以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は第1実施形態の蒸気調理器を示す斜視図である。蒸気調理器1は直方体形状のキャビネット10を備えている。キャビネット10の正面には扉11が設けられる。扉11は下端を中心に垂直面内で回動可能に枢支され、上部には扉11を開閉するためのハンドル12が設けられている。扉11は、耐熱ガラスをはめ込んだ透視部を備える中央部分11Cの左右に、金属製装飾板で仕上げられた左側部分11L及び右側部分11Rが対称的に配置されている。右側部分11Rには操作パネル13が設けられている。
図2、図3は扉11を開いた状態の蒸気調理器1の斜視図及び正面図を示している。扉11はハンドル12を握って手前に引くことにより、垂直な閉鎖状態から水平な開放状態へと90゜姿勢変換させることができる。扉11を開くとキャビネット10の正面が露出する。扉11の中央部分11Cに対応する箇所には加熱室20が設けられている。扉11の左側部分11Lに対応する箇所には水タンク室70が設けられ、蒸気発生用の水を貯溜する水タンク71を収納する。扉11の右側部分11Rに対応する箇所には特に開口部は設けられていないが、その箇所の内部に制御基板が配置されている。
加熱室20は直方体形状で、扉11に面する正面側は全面的に開口部となっている。加熱室20の他の面はステンレス鋼板で形成される。加熱室20の周囲には断熱対策が施されている。加熱室20の床面にはステンレス鋼板製の受皿21が置かれ、受皿21の上には被加熱物F(図4参照)を載置するステンレス鋼線製のラック22が置かれる。
加熱室20の奥側の背壁には左上隅に吸込口28が設けられている。吸込口28は複数の水平なスリットを上下に並べて構成され、上方のスリットほど長く、下に行くほど短くして、全体として直角三角形の開口形状になっている。該直角三角形の直角の角は加熱室20の背壁の角に合わせられている。即ち、吸込口28の開口度は加熱室20の背壁の上辺に近いほど大きくなるとともに左辺に近いほど大きくなっている。
図4は蒸気調理器1の内部機構の基本構造図を示している。加熱室20の中の蒸気(通常の場合、加熱室20内の気体は空気であるが、蒸気調理を始めると空気が蒸気で置き換えられて行く。本明細書では加熱室20内の気体が蒸気に置き換わっているものとして説明を進める)は外部循環路30を通って循環する。
外部循環路30の始端となるのは、加熱室20の背壁に形成された吸込口28である。吸込口28には外部循環路30内を流れる気流を形成する送風装置25が連結される。送風装置25は加熱室20の背壁の外面に近接して配置される。側壁の外面に設けてもよい。
図7に示すように、送風装置25は遠心ファン26と、遠心ファン26を回転させるモータ29と、遠心ファン26を収容するファンケーシング27とを備えている。遠心ファン26として、シロッコファンが用いられる。モータ29には高速回転が可能な直流モータが使用される。ファンケーシング27は加熱室20の背壁の外面に近接して固定され、正面から見て吸込口28の右下に配置されている。また、ファンケーシング27は詳細を後述するように、それぞれ特定の方向を指向する吸込口27aと吐出口27bを有している。
図4において、送風装置25には蒸気を発生する蒸気発生装置50が連結される。蒸気派生装置50は送風装置25と同様に加熱室20の背壁の外面に近接して配置され、加熱室20のセンターライン上に配置されている。外部循環路30はファンケーシング27の吐出口27bから蒸気発生装置50までの区間がダクト31により構成されている。蒸気発生装置50を出た後の区間はダクト35により構成されている。ダクト35は加熱室20に隣接して設けられたサブキャビティ40に接続される。
サブキャビティ40は加熱室20の天井部の上方に設けられ、平面的に見て天井部の中央部に配置される。サブキャビティ40は平面視円形に形成され、その内側には蒸気の加熱手段である蒸気加熱ヒータ41が配置されている。蒸気加熱ヒータ41はメインヒータ41aとサブヒータ41bから成り、いずれもシーズヒータにより構成される。加熱室20の天井部にはサブキャビティ40と同大の開口部が形成され、ここにサブキャビティ40の底面を構成する底面パネル42が嵌め込まれる。
底面パネル42には複数の上部噴気孔43が形成される。上部噴気孔43の各々は真下を指向する小孔であり、ほぼパネル全面にわたり分散配置されている。上部噴気孔43は平面的、すなわち二次元的に分散配置されるが、底面パネル42に凹凸を設けて三次元的な要素を加味してもよい。
底面パネル42は上下両面とも塗装などの表面処理により暗色に仕上げられている。これにより、蒸気加熱ヒータ41の輻射熱を吸収して底面パネル42の下面から加熱室20に輻射される。このため、サブキャビティ40及びその外面の温度上昇を抑制して安全性が向上するとともに、加熱室20の加熱効率が向上する。使用を重ねることにより暗色に変色する金属素材で底面パネル42を成形してもよい。あるいは、暗色のセラミック成型品で底面パネル42を構成してもよい。
また、別体の底面パネル42でサブキャビティ40の底面を構成するのでなく、加熱室20の天板をそのままサブキャビティ40の底面に兼用することもできる。この場合には、天板のサブキャビティ40に相当する箇所に上部噴気孔43を設け、またその上下両面を暗色に仕上げることになる。
図5、図6は蒸気調理器1の内部構造を示す正面図及び上面図である。加熱室20の左右両側壁の外側には、小型のサブキャビティ44が設けられる。サブキャビティ44は加熱室20の上面に配されたサブキャビティ40にダクト45で接続され、サブキャビティ40から蒸気の供給を受ける。ダクト45は断面円形のパイプにより構成される。ステンレス鋼製のパイプを用いるのが望ましい。
加熱室20の側壁下部には、サブキャビティ44に相当する箇所に複数の側部噴気孔46が設けられる。各側部噴気孔46は加熱室20に入れられた被加熱物Fの方向、正確に言えばラック22に載置された被加熱物Fの下方に蒸気を噴出する小孔から成っている。ラック22に載置された被加熱物Fの下に蒸気が入り込むように側部噴気孔46の高さ及び向きが設定されている。また、左右から噴出した蒸気が被加熱物Fの下方で出会うように側部噴気孔46の位置や方向が設定されている。
側部噴気孔46は加熱室20と別体のパネルに形成してもよく、加熱室20の側壁に直接小孔を穿設してもよい。これは上部噴気孔43の場合と同様である。しかしながら、サブキャビティ40の場合と異なり、サブキャビティ44に相当する箇所を暗色に仕上げる必要はない。
尚、左右の側部噴気孔46の開口面積の和は、上部噴気孔43の開口面積の和よりも大きくなっている。開口面積の大きい側部噴気孔46に大量の蒸気を供給するため、1個のサブキャビティ44につき複数(本実施形態では4本)のダクト45が設けられている。
図4において、蒸気発生装置50は中心線を垂直にして配置された筒型のポット51を備えている。ポット51は平面形状が偏平、すなわち長方形、長円形、あるいはこれらに類する形状となっている。ポット51には耐熱性が求められ、金属、合成樹脂、セラミック或いは異種材料の組み合わせ等を用いることができる。
蒸気発生装置50は、前述の図6に示すようにポット51の一方の偏平側面が加熱室20の背壁と平行に取り付けられている。ポット51を偏平にすることにより、加熱室20の外面とキャビネット10の内面との空間の幅が狭くても蒸気発生装置50を配置することができる。従って、該空間の幅を縮めてキャビネット10をコンパクトにし、キャビネット10内の空間利用効率を向上させることができる。
ポット51内の水はポット51の底部に配置された蒸気発生ヒータ52により熱せられる。蒸気発生ヒータ52はシーズヒータから成り、ポット51内の水に浸って水を直接加熱する。
ポット51の上部には、外部循環路30を流れる気流に蒸気を吸い込ませるための蒸気吸引エジェクタ34が設けられる。蒸気吸引エジェクタ34はポット51の一方の偏平側面から他方の偏平側面に抜けるように形成されている。また、前述の図6に示すように、蒸気吸引エジェクタ34は互いに所定間隔を隔てて計3個設けられ、同一高さで互いに並列且つ平行に配置されている。
各蒸気吸引エジェクタ34はインナーノズル34a及びその吐出端を囲むアウターノズル34bにより構成されている。蒸気吸引エジェクタ34はポット51の軸線と交差する方向に延びている。本実施形態の場合は、蒸気吸引エジェクタ34とポット51の軸線との交差角は直角になっており、蒸気吸引エジェクタ34の軸が水平に配置される。インナーノズル34aにはダクト31が接続され、アウターノズル34bにはダクト35が接続される。蒸気吸引エジェクタ34はサブキャビティ40とほぼ同じ高さであり、ダクト35はほぼ水平に延びている。
蒸気発生装置50以降の外部循環路30は3個の蒸気吸引エジェクタ34からダクト35を含む3本の経路に分かれる。このため、外部循環路30を流れる気体に蒸気を速やかに混合することができるようになっている。
ここで、送風装置25のファンケーシング27の向きについて説明する。図7において、ファンケーシング27の吸込口27aと吐出口27bとは互いに直角を成している。吸込口27aは吸込口28の方向を指向し、吐出口27bは蒸気吸引部である蒸気吸引エジェクタ34の方向を指向するようにファンケーシング27の位置と角度が設定される。吐出口27bと蒸気吸引エジェクタ34の間はダクト31により通風路が確保される。吸込口28と吸込口27aの間にもダクト(不図示)により通風路が確保される。
上記構成により、吸込口28から吸い込まれた気体が遠心ファンによる送風ルートとしては最短のルートを通って蒸気吸引エジェクタ34に到達することになる。このため、外部循環路30の長さが短縮され、送風時の圧力損失が低減する。これにより、外部循環路30のエネルギー投入効率が向上する。また、外部循環路30の放熱面積も縮小するので熱損失も低減する。これらを併せ、外部循環路30の循環効率が向上する。
図4に戻り、ポット51の底部は漏斗状に成形され、下端から排水パイプ53が垂下する。排水パイプ53の途中には排水バルブ54が設けられている。排水パイプ53の下端は加熱室20の下方に配置された排水タンク14に向かって所定角度の勾配を成して屈曲される。排水タンク14はキャビネット10の正面側から引き出して内部の水を捨てることができる。
ポット51には給水路55により水タンク71の水が給水される。給水路55は排水バルブ54よりも上方で排水パイプ53に接続され、経路途中に給水ポンプ57が設けられる。給水路55はポット51と給水ポンプ57との間で上を凸にして屈曲し、最も高い部分から分岐して延びた溢水パイプ98により後述する排気路に連通している。これにより、給水路55の溢水が排気路に導かれる。溢水レベルは、ポット51内の通常の水位レベルよりも高く、蒸気吸引エジェクタ34よりも低い高さに設定されている。
水タンク71と給水路55とはジョイント部58により連結される。これにより、給水路55を配したキャビネット10(本体部)に対して水タンク71が着脱自在になっている。
図9はジョイント部58の詳細を示す側面断面図である。ジョイント部58は水タンク71に設けられる内筒部110と、給水路55に設けられる外筒部120とから成っている。内筒部110は水タンク71に形成された流出口71aの周囲から突設された内筒111を有している。
内筒111内には、流出口71aに挿通される可動部112と、可動部112を水タンク71から突出する方向に付勢する圧縮バネ113とが設けられる。可動部112は水タンク内に配されて流出口71aよりも径の大きい閉止部112aを有している。圧縮バネ113の付勢力によって閉止部112aが水タンク71の内壁に密接して流出口71aが閉止される。また、圧縮バネ113の付勢力に抗して可動部112が後退すると流出口71aから水が流出する。従って、可動部112及び圧縮バネ113によって流出口71aを開閉する止水弁が構成されている。
外筒部120は内筒111に外嵌される外筒121を有している。外筒121内には固定台121bが一体に形成されている。固定台121bは外筒121の内壁との間に隙間を有するように腕部(不図示)を介して保持される。尚、内筒111には該腕部との干渉を回避する複数の溝部111aが設けられている。
外筒121は段部121aによって水タンク71から遠い側が大径になっている。外筒121内には、段部121aに面して配される可動部122と、可動部122を段部121aに当接する方向に付勢する圧縮バネ123とが設けられている。圧縮バネ123の付勢力によって可動部122が段部121aの内壁に密接して段部121aの開口部が閉止される。また、圧縮バネ123の付勢力に抗して可動部122が後退すると段部121aの開口部が開放される。従って、可動部122及び圧縮バネ123によって給水路55(図4参照)を開閉する止水弁が構成されている。
水タンク71の装着時には外筒121に内筒111が挿入され、内筒111の先端が可動部122を押圧する。また、外筒部120の固定部121bの先端121cが内筒部110の可動部112の先端112bを押圧する。これにより、図10に示すように可動部112、122が後退し、水タンク71内の水が内筒111の溝部111aを介して外筒121の大径部分に流入することにより給水路55を流通するようになっている。
尚、外筒部120には水タンク71との接離によって水タンク71の着脱を検出する着脱センサ59(着脱検出手段)が設けられている。
図4において、給水路55はジョイント部58から延びて上方に屈曲した垂直部55bに給水ポンプ57が配される。給水路55の屈曲した部分には水位検出路91が分岐して形成される。水位検出路91は下端から延び、上方に屈曲して垂直部91bが形成される。また、水位検出路91の屈曲部91cから分岐して延び、上方に屈曲する分岐路90が設けられている。
図11、図12は給水路55、水位検出路91及び分岐路90を形成する水路ユニット130を示す側面図及び正面図である。水路ユニット130はジョイント部58の外筒121(図9参照)に嵌合される流入口130aを有している。流入口130aの後方には水が溜められる貯溜室130bが設けられる。貯溜室130bの下面は後方へ行くほど低くなるように傾斜して形成されている。
貯溜室130bの後方には貯溜室130bの下面に開口端131aを面して配されるパイプ131が立設されている。パイプ131の上部にはチューブ132を接続する突起部131bが形成される。チューブ132の先端はポンプ取付部130cに取り付けられる給水ポンプ57(図4参照)に接続される。
これにより、流入口130aから流入する水は矢印で示すように、貯溜室130bの下部からパイプ131及びチューブ132を介して給水ポンプ57の方向に導かれる。従って、流入口130a、貯溜室130b、パイプ131及びチューブ132により給水ポンプ57よりも上流側の給水路55(図4参照)が構成される。
給水路55の下端部55cから延びる水位検出路91は後方へ行くほど上方に傾斜し、屈曲部91cで上方へ屈曲して垂直部91bが形成される。分岐路90は屈曲部91cから後方へ行くほど上方に傾斜し、上方へ屈曲して垂直部90bが形成される。垂直部90bの上端は、後述する排気路に接続される。
水位検出路91の上端にはセンサ取付部91dが設けられ、センサ取付部91dに密閉式の水位センサ56(水位検出手段、図4参照)が設けられる。水位センサ56は水位検出路91に連通した水タンク71及び分岐路90の水位に応じて水位検出路91内に水が侵入し、水位検出路91の気圧が変化する。これにより、水タンク71の水位が検出される。従って、水タンク71内に水位センサを設ける必要がなく、水タンク71への給水時等に使用者による水位センサの破損を防止することができ、蒸気調理器1の故障を低減することができる。
図4において、排気路は排気ダクト93から成り、加熱室20の背壁から上方に傾斜して延びた後、上方に屈曲してキャビネット10の外部に連通して大気に開放される。これにより、加熱室20の空気や蒸気を排気する。また、排気ダクト93に接続される分岐路90には開放端が形成される。
水ダンク71をジョイント部58から取り外した際には、給水ポンプ57の上流側の給水路55、水位検出路91及び分岐路90には水が残留する。分岐路90が開放端を有するため、給水ポンプ57の駆動により大気が開放端から吸引され、水を容易に吸引して排水タンク14に排水することができるようになっている。従って、残留水の腐敗や異臭を防止することができ、蒸気調理器1の衛生面を向上できる。
排気ダクト93は金属パイプから成っており、金属パイプの外面に複数の放熱フィン95を有した放熱部94が設けられている。排気ダクト93の上端近傍はダクト31の横を通過し、ダクト31と排気ダクト93の間は連通ダクト96により連通する。連通ダクト96の内部には電動式のダンパ97が設けられている。ダンパ97は通常状態では連通ダクト96を閉鎖する。
排気ダクト93の分岐路90及び連通ダクト96との各接続箇所の近傍は、機外への開放端にかけて断面積が拡大されている。排気ダクト93の加熱室20側の入口は受皿21の上に開口する。このため、溢水パイプ98等を介して流入する水や結露水は排気と逆方向に排気ダクト93を流下して受皿21に受けられる。
また、給水ポンプ57は緩やかに吸引するため、給水ポンプ57を停止した際に給水路55内の水が分岐路90に流入して溢水する場合がある。この時も、溢水を蒸気調理器1本体内に垂れ流しせず、排気ダクト93を介して受皿21で受けることができる。
図8は蒸気調理器1の動作制御を行う制御装置80を示すブロック図である。制御装置80はマイクロプロセッサ及びメモリを有し、所定のプログラムに従って蒸気調理器1を制御する。制御状況は操作パネル13の中の表示部に表示される。制御装置80には操作パネル13に配置した各種操作キーを通じて動作指令の入力を行う。操作パネル13には各種の音を出す音発生装置(不図示)も配置されている。
制御部80には、操作パネル13の他、送風装置25、蒸気加熱ヒータ41、ダンパ97、蒸気発生ヒータ52、排水バルブ54、水位センサ56、及び給水ポンプ57が接続される。この他、ポット51の中の水位を測定するポット水位センサ81、加熱室20内の温度を測定する温度センサ82、及び加熱室20内の湿度を測定する湿度センサ83が接続されている。
上記構成の蒸気調理器1において、扉11を開けて水タンク71を水タンク室70から引き出し、給水口(不図示)より水タンク71内に水を入れる。満水状態にした水タンク71を水タンク室70に押し込んで所定位置に装着する。ジョイント部58がしっかりと接続されたことを確認したうえで食品Fを入れて扉11を閉じ、操作パネル13の中の電源キーを押して電源ONにする。これにより、給水ポンプ57が運転を開始し、蒸気発生装置50への給水が始まる。この時、排水バルブ54は閉じている。
給水路55を介して水がポット51の底の方から溜まって行く。水位センサ56により水タンク71の水位を検出して水タンク71に調理に必要十分な水があることを認識するとともに、ポット水位センサ81でポット51の水位が所定レベルになったと判断すると給水が停止される。所定量の水がポット51に入れられた後、蒸気発生ヒータ52への通電が開始される。蒸気発生ヒータ52はポット51の水を直接加熱する。
蒸気発生ヒータ52への通電と同時に、あるいはポット51の中の水が所定温度に達したことを見計らって、送風装置25及び蒸気加熱ヒータ41への通電が開始される。送風装置25は遠心ファン26の回転により吸込口28から加熱室20の中の蒸気を吸い込み、蒸気発生装置50へ蒸気を送り出す。この時、ダンパ97はダクト31から排気ダクト93に通じる連通ダクト96を閉じている。送風装置25から圧送された蒸気はダクト31から蒸気吸引エジェクタ34に入り、さらにダクト35を経てサブキャビティ40に入る。
ポット51の中の水が沸騰すると、100℃且つ1気圧の飽和蒸気が発生する。飽和蒸気は蒸気吸引エジェクタ34から外部循環路30に入る。エジェクタ構造を用いているので、飽和蒸気は速やかに吸い込まれ、循環気流に合流する。また、蒸気発生装置50に圧力がかからず、飽和蒸気の放出が妨げられない。
蒸気吸引エジェクタ34を出た蒸気はダクト35を通ってサブキャビティ40に流入する。サブキャビティ40に入った蒸気は蒸気加熱ヒータ41により300℃にまで熱せられ、過熱蒸気となる。過熱蒸気の一部は上部噴気孔43から下方向に噴出する。過熱蒸気の他の一部はダクト45を通じてサブキャビティ44に回り、側部噴気孔46から横方向に噴出する。
時間が経過するにつれ、加熱室20内の蒸気量が増して行く。量的に余剰となった蒸気は排気ダクト93を通じて機外に放出される。蒸気がそのままキャビネット10の外に出てしまうと、周囲の壁面に結露してカビが発生する。しかしながら、排気ダクト93の途中に放熱部94があるので、放熱部94を通過する間に蒸気は熱を奪われて排気ダクト93の内面で結露する。
従ってキャビネット10の外まで出てしまう蒸気は量的に少なく、カビの発生を防止することができる。排気ダクト93の内面で結露した水は排気の方向と逆方向に流下し、受皿21に受けられる。この水は、他の原因で発生する水と一緒にして調理終了後に捨てることができる。
約300℃に加熱されて上部噴気孔43から噴出する過熱蒸気は被加熱物Fに衝突して被加熱物Fに熱を伝える。この過程で蒸気温度は250℃程度にまで低下する。被加熱物Fの表面に接触した過熱蒸気は、被加熱物Fの表面に結露する際潜熱を放出する。これによっても被加熱物Fは加熱される。
前述の図4、図5に示すように、被加熱物Fに熱を与えた後、蒸気は外側に向きを変えて下向きに吹き下ろす気流の外に出る。蒸気、特に過熱蒸気は軽いので、吹き下ろしの気流の外に出た後、今度は上昇を開始し、加熱室20の内部に矢印で示すような対流を形成する。この対流により、加熱室20内の温度を維持しつつ、被加熱物Fにはサブキャビティ40で熱せられたばかりの過熱蒸気を衝突させ続けることができ、熱を大量且つ速やかに被加熱物Fに与えることができる。
側部噴気孔46から横向きに噴出した蒸気は、左右からラック22の下に進入し、被加熱物Fの下で出会う。側部噴気孔46からの蒸気噴出方向は被加熱物Fの表面に対し接線方向であるが、このように左右からの蒸気が出会うことにより、蒸気は真っ直ぐ向こう側に抜けることなく、被加熱物Fの下に滞留して溢れる。このため、被加熱物Fの表面の法線方向に蒸気が吹き付けたのと同じような効果が生じ、蒸気の持つ熱が確実に被加熱物Fの下面部に伝えられる。
上記のように、被加熱物Fは側部噴気孔46からの蒸気により、上部噴気孔43からの蒸気が当たらない部位まで上面部と同様に調理される。これにより、むらがなく見た目の良い調理結果を得ることができる。また、被加熱物Fは表面全体から均等に熱を受け取るので、中心部まで、短い時間で十分に加熱される。
側部噴気孔46からの蒸気も、最初約300℃であったものが被加熱物Fに当たった後は250℃程度にまで温度低下し、その過程で被加熱物Fに熱を伝える。また被加熱物Fの表面に結露する際に潜熱を放出し、被加熱物Fを加熱する。
側部噴気孔46からの蒸気は、被加熱物Fの下面部に熱を与えた後、上部噴気孔43からの蒸気が巻き起こしている対流に加わる。対流する蒸気は順次吸込口28に吸い込まれる。そして、外部循環路30からサブキャビティ40というルートを一巡した後、加熱室に戻る。このようにして加熱室20内の蒸気は外部循環路30に出ては加熱室20に戻るという循環を繰り返す。
調理が終了すると、制御装置80が操作パネル13にその旨の表示を出し、また合図音を鳴らす。調理終了を音と表示により知った使用者は扉11を開け、加熱室20から被加熱物Fを取り出す。この時、ダンパ97の開閉状態が切り替わり、加熱室20の中の蒸気は排気ダクト93から排出される。このため、使用者は安全に被加熱物Fを取り出すことができる。
また、水タンク71を取り外して給水ポンプ57を駆動すると、分岐路90の開放端から大気が取り込まれて給水路55、水位検出路91及び分岐路90に残留した水が排水パイプ53を介して排水タンク14に排水される。調理が停止して所定期間経過後に着脱センサ59の検知によって水タンク71が取り外されている場合は、制御部80の制御によって給水路55、水位検出路91及び分岐路90の水を排水してもよい。この時、水タンク71が装着されている場合は操作パネル13に警告表示して報知するとよい。
また、調理開始前や調理開始後に水タンク71を取り外した場合は給水路55及び分岐路90に水が残留しているため水位センサ56は水があると判断する。この時、着脱センサ59により水タンク71が取り外されたことを検出して水位センサ56の検出結果に拘わらす調理開始の禁止や調理停止を行うようになっている。これにより、蒸気調理器1の安全性を向上することができる。
調理開始前に水位センサ56の検知により水タンク71が空であることを検出した場合や、水タンク71の水が不足すると制御部80で判断した場合は調理開始の禁止や警告表示が行われる。
調理開始後に水位センサ56の検知により水タンク71が空になった場合や、水タンク71の水が不足すると制御部80で判断した場合は調理停止や警告表示が行われる。この時、例えば水位検出路91が給水路55の垂直部55bから分岐すると、給水路55を流通する水により水位検出路91内の水が吸引される。このため、水タンク71の正確な水位を検出することができない。しかし、屈曲する給水路55の下端から延びて水位検出路91が設けられるため、給水路55の水流によって水位検出路91の水が吸引されにくくなる。従って、水タンク71の水位を正確に検出することができる。
また、分岐路90が水位検出路91の屈曲部91cから延びるため、水位検出路91の垂直部91bの下端は分岐路90に貯溜される水により塞がれる。これにより、給水ポンプ57の駆動によって垂直部91bに対して略垂直方向に水が流れ、水位検出路91内の空気が吸引されにくくなる。従って、水タンク71の水位をより正確に検出することができる。
加えて、給水路55を構成する貯溜室130bの断面積よりも水位検出路91の断面積の方が狭くなっているので、水タンク71の水位変化以上に水位検出路91からパイプ131に流入する水を低減することができる。従って、水タンク71の水位を更に正確に検出することができる。
尚、給水路55の垂直部55bの後方に水位検出路91の垂直部91bを配置し、水位検出路91の垂直部91bの後方に分岐路90の垂直部90bを配置すると、水タンク71の後方のスペースを効率よく利用することができる。
また、貯溜室130bの下面や水位検出路91、分岐路90の下部がパイプ131(図11参照)に向かって下がるように傾斜し、パイプ131の開口端131aが給水路55の下端部55cに僅かな隙間を有して配置される。このため、給水路55、水位検出路91及び分岐路90内の水を残さず排水することができる。
次に、図13は第2実施形態の蒸気調理器の内部機構の基本構造図を示している。説明の便宜上、前述の図1〜図12に示す第1実施形態と同一の部分は同一の符号を付している。第1実施形態と異なる点は水位検出路91(図4参照)を省き、分岐路90が給水路55の下端から延びて設けられている。また、分岐路90の垂直部90dには分岐路90の水位を検知するフロートスイッチから成る水位センサ56(水位検出手段)が設けられている。その他の部分は第1実施形態と同様である。
本実施形態によると、分岐路90が開放端を有するので、水ダンク71をジョイント部58から取り外した際に給水ポンプ57を駆動すると、大気が開放端から吸引される。これにより、給水ポンプ57の上流側の給水路55及び分岐路90に残留した水を容易に排水タンク14に排水することができる。従って、残留水の腐敗や異臭を防止することができ、蒸気調理器1の衛生面を向上できる。
また、調理開始後に水位センサ56の検知により水タンク71が空になった場合や、水タンク71の水が不足すると制御部80で判断した場合は調理停止や警告表示が行われる。この時、例えば分岐路90が給水路55の垂直部55bから分岐すると、給水路55を流通する水により分岐路90内の水が吸引される。このため、水タンク71の正確な水位を検出することができない。しかし、屈曲する給水路55の下端から延びて分岐路90が設けられるため、給水路55の水流によって分岐路90の水が吸引されにくくなる。従って、水タンク71の水位を正確に検出することができる。
加えて、給水路55を構成する貯溜室130bの断面積よりも分岐路90の断面積の方が狭くなっているので、水タンク71の水位変化以上に分岐路90からパイプ131に流入する水を低減することができる。従って、水タンク71の水位を更に正確に検出することができる。
尚、給水路55の垂直部55bの後方に分岐路90の垂直部90bを配置すると、水タンク71の後方のスペースを効率よく利用することができる。
第1、第2実施形態において、加熱室20内の蒸気を外部循環路30からサブキャビティ40を経て再び加熱室20に戻すという構成を採用したが、これと異なる構成も可能である。例えば、サブキャビティ40に常に新しい蒸気を供給し、加熱室20から溢れ出す蒸気を排気ダクト93から放出し続けることとしてもよい。
この他、発明の主旨を逸脱しない範囲でさらに種々の変更を加えて実施することが可能である。