JP5958016B2 - 繊維構造物 - Google Patents
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Description
(1) 高速液体クロマトグラフ−質量分析計(LC−MS)で測定した時のPFOAおよびPFOSの濃度が、いずれも5ng/g未満であるフッ素系撥水剤および環状シリコーン含有重合物による樹脂皮膜が繊維表面に付与されたポリウレタン系弾性繊維を含む繊維構造物であって、該樹脂皮膜がメラミン樹脂および/またはイソシアネート化合物の少なくとも1種を含むことを特徴とする合成繊維含有繊維構造物。
(2) 該フッ素系撥水剤が炭素数6以下のフロロアルキル基を有するアクリレート共重合体を含有することを特徴とする(1)に記載の合成繊維含有繊維構造物。
(3) 該フッ素系撥水剤と環状シリコーン含有重合物の混合比率が1:0.05〜0.2であることを特徴とする(1)または(2)に記載の合成繊維含有繊維構造物。
(4) 該環状シリコーン含有重合物のガラス転移点が5℃以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の合成繊維含有繊維構造物。
(5) 該環状シリコーン含有乳化重合物がオクタメチルシクロテトラシロキサンと側鎖両末端基ジメチルアミノポリシロキサンからなる乳化重合物であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の合成繊維含有繊維構造物。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の合成繊維含有繊維構造物を用いてなる水着。
かかる撥水剤は新たな製造法を用いて前記の環境負荷物の発生を無くしたものや、従来の製造法の過程で、様々な手法を用いて環境負荷物を回収したもの等を使用することができる。中でも炭素数6以下のフルオロアルキル基を有する化合物含有のフッ素系撥水剤が好ましく用いられる。具体的には「ユニダインTG−5601」(ダイキン工業(株)製)、「TG−5541」(ダイキン工業(株)製)、「TG−5543」(ダイキン工業(株)製)、「NKガードS−07」(日華化学(株)製)、「NKガードS−09」(日華化学(株)製)、「NKガードS−55」(日華化学(株)製)、「NKガードS−80」(日華化学(株)製)、「アサヒガードAG−E061」(旭硝子(株)製)、「アサヒガードE−081」(旭硝子(株)製)、「アサヒガードE−082」(旭硝子(株)製)、「アサヒガードE−092」(旭硝子(株)製)、「アサヒガードE−500D」(旭硝子(株)製)、「マックスガードFX−850」((株)京絹化成 製)、「マックスガードFX860」((株)京絹化成 製)、「マックスガードFX−880」((株)京絹化成 製)、「パラガードAF660」(大原パラヂウム化学(株)製)、「PF−10」(松本油脂製薬(株)製)、「PF−20」((株)京絹化成 製)、「PF−30」((株)京絹化成 製)、「NUVA2114」(クラリアントジャパン(株)製)、「スコッチガードPM3622」(スリーエム(株)製)、「スコッチガードPM490」(スリーエム(株)製)、「スコッチガードPM930」(スリーエム(株)製)などが好ましく使用でき、各々混合されることも問題はない。
フッ素系撥水剤に対する環状シリコーン含有重合物の混合比率(固形分重量)が0.05より少ないと皮膜耐久性の効果を十分に向上させる効果が低く、また0.2より多いと、フッ素系撥水剤の示す撥水性能を逆に低下させる傾向がある。
本発明の環状シリコーン含有重合物とは、環状シリコーンと重合体および重合触媒、界面活性剤および水を組み合わせて一緒に混合し、加熱することで乳化重合物としたものである。触媒には、シロキサン結合を開裂できる縮合重合触媒が含まれ、これは強酸、例えば置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族スルホン酸、塩酸及び硫酸;ならびに強塩基、例えば四級化アンモニウムヒドロキシド及び金属ヒドロキシドなどが挙げられる。
乳化重合物中、環状シリコーンは、10〜30%(重量比)の割合で含有されていることが好ましい。
環状シリコーンとともに用いられる重合体としては、側鎖の一部にアミノ基、エポキシ基、カルボキシル基等を有するジメチルポリシロキサン等が挙げられ、なかでも、側鎖の一部にアミノ基を有するジメチルポリシロキサンが好ましく用いられる。またガラス転移点として5℃以下であることが好ましい。フッ素系撥水剤と同様にガラス転移点が低いことで樹脂として柔軟性が向上し、また粘着性が向上するためフッ素系撥水剤とかかる環状シリコーン含有重合物とが繊維上に付与された場合に、皮膜に亀裂などが入りにくく、フッ素系撥水剤の耐久性を向上させることができる。
ガラス転移点が5℃より高い重合体では、これら効果が十分に発揮されず、フッ素系撥水剤の耐久性を向上させる効果が低い上に、逆にフッ素系撥水剤と環状シリコーン含有重合物との接着性が低下することで耐久性を低下させてしまう場合がある。
市販されているものとしては、「FZ−4658」(東レ・ダウコーニング(株)製)、「FZ−4640」(東レ・ダウコーニング(株)製)、「BY−22−856SR」(東レ・ダウコーニング(株)製)、「SM−8709SR」(東レ・ダウコーニング(株)製)、「MA−11B」((株)京絹化成 製)などが挙げられる。
かかる環状シリコーンは、重合体とで開環重合することで粘度が向上し粘着性を示す樹脂になる。
本発明の「フッ素系撥水剤と環状シリコーン含有重合物による皮膜」とは、例えば、以下の方法により、皮膜化したものをいう。
PFOAおよびPFOSの濃度が5ng/g未満であるフッ素系撥水剤および環状シリコーン含有重合物と、メラミン樹脂および/またはイソシアネート化合物とを混合したエマルジョン溶液に繊維構造物を浸漬した後、拡布の状態で一定の圧力で絞り、80〜140℃で乾燥し、その後160〜200℃の温度で熱処理するパッド・ドライ・キュア法や、蒸熱処理するパッド・スチーム法、または、かかるエマルジョン溶液の中に繊維構造物を浸漬した状態で30〜130℃まで温度を上げる浴中法などが好ましい。
本発明においては繊維構造物の内部まで十分にエマルジョン溶液を浸透させることが重要であることからスプレー法などの表面のみにエマルジョン溶液を付与する方法は好ましくない。
場合によっては、より内部に浸透させるために浸透剤を併用することが好ましく、浸透剤としては撥水性能に影響が少ないイソプロピルアルコールやメチルセロソルブなどが挙げられる。
メラミン樹脂は多量に使用すると架橋効果は向上するものの、風合いは硬化する傾向にある。十分な架橋効果を得る一方、柔軟な風合いを維持する観点から、繊維構造物全重量に対し、固形分で0.01〜1wt%、さらには0.02〜0.5wt%付与するのが好ましい。
メラミンの硬化触媒としては、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、リン酸亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛などの無機酸塩やギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、アクリル酸アンモニウム、こはく酸アンモニウム、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、こはく酸アルミニウム、ギ酸亜鉛、酢酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、こはく酸亜鉛などが好ましい。
また本発明のイソシアネート化合物としては、分子中に2個以上のブロックドイソシアネート官能基を含む有機化合物を用いることができる。具体的には、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルトリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート、グリセリントリレンジイソシアネートなどに対し、加熱時に解離して活性なイソシアネート基が再生するフェノール、マロン酸ジエチルエステル、メチルエチルケトオキシム、重亜硫酸ソーダ、ε−カプロラクタム等を反応させてイソシアネート基をブロックした化合物がある。
イソシアネート化合物は多量に使用すると架橋効果は向上するものの、風合いの効果、加工時の熱黄変や、染色堅牢度を低下させるなどの問題がある。十分な架橋効果を得る一方、これらの問題を防止する観点から、繊維構造物全重量に対し、固形分で0.01〜2wt%、さらには0.03〜1.5wt%付与するのが好ましい。
ブロックイソシアネートの熱分離速度の向上と熱解離温度の低下とを促進するために用いる解離触媒を用いてもよく、触媒としてはジブチルスズジオレート、ジブチルスズステアレート、ステアリル亜鉛、有機アミン化合物が好ましい。
本発明の繊維構造物において、布帛としては、織物、編物、不織布等が用いられる。中でも、撥水性や、含水率抑制効果は、布帛を伸張した際においても軽減されないという特徴を有し、伸縮率が大きな布帛において特に優れた効果を発揮する。
伸縮率の大きな繊維構造物としては、編物や、収縮率の異なる糸を混繊させたり、撚をかけたりした糸を用いた織物や、繊維自身に伸縮性を有するポリトリメチレンテレフタレートやポリウレタン弾性繊維を含んだ編物、織物などが挙げられるが、特に好ましくはポリウレタン弾性繊維を含む繊維構造物である。その他の繊維としては、ポリエステル系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維など挙げられ、これら繊維を単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。
ポリウレタン弾性繊維を含むことで伸張性は大幅に向上するが、通常高い伸張性を示す繊維構造物を伸張した際高い撥水性を維持することは難しいが、本発明の繊維構造物においては、フッ素系撥水剤、環状シリコーン含有重合物等を用いた皮膜を繊維構造物上に付与することで、伸張された着用状態においても優れた高い撥水性と低含水率を両立することができる。このため、特に水着として好適に用いられる。
実施例中の品質評価は、次の方法で実施した。
(PFOAおよびPFOSの量)
次の条件で測定し、ng/gで表示した。
装置:LC−MS/MSタンデム型質量分析計TSQ−7000(サーモエレクトロン)
高速液体クロマトグラフLC−10Avp(島津製作所)
カラム:Capcellpak C8 100mm×2mmi.d.(5μm)
移動層:A;0.5mmol/L酢酸アンモニウム
B;アセトニトリル
流速:0.2mL/min、試料注入量:3μL
イオン化電圧:4.5kv、イオンマルチ:1300v
イオン化法:ESI−Negative
(撥水性)
JIS L 1092「繊維製品の防水性試験方法」(1998年)に規定される方法でスプレー法により評価を行い級判定した。
(含水率)
1.試料として、タテ20cm×ヨコ20cmの繊維構造物を3枚用意する。
2.試料の中央に直径10.6cmの円を描く。
3.直径40cm以上の容器に、蒸留水を水深12cm注ぎ入れる。
4.測定
(1)試料の重量(W0)を測定する。
(4)水中から取り出し金属枠から試料を外し、試料の重量(W1)を測定する。
(5)保水率=[{(W1−W0)/W0}×100]を算出する。
(洗濯方法)
JIS L0217「繊維製品の取扱いに関する表示記号及びその表示方法」(1995)の付表1の103に規定されているように家庭用電気洗濯機に、浴比1:30となるように40±2℃の水を入れ、弱アルカリ性合成洗剤を添加して溶解し、強条件で25分洗濯した。次いで排水・脱水し、10分間水洗・脱水後、再び10分間水洗・脱水した。この工程を5回としてこれを6回繰り返したものを洗濯30回として、つり干し乾燥した後、評価に用いた。
(伸長率)
JIS L1096 A法 カットストリップ法に準じて測定した。
試験片の幅5cm、つかみ間隔20cmとした。
初荷重は試験片の幅で1mの長さにかかる重力に相当する荷重とした。
引張速度は20cm/minとした。
1.フッ素系撥水剤
a.ユニダインTG−5601(ダイキン工業(株)製、フッ素系撥水剤、固形分30%) b.NKガードS−55(日華化学(株)製、フッ素系撥水剤、固形分30)
いずれも、PFOA、PFOSともに、5未満、5未満である。
2.環状シリコーン含有重合物
ア.SM8709SR(東レ・ダウコーニング(株)製、固形分30%)
イ.MA−11B((株)京絹化成製、固形分30%)
いずれも環状シリコーンがオクタメチルシクロテトラシロキサンであり、重合体は側鎖にアミノ基を有するジメチルポリシロキサンである。
3.シリコーン樹脂
ウ.SH8240(東レダウコーニング(株)製 メチルハイドロジェンポリシロキサン、 固形分38%)
エ.KB−1000(明成化学工業(株)製、アミノ変性シリコーン化合物、固形分20重量%)
4.架橋剤、触媒
オ.スミテッススレジンM−3(住友化学工業(株)製、トリメチロールメラミン、固形分80%)
カ.スミテックスアクセレレータACX(有機アミン系触媒、住友化学工業(株)製、固形分35%)
キ.スーパーフレッシュJB−7100(ブロックイソシアネート、(株) )京絹化成製、固形分30%)
5.浸透剤
テキスポートBG(ブチルセロソルブ、日華化学(株)製)
(実施例1〜6、比較例1〜5)
芯糸として東レ・オペロンテックス株式会社の耐塩素ポリウレタン弾性糸“ライクラ−254B”44Tを用い、鞘糸として17デシテックス5フィラメントのナイロン66仮撚加工糸を用いて1400T/Mのシングルカバーリング糸を作製した。
このカバーリング糸をタテ・ヨコ糸に用いレピア織機で筬密度90羽/鯨寸(3.788cm)、筬入れ2本入れ、ヨコ密度105本/2.54cmにて製織を行い、生機を得た。同生機を開布の状態でリラックス精練後、中間セット、液流染色機で酸性染料にて染色を行った後、ナイロンフィックス501(センカ(株)製、フィックス剤)を使用し、フィックス処理を行い水洗した後、過剰な張力をかけず有り幅にて乾燥した布帛を試供布Aとした。
(実施例7〜10、比較例6,7)
フロント筬とバック筬の2枚筬からなる32ゲージのトリコット機を用い、フロント筬にカチオン可染ポリエステル33デシテックス48フィラメント原糸を、またバック筬にポリウレタン系弾性糸“ライクラ”55デシテックスを配して、ハーフ編組織で編成した。各糸条の混率はカチオン可染ポリエステルを70%、“ライクラ”を30%とした。同生機を開布の状態でリラックス精練後、中間セット、液流染色機で酸性染料にて染色を行った後、過剰な張力をかけず有り幅にて乾燥した布帛を試供布Bとした。
表1の撥水処理処方の欄に記載の各薬剤を、記載の含有で用いてエマルジョン液とした。得られたエマルジョン液に供試布を浸漬しマングルで絞った後、ピンテンターを使用し130℃で2分間乾燥した。次いで同ピンテンターにより有り幅にて170℃で1分間乾熱処理を行った。マングルの絞り率は37%であった。
表1から明らかなように、供試布A,Bについては比較例に比べて実施例のものは、撥水度はさることながら含水率が低く、繊維構造物として高い撥水性能を示すといえる。
Claims (6)
- 高速液体クロマトグラフ−質量分析計(LC−MS)によるPFOAおよびPFOSのそれぞれの測定濃度が、いずれも5ng/g未満であるフッ素系撥水剤と、環状シリコーン含有重合物による皮膜が表面に付与されたポリウレタン系弾性繊維を含む繊維構造物であって、該皮膜がメラミン樹脂および/またはイソシアネート化合物を含むことを特徴とする繊維構造物。
- フッ素系撥水剤が炭素数6以下のフルオロアルキル基を有するアクリレート共重合体を含有することを特徴とする請求項1に記載の繊維構造物。
- フッ素系撥水剤と該環状シリコーン含有重合物の固形分重量混合比率が1:0.05〜0.2であることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維構造物。
- 環状シリコーン含有重合物のガラス転移点が5℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の繊維構造物。
- 環状シリコーン含有乳化重合物がオクタメチルシクロテトラシロキサンと側鎖両末端に有機基を有するジメチルアミノポリシロキサンを含有する乳化重合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の繊維構造物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の繊維構造物を用いた水着。
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