JP4377916B2 - 再生鋳物砂を製造する方法及び装置 - Google Patents

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、再生鋳物砂を製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄やアルミニウム製の鋳物部品は、砂から形成された砂鋳型を用いる砂型鋳造によって製造される。鋳型に使用された鋳物砂は、回収して再生することにより砂鋳型に再使用される。
【0003】
鋳物砂には、粘結性を有する樹脂等の有機粘結剤が添加されることがある。有機粘結剤の添加により、鋳物砂から成形された鋳型の形状は好適に保持される。
【0004】
中子に使用される鋳物砂に有機粘結剤を用い、外鋳型として生型砂を使用した場合、当該中子を構成する鋳物砂だけを回収することは困難である。そのため、回収した鋳物砂には、ベントナイト等の無機成分を含んだ生型砂が混入してしまう。
【0005】
従来の鋳物砂は、焙焼炉において鋳物砂を焙焼する工程と、焙焼された鋳物砂を研磨する工程によって再生される。焙焼工程では、鋳物砂は600℃以上に加熱される。加熱により、鋳物砂の粒の表面に付着した樹脂等の有機成分が除去される。研磨工程では、焙焼工程で除去されずに鋳物砂の粒の表面に残った有機成分や無機成分が剥離されるとともに、鋳物砂の粒の形状が整えられる。
【0006】
従来の鋳物砂の再生方法の一例として、焙焼炉内で鋳物砂を焙焼するときに、鋳物砂の焙焼熱で焙焼炉内の空気流を継続的に加熱することが提案されている(特許文献1参照)。この再生方法によれば、空気流の温度低下が抑制されて、鋳物砂中の有機成分の燃焼を促進することができる。
【特許文献1】
特開昭63−180340号公報
【発明の開示】
【0007】
ところが、上記従来の鋳物砂の再生方法では、鋳物砂に混入した無機成分(ベントナイト)は焙焼で除去されず、無機成分の残留した再生鋳物砂が回収される。再生鋳物砂に残留した無機成分はその再生鋳物砂で形成された砂鋳型の強度を低下させる一因である。そのため、鋳物砂の焙焼後に、鋳物砂の粒を研磨する工程を別途行なうことが不可欠であり、再生効率が低かった。
【0008】
本発明の目的は、効率的で品質の高い再生鋳物砂を製造する方法及び装置を提供することにある。
【0009】
本発明の一態様は、鋳物砂を用意する工程と、前記鋳物砂を再生する工程とを備え、循環流動炉内を循環させながら焙焼する再生鋳物砂の製造方法を提供する。前記再生する工程は、前記鋳物砂を焙焼室を有する焙焼装置に搬入する工程と、前記鋳物砂を600℃以上で焙焼しつつ、前記焙焼室に0.8m/s以上の風速の空気流を供給して、前記鋳物砂の大部分前記焙焼室内の上部に吹き上げる工程と、吹き上げられた前記鋳物砂の一部を前記空気流とともに前記焙焼室の上部と接続された連通管を通って前記焙焼室の外部に設けた分離装置に移送する工程とを含む。
【0010】
一実施形態では、前記再生する工程は更に、吹き上げられた前記鋳物砂を前記焙焼室内で発生した燃焼ガスから分離する工程と、分離された前記鋳物砂を前記分離装置から送出管を通って前記焙焼室に移送する工程とを含み、前記吹き上げる工程、前記分離装置に移送する工程、前記分離する工程、及び前記焙焼室に移送する工程を繰り返す工程とを更に備え、前記空気流の風速は、吹き上げられた鋳物砂の粒が前記焙焼室内で互いに激しく衝突して研磨されるように決められているとともに、分離された前記鋳物砂の粒が前記連通管、前記分離装置及び前記送出管を移動するときにも互いに衝突し合うことで研磨されるように決められている。
【0013】
前記空気流の風速は1.5m/s以上であることが好ましい。
【0014】
一実施形態では、前記鋳物砂は、鋳造に使用された使用済み鋳物砂、規格外の品質を有する鋳物砂、不要な鋳物砂、または造型に失敗した砂鋳型に使用された鋳物砂である。
【0015】
本発明の更なる態様は、鋳物砂を焙焼する焙焼室を有する焙焼装置と、前記鋳物砂の焙焼中に、0.8m/s以上の風速の空気流で前記鋳物砂の大部分を前記焙焼室内の上部に吹き上げるブロアとを備え、循環流動炉内を循環させながら焙焼する再生鋳物砂の製造装置である。
【0016】
一実施形態の製造装置は、前記焙焼室の上部に吹き上げられた前記鋳物砂の一部を、前記焙焼室の上部から前記焙焼室の外部を通って前記焙焼室の下部に戻すように前記焙焼室の外部に設けた循環経路を更に備える。前記循環経路は、前記焙焼室の上部に接続された連通管と、前記連通管に接続され、吹き上げられた前記鋳物砂を前記焙焼室内で発生した燃焼ガスから分離する分離装置と、前記分離装置と前記焙焼室の下部とを接続し、前記分離装置で分離された前記鋳物砂を前記焙焼室へ戻す送出管とを含み、前記空気流の風速は、吹き上げられた鋳物砂の粒が前記焙焼室内で互いに激しく衝突して研磨されるように決められているとともに、分離された前記鋳物砂の粒が前記連通管、前記分離装置及び前記送出管を移動するときにも互いに衝突し合うことで研磨されるように決められている。
【0017】
一実施形態では、前記焙焼室は下部と、前記下部よりも広い上部とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に従う再生鋳物砂の製造装置の概略図。
【図2】本発明の第2実施形態に従う再生鋳物砂の製造装置の概略図。
【図3】図1及び2の再生鋳物砂の製造装置を使用して製造された再生鋳物砂の粒度指数と、焙焼中の空気流の風速との関係を示すグラフ。
【図4】図1及び2の再生鋳物砂の製造装置を使用して製造された再生鋳物砂の強熱減量及び曲げ強度と、焙焼中の空気流の風速との関係を示すグラフ。
【図5】再生鋳物砂の粒度指数−風速曲線の砂量による変化を示すグラフ。
【図6】再生鋳物砂の強熱減量−風速曲線の砂量による変化を示すグラフ。
【図7】再生鋳物砂の曲げ強度−風速曲線の砂量による変化を示すグラフ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に従う再生鋳物砂の製造方法を説明する。
【0020】
鋳物砂は鋳造の鋳型(砂鋳型)に使用される砂である。鋳造に使用された砂鋳型を構成する鋳物砂(使用済み鋳物砂)は、回収されて再生される。使用済み鋳物砂は、水分をほとんど含有せず、0.1〜10質量%の有機成分を含有している。鋳物砂に含まれる粘結剤は、フェノール系の有機粘結剤、水ガラスやベントナイト等の無機粘結剤、及び粘土等の一般的な粘結剤であり、特に限定されない。第1実施形態の再生鋳物砂の製造方法は、有機粘結剤を含んだ鋳物砂を再生するのに好適である。第1実施形態の再生鋳物砂の製造方法は、シェルモールド法のような熱硬化性造型法や、鋳物砂を常温で自硬化させるコールドボックス法のような自硬性造型法によって形成された砂鋳型に使用された鋳物砂を再生するのに好適である。第1実施形態の再生鋳物砂の製造方法は、コールドボックス法及びシェルモールド法以外の方法で形成された砂鋳型に使用された鋳物砂の再生に使用することができる。
【0021】
以下、シェルモールド法によって形成された砂鋳型に使用された鋳物砂を説明する。
【0022】
シェルモールド法では、砂鋳型を形成するのに、添加成分の混合された鋳物砂、いわゆるレジンコーテッドサンドが用いられる。添加成分の例は、フェノールレジン等の粘結剤、ヘキサメチレンテトラミン等の硬化促進剤、及び、ステアリン酸カルシウム等の滑剤である。レジンコーテッドサンドは、水分をほとんど含有せず、0.1〜10質量%の有機成分を含有している。
【0023】
シェルモールド法による鋳型の形成を説明する。200〜300℃の金型内にレジンコーテッドサンドを充填する。金型内でレジンコーテッドサンドを硬化させることにより鋳型が形成される。レジンコーテッドサンドは主に中子の材料として使用される。外鋳型の材料としては、ベントナイトのような粘結剤を含有する生型砂が使用される。
【0024】
本明細書では、鋳物砂の再生は、鋳造に使用された鋳物砂を砂鋳型の形成に再利用可能な状態に再活性化させることを意味するだけでなく、未使用の鋳物砂を砂鋳型の形成に利用可能な鋳物砂に調製することも意味する。未使用の鋳物砂の例は、規格外の品質を有するレジンコーテッドサンド、不要なレジンコーテッドサンド、及び造型に失敗した砂鋳型に使用されたレジンコーテッドサンドである。規格外の品質を有するレジンコーテッドサンドの例は、強度不良のレジンコーテッドサンドである。本発明の再生工程によって、砂鋳型の形成に使用された粘結剤や、使用済み鋳型砂の回収時に混入した無機成分の除去された再生鋳物砂が得られる。この再生鋳物砂は、新しい砂鋳型の形成に好適に再使用することができる。
【0025】
以下に、第1実施形態の再生鋳物砂の製造方法について説明する。
【0026】
第1実施形態の再生鋳物砂の製造方法は、鋳物砂を焙焼させつつ、炉内に空気流(吹き上げ空気)を供給して鋳物砂を炉内の上部に吹き上げる再生工程を含む。炉内に搬入される鋳物砂の量は、特に限定されないが、鋳物砂の大部分が焙焼室の上部に吹き上げられて、鋳物砂が焙焼室の底に堆積しない程度の量に調整されるのが好ましい。鋳物砂の再生工程は、バッチ式や連続式で行なうことができる。一般的には連続的に再生工程を行なうのが効率的である。
【0027】
鋳物砂は600℃以上で焙焼される。好ましい焙焼温度は700℃以上であり、さらに好ましい焙焼温度は800℃以上である。焙焼温度(鋳物砂の温度)が600℃未満の場合には、鋳物砂の粒の表面に付着した粘結剤等の不要成分の不完全燃焼が生じ、不要成分は十分に燃焼されない。この場合、低品質の黒化した再生砂が得られることがある。鋳物砂の温度を直接測定できない場合、炉内の雰囲気温度を鋳物砂の温度とみなしてもよい。
【0028】
風速は鋳物砂の大部分の粒を焙焼室の上部に浮上させて、鋳物砂が焙焼室の底に堆積しないように決められる。第1実施形態では、鋳物砂は、0.8m/s以上の風速を有する空気流により炉内で吹き上げられる。吹き上げられた鋳物砂の粒同士は互いに激しく衝突し合うことで研磨される。これにより、鋳物砂の粒の表面に付着した粘結剤等の不要成分が剥離され、また、鋳物砂の粒の形状や寸法が整えられる。空気流の風速は、好ましくは1m/s以上、さらに好ましくは1.5m/s以上である。空気流の風速が0.8m/s未満の場合には、鋳物砂の粒同士の衝突頻度が低くなり、鋳物砂の粒の表面の研磨が不十分になることがある。空気流の風速が高いほど鋳物砂の研磨効果は向上する。空気流の風速に上限はないが、鋳物砂の再生装置の構造上、15m/sを超える風速の空気流は実用的でない。
【0029】
以下、図1を参照して、本発明の第1実施形態に従う鋳物砂の再生装置すなわち再生鋳物砂の製造装置を説明する。
【0030】
再生装置は、鋳物砂を循環させながら焙焼する循環流動炉11を備える。
【0031】
循環流動炉11は、例えば円筒状の焙焼室を有する焙焼装置12と、分離装置13(例えばサイクロン構造)と、送出管14と、焙焼装置12の底に接続された送風管を含むブロア16とを備える。ブロア16は送風管を通して焙焼室に空気流を供給する。焙焼装置12の側部には焙焼室に鋳物砂を搬入するための搬入口15が設けられている。鋳物砂はバーナ(図示略)によって焙焼室で焙焼される。連通管17は焙焼室の上部と分離装置13とを連通する。分離装置13は鋳物砂の焙焼によって発生する燃焼ガスと鋳物砂とを分離する。送出管14は分離装置13の下部と焙焼室の下部とを連通する。分離装置13にて燃焼ガスから分離された鋳物砂の粒は送出管14を通って焙焼室に戻される。連通管17、分離装置13、及び送出管14は、焙焼室の外部に設けられた循環経路として機能する。
【0032】
循環流動炉11を用いて鋳物砂を再生する場合には、まず、鋳型に使用された鋳物砂を回収する。中子に使用される鋳物砂の粘結剤として有機粘結剤が用いられ、外鋳型として生型砂が使用された場合、中子だけを回収しようとしても当該中子を構成する鋳物砂に、焙焼で除去できない無機成分(ベントナイト)を含んだ生型砂が混入してしまう。
【0033】
鋳物砂を回収した後、この鋳物砂を予め焼炉(図示せず)内において100℃以上で予備焙焼する。次に、所定量の鋳物砂を搬入口15を通じて焙焼装置12内へ搬入する。鋳物砂は焙焼装置12内へ連続的にまたは間欠的に搬入してもよい。一実施形態の鋳物砂の投入量は1時間当たり10tである。焙焼装置12内に搬入された鋳物砂はバーナの熱により焙焼装置12内で焙焼されつつ、ブロア16から供給される空気流により吹き上げられる。
【0034】
鋳物砂に付着した粘結剤等の不要成分は焙焼によって燃焼され、燃焼ガスが発生する。粘結剤等の不要成分のうち除去できなかった一部の有機成分が鋳物砂の粒の表面に残存することがある。回収した鋳物砂に生型砂が混入している場合には、生型砂に含まれるベントナイトは焙焼によって除去されずに残る。
【0035】
第1実施形態では、鋳物砂の粒は、所定の風速(0.8m/s以上)の空気流によって焙焼室の上部に浮上して、互いに激しく衝突し合ったり、焙焼装置12の壁面に衝突したりして研磨される。この衝突により、鋳物砂に残留するベントナイト等の不要成分は鋳物砂の粒の表面から剥がれる。
【0036】
空気流の風速は、焙焼室内に風速センサを設置して直接に測定することができるが、次式で算出することもできる。
【0037】
空気流の風速=V1×A1/B
V1はブロア16の送風管の計測位置Aで測定された空気流の速度である。A1はブロア16の送風管の計測位置Aにおける断面積である。Bは焙焼室の底部の面積である。
【0038】
上記のように鋳物砂が吹き上げられた場合、焙焼により除去しきれなかった有機成分も鋳物砂の粒の表面から剥がされる。鋳物砂の粒同士が擦れ合う結果、鋳物砂の粒が削られて粒径が小さくなる。このようにして、形状の改善された高品質の再生鋳物砂が得られる。
【0039】
焙焼装置12にて鋳物砂を吹き上げた空気流の一部は、焙焼装置12から分離装置13及び送出管14を経て再び焙焼装置12内に供給される。
【0040】
一部の鋳物砂は、焙焼装置12内で吹き上げられた後、燃焼ガスとともに連通管17を通じて分離装置13に送られる。分離装置13は鋳物砂と燃焼ガスとを分離させる。分離された燃焼ガスは処理装置(図示略)を通じて大気に放散され、分離された鋳物砂は、送出管14を通じて焙焼装置12に送られる。
【0041】
第1実施形態では、鋳物砂の粒は、焙焼室内だけで研磨されるのではなく、連通管17、分離装置13及び送出管14を移動するときにも互いに衝突し合うことで研磨される。また、鋳物砂の粒は連通管17、分離装置13及び送出管14の内面に衝突しながら移動する。よって、循環流動炉11は鋳物砂を連続的に研磨することで、再生鋳物砂を効率的に製造することができる。
【0042】
焙焼装置12内に搬入された鋳物砂の粒は、循環流動炉11の内部を循環する空気流により、連続的に相互衝突して研磨されながら流動し、焙焼装置12内に送られる。鋳物砂は、循環流動炉11内を少なくとも1回循環することで再生される。第1実施形態によれば、粘結剤等の不要成分の焙焼とともに研磨処理が好適に施された高品質の再生鋳物砂が得られる。
【0043】
第1実施形態によれば、以下の利点が得られる。
【0044】
第1実施形態の再生工程は、焙焼装置12内に搬入された鋳物砂を焙焼させつつ、0.8m/s以上の風速を有する空気流により鋳物砂を吹き上げることを含む。空気流により吹き上げられた鋳物砂の粒は、粒同士の衝突及び焙焼装置12の内壁面との衝突により十分に研磨される。これにより、鋳物砂の粒の表面に付着した粘結剤等の不要成分を剥離することができるとともに、鋳物砂の粒の形状を改善することができる。
【0045】
第1実施形態の再生鋳物砂の製造方法によれば、鋳物砂は焙焼されながら、鋳物砂の粒の表面が研磨される。従来の再生方法のように鋳物砂を焙焼した後に鋳物砂を研磨する工程を別途行なう必要はない。すなわち、第1実施形態では、焙焼工程と、研磨工程とが同時に行なわれる。このため、作業工程は簡略化され、作業時間は短縮される。
【0046】
焙焼室の内部で空気流が循環する循環流動炉11を用いて鋳物砂は再生される。空気流によって、鋳物砂の粒は互いに研磨されながら循環流動炉11内を少なくとも1回は循環する。従って、循環流動炉11は鋳物砂を効率良く研磨することができる。
【0047】
鋳物砂は600℃以上の高温で焙焼される。このため、鋳物砂の粒の表面に付着した粘結剤等の有機成分はほぼ完全に燃焼され、鋳物砂から除去される。
【0048】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態に従う再生鋳物砂の製造方法及び装置を説明する。
【0049】
まず、図2を参照して、第2実施形態の鋳物砂の再生装置すなわち再生鋳物砂の製造装置を説明する。再生装置は焙焼炉21を含む。焙焼炉21は、例えば円筒状の焙焼室を有する焙焼装置22と、焙焼室に0.8m/s以上の風速の空気流を供給する、焙焼装置22の下部に接続された送風管を含むブロア16とを含む。再生装置は分離装置13(図1参照)を備えていない。焙焼装置22の側部には、焙焼室に鋳物砂を搬入するための搬入口15が形成されている。焙焼装置22の側部には、鋳物砂を焙焼するためのバーナ(図示略)が配置されている。第2実施形態の焙焼炉21では、鋳物砂の粒は焙焼室の上部に吹き上げられた後、分離装置13(図1参照)に送られることなく、焙焼室の底に落下する。焙焼室は比較的広い上部と、比較的狭い下部とを有する。比較的広い上部を有する焙焼室は、鋳物砂の浮上と拡散を容易にし、鋳物砂の粒の衝突効率を高める作用を有する。
【0050】
焙焼炉21を用いた鋳物砂の再生例を説明する。
【0051】
鋳物砂を1時間当たり10tの割合で搬入口15から焙焼室内へ搬入する。ブロア16から0.8m/s以上の風速の空気流を焙焼室に供給しながら、鋳物砂をバーナの熱により焙焼する。大部分の鋳物砂の粒は空気流によって焙焼室内の上部に吹き上げられる。空気流の風速は第1実施形態で説明したようにして測定あるいは算出される。
【0052】
鋳物砂の粒は焙焼室の上部で互いに激しく衝突し、また、焙焼室の内面にも衝突する。鋳物砂に残留する粘結剤等の不要成分は鋳物砂から剥離されて除かれる。鋳物砂の粒の相互衝突により、鋳物砂の粒の形状と寸法が整えられ、形状の改善された高品質の再生鋳物砂が得られる。
【0053】
実施例1
(再生鋳物砂の製造)
鋳造に使用された砂鋳型から鋳物砂を回収した。処理能力2t/hの循環流動炉11及び焙焼炉21の各々に鋳物砂1tを搬入した。循環流動炉11及び焙焼炉21の各々において、鋳物砂を空気流で浮上させながら、700℃で1時間焙焼し、再生鋳物砂を製造した。
【0054】
(再生鋳物砂の物性)
焙焼中の空気流の風速と、再生鋳物砂の物性との関係を調べた。結果を図3及び図4に示す。
【0055】
(粒度指数)
粒度指数は鋳物砂の粒の大きさの指標である。JACT試験法S−1(鋳物砂の粒度試験法)に定められたAFS系数基準に従って粒度指数を算出した。粒度指数が高いほど研磨が良くされているため再生鋳物砂の品質は高い。
【0056】
(強熱減量)
強熱減量は、熱分解及び燃焼したときに生じる鋳物砂の質量変化の程度を示す指標である。強熱減量が小さいほど再生鋳物砂に付着した異物は少ない。JACT試験法S−2(鋳物砂の強熱減量試験法)に準拠して強熱減量を測定した。具体的には、鋳物砂の遊離水分をJIS Z 2601に準拠して除去する。正確に秤量した鋳物砂10g(W1)をるつぼに入れる。このるつぼを、予め1000℃に加熱した電気炉で15分間放置する。引き続き、るつぼを45分間強熱する。電気炉から取り出したるつぼをデシケータ内で室温まで放冷する。その後、鋳物砂の質量(W2)を測定する。強熱減量を次式に従って算出した。
【0057】
強熱減量(%)=(W1-W2)/W1×100
(曲げ強度)
150℃に予熱した再生鋳物砂7kgと、ノボラック型フェノール樹脂(旭有機材工業製、商品名SP610)175gとをワールミキサー(遠州鉄工株式会社製)内に入れ、40秒間混練した。ヘキサメチレンテトラミン26.3gと水105gとを含む水溶液をワールミキサー内の混練物に追加した。ブロワーで送風しながら混練物の塊が崩れるまで混練を継続した。ステアリン酸カルシウム7gをワールミキサー内へ追加し、さらに5秒間混練し、レジンコーテッドサンドを得た。このレジンコーテッドサンドからJIS K 6910で規定される試験片を作製した。JACT試験法SM−1(曲げ強さ試験法)に準拠して、試験片の曲げ強度を測定した。試験片の曲げ強度が高いほど、鋳型の曲げ強度は高い。
[0058]
図3に示すように、図2の焙焼炉21で再生鋳物砂を製造した場合、空気流の風速が0.8m/s以上のときに、粒度指数は急激に向上した。すなわち、0.8m/s以上の風速の空気流で鋳物砂を浮上させながら焙焼することで、鋳物砂の粒は十分に研磨されて、高品質の再生鋳物砂が得られることが分かった。風速が1.5〜3m/sの範囲内では、焙焼炉21よりも循環流動炉11を用いる方が、好ましい粒度指数を有する再生鋳物砂が得られることがわかった。この理由は、循環流動炉11内での鋳物砂の粒同士の衝突力が焙焼炉21のものよりも高いため、粘結剤等の不要成分が好適に除去されたからであると推測される。
[0059]
図4から明らかなように、図2の焙焼炉21で再生鋳物砂を製造した場合、風速が0.8m/s以上のときに、強熱減量は急激に低下した。すなわち、0.8m/s以上の風速の空気流で鋳物砂を浮上させながら焙焼することで、その表面に粘結剤等の不要成分のほとんど付着していない高品質の再生鋳物砂が得られることが分かった。風速が1.5〜3m/sの範囲内では、焙焼炉21よりも循環流動炉11を用いる方が、強熱減量の小さい再生鋳物砂が得られることがわかった。この理由は、循環流動炉11内での鋳物砂の粒同士の衝突力が焙焼炉21のものよりも高いため、粘結剤等の不要成分が好適に除去されたからであると推測される。
[0060]
曲げ強度は、0.8m/s以上の風速の空気流で鋳物砂を浮上させながら焙焼することで、急激に向上した。すなわち、0.8m/s以上の風速の空気流で鋳物砂を浮上させながら焙焼された再生鋳物砂から製造されたレジンコーテッドサンドは、良好な強度を有する鋳型を製造するのに適している。風速が1.5〜3m/sの範囲内では、焙焼炉21よりも循環流動炉11を用いる方が、曲げ強度の高い鋳型を製造することのできる再生鋳物砂が得られることがわかった。この理由は、循環流動炉11内での鋳物砂の粒同士の衝突力が焙焼炉21のものよりも高いため、粒度が小さく揃った再生鋳物砂が得られるからであると推測される。
【0061】
実施例2
容積が40m3の焙焼室を有する焙焼炉21を用意した。焙焼室内に搬入する鋳物砂の量を変更(0.5t、1t、1.5t)して、鋳物砂を再生した。再生鋳物砂の物性を実施例1と同様に測定した。
【0062】
1tの鋳物砂を搬入した際に得られた再生鋳物砂の物性は、実施例1の測定値を引用した。結果を図5〜図7に示す。
【0063】
図6に示すように、焙焼室に搬入する鋳物砂の量を変更した場合であっても、0.8m/s以上の風速の空気流を供給すれば、強熱減量が急激に低下した再生鋳物砂が得られた。
【0064】
図5及び図7に示すように、焙焼室に搬入する鋳物砂の量を変更した場合であっても、0.8m/s以上の風速の空気流を供給すれば、粒度指数及び曲げ強度が急激に向上した再生鋳物砂が得られた。
【0065】
実施例3
図1の循環流動炉11及び図2の焙焼炉21を用いて、鋳物砂を900℃で焙焼した。再生鋳物砂の物性を測定した。鋳物砂の焙焼温度が再生鋳物砂の物性に与える影響について評価した。その結果を以下の表1に示す。表1の炉内砂温は、循環流動炉11及び焙焼炉21内の鋳物砂の温度である。炉内砂量は、循環流動炉11及び焙焼炉21に搬入した鋳物砂の質量である。
【0066】
【表1】
Figure 0004377916
比較例1では、0.8m/s未満の風速の空気流を供給した。鋳物砂を900℃で焙焼した場合、0.8m/sを大幅に超える風速(6m/s)を使用した試験例1,2では、良好な物性を有する再生鋳物砂が得られた。
[0067]
試験例3より高い炉内砂温の試験例1では、物性の僅かな向上がみられた。この理由は、鋳物砂を900℃で焙焼することにより、700℃では除去することができなかった粘結剤等の不要成分を除去することができたものと推測される。
[0068]
各実施形態は、次のように変更してもよい。
[0069]
ブロア16の送風管は、焙焼室の底に限らず、焙焼装置12,22の上部又は中央部に接続してもよい。この場合、鋳物砂の粒は、焙焼室内において、様々な方向から供給された空気流によって、より高頻度でより高い衝突力で互いに衝突する。よって、研磨効果が向上する。
[0070]
以上詳述した実施形態及び実施例は本発明の趣旨を説明するためのものであり、本発明の趣旨は請求の範囲に規定されており、実施形態及び実施例の記載に限定解釈されるべきではない。

Claims (5)

  1. 循環流動炉内を循環させながら焙焼する再生鋳物砂の製造方法であって、
    鋳物砂を用意する工程と、
    前記鋳物砂を再生する工程とを備え、前記再生する工程が、
    前記鋳物砂を焙焼室を有する焙焼装置に搬入する工程と、
    前記鋳物砂を600℃以上で焙焼しつつ、前記焙焼室に0.8m/s以上の風速の空気流を供給して、前記鋳物砂の大部分前記焙焼室内の上部に吹き上げる工程と、
    吹き上げられた前記鋳物砂の一部を前記空気流とともに前記焙焼室の上部と接続された連通管を通って前記焙焼室の外部に設けた分離装置に移送する工程とを含み、
    前記再生する工程は更に、
    吹き上げられた前記鋳物砂を前記焙焼室内で発生した燃焼ガスから分離する工程と、
    分離された前記鋳物砂を前記分離装置から送出管を通って前記焙焼室に移送する工程とを含み、
    前記吹き上げる工程、前記分離装置に移送する工程、前記分離する工程、及び前記焙焼室に移送する工程を繰り返す工程とを更に備え、
    前記空気流の風速は、吹き上げられた鋳物砂の粒が前記焙焼室内で互いに激しく衝突して研磨されるように決められているとともに、分離された前記鋳物砂の粒が前記連通管、前記分離装置及び前記送出管を移動するときにも互いに衝突し合うことで研磨されるように決められていることを特徴とする再生鋳物砂の製造方法。
  2. 前記空気流の風速は1.5m/s以上であることを特徴とする請求項1に記載の再生鋳物砂の製造方法。
  3. 前記鋳物砂は、鋳造に使用された使用済み鋳物砂、規格外の品質を有する鋳物砂、不要な鋳物砂、または造型に失敗した砂鋳型に使用された鋳物砂である請求項1に記載の再生鋳物砂の製造方法。
  4. 循環流動炉内を循環させながら焙焼する再生鋳物砂の製造装置であって、
    前記鋳物砂を焙焼する焙焼室を有する焙焼装置と、
    前記鋳物砂の焙焼中に、0.8m/s以上の風速の空気流で前記鋳物砂の大部分を前記焙焼室内の上部に吹き上げるブロアとを備え、
    前記焙焼室の上部に吹き上げられた前記鋳物砂の一部を、前記焙焼室の上部から前記焙焼室の外部を通って前記焙焼室の下部に戻すように前記焙焼室の外部に設けた循環経路を更に備え、
    前記循環経路は、前記焙焼室の上部に接続された連通管と、前記連通管に接続され、吹き上げられた前記鋳物砂を前記焙焼室内で発生した燃焼ガスから分離する分離装置と、前記分離装置と前記焙焼室の下部とを接続し、前記分離装置で分離された前記鋳物砂を前記焙焼室へ戻す送出管とを含み、
    前記空気流の風速は、吹き上げられた鋳物砂の粒が前記焙焼室内で互いに激しく衝突して研磨されるように決められているとともに、分離された前記鋳物砂の粒が前記連通管、前記分離装置及び前記送出管を移動するときにも互いに衝突し合うことで研磨されるように決められていることを特徴とする再生鋳物砂の製造装置。
  5. 前記焙焼室は下部と、前記下部よりも広い上部とを有することを特徴とする請求項4の再生鋳物砂の製造装置。
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