JP4378766B2 - 電気抵抗調整材及び該電気抵抗調整材を用いた樹脂組成物 - Google Patents

電気抵抗調整材及び該電気抵抗調整材を用いた樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、所要の体積固有抵抗値が容易に得られると共に、優れた分散性を有する複合粒子からなる電気抵抗調整材及び該電気抵抗調整材を樹脂に配合してなる所要の電気抵抗値を有する樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のとおり、カーボンブラックは優れた導電性化合物として知られており、樹脂組成物の電気抵抗値を低下させるための添加材料に用いられている。しかしながら、カーボンブラックは導電性に優れているので少量の添加で劇的に電気抵抗値が変化するため、所要の電気抵抗値を有する樹脂組成物を得るためにはカーボンブラックの添加量を厳密に制御しなければならないという問題がある。
【0003】
また、カーボンブラックは、粒子サイズが平均粒子径0.005〜0.05μm程度の微粒子粉末であり、樹脂組成物中への均一な分散が困難であるため、樹脂組成物内で部分的に導電性の部分が形成されるという問題がある。
【0004】
さらに、カーボンブラックや炭素繊維を用いて樹脂組成物の電気抵抗値を調整する技術的手段として、特表2001−503799号公報、特開2001−59056号公報に開示されている技術的手段が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
樹脂組成物に添加することによって所要の電気抵抗値を付与できると共に、電気抵抗値の制御が容易に行える電気抵抗調整材が強く求められているが、このような諸特性を有する電気抵抗調整材は、未だ提供されていない。
【0006】
前出特表2001−503799号公報には、ガラスファイバーの表面を熱可塑性成分で被覆し、該熱可塑性成分にカーボン成分を結合させる技術的手段が記載されているが、少量のカーボンブラックで電気抵抗値が大きく変化してしまうため、カーボンブラックの添加量を厳密に制御しなければならないという問題がある。
【0007】
前出特開2001−59056号公報には、長さが異なる炭素繊維を混合した導電性樹脂組成物が記載されているが、炭素繊維相互間の絡み合いが多くなるため、樹脂組成物中での分散性に優れるとは言いがたく、不均一な分散部分によって導電性にムラが生じるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、樹脂組成物に添加することによって所要の電気抵抗値を付与できると共に、電気抵抗値の制御が容易に行える電気抵抗調整材を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0011】
即ち、本発明は、シリカ粒子、硫酸バリウム粒子、アルミナ粒子、二酸化チタン粒子及び酸化亜鉛粒子から選ばれる白色無機粒子粉末の粒子表面が、糊剤によって被覆されていると共に、該糊剤被覆白色無機粒子表面の少なくとも一部にカーボンブラックが付着している平均粒子径が0.001〜12.0μmの複合粒子粉末からなり、前記カーボンブラックの付着量が前記白色無機粒子粉末100重量部に対して1〜500重量部であることを特徴とする電気抵抗調整材である(本発明)。
【0012】
また、本発明は、シリカ粒子粉末、硫酸バリウム粒子粉末、アルミナ粒子粉末、二酸化チタン粒子粉末及び酸化亜鉛粒子粉末から選ばれる白色無機粒子粉末の粒子表面が、アルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物、ポリシロキサン及びカップリング剤から選ばれる糊剤によって被覆されていると共に、該糊剤被覆白色無機粒子表面の少なくとも一部にカーボンブラックが付着している平均粒子径が0.001〜12.0μmの複合粒子粉末からなり、前記カーボンブラックの付着量が前記白色無機粒子粉末100重量部に対して1〜500重量部であることを特徴とする電気抵抗調整材である(本発明)。
【0013】
また、本発明は、本発明1乃至本発明のいずれかの複合粒子の粒子表面が、脂肪酸、脂肪酸金属塩又はカップリング剤によって被覆されていることを特徴とする電気抵抗調整材である(本発明)。
【0014】
また、本発明は、本発明1乃至本発明のいずれかに記載の電気抵抗調整材が添加されていることを特徴とする樹脂組成物である(本発明)。
【0015】
本発明の構成を詳しく説明すれば、次の通りである。
【0016】
本発明における芯粒子である白色無機粒子粉末としては、シリカ粉、ホワイトカーボン、微粉ケイ酸及び珪藻土等のシリカ粒子粉末硫酸バリウム粒子粉末、アルミナ粒子粉末、二酸化チタン粒子粉末及び酸化亜鉛粒子粉末である。
【0017】
白色無機粒子の粒子形状は、球状、粒状、多面体状、針状、紡錘状、米粒状、フレーク状、鱗片状及び板状等のいずれの形状であっても良いが、得られる樹脂組成物の反り等を考慮すれば、球状又は粒状が好ましく、より好ましくは、球形度(平均粒子径/平均最短径)(以下、「球形度」という。)が1.0以上2.0未満の球状粒子又は粒状粒子である。
【0018】
白色無機粒子の粒子サイズは用途に応じて適宜選択すればよいが、平均粒子径は0.001〜12.0μmが好ましい。平均粒子径が0.001μm未満の場合には、粒子の微細化により凝集を起こしやすくなるため、白色無機粒子表面への糊剤による均一な被覆処理及びカーボンブラックによる均一な付着処理が困難となる。平均粒子径が12.0μmを超える場合には、得られる電気抵抗調整材が粗大粒子となり、これを用いて得られた樹脂組成物の強度が低下するため好ましくない。より好ましくは0.0015〜11.0μm、更により好ましくは0.002〜10.0μmである。
【0019】
白色無機粒子のBET比表面積値は0.1m/g以上が好ましい。BET比表面積値が0.1m/g未満の場合には、白色無機粒子が粗大であったり、粒子及び粒子相互間で焼結が生じた粒子となっており、得られる電気抵抗調整材は粗大粒子となり、これを用いて得られた樹脂組成物は強度が低下する。得られる樹脂組成物の強度を考慮すると、BET比表面積値は、より好ましくは0.3m/g以上、更に好ましくは0.5m/g以上である。白色無機粒子の粒子表面への糊剤による均一な被覆処理及びカーボンブラックによる均一な付着処理を考慮すると、その上限値は500m/gであり、好ましくは450m/g、より好ましくは400m/gである。
【0020】
本発明における白色無機粒子の色相は、L値が70.00以上が好ましく、より好ましくは75.00以上であり、C値が18.00以下が好ましく、より好ましくは15.00以下、最も好ましくは12.00以下である。L値、C値が上記範囲外の場合には、色相が白色を呈しているとは言い難い。
【0021】
本発明における白色無機粒子粉末の体積固有抵抗値は1.0×10Ω・cm以上がである。
【0022】
本発明における糊剤としては、白色無機粒子の粒子表面にカーボンブラックを付着できるものであれば、特に限定されるものではないが、好ましくはアルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、ポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、シラン系、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系の各種カップリング剤、オリゴマー又は高分子化合物の一種又は二種以上を用いることができる。白色無機粒子の粒子表面へのカーボンブラックの付着強度を考慮すれば、より好ましくはアルコキシシラン、ポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、シラン系、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系の各種カップリング剤である。
【0023】
殊に、白色無機粒子粉末としてシリカ粒子粉末を用いた場合には、糊剤としては、有機ケイ素化合物もしくはシラン系カップリング剤を用いることが好ましい。
【0024】
本発明における有機ケイ素化合物としては、化1で表わされるアルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物、化2で表わされるポリシロキサン、化3で表わされる変成ポリシロキサン、化4で表わされる末端変成ポリシロキサン並びに化5で表されるフルオロアルキルシラン又はこれらの混合物を用いることができる。
【0025】
【化1】
Figure 0004378766
【0026】
アルコキシシランとしては、具体的には、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0027】
白色無機粒子の粒子表面へのカーボンブラックの付着強度を考慮すると、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランから生成するオルガノシラン化合物がより好ましく、最も好ましくはメチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン及びフェニルトリエトキシシランから生成するオルガノシラン化合物である。
【0028】
【化2】
Figure 0004378766
【0029】
【化3】
Figure 0004378766
【0030】
【化4】
Figure 0004378766
【0031】
白色無機粒子の粒子表面へのカーボンブラックの付着強度を考慮すると、メチルハイドロジェンシロキサン単位を有するポリシロキサン、ポリエーテル変成ポリシロキサン及び末端がカルボン酸で変成された末端カルボン酸変成ポリシロキサンが好ましい。
【0032】
フルオロアルキルシランとしては、具体的には、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルロデシルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
白色無機粒子の粒子表面へのカーボンブラックの付着強度を考慮すると、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランから生成するフッ素含有オルガノシラン化合物が好ましく、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシランから生成するフッ素含有オルガノシラン化合物が最も好ましい。
【0034】
【化5】
Figure 0004378766
【0035】
カップリング剤のうち、シラン系カップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0036】
チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスフェイト)チタネート、テトラ(2−2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスフェイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
【0037】
アルミネート系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロボキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0038】
ジルコネート系カップリング剤としては、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0039】
オリゴマーとしては、分子量300以上、10,000未満のものが好ましく、高分子化合物としては、分子量10,000以上、100,000程度のものが好ましい。白色無機粒子への均一な被覆処理を考慮すれば、液状、もしくは、水又は各種溶剤に可溶なオリゴマー又は高分子化合物が好ましい。
【0040】
糊剤の被覆量は、糊剤被覆白色無機粒子に対してC換算で0.01〜15.0重量%が好ましい。0.01重量%未満の場合には、白色無機粒子粉末100重量部に対して1重量部以上のカーボンブラックを付着させることが困難である。15.0重量%を超える場合には、白色無機粒子粉末100重量部に対してカーボンブラックを500重量部を越えて付着させることができるため、必要以上に被覆する意味がない。より好ましくは0.02〜12.5重量%、最も好ましくは0.03〜10.0重量%である。
【0041】
本発明におけるカーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラックを用いることができる。
【0042】
カーボンブラックの付着量は、白色無機粒子粉末100重量部に対して1〜500重量部である。1重量部未満の場合には、得られる複合粒子粉末の電気抵抗を低減することが困難である。500重量部を超える場合には、電気抵抗の低減効果が十分に得られるので、500重量部を超えて必要以上に付着させる意味がない。
【0043】
本発明に係る電気抵抗調整材の粒子形状や粒子サイズは、芯粒子である白色無機粒子の粒子形状や粒子サイズに大きく依存し、白色無機粒子に相似する粒子形態を有している。
【0044】
即ち、本発明に係る電気抵抗調整材の粒子形状は、球状、粒状、多面体状、針状、紡錘状、米粒状、フレーク状、鱗片状及び板状等のいずれの形状であっても良いが、得られる樹脂組成物の反り等を考慮すれば、球状又は粒状が好ましく、より好ましくは、球形度が1.0以上2.0未満の球状粒子又は粒状粒子である。
【0045】
本発明に係る電気抵抗調整材の平均粒子径は0.001〜12.0μmである。平均粒子径が0.001μm未満の場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすくなるため、樹脂組成物中における分散が困難となる。12.0μmを超える場合には、粒子サイズが大きすぎるため、これを用いて得られた樹脂組成物は、強度が低下するため好ましくない。好ましくは0.0015〜11.0μm、より好ましくは0.002〜10.0μmである。
【0046】
本発明に係る電気抵抗調整材のBET比表面積値は0.1〜500m/gが好ましい。BET比表面積値が0.1m/g未満の場合には、粒子が粗大であったり、粒子及び粒子相互間で焼結が生じた粒子となっており、これを用いて得られた樹脂組成物は強度が低下する。BET比表面積値が500m/gを超える場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすいため、樹脂組成物中への分散性が低下する。より好ましくは0.3〜450m/g、最も好ましくは0.5〜400m/gである。
【0047】
本発明に係る電気抵抗調整材のL値は90.0以下が好ましく、より好ましくは80.0以下、最も好ましくは70.0以下である。殊に、芯粒子として体質顔料を用いた場合には、L値は22.0以下が好ましく、より好ましくは21.0以下、最も好ましくは20.0以下である。L値の下限値は14.5である。
【0048】
本発明に係る電気抵抗調整材の体積固有抵抗値は、付着に用いるカーボンブラックの体積固有抵抗値と芯粒子として用いる白色無機粒子粉末の体積固有抵抗値との間で任意に制御することができる。具体的には1.0×10〜1.0×10Ω・cmであり、好ましくは5.0×10〜5.0×10Ω・cmである。
【0049】
本発明に係る電気抵抗調整材のカーボンブラックの脱離率は20%以下が好ましい。カーボンブラックの脱離率が20%を超える場合には、脱離したカーボンブラックにより樹脂組成物中での均一な分散が阻害される場合がある。より好ましくは15%以下である。
【0050】
本発明に係る電気抵抗調整材は、必要により、電気抵抗調整材の粒子表面を、更に、脂肪酸、脂肪酸金属塩又はシランカップリング剤によって被覆しておいてもよく、脂肪酸、脂肪酸金属塩又はシランカップリング剤によって被覆しない場合に比べ、樹脂組成物中における分散性が向上する。
【0051】
本発明における脂肪酸としては、飽和又は不飽和の脂肪酸を用いることができ、炭素数12〜22のものが好ましい。
【0052】
本発明における脂肪酸金属塩としては、飽和又は不飽和の脂肪酸と金属との塩類を用いることができ、炭素数12〜18の脂肪酸とマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等のアルカリ土類金属、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属及び亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、鉛、スズ等の金属との塩類を用いることが好ましい。樹脂組成物中における分散性を考慮すれば、ステアリン酸のアルカリ土類金属塩又はステアリン酸亜鉛が好ましい。
【0053】
本発明におけるシランカップリング剤としては、樹脂組成物に一般的に配合されているものを用いることができ、たとえば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジクロロシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0054】
脂肪酸、脂肪酸金属塩又はシランカップリング剤の被覆量は、脂肪酸、脂肪酸金属塩又はシランカップリング剤被覆電気抵抗調整材に対してC換算で0.1〜10.0重量%が好ましい。0.1重量%未満の場合には、樹脂組成物中における分散性改善効果が得られない。10.0重量%を超える場合には、樹脂組成物中における分散性改善効果が飽和するため、必要以上に被覆する意味がない。より好ましくは0.2〜7.5重量%、最も好ましくは0.3〜5.0重量%である。
【0055】
本発明に係る電気抵抗調整材は、本発明1に係る電気抵抗調整材とほぼ同程度の粒子サイズ、BET比表面積値、体積固有抵抗値、黒色度及びカーボンブラックの脱離率を有している。
【0056】
本発明に係る電気抵抗調整材は、必要により、白色無機粒子の粒子表面をあらかじめ、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物より選ばれる少なくとも1種からなる中間被覆物で被覆しておいてもよい。前記中間被覆物で被覆しない場合に比べ、白色無機粒子の粒子表面からのカーボンブラックの脱離率をより低減することができる。
【0057】
中間被覆物による被覆量は、中間被覆物で被覆された白色無機粒子粉末に対してAl換算、SiO換算又はAl換算量とSiO換算量との総和で0.01〜20重量%が好ましい。0.01重量%未満である場合には、カーボンブラックの脱離率の低減効果が得られない。0.01〜20重量%の被覆量により、カーボンブラックの脱離率低減効果が十分に得られるので、20重量%を超えて必要以上に被覆する意味がない。
【0058】
中間被覆物で被覆された白色無機粒子を用いた電気抵抗調整材は、本発明1に係る電気抵抗調整材とほぼ同程度の粒子サイズ、BET比表面積値、体積固有抵抗値及び黒色度を有している。また、カーボンブラックの脱離率は中間被覆物で被覆することによって向上し、脱離率は15%以下が好ましく、より好ましくは10%以下である。
【0059】
次に、本発明に係る電気抵抗調整材の製造法について述べる。
【0060】
本発明に係る電気抵抗調整材は、白色無機粒子と糊剤とを混合し、白色無機粒子の粒子表面を糊剤によって被覆し、次いで、糊剤によって被覆された白色無機粒子とカーボンブラックを混合することによって得ることができる。
【0061】
本発明における白色無機粒子粉末の粒子表面への糊剤による被覆は、白色無機粒子と糊剤又は糊剤の溶液とを機械的に混合攪拌したり、白色無機粒子に糊剤又は糊剤の溶液を噴霧しながら機械的に混合攪拌すればよい。添加した糊剤は、ほぼ全量が白色無機粒子の粒子表面に被覆される。
【0062】
なお、糊剤としてアルコキシシラン又はフルオロアルキルシランを用いた場合、被覆されたアルコキシシラン又はフルオロアルキルシランは、その一部が被覆工程を経ることによって生成する、アルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物又はフルオロアルキルシランから生成するフッ素含有オルガノシラン化合物として被覆されていてもよい。この場合においてもその後のカーボンブラックの付着に影響することはない。
【0063】
糊剤を均一に白色無機粒子の粒子表面に被覆するためには、白色無機粒子の凝集をあらかじめ粉砕機を用いて解きほぐしておくことが好ましい。
【0064】
白色無機粒子と糊剤との混合攪拌、カーボンブラックと粒子表面に糊剤が被覆されている白色無機粒子との混合攪拌をするための機器としては、粉体層にせん断力を加えることのできる装置が好ましく、殊に、せん断、へらなで及び圧縮が同時に行える装置、例えば、ホイール型混練機、ボール型混練機、ブレード型混練機、ロール型混練機を用いることができ、ホイール型混練機がより効果的に使用できる。
【0065】
前記ホイール型混練機としては、エッジランナー(「ミックスマラー」、「シンプソンミル」、「サンドミル」と同義語である)、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、コナーミル、リングマラー等があり、好ましくはエッジランナー、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、リングマラーであり、より好ましくはエッジランナーである。前記ボール型混練機としては、振動ミル等がある。前記ブレード型混練機としては、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ナウターミキサー等がある。前記ロール型混練機としては、エクストルーダー等がある。
【0066】
白色無機粒子と糊剤との混合攪拌時における条件は、白色無機粒子の粒子表面に糊剤ができるだけ均一に被覆されるように、線荷重は19.6〜1960N/cm(2〜200Kg/cm)、好ましくは98〜1470N/cm(10〜150Kg/cm)、より好ましくは147〜980N/cm(15〜100Kg/cm)、処理時間は5分〜24時間、好ましくは10分〜20時間の範囲で処理条件を適宜調整すればよい。なお、撹拌速度は2〜2000rpm、好ましくは5〜1000rpm、より好ましくは10〜800rpmの範囲で処理条件を適宜調整すればよい。
【0067】
糊剤の添加量は、白色無機粒子粉末100重量部に対して0.15〜45重量部が好ましい。0.15〜45重量部の添加量により、白色無機粒子粉末100重量部に対してカーボンブラックを1〜500重量部付着させることができる。
【0068】
白色無機粒子の粒子表面に糊剤を被覆した後、カーボンブラックを添加し、混合攪拌して糊剤被覆白色無機粒子の表面にカーボンブラックを付着させる。必要により更に、乾燥乃至加熱処理を行ってもよい。
【0069】
カーボンブラックは、少量ずつを時間をかけながら、殊に5分〜24時間、好ましくは5分〜20時間程度をかけて添加するか、若しくは、白色無機粒子粉末100重量部に対して5〜25重量部のカーボンブラックを、所望の添加量となるまで分割して添加することが好ましい。
【0070】
混合攪拌時における条件は、カーボンブラックが均一に付着するように、線荷重は19.6〜1960N/cm(2〜200Kg/cm)、好ましくは98〜1470N/cm(10〜150Kg/cm)、より好ましくは147〜980N/cm(15〜100Kg/cm)、処理時間は5分〜24時間、好ましくは10分〜20時間の範囲で処理条件を適宜調整すればよい。なお、撹拌速度は2〜2000rpm、好ましくは5〜1000rpm、より好ましくは10〜800rpmの範囲で処理条件を適宜調整すればよい。
【0071】
カーボンブラックの添加量は、白色無機粒子粉末100重量部に対して1〜500重量部であり、好ましくは2〜400重量部、より好ましくは5〜300重量部である。カーボンブラックの添加量が1重量部未満の場合、得られる複合粒子粉末の電気抵抗を低減することが困難である。500重量部を超える場合には、電気抵抗低減効果が十分に得られるので、500重量部を超えて必要以上に付着させる意味がない。
【0072】
乾燥乃至加熱処理を行う場合の加熱温度は、通常40〜150℃が好ましく、より好ましくは60〜120℃であり、加熱時間は、10分〜12時間が好ましく、30分〜3時間がより好ましい。
【0073】
なお、糊剤としてアルコキシシラン及びフルオロアルキルシランを用いた場合には、これらの工程を経ることにより、最終的にはアルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物又はフルオロアルキルシランから生成するフッ素含有オルガノシラン化合物となって被覆されている。
【0074】
本発明に係る電気抵抗調整材は、上記で得られた電気抵抗調整材を脂肪酸、脂肪酸金属塩又はシランカップリング剤で被覆することによって得ることができる。
【0075】
電気抵抗調整材の脂肪酸、脂肪酸金属塩又はシランカップリング剤による被覆は、電気抵抗調整材と脂肪酸、脂肪酸金属塩又はシランカップリング剤とを加熱しながら機械的に混合攪拌すればよい。
【0076】
脂肪酸、脂肪酸金属塩又はシランカップリング剤の添加量は、電気抵抗調整材100重量部に対して0.13〜67重量部が好ましい。0.13〜67重量部の添加量により、電気抵抗調整材の樹脂組成物中への分散性をより改善することができる。
【0077】
加熱温度は、40℃以上が好ましく、より好ましくは50℃以上、最も好ましくは60℃以上であり、その上限値は、被覆する脂肪酸、脂肪酸金属塩及びカップリング剤の融点もしくは沸点である。
【0078】
白色無機粒子は、必要により、糊剤との混合撹拌に先立って、あらかじめ、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物より選ばれる少なくとも一種からなる中間被覆物で被覆しておいてもよい。
【0079】
中間被覆物による被覆は、白色無機粒子を分散して得られる水懸濁液に、アルミニウム化合物、ケイ素化合物又は当該両化合物を添加して混合攪拌することにより、又は、必要により、混合攪拌後にpH値を調整することにより、前記白色無機粒子の粒子表面を、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物より選ばれる少なくとも一種からなる中間被覆物で被覆し、次いで、濾別、水洗、乾燥、粉砕する。必要により、更に、脱気・圧密処理等を施してもよい。
【0080】
アルミニウム化合物としては、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩や、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリ塩等が使用できる。
【0081】
ケイ素化合物としては、3号水ガラス、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等が使用できる。
【0082】
次に、本発明に係る電気抵抗調整材を用いた樹脂組成物について述べる。
【0084】
本発明1又は2に係る電気抵抗調整材を添加した樹脂組成物は、分散状態は後出の評価方法による4又は5が好ましく、より好ましくは5であり、反りは、後出の評価方法による300μm以下が好ましく、より好ましくは200μm以下であり、引張り強さは51MPa以上が好ましく、より好ましくは53MPa以上である。体積固有抵抗値は、配合する電気抵抗調整材の体積固有抵抗値と配合量によって樹脂の電気抵抗値から電気抵抗調整剤の体積固有抵抗値の間で任意にコントロールすることができる。具体的には、1.0×10〜1.0×1010Ω・cmである。殊に、ICトレイ等に用いる場合には、1.0×10〜1.0×10Ω・cmにコントロールすることが好ましい。
【0085】
本発明に係る電気抵抗調整材を添加した樹脂組成物は、分散状態は後出の評価方法による4又は5が好ましく、より好ましくは5であり、反りは、後出の評価方法による200μm以下が好ましく、より好ましくは150μm以下であり、引張り強さは52MPa以上が好ましく、より好ましくは54MPa以上である。体積固有抵抗値は、配合する電気抵抗調整材の体積固有抵抗値と配合量によって樹脂の電気抵抗値から電気抵抗調整剤の体積固有抵抗値の間で任意にコントロールすることができる。具体的には、1.0×10〜1.0×1010Ω・cmである。殊に、ICトレイ等に用いる場合には、1.0×10〜1.0×10Ω・cmにコントロールすることが好ましい。
【0086】
本発明に係る樹脂組成物中における電気抵抗調整材の配合割合は、樹脂100重量部に対して0.01〜200重量部の範囲で添加することができ、樹脂組成物のハンドリングを考慮すれば、好ましくは0.05〜150重量部、更に好ましくは0.1〜100重量部である。
【0087】
本発明に係る樹脂組成物の構成基材は、電気抵抗調整材と周知の樹脂、好ましくは熱可塑性樹脂である。必要により、着色剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、各種安定剤等の添加剤が配合される。
【0088】
樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−EPDM−スチレン共重合体、アクリレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂及びポリウレタン系樹脂等の熱可塑性樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ芳香族エーテル又はチオエーテル系樹脂、ポリ芳香族エステル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、シリコーン樹脂、ロジン・エステル、ロジン、天然ゴム、合成ゴム等を用いることができる。
【0089】
必要により配合される前記添加剤の量は、電気抵抗調整材と樹脂との総和に対して50重量%以下であればよい。添加剤の含有量が50重量%を超える場合には、成形性が低下する。
【0090】
本発明に係る樹脂組成物は、樹脂材料と電気抵抗調整材をあらかじめよく混合し、次に、混練機もしくは押出機を用いて加熱下でせん断作用を加えて、電気抵抗調整材の凝集体を破壊し、樹脂組成物中に電気抵抗調整材を均一に分散させた後、目的に応じた形状に成形加工して使用する。
【0091】
本発明に係る樹脂組成物はマスターバッチペレットを経由して得ることもできる。
【0092】
本発明におけるマスターバッチペレットは、樹脂材料と前記電気抵抗調整材とを、リボンブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の混合機で混合した後、周知の単軸混練押出機や二軸混練押出機等で混練、成形した後切断するか、又は、上記混合物をバンバリーミキサー、加圧ニーダー等で混練して得られた混練物を粉砕又は成形、切断することにより製造される。
【0093】
樹脂材料と電気抵抗調整材との混練機への供給は、それぞれを所定比率で定量供給してもよいし、あらかじめ両者を比定比率で混合した混合物を供給してもよい。
【0094】
本発明におけるマスターバッチペレットは、平均長径1〜6mm、好ましくは2〜5mmの範囲である。平均短径は2〜5mm、好ましくは2.5〜4mmである。平均長径が1mm未満の場合には、ペレット製造時の作業性が悪く好ましくない。6mmを超える場合には、希釈用樹脂の大きさとの違いが大きく、十分に分散させるのが困難となる。また、その形状は種々のものができ、不定形及び球形等の粒状、円柱形、フレーク状等にできる。
【0095】
本発明におけるマスターバッチペレットに使用する樹脂は、前記樹脂と同一の樹脂が使用できる。
【0096】
なお、マスターバッチペレット中の樹脂の組成は、希釈用樹脂と同一の樹脂を用いても、また、異なる樹脂を用いてもよいが、異なる樹脂を使用する場合には、樹脂同士の相溶性により決まる諸特性を考慮して決めればよい。
【0097】
マスターバッチペレット中に配合される電気抵抗調整材の量は、樹脂100重量部に対して1〜200重量部が好ましい。1重量部未満の場合には、混練時の溶融粘度が不足し、電気抵抗調整材の良好な分散混合が困難である。200重量部を超える場合には、電気抵抗調整材に対する樹脂が少ないため、電気抵抗調整材の良好な分散混合が難しく、また、マスターバッチペレットの添加量のわずかな変化によって樹脂組成物中に配合される電気抵抗調整材の含有量が大きく変化するため所望の含有量に調製することが困難となり好ましくない。また、機械摩耗が激しく適当ではない。より好ましくは1〜150重量部、更により好ましくは1〜100重量部である。
【0098】
【発明の実施の形態】
本発明の代表的な実施の形態は、次の通りである。
【0099】
シリカ粒子粉末、カーボンブラック及び電気抵抗調整材の各粒子粉末の平均粒子径は、電子顕微鏡写真を縦方向及び横方向にそれぞれ4倍に拡大した写真に示される粒子約350個の粒子径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
【0100】
比表面積値は、BET法により測定した値で示した。
【0101】
中間被覆物によって被覆された白色無機粒子末の粒子表面に存在するAl量及びSi量は、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
【0102】
また、白色無機粒子の粒子表面に被覆されている糊剤の被覆量、電気抵抗調整材に付着しているカーボンブラックの付着量及び電気抵抗調整材の粒子表面に被覆されている脂肪酸、脂肪酸金属塩又はシランカップリング剤の量は、「堀場金属炭素・硫黄分析装置EMIA−2200型」(株式会社堀場製作所製)を用いて炭素量を測定することにより求めた。
【0103】
電気抵抗調整材に付着しているカーボンブラックの脱離率(%)は、下記の方法により求めた値で示した。カーボンブラックの脱離率が0%に近いほど、粒子表面からのカーボンブラックの脱離量が少ないことを示す。
【0104】
電気抵抗調整材3gとエタノール40mlを50mlの沈降管に入れ、20分間超音波分散を行った後、120分静置し、比重差によって電気抵抗調整材と脱離したカーボンブラックを分離した。次いで、この電気抵抗調整材に再度エタノール40mlを加え、更に20分間超音波分散を行った後120分静置し、電気抵抗調整材と脱離したカーボンブラックを分離した。この電気抵抗調整材を100℃で1時間乾燥させ、前述の「堀場金属炭素・硫黄分析装置EMIA−2200型」(株式会社堀場製作所製)を用いて炭素量を測定し、下記数1に従って求めた値をカーボンブラックの脱離率(%)とした。
【0105】
【数1】
カーボンブラックの脱離率(%)={(Wa−We)/Wa}×100
Wa:電気抵抗調整材のカーボンブラック付着量
We:脱離テスト後の電気抵抗調整材のカーボンブラック付着量
【0106】
電気抵抗調整材及びカーボンブラックの色相は、試料0.5gとヒマシ油0.7mlとをフーバー式マーラーで練ってペースト状とし、このペーストにクリアラッカー4.5gを加え、混練、塗料化してキャストコート紙上に150μm(6mil)のアプリケーターを用いて塗布した塗布片(塗膜厚み:約30μm)を作製し、該塗料片について、多光源分光測色計「MSC−IS−2D」(スガ試験機株式会社製)を用いて測定を行い、JIS Z 8729に定めるところに従って表色指数(L値、a値、b値)を測色し、L値及びC値で示した。なお、C値は彩度を表し、下記数2に従って求めることができる。
【0107】
【数2】
値=((a値)+(b値)1/2
【0108】
ここでL値は、明度を表わし、L値が小さいほど黒色度が優れていることを示す。
【0109】
白色無機粒子粉末、カーボンブラック及び電気抵抗調整材及び樹脂組成物の各体積固有抵抗値は、下記の方法で測定用試料を作製し該測定用試料の体積固有抵抗値を測定することにより求めた。
【0110】
測定試料0.5gを測り取り、KBr錠剤成形器(株式会社島津製作所)を用いて、1.372×10Pa(140Kg/cm)の圧力で加圧成形を行い、円柱状の被測定試料を作製した。また、樹脂組成物の場合、後述する処法によって作製した樹脂プレートを打ち抜いて、円柱状の被測定試料を作製した。
【0111】
次いで、被測定試料を温度25℃、相対湿度60%環境下に12時間以上暴露した後、この被測定試料をステンレス電極の間にセットし、ホイートストンブリッジ(TYPE2768 横河北辰電気株式会社製)で15Vの電圧を印加して抵抗値R(Ω)を測定した。
【0112】
次いで、被測定(円柱状)試料の上面の面積A(cm)と厚みt(cm)を測定し、下記数3にそれぞれの測定値を挿入して、体積固有抵抗値(Ω・cm)を求めた。
【0113】
【数3】
体積固有抵抗値(Ω・cm)=R×(A/t
【0114】
樹脂組成物中への分散性は、得られた樹脂組成物表面における未分散の凝集粒子の個数を目視により判定し、5段階で評価した。5が最も分散状態が良いことを示す。
【0115】
1: 1cm当たりに50個以上
2: 1cm当たりに10個以上50個未満
3: 1cm当たりに5個以上10個未満
4: 1cm当たりに1個以上5個未満
5: 未分散物認められず
【0116】
樹脂組成物の反りは、後述する処方によって135.9×315×7.6mmに成形した樹脂プレートを、150℃に温度設定したギヤオーブン中で48時間加温した後に、23℃で24時間放置する。この後、樹脂プレートを平板状に置いて、測定点としてトレイの四隅を含む外周部8点及び中央部1点について、それぞれの平面からの高さの平均値を反り値として表記した。
【0117】
樹脂組成物の引張強さは、JIS K 6301に従って測定を行った。
【0118】
<電気抵抗調整材の製造>
シリカ粒子粉末(粒子形状:球状、球形度1.02、平均粒子径0.084μm、BET比表面積値100.3m/g、L値93.8、C値1.1、体積固有抵抗値5.6×10Ω・cm)7.0kgに、メチルハイドロジェンポリシロキサン(商品名:TSF484:GE東芝シリコーン株式会社製)140gを、エッジランナーを稼動させながらシリカ粒子粉末に添加し、588N/cm(60Kg/cm)の線荷重で30分間混合攪拌を行った。なお、この時の攪拌速度は22rpmで行った。
【0119】
次に、カーボンブラック粒子粉末A(粒子形状:粒状、粒子径0.022μm、BET比表面積値134.0m/g、黒色度L値16.6、pH値3.4、DBP吸油量89ml/100g、体積固有抵抗値2.0×10Ω・cm)3.5kgを、エッジランナーを稼動させながら10分間かけて添加し、更に588N/cm(60Kg/cm)の線荷重で60分間混合攪拌を行い、メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆にカーボンブラックを付着させた後、乾燥機を用いて80℃で60分間乾燥を行い、電気抵抗調整材を得た。なお、この時の攪拌速度は22rpmで行った。
【0120】
得られた電気抵抗調整材は、平均粒子径が0.086μm、球形度1.03の球状粒子であった。BET比表面積値は109.7m/gであり、体積固有抵抗値は6.3×10Ω・cm、黒色度L値は17.84、カーボンブラックの脱離率は7.2%であり、メチルハイドロジェンポリシロキサンの被覆量はC換算で0.53重量%であった。付着しているカーボンブラック量はC換算で32.95重量%(シリカ粒子粉末100重量部に対して50重量部に相当する)であった。電子顕微鏡写真の観察結果より、カーボンブラックがほとんど認められないことから、カーボンブラックのほぼ全量がメチルハイドロジェンポリシロキサン被覆に付着していることが認められた。
【0121】
<樹脂組成物の製造>
ここに得られた電気抵抗調整材を用い、下記に示す配合割合にて予備混合を行った後、樹脂組成物を二軸混練機により260〜300℃で混練、押出後、切断をして円柱状(平均短径3mm、平均直径3mm)のペレットを得た。
【0122】
電気抵抗調整材 20.0重量部、
ポリフェニレンエーテル 75.0重量部、
ポリスチレン 25.0重量部。
【0123】
得られた樹脂組成物を200〜300℃で射出成形して試験片を調製し、各種試験を行った。
【0124】
得られた樹脂組成物の分散状態は5であり、反りは0.07μm、電気抵抗値は8.1×10Ω・cm、引張り強さは55MPaであった。
【0125】
【作用】
本発明に係る電気抵抗調整材の分散性が優れているのは、白色無機粒子の粒子表面に糊剤を介してカーボンブラックを付着させたことによって、白色無機粒子の粒子表面にカーボンブラックが強固に付着しているから、白色無機粒子の粒子表面からのカーボンブラックの脱離が少なく、カーボンブラックの脱離による分散性の低下が抑制されたこと及び付着させたカーボンブラックに起因する微細な凹凸が粒子表面に形成されているために分散性が向上したものと考えている。
【0126】
樹脂組成物において、本発明に係る電気抵抗調整材(実施例5)の配合量を種々変化させた樹脂組成物の電気抵抗値の変化を図1に示す。図1から明らかな通り、カーボンブラックを単独で用いた樹脂組成物では急激な電気抵抗の変化を生じるが、本発明に係る電気抵抗調整材を用いた樹脂組成物では電気抵抗調整材の含有量の増加に伴い緩やかな電気抵抗の変化をするため、樹脂組成物において所要の電気抵抗値を容易に得ることができる。
【0127】
更に、電気抵抗調整材のカーボンブラックの付着量を種々変化させた電気抵抗調整材によっても樹脂組成物の電気抵抗値を容易に制御することが可能である。即ち、図2に示す通り、カーボンブラックの付着量を種々変化させた本発明に係る各電気抵抗調整材を樹脂組成物中に一定量添加した場合、種々の電気抵抗値を有する樹脂組成物を得ることができる。
【0128】
さらに、本発明に係る電気抵抗調整材は、炭素繊維のような繊維状の物質を用いた場合に比較して樹脂組成物の反りが起こりにくく、強度的にも優れた樹脂組成物となる。
【0129】
本発明に係る樹脂組成物は、電気抵抗値を容易に制御することができ、殊に、厳密な電気抵抗値の制御が要求される半導体トレイ用として好適であり、また、カーボンブラックの脱離が可及的に少ないので、クリーンルームで使用することが可能である。
【0130】
【実施例】
次に、実施例並びに比較例を挙げる。
【0131】
芯粒子1〜5:
芯粒子として表1に示す特性を有する白色無機粒子粉末を用意した。
【0132】
【表1】
Figure 0004378766
【0133】
芯粒子6:
芯粒子1の凝集が解きほぐされた酸化チタン粒子粉末20kgと水150lとを用いて、酸化チタン粒子粉末を含むスラリーを得た。得られた酸化チタン粒子粉末を含む分散スラリーのpH値を、水酸化ナトリウム水溶液を用いて10.5に調整し、次いで、該スラリーに水を加えスラリー濃度を98g/lに調整した。このスラリー150lを加熱して60℃とし、このスラリー中に1.0mol/lのNaAlO溶液5444ml(酸化チタン粒子粉末に対してAl換算で0.5重量%に相当する)を加え、30分間保持した後、酢酸を用いてpH値を7.5に調整した。この状態で30分間保持した後、濾過、水洗、乾燥、粉砕して粒子表面がアルミニウムの水酸化物により被覆されている酸化チタン粒子粉末を得た。
【0134】
このときの製造条件及び得られた表面処理済酸化チタン粒子粉末の諸特性を表2に示す。
【0135】
芯粒子7〜10:
各芯粒子粉末を用い、中間被覆物の種類及び量を種々変化させた以外は、前記芯粒子6と同様にして粒子表面が中間被覆物で被覆されている白色無機粒子粉末を得た。
【0136】
このときの製造条件を表2に、得られた表面処理済白色無機粒子粉末の諸特性を表3に示す。尚、表面処理工程における被覆物の種類のAはアルミニウムの水酸化物であり、Sはケイ素の酸化物を表わす。
【0137】
【表2】
Figure 0004378766
【0138】
【表3】
Figure 0004378766
【0139】
実施例1〜13、比較例1〜3:
芯粒子の種類、糊剤添加の有無、種類及び添加量、糊剤による被覆工程におけるエッジランナーによる処理条件、カーボンブラック微粒子粉末の種類及び添加量、カーボンブラックの付着工程におけるエッジランナーによる処理条件を種々変えた以外は、前記発明の実施の形態と同様にして電気抵抗調整材を得た。実施例1〜13の各実施例で得られた電気抵抗調整材は、電子顕微鏡観察の結果、カーボンブラックがほとんど認められないことから、カーボンブラックのほぼ全量が糊剤被覆に付着していることが認められた。
【0140】
使用したカーボンブラック微粒子粉末B乃至Eの諸特性を表4に示す。
【0141】
【表4】
Figure 0004378766
【0142】
このときの処理条件を表5に、得られた電気抵抗調整材の諸特性を表6に示す。
【0143】
【表5】
Figure 0004378766
【0144】
【表6】
Figure 0004378766
【0145】
実施例14:
電気抵抗調整材2kgにステアリン酸亜鉛20gを添加し、ヘンシェルミキサーを用いて攪拌しながら30分かけて80℃まで昇温し、この状態で45分間保持した後、更に30分かけて室温まで冷却することによって表面被覆電気抵抗調整材を得た。
【0146】
このときの製造条件を表7に、得られた表面被覆電気抵抗調整材の諸特性を表8に示す。
【0147】
実施例15〜19:
電気抵抗調整材の種類及び脂肪酸、脂肪酸金属塩及びカップリング剤の種類及び被覆量、ヘンシェルミキサーによる被覆工程における混練温度及び混練時間を種々変化させた以外は、実施例14と同様にして粒子表面が被覆物で被覆されている電気抵抗調整材を得た。
【0148】
このときの製造条件を表7に、得られた表面被覆電気抵抗調整材の諸特性を表8に示す。
【0149】
【表7】
Figure 0004378766
【0150】
【表8】
Figure 0004378766
【0151】
実施例20〜41、比較例4〜10:
電気抵抗調整材及び樹脂の種類及び配合量を種々変化させた以外は、前記発明の実施の形態と同様にして樹脂組成物を得た。
【0152】
このときの製造条件を表9に、得られた樹脂組成物の諸特性を表10に示す。
【0153】
【表9】
Figure 0004378766
【0154】
【表10】
Figure 0004378766
【0155】
【発明の効果】
本発明に係る電気抵抗調整材は、優れた分散性を有しているので樹脂組成物用充填材として好適である。
【0156】
また、上記電気抵抗調整材を樹脂組成物に混合した場合には、樹脂組成物の電気抵抗値を任意に制御することができるので、半導体トレイ用などの樹脂組成物として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ポリカーボネート100重量部に対して、実施例5の電気抵抗調整材の配合量を種々変化させた樹脂組成物(実施例24〜27)の電気抵抗値及びポリカーボネート100重量部に対して、カーボンブラックAの配合量を種々変化させた樹脂組成物(比較例4〜7)の電気抵抗値の変化を示すグラフである。
【図2】 カーボンブラック付着量を種々変化させた電気抵抗調整材をポリカーボネート100重量部に対して50重量部配合した樹脂組成物(実施例22、23、27及び28)の電気抵抗値の変化を示すグラフである。

Claims (4)

  1. シリカ粒子、硫酸バリウム粒子、アルミナ粒子、二酸化チタン粒子及び酸化亜鉛粒子から選ばれる白色無機粒子粉末の粒子表面が、糊剤によって被覆されていると共に、該糊剤被覆白色無機粒子表面の少なくとも一部にカーボンブラックが付着している平均粒子径が0.001〜12.0μmの複合粒子粉末からなり、前記カーボンブラックの付着量が前記白色無機粒子粉末100重量部に対して1〜500重量部であることを特徴とする電気抵抗調整材。
  2. シリカ粒子粉末、硫酸バリウム粒子粉末、アルミナ粒子粉末、二酸化チタン粒子粉末及び酸化亜鉛粒子粉末から選ばれる白色無機粒子粉末の粒子表面が、アルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物、ポリシロキサン及びカップリング剤から選ばれる糊剤によって被覆されていると共に、該糊剤被覆白色無機粒子表面の少なくとも一部にカーボンブラックが付着している平均粒子径が0.001〜12.0μmの複合粒子粉末からなり、前記カーボンブラックの付着量が前記白色無機粒子粉末100重量部に対して1〜500重量部であることを特徴とする電気抵抗調整材。
  3. 請求項1乃至請求項のいずれかに記載の複合粒子の粒子表面が、脂肪酸、脂肪酸金属塩又はカップリング剤によって被覆されていることを特徴とする電気抵抗調整材。
  4. 請求項1乃至請求項のいずれかに記載の電気抵抗調整材が添加されていることを特徴とする樹脂組成物。
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