および封止部が順次連なって形成されたバルブ等の公知の種々の形状のバルブを用いた場合でも上記と同様の作用効果を得ることができる。もちろん、発光部の形状として上記した略回転楕円体形状に代えて、略球形状のものや略複合楕円体形状のものも用いることができる。
また、上記第1の実施の形態では、二つ発光部15,16は、その配置方法として、その長手方向の中心軸b,cがバルブ2の長手方向の中心軸Xと略平行であり、かつバルブ2の長手方向の中心軸Xを挟むように互いに隣接した状態であって、各々の長手方向の中心軸b,cとバルブ2の長手方向の中心軸Xとは同一平面P上にあり、さらにはその略扁平形状の長軸が互いに略並行な位置関係にあり、かつその短軸が平面Pに含まれる同一線上にある場合について説明した。しかし、本発明は、このような配置方法に特に限定されるものではなく、例えば図4に示すように、その長手方向の中心軸b,cがバルブ2の長手方向の中心軸Xと略平行であり、かつバルブ2の長手方向の中心軸Xを挟むように互いに隣接した状態であって、各々の長手方向の中心軸b,cとバルブ2の長手方向の中心軸Xとは同一平面P上にあるものの、その略扁平形状の長軸が平面Pに含まれる同一線上にあり、かつその短軸が互いに略並行な位置関係にある場合等でも上記と同様の作用効果を得ることができる。
次に、図5に示すように、本発明の第2の実施の形態である定格電力65W(定格電圧110V)のハロゲン電球18は、主にスポットライト等の一般照明用として使用されている公知の照明装置19の反射鏡部20内に組み込まれるものであって、石英ガラスや硬質ガラス等からなるバルブ21と、このバルブ21の後述する封止部31側に公知の接着剤(図示せず)によって固着された例えばE形の口金(図示せず)とを備えている。
ハロゲン電球18のバルブ21の長手方向の中心軸Xと反射鏡部20の光軸Yとは、略同一軸上に位置している。
なお、ここで言う「略同一軸上に位置する」とは、理想的には中心軸Xが光軸Y上に完全に位置していることが好ましいが、製造工程における位置合わせ精度のばらつきによって実用上、中心軸Xが光軸Yに対してもずれる場合があり、その場合も含むことを意味している。
照明装置19は、前面の開口部22から光が照射され、かつ内部に前記反射鏡部20とハロゲン電球18の口金が取り付けられる受け具(図示せず)とが収納されている円筒状の照明器具23を有している。
反射鏡部20には、前面の開口部24に前面ガラス25が取り付けられ、かつ内面に回転楕円面または回転放物面等からなる回転体の反射面26が形成されている。この反射面26には、必要に応じてファセットが形成されている場合がある。
バルブ21には、封止切りの残痕であるチップオフ部27、略回転楕円体形状のバルブ発光部28、縮径部29、略円筒状の筒部30および公知のピンチシール法によって形成された封止部31がそれぞれ順次連なるように形成されている。このバルブ21の外面のうち、バルブ発光部28および縮径部29の外面には、可視光透過赤外線反射膜32が形成されている。また、必要に応じてバルブ21、特にバルブ発光部28の外面に酸化コバルトを含む酸化膜(図示せず)を形成することにより、高色温度の発光色を実現することができる。
なお、ここで言う「略回転楕円体形状」とは、完全な回転楕円体形状の場合はもちろんのこと、ガラスの加工上のばらつきによって完全な回転楕円体形状からずれてしまう場合も含むことを意味している。
バルブ21内には、ハロゲン物質と希ガス、またはハロゲン物資と希ガスと窒素ガスとがそれぞれ所定量封入されているとともに、特にバルブ発光部28の領域には発光体11が配置されている。
ハロゲン物質は、上述したとおりハロゲンサイクルによって、点灯中、発光体11から蒸発したその構成物質であるタングステンを再び発光体11に戻し、バルブ21の黒化を防止するためのものであって、その濃度は10[ppm]〜300[ppm]の範囲内にあることが好ましい。また、ハロゲンサイクルを活性化させるためには、バルブ21内面における最冷点温度が200[℃]以上であることが好ましい。さらに、ハロゲンサイクルを適切に機能させるためには、バルブ21内の酸素濃度を100[ppm]以下にすることが好ましい。
希ガスには、クリプトンガスを用いることが好ましい。これにより、集光効率を高めるために後述するように個々の発光部15,16を近接配置し、発光体11をコンパクト化しているにもかかわらず、点灯時に個々の発光部15,16間でアーク放電が発生し、それらが断線するのを抑制することができる。
特に、封入ガスは、クリプトンガスを主成分として、窒素ガスおよびハロゲン物質を含み、バルブ2内のガス圧は、常温時において、2[atm]〜10[atm]の範囲内にあることが好ましい。この場合において、ガス圧が適正に抑えられているため、万一バルブ2が破損したとしても、その破片の勢いが照明器具に破損をおよぼすほど大きくならず、その一方でガス圧が適切に高いために、発光部15,16の構成材料であるタングステンが蒸発しにくく、長寿命化を実現することができ、さらには点灯時に個々の発光部15,16間でアーク放電が発生し、それらが断線するのを一層抑制することができる。バルブ2内のガス圧が2[atm]未満の場合、発光部15,16の構成材料であるタングステンの蒸発を抑えにくく、短寿命になるおそれがある。逆に、ガス圧が10[atm]を超える場合、万一バルブ2が破損したとき、その破片の勢いで照明装置19を破損させるおそれがある。
また、封入ガスに窒素ガスを含む場合、その窒素ガスの組成比率は8[%]〜40[%]の範囲内にあることが好ましい。窒素ガスが適切に含まれているために、点灯時に個々の発光部15,16間でアーク放電が発生し、それらが断線するのをより一層抑制することができ、その一方で窒素ガスの組成比率が適切に抑えられているために、点灯中、発光体11の熱が窒素ガスを介して過度に放熱され、効率が低下するのを防止することができる。窒素ガスの組成比率が8[%]未満の場合、点灯時に個々の発光部15,16間でアーク放電が発生し、それらが断線するのをより一層抑制する効果を十分に発揮できない。逆に、窒素ガスの組成比率が40[%]を超えると、点灯中、発光体11の熱が窒素ガスを介して過度に放熱され、効率が低下するおそれがある。
発光体11の両端部には、例えばタングステン製の内部リード線33の一端部がそれぞれ接続されている。内部リード線33の他端部は、封止部31に封止されているモリブデン製の金属箔(図示せず)を介して外部リード線(図示せず)の一端部に接続されている。外部リード線の他端部は、バルブ21の外部に導出しており、口金(図示せず)の端子部分にそれぞれ電気的に接続されている。
ここで、少なくとも一方の外部リード線と口金の端子部分との間には、万一、発光部15,16が断線し、その断線箇所でアーク放電が発生し、その衝撃でバルブ2が破損等するのを防止するために、ヒューズ(図示せず)を設けておくことが好ましい。後述するように発光部15,16を近接して配置する場合、発光部15,16が断線しなくとも個々の発光部15,16間でアーク放電が発生するおそれがあるので、両方の外部リード線と口金の端子部分との間にヒューズをそれぞれ設けることが好ましい。
封止部31には、放熱性を高めて封止部31に封止されている金属箔が酸化し、バルブ21の気密性が損なわれるのを防止するために、凹凸が形成されていることが好ましい。
発光体11は、図6および図7に示すように、二つの発光部15,16を有している。これらの発光部15,16は、いずれもタングステン製であって、略直線状に伸びた略扁平状の一重巻きコイルからなり、各々が電気的に直列に接続されている。この一重巻きコイルを構成しているタングステン線の線径は0.015[mm]〜0.100[mm]、例えば0.050[mm]である。
なお、図6および図7では、発光部15,16をそれぞれ模式的に柱体として描いている。
図7は、発光体11を発光部15,16の長手方向から見たときの図であるが、「扁平状」の発光部15,16とは、具体的にその外形形状が、例えば曲線部が外側に向くように互いに対向する2つの半円部とそれらをつなぐ平行な2つの直線部とからなる略トラック形状であることを示している。もっともこのような略トラック形状以外に、単に真円を押し潰した形状、略楕円形状、および略扁平楕円形状等であってもよい。それらの形状は、発光部の作製プロセスにおいて、素線を巻き付ける芯線数、芯線の形状、それら芯線の配置等を適宜変更することによって実現することができる。
また、これら二つ発光部15,16は、ハロゲン電球18が照明装置19の反射鏡部20内に組み込まれた状態において、図6および図7に示すように、その長手方向の中心軸b,cが反射鏡部20の光軸Yと略平行であり、かつ光軸Yを挟むように互いに隣接した状態であって、各々の長手方向の中心軸b,cと光軸Yとは同一平面Q(図7参照)上にある。また、扁平状である発光部15,16の長軸は、互いに略並行な位置関係にあり、発光部15,16の短軸は、平面Qに含まれる同一線上にある。
ここで、発光体11の中心点Aは、図6に示すように、光軸Y上に位置し、かつ反射面26を形成している回転体の焦点Fの位置よりも反射鏡部20における光を照射する開口部24とは反対側に位置するように配置されている。一例として、焦点Fと中心点Aとの間の距離は2.35[mm]に設定される。これにより、反射鏡部20内における中心光度に寄与する領域、すなわち焦点Fを含むその近傍領域(以下、単に「有効領域」という)内での発光体11の密度を大きくすることができ、中心光度を高めることができる。
このような発光体11は、図7に示すように、各発光部15,16が外径(最大外径)r[mm]を有する一つの円柱体17内に収まり、この円柱体17を、仮想的に各発光部15,16を一体化した一つのフィラメントとしてみなすことができる。そうした場合において、バルブ2のうち、発光体11が位置している部分の最大内径をR(図5参照)[mm]、1つのフィラメントとみなした発光体11の最大外径をr[mm]としたとき、バルブ21の内面が黒化するのを防止しつつ、発光体11の断線を防止し、長寿命化を図るために、0.25≦r/R≦0.75なる関係式を満たすように設定されている。特に、一層の長寿命化を図るために、0.35≦r/R≦0.75なる関係式を満たすように設定されていることが好ましい。
つまり、0.25≦r/R≦0.75なる関係式を満たす場合、バルブ21と発光体11との間の隙間が適度に小さいので、バルブ21と発光体11との間で発生する対流層を極めて薄くすることができる。その結果、発光体11の構成材料であって、点灯中に蒸発したタングステンの移動速度を遅くすることができ、それに応じてタングステンの蒸発量を著しく低減することができるので、発光体11を構成するコイルのタングステン線がそのタングステンの蒸発によって細り、断線するのを防止することができ、長寿命化を図ることができる。しかも、バルブ21が発光体11に近接しすぎていないので、点灯中、バルブ21の温度の異常な上昇に伴って発光体11の温度が過度に上昇することはないので、これに起因して発光体11の構成材料であるタングステンの蒸発量が促進され、蒸発したタングステンがバルブ21の内面に付着し、黒化するのを防止することができる。一方、0.25>r/Rなる関係式を満たす場合、バルブ21と発光体11との間の隙間が大きくなり、点灯中、バルブ21と発光体11との間で発生する対流層が厚くなる。その結果、点灯中に蒸発した発光体11の構成材料であるタングステンの移動速度が速くなり、それに応じてタングステンの蒸発量が増加し、発光体11を構成するコイルのタングステン線がこのタングステンの蒸発によって細り、断線に至ってしまう。r/R>0.75なる関係式を満たす場合、バルブ21と発光体11との間の隙間は小さくなるものの、バルブ21が発光体11に近接しすぎて、点灯中、バルブ21の温度がかなり高温になる。そして、逆に高温となったバルブ21からの輻射熱によって発光体11の温度が過度に上昇し、発光体11の構成材料であるタングステンの蒸発が促進されてしまい、蒸発したタングステンがバルブ21の内面に付着して黒化を招いてしまう。場合によっては、バルブ21の内面の黒化によってバルブ21の温度がさらに高温となり、バルブ21が破損してしまうおそれがある。
その際、個々の発光部15,16の外形形状およびその寸法、ならびにコイル長LS(図6参照)は、各発光部15,16から照射面へ照射される照度が一様になるようにするために、外形形状およびその寸法、ならびにコイル長LSのうちの少なくとも一つを同じものにすることが好ましく、いずれも同じにすることがさらに好ましい。もっとも、その外形形状およびその寸法、ならびにコイル長LSは、発光部15,16の製造工程における加工ばらつきによって、個々の発光部15,16間でばらつく場合がある。
また、各発光部15,16の端のうち、封止部31とは反対側の端は、それぞれ略同一平面内に位置していることが好ましい。これにより、各発光部15,16によって照射される照射面への照度を一様にし、均一な配光曲線を得ることができる。
ここで、最大外径rは、各発光部15,16の外形形状、その寸法、配置方法、および発光部15,16間の距離D1を適宜変更することによって調整することができる。また一般的に、発光体11のコイルを構成するタングステン線の長さはハロゲン電球の定格電力に応じて決定される。一例として、定格電力65[W]のハロゲン電球に用いられるもののタングステン線の長さは例えば420[mm]〜480[mm]、定格電力20[W]のハロゲン電球に用いられるもののタングステン線の長さは例えば250[mm]〜300[mm]、定格電力100[W]のハロゲン電球に用いられるもののタングステン線の長さは例えば540[mm]〜620[mm]である。また一例として、定格電力65[W]のハロゲン電球に用いられるものの場合、図2および図3に示すように、発光体11が同寸法の一重巻きコイルからなる二つの発光部15,16から構成されているとして、コイル長LSは5[mm]〜7[mm]の範囲に設定されている。また、コイルのピッチは、0.02[mm]〜0.15[mm]の範囲に設定されている。
また、発光部15,16間の距離D1は、0.1[mm]〜2.2[mm]の範囲に設定されていることが好ましい。これにより、前記有効領域内における発光体11の密度をより大きくすることができ、中心光度を極めて高くすることができ、また点灯中、発光部15,16間でアーク放電が発生し、そのアーク放電によって発光部15,16が断線するのを防止することができる。一方、距離D1が0.1[mm]未満の場合、点灯中、発光部15,16間でアーク放電が発生し、そのアーク放電によって発光部15,16が断線するおそれがある。また、距離D1が2.2[mm]を超える場合、前記有効領域内における発光体11の密度が小さくなり、中心光度を極めて十分に高くすることができなくなるおそれがある。
次に、表1に示したr/R=0.50のサンプルと同一設計のサンプル(以下、単に「本発明品A」という)を用いて集光効率の改善の確認を行った。
本発明品Aを公知の反射鏡付きハロゲン電球(松下電器産業株式会社製、品番:JDR110V65WKN/5E11)の反射鏡(前面ガラス含む)(狭角タイプ)、また別の公知の反射鏡付きハロゲン電球(松下電器産業株式会社製、品番:JDR110V65WKM/5E11)の反射鏡(前面ガラス含む)(中角タイプ)、さらに別の公知の反射鏡付きハロゲン電球(松下電器産業株式会社製、品番:JDR110V65WKW/5E11)の反射鏡(前面ガラス含む)(広角タイプ)にそれぞれ組み込んだものを用いて実験を行った。
そして、各々のミラー角の反射鏡付きハロゲン電球を5本ずつ作製し、作製した各々の反射鏡付きハロゲン電球を定格電力、定格電圧で点灯させ、反射鏡付きハロゲン電球から距離1[m]離れた照射面における中心照度[lx]を測定した。
また、比較のため、発光体として三重巻きコイルを用いている点を除いて本発明品Aと同じ構成を有している定格電力65[W](定格電圧110[V])のハロゲン電球(以下、「比較品A」という)を15本作製し、これら作製した比較品Aを5本ずつ、本発明品Aと同じ公知の反射鏡(前面ガラス含む)にそれぞれ組み込み、中心照度[lx]を測定した。
なお、用いた三重巻きコイルは、素線であるタングステン線の素線長が460[mm]、素線径が0.052[mm]であり、一次コイルのマンドレル径が0.12[mm]、一次コイルのピッチが0.14[mm]、二次コイルのマンドレル径が0.28[mm]、二次コイルのピッチが0.55[mm]、三次コイルのマンドレル径が1.2[mm]、三次コイルのピッチが1.5[mm]である。
また、後述する中心照度[lx]の値は、5本のサンプルの平均値を示す。
また、ここでは「集光効率」を電力当たりの照度[lx/W]と定義しているので、本発明品Aの中心照度と比較品Aの中心照度との対比が実質的に本発明品Aの集光効率と比較品Aの集光効率との対比となる。
実験の結果、本発明品Aでは中心照度が狭角タイプで9390[lx]、中角タイプで5092[lx]、広角タイプで2072[lx]であったのに対して、比較品Aでは中心照度が狭角タイプで5587[lx]、中角タイプで3005[lx]、広角タイプで1421[lx]であった。
このように本発明品Aでは、その中心照度が比較品Aに比して狭角タイプで1.68倍、中角タイプで1.69倍、広角タイプで1.45倍向上していることがわかる。
なお、本発明品Aのビーム角は、それぞれのビーム角のタイプにおいて比較品Aとほぼ同じであった。
ここで、本比較においては、本発明品Aと比較品Aのハロゲン電球を同一の電力(65W)で点灯させたので、上記照度の向上率は、集光効率[lx/W]の向上率と一致する。すなわち、本発明品Aが比較品Aに対して集光効率の向上を実現したことが確認された。
以上のとおり本発明の第2の実施の形態にかかるハロゲン電球18の構成によれば、高い集光効率を実現することができるとともに、本発明の第1の実施の形態であるハロゲン電球と同様に、バルブ21と発光体11との間で発生する対流層を極めて薄くすることができるので、発光体11の構成材料であるタングステンの蒸発量を著しく低減することができ、その結果、発光体11を構成するコイルのタングステン線が細って断線するのを防止することができ、長寿命化を図ることができる。しかも、バルブ21と発光体11との間の隙間が適度に保たれているので、点灯中、バルブ21と発光体11とが共に異常に高温になるのを抑制することができるので、バルブ21が破損したり、発光体11の過剰な蒸発によってバルブ21の内面が黒化したりするのを防止することができる。
また、特に、発光部15,16間の距離D1は、0.1[mm]〜2.2[mm]の範囲に設定することにより、前記有効領域内における発光体11の密度をより大きくすることができ、中心光度を極めて高くすることができるとともに、点灯中、発光部15,16間でアーク放電が発生し、そのアーク放電によって発光部15,16が断線するのを防止することができる。
なお、上記第2の実施の形態では、バルブの形状としてチップオフ部27、略回転楕円体形状のバルブ発光部28、縮径部29、筒部30および封止部31がそれぞれ順次連なって形成されたものを用いた場合について説明したが、これに限らずチップオフ部(場合によっては無い場合もある)、略回転楕円体形状の発光部、縮径部および封止部が順次連なって形成されたバルブや、チップオフ部(場合によっては無い場合もある)、略回転楕円体形状の発光部および封止部が順次連なって形成されたバルブ、またはチップオフ部(場合によっては無い場合もある)、略円筒形状の発光部および封止部が順次連なって形成されたバルブ等の公知の種々の形状のバルブを用いた場合でも上記と同様の作用効果を得ることができる。もちろん、発光部の形状として上記した略回転楕円体形状に代えて、略球形状のものや略複合楕円体形状のものも用いることができる。
また、上記第2の実施の形態では、二つ発光部15,16は、その配置方法として、その長手方向の中心軸b,cが反射鏡部20の光軸Yと略平行であり、かつ光軸Yを挟むように互いに隣接した状態であって、各々の長手方向の中心軸b,cと光軸Yとは同一平面Q上にあり、さらにはその略扁平形状の長軸が互いに略並行な位置関係にあり、かつその短軸が平面Qに含まれる同一線上にある場合について説明した。しかし、本発明は、このような配置方法に特に限定されるものではなく、例えば図8に示すように、その長手方向の中心軸b,cが光軸Yと略平行であり、かつ光軸Yを挟むように互いに隣接した状態であって、各々の長手方向の中心軸b,cと光軸Yとは同一平面Q上にあるものの、その略扁平形状の長軸が平面Qに含まれる同一線上にあり、かつその短軸が互いに略並行な位置関係にある場合等でも上記と同様の作用効果を得ることができる。
次に、図9に示すように、本発明の第3の実施の形態である定格電力65W(定格電圧110V)の反射鏡付きハロゲン電球34は、ミラー径φが35mm〜100mm、例えば50mmの凹面状の反射鏡35と、この反射鏡35の内部に配置された本発明の第1の実施の形態である定格電力65W(定格電圧110V)のハロゲン電球1(ただし、口金4を除く)と、反射鏡35の端部に取り付けられた例えばE形の口金36とを備えている。
ハロゲン電球1のバルブ2の長手方向の中心軸Xは、反射鏡35の光軸Yと略一致している。
反射鏡35は、硬質ガラスまたは石英ガラス等からなり、一端部に光を照射する開口部37を、他端部に筒状のネック部38をそれぞれ有し、内面に回転楕円面または回転放物面等からなる回転体の反射面39が形成されている。反射面39には必要に応じてファセットを形成してもよい。
開口部37には、前面ガラス40が設けられ、かつ公知の止め金具41によって固定されている。前面ガラス40の固定方法としては、止め金具41に代えて公知の接着剤(図示せず)を用いたり、止め金具41と接着剤とを併用したりすることもできる。もっとも、前面ガラス40は必ずしも設ける必要はない。
ネック部38の外側には、口金36がこのネック部38のほぼ全体を覆うように設けられ、接着剤42を介して固着されている。一方、ネック部38内には、ハロゲン電球1の封止部9が挿入され、同じく接着剤42を介して固着されている。
反射面39には、アルミニウムやクロム等の金属膜の他、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)、フッ化マグネシウム(MgF)、硫化亜鉛(ZnS)等からなる多層干渉膜が形成されている。
以上のとおり本発明の第3の実施の形態にかかる反射鏡付きハロゲン電球34の構成によれば、高い集光効率を実現することができるとともに、本発明の第1の実施の形態であるハロゲン電球と同様に、バルブ2と発光体11との間で発生する対流層を極めて薄くすることができるので、発光体11の構成材料であるタングステンの蒸発量を著しく低減することができ、その結果、発光体11を構成するコイルのタングステン線が細って断線するのを防止することができ、長寿命化を図ることができる。しかも、バルブ2と発光体11との間の隙間が適度に保たれているので、点灯中、バルブ2と発光体11とが共に異常に高温になるのを抑制することができるので、バルブ2が破損したり、発光体11の過剰な蒸発によってバルブ2の内面が黒化したりするのを防止することができる。
なお、上記第3の実施の形態では、第1の実施の形態のものと同様に、チップオフ部(場合によっては無い場合もある)、略回転楕円体形状の発光部、縮径部および封止部が順次連なって形成されたバルブや、チップオフ部(場合によっては無い場合もある)、略回転楕円体形状の発光部および封止部が順次連なって形成されたバルブ、またはチップオフ部(場合によっては無い場合もある)、略円筒形状の発光部および封止部が順次連なって形成されたバルブ等の公知の種々の形状のバルブを用いた場合でも上記と同様の作用効果を得ることができる。もちろん、発光部の形状として上記した略回転楕円体形状に代えて、略球形状のものや略複合楕円体形状のものも用いることができる。
また、上記第3の実施の形態でも、第1の実施の形態のものと同様に例えば図4に示すように、その長手方向の中心軸b,cが光軸Yと略平行であり、かつ光軸Yを挟むように互いに隣接した状態であって、各々の長手方向の中心軸b,cと光軸Yとは同一平面Q上にあるものの、その略扁平形状の長軸が平面Qに含まれる同一線上にあり、かつその短軸が互いに略並行な位置関係にある場合等でも上記と同様の作用効果を得ることができる。
次に、図10に示すように、本発明の第4の実施の形態である定格電力65W(定格電圧110V)の反射鏡付きハロゲン電球43は、ミラー径φが35mm〜100mm、例えば50mmの凹面状の反射鏡44と、この反射鏡44の内部に配置されたハロゲン電球45と、反射鏡44の端部に取り付けられた例えばE形の口金46とを備えている。
ハロゲン電球45の後述するバルブ47の長手方向の中心軸Xは、反射鏡44の光軸Yと略一致している。
反射鏡44は、硬質ガラスまたは石英ガラス等からなり、一端部に光を照射する開口部48を、他端部に筒状のネック部49をそれぞれ有し、内面に回転楕円面または回転放物面等からなる回転体の反射面50が形成されている。反射面50には必要に応じてファセットを形成してもよい。
開口部48には、前面ガラス51が設けられ、かつ公知の止め金具(図示せず)、公知の接着剤(図示せず)またはそれらの併用によって固定されている。もっとも、前面ガラス51は必ずしも設ける必要はない。
ネック部49の外側には、口金46がこのネック部49のほぼ半分を覆うように設けられ、接着剤52を介して固着されている。一方、ネック部49内には、ハロゲン電球45の後述する封止部53が挿入され、同じく接着剤52を介して固着されている。
反射面50には、アルミニウムやクロム等の金属膜の他、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)、フッ化マグネシウム(MgF)、硫化亜鉛(ZnS)等からなる多層干渉膜が形成されている。
ハロゲン電球45は、封止切りの残痕であるチップオフ部54、略円筒形状のバルブ発光部55、および公知のピンチシール法によって形成された封止部53がそれぞれ順次連なって形成された石英ガラスや硬質ガラス等からなるバルブ47を有している。バルブ47の外面には、必要に応じて可視光透過赤外線反射膜を形成してもよい。また、必要に応じてバルブ47、特にバルブ発光部55の外面に酸化コバルトを含む酸化膜(図示せず)を形成することにより、高色温度の発光色を実現することができる。
なお、ここで言う「略円筒形状」とは、完全な円筒形状の場合はもちろんのこと、ガラスの加工上のばらつきによって完全な円筒形状からずれてしまう場合も含むことを意味している。
バルブ47内には、封入ガス、すなわちハロゲン物質と希ガス、またはハロゲン物質と希ガスと窒素ガスとがそれぞれ所定量封入されているとともに、特にバルブ発光部55の領域内には発光体11が配置されている。
ハロゲン物質は、ハロゲンサイクルによって、点灯中、発光体11から蒸発したその構成物質であるタングステンを再び発光体11に戻し、バルブ47の黒化を防止するためのものであって、その濃度は10[ppm]〜300[ppm]の範囲内にあることが好ましい。また、ハロゲンサイクルを活性化させるためには、バルブ47内面における最冷点温度が200[℃]以上であることが好ましい。さらに、ハロゲンサイクルを適切に機能させるためには、バルブ47内の酸素濃度を100[ppm]以下にすることが好ましい。
希ガスには、クリプトンガスを用いることが好ましい。これにより、集光効率を高めるために後述するように個々の発光部15,16を近接配置し、発光体11をコンパクト化しているにもかかわらず、点灯時に個々の発光部15,16間でアーク放電が発生し、それらが断線するのを抑制することができる。
特に、封入ガスは、クリプトンガスを主成分として、窒素ガスおよびハロゲン物質を含み、バルブ47内のガス圧は、常温時において、2[atm]〜10[atm]の範囲内にあることが好ましい。この場合において、ガス圧が適正に抑えられているため、万一バルブ47が破損したとしても、その破片の勢いが照明器具に破損をおよぼすほど大きくならず、その一方でガス圧が適切に高いために、発光部15,16の構成材料であるタングステンが蒸発しにくく、長寿命化を実現することができ、さらには点灯時に個々の発光部15,16間でアーク放電が発生し、それらが断線するのを一層抑制することができる。バルブ47内のガス圧が2[atm]未満の場合、発光部15,16の構成材料であるタングステンの蒸発を抑えにくく、短寿命になるおそれがある。逆に、ガス圧が10[atm]を超える場合、万一バルブ47が破損したとき、その破片の勢いで照明器具を破損させるおそれがある。
また、封入ガスに窒素ガスを含む場合、その窒素ガスの組成比率は8[%]〜40[%]の範囲内にあることが好ましい。窒素ガスが適切に含まれているために、点灯時に個々の発光部15,16間でアーク放電が発生し、それらが断線するのをより一層抑制することができ、その一方で窒素ガスの組成比率が適切に抑えられているために、点灯中、発光体11の熱が窒素ガスを介して過度に放熱され、効率が低下するのを防止することができる。窒素ガスの組成比率が8[%]未満の場合、点灯時に個々の発光部15,16間でアーク放電が発生し、それらが断線するのをより一層抑制する効果を十分に発揮できない。逆に、窒素ガスの組成比率が40[%]を超えると、点灯中、発光体11の熱が窒素ガスを介して過度に放熱され、効率が低下するおそれがある。
発光体11の両端部には、例えばタングステン製の内部リード線56の一端部がそれぞれ接続されている。内部リード線56の他端部は、封止部53に封止されているモリブデン製の金属箔57を介して外部リード線58の一端部に接続されている。外部リード線58の他端部は、バルブ47の外部に導出しており、口金46の端子部分46a,46bにそれぞれ電気的に接続されている。
ここで、少なくとも一方の外部リード線58と口金46の端子部分46a(端子部分46b)との間には、万一、発光部15,16が断線し、その断線箇所でアーク放電が発生し、その衝撃でバルブ47が破損等するのを防止するために、ヒューズ(図示せず)を設けておくことが好ましい。後述するように発光部15,16を近接して配置する場合、発光部15,16が断線しなくとも個々の発光部15,16間でアーク放電が発生するおそれがあるので、両方の外部リード線58と口金46の端子部分46a,46bとの間にヒューズをそれぞれ設けることが好ましい。
封止部53には、放熱性を高めて封止部53に封止されている金属箔57が酸化し、バルブ47の気密性が損なわれるのを防止するために、凹凸が形成されていることが好ましい。
発光体11の詳細については、図6〜図8に示すものと同じ構成であるので、その説明を省略する。
以上のとおり本発明の第4の実施の形態にかかるハロゲン電球45の構成によれば、高い集光効率を実現することができるとともに、本発明の第1の実施の形態であるハロゲン電球と同様に、バルブ47と発光体11との間で発生する対流層を極めて薄くすることができるので、発光体11の構成材料であるタングステンの蒸発量を著しく低減することができ、その結果、発光体11を構成するコイルのタングステン線が細って断線するのを防止することができ、長寿命化を図ることができる。しかも、バルブ47と発光体11との間の隙間が適度に保たれているので、点灯中、バルブ47と発光体11とが共に異常に高温になるのを抑制することができるので、バルブ47が破損したり、発光体11の過剰な蒸発によってバルブ47の内面が黒化したりするのを防止することができる。
また、特に、発光部15,16間の距離D1は、0.1[mm]〜2.2[mm]の範囲に設定することにより、前記有効領域内における発光体11の密度をより大きくすることができ、中心光度を極めて高くすることができるとともに、点灯中、発光部15,16間でアーク放電が発生し、そのアーク放電によって発光部15,16が断線するのを防止することができる。
なお、上記第4の実施の形態では、バルブ47の形状としてチップオフ部54、略円筒形状のバルブ発光部55および封止部53がそれぞれ順次連なって形成されたものを用いた場合について説明したが、これに限らずチップオフ部(場合によっては無い場合もある)、略回転楕円体形状の発光部および封止部が順次連なって形成されたバルブや、チップオフ部(場合によっては無い場合もある)、略回転楕円体形状の発光部、縮径部および封止部が順次連なって形成されたバルブ、チップオフ部(場合によっては無い場合もある)、略回転楕円体形状の発光部、縮径部、筒部および封止部が順次連なって形成されたバルブ等の公知の種々の形状のバルブを用いた場合でも上記と同様の作用効果を得ることができる。もちろん、発光部の形状として上記した略回転楕円体形状に代えて、略球形状のものや略複合楕円体形状のものも用いることができる。
また、上記第4の実施の形態では、第2の実施の形態のものと同様に、例えば図8に示すように、その長手方向の中心軸b,cが光軸Yと略平行であり、かつ光軸Yを挟むように互いに隣接した状態であって、各々の長手方向の中心軸b,cと光軸Yとは同一平面Q上にあるものの、その略扁平形状の長軸が平面Qに含まれる同一線上にあり、かつその短軸が互いに略並行な位置関係にある場合等でも上記と同様の作用効果を得ることができる。
次に、本発明の第5の実施の形態である照明装置は、例えばスポットライト等の一般照明として使用されるものであって、上記した本発明の第1の実施の形態である定格電力65Wのハロゲン電球1が公知の種々の照明器具(図示せず)に取り付けられた構成を有している。
照明器具には、通常、平面状もしくは曲面状の反射板、または凹面状の反射鏡部が形成されている。ハロゲン電球1から放射された放射光は、反射板または反射鏡部に反射され、照明器具の光照射開口部から照射される。
このような本発明の第5の実施の形態にかかる照明装置の構成によれば、長寿命な照明装置を実現することができる。
次に、本発明の第6の実施の形態である照明装置は、例えばスポットライト等の一般照明として使用されるものであって、上記した本発明の第2の実施の形態である定格電力65Wのハロゲン電球18が公知の種々の照明器具(図示せず)に取り付けられた構成を有している。
照明器具には、その反射面が回転楕円面または回転放物面等からなる凹面状の反射鏡部が形成されている。もっとも、反射鏡部は、照明器具に固定されて取り替え不可能なものであってもよく、使用用途等に合わせて取り替え可能なものであってもよい。ハロゲン電球18から放射された放射光は、反射鏡部に反射され、照明器具の光照射開口部から照射される。
このような本発明の第6の実施の形態にかかる照明装置の構成によれば、長寿命な照明装置を実現することができる。
次に、本発明の第7の実施の形態である照明装置は、例えばスポットライト等の一般照明として使用されるものであって、上記した本発明の第3の実施の形態である定格電力65Wの反射鏡付きハロゲン電球34が公知の種々の照明器具(図示せず)に取り付けられた構成を有している。
このような本発明の第7の実施の形態にかかる照明装置の構成によれば、長寿命な照明装置を実現することができる。
次に、本発明の第8の実施の形態である照明装置は、例えばスポットライト等の一般照明として使用されるものであって、上記した本発明の第4の実施の形態である定格電力65Wの反射鏡付きハロゲン電球43が公知の種々の照明器具(図示せず)に取り付けられた構成を有している。
このような本発明の第8の実施の形態にかかる照明装置の構成によれば、長寿命な照明装置を実現することができる。
なお、上記各実施の形態では、定格電力65Wのハロゲン電球を用いた場合について説明したが、これに限らず、例えば定格電力20W〜150Wのハロゲン電球を用いた場合でも上記と同様の作用効果を得ることができる。
また、上記各実施の形態では、ハロゲン電球を用いた場合について説明したが、この種のハロゲン電球に代えて公知の種々の白熱電球を用いた場合でも上記と同様の作用効果を得ることができるものである。