JP4370599B2 - 非空気式タイヤ - Google Patents
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Description
本発明はタイヤ側面に開口する多数の孔を有する非空気式タイヤに関するものである。
技術背景
従来フォークリフトやホイールローダー等の産業車両用の車輪には空気入りタイヤが使用されている。しかし、重量物運搬中に悪路等でパンクすることがあり、パンクする恐れがある場合には空気入りタイヤに代えて、非空気式タイヤ(ソリッドタイヤ)が好んで使用されることが多い。
しかし、非空気式タイヤは剛性が高く、路面の凹凸を振動として機体に伝えるため乗心地が悪く、又、ホイールが割れるなど機体にも悪影響を及ぼしていた。
そこで、パンクしない非空気式タイヤの特性を生かし、尚且つクッション性を持たせる方法として非空気式タイヤの側面に孔を穿設する方法が提案されている。この側面に孔を穿設した非空気式タイヤの理想的な孔の形態が、日本国特表平11−514602号公報、日本国特表2000−515452号公報、そして日本国特開平10−236217号公報に開示されている。それらの提案に基づいて実用化された孔を穿設した非空気式タイヤは市場に投入され広く使用されている。従来のタイヤ側面に開口する孔を設けた非空気式タイヤ(ソリッドタイヤ)、即ち、孔開きソリッドタイヤの1例を図13に示す。
図13に示す通り、従来の孔開きソリッドタイヤTは、ゴム弾性材料により形成されており、リム(図示せず)に装着される内周部分のベース部Bと接地面側のトレッドDが同心円上に配置されており、タイヤ左右両側面のそれぞれに複数の孔Hがタイヤ軸方向に穿設されている。
元来、非空気式タイヤのリムと嵌合する内周部分には、リムへタイヤをしっかりと固定するために剛性の高いゴムが使用されている。また非空気式タイヤのリムと嵌合する内周部分と路面に接地されるトレッド部の間の、中間部には機体への振動の伝達防止と乗心地を考慮して、クッション性のよいゴムが使用されている。そして、トレッド部には路面との摩擦による摩耗を考慮して耐摩耗性のよいゴムを使用するのが一般的であり、トレッド部と中間部は同質のゴムで構成されることもある。
この構成は、タイヤ側面に開口する孔を設けた非空気式タイヤ、即ち、孔開きソリッドタイヤにおいても同様であり、タイヤ側面に開口する孔は、通常クッション性を考慮した中間部、或いは、トレッド部と中間部にまたがるゴム層に設けられている。
このようなタイヤ側面に開口した孔を有する非空気式タイヤにおいては、接地した側のタイヤ本体が荷重を受けて撓んで変形するとき、その部分に位置する孔の形状も変形する。従って、車両が走行しタイヤが回転すると各孔は変形を繰り返し、各孔の壁面の最も変形する部分には大きな歪が繰り返し生ずることとなり、発生頻度が低いとは言えタイヤトレッドが摩耗してタイヤ寿命が来る前に、この部分のゴムが次第に疲労して亀裂が発生する場合がある。この場合、タイヤとしての性能を保持しているにもかかわらず、外観上タイヤとしての価値が低下するためタイヤ交換を余儀なくされることとなり、問題となっている。そして、この孔部壁における亀裂発生現象は、特に繰り返し伸長歪が生じる部分に多く見られ、タイヤトレッドに近いほどタイヤの変形が大きいため孔のタイヤ半径方向外側となる部分に多く発生する。
この対策としてタイヤ変形時に歪が一部に集中しないような孔形状を設計することも考えられる。しかし、タイヤが装着されている車両の運転状況、即ち、定常走行時、発進時、そして制動時等の孔変形は状況に応じて全て異なっている。そのため、孔の変形状態は状況により変化し、また歪集中域も一定の箇所とは限らず移動するため効果的な設計は容易ではない。
また、前述したようにタイヤ側面に開口する孔は中間部であるクッション部に、または、トレッド部とクッション部にかけて穿設されている。しかし、孔が穿設されるクッション部のゴムは、クッション性や耐発熱性を、トレッド部のゴムは耐摩耗性を主眼に設計される。このため、繰り返し変形に対する耐疲労性は考慮されておらず、タイヤが回転して孔が繰り返し変形する時、孔部壁の歪集中域、特に伸長歪が生じる部分から亀裂が発生する危険性がある。
一般にゴム特性は、反発弾性の良いゴムはクッション性や耐発熱性が良い反面、繰り返し変形に対する耐伸長疲労性は劣り、反発弾性の良くないゴムは繰り返し変形に対する耐疲労性が良い反面、クッション性や耐発熱性が劣ると言う二律背反の関係にある。
従って、仮にクッション部のゴムを、耐伸長疲労性に考慮して設計すると、クッション性や耐発熱性を犠牲にすることになり、クッション性や耐発熱性が良くないタイヤになる。同様に、トレッド部のゴムを耐伸長疲労性に考慮して設計すると、耐摩耗性を犠牲にすることになり、耐摩耗性の悪い寿命の短いタイヤとなる。
本発明は、従来の孔開き非空気式タイヤが本来有するクッション性や耐発熱性及び耐摩耗性を犠牲にすることなく、仮に孔部壁面へ歪の集中域が生じたとしても、孔部壁に容易に亀裂が生ずることが無く、また、発生したとしても亀裂が容易に成長しないタイヤ側面に開口した孔を有する非空気式タイヤを提供することを目的としている。
【発明の開示】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであって、本発明の非空気式タイヤはゴム弾性体などで形成され、タイヤ側面に開口する多数の孔を有しており、各孔の少なくともタイヤ半径方向外側の開口部を含む孔周辺に、当該孔周辺ゴム部と異なる耐伸長疲労牲の良い補強ゴムを配置したことを特徴としている。
上記構成ではタイヤの接地側部分が荷重を受けて変形するとき、タイヤ側面に開口した孔も変形し、タイヤが回転するとき孔が変形を繰り返し、該孔のタイヤ半径方向外側の一部に集中して繰り返し伸長歪みが生じるが、各孔の少なくともタイヤ半径方向外側の開口部を含む孔周辺に当該孔周辺ゴム部と異なる耐伸長疲労性の優れた補強ゴムを配置しているため、トレッド部、クッション部の特性を損なわず、タイヤ半径方向外側の孔部壁に亀裂が発生するのを防止、或いは遅延することができ、その結果、タイヤの寿命を延ばすことができる。
さらに本発明は、非空気式タイヤのタイヤ側面に開口する多数の孔の周辺に対し各孔を包囲するものとなした補強布帛や補強線材などを埋設したことを特徴としている。
上記構成により、タイヤが回転して孔が変形するとき、該孔のタイヤ半径方向外側の孔部壁に負荷が加わる時、上記補強材が緩衝材となって負荷を分散して歪み集中域が生じるのを防止、或いは、緩和するため、トレッド部、クッション部の特性を損なわずに、タイヤ半径方向外側の孔部壁に生じる亀裂の発生を防止、又は、遅延する事ができる。また、仮に該孔のタイヤ半径方向外側の孔部壁周囲に亀裂が発生したとしても亀裂の成長を防止、或いは、遅延させることができる。
そして本発明は、非空気式タイヤのタイヤ側面に開口する多数の孔の、少なくともタイヤ半径方向外側の開口部を含む孔周辺に当該孔周辺ゴム部と異なる耐伸長疲労性に優れた補強ゴムを配置するほか、各孔の周辺にこれを包囲するものとなした補強布帛や補強線材などを埋設したことを特徴としている。
上記構成により、上述した補強ゴムの亀裂発生防止効果に加えて、補強材の歪緩和効果が加わり、孔のタイヤ半径方向外側の歪み集中域の発生をより効果的に防止・緩和することができるので、亀裂が発生し難く、より優れた亀裂発生防止効果が得られる。
なお、タイヤ側面に開口する孔の少なくともタイヤ半径方向外側の開口部を含む孔周辺に配置する補強ゴムは、耐伸長疲労性試験において、発生する亀裂の深さと長さの積が100mm2に達するまでの回数が、好ましくは150万回以上、望ましくは300万回以上のゴムを使用するのがよい。
また、本発明のタイヤ側面に開口する孔の周辺ゴムに各孔を包囲するものとして埋設する補強材は、ナイロンやポリエステル繊維等の合成繊維からなる布帛や線材等で形成される。この際、布帛に形成した補強材は、柔軟性を兼ね備えたものとなる。
上記構成のとおり、補強材を用いたことにより、孔のタイヤ半径方向外側に加わる負荷を効果的に分散して、歪み集中域の発生を防止或いは緩和でき亀裂の発生をおさえる事ができる。仮に亀裂が発生したとしても亀裂の成長を防止・遅延させることができる。また、障害物との接触による外傷の発生も低減でき、仮に外傷が発生したとしても、その外傷が容易に伝播せず傷口の拡大を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の孔開きソリッドタイヤの第1実施例を示すタイヤ軸線に沿った断面図である。
図2は、図1のX−X線断面図である。
図3は、第1実施例の孔開きソリッドタイヤの別実施例を示し、Aは別例1のタイヤをその左半分で示すタイヤ軸線に沿った断面図、Bは別例2のタイヤをその左半分で示すタイヤ軸線に沿った断面図、そしてCは別例3のタイヤをその左半分で示すタイヤ軸線に沿った断面図である。
図4は、本発明の孔開きソリッドタイヤの第2実施例を示しており、Aはタイヤ軸線に沿った断面図であり、BはAのX−X線断面図である。
図5は、第2実施例の孔開きソリッドタイヤの別例1を示しており、Aはタイヤをその左半分で示すタイヤ軸線に沿った断面図であり、BはAのX−X線断面図である。
図6は、第2実施例の孔開きソリッドタイヤの別例2を示しており、Aはタイヤをその左半分で示すタイヤ軸線に沿った断面図であり、BはAのX−X線断面図である。
図7は、第2実施例の孔開きソリッドタイヤの別例3を示しており、Aはタイヤをその左半分で示すタイヤ軸線に沿った断面図であり、BはAのX−X線断面図である。
図8は、第2実施例の孔開きソリッドタイヤの別例4を示しており、Aはタイヤをその左半分で示すタイヤ軸線に沿った断面図であり、BはAのX−X線断面図である。
図9は、本発明の孔開きソリッドタイヤの第3実施例を示しており、Aはタイヤをその左半分で示すタイヤ軸線に沿った断面図であり、BはAのX−X線断面図である。
図10は、従来の非空気式タイヤと本発明の第2実施例の別例3について行った歪試験の状況とその結果を示しており、Aは荷重を掛けていない従来の非空気式タイヤの状態を示すタイヤの一部側面図、Bは荷重を掛けていない第2実施例の別例3の非空気式タイヤの状態を示すタイヤの一部側面図、Cは2トンの荷重を掛けた際の従来の非空気式タイヤの状態を示すタイヤの一部側面図、Dは2トンの荷重を掛けた際の第2実施例の別例3の非空気式タイヤの状態を示すタイヤの一部側面図、そしてEは荷重を掛けた際の変化量と歪率を示す表である。
図11は、繰り返し変形に対する耐伸張疲労性を試験するゴム試験片を説明する図である。
図12は、本発明の補強ゴムの具体的な配合例及びその特性と、従来の一般的なトレッド部ゴムとクッション部ゴムの配合例及びその特性と対比した表を示している。
図13は、従来の孔開きソリッドタイヤの一例を示す一部破断斜視図である。
【符号の説明】
1は孔開きソリッドタイヤ、2はベース部、3はトレッド部、4はクッション部、5はタイヤ側面、6,6a,6bは孔、7,7a,7aは開口部、8,8a,8bは補強ゴム、9は孔部壁、10は補強材、11は金属板、12はゴム試験片、hは試験片のゴムの高さ、Dは試験片のゴムの直径、Sはビードワイヤである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は本発明の孔開きソリッドタイヤ1の第1実施例を示すものであり、図1はタイヤ軸線に沿った断面図、図2は図1のX−X線断面図である。
この第1実施例において、非空気式の孔開きソリッドタイヤ1は、ゴムなどの弾性材料で形成されており、リムに装着される内周部分のベース部2と接地面側のトレッド部3とを同心円上に配置している。また、両部間にクッション部4を形成し、該クッション部4のタイヤ左右両側面5a,5bのそれぞれに複数の孔6a,6bをタイヤ軸方向に穿設すると共に、円周方向に配置している。そして、補強ゴム8a,8bは、孔6a,6bの開口部7a,7bを含む範囲でタイヤ両側面5a,5bを覆うように配置されている。
補強ゴム8a,8bがタイヤ両側面5a,5bを覆う範囲は、少なくとも孔6a,6bの開口部7a,7bを含んだ範囲であり、クッション部の側面のみに配置される構成や、クッション部とトレッド部、或いは、クッション部とトレッド部とベース部にまたがって配置する構成としてもよい。
また、補強ゴム8a,8bは孔6a,6bの開口部7a,7bから孔深さ方向に、孔の深さの、約4分の1から孔全体にわたり孔の周囲全体を覆う構成としている。
具体例として7.00−12のタイヤの場合、タイヤ両側面5a,5bに配置した補強ゴム8a,8bの厚さは5〜15mmであり、孔6a,6bの周囲を孔深さ方向に覆う補強ゴム8a,8bは、深さ方向に漸減して孔深さの約3分の1から3分の2に達している。
補強ゴム8a,8bに使用されるゴム材は、耐伸長疲労性が良いゴムとするのであり、例えば硬度{JIS K6253(1997)デュロメータA硬度}が50〜80度で、天然ゴムとポリブタジエンゴムを主体とし、補強剤として窒素吸着比表面積が70〜140m2/gのISAF、HAFクラスのカーボンブラックを適宜混合使用するのであり、更にはシリカを適宜組み合わせて使用したものも適している。好ましい補強ゴムの具体的な配合例及びその特性(配合実施例1〜3)と、従来の一般的なトレッド部ゴムとクッション部ゴムの配合例及びその特性と対比した表を図12に示す。
図12の表に示している耐伸長疲労性の試験は、図11に示すような両端を金属板11に接着した高さhが18mm、直径Dが21mmの円柱状のゴム試験片12を高さ方向に1分間に300回の頻度で繰り返し25%伸長させることにより行った。
そして、該試験片に発生する亀裂の深さと長さの積が100mm2に達するまでの回数を測定した。
表において、補強ゴム、トレッド部ゴム、そしてクッション部ゴムの耐伸長疲労性、即ち試験片に発生する亀裂の深さと長さの積が100mm2に達するまでの回数は、補強ゴムの配合実施例1〜3では、それぞれ316万回、357万回、300万回であるのに対し、トレッド部ゴムは107万回、クッション部ゴムは43万回であり、補強ゴムの配合実施例1〜3の耐伸長疲労性はトレッド部ゴムの約3倍、クッション部ゴムの約7倍である。
通常の非空気式タイヤ(ソリッドタイヤ)の使用限界はトレッド部の摩耗に依存し、トレッド部が摩耗することにより寿命を迎える。しかし、孔開き非空気式タイヤでは、タイヤトレッド部の摩耗によるタイヤ寿命を迎える前に、孔部壁に起こる変形歪に起因して亀裂が発生し、タイヤとしての性能を保持しているにもかかわらず、タイヤの交換を余儀なくされる場合がある。
このため、孔部壁に加わる変形歪による亀裂発生を防止し、通常の非空気式タイヤと同様にタイヤトレッドの摩耗による寿命が孔開き非空気式タイヤの使用限界となることが望まれる。
この目的を達成するために前述したとおり、非空気式タイヤのクッション性や耐発熱性(クッション部)、そして耐摩耗性(トレッド部)を損なうことなく孔部壁の亀裂発生を防止するため、孔周りに補強ゴムを配設したのである。補強ゴムは、図12の表に示した配合実施例1〜3のようなクッション部ゴムやトレッド部ゴムよりも耐伸長疲労性のあるゴムを用いる。
このような構成の孔開き非空気式タイヤ1は、タイヤ側面5a,5b側の孔6a,6bの開口部7a,7bの周囲に、繰り返し変形に対して耐伸長疲労性が良い補強ゴム8a,8bを配しているので、たとえ孔6a,6bが繰り返し変形し、孔部壁9のうち伸長歪の大きいタイヤ半径方向外側に繰り返し伸長歪みが生じたとしても、トレッド部・クッション部の特性を損なうことなく亀裂の発生を防止し、仮に亀裂が発生したとしてもその成長を遅延させる事ができ、孔開き非空気式タイヤの寿命を伸ばすことができる。
更に、孔6a,6bの開口部7a,7bを含むタイヤ両側面5a,5bの強度が向上するため、タイヤが障害物等に衝突した場合でも外傷の発生が低減でき、傷口からの亀裂の成長をも遅延することができる。
図3に第1実施例の孔開きソリッドタイヤの別例1〜3を示す。
図3Aに示す別例1は、補強ゴム8が孔6の周囲のタイヤ半径方向外側を含むタイヤ側面5を覆う構成としている。
図3Bに示す別例2は、タイヤ側面5を覆う補強ゴム8の厚さを厚くすると共に補強ゴム8が孔6全体を覆う構成としている。
そして図3Cに示す別例3は、タイヤ側面5を覆う補強ゴム8の厚さを薄くすると共に孔6の周囲のタイヤ側面のみを覆う構成としている。
図4は、本発明の孔開きソリッドタイヤの第2実施例を示す。
この第2実施例の基本構成は、第1実施例の補強ゴムに替えて補強材10a,10bを、孔6a,6bの開口部7a,7bを含む範囲でタイヤ両側面5a,5bに沿ってタイヤ周方向に連なってクッション部4のゴム或いはトレッド部3やベース部2のゴムにまたがって埋設し、孔6a,6bの周囲を覆った構成としている。
補強材10a,10bは、例えばナイロンやポリエステル繊維等の合成繊維からなる織布によって形成されたものであり、各方向で伸縮性を有する材質とすることもできる。
更に、タイヤ本体に対する接着処理が施してもよく、接着処理が施されるか否かは特に限定されるものではない。
この構成により、タイヤが回転して孔6a,6bが繰り返し変形するとき、孔部壁9のタイヤ半径方向外側に加わる負荷を補強材10a,10bが分散して、伸長歪みの集中域が生じるのを防止、あるいは緩和できるのであり、亀裂の発生を防止することができる。更に、仮に亀裂が発生したとしても亀裂の成長を防止、あるいは遅延させることができる。
また、孔6a,6bの開口部7a,7bを含むタイヤ両側面5a,5bに補強材10a,10bを埋設しているので、障害物との接触による外傷の発生を低減でき、仮に外傷が発生したとしても、その外傷が容易に伝播せず傷口の拡大を防止することができる。
図5〜図8は、第2実施例の孔開きソリッドタイヤの別例1〜4を示す。
図5に示す別例1は、補強材10がタイヤ周方向に連なって孔6のタイヤ半径方向外側及び、孔6のタイヤ半径方向外側を含むタイヤ側面5に沿って埋設された構成としている。
図6に示す別例2は、補強材10がタイヤ周方向に帯状に連なって孔6のタイヤ半径方向外側を覆うように埋設された構成としている。
図7に示す別例3は、孔6の周囲にスチールコードによる線材で形成した複数本の補強材10を埋設した構成としている。
図8に示す別例4は、孔6の周囲全体にキャップ状の補強材10を埋設した構成としている。
図9は、本発明の孔開きソリッドタイヤの第3実施例を示すものである。
この第3実施例は、第1実施例の別例1と第2実施例の別例1を組み合わせた構成であり、孔6の周囲のタイヤ半径方向外側に位置すると共に、タイヤ周方向に連なって配置した補強ゴム8の中に補強材10をタイヤ周方向に連なって埋設した構成としている。
この構成にすることにより孔部壁9に加わる負荷を補強材10が分散して歪集中域が生じるのを防止すると共に、たとえ歪集中域が生じたとしても補強ゴム8が亀裂の発生を防止することができる。
図10は、従来の非空気式タイヤと、本発明の第2実施例の別例3について行った歪試験の状況とその結果を示しており、Aは荷重を掛けていない従来の非空気式タイヤの状態を示すタイヤの一部側面図、Bは荷重を掛けていない第2実施例の別例3の非空気式タイヤの状態を示すタイヤの一部側面図、Cは2トンの荷重を掛けた際の従来の非空気式タイヤの状態を示すタイヤの一部側面図、Dは2トンの荷重を掛けた際の第2実施例の別例3の非空気式タイヤの状態を示すタイヤの一部側面図、そしてEは荷重を掛けた際の変化量と歪率を示す表である。
図10の試験状況及び表に示しているとおり、孔の周囲に補強材を埋設した非空気式タイヤは、従来の補強材が埋設されていない非空気式タイヤに対し、孔端部の歪率が半分以下となっている。この孔の周囲に補強材を埋設した構成により、タイヤが荷重を受け変形するときの孔部に加わる負荷を補強材が分散し、孔周囲の歪を好適に緩和し、歪みの集中を防止することにより、亀裂の発生が防止され、タイヤの耐久性を向上させることができる。
本発明において、補強ゴムと補強材及びその組合せは上記した実施形態に限定されるものではなく、これまで述べてきた実施形態の各組合わせでもよく、又、これら組合せに限定されるものでもない。
更に、各実施例のタイヤ側面に開口した孔の形態は上述した各実施例に示した孔の形状に限定されるのものではなく、例えば孔の形状は円形に限らず楕円、卵型、四角形、あるいは多角形、又はそれらの組合せでもよい。
また、周方向に列状に並ぶ孔列は単層であってもよく二層以上であってもよく、孔はタイヤ軸方向に貫通してもよいし、タイヤ内部で閉止してもよい。孔の配置は、タイヤ幅方向左右とタイヤ径方向上下ともに、並列でも、千鳥状に交互に配列してもよく、さまざまな形態がとられる。
【産業上の利用可能性】
本発明は上記構成としたので、タイヤ側面に開口する孔を有する非空気式タイヤにおいて、孔部が繰り返し変形したとしても、孔部に発生する亀裂を防止あるいは遅延することができ、又たとえ亀裂が発生したとしても成長を遅延できるものとなった。
Claims (3)
- タイヤ側面に開口する多数の孔を有する非空気式タイヤにおいて、各孔の少なくともタイヤ半径方向外側の開口部を含む孔周辺に、当該孔周辺ゴム部と異なる耐伸長疲労性の良い補強ゴムを配置したことを特徴とする非空気式タイヤ。
- タイヤ側面に開口する多数の孔を有する非空気式タイヤにおいて、各孔周辺に対し各孔を包囲するものとなした補強布帛や補強線材などを埋設したことを特徴とする非空気式タイヤ。
- タイヤ側面に開口する多数の孔を有する非空気式タイヤにおいて、各孔の少なくともタイヤ半径方向外側の開口部を含む孔周辺に当該孔周辺ゴム部と異なる耐伸長疲労性の良い補強ゴムを配置するほか、各孔の周辺にこれを包囲するものとなした補強布帛や補強線材などを埋設したことを特徴とする非空気式タイヤ。
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