JP4374562B2 - キシロースの回収 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、バイオマス水解物から、例えばパルピング加工から得られる古液から、典型的にはスルフィットパルピング加工から得られる古液からキシロースを回収するための新規方法に関する。
【0002】
キシロースは、甘味、芳香及び調味料工業の原料及び特にキシリトールの生成における出発物質として価値がある。キシロースは、キシラン含有ヘミセルロースの加水分解中に、例えば、バイオマスの直接酸加水分解中に、(例えば、スチーム又は酢酸を用いた)プレ加水分解によってバイオマスから得られたプレ水解物の酵素又は酸加水分解中に、及びスルフィットパルピング加工中に形成される。キシランに富んだ植物材料は、様々な種類の木、特に樺、ポプラ及びブナのような硬木の木材、穀物の様々な部分(例えば、わら及び穀、特にトウモロコシ及び大麦の穀、及びトウモロコシの穂軸、及びトウモロコシの繊維。)、バガス、ココナッツの殻、綿の種子の殻等を含む。
【0003】
キシロースは、例えば、様々な源泉及び純度のキシロース含有溶液から、結晶化によって回収される。キシロースに加えて、古スルフィットパルピング液は、リグノスルホネート、スルフィット蒸煮化学薬品、キシロン酸、オリゴ類、二糖類及び単糖類(所望のキシロース以外)及び、酢酸及びウロン酸のようなカルボン酸を典型的な成分として含む。
【0004】
結晶化前に、原則として、セルロース材料の加水分解の結果として得られるキシロース含有溶液を、機械的不純物を除去するための濾過、限外濾過、イオン交換、脱色、イオン排除又はクロマトグラフィーもしくはそれらの組合せのような様々な方法によって、必要な純度まで精製する必要がある。
【0005】
キシロースは、パルプ工業において、例えば硬木原料のスルフィット蒸煮中に多量に生じる。このような蒸煮液からのキシロース分離は、例えばU.S特許4,631,129(スオメン ソケリ オイ)に記載されている。この方法において、スルフィット古液は、二段階のクロマトグラフィー分離を受けさせられ、本質的に精製された糖(例えば、キシロース)及びリグノスルホネートの画分を形成する。第一のクロマトグラフィー画分は、二価の金属塩形態、典型的にはカルシウム塩形態の樹脂を使用して行なわれ、そして第二のクロマトグラフィー画分は、ナトリウム塩形態のような、一価の金属塩形態の樹脂を使用して行なわれる。
【0006】
US特許5,637,225(キシロフィン オイ)は、少なくとも二つのクロマトグラフィー区画充填物質ベッドを含む逐次クロマトグラフィー擬似移動ベッド系によるスルフィット蒸煮液の画分のための方法を記載しており、そしてその方法では、単糖類に富んだ少なくとも一つの画分及びリグノスルホネートに富んだ一つの画分が得られる。区画充填物質ベッド中の材料は、典型的にはCa2+形態の強酸陽イオン交換樹脂である。
【0007】
US特許5,730,877(キシロフィン オイ)は、少なくとも異なるイオン形態の二つのクロマトグラフィー区画充填ベッドを含む系を使用するクロマトグラフィー分離法によって、スルフィット蒸煮液のような溶液を画分するための方法を開示している。該方法における第一ループの区画充填ベッド物質は、基本的には、Ca2+形態のような二価の陽イオン形態であり、そして最終ループの区画充填ベッド物質は、基本的には、Na+形態のような一価の陽イオン形態である。
【0008】
WO96/27028(キシロフィン オイ)は、比較的に低いキシロース純度、典型的には溶解した乾燥固体中に30ないし60重量%のキシロースを有する溶液から結晶化及び/又は沈殿によるキシロースの回収方法を開示している。処理されるキシロース溶液は、例えば、スルフィットパルピング液からクロマトグラフィーによって得られる濃縮物であり得る。
【0009】
古スルフィットパルピング液を精製するために、限外濾過のような膜技術を使用することも又既知である(例えば、Papermaking Science and Technology,3巻、Forest Products Chemistry,86頁,ジョハン グリッセン、ハヌー パウラプロ及びパー ステニウス編、ヘルシンキ技術大学,フィンランド製紙技術者協会及びTAPPIが共同出版、グメルス(Gummerus)、ユバスキラ、フィンランド、2000年)。従って、高モル質量リグノスルホネートは、限外濾過によって、キシロースのような低モル質量成分から分離され得る。
【0010】
このように、スルフィット古液中に存在するリグノスルホネートのようなモル質量が大きい化合物を、キシロースのようなモル質量が小さい化合物から分離するために限外濾過を使用することが既知であり、それによって、モル質量が大きい化合物(リグノスルホネート)は未透過物中に分離され、そしてモル質量が小さい化合物(キシロース)は透過物中に濃縮される。更に、例えば塩からのキシロースの濃縮は、例えばイオン排除を用いるクロマトグラフィー法により可能である。
【0011】
ナノ濾過は、逆浸透及び限外濾過の間で行われる、比較的に新しい圧力駆動膜濾過法である。ナノ濾過は、典型的に、300g/molより大きいモル質量を有する大きい有機分子を保持する。最も重要なナノ濾過膜は、界面重合によって作成された複合膜である。ポリエーテルスルホン膜、スルホン化ポリエーテルスルホン膜、ポリエステル膜、ポリスルホン膜、芳香族ポリアミド膜、ポリビニルアルコール膜及びポリピペラジン膜が、広く使用されるナノ濾過膜の例である。無機及びセラミック膜もまた、ナノ濾過に使用され得る。
【0012】
二糖類及びそれ以上の多糖類から、グルコース及びマンノースのような単糖類を分離するためにナノ濾過を使用することは既知である。単糖類、二糖類及びそれ以上の多糖類を含む出発混合物は、例えば、澱粉水解物であり得る。
【0013】
U.S.特許5,869,297(アーチャー ダニエルス ミッドランド 株式会社(Archer Daniels Midland Co.)は、ブドウ糖を生成するためのナノ濾過法を開示している。この方法は、二糖類及び三糖類のような多糖類を、不純物として含むブドウ糖組成物をナノ濾過することを含む。ブドウ糖の固体含有量が少なくとも99%のブドウ糖組成物が得られる。架橋芳香族ポリアミド膜が、ナノ濾過膜として使用されてきた。
【0014】
WO99/28490(ノボ ノルディスク AS(Novo Nordisk AS))は、糖類の酵素反応のための方法、及び酵素で処理された、単糖類、二糖類、三糖類及びそれ以上の多糖類を含む糖類溶液のナノ濾過のための方法を開示している。単糖類は、透過物中に得られ、一方、二糖類及びそれ以上の多糖類を含むオリゴ糖のシロップは未透過物中に得られる。二糖類及びそれ以上の多糖類を含む未透過物が、回収される。100g/mol以下の遮断サイズの、薄いフィルム複合ポリスルホン膜が、例えばナノ濾過膜として使用されてきた。
【0015】
U.S.特許4,511,654(UOP株式会社)は、アミログルコシダーゼ及びβ−アミラーゼから選択された酵素で、グルコース/マルトースを含む供給原料を処理し、部分的な加水分解反応混合物を形成させ、結果として生じた部分的な加水分解反応混合物を、限外濾過膜を通過させ、未透過物及び透過物を形成させ、未透過物を酵素処理工程に再循環させ、そして高いグルコース又はマルトースシロップを含む透過物を回収することによる、多くのグルコース又はマルトースシロップの生成方法に関する。
【0016】
U.S.特許6,126,754(ロクエッテ フレレス(Roquette Freres)は、多くのブドウ糖含有量を有する澱粉水解物の製造方法に関する。この方法では、澱粉ミルクに酵素処理を受けさせ、原料糖類化水解物を得る。このようにして得られた水解物は、続いて、高ブドウ糖含有量を有する所望の澱粉水解物をナノ濾過透過物として回収するためにナノ濾過を受けさせられる。
【0017】
膜技術による、例えばグルコースのような他の単糖類からのキシロースの分離は、従来技術では開示されていない。
【0018】
本発明の目的は、パルピング加工から得られる古液のような、バイオマス水解物からのキシロースの回収方法を与えることである。本発明の請求項に記載された方法は、ナノ濾過の使用に基づく。
【0019】
本発明に従って、複雑及び厄介な、いくつかのクロマトグラフィー又はイオン交換工程は、さほど複雑でないナノ濾過膜技術に、完全に又は部分的に置換され得る。本発明の方法は、キシロースに富み、かつ古スルフィットパルピング液中に存在するような、バイオマス水解物の一般的な不純物が存在しないキシロース溶液を与える。
【0020】
本発明のより詳細な説明を以下の記載及び請求項で与える。
【0021】
本発明の好ましい態様の詳細な記載を以下に示す。
【0022】
本発明は、バイオマス水解物又はその一部からキシロース溶液を生成する方法に関する。本発明の方法は、前記バイオマス水解物にナノ濾過を受けさせ、キシロースに富んだ溶液をナノ濾過透過物として回収することを特徴とする。
【0023】
本発明において、有用なバイオマス水解物は、いかなるバイオマス、典型的にはキシラン含有植物材料の加水分解から得られ得る。バイオマス水解物は、バイオマスの直接酸加水分解から、(例えば、スチーム又は酢酸を用いた)プレ加水分解によってバイオマスから得られたプレ水解物の酵素又は酸加水分解から、及びスルフィットパルピング加工から得られ得る。キシラン含有植物材料は、様々な種類の木、特に樺、ポプラ及びブナのような硬木の木材、穀物の様々な部分(例えば、わら及び穀、特にトウモロコシ及び大麦の穀、及びトウモロコシの穂軸、及びトウモロコシの繊維。)、バガス、ココナッツの殻、綿の種子の殻等を含む。
【0024】
本発明の方法において、出発物質として使用されるバイオマス水解物は、バイオマスベースの材料の加水分解から得られたバイオマス水解物の一部でもあり得る。前記バイオマス水解物の一部は、例えば限外濾過又はクロマトグラフィーによって得られる、プレ精製された水解物であり得る。
【0025】
本発明の方法では、(乾燥物質含有量に基づいて、)出発バイオマス水解物の1.1倍以上、好ましくは1.5倍以上、最も好ましくは2.5倍以上のキシロース含有量を有するキシロース溶液が、例えば、キシロース含有量及びバイオマス水解物のpH及び使用されるナノ濾過膜に依存して得られる。典型的には、(乾燥物質含有量に基づいて、)出発バイオマス水解物の1.5ないし2.5倍以上のキシロース含有量を有するキシロース溶液が、例えば、キシロース含有量及びバイオマス水解物のpH及び使用されるナノ濾過膜に依存して得られる。
【0026】
本発明に従ったキシロース回収のために使用されるバイオマス水解物は、典型的には、パルピング加工から得られた古液である。本発明において、有用な典型的な古液は、キシロース含有古フルフィットパルピング液であり、そしてそれは好ましくは、酸性のスルフィットパルピングから得られる。古液は、スルフィットパルピングから直接得られ得る。それは、濃縮されたスルフィットパルピング液又はスルフィット蒸煮から得られる側逃げ液でもあり得る。それは又、スルフィットパルピング液からクロマトグラフィーによって得られるキシロース含有画分、又はスルフィットパルピング液の限外濾過によって得られる透過物でもあり得る。更に、中性の蒸煮から得られる後−加水分解古液が適している。
【0027】
本発明において、有用な古液は、好ましくは、硬木パルピングから得られる。軟木パルピングから得られる古液も又適しており、好ましくは、ヘキソースが、例えば醗酵によって除去された後のものが適している。
【0028】
本発明において、処理される古液はまた、バイオマス、典型的にはセルロース材料の酸を用いた消化又は加水分解から得られるあらゆる他の液でもあり得る。このような水解物は、セルロース材料を例えば塩酸、硫酸又は二酸化硫黄のような無機酸を用いて処理すること、又は蟻酸もしくは酢酸のような有機酸を用いて処理することによって得られ得る。エタノールベースのパルピングのような溶媒ベースのパルピングから得られる古液もまた使用され得る。
【0029】
出発物質として使用されるバイオマス水解物は、一回又はそれ以上の前処理工程を受けさせられ得る。前処理工程は、典型的に、イオン交換、限外濾過、クロマトグラフィー、濃縮、pH調節、濾過、希釈、結晶化及びそれらの組合せから選択される。
【0030】
古硬木スルフィットパルピング液は又、キシロース含有量に基づいて、典型的には、10ないし30%の量の他の単糖類も含む。前記他の単糖類は、例えば、グルコース、ガラクトース、ラムノース、アラビノース及びマンノースを含む。キシロース及びアラビノースは、ペントース糖であるのに対し、グルコース、ガラクトース、ラムノース及びマンノースは、ヘキソース糖である。更に、古硬木スルフィットパルピング液は、典型的には、パルピング化学薬品の残余及びパルピング化学薬品の反応生成物、リグノスルホネート、オリゴ糖、二糖類、キシロン酸、ウロン酸、カルシウム及びマグネシウム陽イオンのような金属陽イオン及び、スルフェート及びスルフィットイオンを含む。出発物質として使用されるバイオマス水解物も又、バイオマスの加水分解に使用した酸の残余を含む。
【0031】
出発バイオマス水解物の乾燥物質含有量、例えば古液の乾燥物質含有量は、典型的には3ないし50重量%、好ましくは8ないし25重量%である。
【0032】
ナノ濾過供給物として使用される前記出発バイオマス水解物の乾燥物質含有量は、30重量%以下である。
【0033】
出発バイオマス水解物のキシロース含有量は、乾燥物質含有量に基づいて5ないし95重量%、好ましくは15ないし55重量%、より好ましくは15ないし40重量%、及び特に8ないし27重量%であり得る。
【0034】
処理される古液のキシロース含有量は、乾燥物質含有量に基づいて、典型的には10ないし40重量%である。硬木スルフィットパルピングから直接得られる古液は、乾燥物質含有量に基づいて、典型的な10ないし20%のキシロース含有量を有する。
【0035】
本発明の方法は、一回又はそれ以上の前処理工程をも含む。ナノ濾過前の前処理は、典型的には、イオン交換、限外濾過、クロマトグラフィー、濃縮、pH調節、濾過、希釈、結晶化及びそれらの組合せから選択される。従って出発液は、ナノ濾過前に、例えば限外濾過又はクロマトグラフィーによって、好ましくは前処理され得る。更に、固体物質を除去するために、プレ濾過工程が、ナノ濾過の前に行なわれ得る。出発液の前処理は、例えば、蒸発及び中和による濃縮も含む。前処理はまた、結晶化をも含み、そのため、出発液は、例えばキシロースの結晶化から得られる母液でもあり得る。
【0036】
ナノ濾過は、典型的には、1ないし7、好ましくは3ないし6.5、最も好ましくは5ないし6.5のpHで行なわれる。pHは、出発バイオマス水解物の組成及びナノ濾過に使用される膜、及び回収される糖又は成分の安定性に依存している。必要ならば、古液のpHを、ナノ濾過前に、例えばCa(OH)2又はMgOのような、好ましくはパルピング工程で使用したのと同じ試薬を用いて所望の値に調整する。
【0037】
ナノ濾過は、典型的には、10ないし50バール、好ましくは15ないし35バールの圧力で行なわれる。典型的なナノ濾過温度は、5ないし95℃、好ましくは30ないし60℃である。ナノ濾過は、典型的には、10ないし100リットル/m2hの流動で行なわれる。
【0038】
本発明で使用されるナノ濾過膜は、100ないし2500g/mol、好ましくは、150ないし1000g/mol、最も好ましくは150ないし500g/molの遮断サイズの高分子及び無機膜から選択され得る。
【0039】
本発明において有用な、典型的な高分子ナノ濾過膜は、例えば、ポリエーテルスルホン膜、スルホン化ポリエーテルスルホン膜、ポリエステル膜、ポリスルホン膜、芳香族ポリアミド膜、ポリビニルアルコール膜及びポリピペラジン膜及びそれらの組合せを含む。セルロースアセテート膜もまた、本発明のナノ濾過膜として有用である。
【0040】
典型的な無機膜は、例えば、ZrO2及びAl23膜を含む。
【0041】
好ましいナノ濾過膜は、スルホン化ポリスルホン膜、及びポリピペラジン膜から選択される。例えば、特に有用な膜は、デザル−5DK(Desal−5 DK )ナノ濾過膜(製造者 オスモニクス(Osmonics))及びNF−200ナノ濾過膜(製造者 ダウ ドイツ(Dow Deutschiand))である。
【0042】
本発明において有用なナノ濾過膜は、陰又は陽電荷を有し得る。膜は、イオン膜であり得り、言い換えれば、それらは、陽イオン又は陰イオンの基を含み得るが、中性膜でも有用である。ナノ濾過膜は、疎水性及び親水性膜から選択され得る。
【0043】
ナノ濾過膜の典型的な形状は、フラットシート形状である。膜形状は、例えばチューブ、スパイラル膜及び中空繊維からも選択され得る。振動膜及び回転膜のような“高剪断”膜もまた使用され得る。
【0044】
ナノ濾過工程の前に、ナノ濾過膜は、例えば、アルカリ性洗浄剤又はエタノールで前処理され得る。
【0045】
典型的なナノ濾過操作において、古液等の処理される液は、上記温度及び圧力条件において、ナノ濾過膜を通して供給される。液は、このようにして、キシロースを含む低モル質量画分(透過物)及び古液の望ましくない成分を含む高モル質量(未透過物)に画分化される。
【0046】
本発明において有用なナノ濾過装置は、未透過物及び透過物区画に供給物を分離する少なくとも一つのナノ濾過膜元素を含む。ナノ濾過装置は、典型的には、ポンプ及びバルブ及び流量及び圧力計のような圧力及び流量を調節する機器をも含む。装置はまた、並列又は直列に配置された、ナノ濾過膜要素のいくつかの異なる組み合わせを含む。
【0047】
透過物の流動は、圧力に従って変化する。一般的に、標準操作範囲において、圧力が高ければ高いほど、流動も高くなる。流動はまた、温度によっても変化する。操作温度の増加は、流動を増加させる。しかしながら、より高い温度及びより高い圧力の使用は、膜破断を増加させる傾向がある。より高い温度及び圧力及びより高いpH範囲は、高分子膜よりも無機膜において使用でき得る。
【0048】
本発明に従ったナノ濾過は、バッチ式又は連続式で行なわれ得る。ナノ濾過工程は、一回又は数回繰返され得る。透過物及び/又は未透過物が供給容器へ戻る再循環もまた行われ得る(総再循環式濾過)。
【0049】
ナノ濾過後、キシロースは、例えば結晶化によって、透過物から回収され得る。ナノ濾過した溶液は、更なる精製及び分離工程なしで、このような結晶化に使用され得る。所望により、ナノ濾過したキシロース含有液は、例えばクロマトグラフィー、イオン交換、例えば蒸発もしくは逆浸透による濃縮、又は脱色による更なる精製を受けさせられ得る。キシロースはまた、キシリトールを得るために、例えば、触媒水素添加による還元も受けさせられ得る。
【0050】
前記方法は又、リグノスルホネート、オリゴ糖、ヘキソース及び二価の塩に富んだ溶液を、未透過物として回収する更なる工程を含む。
【0051】
本発明に従って、キシロースに富み、そして透過物として回収された溶液は、アラビノースのような他のペントース糖をも含む。未透過物として回収された前記ヘキソースは、グルコース、ガラクトース、ラムノース及びマンノースの一種又はそれ以上を含み得る。
【0052】
本発明はまた、古液等のバイオマス水解物の乾燥物質含有量を調節することによる、透過物のキシロース含有量の調節方法を与える。
【0053】
更に、本発明は、このようにして得られたキシロース溶液の、キシリトールの調製のための使用に関する。キシリトールは、得られたキシロース生成物を、例えば、触媒水素添加によって還元することにより得られる。
【0054】
本発明の好ましい態様は、以下の実施例によってより詳細に記載され得るが、しかしそれは、本発明の範囲を制限するようには構成されていない。
【0055】
実施例中及び明細書及び請求項を通して、以下の定義が使用されている。:
DSは、カールフィッシャー(Karl Fischer)滴定によって測定される乾燥物質含有量を示し、重量%で表される。
RDSは、乾燥物質含有屈折率を示し、重量%で表される。
流動は、膜表面1平方メートル当りで計算される、1時間の間にナノ濾過膜を通して透過する溶液の量(リットル)L/(m2h)を示す。
ファウリングは、ナノ濾過前及び後に測定された純水の流動値のパーセンテージ差を示す。
ファウリング(%)=[(PWFb−PWFa)/PWFb]×100
(式中、PWFbは、キシロース溶液のナノ濾過前の純水の流動を表し、PWFaは、同じ圧力下におけるキシロース溶液のナノ濾過後の純水の流動を表す。)未透過率は、測定した化合物の膜に残った割合を示す。未透過値が高ければ高いほど、膜を通って移動する化合物の量も少なくなる。
未透過率(%)=[(供給物−透過物)/供給物]×100
(式中、“供給物”は、供給溶液中の化合物の濃度を示し(例えば、g/Lを表す。)、“透過物”は、透過溶液中の化合物の濃度を示す(例えば、g/Lを表す。))。
(炭水化物の決定のための)HPLCは、液体クロマトグラフィーを示す。炭水化物(単糖類)は、Pb2+形態イオン交換カラム及びRI(屈折率)検出器を備えたHPLCを使用して測定し、二糖類の場合は、Na+形態イオン交換カラムを備えたHPLCを使用して測定し、キシロン酸の場合には、陰イオン交換カラム及びPED検出器を備えたHPLCを使用して測定した。
(決定された場合)色は、pH5において、適合したICUMSA法によって測定された。
以下の膜が実施例中で使用された。:
デザル−5DK(Desal−5 DK)(ポリエステル層、ポリスルホン層及び2つの市販品の層から成る4層の膜で、150ないし300g/molの遮断サイズを有し、5.4L/(m2hバール)の透過性(25℃)及び98%(2g/L)のMgSO4未透過率、製造業者 オスモニクス(Osmonics))、
デザル−5DL(Desal−5 DL)(ポリエステル層、ポリスルホン層及び2つの市販品の層から成る4層の膜で、150ないし300g/molの遮断サイズを有し、7.6L/(m2hバール)の透過性(25℃)、96%(2g/L)のMgSO4未透過率、製造業者 オスモニクス(Osmonics))、
NTR−7450(500ないし1000g/molの遮断サイズのスルホン化ポリエーテルスルホン膜で、9.4L/(m2hバール)の透過性(25℃)、51%(5g/L)のNaCl未透過率、製造業者 ニットー デンコー(Nitto Denko))及び、
NF−200(200g/molの遮断サイズのポリピペラジン膜で、7ないし8L/(m2hバール)の透過性(25℃)、70%のNaCl未透過率、製造者 ダウ ドイツ(Dow Deutschiand))。
【0056】
実施例I.
様々なpHにおいて、様々な膜を用いた古スルフィットパルピング液のナノ濾過
この実施例では、ナノ濾過の実施における膜及びpHの効果を説明する(濾過C1、C3、C6及びC8)。処理される液は、ブナ材パルピングから得られたMg塩基スルフィット古パルピング液の結晶化流出希釈液であり、そしてそれはMg2+形態のイオン交換樹脂を使用したクロマトグラフィーによって精製された。溶液のpHは、所望の値(表1参照)に、MgOを用いて調整された。ナノ濾過前に、液は、希釈(濾過C1及びC3。)によって、濾紙を通した濾過(濾過C6)によって、又は濾紙を通した濾過(濾過C7及びC8)とMgO混合を組合せて前処理された。
【0057】
バッチ式ナノ濾過は、0.0046m2の膜面積を有する長方形のクロスフローフラットシートモジュールからなる実験室用ナノ濾過装置を使用して行われた。透過物及び未透過物の両方が、供給容器へ戻る再循環を行われた(総再循環式濾過)。供給量は、20リットルであった。濾過の間中、クロスフロー流速は6m/秒であり、かつ圧力は18バールであった。温度は、40℃に保続した。
【0058】
表1は、総再循環式濾過の結果を示す。表1の流動値は、濾過の3時間後に測定された。表1は、供給物中の乾燥物質含有量(DS)(%)、(乾燥物質含有量に基づいた)供給物中及び透過物中のキシロース含有量、18バールの圧力における透過流動及びファウリングによって引き起こされる流動の減少を示している。膜は、デザル−5DK(Desal−5 DK)及びNTR−7450が使用された。
【表1】
Figure 0004374562
【0059】
表1の結果は、ナノ濾過が、供給物の1.5ないし2.5倍のキシロース濃度を与えることを示している。供給物のpHが高い場合、透過物中のRDS中のキシロース含有量は高い。透過物中のRDS中のキシロース含有量は、例えばpHが5.9ないし6.1で有る場合に高い。更に、流動は、より高いpH値において2倍に改善された。高いpHにおいてデザル−5DK(Desal−5 DK)膜は、最良の結果を与えた。
【0060】
実施例II
様々な温度においてのナノ濾過
温度の効果を、実施例1で用いたのと同様の装置及び同様の古液溶液を使用して研究した。ナノ濾過間の温度は、25℃から55℃まで上げた。膜は、デザル−5DK(Desal−5 DK)を使用し、そしてナノ濾過条件は以下の通りである:pH3.4、圧力16バール、クロスフロー流速6m/秒、DS7.8%。実験の間中、供給濃度及び圧力は一定に保ち続けた。
【0061】
表IIは、乾燥物質含有量に基づいた、供給物中及び透過物中のキシロース含有量を示す(透過値は、二つの膜の平均値である。)。
【表2】
Figure 0004374562
【0062】
表2の結果は、温度が高ければ高いほど、より高い濃度のキシロースが得られ得ることを示している。
【0063】
実施例III
(A)限外濾過を用いた前処理
濃度式限外濾過DU1及びDU2を、RE濾過装置(回転−強化濾過装置)を使用して行った。この濾過装置において、濾過の間中、ブレードは、濃度分極を最小化するために膜表面の近くで回転する。濾過装置は、手作りの直交回転式濾過装置である。回転速度は、700rpmである。濾過DU1において、膜は、C5F UF(5000g/molの遮断サイズの再生セルロース膜、製造業者 ヘキスト/セルガード(Hoechst/Celgard))を使用した。濾過DU2において、膜は、デザル−G10(Desal−G10)(2500g/molの遮断サイズの薄いフィルム膜、製造者 オスモニクス/デザル(Osmonics/Desal))を使用した。
【0064】
濃度式濾過は、ブナ材パルピングから得られたMg塩基スルフィット古パルピング液を使用して行なった。濾過は、温度35℃、及びpH3.6において行なった。結果を表IIIaに示す。
【表3】
Figure 0004374562
【0065】
(B)ナノ濾過
透過物が回収される1日実験室スケールの実験を実施例1と同様の装置を用いて行なった(濾過DN1及びDN2)。処理される液は、ブナ材パルピングから得られたMg塩基スルフィット古パルピング液である。
【0066】
濾過DN1において、限外濾過された古液(C5F膜を用いたDU1)が供給溶液として使用された。溶液のpHは、MgOを用いて、4.5まで調整され、そしてその液は、ナノ濾過の前に濾紙を通してプレ濾過された。ナノ濾過は、圧力19バール及び温度40℃において行なわれた。
【0067】
濾過DN2は、希釈した原古液を使用して行なった。そのpHは、4.8に調整され、かつその溶液は、ナノ濾過の前に濾紙を通してプレ濾過された。ナノ濾過は、圧力17バール及び温度40℃において行なわれた。約20時間の濾過の後、5リットルの透過物量及び20リットルの濃縮物量が得られた。
【0068】
濾過DN1及びDN2の両方が、クロスフロー流速6m/秒において行なわれた。ファウリングは、両方の濾過において約1%であった。両方の濾過において、ナノ濾過膜は、デザル−5DK(Desal−5 DK)を使用した。
【0069】
濾過DN1及びDN2の各々において、ナノ濾過膜は、3つの異なる方法において前処理された:(1)前処理なし、(2)エタノールで膜を洗浄、及び(3)アルカリ性洗浄剤で膜を洗浄。
結果を表IIIbに示す:
【表4】
Figure 0004374562
【0070】
表IIIbの結果は、前処理工程として限外濾過が使用された場合、ナノ濾過から得られる透過物の乾燥固体中のキシロースの割合が、多少変化することを示している。一方、エタノール又はアルカリ性洗浄剤を用いた膜の洗浄は、キシロース含有量を、非常に増加させる。
【0071】
実施例IV
様々な圧力におけるナノ濾過
実験DS1は、DSSラブスタックM20濾過装置(登録商標:Labstak)を用い、総再循環式濾過で操作して行なわれた(製造業者 デンマーク 分離 システム AS(Danish Separation Systems AS)、デンマーク)。処理される液は、実施例IIIと同様のものである。温度は35℃であり、かつ流速は4.6L/分であった。膜は、デザル−5DK(Desal−5 DK)を使用した。実験前に、古液のpHを4.5に調整し、かつその液を、濾紙を通してプレ濾過した。結果を表IVaに示す。
【表5】
Figure 0004374562
【0072】
追加実験(濾過DV1及びDV2)を、高剪断速度濾過装置である、V・SEP濾過装置(製造業者 ニュー ロジック(New Logic))を使用して行なった。その効率は、膜表面上の高剪断力が引き起こす振動運動に基づく。濾過DV1において、濾過の間中、容器へ新しい濃縮供給物を添加することによって供給濃度が増加させられる。同時に、圧力も増加させられる。表Vは、二つの供給乾燥固体濃縮度における、供給物中及び透過物中の乾燥固体含有量に基づくキシロース含有量を示す。
【表6】
Figure 0004374562
【0073】
表IVa及び表IVbの結果から、ナノ濾過圧力及び供給物の乾燥物質含有量の同時増加は、透過物のキシロース含有量を増加させることが分かる。
【0074】
実施例V
様々な値の供給乾燥固体におけるナノ濾過
処理される液は、実施例IIIの濾過DU2からの限外濾過された液である(限外濾過は、オスモニクス/デザル(Osmonics/Desal社製のデザル−G10(Desal−G10)膜を使用して行なわれた。)。ナノ濾過は、圧力30バール、温度35℃及びpH5.3において行なわれた。ナノ濾過膜は、デザル−5DK(Desal−5 DK)、デザル−5DL(Desal−5 DL)及びNF−200を使用した。
【0075】
膜挙動における供給乾燥固体含有量の効果を表Vに示す。
【表7】
Figure 0004374562
【0076】
比較目的で、(キシロースに加えて)他の炭水化物、オリゴ糖、キシロン酸、金属陽イオン(Ca2+及びMg2+)並びにスルフィット及びスルフェートイオンの含有物が、3つの異なる濃度において濃度式限外濾過から得られた試料(DS4)(供給試料)、及び3つの異なるナノ濾過膜を用いたナノ濾過から得られた対応する透過物(透過物試料)から分析された。
【0077】
その結果を表Vaに示す。表Vaにおいて、試料番号A、B及びCは、濃度式濾過において、乾燥物質含有量が5.6、10.3及び18.5と3つの異なる供給物から得られた試料(デザル5DK(Desal−5 DK)膜を用いて限外濾過された液)を示し、試料番号D、E及びFは、デザル5DK(Desal−5 DK)膜を用いたナノ濾過から得られる透過物から得られた対応する試料を示し、試料番号G、H及びIは、デザル5DL(Desal−5 DL)膜を用いたナノ濾過から得られる透過物から得られた対応する試料を示し、試料番号J、K及びLは、NF−200膜を用いたナノ濾過から得られる透過物から得られた対応する試料を示す。
【0078】
表Vaにおいて、炭水化物の含有量は、Pb2+形態イオン交換カラム及びRI(屈折率)検出器を備えたHPLCを使用して測定し、二糖類の場合は、Na+形態イオン交換カラムを備えたHPLCを使用して測定し、キシロン酸含有量の場合には、陰イオン交換カラム及びPED検出器を備えたHPLCを使用して測定した。
【0079】
更に、表Vbは、炭水化物含有量、及び乾燥物質含有量が18.5%の供給液(上記試料C)及び対応する透過物試料(上記試料F、I及びL)のいくつかの他の分析結果を示す(前処理工程としての限外濾過;ナノ濾過条件35℃、30バール、pH5.3、供給物中のDS18.5%、DSSラブスタックM20濾過装置(登録商標:Labstak)。)。
【表8】
Figure 0004374562
【表9】
Figure 0004374562
【0080】
表Va及びVbは、ナノ濾過が、効果的に、透過物中のキシロース及びアラビノースのようなペントースを濃縮すると同時に、キシロース溶液からの二糖類、キシロン酸、マグネシウム及びスルフェートイオンの本質的な量を除去することを示している。グルコース、ガラクトース、ラムノース及びマンノースのようなヘキソースは、透過物中に濃縮されない。
【0081】
このように、キシロース溶液の純度は、ナノ濾過によって、効果的に増加させられ得る。更に、ナノ濾過は、二価のイオン98%を除去することによって、古液を脱イオン化する。
【0082】
実施例VI
パイロットスケールにおける古液のナノ濾過
Mg塩基スルフィット古パルピング液340kgを、水で希釈し、DS17%を有する溶液1600Lを得た。溶液のpHを、MgOを用いて、pH2.7からpH5.7に調整した。溶液を、濾過助剤としてアルボセル(登録商標:Arbocell)4kgを用い、ザイツ社製濾過装置を使用して濾過した。ナノ濾過は、デザル 5 DK3840モジュールを備えた装置を用い、45℃において35バールの流入圧力で行なった。透過物の流動が10L/m2/時間以下の値に減少するまで、キシロースを含むナノ濾過透過物を容器中に集収した。集収した透過物(780L)を、DS64%を有する13.50kgの溶液まで、蒸発器を用いて濃縮した。表VIは、供給物及び透過物の組成を示す。炭水化物、酸及びイオンの含有量は、DS中の%で表される。
【表10】
Figure 0004374562
【0083】
実施例VII
前処理としてクロマトグラフィー及び後処理として結晶化を使用したナノ濾過
(A)クロマトグラフィーを用いた前処理
キシロースを分離することを目的として、Mg2+塩基蒸煮法からのスルフィット蒸煮液にクロマトグラフィー分離法を受けさせた。
【0084】
クロマトグラフィー分離に使用される装置は、直列に接続された4つのカラム、供給ポンプ、循環ポンプ、溶離剤水ポンプ、並びに様々な加工ストリームのための流入及び生成物バルブを含む。各々のカラムの高さは、2.9mであり、各々のカラムの直径は0.2mである。カラムは、Mg2+形態の強酸ゲルタイプイオン交換樹脂(フィネックス(Finex)CS13GC)を用いて充填された。平均ビーズサイズは0.36mmであり、ジビニルベンゼン含有量は6.5%である。
【0085】
スルフィット蒸煮液を、珪藻土を使用して濾過し、そして48重量%の濃度まで希釈した。液のpHは3.3であった。スルフィット蒸煮液は、以下の表VIIaに示したように構成された。
【表11】
Figure 0004374562
【0086】
クロマトグラフィー分画は、以下に示したような7工程のSMB順序を使用して行なわれた。供給物及び溶離剤は、70℃の温度において使用された。溶離剤として水が使用された。
【0087】
工程1:供給溶液9Lを、120L/時間の流速において第一カラムへ供給し、最初に再循環画分4Lを、そして次にキシロース画分5Lをカラム4から集収した。
工程2:供給溶液23.5Lを、120L/時間の流速において第一カラムへ供給し、そして残留画分を、同じカラムから集収した。同時に、水20Lを、102L/時間の流速において第二カラムへ供給し、そして残留画分をカラム3から集収した。同時に、水12Lもまた、60L/時間の流速においてカラム4へ供給し、そしてキシロース画分を同じカラムから集収した。
工程3:供給溶液4Lを、120L/時間の流速において第一カラムへ供給し、そして残留画分を、カラム3から集収した。同時に、水5.5Lを、165L/時間の流速においてカラム4へ供給し、そして再循環画分を同じカラムから集収した。
工程4:28Lを、130L/時間の流速において、全てのカラムに形成されているカラムセットのループに循環させた。
工程5:水4Lを、130L/時間の流速においてカラム3へ供給し、そして残留画分を、第二カラムから集収した。
工程6:水20.5Lを、130L/時間の流速において第一カラムへ供給し、そして残留画分を、カラム2から集収した。同時に、水24Lを、152L/時間の流速においてカラム3へ供給し、そして残留画分をカラム4から集収した。
工程7:23Lを、135L/時間の流速において、全てのカラムに形成されているカラムセットのループに循環させた。
【0088】
系が平衡に達した後、以下の画分が系から得られた。:全てのカラムから残留画分、カラム4からキシロース含有画分、及びカラム4から2つの再循環画分。合せた画分のHPLC分析を含む結果を以下に示す。炭水化物の含有量は、DS中の%として表す。
【表12】
Figure 0004374562
これらの画分から計算されたキシロースの総収率は、91.4%であった。
【0089】
(B)キシロース画分のナノ濾過
上記クロマトグラフィー分離から得られたキシロース画分325kgを水で希釈し、DS14%を有する溶液2000Lを得た。溶液のpHを、MgOを用いて、pH3.7から4.9まで上げ、その溶液を、45℃まで加熱した。加熱した溶液を、濾過助剤としてアルボセル(登録商標:Arbocell)4kgを用い、ザイツ社製濾過装置を使用して濾過した。その透明溶液を、デザル 5 DK3840モジュールを備えた装置を用い、45℃において35バールの流入圧力でナノ濾過した。ナノ濾過の間中、透過物を容器中へ集収し、そして透過物の流動が10L/m2/時間以下の値に減少するまで、濃縮を続けた。集収した透過物(750L)を、DS67%を有する18.5kgの溶液まで、蒸発器を用いて濃縮した。表VIIcは、供給物及び蒸発した透過物の組成を示す。炭水化物、酸及びイオンの含有量は、DS中の%で表される。
【表13】
Figure 0004374562
【0090】
(C)結晶化による後処理
上記で得られたナノ濾過透過物に結晶化を受けさせ、その中に含まれるキシロースを結晶化させた。工程(B)で得られた透過物18.5kg(DS約11kg)を、回転蒸発器(ブッチ社製 回転蒸発器R−153)を用いてDS82%まで蒸発させた。蒸発の間中、回転蒸発器浴の温度は、70ないし75℃であった。蒸発させた質量12.6kg(DS10.3kg)を、10L冷却結晶器中へ導入した。結晶器のジャケット温度は、65℃であった。線状冷却プログラムを開始させた:15時間で65℃から35℃で。水っぽい塊のため、その後、冷却プログラムを34℃から30℃で2時間続けた。最終温度(30℃)において、キシロースの結晶を、(ヘティッチ ロート サイレンタ II(Hettich Roto Silenta II)遠心機;バスケット直径23cm;スクリーン開口部0.15mmを用いて)3500rpmにおいて5分間、遠心分離することによって分離させた。水80mLを噴霧することによって結晶ケークを洗浄した。
【0091】
高品質の結晶が、遠心分離によって得られた。ケークは、高いDS(100%)、高いキシロース純度(DS中に99.8%)、わずかな着色(64)を有した。遠心分離収率は、42%(DSからDS)及び54%(キシロースからキシロース)であった。
【0092】
結晶ケークの一部を、オーブン中で、55℃において2時間乾燥させた。平均結晶サイズが篩分け試験によって決定され、0.47mm(CV%38)であった。
【0093】
表VIIdは、遠心機中へ導入された結晶質量の重量及び遠心分離後の結晶ケークの重量を示す。表はまた、最終結晶化質量、結晶ケーク並びに流出液画分のDS及びキシロース純度を示す。
【0094】
比較目的で、表VIIeに、グルコース、ガラクトース、ラムノース、アラビノース、マンノース及びオリゴ糖の対応する値も示す。
【表14】
Figure 0004374562
【0095】
実施例VIII
キシロースの結晶化から得られた母液のナノ濾過
キシロースの沈殿結晶化から得た母液300kgを、水で希釈し、DS16%を有する溶液2500Lを得た。溶液のpHを、MgOを用いて、pH4.2まで上げ、その溶液を、45℃まで加熱した。加熱した溶液を、濾過助剤としてアルボセル(登録商標:Arbocell)4kgを用い、ザイツ社製濾過装置を使用して濾過した。その透明溶液を、デザル 5 DK3840モジュールを備えた装置を用い、45℃において35バールの流入圧力でナノ濾過した。ナノ濾過の間中、透過物を容器中へ集収し、そして透過物の流動が10L/m2/時間以下の値に減少するまで、濃縮を続けた。集収した透過物(630L)を、DS60%を有する19.9kgの溶液まで、蒸発器を用いて濃縮した。表VIIIは、供給物及び蒸発した透過物の組成を示す。成分(炭水化物及びイオン)の含有量は、DS中の%で表される。
【表15】
Figure 0004374562
【0096】
前記の一般的な記載及び実験例は、本発明を説明することのみを意図したものであり、本発明を限定するものではない。本発明の意図及び範囲内の様々な変更が可能であり、そしてそれは当業者に理解され得る。

Claims (22)

  1. キシラン含有植物材料の水解物からキシロース溶液を生成する方法であって、乾燥物質含有量が3ないし50重量%であり、そしてキシロース含有量が、乾燥物質含有量に基づいて5ないし95重量%である前記水解物に、3ないし6.5のpHで、15ないし35バールの圧力で、5ないし95℃の温度で、150ないし500g/molの遮断サイズを有し、そしてポリエーテルスルホン膜、ポリエステル膜、ポリスルホン膜、芳香族ポリアミド膜、ポリピペラジン膜及びそれらの組合せから選択されるナノ濾過膜を用いてナノ濾過を受けさせ、そしてキシロースに富んだ溶液をナノ濾過透過物として回収し、ヘキソース糖及び二価の塩に富んだ溶液をナノ濾過未透過物として回収することを特徴とする方法。
  2. ナノ濾過未透過物として回収された溶液がリグノスルホネート及びオリゴ糖をまた含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 乾燥物質含有量に基づいて、前記出発バイオマス水解物の1.1倍以上のキシロース含有量を有する、キシロース溶液をナノ濾過透過物として回収することを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 乾燥物質含有量に基づいて、前記水解物の1.5ないし2.5倍以上のキシロース含有量を有するキシロース溶液を回収することを特徴とする請求項3記載の方法。
  5. 前記水解物の乾燥物質含有量が8ないし25重量%であることを特徴とする前記請求項1記載の方法
  6. 記水解物が、乾燥物質含有量に基づいて、15ないし55重量%のキシロース含有量を有することを特徴とする前記請求項1記載の方法
  7. 前記水解物が、乾燥物質含有量に基づいて、15ないし40重量%のキシロース含有量を有することを特徴とする前記請求項1記載の方法。
  8. 前記水解物が、乾燥物質含有量に基づいて、8ないし27重量%のキシロース含有量を有することを特徴とする前記請求項1記載の方法。
  9. 記キシラン含有植物材料の水解物が、パルピング加工から得られた古液であることを特徴とする前記請求項1記載の方法。
  10. 前記キシラン含有植物材料の水解物が、スルフィットパルピング加工から得られた古液であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  11. 前記キシラン含有植物材料の水解物が、酸性のスルフィットパルピング加工から得られた古液であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  12. 前記古液が、硬木スルフィットパルピングから得られたことを特徴とする前記請求項10または11記載の方法。
  13. 前記キシラン含有植物材料の水解物が、イオン交換、限外濾過、クロマトグラフィー、濃縮、pH調節、濾過、希釈、結晶化及びそれらの組合せから選択される1回又はそれ以上の前処理工程を受けさせたことを特徴とする請求項12記載の方法
  14. 前記キシラン含有植物原料の前記水解物液がキシロースの結晶化から得られた母液であることを特徴とする請求項1記載の方法
  15. 記ナノ濾過が、30ないし60℃の温度で行なわれることを特徴とする前記請求項1記載の方法。
  16. 前記ナノ濾過が、10ないし100リットル/m2hの流動で行なわれることを特徴とする前記請求項1記載の方法
  17. 記工程が並列又は直列に配置されたナノ濾過要素を含むナノ濾過装置を使用して行なわれることを特徴とする前記請求項1記載の方法。
  18. 前記方法がまた、イオン交換、結晶化、クロマトグラフィー、濃縮、脱色及びキシロースのキシリトールへの還元から選択される1回又はそれ以上の後処理工程をも含むことを特徴とする請求項1記載の方法
  19. シロースに富み、ナノ濾過透過物として回収された前記溶液が、他のペントース糖をも含むことを特徴とする前記請求項1記載の方法。
  20. 前記他のペントース糖が、アラビノースを含むことを特徴とする請求項19記載の方法。
  21. 前記ナノ濾過未透過物中で、回収された前記ヘキソースが、グルコース、ガラクトース、ラムノース及びマンノースの一種又はそれ以上を含むことを特徴とする請求項1記載の方法
  22. キシラン含有植物材料の水解物からキシロース溶液を生成する方法であって、乾燥物質含有量が3ないし50重量%であり、そしてキシロース含有量が、乾燥物質含有量に基づいて15ないし55重量%である前記水解物に、3ないし6.5のpHで、10ないし50バールの圧力で、30ないし60℃の温度で、150ないし1000g/molの遮断サイズを有し、そしてポリエーテルスルホン膜、ポリエステル膜、ポリスルホン膜、芳香族ポリアミド膜、ポリピペラジン膜及びそれらの組合せから選択されるナノ濾過膜を用いてナノ濾過を受けさせ、そして乾燥物質含有量に基づいて、乾燥物質含有量に基づき前記出発バイオマス水解物の1.1倍以上のキシロース含有量を有する溶液をナノ濾過透過物として回収し、そしてヘキソース糖及び二価の塩に富んだ溶液をナノ濾過未透過物として回収することを特徴とする方法。
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