JP4376046B2 - 熱可塑性樹脂用難燃剤及び該難燃剤を配合した難燃性スチレン系樹脂組成物 - Google Patents

熱可塑性樹脂用難燃剤及び該難燃剤を配合した難燃性スチレン系樹脂組成物 Download PDF

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本発明はハロゲン含有芳香族ジオールのエーテル誘導体を含有した難燃性スチレン系樹脂組成物に関し、更に詳しくは、高度の難燃性と共に耐光性、耐熱性、耐衝撃性、並びに流動性に優れ、コンパウンド作成が容易な難燃性スチレン系樹脂組成物に関するものであり、OA機器、事務機器等、エンクロージャー等の用途に適する材料を提供するものである。
スチレン系樹脂は優れた成形加工性、バランスのとれた機械的特性を有するため、従来より家庭電化製品及びOA機器、事務機器等のハウジング材料として使用されている。しかし、米国のUL規格、カナダのCSA規格に適合するには材料の難燃化を図る必要があり、その方法として有機系及び無機系の難燃剤を添加する方法が採用されている。有機系の難燃剤としてはリン系化合物、ハロゲン系化合物が使用され、無機系の難燃剤としてはアンチモン酸化物が使用されている。このうちハロゲン系化合物はスチレン系樹脂の難燃剤としては効果的であり、その中でも物性、難燃性の点からテトラブロモビスフェノールA、ポリブロモジフェニルエーテル、臭素化ポリカーボネートオリゴマー、ビストリブロモフェノキシエタン、臭素化エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂のトリブロモフェノール反応物等がよく知られ、その用途に応じて使い分けられている。
テトラブロモビスフェノールAを難燃剤として使用した場合、スチレン系樹脂の熱安定性及び耐熱性が大幅に低下するため、耐熱グレードとしての使用には限界があり、耐光性もあまりよくないため、耐光性を向上させるには耐光安定剤、紫外線吸収剤等を添加せねばならず、それらにより大幅なコストアップ、機械的特性及び難燃性の低下を引き起こす欠陥を有していた。ポリブロモジフェニルエーテルを難燃剤として使用した場合、スチレン系樹脂の耐熱性、機械的特性は良好であるが、耐光性が著しく悪く、紫外線に晒される用途のカラー着色品は変色するため専ら黒色に着色した材料としてのみ使用されていた。特許文献1には、臭素化ポリカーボネートオリゴマーを難燃剤として使用しているが、スチレン系樹脂の耐熱性、機械的特性及び耐光性は良好であるが、熱安定性に乏しいため成形加工時に成型品の表面にフラッシュ、シルバー不良を発生しやすく、成形加工メーカーで注意深い条件管理を行ってもフラッシュ、シルバーによる不良率を皆無にすることはできないという問題を抱えていた。ビストリブロモフェノキシエタンを難燃剤として使用したスチレン系樹脂の場合、耐光性は良好であるが、樹脂の耐熱性が低く、また成型品の表面に難燃剤がブリードアウトするという問題があった。
特許文献2には、臭素化エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂のトリブロモフェノール反応物等を難燃剤として使用し、特許文献3には、臭素化エポキシ樹脂のジブロモフェノール反応物をスチレン系樹脂に用いることが提案されているが、これらはOA機器、事務機器のハウジング材料として使用された場合、難燃性が劣り、耐熱性も低く、耐熱クリープ特性も低いため、使用される用途が制限されていた。特に分子量が1,000未満の場合、一般的に使用されている押出機による連続でのコンパウンド成形性が劣るという問題もあり、特殊な成形条件等にする必要があった。
特許文献4には、末端に水酸基、エポキシ基、トリブロムフェノール反応残基を有する難燃剤をスチレン系樹脂に配合することを提案されているが、重量平均分子量が1,500〜20,000の範囲にあるハロゲン含有芳香族ジオールを用いなければならなかった。
特開昭58−198543号公報 特開昭63−072749号公報 特開平01−240571号公報 特開昭61−211354号公報
本発明者はかかる状況に鑑み、難燃性、機械的特性(耐衝撃性)並びに、耐熱性、耐熱クリープ特性、耐光性、及び熱安定性が優れ、しかも一般的に使用されている押出機による連続でのコンパウンド成形性に問題がない難燃性スチレン系樹脂組成物を提供することを目的として鋭意研究を進めた結果、本発明に到達したものである。
本発明は、下記一般式(I)で表されるハロゲン含有芳香族ジオールのエーテル誘導体であって、軟化点が105℃〜150℃で、重量平均分子量が2,000〜10,000の範囲にある成分量が20重量%以下であることを特徴とするハロゲン含有難燃剤、および該難燃剤をスチレン系樹脂100重量部に対して、10〜50重量部、三酸化アンチモンを1〜20重量部配合してなることを特徴とする難燃性スチレン系樹脂組成物である。
Figure 0004376046
一般式(I)中、R、Rは水素または一般式(II)または一般式(III)から選ばれた同一または異種の基であり、Xは臭素あるいは塩素、iは1〜4の整数、nは自然数である。
Figure 0004376046
Figure 0004376046
はC1〜C8のアルキル基または一般式(IV)から選ばれた同一または異種の基である。
Figure 0004376046
Yは臭素あるいは塩素、jは1〜5の整数である。
本発明に於ける難燃性スチレン系樹脂組成物は一般的に使用されている連続式コンパウンド生産において、特殊な機械や特別な条件を必要とせず、容易に生産する事が可能でありながら、高度の難燃性を有し、1/16インチの厚みでUL規格のV−0材料に相当し、耐衝撃性や優れた流動性を有する為、OA機器、事務機器、家庭電化製品等のハウジング材料として極めて有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の式(1)で示されるハロゲン含有芳香族ジオールのエーテル誘導体は0≦n<500の繰り返し単位を有するものであっても良いが、分子量2,000〜10,000の成分量を20重量%以下にする必要があり、2,000〜10,000の分子量の範囲にあるn=3〜15の成分が20重量%以下の含有量であることが好ましい。同範囲の成分が20重量%を越える場合、耐熱性及び耐衝撃性が著しく悪化するため、成分量を20重量%以下、好ましくは10重量%以下にする必要がある。ここで述べる分子量とは、標準ポリスチレン換算によるゲルパーミネーション測定での重量平均分子量を示す。
また、分子量10,000以上の成分が増えると得られた難燃性スチレン樹脂組成物の流動性及び成形加工性が著しく悪化し、分子量2,000未満の成分が増えるとコンパウンド作成時、スチレン樹脂と難燃剤の分離が起こり、連続生産が困難となる。しかしながら、分子量が同じでも、末端基の構造によって軟化点に差が生じる。即ち、末端基がアルキル基の場合は軟化点を下げる事ができ、一般式(IV)の場合は軟化点を上げる事ができるため、軟化点を規定する事が必要である。
本発明に於いて用いられるハロゲン含有芳香族ジオールのエーテル誘導体の軟化点は105℃〜150℃の範囲にする必要がある。軟化点が105℃未満の場合、コンパウンド作成時、スチレン樹脂と難燃剤の分離が起こり、連続生産が困難となる。また、軟化点が150℃を越える場合、得られた難燃性スチレン樹脂組成物の流動性及び成形加工性が著しく悪化するため、軟化点は105℃〜150℃の範囲にする必要がある。より好ましい範囲は、110℃〜140℃である。
本発明に於いて用いられるハロゲン含有芳香族ジオールのエーテル誘導体は前記一般式(I)で表され、その具体例としては、含ハロゲンビスフェノールAと含ハロゲンビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び/または、アルキルグリシジルエーテル化合物の反応生成物、含ハロゲンビスフェノールAとエピクロルヒドリン、及び/または、アルキルグリシジルエーテル化合物を定法に従って反応せしめることによって得られる反応生成物が挙げられる。含ハロゲンビスフェノールAと含ハロゲンビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び/または、アルキルグリシジルエーテル化合物の反応比率を変化させることにより、末端を水酸基とすること、あるいはエポキシ基とすることができ、このようにして得られた反応生成物はいずれも好適な難燃剤となる。更に、末端エポキシ基にトリブロモフェノール、ペンタブロモフェノール等を反応させることによって得られるエーテル誘導体や、末端水酸基をアルキルグリシジルエーテル化合物と反応させることによって得られるエーテル誘導体も本発明の目的に適する難燃剤となる。
含ハロゲンビスフェノールAの具体例としては、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモビスフェノールA等がある。また、含ハロゲンビスフェノールA型エポキシ樹脂の具体例としては、テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ジブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル等がある。特に、好ましいハロゲン含有芳香族ジオールのエーテル誘導体は、テトラブロモビスフェノールAとテトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテルの反応生成物、テトラブロモビスフェノールAとエピクロリルヒドリンの反応生成物、及びこれらの反応生成物のうち末端にエポキシ基を有する化合物を、トリブロモフェノール、ペンタブロモフェノール等のハロゲン含有フェノールまたはメタノール等のアルコールと反応させることによって得られるエーテル誘導体である。
ハロゲン含有芳香族ジオールのエーテル誘導体の分子量範囲を制御するため、分子量が10,000以上の樹脂と分子量が2,000以下の樹脂を混合することも可能だが、この場合は、加熱溶融し均一な樹脂とし、所定の軟化点範囲にする必要がある。均一な混合が不完全な場合、コンパウンド作成時にスチレン樹脂と難燃剤の分離が起こり、連続生産が困難となる。
スチレン系樹脂100重量部に対するハロゲン含有芳香族ジオールのエーテル誘導体の配合比率は、10〜50重量部と広範囲に変化させることができるが、より好ましい配合比率は、15〜30重量部である。
本発明に於いて用いられるスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−α−メチルスチレン三元共重合体等が挙げられ、これらは夫々単独に、若しくは相溶性の良いポリマーにあっては、必要に応じて2種類以上の混合物として使用できる。
本発明に於いて用いられる三酸化アンチモンの配合量はスチレン系樹脂100重量部に対して1〜20重量部であり、20重量部を超えると機械特性が著しく低下する。特に好ましい配合比率は3〜15重量部である。また、三酸化アンチモンの平均粒子径は3μm以下であり、好ましくは1μm以下が効果的である。平均粒子径が3μmを超えると機械特性が著しく低下する。
本発明に於けるスチレン系樹脂、ハロゲン含有芳香族ジオールのエーテル誘導体及び三酸化アンチモンの配合方法は一般的なブレンド機器が使用でき、即ち、タンブラー、スーパーミキサー、フローター等による方法等がある。
本発明組成物には、必要に応じて通常のスチレン系樹脂に用いられる他種類の難燃助剤、例えば、塩素化ポリエチレンを添加することができる。又、スチレン系樹脂に一般的に配合されている各種添加剤、例えば充填剤、滑剤、補強剤、安定剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、色相改良剤等を添加してもよい。
以下、合成例、実施例、及び比較例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。また、例中の部及び%の表示はいずれも重量基準である。さらに本発明では以下の試験方法を使用した。
なお、ミキサーとは温度調節および攪拌速度を調整でき、なおかつ攪拌時の経時のトルク変化が記録できる装置であり、プラストミルメーターやブラベンダーを指す。(株式会社東洋精機製作所製ラボプラストミルやHAAKE BUCHLERInstruments Inc.,製レオコードシステム90、レオミックス600型ミキサーなど)
分子量
装置 :HLC−8120(東ソー社製)
カラム:SuperHZ2000×1本+SuperHZ3000×
1本+SuperHZ4000×1本(東ソー社製)
温度 :40℃
溶離液/流量:THF0.35ml/min
検出器:RI
較正法:標準ポリスチレンによる換算
(2)軟化点 :JIS K−7234、環球法。
(3)混錬性 :コンパウンド作成時、スチレン樹脂と難燃剤の分離が起きた場合は×で、問題なかった場合は○とした。
(4)難燃性 :米国UL規格のUL94に規定されている垂直燃焼性試験に準拠し、厚み1.6mmの試験片を評価した。
(5)耐衝撃性:JIS K−7211。
(6)流動性 :スパイラルフローを用いて200℃にて測定した。
合成例1
テトラブロモビスフェノールA(以下,TBAと略す)型エポキシ樹脂YDB−400(東都化成社製、エポキシ当量400g/eq、 臭素含有量49%)125gとTBA(デットシーブルミン社製、水酸基当量272g/eq、臭素含有量58.5%)75gを温度計、攪拌機、コンデンサーの付いた1リットルセパラブルフラスコに入れ、内部を窒素ガス置換してから、120℃に加熱溶融し、触媒としてトリフェニルホスフィン(以下、TPPと略す)0.08gを加え、180℃で4時間反応させた後、YDB−400(前述)を200g添加し1時間攪拌後、さらにYDB−400を250g、トリブロムフェノール(ブロモケム社製、水酸基当量331g/eq、臭素含有量72.5%)を350g、TPP(前述)を0.3g添加し、さらに3時間攪拌を行い、難燃剤aを得た。得られた難燃剤aの性状を表1に示す。
合成例2
TBA型フェノキシ樹脂YPB−43C(東都化成社製、臭素含有量53%、重量平均分子量50,000)300gとTBA(前述)523gとアルキルグリシジルエーテル、エピオールM(日本油脂社製、エポキシ当量92g/eq)177g、触媒としてTPP(前述)0.3gを合成例1と同様のフラスコに仕込み、160℃で5時間反応させて難燃剤bを得た。得られた難燃剤bの性状を表1に示す。
合成例3
YPB−43C(前述)100gとTB−60(東都化成社製、臭素含有量59%、重量平均分子量1,000)900gを合成例1と同様のフラスコに仕込み、180℃で3時間攪拌混合して難燃剤cを得た。得られた難燃剤cの性状を表1に示す。
合成例4
YPB−43C(前述)300gとTB−60(前述)700gを合成例1と同様のフラスコに仕込み、180℃で3時間攪拌混合して難燃剤dを得た。得られた難燃剤dの性状を表1に示す。
Figure 0004376046
実施例1
ハイインパクトポリスチレン、H650(東洋スチレン社製、以下HIPSと略す)100部に、合成例1で得られた難燃剤aを25部、三酸化アンチモンを6部、酸化チタン2部をヘンシェルミキサーで混合した後に、2軸押出機(池貝鉄工社製PCM−30型)にて、溶融混練し、コンパウンドを得た。得られたコンパウンドをさらに射出成形により試験片を作成した。
実施例2
HIPS(前述)を100部、合成例2で得られた難燃剤bを25部、三酸化アンチモンを6部、酸化チタン2部を実施例1と同様の操作で試験片を作成した。
実施例3
HIPS(前述)を100部、合成例2で得られた難燃剤cを25部、三酸化アンチモンを6部、酸化チタン2部を実施例1と同様の操作で試験片を作成した。
実施例4
HIPS(前述)を100部、合成例2で得られた難燃剤dを25部、三酸化アンチモンを6部、酸化チタン2部を実施例1と同様の操作で試験片を作成した。
比較例1
HIPS(前述)を100部、TB−60(前述)17.5部、YPB−43C(前述)7.5部、三酸化アンチモンを6部、酸化チタン2部を実施例1と同様の操作で試験片を作成した。
比較例2
HIPS(前述)を100部、TB−62(東都化成社製、臭素含有量59%重量平均分子量1,700)25部、三酸化アンチモンを6部、酸化チタン2部を実施例1と同様の操作で試験片を作成した。
比較例3
HIPS(前述)を100部、TB−60(前述)を25部、三酸化アンチモンを6部、酸化チタン2部を実施例1と同様の操作で試験片を作成した。
比較例4
HIPS(前述)を100部、実施例1で得られた難燃剤aを8部、三酸化アンチモンを3部、酸化チタン2部を実施例1と同様の操作で試験片を作成した。
実施例1〜4、比較例1〜4の物性を評価し、その結果を表−2に示した。
Figure 0004376046
合成例1で得られたハロゲン含有芳香族ジオールのエーテル誘導体のGPCチャートである。 合成例1で得られたハロゲン含有芳香族ジオールのエーテル誘導体のIRスペクトル図である。 合成例3で得られたハロゲン含有芳香族ジオールのエーテル誘導体のGPCチャートである。 合成例3で得られたハロゲン含有芳香族ジオールのエーテル誘導体のIRスペクトル図である。

Claims (2)

  1. 下記一般式(I)で表されるハロゲン含有芳香族ジオールのエーテル誘導体であって、軟化点が105℃〜150℃で、重量平均分子量が2,000〜10,000の範囲にある成分量が20重量%以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂用難燃剤。
    Figure 0004376046
    一般式(I)中、R、Rは水素または一般式(II)または一般式(III)から選ばれた同一または異種の基であり、Xは臭素あるいは塩素、iは1〜4の整数、nは0を含む自然数である。
    Figure 0004376046
    Figure 0004376046
    はC1〜C8のアルキル基または一般式(IV)から選ばれた同一または異種の基である。
    Figure 0004376046
    Yは臭素あるいは塩素、jは1〜5の整数である。
  2. スチレン系樹脂100重量部に対して、請求項1の熱可塑性樹脂用難燃剤を10〜50重量部、三酸化アンチモンを1〜20重量部配合してなることを特徴とする難燃性スチレン系樹脂組成物。
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