本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、運転者による操舵ハンドルの回動操作における違和感を抑制し、良好な操舵フィーリングが得られる伝達比可変操舵装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、操舵ハンドルの回動操作に伴って一体的に回転する操舵入力軸と、転舵輪を転舵する転舵機構に接続される転舵出力軸と、前記操舵入力軸の回転角に対する前記転舵出力軸の回転角の伝達比を変化させて前記転舵出力軸を回転させる伝達比可変アクチュエータと、前記運転者による操舵ハンドルの操作力を軽減するためのトルクを発生する操作力軽減アクチュエータと、前記伝達比可変アクチュエータおよび操作力軽減アクチュエータの作動を制御するアクチュエータ制御装置とを備えた伝達比可変操舵装置において、前記アクチュエータ制御装置を、前記操作力軽減アクチュエータの作動速度を算出する作動速度算出手段と、前記転舵出力軸の回転角速度を算出する転舵角速度算出手段と、前記作動速度算出手段によって算出された前記操作力軽減アクチュエータの作動速度と前記転舵角速度算出手段によって算出された前記転舵出力軸の回転角速度とを比較し、前記操作力軽減アクチュエータの作動速度未満の回転角速度で前記伝達比可変アクチュエータの作動を制御する伝達比可変アクチュエータ制御手段とから構成したことにある。この場合、前記転舵角速度算出手段は、前記操舵ハンドルの回動操作に伴う操舵入力軸の回転角速度と、前記伝達比可変アクチュエータによって回転される転舵出力軸の回転角速度とを合算した値を、前記転舵出力軸の回転角速度として算出するとよい。
上記のように構成した本発明においては、アクチュエータ制御装置が、操作力軽減アクチュエータの作動速度と転舵出力軸の回転角速度とを算出する。このとき、転舵出力軸の回転角速度は、例えば、操舵ハンドルの回動操作に伴う操舵入力軸の回転角速度と、伝達比可変アクチュエータによって回転される転舵出力軸の回転角速度とを合算した値を採用することができる。そして、アクチュエータ制御装置は、この算出した作動速度と回転角速度とを比較して、転舵出力軸の回転角速度が操作力軽減アクチュエータの作動速度未満となるように伝達比可変アクチュエータの作動を制御する。これにより、例えば、操作力軽減アクチュエータに対する負荷が増大してその作動速度が小さくなっても、転舵出力軸の回転角速度が作動速度よりも小さくなるように伝達比可変アクチュエータを作動制御することにより、操作力軽減アクチュエータの追従性を確保することができる。
すなわち、操舵入力軸と転舵出力軸とは伝達比可変アクチュエータを介して互いに接続されているため、操舵入力軸と転舵出力軸とは相対的に回転可能である。このため、運転者による操舵ハンドルの回動操作に伴う操舵入力軸の回転角速度が大きくて操作力軽減アクチュエータの追従性が悪化する場合には、伝達比可変アクチュエータを転舵出力軸の回転角速度が作動速度よりも小さくなるように作動させることによって、操舵入力軸の大きな回転角速度を吸収することができる。このように、操舵入力軸の大きな回転角速度を吸収することによって、操舵ハンドルに作用する反力を極めて緩やかに変化させることができる。これにより、操作力軽減アクチュエータの追従性を確保することができるとともに、操舵ハンドルに対して急激な反力が入力することを防止できる。したがって、運転者の知覚する引っ掛かり感を抑制することができて、良好な操舵フィーリングを得ることができる。
また、この場合、前記アクチュエータ制御装置は、さらに、前記操作力軽減アクチュエータに流れる電流値を検出する電流値検出手段と、前記電流値検出手段によって検出された電流値を用いて、前記操作力軽減アクチュエータが発生するトルク値を算出するトルク値算出手段と、前記トルク値算出手段によって算出されたトルク値を用いて、前記操作力軽減アクチュエータが前記算出されたトルク値を発生するための回転数を算出する回転数算出手段とを備え、前記作動速度算出手段は、前記回転数算出手段によって算出された回転数を用いて、前記操作力軽減アクチュエータの作動速度を算出するとよい。
これによれば、操作力軽減アクチュエータの負荷状況を極めて精度よく算出することができ、操作力軽減アクチュエータの作動速度を極めて正確に算出することができる。すなわち、電流値検出手段によって操作力軽減アクチュエータに流れる電流値を正確に検出することができるため、この検出電流値によって発生されるトルク値を正確に算出することができる。そして、この算出したトルク値から操作力軽減アクチュエータの回転数を算出、より詳しくは、操作力軽減アクチュエータの負荷状況を反映した回転数を算出することができる。したがって、この算出した回転数を用いて操作力軽減アクチュエータの作動速度を算出すれば、実際に負荷が掛かっている操作力軽減アクチュエータの作動速度を正確に算出することができる。これにより、転舵出力軸の回転角速度がこの算出された作動速度未満となるように伝達比可変アクチュエータを駆動させることによって、操作力軽減アクチュエータの追従性を確保することができるとともに、操舵ハンドルに対して急激な反力が入力することを防止できる。したがって、運転者の知覚する引っ掛かり感を抑制することができる。
また、本発明の他の特徴は、前記操作力軽減アクチュエータが前記転舵機構に対して前記運転者による操舵ハンドルの操作力を軽減するトルクを伝達する構成とされており、前記アクチュエータ制御装置は、さらに、前記転舵機構に対して作用する外力の値を推定するとともに、同推定した外力の値を前記操作力軽減アクチュエータが前記転舵機構に対して伝達するトルク値として決定するトルク値決定手段と、前記トルク値決定手段によって決定されたトルク値を用いて、前記操作力軽減アクチュエータが前記決定されたトルク値を発生するための回転数を算出する回転数算出手段とを備え、前記作動速度算出手段は、前記回転数算出手段によって算出された回転数を用いて、前記操作力軽減アクチュエータの作動速度を算出することにもある。この場合、前記アクチュエータ制御装置は、さらに、外気温を検出する外気温検出手段と、車両の車速を検出する車速検出手段とを備え、前記トルク値決定手段は、前記推定した転舵機構に対して作用する外力を、前記外気温検出手段により検出された外気温および車速検出手段により検出された車速を用いて補正するとよい。
これらによれば、外気温および車速を考慮して転舵機構に作用する外力を推定するとともに、この推定した外力を操作力軽減アクチュエータが伝達するトルク値とすることができる。すなわち、この場合には、操作力軽減アクチュエータが転舵機構にトルクを伝達するため、転舵機構に作用する外力が操作力軽減アクチュエータに対する負荷とみなすことができる。これにより、負荷が掛かっている状態での操作力軽減アクチュエータのトルク値を決定することができ、このトルク値から回転数を算出することによって、実際に負荷が掛かっている操作力軽減アクチュエータの作動速度を算出することができる。これにより、転舵出力軸の回転角速度がこの算出された作動速度未満となるように伝達比可変アクチュエータを駆動させることによって、操作力軽減アクチュエータの追従性を確保することができるとともに、操舵ハンドルに対して急激な反力が入力することを防止できる。したがって、運転者の知覚する引っ掛かり感を抑制することができる。また、電流値検出手段を設けることなく、負荷が掛かっている操作力軽減アクチュエータの作動速度を算出することができるため、装置の構成を簡略化することができる。
以下、本発明の第1実施形態に係る車両に搭載された伝達比可変操舵装置(以下、単に操舵装置という)について図面を用いて詳細に説明する。図1は、第1実施形態に係る操舵装置を概略的に示している。
この操舵装置は、転舵輪としての左右前輪FW1,FW2を転舵するために、運転者によって回動操作される操舵ハンドル11を備えている。操舵ハンドル11は、操舵入力軸12の上端に固定されており、操舵入力軸12の下端は、伝達比可変アクチュエータとしての可変ギア比アクチュエータ20に接続されている。可変ギア比アクチュエータ20は、電動モータ21(以下、この電動モータをVGRSモータ21という)および減速機22を備えており、操舵入力軸12の回動量(または回転角)に対して、減速機22に接続された転舵出力軸13の回動量(または回転角)を適宜変更するものである。
VGRSモータ21は、そのモータハウジングが操舵入力軸12と一体的に接続されており、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に従って一体的に回転するようになっている。また、VGRSモータ21の駆動シャフト21aは減速機22に接続されており、同VGRSモータ21の回転力が駆動シャフト21aを介して減速機22に伝達されるようになっている。減速機22は、所定のギア機構(例えば、遊星ギア機構など)によって構成されており、転舵出力軸13はこのギア機構に接続されている。これにより、減速機22は、VGRSモータ21の回転力が駆動シャフト21aを介して伝達されると、所定のギア機構によって駆動シャフト21aの回転を適宜減速して転舵出力軸13に回転を伝達することができる。したがって、可変ギア比アクチュエータ20は、VGRSモータ21の駆動シャフト21aを介して、操舵入力軸12と転舵出力軸13とを相対回転可能に連結しており、減速機22によって操舵入力軸12の回転量に対する転舵出力軸13の回転量の比、すなわち、操舵入力軸12から転舵出力軸13への回転の伝達比(ギア比)を適宜変更することができる。
また、操舵装置は、転舵出力軸13の下端に接続された転舵ギアユニット30を備えている。転舵ギアユニット30は、例えば、ラックアンドピニオン式を採用したギアユニットであり、転舵出力軸13の下端に一体的に組み付けられたピニオンギア31の回転がラックバー32に伝達されるようになっている。また、転舵ギアユニット30には、運転者によって操舵ハンドル11に入力される操舵力(操舵トルク)を軽減するための、操作力軽減アクチュエータとしての電動モータ33(以下、この電動モータをEPSモータ33という)が設けられており、EPSモータ33の発生するトルク(アシスト力)がラックバー32に伝達されるようになっている。この構成により、転舵出力軸13の回転力がピニオンギア31を介してラックバー32に伝達されるとともに、EPSモータ33のアシスト力がラックバー32に伝達される。これにより、ラックバー32は、ピニオンギア31からの回転力およびEPSモータ33のアシスト力によって軸線方向に変位する。したがって、ラックバー32の両端に接続された左右前輪FW1,FW2は、左右に転舵されるようになっている。
次に、上述した可変ギア比アクチュエータ20(詳しくは、VGRSモータ21)および転舵ギアユニット30(詳しくは、EPSモータ33)の作動を制御する、アクチュエータ制御装置としての電気制御装置40について説明する。電気制御装置40は、車速センサ41、操舵角センサ42、回転角センサ43、操舵トルクセンサ44およびモータ電流値検出センサ45を備えている。
車速センサ41は、車両の車速Vを検出して出力する。操舵角センサ42は、操舵ハンドル11の回動量すなわち操舵入力軸12の回転量を検出して操舵角Θとして出力する。回転角センサ43は、VGRSモータ21の駆動シャフト21aの回転量を検出して回転角θとして出力する。操舵トルクセンサ44は、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に起因して転舵出力軸13に作用するトルクを検出して操舵トルクTdとして出力する。モータ電流値検出センサ45は、EPSモータ33の両端電圧値と内蔵した抵抗の抵抗値に基づきEPSモータ33に流れる電流値を検出してモータ電流値IMOTRとして出力する。
また、電気制御装置40は、可変ギア比アクチュエータ20のVGRSモータ21の作動を制御する電子制御ユニット46(以下、この電子制御ユニットをVGRSECU46という)と、転舵ギアユニット30のEPSモータ33の作動を制御する電子制御ユニット47(以下、この電子制御ユニットをEPSECU47という)とを備えている。これらVGRSECU46およびEPSECU47は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするものである。これらのVGRSECU46およびEPSECU47は、例えば、車両内に構築された通信回線Aを介して、互いに通信可能とされている。
そして、VGRSECU46の入力側には、車速センサ41、操舵角センサ42および回転角センサ43が接続されており、EPSECU47の入力側には、操舵角センサ42、操舵トルクセンサ44およびモータ電流値検出センサ45が接続されている。これにより、VGRSECU46およびEPSECU47は、これら各センサ41〜45によって検出された検出値を用いて各種プログラムを実行して、VGRSモータ21およびEPSモータ33の作動を制御する。このため、VGRSECU46およびEPSECU47のそれぞれの出力側には、VGRSモータ21およびEPSモータ33を駆動するための駆動回路48,49が接続されている。
次に、上記のように構成した操舵装置の作動について説明する。図示しないイグニッションスイッチがオン状態とされると、VGRSECU46およびEPSECU47は、それぞれ、可変ギア比アクチュエータ20および転舵ギアユニット30の制御を開始する。VGRSECU46は、車速センサ41から現在の車速Vを入力するとともに、例えば、図2に示すようなマップを参照して、検出された車速Vに応じた伝達比Gを決定する。なお、伝達比Gは、車速Vの増大に伴って一様に小さくなるとともに、車速Vの減少に伴って一様に大きくなる特性を有している。この状態において、運転者によって操舵ハンドル11の回動操作が開始されると、操舵入力軸12、可変ギア比アクチュエータ20および転舵出力軸13も回転を開始する。この運転者の回動操作に伴い、VGRSECU46は、操舵角センサ42によって検出された操舵角Θを入力し、同入力した操舵角Θと決定した伝達比Gとを乗算することによって、操舵入力軸12の操舵角Θに対する転舵出力軸13の回転角δを計算する。
次に、VGRSECU46は、計算した転舵出力軸13の回転角δを実現するために必要なVGRSモータ21の作動量すなわち駆動シャフト21aの目標回転角θhを計算する。具体的に説明すると、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に伴って、操舵入力軸12と一体的に接続されたVGRSモータ21のモータハウジングが回転する。このとき、VGRSECU46は、モータハウジングの回転に応じて転舵出力軸13を回転させるため、駆動回路48を制御してVGRSモータ21を駆動させる。次に、VGRSECU46は、操舵入力軸12の操舵角Θを基準として、転舵出力軸13が回転角δを有するように目標回転角θhを計算する。上述したように、VGRSモータ21の駆動シャフト21aと転舵出力軸13とは可変ギア比アクチュエータ20の所定のギア機構によって連結されているため、転舵出力軸13の回転角δはαを所定の定数とすれば、δ=α×θhの関係が成立する。したがって、VGRSECU46は、駆動シャフト21aの目標回転角θhをθh=δ/αとして計算する。
そして、VGRSECU46は、目標回転角θhを計算すると、回転角センサ43によって検出される回転角θが目標回転角θhとなるまでオーバーシュートさせることなく駆動回路48を制御して、VGRSモータ21の駆動シャフト21aを回転させる。これにより、転舵出力軸13は、操舵入力軸12の操舵角Θに対して伝達比Gとなる回転角δに回転される。したがって、ラックバー32に噛み合うピニオンギア31は、運転者による操舵ハンドル11の回動操作によって操舵角Θと回転角δの和で表される回転角Δで回転するため、左右前輪FW1,FW2は、回転角Δと等しい転舵角Δで転舵される。
このように、左右前輪FW1,FW2が転舵角Δで転舵されることによって、運転者は車速に応じて良好な操舵フィーリングを得ることができる。すなわち、検出車速Vが増大すると伝達比Gが小さく決定されることから、操舵入力軸12の回転方向に対して転舵出力軸13は相対的に逆方向に回転される。この場合には、左右前輪FW1,FW2の転舵角Δが操舵角Θと回転角δの差で表されるため、運転者の操舵ハンドル11の回動操作に対して左右前輪FW1,FW2が緩やかに転舵されるようになる。これにより、運転者は容易に操舵ハンドル11を操作することができるとともに、高速走行時における車両の挙動を安定させることができる。
また、検出車速Vが減少すると伝達比Gが大きく決定されることから、操舵入力軸12の回転方向にて転舵出力軸13は相対的により多く回転される。この場合には、左右前輪FW1,FW2の転舵角Δが操舵角Θと回転角δの和で表されるため、運転者の操舵ハンドル11の回動操作に対して左右前輪FW1,FW2が速やかに転舵される。これにより、例えば、車庫入れなどにおいては、運転者による操舵ハンドル11の回動操作量を少なくすることができて、運転者の操作負担を軽減することができる。
一方、EPSECU47は、運転者によって操舵ハンドル11を介して入力された操舵トルクの大きさに応じて、この入力された操舵トルクを軽減すべくEPSモータ33を駆動させて、ラックバー32にアシスト力を伝達する。すなわち、EPSECU47は、操舵トルクセンサ44から操舵トルクTdを入力し、操舵トルクTdの大きさに応じてEPSモータ33の駆動させるための制御量を設定する。そして、EPSECU47は、設定した制御量に基づいて、オーバーシュートさせることなく駆動回路49を制御して、EPSモータ33を駆動させる。これにより、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に係る操舵トルクTdが軽減され、運転者の肉体的な負担が軽減される。
ところで、このEPSモータ33がトルクを発生して操舵トルクTdが軽減されるまでの時間は、ラックバー32の中立位置からのストローク位置によって遅れる傾向にある。すなわち、ラックバー32のストローク位置が中立位置から大きく離れている場合、言い換えれば、左右前輪FW1,FW2の転舵角が大きい場合には、左右前輪FW1,FW2から大きな外力(例えば、セルフアライメントトルクなど)が入力するため、ラックバー32を中立位置方向へ戻す力が大きくなる。このため、EPSモータ33の駆動に対する負荷が大きくなり、EPSモータ33が駆動を開始してから、ラックバー32に対して有効なアシスト力を伝達するまでに時間差が生じる。言い換えれば、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に対して、EPSモータ33の追従性が悪化する。
このように、EPSモータ33の追従性が悪化する状況では、適切なアシスト力がラックバー32に伝達されないため、転舵出力軸13の回転負荷が増大するとともに、可変ギア比アクチュエータ20を介して接続されている操舵入力軸12および同操舵入力軸12に一体的に組み付けられた操舵ハンドル11の回転負荷も増大する。これらの回転負荷の増大は、運転者によって操舵トルクの増大すなわち反力トルクの増大として知覚され、これが操舵ハンドル11の引っ掛かり感となる。そこで、VGRSECU46およびEPSECU47は、EPSモータ33の追従性の悪化、言い換えれば、運転者が知覚する引っ掛かり感を解消するため、互いに協調して、図3に示す追従性確保プログラムを実行する。以下、この追従性確保プログラムについて詳細に説明する。
この追従性確保プログラムは、図示しないイグニッションスイッチがオン状態とされると、EPSECU47がステップE10にてその実行を所定の短い時間間隔によって繰り返し実行する。そして、EPSECU47は、ステップE11にて、モータ電流値検出センサ45によって検出されたEPSモータ33のモータ電流値IMOTRを入力してステップE12に進む。
ステップE12においては、EPSECU47は、前記ステップE11にて入力したモータ電流値IMOTRを用いて、EPSモータ33が発生しているモータトルクTを算出する。具体的に説明すると、EPSECU47は、図4に示すように、モータ電流値IMOTRの増大に伴ってモータトルクTが一様に増大する特性の変換テーブルを用いて、モータトルクTを算出する。例えば、図4に示すように、前記ステップE11にて検出されたモータ電流値IMOTRが「I1」であれば、モータトルクTが「T1」として算出される。このように、EPSECU47は、EPSモータ33のモータ電流値IMOTRを用いてモータトルクTを算出すると、ステップE13に進む。
ステップE13においては、EPSECU47は、EPSモータ33が前記ステップE12にて算出したモータトルクTを発生するときの最大回転数Nを算出する。具体的に説明すると、EPSECU47は、図5に示すように、モータトルクTの増大に伴って最大回転数Nが一様に減少する特性の変換テーブルを用いて、最大回転数Nを算出する。例えば、図5に示すように、前記ステップE12にて算出されたモータトルクTが「T1」であれば、最大回転数Nが「N1」として算出される。このように、EPSECU47は、EPSモータ33がモータトルクTを発生させるときの最大回転数Nを算出すると、ステップE14に進む。そして、ステップE14にて、EPSECU47は、前記ステップE13にて算出した最大回転数NをVGRSECU46に対して出力する。このとき、EPSECU47は、通信回線Aを介して、VGRSECU46に最大回転数Nを出力する。このように、最大回転数Nを出力すると、EPSECU47は、ステップE15にてプログラムの実行を一旦終了する。
VGRSECU46においては、ステップV10にて、EPSECU47によって出力された最大回転数Nを、通信回線Aを介して入力する。続くステップV11にて、VGRSECU46は、操舵入力軸12の操舵角速度dΘ/dtと、VGRSモータ21の回転角速度dθ/dtとを算出する。すなわち、VGRSECU46は、操舵角センサ42から操舵入力軸12の操舵角Θを入力するとともに、回転角センサ43からVGRSモータ21の駆動シャフト21aの回転角θを入力する。次に、VGRSECU46は、入力した操舵角Θおよび回転角θをそれぞれ時間微分し、操舵角速度dΘ/dtおよび回転角速度dθ/dtを算出する。そして、VGRSECU46は、操舵角速度dΘ/dtおよび回転角速度dθ/dtを算出すると、ステップV12に進む。
ステップV12においては、VGRSECU46は、VGRSモータ21の回転角速度dθ/dtを制限する回転角速度制限値を設定する。以下、この回転角速度制限値の設定について詳細に説明する。上述したように、運転者が知覚する引っ掛かり感は、EPSモータ33の追従性が悪化したときに知覚される。このEPSモータ33の追従性の悪化は、転舵ギアユニット30を構成するラックバー32に対するピニオンギア31の回転角速度とラックバー32に対するEPSモータ33の作動速度とが一致しないときに発生する。より詳しくは、ピニオンギア31の回転角速度がEPSモータ33の作動速度よりも大きいときに、VEPSモータ33の追従性の悪化が発生する。
言い換えれば、ピニオンギア31の回転角速度がEPSモータ33の作動速度よりも常に小さくなる条件を満たせば、EPSモータ33の追従性を常に確保することができる。ここで、ラックバー32に対するピニオンギア31の回転角速度は、回転角速度dΔ/dtと表すことができ、ラックバー32に対するEPSモータ33の作動速度は、前記ステップV10にて入力したEPSモータ33の最大回転数NとEPSモータ33とラックバー32間の減速比βを用いることによって作動速度β×Nと表すことができる。このため、上記条件は、下記式1で表すことができる。
dΔ/dt<β×N …式1
ここで、ピニオンギア31の回転角Δは、上述したように、操舵入力軸12の操舵角Θと転舵出力軸13の回転角δの和で表されるため、前記式1は、下記式2のように表すことができる。
dΘ/dt+dδ/dt<β×N …式2
この式2を変形すれば、下記式3が成立する。
dδ/dt<β×N−dΘ/dt …式3
ところで、転舵出力軸13の回転角δは、VGRSモータ21の駆動シャフト21aが目標回転角θhまで回転することにより実現されることから、上述したように、δ=α×θhと表すことができる。ここで、αが定数であるため、α×θhを単に回転角θで表せば、前記式3は、下記式4に変形することができる。
dθ/dt<β×N−dΘ/dt …式4
したがって、VGRSECU46が、前記式4が成立するようにVGRSモータ21の駆動を制御する、すなわち、VGRSモータ21の回転角速度dθ/dtに対し、回転角速度制限値をβ×N−dΘ/dtに設定して駆動制御すれば、EPSモータ33の追従性を常に確保することができる。このように、VGRSECU46は、VGRSモータ21の回転角速度制限値を設定すると、ステップV13に進む。
ステップV13においては、VGRSECU46は、駆動回路48を制御して、前記ステップV12にて設定した回転角速度制限値よりも小さくなるように、VGRSモータ21を駆動させる。ここで、回転角速度制限値が負となる、すなわち、EPSモータ33の作動速度β×Nよりも操舵入力軸12の操舵角速度dΘ/dtが大きくなる場合がある。この場合には、VGRSECU46は、VGRSモータ21の回転方向を操舵入力軸12の回転方向と逆方向に回転させる。これにより、VGRSモータ21の回転角速度dθ/dtを回転角速度制限値よりも小さくすることができる。このように、VGRSECU46が、VGRSモータ21の回転角速度dθ/dtを回転角速度制限値よりも小さくなるように駆動制御することにより、EPSモータ33の追従性を常に確保することができる。そして、VGRSECU46は、続くステップV14にてプログラムの実行を一旦終了する。
以上の説明からも理解できるように、この第1実施形態によれば、VGRSECU46は、EPSモータ33の作動速度β×Nと転舵出力軸13すなわちピニオンギア31の回転角速度dΔ/dtとを算出する。このとき、転舵出力軸13すなわちピニオンギア31の回転角速度dΔ/dtは、操舵ハンドル11の回動操作に伴う操舵入力軸12の回転角速度dΘ/dtと、可変ギア比アクチュエータ20によって回転される転舵出力軸13の回転角速度dδ/dtとを合算した値とすることができる。さらに、転舵出力軸13の回転角δは、VGRSモータ21の駆動シャフト21aが目標回転角θhまで回転することにより実現されることから、回転角速度dθ/dtと表すことができる。そして、VGRSECU46は、前記式4が成立するようにVGRSモータ21の作動を制御する。これにより、例えば、EPSモータ33に対する負荷が増大してその作動速度β×Nが小さくなっても、転舵出力軸13すなわち駆動シャフト21aの回転角速度dθ/dtが作動速度β×Nよりも小さくなるようにVGRSモータ21を作動制御することにより、EPSモータ33の追従性を確保することができる。
すなわち、操舵入力軸12と転舵出力軸13とは可変ギア比アクチュエータ20を介して互いに接続されているため、操舵入力軸12と転舵出力軸13とは相対的に回転可能である。このため、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に伴う操舵入力軸12の回転角速度dΘ/dtが大きくてEPSモータ33の追従性が悪化する場合には、前記式4が成立するように、VGRSモータ21の回転角速度dθ/dtを制御することによって、操舵入力軸12の大きな回転角速度dΘ/dtを吸収することができる。このように、操舵入力軸12の大きな回転角速度dΘ/dtを吸収することによって、操舵ハンドル11に作用する反力を極めて緩やかに変化させることができる。これにより、EPSモータ33の追従性を確保することができるとともに、操舵ハンドル12に対して急激な反力が入力することを防止できる。したがって、運転者の知覚する引っ掛かり感を抑制することができて、良好な操舵フィーリングを得ることができる。
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。上記第1実施形態においては、モータ電流値検出センサ45を設けて、EPSモータ33に流れるモータ電流値IMOTRを直接検出するように実施した。これにより、例えば、路面摩擦力や外気温などの外乱の影響を小さくして、負荷の掛かったEPSモータ33の最大回転数Nを精度高く算出することができ、回転角速度制限値を設定することができる。しかしながら、算出される最大回転数Nは、モータ電流値検出センサ45の検出精度の影響を受けやすくなる。このため、モータ電流値検出センサ45を設けることなく、回転角速度制限値を設定してVGRSモータ21の回転角速度dθ/dtを制御することもできる。以下、この第2実施形態について、詳細に説明する。なお、この第2実施形態においては、上記第1実施形態におけるモータ電流値検出センサ45を省略し、新たに外気温センサ51を設けたこと以外、構成が同一であるため、上記第1実施形態と同一部位に同一の符号を付してその説明を省略する。
外気温センサ51は、外気に曝される転舵ギアユニット30の近傍に配置されて、同ユニット30の周辺雰囲気の気温を検出し、外気温TempとしてEPSECU47に出力する。そして、この第2実施形態においても、VGRSECU46とEPSECU47とは、互いに協調して、所定の短い時間間隔によって図7に示す追従性確保プログラムを実行する。
この第2実施形態に係る追従性確保プログラムは、上記第1実施形態の追従性確保プログラムにおけるステップE11およびステップE12が省略されて、代わりにステップE20,21,22が追加されている。すなわち、EPSECU47は、ステップE10にて追従性確保プログラムの実行を開始し、ステップE20にて、EPSECU47は、ラックバー32のストローク位置Lを算出する。具体的に説明すると、EPSECU47は、操舵角センサ42から操舵入力軸12の操舵角Θを入力するとともに、VGRSECU46によって計算された転舵出力軸13の回転角δを入力する。そして、EPSECU47は、これら入力した操舵角Θおよび回転角δを加算することにより、ピニオンギア31の回転角Δすなわち転舵角Δを算出する。この算出した転舵角Δを用いて、EPSECU47は、ピニオンギア31の回転量を計算し、同ピニオンギア31と噛み合っているラックバー32のストローク量を計算する。このように、ラックバー32のストローク量を計算することにより、EPSECU47は、ラックバー32の中立位置からのストローク位置Lを算出する。
EPSECU47は、前記ステップE20にてラックバー32のストローク位置Lを算出すると、ステップE21にて、外気温センサ51から外気温Tempを入力するとともに、車速センサ41から現在の車速Vを入力してステップE22に進む。ステップE22においては、EPSECU47は、ラックバー32に作用している軸力Fを推定して算出する。以下、この軸力Fの算出について、具体的に説明する。まず、EPSECU47は、軸力Fを推定して算出するにあたり、前記ステップE21にて入力した外気温Tempおよび車速Vを用いて、図8に示すように、ラックバー32のストローク位置Lに対する軸力Fを表すマップを適宜補正する。このマップの補正について説明する。
ラックバー32は、転舵ギアユニット30内に封入されたオイルに接して配置されている。一般的に、オイルの粘度特性は、オイルの温度によって変化し、温度が低い状態では粘度が高くなり、温度が高い状態では粘度は低くなる。この粘度特性によれば、転舵ギアユニット30周辺の外気温が低いときには封入されたオイルの粘度が高くなっており、この高粘度によりラックバー32が変位する際の抵抗は大きくなる。一方、転舵ギアユニット30周辺の外気温が高いときには封入されたオイルの粘度が低くなっており、ラックバー32が変位する際の抵抗は小さくなる。このため、ラックバー32に作用する軸力Fを推定するにあたっては、EPSECU47は、図8にて破線で示すように、入力した外気温Tempが低いときには、軸力Fが大きくなる方向にマップを補正する。また、EPSECU47は、入力した外気温Tempが高いときには、図8にて一点鎖線で示すように、軸力Fが小さくなる方向にマップを補正する。
また、ラックバー32は、その両端にて、左右前輪FW1,FW2と連結されている。このため、車速が大きくなると、左右前輪FW1,FW2から入力されるセルフアライメントトルクが大きくなり、車速が小さくなると、左右前輪FW1,FW2から入力されるセルフアライメントトルクが小さくなる。この入力されるセルフアライメントトルクも、ラックバー32が変位する際の抵抗となるため、EPSECU47は、図8にて破線で示すように、入力した車速Vが大きいときには、軸力Fが大きくなる方向にマップを補正する。また、EPSECU47は、入力した車速Vが小さいときには、図8にて一点鎖線で示すように、軸力Fが小さくなる方向にマップを補正する。
そして、EPSECU47は、上記のように補正したマップを参照することによって、前記ステップE20にて算出したストローク位置Lに対応するラックバー32の軸力Fを推定して算出する。このように、ラックバー32の軸力Fを算出すると、EPSECU47は、ステップE13に進む。ステップE13においては、EPSECU47は、上記第1実施形態と同様に、図5にてモータトルクTと最大回転数Nの関係を示したマップを参照して、EPSモータ33の最大回転数Nを算出する。このとき、EPSECU47は、前記ステップE22にて算出したラックバー32に作用する軸力FをEPSモータ33が発生しているモータトルクTとして最大回転数Nを算出する。これに関し、厳密には、ラックバー32に作用する軸力Fは、ピニオンギア31の回転力とEPSモータ33のアシスト力(モータトルクT)の和に等しくなる。しかし、ピニオンギア31の回転力に比して、EPSモータ33のモータトルクTが大きいため、ラックバー32に作用する軸力FをEPSモータ33のモータトルクTとして扱っても、差し支えない。
EPSECU47は、前記ステップE13にて、EPSモータ33の最大回転数Nを算出後、上記第1実施形態と同様に、ステップE14にて算出した最大回転数NをVGRSECU46に出力し、ステップE15にてプログラムの実行を一旦終了する。一方、VGRSECU46は、上記第1実施形態と全く同様に、ステップV10からステップV14の各処理を実行する。このため、これら各ステップの説明を省略する。
以上の説明からも理解できるように、この第2実施形態によっても、VGRSモータ21の回転角速度dθ/dtを制限することによって、EPSモータ33の追従性を良好に確保することができ、運転者が知覚する操舵ハンドル11の引っ掛かり感を解消することができる。また、上記第1実施形態に比して若干精度が劣るものの、モータ電流値検出センサ45を用いることなく実施可能であるため、簡易的な構成とすることができ、例えば、操舵装置の製造コストを低減することができる。
また、本発明の実施にあたっては、上記第1または第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記第1および第2実施形態においては、転舵ギアユニット30にEPSモータ33を設けてラックバー32にアシスト力を伝達するように構成して実施した。しかし、EPSモータ33の配置については、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に対してアシスト力を伝達可能であれば、例えば、アシスト力を転舵出力軸13に伝達するように配置するなど、いかなる態様で配置してもよい。この場合においても、アシスト力を伝達するEPSモータ33の負荷が増大しても、同EPSモータ33の追従性を悪化させることなく実施することができる。また、上記第1および第2実施形態においては、転舵ギアユニット30にラックアンドピニオン式を採用して実施したが、例えば、ボールねじ機構を採用して実施することもできる。また、可変ギア比アクチュエータ20をVGRSモータ21と減速機22とから構成して実施したが、例えば、VGRSモータ21にステップモータを採用して減速機22を省略することも可能である。
さらに、上記第1実施形態と第2実施形態とを切り替えて実施することも可能である。例えば、上記第1実施形態におけるモータ電流値検出センサ45が不調となった場合には、自動的にまたは手動により第2実施形態の制御に切り替えることにより、常に、VGRSモータ21の回転角速度dθ/dtを制限して駆動させることができる。これにより、運転者は、操舵ハンドル11の回動操作において引っ掛かり感を覚えることがなく、良好な操舵フィーリングを得ることができる。
FW1,FW2…前輪、11…操舵ハンドル、12…操舵入力軸、13…転舵出力軸、20…可変ギア比アクチュエータ、21…VGRSモータ、21a…駆動シャフト、22…減速機、30…転舵ギアユニット、31…ピニオンギア、32…ラックバー、33…EPSモータ、40…電気制御装置、41…車速センサ、42…操舵角センサ、43…回転角センサ、44…操舵トルクセンサ、45…モータ電流値検出センサ、46…VGRSECU、47…EPSECU、48,49…駆動回路、51…外気温センサ