次に、発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、本発明に係るエンジン駆動式ヒートポンプの冷媒回路構成について図1を用いて説明する。なお、以下に説明する冷媒回路構成は、本発明に係るエンジン駆動式ヒートポンプが有する冷媒回路構成の一例であり、本構成に限定されるものではない。
本発明に係るエンジン駆動式ヒートポンプは、駆動源としてのエンジンにより、同時にまたは一方のみが選択的に駆動される2台の圧縮機から構成される圧縮機2を有するものであり、この圧縮機2により冷媒を循環させて冷暖房を行うものである。すなわち、本発明に係るエンジン駆動式ヒートポンプは、前記圧縮機2と、この圧縮機2の吐出側に接続され冷房時及び暖房時で冷媒の流れを切り換える四方弁3と、冷房時に圧縮機2から四方弁3を介して冷媒が供給される室外熱交換器4と、暖房時に圧縮機2から四方弁3を介して冷媒が供給される室内熱交換器5と、室外熱交換器4及び室内熱交換器5間に配設される室外膨張弁6とを有しており、これらで構成される冷媒サイクルを用いるものである。
前記圧縮機2には、その吐出側に冷媒吐出ライン20が接続されるとともに、その吸入側に冷媒吸入ライン30が接続されている。すなわち、前記四方弁3の一端は、圧縮機2の吐出側において冷媒吐出ライン20を介して接続され、圧縮機2は、冷媒吸入ライン30を通過してくるガス冷媒を吸引・圧縮し、高温・高圧のガス冷媒を冷媒吐出ライン20に吐出する。また、この冷媒吐出ライン20には、高温・高圧のガス冷媒中に含まれる圧縮機オイル(潤滑油)を分離して圧縮機2の吸入側に戻すための油分離器(オイルセパレータ)8が設けられている。つまり、圧縮機2から吐出されるガス冷媒は、油分離器8を介して四方弁3へと流入し、この四方弁3にて所定の方向に導かれる。また、圧縮機2の冷媒吸入側と四方弁3の別の一端が接続されて、圧縮機2に吸引されるガス冷媒も四方弁3にて導かれる。
前記四方弁3の別の一端は、前記室内熱交換器5の一端側に接続されており、この室内熱交換器5の他端側には、液冷媒を貯溜するための液冷媒レシーバ12が接続されている。この液冷媒レシーバ12は、経路14を介して前記冷媒吸入ライン30と接続されており、該経路14には、液冷媒レシーバ12で過冷却に利用後に液冷媒レシーバ流出口12bから流出する冷媒をエンジンの冷却水(温水)の熱で蒸発させるための廃熱回収器15が設けられている。また、同じく四方弁3の残りの一端には、前記室外熱交換器4が接続されており、この室外熱交換器4と室内熱交換器5とを接続する経路13には、前記室外膨張弁6が設けられている。
このような冷媒回路構成における冷房時及び暖房時の運転について説明する。
冷房運転時においては、圧縮機2にて圧縮され吐出される高温・高圧のガス冷媒は、冷媒吐出ライン20を通り四方弁3を介して室外熱交換器4に送られ、この室外熱交換器4で室外ファン17により送風される外気に放熱することにより凝縮されて、この凝縮熱が室外の空気中に放熱される。ここで、高温・高圧過飽和状態のガス冷媒は気体から液体となる。そして、液化された冷媒は、逆止弁7aから液冷媒レシーバ流入口12aを経て液冷媒レシーバ12内に流入し、さらに液冷媒レシーバ流出口12cから逆止弁7cを経由して室内膨張弁16に到達し、この室内膨張弁16で急激に減圧され蒸発しやすい状態となって室内熱交換器5に導かれる。この室内熱交換器5が蒸発器となり、冷媒が室内の空気から蒸発熱を奪い液体から気体へと変化するとともに室内の空気を冷却する。気化した冷媒は、四方弁3を介して冷媒吸入ライン30を通り、圧縮機2に吸引されて圧縮された後、再び吐出される。
一方、暖房運転時においては、圧縮機2にて圧縮され吐出される高温・高圧のガス冷媒は、冷媒吐出ライン20を通り四方弁3を介して室内熱交換器5に送られ、この室内熱交換器5で室内ファン18により送風される室内の空気に放熱することにより凝縮されて、この凝縮熱が室内の空気中に放熱され室内の空気を温める。ここで、冷媒は気体から液体となる。そして、液化された冷媒は、逆止弁7bを経て液冷媒レシーバ流入口12aから液冷媒レシーバ12内に流入し、液冷媒レシーバ流出口12cから室外膨張弁6に到達し、この室外膨張弁6で急激に減圧され蒸発しやすい状態となって室外熱交換器4に導かれる。この室外熱交換器4が蒸発器となり、冷媒が室外の空気中から蒸発熱を奪い、冷媒の一部が液体から気体へと変化する。そして、室外熱交換器4を経て気化した冷媒は、四方弁3を介して冷媒吸入ライン30を通り、圧縮機2に吸引されて圧縮された後、再び吐出される。
以上のように構成される冷媒回路を有するエンジン駆動式ヒートポンプにおいて、前述の如く2台の圧縮機から構成される圧縮機2は、同時または一方のみの選択的な運転に際し所望の段階的な出力を得るため、一方の圧縮機がオイル溜めの有るもの(以下、「圧縮機2a」とする。)、他方の圧縮機がオイル溜めのないもの(以下、「圧縮機2b」とする。)とされている。すなわち、前記圧縮機2aは、その内部に潤滑油が貯溜されるオイル溜め構造(オイルパン)を有している一方、前記圧縮機2bは、その内部にオイルパン構造を有しておらず、冷媒回路を循環する冷媒内に含まれる潤滑油により各部の潤滑が行われる。
このように2台の圧縮機2a・2bから構成される圧縮機2の吐出側には、前述の如く四方弁3との間に冷媒吐出ライン20が接続されており、同じく圧縮機2の吸入側には、四方弁3との間に冷媒吸入ライン30が接続されている。以下、これら冷媒吐出ライン20及び冷媒吸入ライン30の構成並びに各圧縮機2a・2bについての潤滑油の循環構成について、図2〜図7を加えて説明する。なお、図2〜図4においては冷媒吐出ライン20のみが接続された状態を示しており、冷媒吸入ライン30の図示を省略し、図5〜図7においては冷媒吸入ライン30のみが接続された状態を示し、冷媒吐出ライン20の図示を省略している。
冷媒吐出ライン20は、各圧縮機2a・2bの吐出口21a・21bそれぞれに接続される個別の吐出ラインである吐出分岐管22a・22bと、これら吐出分岐管22a・22bとがその下流側において合流される両圧縮機2a・2bの共通の吐出ラインである吐出主管23とから構成される。すなわち、前述した冷媒サイクルにおいて、圧縮機2から四方弁3へと導かれる冷媒は、各圧縮機2a・2bから各吐出口21a・21bを介して吐出され、各吐出分岐管22a・22bを通って吐出主管23にて合流され、四方弁3へと導かれる。
また、冷媒吸入ライン30は、各圧縮機2a・2bの吸入口31a・31bそれぞれに接続される個別の吸入ラインである吸入分岐管32a・32bと、これら吸入分岐管32a・32bとがその上流側において合流される両圧縮機2a・2bの共通の吸入ラインである吸入主管33とから構成される。すなわち、前述した冷媒サイクルにおいて、四方弁3を介して圧縮機2に吸入される冷媒は、吸入主管33を通って吸入分岐管32a・32bにより分岐され、各吸入口31a・31bを介して各圧縮機2a・2bに吸入される。
このような冷媒吐出ライン20及び冷媒吸入ライン30を有する圧縮機2a・2bについての潤滑油の循環構成について説明する。前述の如く、圧縮機2から吐出される冷媒中には潤滑油が混ざっており、この冷媒中に含まれる潤滑油は油分離器8により分離され圧縮機2へと戻される。ここで、油分離器8は、戻し配管9を介して冷媒吸入ライン30の吸入主管33と接続されており、油分離器8にて分離された潤滑油は、この戻し配管9を通って吸入主管33内の冷媒と合流し、該吸入主管33を通過する冷媒とともに吸入分岐管32a・32bを介して各圧縮機2a・2bへと吸入されて戻される。
また、オイル溜めの無い圧縮機2bについては、前記のような戻し配管9を介する潤滑油の戻し構成に加え、油分離器8で分離された潤滑油が戻されるオイル戻しライン40が設けられている。すなわち、オイル溜めの有る圧縮機2aについては、そのオイル溜めに貯溜される潤滑油と圧縮機2aに吸入される冷媒内に含まれる潤滑油とにより十分な油量を賄うことができるが、オイル溜めの無い圧縮機2bについては、その内部に貯溜される潤滑油が無いため、戻し配管9を介する潤滑油の戻し構成により戻される潤滑油のみでは必要な油量が賄えずに潤滑油が不足する場合がある。そこで、戻し配管9を介して戻される潤滑油による油量を補うため、油分離器8からのオイル戻しライン40が設けられている。
この油分離器8により分離される潤滑油をオイル溜めの無い圧縮機2bに戻すためのオイル戻しライン40は、オイル溜めの無い圧縮機2bの吸入口31bの直上流側に接続されている。すなわち、オイル戻しライン40はオイル溜めの無い圧縮機2bのみに潤滑油を戻すための経路であるため、冷媒吸入ライン30においてオイル溜めの無い圧縮機2bの吸入口31bの直上流側となる、吸入主管33から分岐後の吸入分岐管32bに接続される。また、オイル戻しライン40の上流側は、油分離器8と冷媒吸入ライン30とを接続する戻し配管9に接続されており、該戻し配管9から分岐されて設けられる。このような構成により、油分離器8にて分離された戻し配管9内の潤滑油の一部は、オイル戻しライン40を介してオイル溜めの無い圧縮機2bのみに直接戻される。
また、前記オイル戻しライン40には、該オイル戻しライン40の開閉を行う開閉弁41が設けられている(図1参照)。これにより、オイル戻しライン40を介してオイル溜めの無い圧縮機2bに戻される潤滑油は、開閉弁41を介して戻されることとなる。すなわち、油分離器8からの潤滑油は、開閉弁41が閉じている場合、戻し配管9を介して冷媒吸入ライン30内の冷媒と合流し、この冷媒とともに各吸入分岐管32a・32bを介して各圧縮機2a・2bに戻される。一方、開閉弁41が開いている場合、オイル溜めの無い圧縮機2bについては、吸入分岐管32bを介して戻される潤滑油に加え、オイル戻しライン40からの潤滑油が戻されることとなる。
そして、このオイル戻しライン40に設けられる開閉弁41を、オイル溜めの無い圧縮機2bの駆動と連動して開く構成としている。具体的には、例えばエンジンから圧縮機2bへの動力の伝達がクラッチ等の入切により断接される構成の場合は、クラッチ等が入り状態となりエンジンからの動力がオイル溜めの無い圧縮機2bに伝達されるのと連動させて、開閉弁41を開く構成とする。
このように、開閉弁41により開閉可能に構成され、油分離器8により分離される潤滑油をオイル溜めの無い圧縮機2bのみに戻すオイル戻しライン40を設け、その開閉弁41を圧縮機2bの駆動と連動させて開く構成とすることにより、オイル溜めの無い圧縮機2bが駆動される場合に、油分離器8により分離される潤滑油を回収することが容易となるため、両圧縮機2a・2bが同時に駆動される場合にも、各圧縮機2a・2bの潤滑油量を適正に保つことが可能となる。つまり、冷媒とともに戻される潤滑油にオイル戻しライン40から戻される潤滑油が加わることにより、オイル溜めの無い圧縮機2bに対しても十分な量の潤滑油が戻されることとなり、両圧縮機2a・2bが同時に駆動される場合にも、オイル溜めの無い圧縮機2bに戻される潤滑油の量が不足することなく、各圧縮機2a・2bの潤滑油量を適正に保つことができる。
ところで、本発明に係るエンジン駆動式ヒートポンプは、直方体状となるパッケージ型に構成されるものであり、このパッケージ内に圧縮機2a・2b及びこれらを駆動するエンジンを含む各種機器類が収納される。そして、圧縮機2a・2bに接続される冷媒吐出ライン20及び冷媒吸入ライン30は、前述の如く四方弁3にそれぞれ接続されるのであるが、この四方弁3がパッケージ内におけるスペース配置上、圧縮機2から離れた位置に配置される場合があり、こうした場合、冷媒吐出ライン20及び冷媒吸入ライン30は圧縮機2a・2bから四方弁3へとそれぞれ所定の経路を辿って延設されることとなる。
このようにパッケージ内にて延設される冷媒吐出ライン20及び冷媒吸入ライン30については、エンジンにより駆動される圧縮機2a・2bと四方弁3との間の振動を吸収して各ライン20・30を構成する配管などの破損を防止するための振動吸収部が設けられる。このような配管部における振動吸収部としては、一般的にゴム等の弾性部材で構成されたり蛇腹状に構成されたりして振動を吸収するフレキシブルホースが用いられる。すなわち、各ライン20・30においてフレキシブルホースを介装することによりその部分において振動を吸収する。
こうした配管においては、配管内を通過する水平方向における冷媒の流れる方向に対して前後方向の振動が比較的大きくなるため、この方向の振動を吸収する必要がある。本実施形態において、圧縮機2a・2bから延設される冷媒吐出ライン20は、各圧縮機2a・2bの吐出口21a・21bに接続される吐出分岐管22a・22bが合流する吐出主管23が、圧縮機2から前記パッケージの略短手方向となる第一の方向に延設された後、同じくパッケージの長手方向となる第二の方向に延設されて四方弁3に接続される(図2参照)。一方、圧縮機2a・2bから延設される冷媒吸入ライン30は、各圧縮機2a・2bの吸入口31a・31bに接続される吸入分岐管32a・32bが合流する吸入主管33が、前記第一の方向と略同一の方向に延設された後、前記第二の方向と略同一の方向に延設されて四方弁3に接続される(図7参照)。
そして、前述のような経路を辿って四方弁3まで延設される冷媒吐出ライン20及び冷媒吸入ライン30においては、その振動を吸収するための振動吸収部としてのフレキシブルホースが、各ライン20・30における両圧縮機2a・2bの共通の配管部分に設けられている。つまり、冷媒吐出ライン20においては、吐出分岐管22a・22bから合流後の吐出主管23に、冷媒吸入ライン30においては、吸入分岐管32a・32bに分岐する上流側の吸入主管33に、それぞれフレキシブルホースが設けられる。
具体的に振動吸収部としてのフレキシブルホースは、図2〜図7に示すようにして設けられる。すなわち、冷媒吐出ライン20においては、図2〜図4に示すように、両圧縮機2a・2b共通の吐出主管23において前記第一の方向に延設される部分に第一フレキシブルホース24が設けられ、同じく吐出主管23において前記第二の方向に延設される部分に第二フレキシブルホース25が設けられる。つまり、冷媒吐出ライン20の吐出主管23においては、第一フレキシブルホース24により冷媒吐出ライン20における前記第一の方向に対する振動が吸収され、第二フレキシブルホース25により冷媒吐出ライン20における前記第二の方向の振動が吸収される。
また、冷媒吸入ライン30においては、図5〜図7に示すように、両圧縮機2a・2b共通の吸入主管33において前記第一の方向と略同一に延設される部分に第三フレキシブルホース34が設けられ、同じく吸入主管33において前記第二の方向と略同一方向に延設される部分に第四フレキシブルホース35が設けられる。つまり、冷媒吸入ライン30の吸入主管33においては、第三フレキシブルホース34により冷媒吸入ライン30における前記第一の方向と略同一方向に対する振動が吸収され、第四フレキシブルホース35により冷媒吸入ライン30における前記第二の方向と略同一方向の振動が吸収される。
このように、冷媒吐出ライン20及び冷媒吸入ライン30それぞれにおいて、両圧縮機2a・2bの共通の配管部分である吐出主管23及び吸入主管33にフレキシブルホースを設けることにより、各圧縮機2a・2bの個別の配管部分である吐出分岐管22a・22b及び吸入分岐管32a・32bにそれぞれ振動吸収部としてのフレキシブルホースを設ける構成と比較して、その設ける数を低減することができる。つまり、冷媒吐出ライン20における合流前の吐出分岐管22a・22bや冷媒吸入ライン30における分岐後の吸入分岐管32a・32bにフレキシブルホースを設けることとすると、これらの分岐管が水平方向において異なる方向にかけて延設される場合、各ライン20・30においてその振動を吸収するためには、それぞれの方向に対してフレキシブルホースを設ける必要が生じるが、各ライン20・30における共通の配管部分である吐出主管23及び吸入主管33にフレキシブルホースを設けることにより、少なくともその設ける数を半分に低減することができる。これにより、フレキシブルホースを設けるに当たっての省コスト化や製造工程の簡略化が図れる。
続いて、前記オイル戻しライン40の具体的な構成について説明する。オイル戻しライン40は、前述の如く、油分離器8と冷媒吸入ライン30とを接続する戻し管配9から分岐され開閉弁41を介して、冷媒吸入ライン30にてオイル溜めの無い圧縮機2bに分岐する吸入分岐管32bに接続されるのであるが、このオイル戻しライン40にはキャピラリー管42が設けられるとともに、該オイル戻しライン40は冷媒吸入ライン30に沿わせて固定される構成となっている。
図5〜図7に示すように、オイル戻しライン40は、油分離器8にて分離される潤滑油のみを通過させるためのものであるため、冷媒吸入ライン30等の冷媒が通過する配管と比較してその管径が小さく構成されるものであり、その中途部に管経路を絞ることにより減圧させて潤滑油の流量を調整するためのキャピラリー管42が設けられるとともに、冷媒吸入ライン30に適宜間隔を隔てて設けられる固定部43にて固定されることにより、冷媒吸入ライン30に沿わせて配管され固定される。具体的には、固定部43は、冷媒吸入ライン30において前述のようなフレキシブルホースを介装するための留め部材に一体的に形成されたり、冷媒吸入ライン30自体を前記パッケージの壁面や圧縮機2に対して固定支持するための支持部材に構成されたりして設けられる。
すなわち、本実施形態においては、オイル戻しライン40の冷媒吸入ライン30に対する固定部43は、冷媒吸入ライン30において前記第三フレキシブルホース34及び第四フレキシブルホース35の介装に用いる留め部材36・36と、冷媒吸入ライン30が圧縮機2に対して支持される支持部材38及び該冷媒吸入ライン30に固設される支持部材39とにおいて設けられている。
前記留め部材36に設けられる固定部43においては、各留め部材36の外周側に一体的に形成される略C字状の挟持部36aにおいて支持管36bを介してオイル戻しライン40が固定される。つまり、挟持部36aにおいて挟持される筒状の支持管36b内にオイル戻しライン40が挿通されることにより、この固定部43において該オイル戻しライン40が固定されることとなる。また、前記支持部材38・39に設けられる固定部43においては、オイル戻しライン40よりもその管径がさらに小さくなる前記キャピラリー管42が挿通支持されることにより、オイル戻しライン40が冷媒吸入ライン30に固定される。
このように、キャピラリー管42が設けられるオイル戻しライン40を、冷媒吸入ライン30に沿わせて固定することにより、オイル戻しライン40を配管するための固定部を別途設ける必要がなく部品点数の削減などが図れ、管径が小さくなるキャピラリー管42の部分も適切に支持固定できるとともに、オイル戻しライン40の振動を冷媒吸入ライン30に設けられる振動吸収部としてのフレキシブルホースにおいて吸収することが可能となる。
また、前記冷媒吐出ライン20においては、オイル溜めの有る圧縮機2aの吐出口21aの直下流側のみに逆止弁26が設けられている。つまり、オイル溜めの有る圧縮機2aの吐出口21aの直下流側となる、冷媒吐出ライン20において吐出主管23に合流する前の吐出分岐管22a側に逆止弁26が設けられる(図1参照)。
本発明に係るエンジン駆動式ヒートポンプに備えられる圧縮機2は、同時にまたは一方のみが選択的に駆動される2台の圧縮機2a・2bを有する構成となっており、オイル溜めの有る圧縮機2aの駆動は停止し、オイル溜めの無い圧縮機2bのみが駆動する場合がある。この場合、冷媒吸入ライン30からの冷媒は、吸入分岐管32bを介してオイル溜めの無い圧縮機2bに吸入されるとともに、吐出分岐管22bを介して吐出主管23へと吐出される。この際、吐出分岐管22bから吐出主管23に流入する冷媒の一部は、駆動していないオイル溜めの有る圧縮機2aの吐出分岐管22aにも流入してしまう。つまり、圧縮機2にて圧縮され吐出される高温・高圧のガス冷媒は、低温あるいは低圧の方へ向けて流れる習性を有するため、駆動していないことから比較的低温・低圧となるオイル溜めの有る圧縮機2aの方へ流れて行こうとする。
このようなオイル溜めの無い圧縮機2bのみが駆動している場合におけるオイル溜めの有る圧縮機2aへの冷媒の逆流を許容すると、該圧縮機2aにおいて、その駆動が停止している際に該圧縮機2a内の潤滑油に冷媒が溶け込むといういわゆる冷媒の寝込みが生じることとなる。このように冷媒が寝込んだ状態で圧縮機2aが起動されると、潤滑油のフォーミング(発泡現象)によって圧縮機内の潤滑油が一時的に多量に流出することがある一方、圧縮機2aへの冷媒の寝込み量が増加すると、冷媒回路においてオイル溜めの無い圧縮機2bにより循環される冷媒量が不足することも考えられる。
そこで、前述の如く、オイル溜めの有る圧縮機2aへの冷媒の逆流経路となる吐出分岐管22aに逆止弁26を設けることにより、オイル溜めの無い圧縮機2bのみが駆動している場合におけるオイル溜めの有る圧縮機2aへの冷媒の逆流を防止することができ、オイル溜めの有る圧縮機2aに冷媒が寝込むことを防止することができる。これにより、オイル溜めの有る圧縮機2aに冷媒が寝込むことによる不具合、即ち、オイル溜めの有る圧縮機2aにおける潤滑油のフォーミングによる潤滑油の一時的な多量の流出や冷媒回路において循環する冷媒量の不足を防止することができる。
このように、オイル溜めの有る圧縮機2aの吐出口21aの直上流側に設けられる逆止弁26は、好ましくは次のようにして設けられる。すなわち、前記逆止弁26は、オイル溜めの有る圧縮機2aに対する冷媒吐出ライン20の取付フランジ間に設けられる。本実施形態において、オイル溜めの有る圧縮機2aに対する冷媒吐出ライン20の取付けは、圧縮機2aの吐出管19aを介して設けられる吐出口21aに構成される取付フランジ27と、吐出分岐管22aに構成される取付フランジ28とを介してボルト等の締結具29により固定されることにより行われる。
そこで、この冷媒吐出ライン20をオイル溜めの有る圧縮機2aに取り付けるための両取付フランジ27・28間に逆止弁26を介装することにより、該逆止弁26を設ける。具体的には、略同径の円盤状となる前記両取付フランジ27・28に対して、これら取付フランジ27・28と略同径の円盤状となるようにその外形が構成される逆止弁26が用いられる。そして、前記締結具29により吐出分岐管22aの取付フランジ28が吐出口21aの取付フランジ27に固定されるとともに、逆止弁26が両取付フランジ27・28間に介装された状態で共締めされて固定される。
このように、逆止弁26を、冷媒吐出ライン20を圧縮機2aに取り付けるための取付フランジ27・28間に設ける構成とすることにより、冷媒吐出ライン20を圧縮機2aに取り付けるために必要な構造を利用して、逆止弁26をその振動が抑制される状態で固定することができる。つまり、振動を防止するための構造を別途設ける必要なく逆止弁26を設けることができる。
一方、冷媒吸入ライン30において、各圧縮機2a・2bの個別の吸入ラインを構成する吸入分岐管32a・32bには、圧損部37がそれぞれ設けられている。この圧損部37は、両圧縮機2a・2bの共通の吸入ラインである吸入主管33から分岐される吸入分岐管32a・32bが、その分岐位置から一旦上方(斜め上方)に向けて延設されることにより設けられる。そして、前記分岐位置から圧損部37を介した吸入分岐管32a・31bは、その後水平方向や下方に向けて延設され、圧縮機2a・2bの各吸入口31a・31bに接続される。
すなわち、ここでの圧損部とは、管内を流れる冷媒の重力によるエネルギー損失にともなう圧力損失を生じさせる部分のことを意味しており、各吸入分岐管32a・32bを、吸入主管33に対する分岐位置から一旦上方に向けて配管することにより、吸入主管33から各吸入分岐管32a・32bに流入する冷媒に対しての圧損部37を構成している。言い換えると、各吸入分岐管32a・32bをその分岐位置から一旦上方に向けて配管して圧損部37を構成することにより、吸入主管33から各吸入分岐管32a・32bに流入する冷媒が各圧損部37を通過するには、重力に逆らう必要が生じるように管路を形成している。
このように、冷媒吸入ライン30において、各吸入分岐管32a・32bにそれぞれ圧損部37a・37bを設けることにより、各吸入分岐管32a・32bにおいて冷媒が各圧縮機2a・2bへ向けて流入するには、対応する圧縮機2a・2bからの吸引力が必要となる。このことから、2台の圧縮機2a・2bのうちいずれか一方のみが駆動している場合に、停止している圧縮機へ冷媒が流入することを防止でき、駆動中の圧縮機のみが吸入する冷媒とともに潤滑油を回収することができるので、駆動中の圧縮機に必要な潤滑油量を確保することができる。
引き続き、圧縮機2の駆動構成及び支持構成について図8〜図12を用いて説明する。なお、図8〜図12においては、前記冷媒吐出ライン20及び冷媒吸入ライン30の図示を省略している。
本発明に係るエンジン駆動式ヒートポンプの圧縮機2は、前述の如く2台の圧縮機により構成されている。これら両圧縮機2・2はベルト駆動とされ、エンジン1のプーリであるエンジンプーリ51と、両圧縮機2・2のプーリである駆動プーリ52・53とが単一のベルト50で接続されている。
すなわち、前記エンジンプーリ51は、エンジン1のクランク軸の回転により回転駆動するものであり、エンジン1の出力側に設けられるフライホイール1aを介して設けられる。そして、このエンジンプーリ51を有するエンジン1に対し、両圧縮機2・2は、それぞれの駆動プーリ52・53がエンジンプーリ51と前記クランク軸方向における位置を同じくして該エンジンプーリ51の下方に位置するように配置される。つまり、エンジン1と両圧縮機2・2とは、それぞれプーリが設けられる側(ベルト駆動面側)が対向するように配置されるとともに、各プーリ51・52・53の回転軸方向が同一方向(平行)となるように、かつ、各プーリ51・52・53の該回転軸方向に対する位置が同一となるように配置される。ここで、両圧縮機2・2は、エンジン1よりも下方において略水平方向に並んだ状態で配置される。このようにして配置されるエンジン1及び圧縮機2・2のエンジンプーリ51及び駆動プーリ52・53にベルト50が巻回されることにより、これらエンジン1のエンジンプーリ51と、両圧縮機2・2の駆動プーリ52・53とが、単一のベルト50により接続されている。
また、エンジン1は、略平行状態で配置される支持フレーム55・55と、これら支持フレーム55・55間に架設される懸架フレーム56とから平面視略コ字状に構成される搭載フレーム54に対して、支持フレーム55・55間において防振支持されて搭載される。このエンジン1に対し、圧縮機2・2は、この搭載フレーム54の内側にて、両圧縮機2・2共通の取付ブラケット57を介して吊り下げられた状態で設けられる。
すなわち、取付ブラケット57は、前記搭載フレーム54の支持フレーム55・55間に架設される盤状の構造体であり、その一端側は一方の支持フレーム55上にボルト等の締結具58により固設される枢支ブラケット59を介して支持され、他端側は他方の支持フレーム55上にボルト等の締結具60により固設される平面視コ字状のスライドブラケット61・61に支持される。また、取付ブラケット57は、その下面側に補強用のリブ57aを有している。そして、この取付ブラケット57の下側において、前述の如く配置される両圧縮機2・2が吊り下げされた状態でボルト等の締結具62等により固定される。
前記取付ブラケット57について、圧縮機2・2の並び方向の一端側においては、前記枢支ブラケット59を介することにより、前記搭載フレーム54に対して取付ブラケット57を回動可能に支持する枢支部63が設けられるとともに、圧縮機2・2の並び方向の他端側においては、前記枢支部63を支点として取付ブラケット57を上下させる調整ボルト64が設けられている。
具体的には、前記枢支部63は、枢支ブラケット59に形成される枢支孔と取付ブラケット57の端部に形成される枢支孔とが連通した状態で、これら枢支孔に枢支具65・65が挿通固定されることにより、取付ブラケット57が枢支ブラケット59に対して回動可能に軸支されて構成される。つまり、この枢支具65が、取付ブラケット57に対して前記プーリ51・52・53の回転軸方向と同一方向となる枢支軸を構成し、該枢支軸が前記枢支部63の支点(支軸)となる。これにより、取付ブラケット57は枢支部63において回動可能に支持される。なお、本実施形態においては、図8に示すように2本の枢支具65・65が用いられることにより枢支部63が構成されているが、これに限定されず1本または3本以上の枢支具65が用いられてもよい。
一方、取付ブラケット57における圧縮機の並び方向の他端側は、前記スライドブラケット61・61により上下移動可能に支持されている。この取付ブラケット57の他端側は、前記枢支部63における枢支軸方向の両側からスライドブラケット61・61により挟まれた状態で支持されることとなり、これらスライドブラケット61・61に対して取付ブラケット57の端部が上下移動可能に支持される。つまり、各スライドブラケット61・61には、上下方向に長いスライド孔61aが形成されており、該スライド孔61aを介して取付ブラケット57の端部が固定具66により固定され支持される。これにより、取付ブラケット57の前記枢支部63に対する他端側がスライドブラケット61・61のスライド孔61aに沿って上下移動可能に支持される。
そして、このように上下移動可能に構成される取付ブラケット57の上下位置の調整が、前記調整ボルト64により行われる。調整ボルト64は、スライドブラケット61・61間において取付ブラケット57を上下方向に貫通するとともに、該スライドブラケット61・61が固設される前記支持フレーム55に構成される螺合部67に螺合する。本実施形態において螺合部67は、図9及び図12に示すように、支持フレーム55の外側側面に形成されるステー67aと、該ステー67aに設けられるナット体67bとにより構成される。つまり、調整ボルト64が螺合部67のナット体67bに対してねじ込む方向に回転操作されることによりまたはその反対方向に回転操作されることで、取付ブラケット57の端部が上下移動し、これにより、取付ブラケット57が枢支部63を支点として上下回動する。
このような構成により支持される取付ブラケット57を前記調整ボルト64により上下させることで、エンジンプーリ51及び両圧縮機2・2の駆動プーリ52・53に巻回されるベルト50の張力の調整を行うことができる。すなわち、調整ボルト64を螺合部67に対してねじ込む方向に回転操作することにより、取付ブラケット57が枢支部63を支点として回動するとともに、スライドブラケット61・61において固定具66により支持される部分がスライド孔61aに沿って下方に移動する。これにともない、圧縮機2・2とともに駆動プーリ52・53が、定位置にあるエンジンプーリ51に対して下方に移動され、ベルト50のベルト張力が増加する。逆に、調整ボルト64を螺合部67に対してねじ込む方向と反対方向に回転操作することにより、取付ブラケット57が枢支部63を支点として回動するとともに、スライドブラケット61・61において固定具66により支持される部分がスライド孔61aに沿って上方に移動する。これにともない、圧縮機2・2とともに駆動プーリ52・53が、定位置にあるエンジンプーリ51に対して上方に移動され、ベルト50のベルト張力が低下する。
このように、圧縮機2・2が吊り下げされる取付ブラケット57を上下回動可能に支持することにより、両圧縮機2・2をベルト駆動するにあたり、簡易な構成によりベルト張力の調整を行うことができる。また、このベルト張力の調整は、主として調整ボルト64の操作にみにより行うことができるので、簡易な操作によりベルト張力の調整を行うことができる。
また、前述の如く、取付ブラケット57に吊り下げられる各圧縮機2・2については、そのベルト駆動面側及びその反対側に、前記搭載フレーム54に対する支持部が設けられている。
図10及び図12に示すように、圧縮機2・2のベルト駆動面側、即ち駆動プーリ52・53が配置される側においては、圧縮機2・2の下側において搭載フレーム54の支持フレーム55・55間に架設される正面視略カヌー型に形成される下フレーム70及び支持フレーム55・55の内側側面に固設されるステー55a・55aを介して支持部71・71が設けられる。つまり、圧縮機2・2のベルト駆動面側における支持部71・71においては、ボルト等の締結具72により前記ステー55a・55aを介して搭載フレーム54に支持される下フレーム70に対して、各圧縮機2・2が、そのベルト駆動面側下方に設けられるケーシングボス73を介してボルト等の締結具74により固定され支持される。ここで、下フレーム70の両端部におけるステー55a・55aに対する各支持部71・71においては、前述のような取付ブラケット57の上下回動を許容すべく、前記締結具72により支持される部分が移動可能なスライド孔71a・71aが設けられている。
一方、圧縮機2・2のベルト駆動面側の反対側においては、搭載フレーム54を構成する前記懸架フレーム56に支持部75・75が設けられる。つまり、図8及び図11に示すように、両圧縮機2・2のベルト駆動面の反対側において壁面を構成する懸架フレーム56に対して、各圧縮機2・2が、そのベルト駆動面の反対側に設けられるケーシングボス76を介してボルト等の締結具77により固定され支持される。ここで、各支持部75・75においては、前述のような取付ブラケット57の上下回動を許容すべく、前記締結具77により支持される部分が移動可能なスライド孔75a・75aが懸架フレーム56に設けられている。
このように、取付ブラケット57に吊り下げられる圧縮機2・2に対して、ベルト駆動面側及びその反対側において支持する支持部71・75を設けることにより、両圧縮機2・2をより強固に支持することができるので、その振動を抑制することができる。