JP4378013B2 - 水着用布帛および水着 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は水着用布帛および水着に関し、さらに詳しくは水中での身体の運動機能を拘束しない適度なストレッチ性とフィット性を有し、かつ水中および水から上がった後の冷えによる身体の運動疲労を抑制するのに好適な水着用布帛およびこれを用いた水着に関する。
【0002】
【従来の技術】
水着等の水中衣料には、水中での動き易さが要求されるため、ストレッチ性に優れた、身体に適度にフィットする布帛が用いられる。
一方、海やプール等の水中では、身体周辺が空気よりも熱伝導性の大きい水で覆われるため、特に身体の体温よりも低い水温の水中では、水によって体温が奪われ、身体中の血管の収縮により身体が疲労し易い。また水中から上がった直後の大気中では、身体と衣料の間に水が滞留し、また衣料自身に大量の水が含まれているため、この水が大気中に気化する際に身体の熱を奪い、水中同様に血管の収縮によって身体が疲労し易い。近年は、冬季でもフィットネスクラブやスイミングスクール等で水中運動する老若男女が増えているため、特に真夏以外の期間で、大気の温度がプールの水温や身体の体温よりも低い場合でも、上記した水による身体の冷えを軽減することができる種々の水着が提案されている。
【0003】
例えば、実開平3−14178号公報には、太陽光を吸収して熱を発生する物質を含む繊維を用いて身体の冷えを軽減する方法が提案されている。しかし、上記の熱を発生する物質は、太陽の可視光線や近赤外線を吸収して熱を発生するため、光の届かない衣料の内側や、屋外よりも照度の低い屋内プール等では、熱発生の効果が得られにくいという欠点があった。
また特開平9−41244号公報、特開平10−298854号公報等には、布帛の肌に接触する面(肌面)を凹凸構造とし、肌と接触する水量を少なくして身体の冷えを軽減する方法が提案されている。しかし、この方法は、水から上がったときの冷えを軽減する効果は得られるが、熱伝導性の非常に大きい水中ではこの水が布帛内部に侵入して布帛の肌面が水で濡れてしまうため、水中での身体の冷えは軽減されず、また運動機能が低下するという欠点があった。
【0004】
また実開平4−89507号公報には、発泡ゴムシートの両面に伸縮性編地を貼り合わせた布帛を保温性水着に用いることが提案されている。しかし、この水着では、発泡ゴムシートが布帛の表面と裏面を遮断しているため、水中での身体の冷えを軽減することはできるが、発泡ゴムシートを用いるために布帛が厚く、剛直になり、ストレッチ性やフィット性に劣り、また身体の動き易さや水着の着脱性が低下するため、特に水中運動を目的とする水着には不向きであった。
このように、水着として要求されるストレッチ性、フィット性、生地の薄さ、柔軟性等を保持しながら、着用者の身体の冷えによる疲労を抑制することができる水着はまだ得られていないのが実状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、水着として要求されるストレッチ性、フィット性、柔軟性、審美性等の性能を保持ししつ、水中および水から上がったときの身体の冷えを軽減して身体の疲労を抑制し、かつ着用時の不快感を少なくすることができる水着用布帛およびこれを用いた水着を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題について鋭意検討を重ねた結果、特定の交編編地を有する布帛の伸長率、厚さ、通気量、含気量および水との接触角を特定し、布帛内部への水の侵入や通過を防ぎつつ、布帛の通気性を低下させ、かつ布帛の含気量を増やして水中および水から上がったときの布帛の空気層の保持能力を向上させることにより、上記課題を達成できることを見出し、本発明に到達したものである。
すなわち、本願で特許請求される発明は以下のとおりである。
【0007】
(1)ポリウレタン弾性繊維以外の合成繊維とポリウレタン弾性繊維を交編し、ポリエステルマルチフィラメント糸を表面層に、異型断面糸を含むポリエステル繊維の嵩高糸を裏面層に配した編地を有する布帛であって、編地表面に撥水加工が施されており、該布帛の4.9N荷重時の経方向と緯方向の伸長率がそれぞれ25〜100%、厚みが0.7〜3mm、通気量が50cm3/cm2・sec以下、含気量が500〜2000cm3/m2であり、かつ該布帛表面の水との接触角が90〜180°であることを特徴とする水着用布帛。
(2)ポリエステルマルチフィラメント糸を表面層に、ポリウレタン弾性繊維を中層に、溝状筋を有する異型断面糸を含むポリエステル繊維の嵩高糸を裏面層に配した三層構造を有する編地であることを特徴とする(1)に記載の水着用布帛。
(3)(1)または(2)に記載の布帛を用いた水着。
【0008】
【作用】
水による身体の冷えを防止し、身体疲労を抑制するには、布帛内層部に熱伝導性の大きな水が浸透して身体が水と接触するのをできるだけ防ぐようにすることが重要である。
本発明における水着用布帛では、布帛内層部の断熱層となる空気層を含気量で規定し、また水中での布帛からの空気の抜け出難さを通気量で、さらに布帛の空気層を保持する能力を水との接触角で規定し、これらを特定の範囲としているため、水中等において、布帛の表面側から肌面側への水の通過や浸入を遮蔽し、布帛内層部への有効な断熱層となる空気層の保持能力を向上させることができる。従って、上記布帛を用いた水着を着用することにより、水による身体の冷えを効果的に防ぎ、身体の疲労を抑制することができる。また本発明の水着用布帛にはポリウレタン弾性繊維を交編した編地を用いて適切な伸長率と厚さを保持させているため、水着に適した適度なストレッチ性と身体へのフィット性さらに審美性等が得られる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明における水着用布帛には、ポリウレタン弾性繊維以外の合成繊維とポリウレタン弾性繊維を交編した編地が用いられる。
上記合成繊維としては特に制限はなく、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリウレタン系繊維などが用いられる。これらのうち、布帛内部への水の侵入を効果的に防ぐ点から、公定水分率の低いポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維が好ましい。なお、ここで言うポリエステル系繊維とは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどの繊維形成性を有するポリエステル重合体からなる繊維をいう。
【0010】
繊維形態としては、フィラメント、ステープルのいずれでもよく、また混繊状態であってもよいが、布帛のストレッチ性およびストレッチバック性を得る点から、フィラメント形態の糸条を用いるのが好ましく、また審美性の点からはマルチフィラメント糸を用いるのが好ましい。また繊維の断面形状は丸形であっても充分な効果が得られるが、布帛内に空気層を保持させる等の点から、例えばW型、I型、H型、Y型、T型、X型、U型、L型、Z型、∞型、π型等の凹状の溝状筋を有する異形断面とするのが好ましい。
【0011】
上記合成繊維と交編されるポリウレタン弾性繊維としては公知のものが使用できる。例えば、ポリエーテル系弾性繊維、ポリエステル系弾性繊維、ポリカーボネート系弾性繊維などが用いられるが、これらを共重合した高分子ジオール成分と有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤を重合することによって得られる、伸長回復性に優れた繊維であってもよい。また活性塩素によって殺菌管理されているプールでの使用が考えられるため、耐塩素性能を有するポリウレタン弾性繊維がより好ましい。
【0012】
ポリウレタン弾性繊維を上記合成繊維と交編することにより、適度なストレッチ性と身体へのフィット性を得ることができる。これらの繊維の使用割合は布帛に要求されるストレッチ性やフィット性等により適宜選定するのが好ましい。
また上記合成繊維およびポリウレタン弾性繊維の繊度は、通常0.1〜15デシテックスとされ、太さは通常20〜170デシテックスとされるが、これらに制限されるものではない。またマルチフィラメント糸の場合のフィラメント数は一般的には5〜100フィラメントとされる。
【0013】
本発明における水着用布帛は、4.9N荷重時における経方向と緯方向の伸長率がそれぞれ25〜100%、好ましくは50〜80%であり、厚みが0.7〜3mm、好ましくは1〜2mmである。
布帛の上記伸長率が25%未満では、水中における身体の運動に対する追従性やフィット性に劣り、身体の動き易さが阻害される。一方、伸長率が100%を超えると、水中飛び込みなどの周囲の流水に対して布帛が受ける抵抗が大きくなる状況において、布帛と身体との密着性が劣り、衣服がめくれ上がったり、身体と水着の間に多量の水が入り、不快感を生じ易く、また身体の動き易さが阻害される。また布帛の厚みが3mmを超えると布帛が剛直になり、身体の動きが拘束されて身体が受ける疲労感が増大し、また審美性が低下する。一方、厚みが0.7mm未満では身体の動きは拘束されなくなるが、身体の冷えを防止するための後述する含気量が得られず、冷えによる身体の疲労が増大する。
【0014】
また本発明における水着用布帛は、水中および水から出たときの身体の冷えを防ぎ、身体疲労を抑制する効果を得る点から、該布帛の通気量が50cm3/cm2.sec 以下、好ましくは30cm3/cm2.sec 以下、より好ましくは0cm3/cm2.sec であり、含気量が500〜2000cm3/m2、好ましくは800〜1500cm3/m2であり、さらに布帛表面と水との接触角が90〜180゜、好ましくは120〜180°であることが必要である。
【0015】
上記通気量が50cm3/cm2.sec を超えると、水着を着用して水中に入ったときに、空気が布帛内から水中へと抜け出し、空気が抜け出た布帛内層部の空隙に熱伝導性の大きい水が侵入してしまうため、身体の冷えを防止する効果が得られない。また含気量が500cm3/m2未満では、布帛内層部の空気が断熱層としての効果を発揮できず、また含気量が2000cm3/m2を超えると、布帛が暑くなり、動き易さが低下する。また布帛表面の水との接触角が90゜未満では、布帛表面からの水の浸入を防ぐことができず、入水時間の経過と共に布帛内層の空気が水に徐々に置換され、身体の冷えを防止する効果が低下する。一方、接触角が180゜を超えることは測定上あり得ない。布帛表面と水の接触角は、水と長時間接触する環境下でも変化しないことが好ましい。
【0016】
本発明において、ポリウレタン弾性繊維以外の合成繊維とポリウレタン弾性繊維を交編した編地の好ましい態様としては、水と直接接する表面層にポリエステルマルチフィラメント糸を、中層にポリウレタン弾性繊維を、肌と直接接する裏面層に溝状筋を有する異形断面糸を含むポリエステル繊維の嵩高糸を用いた三層構造編地が挙げられる。
上記表面層に用いるポリエステル繊維マルチフィラメント糸としては、水との接触角を大きくする点から、フラットヤーンを用いるのが好ましい。さらに空気層保持の点からは上述した凹状の溝状筋を有する異形断面糸を用いるのがより好ましい。
【0017】
また裏面層にも布帛の通気量を低下させ、かつ含気量を増大させる点および嵩高性の付与の点から、凹状の溝状筋を有する、特に断面が扁平で凹状溝が比較的深い異形断面のフィラメントまたはステープルを用いることが好ましい。また布帛のストレッチ性およびストレッチバック性を充分に得るためにはフィラメント形態の糸条が好ましい。
裏面層に用いる嵩高糸は公知の方法で得ることができる。例えば、異形断面糸に仮撚加工を施し、糸長方向に捲縮を付与した糸、高伸縮糸と異形断面の低伸縮糸を組み合わせたエア加工糸または混繊糸などが挙げられる。このような嵩高糸を用いることにより、通気量が少なく、かつ含気量の大きな布帛を得ることができる。また嵩高糸をポリウレタン弾性糸と交編することによりさらに大きな含気量と軽減した通気量を有する布帛を得ることができる。
【0018】
編地の種類には特に限定されず、例えば、丸編地であるシングル丸編地、ダブル丸編地、経編地であるトリコット編地、ラッセル編地などのいずれでもよいが、ストレッチ性を得るためには経編地が好ましい。
編地は、公知の方法で精錬、プレセット、染色加工などが施されて水着用布帛とされるが、布帛表面の水との接触角をより大きくするために、染色加工した後の編地表面に撥水加工を施すことが好ましい。また編地の水と接触する面に伸縮性良好なポリウレタン樹脂を薄くコーティングすることが好ましい。これにより布帛の含気量を維持しつつ通気量を0cm3/cm2.sec とすることができる。
さらに布帛の内層部に、より多くの空気層を保持させて含気量を増大させるために、編地の肌面側をパイル形状としたり、染色加工時に肌面側を起毛させることが好ましい。
【0019】
このような本発明の水着用布帛によれば、布帛内部への水の侵入を防ぐとともに、通気量を少なくして布帛の含気量を増大させることにより、布帛内部の空気保持能力を向上させることができるため、これを用いた水着の着用により、水中および水に上がったときの身体の冷えが少なくなり、身体の運動疲労を抑制することができる。またポリウレタン弾性繊維を交編して適切な伸長率と厚さを保持させているため、水着に適した優れたストレッチ性、フィット性、柔軟性、審美性を得ることができる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて詳しく説明する。なお、例中の各特性は次の方法によって測定した。
(1) 伸長率:JIS L−1018のA法(定速伸長法)に準じて測定する。
(2) 厚 み:JISL−1018に準じて測定する。
(3) 通気量:JISL−1096 A法空気量に準じて測定する。
(4) 含気量:JISL−1018に準ずる方法で、布帛の目付(A)g/cm2、厚み(B)cm 、比重(C)cm3/gを測定した後、目付を厚みで除し、さらに布帛を構成する繊維の比重を除して布帛中の繊維の占有体積率(A/B/C) を算出し、比占有体積率(1-A/B/C) を求める。この比占有体積率に布帛単位面積 (1m2=10000cm2)当たりの体積(B:10000)cm3/ m2を乗じて含気量を算出する。なお、比重の異なる素材を複数使用した布帛では、それぞれ個々の素材の比重に使用混率を乗じ、得られた数値を加算することで平均比重を算出して用いる。具体的な含気量の算出式は下記のようである。
含気量(cm3/m2)=(1−A/B/C)×(B×10000 )
【0021】
(5) 接触角:協和界面科学社製、接触角計CA−Pタイプを用い、布帛表面に1.5mm径の蒸留水の液滴を静かに滴下したとき、布帛表面にできる液滴の角度を、JISL−1092に準ずる測定する。
(6) 動き易さ評価:手足および頭以外の胴体部を被覆できるように試作した水着を、被験者に着用させて5分間安静を保った後、水温30℃の温水プール中に入水し、水中で歩行運動を15分間行った直後、水中での動き易さを下記の5段階基準で評価する。
◎:特に動き易い ○:動き易い △:動き易くもにくくもない
×:動きにくい ××:特に動きにくい
【0022】
(7) 身体の冷え感評価:動き易さ評価と同様に手足および頭以外の胴体部を被覆できるように試作した水着を、被験者に着用させて5分間安静を保った後、水温30℃の温水プール中に入水し、水中で歩行運動を15分間行った直後、水中での身体の冷え感を下記の5段階基準で評価する。その後、被験者に水中から気温25℃環境下のプールサイドに上がってもらい、5分間ゆっくり歩行運動した後、水から出たときの身体の冷え感を同様に下記の5段階基準で評価する。
◎:冷え感を感じない ○:冷え感をほとんど感じない
△:冷え感をやや感じる ×:冷え感を感じる
××:冷え感をかなり感じる
【0023】
(8) 身体疲労性評価:上記と同様に試作した水着を被験者に着用させて5分間安静を保った後、水温30℃の温水プール中に入水し、水中で歩行運動を15分間行い、その後、被験者を水中から気温25℃環境下のプールサイドで5分間ゆっくり歩行運動した後、疲労感を3段階基準で評価する。
○:疲労感を感じない △:疲労感を感じる
×:かなり疲労感を感じる
【0024】
実施例1
W型断面を有するポリエステル繊維およびポリウレタン弾性繊維(ロイカ SP、旭化成工業社製商品名、高耐塩素タイプ)を使用し、28ゲージ3枚筬のシングルトリコット編み機にて、フロント筬に56デシテックス30フィラメントのW型断面ポリエステル原糸、ミドル筬に44デシテックスのロイカ原糸、バック筬に56デシテックス30フィラメントのW型断面ポリエステル仮撚加工糸を給糸して編成した。得られた編地は、表面にW型断面ポリエステル原糸、中層にロイカ原糸、裏面にW型断面ポリエステル仮撚加工糸を配した三層構造編地であった。その後、該編地を通常のポリエステル編地の染色加工条件に準じて精練、プレセット、染色を行い、さらに下記の撥水仕上げ処方で調製した加工液中に浸漬し、加工液のピックアップ率が73%となるマングルでしぼり、170℃のヒートセッタで1分間、撥水仕上げセットを行って本発明の水着用布帛を得た。
【0025】
<撥水仕上げ処方>
LS−317 15.0%soln
(明成化学工業社製、フッ素系撥水剤)
スミテックス レジン M-3 0.5%soln
(住友化学工業社製、架橋剤)
スミテックス アクセレレーター ACX 0.1%soln
(住友化学工業社製、架橋剤用触媒)
この布帛は、経方向の伸長率が72%、緯方向の伸長率が62%、厚みが1.3mm、目付が351g/m2 、通気量が26cm3/cm2.sec 、含気量が1046cm3/cm2 、布帛表面の水との接触角が126゜であった。
【0026】
実施例2
酸化チタンを8.0重量%含有する芯部と、酸化チタンを0.05重量%含有する鞘部からなり、芯鞘重量比率1/1である同心円状の芯鞘型ポリエステル繊維、W型断面ポリエステル繊維およびポリウレタン弾性繊維(ロイカ SP)を使用し、28ゲージ3枚筬のシングルトリコット編み機にて、フロント筬に56デシテックス34フィラメントの芯鞘型ポリエステル原糸、ミドル筬に44デシテックスのロイカ原糸、バック筬に56デシテックス30フィラメントのW型断面ポリエステル仮撚加工糸を給糸して実施例1と同様に編成した。得られた編地は、表面に芯鞘型ポリエステル原糸、中層にロイカ原糸、裏面にW型断面ポリエステル仮撚加工糸を配した三層構造の編地であった。その後、この編地を実施例1と同様の染色加工条件にて仕上げて本発明の水着用布帛を得た。
この布帛は、経方向の伸長率が66%、緯方向の伸長率が58%、厚みが1.5mm、目付が366g/m2 、通気量が30cm3/cm2.sec 、含気量が1231cm3/cm2 、布帛表面の水との接触角が115゜であった。
【0027】
実施例3
実施例1と同様に編立て、染色加工条件にて加工し仕上げた編地に、下記のコーティング処方で調製したポリウレタン樹脂液を、グラビアロールコータを使用して塗布量100g/m2で塗布し、ヒートセッタで60℃で3分間の乾燥後、再度170℃で1分間の乾燥を行って本発明の水着用布帛を得た。
<コーティング処方>
クリスボン NYT-18 100部
(大日本インキ化学工業社製、ポリウレタン樹脂)
バーノック DN-950 1部
(大日本インキ化学工業社製、架橋剤)
クリスボン アクセルT 0.2部
(大日本インキ化学工業社製、架橋剤用触媒)
メチルエチルケトン 30部
ジメチルホルムアミド 10部
この布帛は、経方向の伸長率が52%、緯方向の伸長率が45%、厚みが1.5mm、目付が388g/m2 、通気量が0cm3/cm2.sec 、含気量が1202cm3/cm2 、布帛表面の水との接触角が101゜であった。
【0028】
比較例1
W型断面ポリエステル繊維およびポリウレタン弾性繊維(ロイカ SP)を使用し、28ゲージ2枚筬のシングルトリコット編み機にて、フロント筬に56デシテックス30フィラメントのW型断面ポリエステル仮撚加工糸、バック筬に44デシテックスのロイカ原糸を給糸して二層構造の編地を編成した。その後、この編地を実施例1と同様の染色加工条件にて仕上げて水着用布帛を得た。
この布帛は、経方向の伸長率が68%、緯方向の伸長率が63%、厚みが0.6mm、目付が216g/m2 、通気量が120cm3/cm2.sec 、含気量が443cm3/cm2 、布帛表面の水との接触角が121゜であった。
【0029】
比較例2
比較例1と同様に編立て、染色加工条件にて加工し仕上げた編地に、実施例3のコーティング処方で調製したポリウレタン樹脂液を、実施例3と同様に塗布、乾燥、再乾燥を行って水着用布帛を得た。
この布帛は、経方向の伸長率が50%、緯方向の伸長率が47%、厚みが0.6mm、目付が239g/m2 、通気量が0cm3/cm2.sec 、含気量が409cm3/cm2 、布帛表面の水との接触角が107゜であった。
【0030】
比較例3
比較例2と同様に編立て、染色加工、コーティング条件にて加工した編地の乾燥後、吸水剤(SR−1000:高松油脂社製)を10%soln含む水溶液に含浸させ、ピックアップ率84%のマングルで水溶液をしぼり落とした後、ヒートセッタで170℃で30秒間乾燥させて水着用布帛を得た。
この布帛は、経方向の伸長率が53%、緯方向の伸長率が42%、厚みが0.6mm、目付が242g/m2 、通気量が0cm3/cm2.sec 、含気量が406cm3/cm2 、布帛表面の水との接触角が75゜であった。
【0031】
比較例4
実施例1と同様の繊維を用いて同様に編立て、染色加工条件にて加工した編地について、撥水加工を行わずにヒートセッターにて仕上げセットして仕上げて水着用布帛を得た。
この布帛は、経方向の伸長率が75%、緯方向の伸長率が66%、厚みが1.3mm、目付が348g/m2 、通気量が30cm3/cm2.sec 、含気量が1042cm3/cm2 、布帛表面の水との接触角が80゜であった。
【0032】
比較例5
実施例1と同様の繊維を用いて実施例1と同様に編み立て、染色加工時のプレセット工程において、実施例1よりも経緯両方向に引っ張って熱セットを施し、その後実施例1と同様の染色、撥水加工条件にて仕上げて水着用布帛を得た。
この布帛は、経方向の伸長率が27%、緯方向の伸長率が20%、厚みが0.9mm、目付が255g/m2 、通気量が73cm3/cm2.sec 、含気量が711cm3/cm2 、布帛表面の水との接触角が122゜であった。
【0033】
比較例6
比較例5と同様に編立て、染色・撥水加工条件にて加工し仕上げた編地に、実施例3のコーティング処方で調製したポリウレタン樹脂液を、実施例3と同様に塗布、乾燥、再乾燥を行って水着用布帛を得た。
この布帛は、経方向の伸長率が26%、緯方向の伸長率が18%、厚みが0.9mm、目付が290g/m2 、通気量が0cm3/cm2.sec 、含気量が628cm3/cm2 、布帛表面の水との接触角が104゜であった。
【0034】
<試験例>
実施例1〜3および比較例1〜6で得られた水着用布帛を用いて布帛裏面が肌側となるように水着を試作し、屋内プールで被験者男女各5名により着用評価を行った。その結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1から、本発明の水着用布帛を用いた水着では、通気量制限による動き易さの変化に問題はなく、また水中およびプールから上がった後の冷え感が少なくなり、身体の疲労抑制の効果が大きいことがわかる。
これに対し、比較例1は布帛の厚みが薄いため、動き易さは問題ないが、布帛の通気量が大きく、含気量が少ないため、水中および水から出たときの冷え感を防ぐことができず、疲労感が増大した。また比較例2ではポリウレタン樹脂を塗布して通気量を0cm3/cm2.sec としているため、冷え感および疲労感はやや改善されているが、まだ不十分なものであった。比較例3、4では、布帛の水との接触角が小さいため、水の布帛内部の侵入を防ぐことができず、冷え感および疲労感が増大した。比較例5では、通気量が大きいため、布帛内部への水の侵入を防ぐことができず、冷え感および疲労感が増大し、また布帛の伸長率が小さいため動き易さに劣るものであった。さらに比較例6では水中等での冷え感は減少するが、布帛の伸長率が小さいため、動き易さおよび疲労感が増大した。
【0037】
【発明の効果】
本発明の水着用布帛は、ストレッチ性、フィット性等に優れるとともに、布帛の通気量を少なくしつつ含気量が大きくし、かつ布帛内部への水の侵入を少なくしているため、布帛内部の空気保持能力を向上させることができる。従って、これを用いた水着は、動き易さ、着脱し易さなどの実用性に優れた特性を有するとともに、水中での水の浸入や熱の伝導に伴う冷え感、さらに水中から上がった後の水の気化熱に伴う冷え感を軽減することができ、身体の疲労を抑制することができる。上記布帛を用いた水着は、スクール用水着、フィットネス用水着、遊泳用水着、リハビリ用水着などの水中で運動する衣料として幅広い分野で好適に使用することができる。
Claims (3)
- ポリウレタン弾性繊維以外の合成繊維とポリウレタン弾性繊維を交編し、ポリエステルマルチフィラメント糸を表面層に、異型断面糸を含むポリエステル繊維の嵩高糸を裏面層に配した編地を有する布帛であって、編地表面に撥水加工が施されており、該布帛の4.9N荷重時の経方向と緯方向の伸長率がそれぞれ25〜100%、厚みが0.7〜3mm、通気量が50cm3/cm2・sec以下、含気量が500〜2000cm3/m2であり、かつ該布帛表面の水との接触角が90〜180°であることを特徴とする水着用布帛。
- ポリエステルマルチフィラメント糸を表面層に、ポリウレタン弾性繊維を中層に、溝状筋を有する異形断面糸を含むポリエステル繊維の嵩高糸を裏面層に配した三層構造を有する編地であることを特徴とする請求項1に記載の水着用布帛。
- 請求項1または2に記載の布帛を用いた水着。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000022035A JP4378013B2 (ja) | 2000-01-31 | 2000-01-31 | 水着用布帛および水着 |
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