本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
図1は、本実施形態の蒸気調理器1の外観斜視図であり、図2は、加熱室20の扉11を開いた状態の蒸気調理器1の外観斜視図であり、図3は、加熱室20の扉11を取り去った状態の蒸気調理器1の正面図であり、図4は、蒸気調理器1の内部機構の基本構造を示す説明図であり、図5は、図4と直角の方向から見た蒸気調理器1の内部機構の基本構造を示す説明図であり、図6は、加熱室20の上面図であり、図7は、蒸気調理器1の制御装置80のブロック図であり、図8は、図4と同様の基本構造図にして図4と異なる状態を示す説明図であり、図9は、図5と同様の基本構造図にして図5と異なる状態を示す説明図であり、図10は、サブキャビティ40の底面パネル42の上面図であり、図11は、蒸気調理器1の排水タンク14付近の概略の構成を模式的に示す断面図であり、図12(a)(b)は、排水タンク14が蒸気調理器1に対して装着される前の状態および装着された状態を部分的に拡大して示す蒸気調理器1の断面図である。
蒸気調理器1は、直方体形状のキャビネット10を備えている。キャビネット10の正面には、扉11が設けられている。扉11は、加熱室20の開口部を開閉するためのものであり、下端を中心に垂直面内で回動するように、キャビネット10に軸支されている。したがって、上部のハンドル12を握って手前に引くことにより、図1に示す垂直な閉鎖状態から図2に示す水平な開放状態へと、扉11の姿勢を90°変換させることができる。扉11は、耐熱ガラスをはめ込んだ透視部を備える中央部分11Cの左右に、金属製装飾板で仕上げられた左側部分11Lおよび右側部分11Rを対称的に配置した構成である。右側部分11Rには、操作パネル13が設けられている。操作パネル13は、機器の動作条件を設定するための操作部である。
扉11を開くと、図2に示すように、キャビネット10の正面が露出する。扉11の中央部分11Cに対応する箇所には、上述した加熱室20が設けられている。扉11の左側部分11Lに対応する箇所には、水タンク室70が設けられている。扉11の右側部分11Rに対応する箇所には、特に開口部は設けられていないが、その箇所の内部に制御基板が配置されている。
加熱室20は、被加熱物Fを加熱するための部屋であり、直方体形状で形成されている。そして、加熱室20の扉11に面する正面側は、全面的な開口部となっている。加熱室20の残りの面は、ステンレス鋼板で形成されている。加熱室20の周囲には、それぞれ断熱対策が施されている。加熱室20の床面には、ステンレス鋼板製の受皿21が置かれており、受皿21の上には、被加熱物Fを載置するステンレス鋼線製のラック22が置かれている。
加熱室20の中の蒸気(通常の場合、加熱室20内の気体は空気であるが、蒸気調理を始めると空気が蒸気で置き換えられて行く。本明細書では加熱室20内の気体が蒸気に置き換わっているものとして説明を進める)は、図4に示す外部循環路30を通って循環する。
外部循環路30の始端となるのは、加熱室20の奥の側壁の上部の片隅に形成された吸込口28である。本実施形態では、図3に見られるように、側壁の左上隅に吸込口28が配置されている。吸込口28は、複数の水平なスリットを上下に並べたものであり、上方のスリットほど長く、下に行くほど短くして、全体として直角三角形の開口形状を形づくっている。直角三角形の直角の角は、加熱室20の奥の側壁の角に合わされている。すなわち、吸込口28の開口度は、加熱室20の奥の側壁の上辺に近いほど大きく、左辺に近いほど大きい。
吸込口28に続くのは、外部循環路30内を流れる気流を形成する送風装置25である。送風装置25は、加熱室20の一側壁の外面に近接して配置されている。一側壁としては、加熱室20の奥の側壁が選定されている。送風装置25は、遠心ファン26およびこれを収容するファンケーシング27と、遠心ファン26を回転させるモータ29を備えている。遠心ファン26としては、シロッコファンを用いることができる。モータ29としては、高速回転が可能な直流モータを使用することができる。ファンケーシング27は、加熱室20の奥の側壁の外面の、吸込口28の右下の位置に固定されており、空気の流入口および空気の吐出口を有している。
外部循環路30の中で送風装置25に続くのは、蒸気発生装置50である。蒸気発生装置50の詳細は後で説明する。蒸気発生装置50は、送風装置25と同様に加熱室20の奥の側壁の外面に近接して配置されている。ただし、送風装置25が加熱室20の左寄りの位置に配置されているのに対し、蒸気発生装置50は加熱室20のセンターライン上にある。
このように、吸込口28、送風装置25、蒸気発生装置50という外部循環路30の主要構成要素が加熱室20の一側壁である奥の側壁を中心にまとまっているため、外部循環路30の長さが短くなる。これにより、外部循環路30の圧力損失が低くなり、外部循環路30の送風効率が向上する。また、外部循環路30の放熱面積も縮小するので、熱損失も低減する。これらを併せ、外部循環路30に蒸気を循環させる上でのエネルギー効率が向上する。さらに、外部循環路30を配置するのに大空間を必要としないので、キャビネット10の小型化が可能となる。
外部循環路30の中で、ファンケーシング27の吐出口から蒸気発生装置50までの区間は、ダクト31により構成されている。蒸気発生装置50を出た後の区間は、ダクト35により構成されている。ダクト35は、加熱室20に隣接して設けられたサブキャビティ40に接続されている。外部循環路30を流れる気流は、サブキャビティ40を通じて加熱室20に還流することになる。
サブキャビティ40は、加熱室20の天井部の上で、平面的に見て天井部の中央部にあたる箇所に設けられている。サブキャビティ40は平面形状円形であり、その内側には蒸気の加熱手段である蒸気加熱ヒータ41が配置されている。蒸気加熱ヒータ41はメインヒータとサブヒータとからなり、いずれもシーズヒータで構成されている。
メインヒータの発熱量とサブヒータの発熱量とを比較した場合、前者の方が後者より大きい。消費電力は、メインヒータが例えば1000Wであり、サブヒータが例えば300Wとなっている。なお、この数値は一つの好適例に過ぎず、発明の内容がこれによって限定される訳ではない。メインヒータおよびサブヒータには、一方ずつ通電することもできるし、同時に両方とも通電することもできる。
加熱室20の天井部には、サブキャビティ40と同大の開口部が形成されており、ここにサブキャビティ40の底面を構成する底面パネル42がはめ込まれる。底面パネル42には、複数の上部噴気孔43が形成されている。上部噴気孔43の各々は、真下を指向する小孔であり、ほぼパネル全面にわたり分散配置されている。上部噴気孔43は、平面的すなわち二次元的に分散配置されているが、底面パネル42に凹凸を設けて三次元的な要素を加味して形成されてもよい。
底面パネル42は、上下両面とも塗装などの表面処理により暗色に仕上げられている。なお、使用を重ねることにより暗色に変色する金属素材で底面パネル42を成形してもよい。あるいは、暗色のセラミック成型品で底面パネル42を構成してもよい。
また、別体の底面パネル42でサブキャビティ40の底面を構成するのでなく、加熱室20の天板をそのままサブキャビティ40の底面に兼用することもできる。この場合には、天板のうち、サブキャビティ40に相当する箇所に上部噴気孔43を設け、またその上下両面を暗色に仕上げることになる。
このようにサブキャビティ40を介して加熱室20に蒸気を供給する構成とすることにより、サブキャビティ40で蒸気の配分を調整し、被加熱物Fに対しこれを調理するのに好適な態様で蒸気を吹きつけることができる。このため、外部循環路30から単に蒸気を加熱室20に吹き込むのに比べ、蒸気の持つ熱エネルギーを効果的に調理に利用することができる。
加熱室20の左右両側壁の外側には、図5に示すように小型のサブキャビティ44が設けられている。サブキャビティ44は、サブキャビティ40とダクト45で接続されており、サブキャビティ40から蒸気の供給を受ける(図5、6参照)。ダクト45は、断面円形のパイプにより構成されている。なお、ダクト45としては、ステンレス鋼製のパイプを用いるのが望ましい。
加熱室20の側壁下部には、サブキャビティ44に相当する箇所に複数の側部噴気孔46が設けられている。各側部噴気孔46は、加熱室20に入れられた被加熱物Fの方向、正確に言えば被加熱物Fの下方を指向する小孔であり、ラック22に載置された被加熱物Fの方向に蒸気を噴出させる。噴出した蒸気が被加熱物Fの下に入り込むよう、側部噴気孔46の高さおよび向きが設定されている。また、左右から噴出した蒸気が被加熱物Fの下で出会うように、側部噴気孔46の位置および/または方向が設定されている。
側部噴気孔46としては、別体のパネルに形成してもよく、加熱室20の側壁に直接小孔を穿つ形で形成してもよい。これは上部噴気孔43の場合と同様である。しかしながら、サブキャビティ40の場合と異なり、サブキャビティ44に相当する箇所を暗色に仕上げる必要はない。
なお、左右合わせた側部噴気孔46の面積和は、上部噴気孔43の面積和よりも大とされている。このように大面積とした側部噴気孔46に大量の蒸気を供給するため、1個のサブキャビティ44につき複数(図では4本)のダクト45が設けられている。
次に、蒸気発生装置50の構造について説明する。蒸気発生装置50は、後述する給水手段(例えば給水パイプ55、給水ポンプ57、水タンク71、給水パイプ72)から供給される水を沸騰させることにより蒸気を生成し、その蒸気を加熱室20に供給する蒸気生成手段である。
この蒸気発生装置50は、中心線を垂直にして配置された筒型のポット51を備えている。ポット51は、垂直面を構成する側壁の平面輪郭形状が偏平で、細長い水平面形状、すなわち長方形、長円形、あるいはこれらに類する水平断面形状となっている。ポット51には耐熱性が求められるが、その条件を満たす限り、ポット51は、どのような材料で形成されてもよい。つまり、ポット51は、例えば金属、合成樹脂、セラミックで形成されてもよく、異種材料を組み合わせることにより形成されてもよい。
蒸気発生装置50は、図6に見られる通り、ポット51の一方の偏平側面が加熱室20の奥の側壁と平行をなす形で取り付けられている。この形であれば、加熱室20の外面とキャビネット10の内面との空間の幅が狭くても蒸気発生装置50を配置することができる。したがって、前記空間の幅を縮めてキャビネット10をコンパクトにし、キャビネット10内の空間利用効率を向上させることができる。
ポット51内の水を熱するのは、ポット51の底部に配置された蒸気発生ヒータ52である。蒸気発生ヒータ52は、シーズヒータによって構成され、ポット51内の水に浸って水を直接加熱する。ポット51の平面形状が偏平であることに合わせ、蒸気発生ヒータ52もポット51の内面に沿う形で平面形状馬蹄形に曲げられている。サブキャビティ40の中の蒸気加熱ヒータ41と同様、蒸気発生ヒータ52もメインヒータとサブヒータとからなり、前者を外側、後者を内側に配置している。断面の直径も異なり、メインヒータは太く、サブヒータは細く形成されている。
面積の等しい面の中にシーズヒータを配置することを考えた場合、円形の面の中に円形に曲げたシーズヒータを入れるケースよりも、長方形や長円形の面の中に馬蹄形のような偏平な形に曲げたシーズヒータを入れるケースの方がシーズヒータの長さが長くなる。すなわち、断面円形のポットに円形に曲げたシーズヒータを入れるよりも、細長い水平断面形状のポットの中に馬蹄形のように曲げたシーズヒータを入れた方が、同一水量に対するシーズヒータの長さの比率が大きくなり、シーズヒータの表面積が大きくなるとともに、大きな電力も投入できるので、熱を水に伝えやすくなる。このため、本実施形態の蒸気発生装置50では、水を速やかに加熱することができる。
蒸気加熱ヒータ41と同じく、蒸気発生ヒータ52のメインヒータの発熱量とサブヒータの発熱量とを比較した場合、前者の方が後者より大きい。消費電力は、メインヒータが例えば700Wであり、サブヒータが例えば300Wとなっている。なお、この数値も一つの好適例に過ぎず、発明の内容がこれによって限定される訳ではない。メインヒータおよびサブヒータには、一方ずつ通電することもできるし、同時に両方とも通電することもできる。
ポット51の上部には、外部循環路30を流れる循環気流に蒸気を取り込ませるための蒸気吸引部が形成されている。蒸気吸引部を構成するのは、ポット51の一方の偏平側面から他方の偏平側面に抜けるように形成された蒸気吸引エジェクタ34である。このように蒸気吸引部を設けることにより、循環気流を維持する一方で、循環気流の中に新しい蒸気を取り込むことができる。また、蒸気吸引エジェクタ34を用いることにより、蒸気を効率良く吸引して循環気流に取り込むことができる。なお、蒸気吸引エジェクタ34は計3個、互いに所定間隔を置いて、同一高さレベルで互いに並列且つ平行に配置されている。
個々の蒸気吸引エジェクタ34は、インナーノズルおよびその吐出端を囲むアウターノズルにより構成されている。蒸気吸引エジェクタ34は、ポット51の軸線と交差する方向に延びている。本実施形態の場合、交差角は直角、すなわち、蒸気吸引エジェクタ34は水平である。インナーノズルにはダクト31が接続され、アウターノズルにはダクト35が接続されている。蒸気吸引エジェクタ34は、サブキャビティ40とほぼ同じ高さであり、ダクト35はほぼ水平に延びる。このように蒸気吸引部およびサブキャビティ40を水平なダクト35で直線的に結ぶことにより、蒸気吸引部を過ぎた後の外部循環路30を最短経路とすることができる。
外部循環路30は、蒸気発生装置50以降、3個の蒸気吸引エジェクタ34とこれに続くダクト35を含む3本の分路に分かれる。このため、通路の圧力損失が少なくなり、循環蒸気量を大きくできるとともに、外部循環路30を流れる気体に蒸気を速やかに混合することができる。
このようにポット51の上部に設けられた3個の蒸気吸引エジェクタ34は、垂直方向に偏平な蒸気吸引部を構成し、広い領域をカバーするから、蒸気吸引領域が広がり、発生した蒸気がまんべんなく均一に吸引されるとともに、吸引された蒸気が速やかに送り出され、蒸気発生装置50の蒸気発生能力がさらに向上する。また、3個の蒸気吸引エジェクタが34が同一高さレベルで互いに並列に配置されているから、高さ方向に空間のゆとりがない場合でも大量の蒸気の輸送が可能となる。
図4に戻って説明を続ける。ポット51の底部は、漏斗状に成形され、そこから排水パイプ53が垂下している。排水パイプ53の途中には、排水バルブ54が設けられている。排水パイプ53の下端は、加熱室20の下に向かって所定角度の勾配をなす形で折れ曲がっている。ここで、排水パイプ53および排水バルブ54は、上述した蒸気生成手段(蒸気発生装置50の特にポット51)の内部の水を排水する排水手段として機能している。
加熱室20の下には、キャビネット10に対してその正面側(加熱室20の開口部側)から出し入れすることができるように、排水タンク14が配置されている。排水タンク14は、上記の排水手段によって排水される水を溜める容器であり、排水パイプ53の端を受けている。図11に示すように、排水タンク14が蒸気調理器1に完全に装着されたときには、この排水タンク14の奥側端面(扉11側とは反対側端面)が、キャビネット10下方に設けられた当接部15に当接し、排水パイプ53から排水される水が排水タンク14に溜められる。この排水タンク14を引き出せば、その内部に溜まった水を捨てることができる。
また、扉11の下方には、水滴受け部16が設けられている。この水滴受け部16は、加熱室20に供給された蒸気が結露して扉11に付着した水滴を受けるものである。このような水滴受け部16を設けることにより、扉11に付着した水滴の床への落下を防止することができる。
図4に示すポット51には、給水路を介して給水される。給水路を構成するのは、水タンク71と排水パイプ53とを結ぶ給水パイプ55である。給水パイプ55は、排水バルブ54よりも上の箇所で排水パイプ53に接続されている。排水パイプ53との接続箇所から引き出された給水パイプ55は、一旦逆U字形に持ち上げられた後降下する。降下する部分の途中に給水ポンプ57が設置されている。給水パイプ55は、横向きの漏斗状受入口58に連通している。水平な連通パイプ90は、給水パイプ55と受入口58とを接続している。
ポット51の内部には、ポット水位センサ56が配設されている。ポット水位センサ56は、蒸気発生ヒータ52よりも少し高い位置にある。
水タンク室70には、横幅の狭い直方体形状の水タンク71が挿入される。この水タンク71の底部から延び出す給水パイプ72が、受入口58に接続される。上述した給水パイプ55、給水ポンプ57、水タンク71および給水パイプ72は、蒸気生成手段(蒸気発生装置50)に水を供給する給水手段として機能している。
水タンク71を水タンク室70から引き出し、給水パイプ72が受入口58から離れたとき、そのままでは水タンク70内の水および給水パイプ55側の水が流出してしまう。これを防ぐため、受入口58および給水パイプ72にカップリングプラグ59a、59bを装着する。図4のように給水パイプ72を受入口58に接続した状態では、カップリングプラグ59a、59bは互いに連結し、通水可能な状態になる。給水パイプ72を受入口58から引き離せば、カップリングプラグ59a、59bはそれぞれ閉鎖状態になり、給水パイプ55および水タンク71からの水の流出が止まる。
連通パイプ90には、受入口58の方から順に給水パイプ55、圧力検知パイプ91、および圧力開放パイプ92が接続されている。圧力検知パイプ91の上端には、水位センサ81が設けられている。水位センサ81は、水タンク71の中の水位を測定する。圧力開放パイプ92の上端は水平に曲がり、加熱室20から蒸気を逃がす排気路に接続されている。
排気路を構成するのはダクト93である。ダクト93は、加熱室20の側壁から延び出し、次第に高さを高めた後、最終的には機外、すなわちキャビネット10の外に連通する。加熱室20におけるダクト93の入口は、受皿21の上に開口している。このため、ダクト93の中を排気と逆の方向に流下する液体があれば、それを受皿21にて受けることができる。
ダクト93の少なくとも一部は放熱部94となっている。放熱部94は、外面に複数の放熱フィン95を有する金属パイプにより構成されている。
ダクト93の上端近くは、ダクト31の横を通過している。この箇所において、ダクト31とダクト93との間には、連通路が設けられている。連通路を構成するのはダクト96であり、その内部には電動式のダンパ97が設けられている。ダンパ97は、通常状態ではダクト96を閉鎖している。
給水パイプ55の最も高くなった部分は、溢水路を介してダクト93に連通している。溢水路を構成するのは、一端を給水パイプ55に接続し、他端を圧力開放パイプ92の上端水平部に接続した溢水パイプ98である。圧力開放パイプ92がダクト93に接続される箇所の高さが溢水レベルということになる。溢水レベルは、ポット51内の通常の水位レベルよりも高く、蒸気吸引エジェクタ34よりも低い高さに設定されている。
ダクト93は、溢水パイプ98の接続箇所およびダクト96の接続箇所の近傍から機外への開放部にかけて、断面積大に形成されている。この部分は合成樹脂製とすることができる。
蒸気調理器1の動作制御を行うのは図7に示す制御装置80である。制御装置80は、マイクロプロセッサおよびメモリを含み、所定のプログラムに従って蒸気調理器1を制御する。制御状況は、操作パネル13の中の表示部に表示される。制御装置80には、操作パネル13に配置した各種操作キーを通じて動作指令の入力を行う。操作パネル13には、各種の音を出す音発生装置も配置されている。
制御装置80には、操作パネル13の他、送風装置25、蒸気加熱ヒータ41、ダンパ97、蒸気発生ヒータ52、排水バルブ54、ポット水位センサ56、給水ポンプ57および水位センサ81が接続されている。この他、加熱室20内の温度を測定する温度センサ82、および、加熱室20内の湿度を測定する湿度センサ83が、制御装置80に接続されている。
本実施形態では、制御装置80は、上記した排水手段の動作を制御する制御手段としても機能しており、この排水手段の制御に本発明の最も大きな特徴があるが、この点については、後述することとする。
蒸気調理器1の動作は次の通りである。まず、扉11を開け、水タンク71を水タンク室70から引き出し、図示しない給水口よりタンク内に水を入れる。満水状態にした水タンク71を水タンク室70に押し込み、所定位置にセットする。給水パイプ72の先端が給水路の受入口58にしっかりと接続されたことを確認したうえで、加熱室20に被加熱物Fを入れ、扉11を閉じる。それから操作パネル13の中の電源キーを押して電源をONにするとともに、同じく操作パネル13内に設けられた操作キー群を押して調理メニューの選択や各種設定を行う。
給水パイプ72が受入口58に接続されると、水タンク71と圧力検知パイプ91とが連通状態になり、水位センサ81は水タンク71の中の水位を検知する。選択された調理メニューを遂行するのに十分な水位(水量)があれば、制御装置80は蒸気発生を開始する。一方、水タンク71内の水位(水量)が選択された調理メニューを遂行するのに不十分であれば、制御装置80はその旨を警告報知として操作パネル13に表示する。この場合、水位(水量)不足が解消されるまで、蒸気発生を開始しない。
蒸気発生が開始可能な状態になると、給水ポンプ57が運転を開始し、蒸気発生装置50への給水が始まる。この時、排水バルブ54は閉じている。
水はポット51の底の方から溜まって行く。水位が所定レベルに達したことをポット水位センサ56が検知したら、そこで給水は中止される。それから蒸気発生ヒータ52への通電が開始される。蒸気発生ヒータ52は、ポット51の水を直接加熱する。
蒸気発生ヒータ52への通電と同時に、あるいはポット51の中の水が所定温度に達したことを見計らって、送風装置25および蒸気加熱ヒータ41への通電も開始される。送風装置25は、吸込口28から加熱室20の中の蒸気を吸い込み、蒸気発生装置50へと蒸気を送り出す。蒸気を送り出すのに用いるのが遠心ファン26なので、プロペラファンに比べて高圧を発生させることができる。その上、遠心ファン26を直流モータで高速回転させるので、気流の流速はきわめて速い。
このように気流の流速が速いので、流量に比べ流路断面積が小さくて済む。したがって、外部循環路30の主体をなすパイプを断面円形でしかも小径のものとすることができ、断面矩形のダクトで外部循環路30を形成する場合に比べ、外部循環路30の表面積を小さくできる。このため、内部を熱い蒸気が通るにもかかわらず、外部循環路30からの熱放散が少なくなり、蒸気調理器1のエネルギー効率が向上する。外部循環路30を断熱材で巻く場合も、その断熱材の量が少なくて済む。
このとき、ダンパ97はダクト31からダクト93に通じるダクト96を閉ざしている。送風装置25から圧送された蒸気は、ダクト31から蒸気吸引エジェクタ34に入り、さらにダクト35を経てサブキャビティ40に入る。
ポット51の中の水が沸騰すると、100℃かつ1気圧の飽和蒸気が発生する。飽和蒸気は、蒸気吸引エジェクタ34から外部循環路30に入る。エジェクタ構造を用いているので、飽和蒸気は速やかに吸い込まれ、循環気流に合流する。エジェクタ構造のため蒸気発生装置50に圧力がかからず、飽和蒸気の放出が妨げられない。
蒸気吸引エジェクタ34を出た蒸気は、ダクト35を通ってサブキャビティ40に流入する。サブキャビティ40に入った蒸気は、蒸気加熱ヒータ41により300℃にまで熱せられ、過熱蒸気となる。過熱蒸気の一部は、上部噴気孔43から下方向に噴出する。過熱蒸気の他の一部は、ダクト45を通じてサブキャビティ44に回り、側部噴気孔46から横方向に噴出する。
図8および図9には、加熱室20に被加熱物Fを入れない状態の蒸気の流れが示されている。上部噴気孔43からは、加熱室20の底面に届く勢いで蒸気が下方向に噴出する。加熱室20の底面に衝突した蒸気は、外側に向きを変える。そして、この蒸気は、下向きに吹き下ろす気流の外に出た後、上昇を開始する。蒸気、特に過熱蒸気は軽いので、このような方向転換が自然に生じる。これにより、加熱室20の内部には、図中に矢印で示すように、中央部では吹き下ろし、その外側では上昇という形の対流が生じる。
明確な形の対流を形成するため、上部噴気孔43の配置にも工夫をこらす。すなわち上部噴気孔43の配置は、図10に見られるように、底面パネル42の中央部においては密、周縁部においては疎になっている。これにより、底面パネル42の周縁部では、蒸気の吹き下ろしの力が弱まり、蒸気の上昇を妨げないので、対流が一層はっきりした形で現れることになる。
側部噴気孔46からは、蒸気が横向きに噴出する。この蒸気は、加熱室20の中央部で出会った後、上部噴気孔43からの蒸気が巻き起こしている対流に混じる。対流する蒸気は、順次吸込口28に吸い込まれ、外部循環路30からサブキャビティ40というルートを一巡した後、加熱室20に戻る。このように、加熱室20内の蒸気は、外部循環路30に出ては加熱室20に戻るという循環を繰り返す。
加熱室20に被加熱物Fが入れられていると、約300℃に加熱されて上部噴気孔43から噴出する過熱蒸気が被加熱物Fに衝突して被加熱物Fに熱を伝える。この過程で、蒸気温度は250℃程度にまで低下する。被加熱物Fの表面に接触した過熱蒸気は、被加熱物Fの表面に結露する際に潜熱を放出する。これによっても被加熱物Fは加熱される。
図4および図5に見られるように、被加熱物Fに熱を与えた後、蒸気は外側に向きを変えて下向きに吹き下ろす気流の外に出る。前述の通り蒸気は軽いので、吹き下ろしの気流の外に出た後、今度は上昇を開始し、加熱室20の内部に矢印で示すような対流を形成する。この対流により、加熱室20内の温度を維持しつつ、被加熱物Fにはサブキャビティ40で熱せられたばかりの過熱蒸気を衝突させ続けることができ、熱を大量かつ速やかに被加熱物Fに与えることができる。
側部噴気孔46から横向きに噴出した蒸気は、左右からラック22の下に進入し、被加熱物Fの下で出会う。側部噴気孔46からの蒸気噴出方向は、被加熱物Fの表面に対し接線方向であるが、このように左右からの蒸気が出会うことにより、蒸気は真っ直ぐ向こう側に抜けることなく、被加熱物Fの下に滞留して溢れる。このため、被加熱物Fの表面の法線方向に蒸気が吹き付けたのと同じような効果が生じ、蒸気の持つ熱が確実に被加熱物Fの下面部に伝えられる。
上記のように被加熱物Fは、側部噴気孔46からの蒸気により、上部噴気孔43からの蒸気が当たらない部位まで、上面部と同様に調理される。これにより、むらのない、見た目の良い調理結果を得ることができる。また、被加熱物Fは表面全体から均等に熱を受け取るので、中心部まで、短い時間で十分に加熱される。
側部噴気孔46からの蒸気も、最初約300℃であったものが被加熱物Fに当たった後は250℃程度にまで温度低下し、その過程で被加熱物Fに熱を伝える。また、被加熱物Fの表面に結露する際に潜熱を放出し、被加熱物Fを加熱する。
側部噴気孔46からの蒸気は、被加熱物Fの下面部に熱を与えた後、上部噴気孔43からの蒸気が巻き起こしている対流に加わる。対流する蒸気は、順次吸込口28に吸い込まれる。そして外部循環路30からサブキャビティ40というルートを一巡した後、加熱室に戻る。このようにして加熱室20内の蒸気は、外部循環路30に出ては加熱室20に戻るという循環を繰り返す。
時間が経過するにつれ、加熱室20内の蒸気量が増して行く。量的に余剰となった蒸気は、ダクト93を通じて機外に放出される。蒸気がそのままキャビネット10の外に出てしまうと、周囲の壁面に結露してカビが発生する。しかしながら、ダクト93の途中に放熱部94があるので、ここを通過する間に蒸気は熱を奪われ、ダクト93の内面で結露する。したがって、キャビネット10の外まで出てしまう蒸気は量的に少なく、深刻な問題にはならない。ダクト93の内面で結露した水は、排気の方向と逆方向に流下し、受皿21に受けられる。この水は、他の原因で受皿21に溜まった水と一緒にして調理終了後に捨てることができる。
側部噴気孔46は、サブキャビティ40から離れており、蒸気の噴出という面では上部噴気孔43よりも不利である。しかしながら、左右の側部噴気孔46の面積和を上部噴気孔43の面積和よりも大きくしてあるので、十分な量の蒸気が側部噴気孔46に誘導され、被加熱物Fの上下面の加熱むらが少なくなる。
加熱室20の蒸気を循環させつつ被加熱物Fを加熱するので、蒸気調理器1のエネルギー効率は高い。そして、上方からの過熱蒸気は、サブキャビティ40の底面パネル42にほぼパネル全面にわたり分散配置された複数の上部噴気孔43から下向きに噴出するので、被加熱物Fのほぼ全体が上からの蒸気に包み込まれることになる。過熱蒸気が被加熱物Fに衝突することと、衝突の面積が広いこととが相まって、過熱蒸気に含まれる熱が素早く効率的に被加熱物Fに伝達される。また、サブキャビティ40に入り込んだ蒸気が蒸気加熱ヒータ41で熱せられて膨脹することにより、噴出の勢いが増し、被加熱物Fへの衝突速度が速まる。これにより被加熱物Fは一層速やかに熱せられる。
遠心ファン26はプロペラファンに比べ高圧を発生させることが可能なので、上部噴気孔43からの噴出力を高めることができる。その結果、過熱蒸気を加熱室20底面に届く勢いで噴出させることが可能となり、被加熱物Fを強力に加熱できる。遠心ファン26を直流モータで高速回転させ、強力に送風しているので、上記の効果は一層顕著に表れる。
また、送風装置25の送風力が強いことは、扉11を開く際、排気口32から速やかに排気するのにも大いに役立つ。
サブキャビティ40の底面パネル42は、上面が暗色なので、蒸気加熱ヒータ41の放つ輻射熱を良く吸収する。底面パネル42に吸収された輻射熱は、同じく暗色となっている底面パネル42の下面から加熱室20に輻射放熱される。このため、サブキャビティ40およびその外面の温度上昇が抑制され、安全性が向上するとともに、蒸気加熱ヒータ41の輻射熱が底面パネル42を通じて加熱室20に伝えられ、加熱室20が一層効率良く熱せられる。底面パネル42の平面形状は円形であってもよく、加熱室20の平面形状と相似の矩形であってもよい。また前述のとおり加熱室20の天井壁をサブキャビティ40の底面パネルに兼用してもよい。
被加熱物Fが肉類の場合、温度が上昇すると油が滴り落ちることがある。被加熱物Fが容器に入れた液体類であると、沸騰して一部がこぼれることがある。滴り落ちたりこぼれたりしたものは受皿21に受け止められ、調理終了後の処理を待つ。
蒸気発生装置50で蒸気を発生し続けていると、ポット51の中の水位が低下する。水位が所定レベルまで下がったことをポット水位センサ56が検知すると、制御装置80は給水ポンプ57の運転を再開させる。給水ポンプ57は、水タンク71の中の水を吸い込み、蒸発した分の水をポット51に補給する。ポット51の中の水位が所定レベルを回復したことをポット水位センサ56が検知した時点で、制御装置80は給水ポンプ57の運転を再び停止させる。
ポット水位センサ56や給水ポンプ57の故障、あるいは他の原因で給水ポンプの57の運転が止まらないようなことがあると、ポット51の中の水位が所定レベルを超えて上昇し続ける。水位が溢水レベルにまで達すると、給水ポンプ57から送られる水は溢水パイプ98から溢れ、ダクト93に流れ込む。このため、ポット51内の水が蒸気吸引エジェクタ34から外部循環路30に入り込むようなことはない。ダクト93に入った水は受皿21に受けられる。
受皿21は面積が広く、容量が大きいので、かなりの量の水を受け入れることができる。しかしながら、容量には限度があるので、給水ポンプ57の運転が異常に長時間続いた場合には警報を出す、あるいは強制的に給水ポンプ57の運転を止めるといった安全策を講じておくとよい。
調理終了後、制御装置80が操作パネル13にその旨の表示を出し、また合図音を鳴らす。調理終了を音および表示により知った使用者は、扉11を開け、加熱室20から被加熱物Fを取り出す。
扉11を開けかかると、制御装置80はダンパ97の開閉状態を切り替え、ダクト96を開放する。すると、外部循環路30の中を流れている気流がダクト96からダクト93へと抜け、蒸気発生装置50の方に回る分はほとんどなくなる。このため、サブキャビティ40への蒸気流入量が減少し、上部噴気孔43および側部噴気孔46からの蒸気噴出は、あったとしても極く弱いものになる。したがって、使用者は顔面や手などに蒸気を浴びて火傷を負うことなく、安全に被加熱物Fを取り出すことができる。ダンパ97は、扉11が開いている間中、ダクト96を開放している。
ダクト96およびダクト93は、蒸気の循環が行われていなかったので、外部循環路30ほどには温度が高くない。したがって、外部循環路30から流入した蒸気は、ダクト96、93の内壁に接触すると結露する。結露により生じた水は、ダクト93の中を流下して受皿21に入る。この水は、他の原因で受皿21に溜まった水と一緒にして調理終了後に捨てることができる。
停止中の送風装置25を起動して排気を行うのであれば、定常の送風状態に達するまでにタイムラグが生じるが、本実施形態の場合、送風装置25は既に運転中であり、タイムラグはゼロである。また、加熱室20と外部循環路30とを巡っていた循環気流がそのままダクト93からの排気流になるので、気流の方向を変えるためのタイムラグもない。これにより、加熱室20の中の蒸気を遅滞なく排出し、扉11の開放が可能になるまでの時間を短縮することができる。
使用者が扉11を開けかかったという状況は、例えば次のようにして制御装置80に伝えることができる。すなわち、扉11を閉鎖状態に保つラッチをキャビネット10と扉11の間に設け、このラッチを解錠するラッチレバーをハンドル12から露出するように設ける。ラッチまたはラッチレバーの動きに応答して開閉するスイッチを扉11またはハンドル12の内側に配置し、使用者がハンドル12とラッチレバーとを握りしめて解錠操作を行ったとき、スイッチから制御装置80に信号が送られるようにする。
次の調理まで長い休止時間がある場合とか、寒冷地で翌朝まで調理の予定がないといった場合には、調理終了後、操作パネル13を通じて排水バルブ54の開弁操作を行い、ポット51の中の水を抜いておく。このようにすれば、ポット51の中の水に雑菌や藻類が繁殖したり、ポット51の中の水が凍結したりする事態を避けることができる。
次に、本発明の特徴である制御装置80の排水制御について説明する。まず、その排水制御に関係する構成について説明する。
図7に示すように、制御装置80には、計時部101と、給水量検知部102と、水温検知部103と、情報検知部104と、報知部105とが接続されている。
計時部101は、第1計時部101aと、第2計時部101bと、第3計時部101cとで構成されている。
第1計時部101aは、蒸気生成手段(ポット51)の内部に存在する水の滞留時間を計時する第1計時手段である。より詳しくは、第1計時部101aは、蒸気生成手段での蒸発前にその内部に供給された水(以下、蒸発前の水と記載する)の滞留時間を第1滞留時間として計時するとともに、蒸気生成手段での蒸発後にその内部に残留している水(以下、蒸発後の水と記載する)の滞留時間を第2滞留時間として計時する。
ここで、第1滞留時間の計時を開始するタイミングとしては、例えば、水タンク71内の水が給水ポンプ57によってポット51に供給された時点を考えることができる。また、第2滞留時間の計時を開始するタイミングは、ポット51での蒸気生成の終了時点(蒸気調理の終了時点)を考えることができる。しかし、ポット51内部に存在する水が蒸発前の水であっても、蒸発後の水であっても、その水が腐敗するのは、日単位あるいは時間単位と継続的な時間となるため、第1滞留時間および第2滞留時間の計時を開始するタイミングは、上記の時点に厳密に定めなくてもよい。
第2計時部101bは、給水手段(水タンク71、給水ポンプ57)による蒸気生成手段(ポット51)への給水開始からの通算時間を計時する第2計時手段である。ここで、給水開始からの通算時間とは、一度給水を開始させてから、途中で給水を何度か停止させる、停止させないに関係なく、個々の給水期間(時間)と、個々の給水停止期間(時間)との総和を指すものである。
第3計時部101cは、給水手段によってポット51に一旦給水を開始してから以降における、ポット51への給水時間のみをトータルした総給水時間を計時する第3計時手段である。つまり、総給水時間には、途中で給水を何度か停止した場合における個々の給水停止期間(時間)は含まれない。総給水時間は、この点で、第2計時部101bにて計時される時間とは異なるものである。
給水量検知部102は、給水手段によるポット51への総給水量を検知する給水量検知手段である。水温検知部103は、ポット51の内部の水の温度を測定する水温検知手段である。
情報検知部104は、排水タンク14(図4参照)またはその内部の水の情報を検知する情報検知手段である。より詳細には、情報検知部104は、装着状態検知部104aと、水位検知部104bとを有している。装着状態検知部104aは、排水タンク14の蒸気調理器1に対する装着状態を検知する。水位検知部104bは、排水タンク14内の水の有無およびその水位を検知する。報知部105は、排水タンク14が蒸気調理器1に対して非装着状態であったり、排水タンク14内の水が所定水位よりも多いことが情報検知部104にて検知されたときに、警告報知を行う報知手段である。警告報知としては、例えば警告音を発したり、操作パネル13に警告表示を行うことが考えられる。
ここで、上記の水位検知部104bは、例えば自己加熱サーミスタで構成されている。自己加熱サーミスタが例えば120℃に自己加熱されているとすれば、これが100℃(排水時は50〜60℃)の水に触れたときには、100℃よりも温度が下がる。したがって、水位検知部104bは、自己加熱サーミスタが100℃以上であれば、排水タンク14内に水がなく、自己加熱サーミスタが100℃未満であれば、排水タンク14に水があると判断することができる。水位検知部104bは、排水タンク14内の水があるときのみ、その水位を検知することになる。
本実施形態では、排水タンク14の蒸気調理器1への出し入れに応じて水位検知部104bの位置を変化させる可動部110(図12(a)(b)参照)を蒸気調理器1が備えているが、この点については後述することとする。
また、本実施形態では、前述した操作パネル13は、使用者が排水指示を入力するための入力手段としても機能している。
このような構成により、制御装置80は、排水手段(排水パイプ53、排水バルブ54)によるポット51内部の水の排水を、以下のように制御することができる。
第1に、制御装置80は、計時部101(第1計時部101a)にて計時された滞留時間が所定時間に達したときに、排水手段によってポット51の内部の水を排水させる。ここで、上記の所定時間としては、例えばポット51の内部の水が腐敗すると考えられる時間よりも短い時間を考えることができる。より詳細には、ポット51内部の水が、蒸発前の水であれば、その水には塩素が含まれているため腐敗しにくい。そこで、上記の所定時間としては、例えば3日前後を考えることができる。一方、ポット51内部の水が、蒸発後の水であれば、その水は蒸発によって塩素が飛んでいるので腐敗しやすい。そこで、上記の所定時間としては、例えば1日を考えることができる。
第2に、制御装置80は、給水手段によるポット51への給水開始後、計時部101(第2計時部101b)による計時時間(給水開始からの通算時間)が所定時間に達したときに、排水手段によってポット51の内部の水を排水させる。ここで、ポット51の内部に、一度沸騰させた水を入れっぱなしにしておくと、その水は塩素が飛んで抜けているので、早ければ2、3日、長くても1、2週間くらいで腐り、異臭やカビの発生要因となる。そこで、本実施形態では、上記の所定時間としては、1日を想定している。
第3に、制御装置80は、給水手段によるポット51への総給水量、すなわち、給水量検知部102にて検知された総給水量が所定量に達したときに、排水手段によってポット51の内部の水を排水させる。
第4に、制御装置80は、給水手段によるポット51への総給水時間、すなわち、計時部101(第3計時部101c)にて計時された総給水時間が所定時間に達したときに、排水手段によってポット51の内部の水を排水させる。
第5に、制御装置80は、操作パネル13によって排水指示が入力されたときに、排水手段によってポット51の内部の水を排水させる。
このような第1から第5の制御により、排水手段によって、ポット51の内部の水が排水されるので、その水に含まれる不純物(例えばCaやMg)がスケールとしてポット51の内部に堆積し、付着するのを抑制することができ、ポット51内部を衛生的に保つことができる。また、スケールのポット51内部での付着により、ポット51からの排水が詰まるのも抑制することができる。
しかも、ポット51内部の水が排水されるのは、上述した制御により、(1)ポット51内部の水の滞留時間が所定時間に達したとき、(2)給水手段によるポット51への給水開始からの通算時間が所定時間に達したとき、(3)給水手段によるポット51への総給水量が所定量に達したとき、(4)給水手段によるポット51への総給水時間が所定時間に達したとき、(5)操作パネル13によって排水指示が入力されたとき、のいずれかである。
つまり、これら(1)〜(5)のいずれかの所定条件を満たさなければ、たとえその間に機器の運転が停止されても、ポット51からは排水されない。したがって、機器の運転停止ごとにポット51内部からの排水が頻繁に行われる事態を回避して、水の消費量の増大を回避することができる。また、これにより、使用者の水タンク71への水の補給回数も低減することができ、使用者への負担も軽減することができる。
特に、(5)の条件が満たされたときにポット51内部から排水される場合は、操作パネル13の操作により、使用者の希望するタイミングでの排水が可能となるので、機器の利便性を向上させることができる。
また、制御装置80の上記いずれかの制御により、ポット51内部の水は、その腐敗が起こると想定される時期までにはポット51から排水される。これにより、ポット51内部にて、腐敗した水が残留するのを回避することができ、ポット51内部を衛生的に保つことができる。
ところで、(1)の条件で排水制御を行う場合、制御装置80は以下の制御を行ってもよい。
すなわち、制御装置80は、第1計時部101aが蒸発前の水の滞留時間を第1滞留時間として計時したときに、第1滞留時間が蒸発前の水に応じた第1所定時間に達したときに、排水手段によってポット51内部の水を排水させる。ここで、上記の第1所定時間とは、塩素を含む蒸発前の水が腐敗すると考えられる時間よりも短い時間であり、例えば上述したように3日前後を考えることができる。
また、制御装置80は、第1計時部101aが蒸発後の水の滞留時間を第2滞留時間として計時したときに、第2滞留時間が蒸発後の水に応じた第2所定時間に達したときに、排水手段によってポット51内部の水を排水させる。ここで、上記の第2所定時間とは、塩素の抜けた蒸発後の水が腐敗すると考えられる時間よりも短い時間であり、例えば上述したように1日を考えることができる。
制御装置80がこのような排水制御を行うことで、ポット51内部に存在する蒸発前の水または蒸発後の水は、ポット51内にて腐敗する前に排水される。したがって、ポット51内に残留する水(蒸発前の水または蒸発後の水)がポット51内部で腐敗したまま残留するのを回避することができる。
また、制御装置80は、蒸気調理器1の運転状態に応じた排水制御を行ってもよい。より具体的には、制御装置80は、蒸気調理器1の運転状態に応じて、第1計時部101aにて計時された第1滞留時間と第2滞留時間とのうちの一方を選択するとともに、第1所定時間と第2所定時間とのうちの一方を選択し、選択した滞留時間が選択した所定時間に達したときに、排水手段によってポット51の内部の水を排水させる制御を行ってもよい。
例えば、蒸気調理器1が、水タンク71からの水のポット51への供給後、ポット51を稼動する前の状態であれば、ポット51内部には、塩素を含んだ水が存在することになる。一方、蒸気調理器1が、ポット51による加熱室20への蒸気供給後に運転を停止した状態であれば、ポット51の内部には、塩素の飛んだ水が残留している。塩素を含んだ水と含んでない水とでは、水の腐敗期間は上述したように異なる。
そこで、制御装置80が蒸気調理器1の運転状態に応じて上述した排水制御を行うことにより、ポット51内部に存在する水が、蒸発前の塩素を含む水であるか、蒸発後の塩素を含まない水であるかを蒸気調理器1の運転状態に応じて容易に把握して、ポット51内部の水を排水させることができる。したがって、ポット51内部に存在する水が、蒸発前の塩素を含む水であっても、蒸発後の塩素を含まない水であっても、それがポット51内部で腐敗して残留するのを確実に回避することができる。
ところで、ポット51内部の水が所定温度(例えば55℃)以上の高温状態であるときは、その水に含まれる不純物の結晶化が逆に促進されるので、その状態で排水するとポット51内部にスケールが堆積、付着しやすい。
そこで、制御装置80は、水温検知部103にて検知されたポット51内部の水の温度が所定温度以上のときは、排水手段によるポット51内部の水の排水を停止させ、上記所定温度を下回ったときに排水させるようにしてもよい。これにより、スケールが堆積、付着しやすい高温状態でポット51内部の水が排水されることがないので、その排水によってポット51内部にスケールが堆積、付着するのを確実に抑制することができる。
また、ポット51からの排水時に、排水タンク14が蒸気調理器1に装着されていないと、排水される水がそのまま蒸気調理器1の外部にこぼれる事態が生ずる。このような事態を回避するため、制御装置80は、情報検知部104の装着状態検知部104aによって排水タンク14が蒸気調理器1に装着されていることが検知されたときに、排水手段によってポット51内部の水を排水タンク14に排水させる制御を行ってもよい。このような制御により、ポット51からの排水は、排水タンク14が蒸気調理器1に装着されている場合にしか実行されないので、ポット51内部から排水される水を排水タンク14に確実に溜めて、外部への漏れを確実になくすことができる。
また、排水タンク14が蒸気調理器1に装着されていても、そのとき(排水を開始するときに)排水タンク14に溜められている水の水位が所定水位よりも多いと、新たに排水される水が排水タンク14内に加わることによって、排水タンク14内の水の量が許容量を越え、外部に溢れ出す事態も想定される。
そこで、制御装置80は、情報検知部104(水位検知部104b)によって排水タンク14内の水が所定水位以下であることが検知されたときに、排水手段によってポット51内部の水を排水タンク14に排水させる制御を行うことが望ましい。この場合、排水タンク14に溜められている水の水位が所定水位よりも多ければ、排水タンク14に排水されないので、新たに排水される水が排水タンク14から溢れ出すのを確実に回避することができる。
このように、制御装置80は、情報検知部104によって検知された情報に応じて、排水手段によるポット51内部の水の排水を制御するので、排水される水を排水タンク14にて確実に溜めることができ、排水される水が排水タンク14からこぼれる事態を確実に回避することができる。
また、排水タンク14が蒸気調理器1に非装着状態であること、または、排水タンク14内の水が所定水位よりも多いことが情報検知部104にて検知されたときには、制御装置80の制御により、報知部105が警告報知を行う。この警告報知により、排水タンク14を蒸気調理器1に装着させる、あるいは排水タンク14内に既に溜まっている水を捨てさせるなどの措置を使用者に促すことができる。したがって、ポット51内の水を即座に排水可能状態にさせて、ポット51内の水を排水させることができる。
次に、上述した可動部110について説明する。図12(a)(b)に示すように、可動部110は、連結部111と、付勢手段112とで構成されている。
連結部111は、水位検知部104bと付勢手段112とを連結するものである。この連結部111は、水位検知部104bとの連結側とは反対側の端部が排水タンク14と接触することができるように、屈曲して形成されている。付勢手段112は、連結部111が軸113を中心に回動することによってこれと接触する排水タンク14を蒸気調理器1から離脱させるような方向(回動方向)に、連結部111を付勢している。
なお、以下での説明の便宜上、上記の回動方向をA方向とし、それとは逆方向をB方向と称することとする。また、軸113は、連結部111よりも上方で、かつ、当接部15側に位置しているものとする。
これにより、図12(a)に示す排水タンク14の非装着状態では、連結部111には、付勢手段112による付勢力しか働いていないので、連結部111および水位検知部104bが軸113を中心にA方向に回動する。この結果、連結部111と連結された水位検知部104bは、排水タンク14の本来の装着位置よりも上方に位置するようになる。したがって、この状態から、排水タンク14を蒸気調理器1に装着する場合でも、排水タンク14が水位検知部104bには接触しない。
排水タンク14を蒸気調理器1への装着方向にスライドし続けると、やがて排水タンク14は、連結部111に接触し、付勢手段112の付勢力に抗してこれを奥へ押し込む。この結果、連結部111および水位検知部104bは、軸113を中心にB方向に回動し、図12(b)に示すように、排水タンク14が当接部15に当接する位置でその回動が止まる。このとき、水位検知部104bは、上記B方向の回動により、その先端が排水タンク14内に位置するようになり、排水タンク14内の水の水位を検知することが可能となる。
このように、蒸気調理器1が可動部110を備えていることにより、排水タンク14の蒸気調理器1への出し入れに応じて、水位検知部104bの位置が変化する。これにより、排水タンク14を出し入れ時に、水位検知部104bが排水タンク14に当たって破損するような事態を回避することができ、排水タンク14内の水位検知に支障が生じるのを回避することができる。
なお、排水タンク14の蒸気調理器1への出し入れに応じて、水位検知部104bの位置が変化する構成であれば、可動部110は、連結部111を回動させる構成には限定されない。例えば、連結部111のスライド機構と、水位検知部104bのスライド機構とを組み合わせ、排水タンク14との接触時に連結部111がスライドすることによって、水位検知部104bがこれとは異なる方向にスライドし、これによって、排水タンク14の蒸気調理器1への出し入れに応じて、水位検知部104bの位置が変化する構成であっても構わない。その他、可動部110としては、種々の構成を実現することが可能である。
なお、本実施形態では、加熱室20内の蒸気を外部循環路30からサブキャビティ40を経て再び加熱室20に戻すという構成を採用した。つまり、吸込口28と蒸気生成手段とを連結し、加熱室20の内部と外部との間で蒸気を循環させる循環系(外部循環路30)を設ける構成とした。この構成では、蒸気の有効利用を図ることができるとともに、被加熱物Fの加熱に適した高温の蒸気を即座に得て、被加熱物Fを加熱することができる。しかし、これと異なる構成とすることも可能である。例えば、サブキャビティ40に常に新しい蒸気を供給し、加熱室20から溢れ出す蒸気を蒸気放出パイプ47から放出し続ける構成としてもよい。
なお、本実施形態では、扉11が加熱室20の正面の開口部に対して上開きとなる蒸気調理器1について説明したが、本発明は、この構成に限定されるわけではない。例えば、矩形状の扉11が左側鉛直方向の軸を回動軸として右開きとなる構成の蒸気調理器1であっても、本発明の構成を適用することは可能である。
この他、発明の主旨を逸脱しない範囲でさらに種々の変更を加えて実施することが可能である。