JP4374197B2 - 機能性素子の製造方法およびその製造装置 - Google Patents

機能性素子の製造方法およびその製造装置 Download PDF

Info

Publication number
JP4374197B2
JP4374197B2 JP2003040039A JP2003040039A JP4374197B2 JP 4374197 B2 JP4374197 B2 JP 4374197B2 JP 2003040039 A JP2003040039 A JP 2003040039A JP 2003040039 A JP2003040039 A JP 2003040039A JP 4374197 B2 JP4374197 B2 JP 4374197B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
functional layer
forming coating
layer forming
functional
solvent
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2003040039A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2004253179A (ja
Inventor
信行 伊藤
範人 伊藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Dai Nippon Printing Co Ltd
Original Assignee
Dai Nippon Printing Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dai Nippon Printing Co Ltd filed Critical Dai Nippon Printing Co Ltd
Priority to JP2003040039A priority Critical patent/JP4374197B2/ja
Publication of JP2004253179A publication Critical patent/JP2004253179A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4374197B2 publication Critical patent/JP4374197B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(エレクトロルミネッセントを以下ELと略す場合がある。)素子、カラーフィルタまたは色変換フィルタ等の機能性素子の製造方法およびその製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、平面表示装置(フラットディスプレイ)が多くの分野、場所で使われており、情報化が進む中でますます重要性が高まっている。現在、フラットディスプレイの代表と言えば、液晶ディスプレイ(LCD)であるが、LCDとは異なる表示原理に基づくフラットディスプレイとして、有機EL、無機EL、プラズマディスプレイパネル(PDP)、ライトエミッティングダイオード表示装置(LED)、蛍光表示管表示装置(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)などの開発も活発に行われている。これらの新しいフラットディスプレイはいずれも自発光型と呼ばれるもので、LCDとは次の点で大きく異なりLCDには無い優れた特徴を有している。
【0003】
LCDは受光型と呼ばれ、液晶は自身では発光することはなく、外光を透過、遮断するいわゆるシャッターとして動作し、表示装置を構成する。このため光源を必要とし、一般にバックライトが必要である。これに対して、自発光型は装置自身が発光するため、別光源が不要である。またLCDのような受光型では表示情報の様態に拘わらず、常にバックライトが点灯し、全表示状態とほぼ変わらない電力を消費することになる。これに対して自発光型は、表示情報に応じて、点灯する必要のある箇所だけが電力を消費するだけなので、受光型表示装置と比較して、電力消費が少ないという利点が原理的にある。
【0004】
さらにLCDではバックライト光源の光を遮光して暗状態を得るため、少量であっても、光漏れを完全に無くす事は困難であるのに対して、自発光型では発光しない状態が暗状態であるので、理想的な暗状態を容易に得ることができ、コントラストにおいても自発光型が圧倒的に優位である。
【0005】
また、LCDは液晶の複屈折による偏光制御を利用しているため、観察する方向によって大きく表示状態が変わる、いわゆる視野角依存性が強いが、自発光型ではこの問題がほとんど無い。
【0006】
さらに、LCDは有機弾性物質である液晶の誘電異方性に由来する配向変化を利用するため、原理的に電気信号に対する応答時間が1ms以上である。これに対して、開発が進められている上記の技術では、電子/正孔といったいわゆるキャリア遷移、電子放出、プラズマ放電などを利用しているため、応答時間はns桁であり、液晶とは比較にならないほど高速であり、LCDの応答の遅さに由来する動画残像の問題が無い。
【0007】
このような利点を有する自発光型の表示装置の中でも、特に有機ELの研究が活発である。有機ELはOEL(Organic EL)又は有機ライトエミッティングダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)とも呼ばれている。
【0008】
有機EL素子は陽極と陰極の一対の電極間に有機化合物を含む層(EL層)を挟持した構造となっており、タン等の「アノード電極/正孔注入層/発光層/カソード電極」の積層構造が基本になっている(特許文献1参照)。
また、タン等が低分子材料を用いているの対して、ヘンリーは高分子材料を用いている(特許文献2参照)。
また、正孔注入層や電子注入層を用いて効率を向上させたり、発光層に蛍光色素等をドープして発光色を制御することも行われている。
【0009】
有機ELを用いた表示装置の製造方法として、インクジェットの吐出装置を用いて、発光材料を吐出して発光層を形成することが一般的に行われている(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5及び特許文献6参照)。
特許文献3では、発光材料の溶液において、基材上への吐出後に、室温で溶媒を除去した後、基材を加熱乾燥あるいは真空加熱乾燥しているが、ある程度溶媒が除去されてしまった後では、強制乾燥による膜厚均一化の効果がない。
【0010】
また、同様な吐出法による有機EL表示装置の製造方法において、インク溶液状態の発光層を膜化する際に、強制的に溶媒を蒸発乾燥させる事は既に幾つか行なわれている。例えば、特許文献4では沸点の高い溶媒を用いて、インク化した発光材料を基材上に供給打ち分けた後、基材を熱処理する技術が開示されている。これは高沸点溶媒を使う事で溶媒の蒸発速度を遅くし、自然乾燥する時間を長くする事で基材に発光層を全面形成した後でも、基材加熱による乾燥の効果を得ようとするものである。しかしながら、高沸点溶媒を完全に除去するためには、より高い温度で加熱処理を行うため、発光材料が劣化してしまうという問題が避けられない。この問題は、初期の発光特性では劣化が見られなくても、特に発光寿命の短寿命化に対して大きな影響を及ぼす。仮に、十分な高温で加熱処理を行なわないとすれば、発光層の熱劣化の問題は生じないが、膜化した発光層内部に溶媒が残留する事となり、発光層の信頼性が大きく損なわれることとなる。
【0011】
特許文献5では、発光層材料の軟化点よりも高い温度で加熱処理して、発光層を形成する技術が開示されているが、この場合も、上記と同様に発光材料の劣化の問題がある。
【0012】
また、特許文献6では、吐出された液滴から蒸発した溶媒蒸気を、基材に対して角度を持たせて気体を吹き付けることで、基材面内から強制的に排除している。これは溶媒蒸気が基材面内に残留することによる他の画素への影響、特に既に吐出された画素へ新たに吐出された画素から蒸発する溶媒が触れることより、画素によって乾燥状態が変化する事を防いでいる。ただし、あくまでも乾燥した溶媒蒸気を吹き飛ばすのであり、乾燥は強制的ではない。基材面内での乾燥の均一性を向上させる効果はあっても、画素内での立体的な膜厚均一性を向上させる効果については記載が無いばかりでなく、問題としても認識されていない。
【0013】
さらに、特許文献7では、同様に有機ELを含む有機材料の成形に関してにインクジェットヘッドを遮蔽物で覆うことでヘッドのノズル面の乾燥を防ぎ、目詰まりを軽減し、インク材料の安定吐出を達成しているが、基材に吐出されたインク材料の乾燥状態、膜形状を制御する記載は無く、またそのような制御ができない事も明らかである。
【0014】
このような従来のEL素子の製造方法について図面を用いて説明する。図6(a)に示すように、隔壁60が形成されている基材61上に、有機EL層を形成する有機EL層形成用塗工液62を、微細加工されたノズル63から吐出し、塗布する。隔壁60間に塗布された有機EL層形成用塗工液62は、塗工液の表面張力により、図6(b)に示すように、隔壁60と接触する端部から中央部分にかけて凸状となり、メニスカス表面形状を形成する。このようなメニスカス表面形状の状態で、溶媒を蒸発させ乾燥・固化させると、図6(c)に示すように、隔壁60と接触する端部から中心部に向って、凹形状となり、中心部と端部とで膜厚の差が大きい有機EL層64となる。この差が大きい場合は、この差を原因として不都合が生じる可能性がある。例えば、このように膜厚が不均一な有機EL層に電界を印加した場合、図7に示すように、有機EL層64のうち、膜厚の薄い中心部65に電流が集中し、逆に隔壁60と接触し膜厚が厚く形成された端部66には電流が流れにくいために、発光輝度に違いが生じ、中心部65のみしか発光しないといった現象が生じる。図7には有機EL層64が形成されている画素開口部が長方形の場合と楕円形の場合を示している。この様に画素中央部しか発光しないと、表示装置として十分な輝度、効率が達成できない。
【0015】
また、対向電極の断線の問題も重要である。通常、対向電極は金属薄膜を蒸着形成するので、100nmから厚くても500nmが安定に形成できる限界である。それ以上厚くすると、もはや薄膜では無くなるので、金属それ自身の張力によって、めくれ上がって剥離する危険性が増加する。この範囲の膜厚では、隔壁が5μm以上の高さの場合、図8に示すように、隔壁60および有機EL層64の表面を覆うように形成された対向電極80は、隔壁60のコーナー部81で、断線が発生し易くなり、有機EL層64に電界が印加されない不良画素が多く発生する。このように隔壁のコーナー部で生じる対向電極の断線の問題は、隔壁の形状を図9に示すように曲面状とすることで解決することができる。しかしながら、上述した有機EL層膜厚の不均一の問題は解消されない。
【0016】
上述した膜厚の不均一さを要因として生じる問題は、EL素子の有機EL層に限らず、図10に示すように、ブラックマトリクス100を隔壁として着色層101を、インクジェット法等の吐出法により形成した場合や、図示していないが色変換フィルタの色変換層を吐出法により形成する場合も同様であり、中心部と端部との膜厚の差から色調ムラが生じ高精細な発色を妨げ、素子寿命を低下させるといった影響を及ぼす。
【0017】
【特許文献1】
特開昭57−51781号公報
【特許文献2】
特許第3249971号明細書
【特許文献3】
特開平11−339957号公報
【特許文献4】
国際公開第00/59267号パンフレット
【特許文献5】
特開2001−85161号公報
【特許文献6】
特開2001−341296号公報
【特許文献7】
特開2001−277490号公報
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、EL素子、カラーフィルタまたは色変換フィルタ等の機能性素子において、有機EL層、着色層または色変換層等の機能性層の中心部および端部の厚みの差が、色調ムラ等の不都合を発生させない程度の差に形成することが可能な機能性素子の製造方法およびそのような機能性素子の製造に用いる装置を提供することを主目的とするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明においては、基材と、上記基材上に吐出法によりパターン状に形成された機能性層とを有する機能性素子の製造方法において、基材上に、溶媒を含み上記機能性層を形成する機能性層形成用塗工液を吐出法によりパターン状に塗布する塗布工程と、上記溶媒が揮発する前に、上記機能性層形成用塗工液を急速固化させる急速固化工程とを有することを特徴とする機能性素子の製造方法を提供する。
【0020】
本発明においては、溶媒が揮発する前に、機能性層形成用塗工液を急速に固化させることにより、機能性層の中心部と端部とにおける膜厚の差を小さくすることができ、膜厚の均一化を図ることができる。このような機能性層を有する機能性素子は色調ムラ等の不都合を発生させる可能性を低下させる効果を有する。
【0021】
上記発明においては、上記溶剤の沸点が、100℃〜300℃の範囲内であることが好ましい。沸点が上記範囲より高い場合は、急速固化工程において溶剤を完全に除去することが困難であり、また、沸点の温度が上記範囲より低い場合は、取り扱いが困難となる場合があるからである。
【0022】
また、上記本発明においては、上記塗布工程と上記急速固化工程との間に、基材上に塗布された機能性層形成用塗工液に含有される溶媒の揮発を抑制する溶媒揮発抑制手段を用いることが好ましい。このような溶媒揮発抑制手段を設けることにより、例えば、塗布工程から急速固化工程に至るまでに多少の時間が空いた場合でも、溶媒の自然蒸発を抑制することができるため、機能性層の中心部および端部の厚みの差を、色調ムラ等の不都合を発生させない程度とすることができるからである。
【0023】
さらに本発明においては、上記溶媒揮発抑制手段が、機能性層形成用塗工液が塗布された基材の上面から機能性層形成用塗工液の表面を覆うように、蓋状構造物を用いる手段であることが好ましい。簡便な方法で効果的に溶媒の揮発を抑制することができるからである。
【0024】
また本発明においては、上記急速固化工程は、機能性層形成用塗工液が塗布された基材を加熱することにより、機能性層形成用塗工液を急速固化させることが好ましい。煩雑な手間を要することなく、機能性層形成用塗工液を急速に固化させることができるからである。
【0025】
本発明においてはさらに、上記機能性層は、有機EL素子の発光層、カラーフィルタの着色層、または、色変換フィルタの色変換層であることが好ましい。これらの部材は、特に膜厚の均一性が要求されることから、本発明の効果を十分に活かすことができるからである。
【0026】
また、上記目的を達成するために、本発明においては、溶媒を含み機能性層を形成する機能性層形成用塗工液を基材上に吐出法により塗布する塗布手段と、前記基材の上面から塗布された機能性層形成用塗工液の表面を覆うことにより溶媒の揮発を抑制する蓋状構造物と、前記塗布手段により塗布された機能性層形成用塗工液を急速に固化させる急速固化手段とを有することを特徴とする機能性素子の製造装置を提供する。
【0027】
本発明の機能性素子の製造装置においては、溶媒が揮発する前に機能性層形成用塗工液を急速固化させるために、蓋状構造物を設けることにより溶媒の揮発を抑制し、さらに、急速固化手段により機能性層形成溶塗工液を急速に固化させることから、機能性層の中心部および端部の厚みの差を、色調ムラ等の不都合を発生させない程度とすることができ、機能性層を平坦化することができる。
【0028】
上記発明においては、上記蓋状構造物は、上記前記塗布手段により機能性層形成用塗工液が基材上に塗布された後に、基材上に塗布された機能性層形成用塗工液の表面を覆うことができ、かつ急速固化手段により急速固化する前まで基材上に塗布された機能性層形成用塗工液の表面を覆うことができる位置に形成されていることが好ましい。蓋状構造物をこのように設けることにより、塗布手段により機能性層形成用塗工液が塗布された後、即座に蓋状構造物によって機能性層形成用塗工液の表面上を覆うことができるため、溶媒の揮発を十分に抑制することができ、機能性層の膜厚の均一化に効果を有するからである。
【0029】
さらに本発明においては、上記急速固化手段は、上記塗布手段により塗布された機能性層形成用塗工液を有する基材を加熱することにより、上記機能性層形成用塗工液を急速固化させる手段であることが好ましい。特に煩雑な手間を要することなく、機能性層形成用塗工液を急速に固化させることができるからである。
【0030】
本発明においてはまた、上記機能性素子が、有機EL素子、カラーフィルタ、または、色変換フィルタであることが好ましい。本発明の効果を最大限に活かすことができる部材だからである。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の機能性素子の製造方法およびその製造装置について説明する。
【0032】
A.機能性素子の製造方法
本発明の機能性素子の製造方法は、基材と、前記基材上に吐出法によりパターン状に形成された機能性層とを有する機能性素子の製造方法において、基材上に、溶媒を含み前記機能性層を形成する機能性層形成用塗工液を吐出法によりパターン状に塗布する塗布工程と、前記溶媒が揮発する前に、前記機能性層形成用塗工液を急速固化させる急速固化工程とを有することを特徴とするものである。
【0033】
本発明においては、溶媒が揮発する前に、機能性層形成用塗工液を急速に固化させることにより、機能性層の中心部と端部とにおける膜厚の差を小さくすることができ、膜厚の均一性を図ることができる。このような機能性層を有する機能性素子は色調ムラ等の不都合を発生させる可能性を低下させる効果を有する。
【0034】
上記発明においては、特に上記溶剤の沸点が、100℃〜300℃の範囲内、中でも150℃〜250℃の範囲内であることが好ましい。沸点が上記範囲より高い場合は、急速固化工程において溶剤を完全に除去することが困難であることから、最終的に得られる機能性層中に溶媒が含有されることになり、機能性層の信頼性が大きく損なわれることとなる。また、急速固化工程においてより高い温度で加熱することにより溶媒を除去する方法も考えられるが、これでは機能性層を構成する材料が劣化してしまう等の問題が生じることから好ましくない。また、沸点の温度が上記範囲より低い場合は、塗布する際に溶媒の揮発による粘度の変化等により、取り扱いが困難となり、また後述する溶媒揮発抑制手段を設けた場合でも、溶媒の揮発を抑えることが難しくなる等の問題が生じる場合があるからである。
【0035】
このような利点を有する本発明の機能性素子の製造方法について図面を用いて具体的に説明する。図1は、本発明の機能性素子の製造方法の一例を示した工程図である。
【0036】
まず、図1(a)に示すように、隔壁1が形成されている基材2上に、機能性層を形成する機能性層形成溶塗工液3を、インクジェット法を用い、ノズル4から吐出する。隔壁1間に塗布された機能性層形成用塗工液3は、それ自身の表面張力によって、凸形状の状態で保持される。このような凸形状の機能性層形成用塗工液3を、機能性層形成用塗工液3に含有される溶媒が揮発する前に、図1(b)に示すように、強制的に加熱5し、急速に固化させる。このように、溶媒が揮発する前に、急速固化させることにより、図1(c)に示すように、端部と中央部とにおける膜厚の差が小さく、膜厚が平坦状に形成された機能性層6を形成することができる。
【0037】
以下、このような本発明の機能性素子の製造方法について工程ごとに分けて詳細に説明する。
【0038】
1.塗布工程
まず、塗布工程について説明する。本発明における塗布工程とは、基材上に、溶媒を含み前記機能性層を形成する機能性層形成用塗工液を吐出法によりパターン状に塗布する工程である。
【0039】
(1)吐出法
本発明は、吐出法により形成された機能性層において、端部と中央部とにおける膜厚の差を小さくし、膜厚の均一化を図ることを主目的とする発明である。このような本発明において、機能性層を形成する機能性層形成用塗工液を塗布する方法としては、吐出法であれば特に限定はされない。具体的には、インクジェット法、ディスペンサー法等を挙げることができる。本発明においては、その中でもインクジェット法であることが好ましい。インクジェット法は、一般的に汎用されている吐出法であり、材料効率に優れ、製造効率上有利であるからである。
【0040】
(2)機能性層形成用塗工液
また、本発明において形成される機能性層とは、発光層、着色層および色変換層等を挙げることができ、これら各層を形成する際の塗工液が本発明で言う機能性層形成用塗工液となる。
【0041】
このような機能性層形成用塗工液は、溶媒を含むものであれば特に限定はされないが、本発明においては、機能性層形成用塗工液を吐出法により塗布することから、吐出法に適したものが用いられることが好ましい。例えば、インクジェット法に用いる塗工液の性質としては、溶媒を含み、粘度が低く、比較的沸点が高いものであること等が挙げられる。上記性質を有する機能性層形成用塗工液とすることにより、ノズル口から速やかに滞りなく塗工液を吐出させることができ、かつノズル内壁への塗工液の残存を防止し、塗工液の側面からインクジェット法の塗布精度を向上させることができるからである。
【0042】
また、上述したように粘度が低い機能性層形成用塗工液を用いると、塗工液の粘度の低さから、基材上に塗布された際、過剰に濡れ広がることがある。そこで、このような塗工液の過剰な濡れ広がりを防止する方法が、予め基材に施されていてもよい。このような方法としては、隔壁を設置し塗工液の進行を防止する方法や親液性および撥液性の濡れ性の差によるパターンが形成されたパターン形成層を基材上に設ける方法等を挙げることができる。
【0043】
(3)基材
本発明に用いる基材は、形成された機能性層が用いられる機能性素子の用途等に応じて適宜選択されるものである。機能性層が、着色層や有機EL素子の発光層である場合等においては、透明基板であることが必要な場合があり、この場合は、透明性が高いものが好ましく、ガラス等の無機材料や、透明樹脂等を用いることができる。
【0044】
2.急速固化工程
次に、急速固化工程について説明する。本発明における急速固化工程とは、上述した機能性層形成用塗工液に含有される溶媒が揮発する前に、上記機能性層形成用塗工液を急速固化させる工程である。
【0045】
本発明においては、溶媒が自然乾燥により揮発し乾燥が進行する前に、本工程により機能性層形成用塗工液を固化させるため、機能性層の端部と中央部とにおける膜厚の差を小さくすることができ、色調ムラ等の不都合が生じることがない程度の膜厚の均一性を図ることができるのである。
【0046】
このような本工程において、機能性層形成用塗工液に含有される溶媒が揮発する前とは、多少溶媒が揮発した場合であっても、その後、本工程により固化させることにより、機能性層の端部と中央部との膜厚の差が、色調ムラ等の不都合を発生させない程度とすることができるのであれば、本発明で言う溶媒が揮発する前に含まれるものとする。
【0047】
また、本工程において機能性層形成用塗工液を固化させる方法としては、溶媒が揮発する前に機能性層形成用塗工液を固化させることができるのであれば特に限定はされないが、具体的には、機能性層形成用塗工液が塗布された基材を減圧下に配置する方法や加熱する方法等が挙げられるが、本発明においては、加熱することにより、機能性層形成用塗工液を急速固化させる方法であることが好ましい。さらに、加熱する方法としては、機能性層形成用塗工液の温度を容易に上昇させ、固化させることが可能であるものならば特に限定されない。従って、一般的に用いられている加熱方法を使用することができ、具体的には、オーブン、赤外線ヒーター、ホットプレート等が挙げられる。その中でも、ホットプレートまたは赤外線ヒーターが好ましい。ホットプレートは、基材の下側から直接熱を伝導させるため、熱効率に優れ、かつ加熱ムラが少ないからである。また、赤外線ヒーターは深達力が高く、機能性層形成用塗工液の内部まで均一に加熱することが可能であるからである。
【0048】
3.溶媒揮発抑制手段
本発明においては、基材上に塗布された機能性層形成用塗工液において、溶媒が揮発する前に上記急速固化工程を行うことにより、形成された機能性層において、端部と中央部との膜厚の差を小さくするものであるが、通常塗布工程直後に急速固化工程を行うことは、装置構成上困難である場合が多い。したがって、本発明においては、上記塗布工程と急速固化工程の間に、基材上に塗布された機能性層形成用塗工液に含有される溶媒の揮発を抑制する溶媒揮発抑制手段を用いることが好ましい。
【0049】
本発明に用いられる溶媒揮発抑制手段とは、上記塗布工程および上記急速固化工程の間に用いられるものであり、急速固化工程の前に生じる溶媒の揮発を抑制する手段である。
【0050】
このような溶媒揮発抑制手段を設けることにより、例えば、塗布工程から急速固化工程に至るまでの間に、多少の時間が空いた場合でも、そのような間に生じる溶媒の自然蒸発を抑制することができるため、機能性層の中心部および端部の厚みの差を小さくする効果を高めることができるからである。
【0051】
本発明において溶媒揮発抑制手段としては、溶媒の揮発を抑制することができる手段であれば特に限定はされない。例えば、基板全体を機能性層形成用塗工液に用いられる溶媒の蒸気で飽和したチャンバー内に配置する方法や基板を冷却する方法等を挙げることができるが、中でも本発明においては、機能性層形成用塗工液が塗布された基材の上面から機能性層形成用塗工液の表面上を覆うように、蓋状構造物を用いる手段を用いることが好ましい。
【0052】
蓋状構造物で基材の上面を覆うことにより、機能性層形成用塗工液表面の周辺の雰囲気を密閉状態に近い状態とすることができるため、揮発した溶媒を飽和状態に速やかに到達させることができる。したがって、溶媒の揮発速度が低下するため、溶媒の揮発を抑制することができるのである。
【0053】
このような蓋状構造物としては、基材上に塗布された機能性層形成用塗工液の表面を基材の上面から、一定の距離をおいて覆うことができるものであれば特に限定はされない。具体的には、図2(a)に示すように、蓋状構造物20が板状のものや、図2(b)に示すように、側面が形成されており、機能性層形成用塗工液3の表面のみならず側面をも覆うことができるもの等を挙げることができる。
【0054】
さらに、蓋状構造物を形成する材料としては、特に限定はされないが、溶媒の乾燥状態を確認できるように光透過性の材質であることが好ましく、例えば、ガラス、石英等を挙げることができる。その中でも、汚染防止効果を考慮して石英であることが好ましい。
【0055】
また、上記蓋状構造物を機能性層形成用塗工液の表面上に配置する際、機能性層形成用塗工液の表面から蓋状構造物までの距離は、具体的には、図2に示す、Aの間隔を、1mm〜10mmの範囲内、その中でも、1mm〜5mmの範囲内とすることが好ましい。上記範囲内の距離であれば、機能性層形成用塗工液の表面付近の雰囲気は、密閉状態に近くなるため、揮発した溶媒は、飽和状態に達しやすく、揮発速度を速やかに低下させることができるからである。
【0056】
4.機能性素子
上記本発明の機能性素子の製造方法は、種々の機能性素子を製造することが可能である。しかしながら、上述した機能性素子の製造方法により製造される機能性素子における機能性層は、EL素子の発光層、カラーフィルタの着色層または色変換フィルタの色変換層であることが好ましい。これは本発明によれば、機能性層の中心部および端部の膜厚の差が好適に小さい平坦化された機能性層を得ることができるため、EL素子、カラーフィルタまたは色変換フィルタとして用いることにより、素子特性が向上し、高精細な発色が可能となるからである。
【0057】
なお、ここでいう色変換フィルタとは、例えば、発光部から青色または白色の発光を受けた際に、多数色、例えば赤色、緑色、および青色の3原色に色を変換することができる色変換層を有するフィルタを示すものであり、必要に応じて色補正用のカラーフィルタを有するものであってもよい。
【0058】
また、本発明における機能性層において、端部と中央部とにおける膜厚の差は、色調ムラ等の不都合を生じさせない程度であれば特に限定はされないが、具体的には、5%〜30%の範囲内、その中でも、5%〜10%の範囲内であることが好ましい。EL素子の発光層では、その機能を効果的に得るための適正な膜厚は、50nm〜100nm程度であり、カラーフィルタの着色層または色変換フィルタの色変換層では、1μm〜5μm程度であるので、それぞれについて端部と中央部とにおける膜厚の差は、具体的には、EL素子の発光層の場合、2.5nm〜30nmの範囲内、その中でも、2.5nm〜10nmの範囲内であることが好ましい。また、カラーフィルタの着色層または色変換フィルタの色変換層の場合では、50nm〜1500nmの範囲内、その中でも、50nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。本発明においては、上記範囲内の膜厚の差に容易に形成することができることから、表示特性に優れた機能性素子を提供することが可能である。
【0059】
また、本発明の機能性素子の製造方法により製造された機能性素子を用いて提供される表示装置としては、図5に示すように、本発明の機能性素子を表示部50に備えた携帯電話51、やPDA(Personal Degital Assistant)タイプの端末52、PC(Personal Computer)53、デジタルカメラ54、その他、図示していないがテレビ受像機、ビデオカメラ等の用途に用いることができる。
【0060】
B.機能性素子の製造装置
次に、本発明の機能性素子の製造装置について説明する。
【0061】
本発明の機能性素子の製造装置は、溶媒を含み前記機能性層を形成する機能性層形成用塗工液を吐出法により塗布する塗布手段と、前記基材の上面から機能性層形成用塗工液の表面を覆うことにより溶媒の揮発を抑制する蓋状構造物と、前記塗布手段により塗布された機能性層形成用塗工液を、前記溶媒が揮発する前に急速に固化させる急速固化手段とを有することを特徴とするものである。
【0062】
本発明の機能性素子の製造装置においては、溶媒が揮発する前に機能性層形成用塗工液を急速固化させるために、蓋状構造物を設けることにより溶媒の揮発を抑制し、さらに、急速固化手段により機能性層形成溶塗工液を急速に固化させることから、機能性層の中心部および端部の厚みの差を、色調ムラ等の不都合を発生させない程度の差に形成することができる。
【0063】
このような利点を有する本発明の機能性素子の製造装置について図面を用いて説明する。図3は、本発明の機能性素子の製造装置の一例を図示した説明図であり、機能性層形成用塗工液30を吐出するノズル31等が形成されている塗布手段32と、この塗布手段32のノズル31から吐出された機能性層形成用塗工液30が着弾する基材33を安定に保持するステージ34と、塗布手段32から機能性層形成用塗工液30が塗布された後、速やかに機能性層形成用塗工液30の表面上を覆うことができる蓋状構造物35と、塗布手段32により機能性層形成用塗工液30が塗布された基材33を下側から加熱する熱源36とを示している。このような構成の装置とすることにより、溶媒が揮発する前に、機能性層形成用塗工液を急速に固化することができ、容易に機能性層の平坦化を可能とする。以下、このような機能性素子の製造装置において、各手段に分けて説明する。
【0064】
1.塗布手段
本発明における塗布手段としては、溶媒を含み機能性層を形成する機能性層形成用塗工液を吐出法により塗布することができる手段であれば特に限定はされない。その中でも、インクジェット装置であることが好ましい。インクジェット装置は、吐出装置の中でも最も汎用されている装置であり、塗布手段として製造効率に優れ、簡便な製造工程で塗布することを可能とするからである。
【0065】
2.蓋状構造物
本発明における蓋状構造物は、基材の上面から機能性層形成用塗工液の表面を覆うことにより溶媒の揮発を抑制することが可能なものであれば特に限定はされない。
【0066】
このような蓋状構造物は、本発明の機能性素子の製造装置において、機能性層形成用塗工液が上記塗布手段により基材上に塗布された後、速やかに機能性層形成用塗工液の表面上に位置させることができるのであれば、いずれの部分に設置されていても特に限定はされない。具体的には、蓋状構造物が、前記塗布手段により機能性層形成用塗工液が基材上に塗布された後に、基材上に塗布された機能性層形成用塗工液の表面を覆うことができ、かつ急速固化手段により急速固化する前まで継続して基材上に塗布された機能性層形成用塗工液の表面を覆うことができる位置に形成されていることが好ましい。
【0067】
例えば、図3では、基材33を安定に保持するステージ34が移動する例を示しているが、この場合、ステージ34が矢印方向に移動するとすると、塗布手段32から塗布される機能性層形成用塗工液30は、矢印と反対方向に向って塗布されることとなる。この場合、図3に示す位置に蓋状構造物35を設けることにより、塗布直後に蓋状構造物35により、機能性層形成用塗工液30の表面上を覆うことができる。また、図4に示すように、機能性層形成用塗工液40が往復並行状に塗布される場合であって、一本のライン41が塗布された後、ステージ42が矢印方向に移動する場合には、ステージ42の移動が進行するにつれて、機能性層形成用塗工液40の表面上が覆われるように蓋状構造物43を設けることにより、塗布直後に機能性層形成用塗工液40の表面上を覆うことができる。
【0068】
また、蓋状構造物によって機能性層形成用塗工液の表面上を覆う際には、蓋状構造物と機能性層形成用塗工液との距離が、上記「A.機能性素子の製造方法」における「3.溶媒揮発抑制手段」の欄に記載した範囲内とすることが好ましいが、このような範囲内に調整するために、蓋状構造物およびステージを相対的に上下方向に移動させる手段が設けられていることが好ましい。例えば、蓋状構造物自体が上下に移動する場合や、ステージ自体が上下に移動する場合であってもよい。
【0069】
その他蓋状構造物に関することは、上述した「A.機能性素子の製造方法」の項目の中に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0070】
3.急速固化手段
本発明における急速固化手段としては、溶媒が揮発する前に、基材上に塗布された機能性層形成用塗工液を、急速に固化させることができる手段であれば特に限定はされない。具体的には、上記塗布手段により塗布された機能性層形成用塗工液を有する基材を加熱することにより、機能性層形成用塗工液を急速固化させる手段であることが好ましく、一般的に用いられている加熱装置等を使用することができ、具体的には、オーブン、赤外線ヒーター、ホットプレート等が挙げられる。その中でも、ホットプレートまたは赤外線ヒーターによる加熱装置が好ましい。ホットプレートは、基材の下側から直接熱を伝導させて乾燥させる装置であるため、熱効率に優れ、かつ加熱ムラの少ない装置であるからである。また、赤外線ヒーターは深達力が高く、機能性層内部まで均一に加熱することが可能であるからである。
【0071】
また、上記加熱装置により機能性層形成用塗工液を加熱する際には、塗布手段にまでその影響が及ぶことがなく、好適な吐出条件を維持したまま機能性層形成用塗工液を塗布することができるように、基材上に塗布された機能性層形成用途工液を加熱することが好ましい。例えば、塗布手段により機能性層形成用塗工液を塗布する以前に、予め基材を加熱しておく方法では、塗布手段自体もその熱で加熱され、塗布手段内部で溶媒が揮発することにより、塗工液濃度が変化し、吐出条件が変化する不都合が生じる場合がある。このような場合、ノズルの先端に機能性層形成用塗工液が付着するため、吐出不良が多発するといった問題が生じる。したがって、このような不都合を回避するために、加熱する際には、基材上に機能性層形成用塗工液が着弾した後、機能性層形成用塗工液が表面に塗布された基材を加熱することが好ましい。
【0072】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0073】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をさらに説明する。
【0074】
[実施例1]
本発明の実施例として下記の溶液を調製した。
(有機EL層形成用塗布液の調製)
・ポリビニルカルバゾール 70重量部
・オキサジアゾール化合物 30重量部
・クマリン6(蛍光色素) 1重量部
これらをテトラリン(溶媒)に0.5重量%で溶解させ、インクジェット用の有機EL材料インクを作製した。
【0075】
蛍光色素がクマリン6の場合は501nmをピークに持つ緑色発光、ペリレンの場合は460〜470nmをピークに持つ青色発光、DCMの場合は570nmをピークに持つ赤色発光が得られ、これらを各色の発光材料として用いた。
【0076】
(インクジェット装置)
図3に示す、塗布手段と、その後上方から蓋状構造物で覆う機能を備えた機能性素子の製造装置を作製した。蓋状構造物は石英製とした。ノズルと基材の距離、蓋状構造物と基材の距離を独立して、調整できるようにした。基材を固定できるよう、ステージには真空吸着機能を設けた。塗布手段からの塗工液の吐出、塗工液の加熱乾燥の様子を観察できる様に、CCDカメラを設けた。ノズル、蓋状構造物を設置したヘッド部は固定で、基材を固定するステージが任意の方向に移動できるようX(縦)、Y(横)、Z(上下)、θ(回転)の機構とモーターを設けた。CCDカメラにより、基材のアライメントマークを利用して、ノズルとの精密な位置合わせを行うアライメント機能を設けた。パラメータとして、ノズルと基材の距離、蓋状構造物と基材の距離、ノズルからの吐出インク1滴の体積、単位時間あたりの吐出滴数、ステージ移動速度、ノズルからのインクの吐出タイミングを可変設定できるようにした。
【0077】
(基材の作製)
ガラス基材上にポリシリコン膜を使って、公知の画素回路構成の有機EL用アクティブマトリクス基材を作製した。対角17インチの基材(大きさ300mm×370mm)に、XGA(768×1024)規格の画素設計とした。図11に示すように、電極等を形成した基材を用意した。図12は画素をマトリクス状に配置した実際の表示装置の構造である。隔壁が電極絶縁層を兼ねるように、電極端を覆う配置とした。電極はITOからなる透明電極を成膜、エッチングによりパターン形成した。隔壁は東京応化社製の感光性レジストOFPR-800(粘度500cp)を1200rpmでスピンコート、110℃でプレベーク後、フォトマスクを用いて露光、現像を行ない、240℃でポストベークして形成した。上記の条件で隔壁高さ(膜厚)を6μmに形成することができた。このようにして形成した隔壁の形状は、走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて容易に確認する事ができる。隔壁の形状は基材面に対して凸形状の曲面断面形状を有し、その断面形状が円弧の一部分である事を確認した。
【0078】
なお、図13に示すように、透明電極130を用いるのは、ボトムエミッションの素子構造であり透明基材131を用い、有機EL層132で生じる発光133を、対向電極134と反対側の透明基材131側から得ることができる。また、図14に示すように電極140を金属を用いて形成し、トップエミッション素子構造とすることもできる。この場合は、有機EL層141で生じた発光143は、基材144と反対側の対向電極142側から取り出すため、この対向電極142を透明とする必要がある。
【0079】
(有機EL表示装置の作製)
基材を洗浄後、いわゆるバッファ層として正孔注入性を有するPEDOT/PSS(ポリチオフェン:Bayer CH8000)をスピンコートにより80nm塗布し、160℃で焼成して形成した。
【0080】
上記インクジェット装置を用いて上記R、G、Bの有機EL材料インクをPEDOT上の画素開口部に連続して吐出、蓋状構造物で覆う工程により基材上の全画素に溶媒が未乾燥な状態で配置した。続いて100℃に設定したホットプレート上に基材を蓋状構造物と共に移動させると同時に蓋状構造物を取り除き、加熱乾燥することにより発光層を3色並設形成した。乾燥後の平坦膜厚が100nmとなるようにインクジェット装置パラメータを調製した。
【0081】
続いてMgAg合金(Mg:Ag=10:1)を厚さ150nmになるように蒸着し、その上に保護層としてAgを200nmの厚みになるように蒸着し、陰電極を形成した。今回の様に、TFT基材を用いてアクティブマトリクス表示装置を作製する場合は、陰電極は全面形成とし、パッシブマトリクス表示装置を作製する場合は、基材上の電極パターンと直交するようにストライプ形状に形成する。
【0082】
最後に別に用意したガラス板とUV硬化シール材により封止し、有機EL表示装置を完成させた。
【0083】
こうして作製した有機EL表示装置に制御回路を接続して、映像信号を入力し駆動したところ、EL層膜厚の不均一に由来する発光不良は発生せず、全画面で均一で鮮やかなカラー画像表示を行う事が出来た。
【0084】
[比較例]
比較例として実施例1で蓋状構造物を取り除いて同様に行い、有機EL表示装置を作製した。この有機EL表示装置に制御回路を接続して、映像信号を入力し駆動したところ、発光層の膜厚の不均一に由来する発光不良画素が多数発生し、均一な画像表示を行う事が出来なかった。また、同一印加電圧での輝度が大幅に低下してしまい、また、効率も大きく低下してしまった。
【0085】
[実施例2]
実施例1で図4のようにステージの移動を往復移動と平行移動を組み合わせたものとし、ノズルのライン状移動が完了するのに合わせてステージが移動して基材が蓋状構造物の下方に移動するインクジェット装置に改良した以外は実施例1と同様に行った。
【0086】
こうして作製した有機EL表示装置に制御回路を接続して、映像信号を入力し駆動したところ、実施例1と同様に全画面で均一で鮮やかなカラー画像表示を行う事が出来た。
【0087】
実施例1ではステージ移動が一方向の場合にしか対応しなかったのに対して、実施例2ではステージ往復のいずれの場合にも対応することができるので、よりスループットを上げ生産性を高めることができた。
【0088】
[実施例3]
実施例1でステージは固定で、ヘッド部が任意の方向に移動できるようX(縦)、Y(横)、Z(上下)、θ(回転)の機構とモーターを設けた以外は同様に行い、実施例1と同様の全画面で均一で鮮やかなカラー画像表示を行う事が出来る有機EL表示装置を作製する事ができた。
【0089】
[実施例4]
実施例2でステージは固定で、ヘッド部が任意の方向に移動できるようX(縦)、Y(横)、Z(上下)、θ(回転)の機構とモーターを設けた以外は同様に行い、実施例2と同様の全画面で均一で鮮やかなカラー画像表示を行う事が出来る有機EL表示装置を作製する事ができた。実施例3ではヘッド移動が一方向の場合にしか対応しなかったのに対して、実施例4ではヘッド往復のいずれの場合にも対応することができるので、よりスループットを上げ生産性を高めることができた。
【0090】
[実施例5]
実施例1、実施例2、実施例3、実施例4でバッファ層PEDOT/PSSも蓋状構造物で覆って溶媒乾燥を防止しながら、インクジェット法で画素開口部に選択的に形成した以外は同様に行った。
【0091】
実施例1、実施例2、実施例3、実施例4でのスピンコート成膜の場合は、画素を囲む隔壁の影響でスピンコート後に僅かにムラがあったが、インクジェット法により形成することでPEDOTの成膜ムラをなくす事ができた。単にインクジェット法で形成しただけではPEDOTの画素内膜厚の不均一の問題が新たに生ずるはずであったが、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4と同様に蓋状構造物で覆って溶媒の揮発を抑制した効果により、スピンコートの場合と同様の表示性能、効率を保ったまま、基材面内の均一性を向上させることができた。
【0092】
[実施例6]
実施例1、実施例2、実施例3、実施例4で有機EL材料を顔料色素に変えて同様にインクジェット法でカラーフィルタを作製した。従来、インクジェット法で製造したカラーフィルタでは、着色層の膜厚不均一に由来する画素内での色調の不均一が問題であったが、本実施例では色調の不均一が発生することなく良好なカラーフィルタを作製する事ができた。
【0093】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0094】
【発明の効果】
本発明を用いることにより、溶媒が揮発する前に、機能性層形成用塗工液を急速に固化させることにより、機能性層の中心部と端部とにおける膜厚の差を小さくすることができ、膜厚の均一性を図ることができる。このような機能性層を有する機能性素子は色調ムラ等の不都合を発生させる可能性を低下させる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の機能性素子の製造方法の一例を示した工程図である。
【図2】本発明における蓋状構造物の例を示した概略断面図である。
【図3】本発明の機能性素子の製造装置の一例を示した説明図である。
【図4】本発明の機能性素子の製造装置の他の例を示した概略斜視図である。
【図5】本発明における機能性素子を表示部に用いた表示装置の例を示す概略斜視図である。
【図6】従来の機能性素子の製造方法の一例を示した工程図である。
【図7】従来における機能性素子の膜厚の不均一さを要因として生じる不都合の例として発光ムラを示した概略図である。
【図8】従来における機能性素子において、対向電極に生じる断線の例を示した概略断面図である。
【図9】従来における機能性素子において、隔壁の形状を曲面状とすることにより対向電極の断線を防止した例を示した概略断面図である。
【図10】従来におけるカラーフィルタの例を示した概略断面図である。
【図11】実施例において電極等の配置の例を示した概略図である。
【図12】実施例において画素の配置の例を示した概略図である。
【図13】ボトムエミッションの素子構造の一例を示した概略断面図である。
【図14】トップエミッションの素子構造の一例を示した概略断面図である。
【符号の説明】
1 …隔壁
2 …基材
3 …機能性層形成用塗工液
4 …ノズル
5 …加熱
6 …機能性層

Claims (5)

  1. 基材と、前記基材上に吐出法によりパターン状に形成された機能性層とを有する機能性素子の製造方法において、
    基材上に、溶媒を含み前記機能性層を形成する機能性層形成用塗工液を吐出法によりパターン状に塗布する塗布工程と、
    前記溶媒が揮発する前に、前記機能性層形成用塗工液を急速固化させる急速固化工程と
    を有し、
    前記急速固化工程は、機能性層形成用塗工液が塗布された基材を加熱することにより、機能性層形成用塗工液を急速固化させる工程であり、
    前記塗布工程と前記急速固化工程との間に、前記基材上に塗布された機能性層形成用塗工液に含有される溶媒の揮発を抑制するため、機能性層形成用塗工液が塗布された基材の上面から塗布された機能性層形成用塗工液の表面を蓋状構造物で覆う工程と、前記急速固化工程の前に前記蓋状構造物を取り外す工程とを有し、
    前記溶媒の沸点が、150℃〜250℃の範囲内であることを特徴とする機能性素子の製造方法。
  2. 前記機能性層は、有機エレクトロルミネッセント素子の発光層、カラーフィルタの着色層、または、色変換フィルタの色変換層であることを特徴とする請求項1に記載の機能性素子の製造方法。
  3. 溶媒を含み機能性層を形成する機能性層形成用塗工液を基材上に吐出法により塗布する塗布手段と、前記基材の上面から塗布された機能性層形成用塗工液の表面を覆うことにより溶媒の揮発を抑制する蓋状構造物と、前記塗布手段により塗布された機能性層形成用塗工液を急速に固化させる急速固化手段とを有し、
    前記蓋状構造物は、前記塗布手段により機能性層形成用塗工液が基材上に塗布された後に、基材上に塗布された機能性層形成用塗工液の表面を覆うことができ、かつ急速固化手段により急速固化する前まで基材上に塗布された機能性層形成用塗工液の表面を覆うことができる位置に形成されていることを特徴とする機能性素子の製造装置。
  4. 前記急速固化手段は、前記塗布手段により塗布された機能性層形成用塗工液を有する基材を加熱することにより、前記機能性層形成用塗工液を急速固化させる手段であることを特徴とする請求項に記載の機能性素子の製造装置。
  5. 前記機能性素子が、有機エレクトロルミネッセント素子、カラーフィルタ、または、色変換フィルタであることを特徴とする請求項または請求項に記載の機能性素子の製造装置。
JP2003040039A 2003-02-18 2003-02-18 機能性素子の製造方法およびその製造装置 Expired - Fee Related JP4374197B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003040039A JP4374197B2 (ja) 2003-02-18 2003-02-18 機能性素子の製造方法およびその製造装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003040039A JP4374197B2 (ja) 2003-02-18 2003-02-18 機能性素子の製造方法およびその製造装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2004253179A JP2004253179A (ja) 2004-09-09
JP4374197B2 true JP4374197B2 (ja) 2009-12-02

Family

ID=33024044

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003040039A Expired - Fee Related JP4374197B2 (ja) 2003-02-18 2003-02-18 機能性素子の製造方法およびその製造装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4374197B2 (ja)

Families Citing this family (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4556692B2 (ja) * 2005-02-07 2010-10-06 セイコーエプソン株式会社 電気光学装置の製造方法、および液滴吐出装置
JP2006346647A (ja) * 2005-06-20 2006-12-28 Seiko Epson Corp 機能液滴塗布装置及び表示装置及び電子機器
WO2007004627A1 (ja) * 2005-07-05 2007-01-11 Konica Minolta Holdings, Inc. パターニング装置、有機エレクトロルミネッセンス素子とその製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置
CN101243561B (zh) 2005-08-18 2010-04-21 柯尼卡美能达控股株式会社 有机电致发光元件、显示装置、照明装置
WO2007060826A1 (ja) * 2005-11-24 2007-05-31 Konica Minolta Holdings, Inc. 有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置及び照明装置
JP4899504B2 (ja) 2006-02-02 2012-03-21 株式会社日立製作所 有機薄膜トランジスタの製造方法および製造装置
JP5192127B2 (ja) * 2006-02-21 2013-05-08 コニカミノルタホールディングス株式会社 有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法
CN101743782A (zh) 2007-09-19 2010-06-16 富士电机控股株式会社 色变换滤光片、以及色变换滤光片和有机el显示器的制造方法
JP2009244296A (ja) * 2008-03-28 2009-10-22 Fuji Electric Holdings Co Ltd 色変換フィルタ
WO2010092688A1 (ja) 2009-02-16 2010-08-19 富士電機ホールディングス株式会社 色変換フィルタの製造方法
JP5220150B2 (ja) * 2011-03-18 2013-06-26 株式会社アルバック 印刷方法
JP5716759B2 (ja) * 2013-01-09 2015-05-13 コニカミノルタ株式会社 有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法
JP2017195115A (ja) * 2016-04-21 2017-10-26 住友化学株式会社 有機el素子の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2004253179A (ja) 2004-09-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4440523B2 (ja) インクジェット法による有機el表示装置及びカラーフィルターの製造方法、製造装置
JP4413535B2 (ja) インクジェット法による有機el表示装置及びカラーフィルターの製造方法、製造装置
JP3900724B2 (ja) 有機el素子の製造方法および有機el表示装置
US8267735B2 (en) Pattern formation method for electroluminescent element
TWI453791B (zh) 裝置、膜形成方法及裝置的製造方法
US7368145B2 (en) Method and apparatus for manufacturing organic EL display and color filter by ink jet method
JP4170700B2 (ja) エレクトロルミネッセンス表示装置および製造方法
JP5096648B1 (ja) 有機elディスプレイパネル及びその製造方法
JP4148933B2 (ja) 機能膜の製造方法、機能膜形成用塗液、機能素子、電子デバイス及び表示装置
JP5092485B2 (ja) 有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ及びその製造方法
JP4374197B2 (ja) 機能性素子の製造方法およびその製造装置
JP2007095608A (ja) 電気光学装置、電子機器、および電気光学装置の製造方法
CN110571363B (zh) 一种显示基板及其制备方法、显示装置
JP5037145B2 (ja) カラーフィルタ製造方法
TW201351636A (zh) 顯示裝置之製造方法
JP2011023668A (ja) 液柱塗布用インクおよび有機el素子の製造方法、並びに該有機el素子を有する有機el表示装置
JP4391094B2 (ja) 有機el層形成方法
JP2013073842A (ja) 有機elディスプレイ、有機elディスプレイの製造方法
JP4765857B2 (ja) 有機el発光材料、及び有機el装置の製造方法
JP4459521B2 (ja) エレクトロルミネッセンス表示装置
US20210098744A1 (en) Display Substrate, Ink-jet Printing Method Thereof, and Display Apparatus
JP2003017261A (ja) 電界発光素子の製造方法及びその装置
JP2008186766A (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法
JP2004079428A (ja) 発光装置及びその製造方法、並びに電子機器
JP2013214396A (ja) 機能膜の形成方法、有機elパネルの製造方法、表示装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060202

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20080912

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080924

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20081120

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20090113

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090305

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20090428

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090901

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090907

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120911

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120911

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130911

Year of fee payment: 4

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees