以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は一実施形態の蒸気調理器を示す斜視図である。蒸気調理器1は直方体形状のキャビネット10を備えている。キャビネット10の正面には扉11が設けられる。扉11は下端を中心に垂直面内で回動可能に枢支され、上部には扉11を開閉するためのハンドル12が設けられている。扉11は、耐熱ガラスをはめ込んだ透視部を備える中央部分11Cの左右に、金属製装飾板で仕上げられた左側部分11L及び右側部分11Rが対称的に配置されている。右側部分11Rには操作パネル13が設けられている。
図2、図3は扉11を開いた状態の蒸気調理器1の斜視図及び正面図を示している。扉11はハンドル12を握って手前に引くことにより、垂直な閉鎖状態から水平な開放状態へと90゜姿勢変換させることができる。扉11を開くとキャビネット10の正面が露出する。扉11の中央部分11Cに対応する箇所には加熱室20が設けられている。扉11の左側部分11Lに対応する箇所には水タンク室70が設けられ、蒸気発生用の水を貯溜する水タンク71を収納する。扉11の右側部分11Rに対応する箇所には特に開口部は設けられていないが、その箇所の内部に制御基板が配置されている。
加熱室20は直方体形状で、扉11に面する正面側は全面的に開口部となっている。加熱室20の他の面はステンレス鋼板で形成される。加熱室20の周囲には断熱対策が施されている。加熱室20の床面にはステンレス鋼板製の受皿21が置かれ、受皿21の上には被加熱物F(図4参照)を載置するステンレス鋼線製のラック22が置かれる。
加熱室20の奥側の背壁には左上隅に吸込口28が設けられている。吸込口28は複数の水平なスリットを上下に並べて構成され、上方のスリットほど長く、下に行くほど短くして、全体として直角三角形の開口形状になっている。該直角三角形の直角の角は加熱室20の背壁の角に合わせられている。即ち、吸込口28の開口度は加熱室20の背壁の上辺に近いほど大きくなるとともに左辺に近いほど大きくなっている。
図4は蒸気調理器1の内部機構の基本構造図を示している。加熱室20の中の蒸気(通常の場合、加熱室20内の気体は空気であるが、蒸気調理を始めると空気が蒸気で置き換えられて行く。本明細書では加熱室20内の気体が蒸気に置き換わっているものとして説明を進める)は外部循環路30を通って循環する。
外部循環路30の始端となるのは、加熱室20の背壁に形成された吸込口28である。吸込口28には外部循環路30内を流れる気流を形成する送風装置25が連結される。送風装置25は加熱室20の背壁の外面に近接して配置される。側壁の外面に設けてもよい。
図7に示すように、送風装置25は遠心ファン26と、遠心ファン26を回転させるモータ29と、遠心ファン26を収容するファンケーシング27とを備えている。遠心ファン26として、シロッコファンが用いられる。モータ29には高速回転が可能な直流モータが使用される。ファンケーシング27は加熱室20の背壁の外面に近接して固定され、正面から見て吸込口28の右下に配置されている。また、ファンケーシング27は詳細を後述するように、それぞれ特定の方向を指向する吸込口27aと吐出口27bを有している。
図4において、送風装置25には蒸気を発生する蒸気発生装置50が連結される。蒸気発生装置50は送風装置25と同様に加熱室20の背壁の外面に近接して配置され、加熱室20のセンターライン上に配置されている。外部循環路30はファンケーシング27の吐出口27bから蒸気発生装置50までの区間がダクト31により構成されている。蒸気発生装置50を出た後の区間はダクト35により構成されている。ダクト35は加熱室20の天井部の上方に配された蒸気昇温装置40に接続される。
蒸気昇温装置40は外カバー47及び蒸気加熱ヒータ41を備え、蒸気発生装置50で発生した蒸気を更に加熱して過熱蒸気を生成する。図5、図6は蒸気調理器1の内部構造を示す正面図及び上面図である。蒸気昇温装置40は平面的に見て加熱室20の天井部の中央部に配置される。蒸気加熱ヒータ41は加熱室20の上面に形成された開口から成る蒸気流入部20aを介して加熱室20内に臨んで配置される。また、蒸気加熱ヒータ41はメインヒータ41aとサブヒータ41bから成り、いずれもシーズヒータにより構成されている。
外カバー47は蒸気加熱ヒータ41の上方を覆って蒸気流入部20aの外面側を塞いでいる。蒸気流入部20aの加熱室20側には多数の小孔から成る上部噴気孔43を有した内カバー42が設けられ、蒸気流入部20aの加熱室20側が塞がれる。これにより、蒸気流入部20aを介して使用者の手指が蒸気加熱ヒータ41に接触する危険を回避することができる。
図8、図9は蒸気昇温装置40の外カバー47の取付け状態を示す平面図及び正面図である。また、図10は図9のA部詳細図である。蒸気流入部20aは平面視略矩形に形成され、蒸気流入部20aの周囲には加熱室20の上面の外側に突出して環状の台座48が取り付けられる。台座48はステンレス鋼板等の耐熱材料から成り、加熱室20の上壁20bに当接する両端の脚部48aと、脚部48aから屈曲するU字形の突出部48bとを有している。
脚部48aは上壁20bの外面にスポット溶接されている。これにより、台座48の取付けに係るネジ孔等が形成されず、加熱室20からの蒸気漏れを防止することができる。脚部48aを耐熱性接着剤で上壁20bに接着してもよい。また、突出部48bにはネジ孔(不図示)が所定間隔で形成されている。
外カバー47はステンレス鋼板等の耐熱性の弾性を有する弾性部材から成り、台座48に取り付けられる。外カバー47には蒸気流入部20aを覆うとともに蒸気加熱ヒータ41(図4参照)を収納するように加熱室20の上壁20bから上方に突出する収納部47aが設けられる。
外カバー47の周部にはネジ49によって台座48の突出部48bにネジ止めされる環状の取付部47cが形成される。取付部47cと収納部47aとの間には、取付部47cに対して段差を有して環状に形成される押圧部47bが形成される。これにより、押圧部47bは蒸気流入部20aの外側に環状に配置され、加熱室20の上壁20bに当接する。
この時、取付部47cと押圧部47bとの段差量は取付部47cの取付け前に台座48の高さH1よりも大きくなっている。このため、ネジ49で取付部47cを台座48の突出部48cに固定することにより、弾性部材から成る外カバー47の弾性力によって押圧部47bが上壁20bに押圧される。
従って、押圧部47bが上壁20bに密着して外カバー47と上壁20bとの間の蒸気漏れを防止することができる。また、外カバー47が上壁20bにネジ止めされないため加熱室20内部にネジが突出せず、加熱室20の清掃を容易に行うことができる。尚、取付部47cは環状でなくてもネジ49で取り付ける部分に設けてもよい。また、ネジ49に替えてリベット等を用いてもよい。
内カバー42は蒸気流入部20aの周縁を折曲してかしめたかしめ部20dにより取り付けられている。これにより、内カバー42を取り付けるネジを必要とせず、加熱室20の清掃を容易に行うことができる。また、内カバー42が外カバー47の押圧部47bの内側に配置され、加熱室20から上部噴気口43を介して蒸気昇温装置40内に流入する蒸気の蒸気漏れを押圧部47bにより防止することができる。
この時、加熱室20の上壁20bには蒸気流入部20aの周囲を加熱室20の内部の方向に屈曲して屈曲部20cが設けられる。これにより、内カバー42をかしめ部20dによりかしめて取り付ける際に上壁20bの変形を屈曲部20cで吸収することができる。従って、押圧部47bが当接する部分の上壁20bの変形を防止して蒸気漏れをより確実に防止することができる。
また、内カバー42は上下両面とも塗装などの表面処理により暗色に仕上げられている。これにより、蒸気加熱ヒータ41の輻射熱を吸収して内カバー42の下面から加熱室20に輻射される。このため、蒸気昇温装置40及びその外面の温度上昇を抑制して安全性が向上するとともに、加熱室20の加熱効率が向上する。使用を重ねることにより暗色に変色する金属素材で内カバー42を成形してもよい。あるいは、暗色のセラミック成型品で内カバー42を構成してもよい。
上部噴気孔43の各々は真下を指向する小孔であり、ほぼパネル全面にわたり分散配置されている。上部噴気孔43は平面的、すなわち二次元的に分散配置されるが、内カバー42に凹凸を設けて三次元的な要素を加味してもよい。
尚、加熱室20の上壁20bに複数の小孔から成る蒸気流入部20aを構成してもよい。これにより、内カバー42を省くことができる。この場合には、上壁20bの蒸気昇温装置40に対向する箇所に上部噴気孔43を設けてその上下両面を暗色に仕上げることになる。
図5、図6において、加熱室20の左右両側壁の外側には、小型のサブキャビティ44が設けられる。サブキャビティ44は加熱室20の上面に配された蒸気昇温装置40にダクト45で接続され、蒸気昇温装置40から蒸気の供給を受ける。ダクト45は断面円形のパイプにより構成される。ステンレス鋼製のパイプを用いるのが望ましい。
加熱室20の側壁下部には、サブキャビティ44に相当する箇所に複数の側部噴気孔46が設けられる。各側部噴気孔46は加熱室20に入れられた被加熱物Fの方向、正確に言えばラック22に載置された被加熱物Fの下方に蒸気を噴出する小孔から成っている。ラック22に載置された被加熱物Fの下に蒸気が入り込むように側部噴気孔46の高さ及び向きが設定されている。また、左右から噴出した蒸気が被加熱物Fの下方で出会うように側部噴気孔46の位置や方向が設定されている。
側部噴気孔46は加熱室20と別体のパネルに形成してもよく、加熱室20の側壁に直接小孔を穿設してもよい。これは上部噴気孔43の場合と同様である。しかしながら、蒸気昇温装置40の場合と異なり、サブキャビティ44に相当する箇所を暗色に仕上げる必要はない。
尚、左右の側部噴気孔46の開口面積の和は、上部噴気孔43の開口面積の和よりも大きくなっている。開口面積の大きい側部噴気孔46に大量の蒸気を供給するため、1個のサブキャビティ44につき複数(本実施形態では4本)のダクト45が設けられている。
図4において、蒸気発生装置50は中心線を垂直にして配置された筒型のポット51を備えている。ポット51は平面形状が偏平、すなわち長方形、長円形、あるいはこれらに類する形状となっている。ポット51には耐熱性が求められ、金属、合成樹脂、セラミック或いは異種材料の組み合わせ等を用いることができる。
蒸気発生装置50は、前述の図6に示すようにポット51の一方の偏平側面が加熱室20の背壁と平行に取り付けられている。ポット51を偏平にすることにより、加熱室20の外面とキャビネット10の内面との空間の幅が狭くても蒸気発生装置50を配置することができる。従って、該空間の幅を縮めてキャビネット10をコンパクトにし、キャビネット10内の空間利用効率を向上させることができる。
ポット51内の水はポット51の底部に配置された蒸気発生ヒータ52により熱せられる。蒸気発生ヒータ52はシーズヒータから成り、ポット51内の水に浸って水を直接加熱する。
ポット51の上部には、外部循環路30を流れる気流に蒸気を吸い込ませるための蒸気吸引エジェクタ34が設けられる。蒸気吸引エジェクタ34はポット51の一方の偏平側面から他方の偏平側面に抜けるように形成されている。また、前述の図6に示すように、蒸気吸引エジェクタ34は互いに所定間隔を隔てて計3個設けられ、同一高さで互いに並列且つ平行に配置されている。
各蒸気吸引エジェクタ34はインナーノズル34a及びその吐出端を囲むアウターノズル34bにより構成されている。蒸気吸引エジェクタ34はポット51の軸線と交差する方向に延びている。本実施形態の場合は、蒸気吸引エジェクタ34とポット51の軸線との交差角は直角になっており、蒸気吸引エジェクタ34の軸が水平に配置される。インナーノズル34aにはダクト31が接続され、アウターノズル34bにはダクト35が接続される。蒸気吸引エジェクタ34は蒸気昇温装置40とほぼ同じ高さであり、ダクト35はほぼ水平に延びている。
蒸気発生装置50以降の外部循環路30は3個の蒸気吸引エジェクタ34からダクト35を含む3本の経路に分かれる。このため、外部循環路30を流れる気体に蒸気を速やかに混合することができるようになっている。
ここで、送風装置25のファンケーシング27の向きについて説明する。図7において、ファンケーシング27の吸込口27aと吐出口27bとは互いに直角を成している。吸込口27aは吸込口28の方向を指向し、吐出口27bは蒸気吸引部である蒸気吸引エジェクタ34の方向を指向するようにファンケーシング27の位置と角度が設定される。吐出口27bと蒸気吸引エジェクタ34の間はダクト31により通風路が確保される。吸込口28と吸込口27aの間にもダクト(不図示)により通風路が確保される。
上記構成により、吸込口28から吸い込まれた気体が遠心ファンによる送風ルートとしては最短のルートを通って蒸気吸引エジェクタ34に到達することになる。このため、外部循環路30の長さが短縮され、送風時の圧力損失が低減する。これにより、外部循環路30のエネルギー投入効率が向上する。また、外部循環路30の放熱面積も縮小するので熱損失も低減する。これらを併せ、外部循環路30の循環効率が向上する。
図4に戻り、ポット51の底部は漏斗状に成形され、下端から排水パイプ53が垂下する。排水パイプ53の途中には排水バルブ54が設けられている。排水パイプ53の下端は加熱室20の下方に配置された排水タンク14に向かって所定角度の勾配を成して屈曲される。排水タンク14はキャビネット10の正面側から引き出して内部の水を捨てることができる。
ポット51には給水路55により水タンク71の水が給水される。給水路55は排水バルブ54よりも上方で排水パイプ53に接続され、経路途中に給水ポンプ57が設けられる。給水路55はポット51と給水ポンプ57との間で上を凸にして屈曲し、最も高い部分から分岐して延びた溢水パイプ98により後述する排気路に連通している。これにより、給水路55の溢水が排気路に導かれる。溢水レベルは、ポット51内の通常の水位レベルよりも高く、蒸気吸引エジェクタ34よりも低い高さに設定されている。
給水路55はジョイント部58により水タンク71と連結される。これにより、給水路55を配したキャビネット10に対して水タンク71が着脱自在になっている。給水路55はジョイント部58から延びて上方に屈曲して給水ポンプ57が配される。給水路55からは水位検出路91が分岐して形成される。水位検出路91には水位センサ56が設けられ、水タンク71の水位を検出する。水位検出路91からは上方に屈曲する分岐路90が設けられている。分岐路90は排気ダクト93に連結されている。
排気ダクト93は排気路を構成し、加熱室20の背壁から上方に傾斜して延びた後、上方に屈曲してキャビネット10の外部に連通して大気に開放される。これにより、加熱室20の空気や蒸気を排気する。また、排気ダクト93に接続される分岐路90には開放端が形成される。
水ダンク71をジョイント部58から取り外した際には、給水ポンプ57の上流側の給水路55、水位検出路91及び分岐路90には水が残留する。分岐路90が開放端を有するため、給水ポンプ57の駆動により大気が開放端から吸引され、水を容易に吸引して排水タンク14に排水することができるようになっている。従って、残留水の腐敗や異臭を防止することができ、蒸気調理器1の衛生面を向上できる。
排気ダクト93は金属パイプから成っており、金属パイプの外面に複数の放熱フィン95を有した放熱部94が設けられている。排気ダクト93の上端近傍はダクト31の横を通過し、ダクト31と排気ダクト93の間は連通ダクト96により連通する。連通ダクト96の内部には電動式のダンパ97が設けられている。ダンパ97は通常状態では連通ダクト96を閉鎖する。
排気ダクト93の分岐路90及び連通ダクト96との各接続箇所の近傍は、機外への開放端にかけて断面積が拡大されている。排気ダクト93の加熱室20側の入口は受皿21の上に開口する。このため、溢水パイプ98等を介して流入する水や結露水は排気と逆方向に排気ダクト93を流下して受皿21に受けられる。
また、給水ポンプ57は緩やかに吸引するため、給水ポンプ57を停止した際に給水路55内の水が分岐路90に流入して溢水する場合がある。この時も、溢水を蒸気調理器1本体内に垂れ流しせず、排気ダクト93を介して受皿21で受けることができる。
図11は蒸気調理器1の動作制御を行う制御装置80を示すブロック図である。制御装置80はマイクロプロセッサ及びメモリを有し、所定のプログラムに従って蒸気調理器1を制御する。制御状況は操作パネル13の中の表示部に表示される。制御装置80には操作パネル13に配置した各種操作キーを通じて動作指令の入力を行う。操作パネル13には各種の音を出す音発生装置(不図示)も配置されている。
制御部80には、操作パネル13の他、送風装置25、蒸気加熱ヒータ41、ダンパ97、蒸気発生ヒータ52、排水バルブ54、水位センサ56、及び給水ポンプ57が接続される。この他、ポット51の中の水位を測定するポット水位センサ81、加熱室20内の温度を測定する温度センサ82、及び加熱室20内の湿度を測定する湿度センサ83が接続されている。
上記構成の蒸気調理器1において、扉11を開けて水タンク71を水タンク室70から引き出し、給水口(不図示)より水タンク71内に水を入れる。満水状態にした水タンク71を水タンク室70に押し込んで所定位置に装着する。ジョイント部58がしっかりと接続されたことを確認したうえで食品Fを入れて扉11を閉じ、操作パネル13の中の電源キーを押して電源ONにする。これにより、給水ポンプ57が運転を開始し、蒸気発生装置50への給水が始まる。この時、排水バルブ54は閉じている。
給水路55を介して水がポット51の底の方から溜まって行く。水位センサ56により水タンク71の水位を検出して水タンク71に調理に必要十分な水があることを認識するとともに、ポット水位センサ81でポット51の水位が所定レベルになったと判断すると給水が停止される。所定量の水がポット51に入れられた後、蒸気発生ヒータ52への通電が開始される。蒸気発生ヒータ52はポット51の水を直接加熱する。
蒸気発生ヒータ52への通電と同時に、あるいはポット51の中の水が所定温度に達したことを見計らって、送風装置25及び蒸気加熱ヒータ41への通電が開始される。送風装置25は遠心ファン26の回転により吸込口28から加熱室20の中の蒸気を吸い込み、蒸気発生装置50へ蒸気を送り出す。この時、ダンパ97はダクト31から排気ダクト93に通じる連通ダクト96を閉じている。送風装置25から圧送された蒸気はダクト31から蒸気吸引エジェクタ34に入り、さらにダクト35を経て蒸気昇温装置40に入る。
ポット51の中の水が沸騰すると、100℃且つ1気圧の飽和蒸気が発生する。飽和蒸気は蒸気吸引エジェクタ34から外部循環路30に入る。エジェクタ構造を用いているので、飽和蒸気は速やかに吸い込まれ、循環気流に合流する。また、蒸気発生装置50に圧力がかからず、飽和蒸気の放出が妨げられない。
蒸気吸引エジェクタ34を出た蒸気はダクト35を通って蒸気昇温装置40に流入する。蒸気昇温装置40に入った蒸気は蒸気加熱ヒータ41により300℃にまで熱せられ、過熱蒸気となる。過熱蒸気の一部は上部噴気孔43から下方向に噴出する。過熱蒸気の他の一部はダクト45を通じてサブキャビティ44に回り、側部噴気孔46から横方向に噴出する。
時間が経過するにつれ、加熱室20内の蒸気量が増して行く。量的に余剰となった蒸気は排気ダクト93を通じて機外に放出される。蒸気がそのままキャビネット10の外に出てしまうと、周囲の壁面に結露してカビが発生する。しかしながら、排気ダクト93の途中に放熱部94があるので、放熱部94を通過する間に蒸気は熱を奪われて排気ダクト93の内面で結露する。
従ってキャビネット10の外まで出てしまう蒸気は量的に少なく、カビの発生を防止することができる。排気ダクト93の内面で結露した水は排気の方向と逆方向に流下し、受皿21に受けられる。この水は、他の原因で発生する水と一緒にして調理終了後に捨てることができる。
約300℃に加熱されて上部噴気孔43から噴出する過熱蒸気は被加熱物Fに衝突して被加熱物Fに熱を伝える。この過程で蒸気温度は250℃程度にまで低下する。被加熱物Fの表面に接触した過熱蒸気は、被加熱物Fの表面に結露する際潜熱を放出する。これによっても被加熱物Fは加熱される。
前述の図4、図5に示すように、被加熱物Fに熱を与えた後、蒸気は外側に向きを変えて下向きに吹き下ろす気流の外に出る。蒸気、特に過熱蒸気は軽いので、吹き下ろしの気流の外に出た後、今度は上昇を開始し、加熱室20の内部に矢印で示すような対流を形成する。この対流により、加熱室20内の温度を維持しつつ、被加熱物Fには蒸気昇温装置40で熱せられたばかりの過熱蒸気を衝突させ続けることができ、熱を大量且つ速やかに被加熱物Fに与えることができる。
側部噴気孔46から横向きに噴出した蒸気は、左右からラック22の下に進入し、被加熱物Fの下で出会う。側部噴気孔46からの蒸気噴出方向は被加熱物Fの表面に対し接線方向であるが、このように左右からの蒸気が出会うことにより、蒸気は真っ直ぐ向こう側に抜けることなく、被加熱物Fの下に滞留して溢れる。このため、被加熱物Fの表面の法線方向に蒸気が吹き付けたのと同じような効果が生じ、蒸気の持つ熱が確実に被加熱物Fの下面部に伝えられる。
上記のように、被加熱物Fは側部噴気孔46からの蒸気により、上部噴気孔43からの蒸気が当たらない部位まで上面部と同様に調理される。これにより、むらがなく見た目の良い調理結果を得ることができる。また、被加熱物Fは表面全体から均等に熱を受け取るので、中心部まで、短い時間で十分に加熱される。
側部噴気孔46からの蒸気も、最初約300℃であったものが被加熱物Fに当たった後は250℃程度にまで温度低下し、その過程で被加熱物Fに熱を伝える。また被加熱物Fの表面に結露する際に潜熱を放出し、被加熱物Fを加熱する。
側部噴気孔46からの蒸気は、被加熱物Fの下面部に熱を与えた後、上部噴気孔43からの蒸気が巻き起こしている対流に加わる。対流する蒸気は順次吸込口28に吸い込まれる。そして、外部循環路30から蒸気昇温装置40というルートを一巡した後、加熱室に戻る。このようにして加熱室20内の蒸気は外部循環路30に出ては加熱室20に戻るという循環を繰り返す。
調理が終了すると、制御装置80が操作パネル13にその旨の表示を出し、また合図音を鳴らす。調理終了を音と表示により知った使用者は扉11を開け、加熱室20から被加熱物Fを取り出す。この時、ダンパ97の開閉状態が切り替わり、加熱室20の中の蒸気は排気ダクト93から排出される。このため、使用者は安全に被加熱物Fを取り出すことができる。
本実施形態によると、蒸気昇温装置40の外カバー47が台座48を介して加熱室20の上壁20bに取り付けられるため、加熱室20の上壁20bにネジ孔が形成されず蒸気漏れを防止することができる。従って、漏れた蒸気が結露することによる電装部品の故障等を防止することができる。また、加熱室20内にネジが突出せず、加熱室20の清掃が容易で蒸気調理器1の使用性を向上することができる。
尚、本実施形態において、加熱室20内の蒸気を外部循環路30から蒸気昇温装置40を経て再び加熱室20に戻すという構成を採用したが、これと異なる構成も可能である。例えば、蒸気昇温装置40に常に新しい蒸気を供給し、加熱室20から溢れ出す蒸気を排気ダクト93から放出し続けることとしてもよい。また、蒸気昇温装置40を加熱室20の側壁に設けてもよい。
この他、発明の主旨を逸脱しない範囲でさらに種々の変更を加えて実施することが可能である。