以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に示すように、バーハンドル車両用ブレーキ制御装置U1(以下、「ブレーキ制御装置U1」という。)は、自動二輪車、自動三輪車、オールテレーンビークル(ATV)などバーハンドルタイプの車両に好適に用いられるものであり、基体(ポンプボディ)100と、基体100の後面に組み付けられるモータ200と、基体100の前面に組み付けられるコントロールハウジング300と、コントロールハウジング300に収容される制御装置400とを備えて構成されている。
ブレーキ制御装置U1は、図8に示す液圧回路を具現化したものであり、二つのブレーキ系統K1,K2を備えて構成されており、前輪に装着された車輪ブレーキB1および後輪に装着された車輪ブレーキB2に付与する制動力(ブレーキ液圧)を適宜制御することによって、車輪ブレーキB1,B2の独立したアンチロックブレーキ制御および二つの車輪ブレーキB1,B2を連動させる連動ブレーキ制御が可能になっている。
一方のブレーキ系統K1は、前輪を制動するためのものであり、入口ポート21から出口ポート22に至る系統である。なお、入口ポート21には、液圧源であるマスタシリンダM1に至る配管H11が接続され、出口ポート22には、前輪の車輪ブレーキB1に至る配管H12が接続される。
他方のブレーキ系統K2は、後輪を制動するためのものであり、入口ポート23から出口ポート24に至る系統である。なお、入口ポート23には、マスタシリンダM1とは別の液圧源であるマスタシリンダM2に至る配管H21が接続され、出口ポート24には、後輪の車輪ブレーキB2に至る配管H22が接続される。
このように、ブレーキ制御装置U1は、二つのブレーキ系統K1,K2から構成されるが、各ブレーキ系統K1,K2は同一の構成であるので、以下においては主として前輪側のブレーキ系統K1について説明し、適宜後輪側のブレーキ系統K2について説明する。
なお、マスタシリンダM1は、ブレーキ液を貯蔵するブレーキ液タンク室が接続された図示しないシリンダを有しており、シリンダ内にはブレーキ操作子であるブレーキレバーL1の操作によりシリンダの軸方向へ摺動してブレーキ液を流出する図示しないロッドピストンが組み付けられている。ここで後輪側のマスタシリンダM2には、ブレーキ操作子としてブレーキペダルL2が接続されている点が異なっている。
前輪のブレーキ系統K1には、レギュレータR、制御弁手段V、吸入弁4、リザーバ5、ポンプ6、ダンパ7、オリフィス7aが設けられている。
なお、以下では、入口ポート21からレギュレータRに至る流路(油路)を「出力液圧路A」と称し、レギュレータRから出口ポート22に至る流路を「車輪液圧路B」と称する。また、出力液圧路Aからポンプ6に至る流路を「吸入液圧路C」と称し、ポンプ6から車輪液圧路Bに至る流路を「吐出液圧路D」と称し、さらに、車輪液圧路Bから吸入液圧路Cに至る流路を「開放路E」と称する。また、「上流側」とは、マスタシリンダM1(M2)側のことを意味し、「下流側」とは、車輪ブレーキB1(B2)側のことを意味する。
レギュレータRは、出力液圧路Aから車輪液圧路Bへのブレーキ液の流入を許容する状態および遮断する状態を切り換える機能と、出力液圧路Aから車輪液圧路Bへのブレーキ液の流入が遮断されているときに車輪液圧路Bおよび吐出液圧路Dのブレーキ液圧を設定値以下に調節する機能とを有しており、カット弁1、チェック弁1aおよびリリーフ弁1bを備えて構成されている。
カット弁1は、出力液圧路Aと車輪液圧路Bとの間に介設された常開型の電磁弁からなり、開弁状態にあるときに上流側から下流側へのブレーキ液の流入を許容し、閉弁状態にあるときに遮断する。カット弁1を構成する常開型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置400と電気的に接続されており、制御装置400からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると、閉弁して上流側から下流側へのブレーキ液の流入を遮断し、電磁コイルを消磁すると、開弁して上流側から下流側へのブレーキ液の流入を許容する。
チェック弁1aは、その上流側から下流側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、カット弁1に並列に接続されている。
リリーフ弁1bは、カット弁1となる常閉型の電磁弁に機能として付加されており、電磁弁を駆動させるための電磁コイルに与える電流値を制御することで開弁圧が制御され、車輪液圧路Bのブレーキ液圧から出力液圧路Aのブレーキ液圧を差し引いたときの値が設定値以上になると開弁する。
制御弁手段Vは、車輪液圧路Bを開放しつつ開放路Eを遮断する状態、車輪液圧路Bを遮断しつつ開放路Eを開放する状態および車輪液圧路Bと開放路Eを遮断する状態を切り換える機能を有しており、入口弁2、チェック弁2aおよび出口弁3を備えて構成されている。
入口弁2は、車輪液圧路Bに設けられた常開型の電磁弁からなり、開弁状態にあるときに上流側から下流側へのブレーキ液の流入を許容し、閉弁状態にあるときに遮断する。入口弁2を構成する常開型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置400と電気的に接続されており、制御装置400からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると閉弁し、電磁コイルを消磁すると開弁する。
チェック弁2aは、その下流側から上流側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、各入口弁2と並列に接続されている。
出口弁3は、車輪液圧路Bと開放路Eとの間に介設された常閉型の電磁弁からなり、閉弁状態にあるときに車輪ブレーキB1側からリザーバ5側へのブレーキ液の流入を遮断し、開弁状態にあるときに許容する。出口弁3を構成する常閉型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置400と電気的に接続されており、制御装置400からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると開弁し、電磁コイルを消磁すると閉弁する。
吸入弁4は、吸入液圧路Cを開放する状態および遮断する状態を切り換えるものであり、吸入液圧路Cに設けられた常閉型の電磁弁からなる。吸入弁4を構成する常閉型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置400と電気的に接続されており、制御装置400からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると開弁し、電磁コイルを消磁すると閉弁する。
なお、吸入液圧路Cであって吸入弁4とポンプ6との間には、貯留室4aが設けられている。この貯留室4aは、ブレーキ液を一時的に貯留するものであり、これにより、吸入液圧路Cに貯留されるブレーキ液の容量が実質的に増大する。
リザーバ5は、開放路Eに設けられており、各出口弁3が開放されることによって逃がされるブレーキ液を一時的に貯留する機能を有している。また、リザーバ5とポンプ6との間には、リザーバ5側からポンプ6側へのブレーキ液の流入のみを許容するチェック弁5aが介設されている。
ポンプ6は、出力液圧路Aに通じる吸入液圧路Cと車輪液圧路Bに通じる吐出液圧路Dとの間に介設されており、モータ200の回転力によって駆動し、リザーバ5に一時的に貯留されたブレーキ液を吸入して吐出液圧路Dに吐出する。これにより、リザーバ5にブレーキ液を貯留することによって減圧された出力液圧路Aや車輪液圧路Bの圧力状態が回復される。また、カット弁1が閉弁状態にあり、吸入弁4が開弁状態にあるときには、ポンプ6は、マスタシリンダM1、出力液圧路A、吸入液圧路Cおよび貯留室4aに貯留されているブレーキ液を吸入して吐出液圧路Dに吐出する。これにより、ブレーキレバーL1の操作によって発生したブレーキ液圧を増圧することが可能となり、さらには、ブレーキレバーL1を操作していない状態でも車輪ブレーキB1にブレーキ液圧を作用させることが可能となる。
ダンパ7およびオリフィス7aは、その協働作用によってポンプ6から吐出されたブレーキ液の脈動を減衰させている。
なお、配管H11から分岐した液圧路には、マスタシリンダM1におけるブレーキ液圧の大きさを計測する第一の液圧センサ8が設けられている。第一の液圧センサ8で計測されたブレーキ液圧の値は、制御装置400に随時取り込まれ、第一の液圧センサ8で計測されたブレーキ液圧の大きさに基づいて、連動ブレーキ制御などが行われる。
また、配管H12から分岐した液圧路には、車輪ブレーキB1に作用するブレーキ液圧の大きさを計測する第二の液圧センサ9が設けられている。第二の液圧センサ9で計測されたブレーキ液圧の値は、制御装置400に随時取り込まれ、第二の液圧センサ9で計測されたブレーキ液圧の大きさに基づいて、連動ブレーキ制御などが行われる。
モータ200は、前輪側のブレーキ系統K1にあるポンプ6および後輪側のブレーキ系統K2にあるポンプ6の共通の動力源であり、制御装置400からの指令に基づいて作動する。
制御装置400は、第一の液圧センサ8、第二の液圧センサ9、図示しない前輪に固着されたパルサーギアの側面に対向して固定配置される前輪用の車輪速度センサ401および同じく図示しない後輪に固着されたパルサーギアの側面に対向して固定配置される後輪用の車輪速度センサ402からの出力に基づいて、レギュレータRのカット弁1、制御弁手段Vの入口弁2および出口弁3および吸入弁4の開閉、並びに、モータ200の作動を制御する。
次に、図8の液圧回路を参照しつつ、制御装置400によって実現される通常のブレーキ制御、連動ブレーキ制御およびアンチロックブレーキ制御について説明する。
(通常のブレーキ制御)
各車輪がロックする可能性のない通常のブレーキ制御時においては、前記した複数の電磁弁を駆動させる複数の電磁コイルは、いずれも制御装置400によって消磁させられる。つまり、通常のブレーキ制御においては、カット弁1および入口弁2が開弁状態になっており、出口弁3および吸入弁4が閉弁状態になっている。
このような状態のときに運転者がブレーキレバーL1を操作すると、その操作力に起因して発生したブレーキ液圧は、出力液圧路A、カット弁1および車輪液圧路Bを介してそのまま車輪ブレーキB1に伝達され、前輪が制動されることとなる。なお、ブレーキレバーL1を緩めると、車輪液圧路Bに流入したブレーキ液がカット弁1および出力液圧路Aを介してマスタシリンダM1に戻される。
(連動ブレーキ制御)
連動ブレーキ制御は、運転者がブレーキレバーL1およびブレーキペダルL2の一方を操作した場合に、その制動力(ブレーキ液圧)の大きさに応じた制動力を他方の車輪ブレーキにも作用させる場合などに実行される。
例えば、運転者が後輪を制動すべくブレーキペダルL2を操作したときに、制御装置400に入力されたブレーキペダルL2の操作量や第一の液圧センサ8で計測されたブレーキ液圧の大きさといった各種情報に基づいて、制御装置400が前輪にも制動力を作用させる必要があると判断した場合には、制御装置400は、後輪側のブレーキ系統K2に設けられた第一の液圧センサ8(あるいは第二の液圧センサ9)により計測された圧力値に基づいて、前輪側のブレーキ系統K1に設けられた第二の液圧センサ9の目標圧力値を設定し、さらに、ブレーキ系統K1においてカット弁1を励磁して閉弁状態にするとともに吸入弁4を励磁して開弁状態にしたうえで、第二の液圧センサ9で計測される圧力値が目標圧力値に達するまで、モータ200を作動させてポンプ6を駆動し、吸入液圧路C側にあるブレーキ液を吐出液圧路Dに流入させることで、前輪の車輪ブレーキB1に自動的にブレーキ液圧を作用させ、前輪を制動する。
(アンチロックブレーキ制御)
アンチロックブレーキ制御は、車輪がロック状態に陥りそうになったときに実行されるものであり、ロック状態に陥りそうな車輪の車輪ブレーキB1,B2に対応する制御弁手段Vを制御して、車輪ブレーキB1,B2に作用するブレーキ液圧を減圧、増圧あるいは一定に保持する状態を適宜選択することによって実現される。なお、減圧、増圧および保持のいずれを選択するかは、前輪用の車輪速度センサ401および後輪用の車輪速度センサ402から得られた車輪速度に基づいて、制御装置400によって判断される。
そして、制御装置400において前輪の車輪ブレーキB1に作用するブレーキ液圧を減圧すべきであると判断された場合には、制御弁手段Vにより車輪液圧路Bが遮断され、開放路Eが開放される。具体的には、制御装置400により入口弁2を励磁して閉弁状態にするとともに、出口弁3を励磁して開弁状態にする。このようにすると、車輪ブレーキB1に通じる車輪液圧路Bのブレーキ液が開放路Eを通ってリザーバ5に流入し、その結果、前輪の車輪ブレーキB1に作用していたブレーキ液圧が減圧される。
なお、アンチロックブレーキ制御を実行する場合には、制御装置400によりモータ200を駆動させる。モータ200が駆動すると、これに伴ってポンプ6が作動し、リザーバ5に貯留されたブレーキ液が吐出液圧路Dを介して車輪液圧路Bに還流される。また、ポンプ6が作動することにより吐出液圧路D等に発生する脈動は、ダンパ7およびオリフィス7aの協働作用によって吸収・抑制されるので、ポンプ6を作動させてもブレーキレバーL1の操作フィーリングが阻害されることはない。
また、制御装置400において前輪の車輪ブレーキB1に作用するブレーキ液圧を一定に保持すべきであると判断された場合には、制御弁手段Vにより車輪液圧路Bおよび開放路Eがそれぞれ遮断される。具体的には、制御装置400により入口弁2を励磁して閉弁状態にするとともに、出口弁3を消磁して閉弁状態にする。このようにすると、車輪ブレーキB1、入口弁2および出口弁3で閉じられた流路内にブレーキ液が閉じ込められることになり、その結果、車輪ブレーキB1に作用しているブレーキ液圧が一定に保持される。
さらに、制御装置400によって、前輪の車輪ブレーキB1に作用するブレーキ液圧を増圧すべきであると判断された場合には、制御弁手段Vにより車輪液圧路Bが開放され、開放路Eが遮断される。具体的には、制御装置400により入口弁2を消磁して開弁状態にするとともに、出口弁3を消磁して閉弁状態にする。このようにすると、ポンプ6の作動により吐出液圧路Dに流出したブレーキ液が入口弁2を通じて車輪液圧路Bに作用し、その結果、車輪ブレーキB1に作用するブレーキ液圧が増圧される。
なお、車輪液圧路Bおよび吐出液圧路Dのブレーキ液圧が設定値以上になった場合には、リリーフ弁1bの働きにより車輪液圧路Bおよび吐出液圧路D内のブレーキ液が出力液圧路Aに逃がされ、その結果として、車輪ブレーキB1に過剰なブレーキ液圧が作用することが回避される。
また、レギュレータRが作動することによって吐出液圧路D等に発生する脈動は、ダンパ7およびオリフィス7aの協働作用によって吸収され抑制されるので、当該脈動に起因する作動音も小さくなる。
次に、ブレーキ制御装置U1の具体的な構造を、図1乃至図5を参照して詳細に説明する。
ここで、図2はブレーキ制御装置U1の分解断面図(図1の点線Xにおける断面図)、図3の(a)は流路構成部100Aを前面からみた透視図、(b)は流路構成部100Aを後面からみた透視図、図4は、流路構成部100Aに形成された各装着穴および流路の内面を可視化した斜視図であって、(a)は前面側からみた斜視図、(b)は後面側からみた斜視図である。また、図5は、流路構成部100Aに形成された各装着穴および流路の内面を可視化した斜視図であって、後面側からみた斜視図である。
図1に示すように、ブレーキ制御装置U1は、基体(ポンプボディ)100と、モータ200と、コントロールハウジング300と、制御装置400とを備えて構成されている。基体100を説明する際の「前後」「左右」「上下」は、コントロールハウジング300側の面を「前面」と仮定し、ポンプ穴38のある面を側面と仮定した場合の便宜的なものであり、車両に取り付けた状態とは何ら関係はない。
基体100は、略直方体を呈するアルミニウム合金製の鋳造品からなり、その前面11の上半部分が実質的に凹凸のない平面に成形されている。基体100には、二つのブレーキ系統K1,K2(図8参照)に対応する二つの流路構成部100A,100Bが形成されている。具体的には、前面11側から見て基体100の右半分(図中に付した点線Xよりも右側にある領域)に前輪側のブレーキ系統K1に対応する流路構成部100Aが形成されており、基体100の左半分(図中に付した点線Xよりも左側にある領域)に後輪側のブレーキ系統K2に対応する流路構成部100Bが形成されている。なお、流路構成部100A,100Bは、本実施形態では、その内部構成も含めて実質的に左右対称になっているので、以下では、流路構成部100Aについて詳細な説明を行うこととする。
流路構成部100Aは、図3の(a)に示すように、マスタシリンダM1からの配管H11(図8参照)が接続される入口ポート21および車輪ブレーキB1に至る配管H12(図8参照)が接続される出口ポート22のほか、四つの装着穴31〜34、リザーバ穴37、ポンプ穴38、ダンパ穴39およびこれらを連通する流路51〜57などを備えている。つまり、基体100には、四つで一組の装着穴31〜34が二組形成されている。
なお、以下の説明においては、流路構成部100Aの要素となる四つで一組の装着穴31〜34のうち、入口ポート21の下方にある装着穴31を「第一外側装着穴31」と、この第一外側装着穴31の下方にある装着穴32を「第二外側装着穴32」と、出口ポート22の下方にある装着穴33を「第一内側装着穴33」と、この第一内側装着穴33の下方にある装着穴34を「第二内側装着穴34」と称することとする。
入口ポート21は、流路構成部100A(基体100)の上面15に開口する有底円筒状の穴であり、第一流路51を介して第一外側装着穴31および第二外側装着穴32と連通している。
第一流路51は、入口ポート21から始まり、第一外側装着穴31および第二外側装着穴32に通じている。第一流路51は、入口ポート21の底面から流路構成部100Aの下面16に向かって穿設された縦孔からなり、第一外側装着穴31の側壁を上下に貫通し、第二外側装着穴32の内部に達している。
出口ポート22は、流路構成部100A(基体100)の上面15(図3の(a)参照)に開口する有底円筒状の穴であり、第二流路52を介して第一内側装着穴33および第二内側装着穴34と連通している。なお、出口ポート22は、入口ポート21と同一の寸法形状に成形されている。
第二流路52は、出口ポート22から始まり、第一内側装着穴33および第二内側装着穴34に通じている。第二流路52は、第一流路51に平行に配置されていて、出口ポート22の底面から流路構成部100Aの下面16に向かって穿設された縦孔からなり、第一内側装着穴33の側壁を上下方向に貫通し、第二内側装着穴34の内部に達している。
第一外側装着穴31は、カット弁1(図8参照)となる常開型の電磁弁1s(図1参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、第一流路51を介して第二外側装着穴32と連通しており、第三流路53を介して第一内側装着穴33と連通している。第三流路53は、図4の(b)に示すように、第一外側装着穴31の底部を左右方向(内外方向)に貫通し、かつ、第一内側装着穴33の底部に達するように流路構成部100Aの側面14(図3の(a)参照)から穿設された横孔53aからなる。この横孔53aの開口部は、図示せぬ栓部材によって密封される。また、第一外側装着穴31は、図3の(b)および図4の(b)に示すように、第五流路55を介してポンプ穴38の吐出側(側面14側)と連通している。第五流路55は、第一外側装着穴31の底部およびポンプ穴38の側壁を上下方向に貫通し、かつ、ダンパ穴39に達するように、流路構成部100Aの上面15から穿設された縦孔55aからなる。この縦孔55aの開口部は、図示せぬ栓部材によって密封される。なお、第一流路51の第一外側装着穴31よりも上流側にある部分が図8に示す出力液圧路Aに相当し、第五流路55が図8に示す吐出液圧路Dに相当する。
第二外側装着穴32は、吸入弁4(図8参照)となる常閉型の電磁弁4s(図1参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、図3の(b)に示すように、第四流路54を介してポンプ穴38の吸入側(軸受穴43側)と連通している。第四流路54は、図4の(b)に示すように、第二外側装着穴32の底部を左右方向(内外方向)に貫通するように流路構成部100Aの側面14(図3の(a)参照)から穿設された横孔54aと、ポンプ穴38の吸入側の側壁を上下方向に貫通し、かつ、横孔54aの先端部に達するように流路構成部100Aの下面16(図3の(b)参照)から穿設された縦孔54bとからなる。なお、横孔54aの先端部は、第二外側装着穴32と第二内側装着穴34との間に位置している。また、横孔54aおよび縦孔54bの開口部は、図示せぬ栓部材によって密封される。なお、第一外側装着穴31と第二外側装着穴32との間にある第一流路51および第四流路54が図8に示す吸入液圧路Cに相当する。
第一内側装着穴33は、入口弁2(図8参照)となる常開型の電磁弁2s(図1参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、図3の(a)に示すように、第二流路52を介して出口ポート22および第二内側装着穴34と連通し、第三流路53を介して第一外側装着穴31と連通し、さらに、図3の(b)および図4の(b)に示すように、第五流路55を介してポンプ穴38の吐出側(側面14側)と連通している。なお、第二流路52および第三流路53が図8に示す車輪液圧路Bに相当する。
第二内側装着穴34は、出口弁3(図8参照)となる常閉型の電磁弁3s(図1参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、図3の(b)および図4の(b)に示すように、その底面から始まる第六流路56を介してリザーバ穴37と連通している。第六流路56は、第二内側装着穴34の底面から流路構成部100Aの後面12(図2参照)に向かって穿設された横孔56aと、この横孔56aに達するように流路構成部100Aの下面16から穿設された縦孔56bと、この縦孔56bに達するようにリザーバ穴37の底面から穿設された横孔56c(図3の(a)参照)とからなる。縦孔56bの開口部は、図示せぬ栓部材によって密封される。なお、第六流路56が図8に示す開放路Eに相当する。
ここで、図1に示すように、第一外側装着穴31、第二外側装着穴32、第一内側装着穴33、第二内側装着穴34は、流路構成部100A(基体100)の前面11の同一面に開口していて、かつ、第一外側装着穴31、第二外側装着穴32、第一内側装着穴33および第二内側装着穴34が、正方形又は長方形の頂点を形成するように配置されている。より詳細には、図3の(a)に示すように、第一外側装着穴31の中心と第二外側装着穴32の中心とを結ぶ線分が流路構成部100A(基体100)の側面14と平行になっており、第一外側装着穴31の中心と第一内側装着穴33の中心とを結ぶ線分が流路構成部100Aの上面15と平行になっている。なお、本実施形態においては、第一外側装着穴31、第二外側装着穴32、第一内側装着穴33および第二内側装着穴34の口径が総て同一になっている。
リザーバ穴37は、リザーバ5(図8参照)が装着される有底円筒状の穴であり、第二外側装着穴32の下方に配置されていて、流路構成部100A(基体100)の前面11に開口している。図3の(b)に示すように、リザーバ穴37は、第七流路57を介してポンプ穴38の吸入側と連通している。第七流路57は、第四流路54の一部となる縦孔54bに達するようにリザーバ穴37の底面から穿設された横孔57a(図3の(a)参照)と、前記した縦孔54bとからなる。なお、横孔57aには、図8に示すチェック弁5aとなる図示せぬ一方向弁が装着される。
ポンプ穴38は、ポンプ6(図1、図8参照)が装着される段付き円筒状の穴であり、その中心線が軸受穴43の中心を通るように形成されていて、流路構成部100A(基体100)の側面14に開口している。なお、ポンプ穴38は、第五流路55を介してダンパ穴39と連通している。
ダンパ穴39は、ダンパ7(図1参照)となる円筒状の穴であり、リザーバ穴37と略同じ高さに配置されていて、流路構成部100A(基体100)の側面14に開口している。なお、ダンパ穴39の開口部は、図1に示す蓋部材171によって密封される。
なお、基体100の中央部分(すなわち、流路構成部100A,100Bの境界部分)には、図2に示すように、モータ200の出力軸210が挿入される軸受穴43とモータ200の端子棒220が挿入される端子孔44とが形成されている。軸受穴43は、有底の段付き円筒状を呈しており、基体100の後面12に開口している。また、軸受穴43の側壁には、ポンプ穴38が開口しており、軸受穴43の底部には、出力軸210を回転自在に支持するベアリング43aが装着されている。端子孔44は、軸受穴43の下方に形成されており、基体100を前後方向に貫通している。また、端子孔44の下方には、下面16に開口する通気穴41が形成されている。この通気穴41は、その底部において端子孔44と連通している。なお、通気穴41には、空気の出入りを許容しつつ水の出入りを阻止する透湿防水素材(図示せず)が装着される。
次に、前記した各穴に装着される各種部品の構成を、図6および図7を参照して説明する。ここで、図6の(a)は常開型の電磁弁1s,2sを示す斜視図、(b)は常開型の電磁弁1sの断面図、(c)は常閉型の電磁弁3s,4sを示す斜視図、(d)は常閉型の電磁弁3sの断面図であり、図7はポンプ6の断面図である。
図6の(a)に示すように、カット弁1となる常開型の電磁弁1sおよび入口弁2となる常開型の電磁弁2sは、制御装置400(図1参照)によって電磁コイル340(図2参照)を消磁させたときに、その側面にある開口部111aと底面にある開口部111bとが連通した状態(開弁状態)になり、制御装置400によって電磁コイル340を励磁させたときに、側面にある開口部111aと底面にある開口部111bとが遮断された状態(閉弁状態)になって、その内部を通流可能な状態になる。
入口弁2となる常開型の電磁弁2sは、図6の(b)に示すように、円筒状の固定コア111と、この固定コア111の基端側の内部に装着された弁座112と、同じく固定コア111の先端側の内部に摺動自在に装着された弁体113と、この弁体113を押圧する可動コア114とを主に備えている。なお、固定コア111の側面には、第一流路51を介して供給されるブレーキ液を内部に流入させるための開口部111aとなる貫通孔111cが形成されている。そして、図2に示す電磁コイル340を励磁すると、固定コア111に吸引されて可動コア114が移動するのに伴って、弁体113が弁座112側に移動して弁座112の開口部112aを閉塞し、その結果、固定コア111の側面にある開口部111aと底面にある開口部111bとが遮断された状態になる。また、電磁コイル340を消磁すると、可動コア114と固定コア111とが離間するのに伴って、弁体113が可動コア114側に移動して弁座112の開口部112aを開放し、その結果、固定コア111の側面にある開口部111aと底面にある開口部111bとが連通する。
また、固定コア111の基端部分には、チェック弁2a(図8参照)として機能する断面略U字形状のカップシール115が外嵌されている。このカップシール115は、第一外側装着穴31の穴壁に弾発的に接触し、第二流路52から第三流路53へのブレーキ液の流入を許容する。
カット弁1となる常開型の電磁弁1sについては、その詳細な説明は省略するが、常開型の電磁弁2sと同様に、固定コア、弁座、弁体、可動コアなどを備えて構成されている。ここで、電磁弁1sは、リリーフ弁1b(図8参照)としても機能し、電磁弁1sを第一外側装着穴31に設置すると、レギュレータR(図8参照)が構成される。なお、電磁弁1sの開弁圧(リリーフ圧)の制御は、可動コアを駆動させる電磁コイルに与える電流値の大きさを調節することにより実行される。
図6の(c)に示すように、出口弁3となる常閉型の電磁弁3sおよび吸入弁4となる常閉型の電磁弁4sは、制御装置400によって電磁コイル340(図2参照)を励磁させたときに、その側面にある開口部131aと底面にある開口部131bとが連通した状態(開弁状態)になって、内部を通流可能な状態になり、制御装置400によって電磁コイルを消磁させたときに、側面にある開口部131aと底面にある開口部131bとが遮断された状態(閉弁状態)になる。
出口弁3となる常閉型の電磁弁3sは、図6の(d)に示すように、円筒状の弁ハウジング131と、この弁ハウジング131の基端側の内部に装着される有底円筒状の弁座部材132と、弁ハウジング131の先端側の内部に固着される固定コア133と、弁ハウジング131の内部であって弁座部材132と固定コア133との間に摺動自在に装着される可動コア134とを主に備えている。弁ハウジング131の側面には、第二流路52(図3の(a)参照)を介して供給されるブレーキ液を内部に流入させるための開口部131aが形成されている。さらに、固定コア133と可動コア134との間には、可動コア134を弁座部材132側に付勢する付勢部材136が装着されている。したがって、コントロールハウジング300に装着された電磁コイル340(図2参照)が消磁されている状態においては、可動コア134によって弁座部材132の底部に形成された開口部132aが閉塞され、その結果、弁ハウジング131の側面にある開口部131aと底面にある開口部131bとが遮断された状態になる。そして、電磁コイル340(図2参照)を励磁すると、可動コア134が固定コア133に吸引されて移動して弁座部材132と離間し、その結果、弁ハウジング131の側面にある開口部131aと底面にある開口部131bとが連通した状態になる。
なお、吸入弁4となる常閉型の電磁弁4sについては、その詳細な説明は省略するが、常閉型の電磁弁3sと同様に、弁ハウジング、弁座部材、固定コア、可動コアなどを備えて構成されている。
リザーバ5は、図1に示すように、リザーバ穴37に装着される略有底円筒状のリザーバピストン151と、このリザーバピストン151をリザーバ穴37の底面側(後面側)に付勢するリザーバばね152と、リザーバ穴37の開口部を塞ぐ略有底円筒状のばね受け部材153とを備えて構成されている。リザーバピストン151は、その外周面がリザーバ穴37の内周面に沿って摺動自在となっており、第六流路56(図3の(b)参照)を介してブレーキ液が流入したときに、ばね受け部材153側に移動してこのブレーキ液を貯留する。なお、図3の(b)に示す横孔57aには、リザーバ穴37側からポンプ穴38へのブレーキ液の流入のみを許容するチェック弁5a(図8参照)が装着される。
ポンプ6は、ポンプ穴38に嵌挿されるポンプ本体6Aと、このポンプ本体6Aをモータ200の偏心軸部211側に押圧するコイル状の押えばね6Bと、ポンプ穴38の開口を塞ぐ有底円筒状の蓋部材6Cとを備えて構成されている。
ポンプ本体6Aは、図7に示すように、内面が円筒面に成形されたポンプハウジング161と、このポンプハウジング161の内部に摺動自在に装着され、一端がモータ200(図1参照)の偏心軸部211のボールベアリング212に当接する有底円筒状のプランジャ162と、このプランジャ162の開口部162aに設置される吸入弁体163と、ポンプハウジング161の開口部161aに設置される吐出弁体164と、ポンプハウジング161の開口部161aを覆うように配置されたリテーナ165と、プランジャ162の端面とポンプハウジング161の底面との間に圧縮状態で配置され、その復元力によりプランジャ162を偏心軸部211側に押圧する戻しばね166と、戻しばね166の内周側に圧縮状態で設けられ、その復元力により吸入弁体163をプランジャ162の開口部162a側に付勢する吸入弁ばね167と、吐出弁体164とリテーナ165との間に圧縮状態で設けられ、その復元力により吐出弁体164をポンプハウジング161側に付勢する吐出弁ばね168とを備えて構成されている。そして、ボールベアリング212の偏心運動に起因してプランジャ162が往復動することによって、ポンプハウジング161の側面にある開口部161bおよびプランジャ162の側面にある開口部162bからブレーキ液が流入し、リテーナ165から吐出される。
続いて、基体100に組み付けられるモータ200およびコントロールハウジング300について詳細に説明する。
図1に示すモータ200は、ポンプ6の動力源となるものであり、基体100の後面12(図2参照)に一体的に固着される。図2に示すように、モータ200の出力軸210には、偏心軸部211が設けられていて、この偏心軸部211には、ボールベアリング212が嵌め込まれている。また、出力軸210の下方には、ロータに電力を供給するための端子棒220が突設されている。端子棒220は、基体100の中央下部に形成された端子孔44に挿入され、その先端部分がコントロールハウジング300の接続端子331に接続される。
コントロールハウジング300は、図1に示すように、電磁弁1s〜4sを覆うように基体100の前面11に一体的に固着されるコントロールケース310と、このコントロールケース310の開口部を密閉するコントロールカバー320とを備えている。なお、コントロールケース310には、基体100の前面11を覆う取付部311と、図示せぬバッテリや車輪速度センサとの接続端子が形成されたコネクタ部312とを備えていて、取付部311には、無端状のシール部材313が装着される。また、図2に示すように、コントロールケース310の内部には、バスバー330が埋設された支持板部314が一体的に形成されている。なお、支持板部314には、基体100に設置された電磁弁1s〜4sを駆動させるための電磁コイル340が取り付けられている。また、バスバー330には、モータ200の端子棒220との接続端子331のほか、制御装置400との接続端子や電磁コイル340との接続端子などが突設されている。
なお、コントロールハウジング300の内部は、通気穴41と端子孔44とを介して外部と連通することになるので、コントロールハウジング300の内部の圧力は大気圧と同程度に保たれている。つまり、コントロールハウジング300に内外の圧力差に起因する変形が生じ難くなり、その結果、基体100との密着性も良好に保たれる。ここで、通気穴41には、図示せぬ透湿防水素材が装着されるので、コントロールハウジング300内に水等が浸入することはない。
図1に示す制御装置400は、電子回路がプリントされた基板に半導体チップ等が搭載されてなるものであり、第一の液圧センサ8および第二の液圧センサ9や車輪速度センサ401,402(図8参照)といった各種センサから得られた情報やあらかじめ記憶させておいたプログラム等に基づいて、電磁弁1s〜4sの開閉やモータ200の作動を制御する。
続いて、通常のブレーキ制御、連動ブレーキ制御およびアンチロックブレーキ制御を行った場合のブレーキ液の実際の流れを詳細に説明する。
(通常のブレーキ制御)
通常のブレーキ制御においては、前記したように、カット弁1となる常開型の電磁弁1s(図6の(a)参照)が開弁状態にあるので、図4の(a)の実線の矢印で示すように、入口ポート21から流入したブレーキ液は、第一流路51を通って第一外側装着穴31の側部に流入し、開弁状態にある電磁弁1s(図6の(a)参照)の内部を通って第三流路53に流入する。第三流路53に流入したブレーキ液は、図4の(b)の実線の矢印で示すように、第一内側装着穴33の底部に流入し、さらに、開弁状態にある電磁弁2sの内部を通って第二流路52に流入し、出口ポート22を通って車輪ブレーキB1に至る。つまり、通常のブレーキ制御においては、運転者がブレーキレバーL1を操作することによってマスタシリンダM1で発生したブレーキ液圧は、入口ポート21、第一流路51、第一外側装着穴31、第三流路53、第一内側装着穴33、第二流路52および出口ポート22を介して車輪ブレーキB1に作用することとなる。
(連動ブレーキ制御)
連動ブレーキ制御においては、図8を参照して説明したように、制御装置400によってカット弁1となる常開型の電磁弁1sが閉弁状態にされ、吸入弁4となる常閉型の電磁弁4sが開弁状態にされたうえで、モータ200が作動してポンプ6が駆動する。ポンプ6(図7参照)が駆動すると、図5の点線の矢印で示すように、プランジャ162(図7参照)の往復動によってポンプ穴38の内部にあるブレーキ液が第五流路55へ吐出される。なお、ポンプ6のプランジャ162(図7参照)の往復動に伴ってその内部が負圧になると、吸入弁4(電磁弁4s)が開弁状態にあるので、その第一流路51側にあるブレーキ液(マスタシリンダM1にあるブレーキ液を含む)が、第二外側装着穴32を通って(すなわち、電磁弁4sの内部を通って)ポンプ穴38に流入する。第五流路55へ吐出されたブレーキ液は、第三流路53を通って第一内側装着穴33に流入し、さらに、開弁状態にある電磁弁2s(図6の(a)参照)の内部を通って第二流路52に流入し、出口ポート22を通って車輪ブレーキB1に至る。つまり、連動ブレーキ制御においては、ポンプ6によってブレーキ液を車輪ブレーキB1側に供給することでブレーキ液圧が発生し、発生したブレーキ液圧は、第五流路55、第三流路53、第一内側装着穴33、第二流路52および出口ポート22を介して車輪ブレーキB1に作用することとなる。
(アンチロックブレーキ制御)
アンチロックブレーキ制御によって車輪ブレーキB1に作用するブレーキ液圧を減圧する場合には、前記したように、制御装置400によって入口弁2が閉弁状態にされ、出口弁3が開弁状態にされる(図8参照)。そうすると、車輪ブレーキB1に作用していたブレーキ液は、図4の(b)の点線の矢印で示すように、出口ポート22および第二流路52を通って第二内側装着穴34の側部に流入し、さらに、開弁状態にある電磁弁3s(図6の(c)参照)の内部を通って第六流路56に流入し、リザーバ穴37に流入する。なお、第一内側装着穴33に流入したブレーキ液は、電磁弁2s(図6の(a)参照)が閉弁状態にあることから、第三流路53に流入することはなく、第一内側装着穴33の側壁と電磁弁2sの外周面との間にある空間を通って第二内側装着穴34側へ流出する。なお、アンチロックブレーキ制御を実行する場合には、制御装置400によってモータ200(図1参照)が作動されてポンプ6(図7参照)が駆動され、その結果、リザーバ穴37に貯留されていたブレーキ液が第七流路57を介してポンプ穴38に吸入され、第五流路55へ吐出される。
また、アンチロックブレーキ制御によって車輪ブレーキB1に作用するブレーキ液圧を一定に保持する場合には、前記したように、制御装置400によって入口弁2および出口弁3が閉弁状態にされるので(図8参照)、第二流路52へのブレーキ液の流入も第二流路52からのブレーキ液の流出も起こらない。
また、アンチロックブレーキ制御によって車輪ブレーキB1に作用するブレーキ液圧を増圧する場合には、前記したように、制御装置400によって入口弁2が開弁状態にされ、出口弁3が閉弁状態にされるので、ブレーキ液の流れは、図4の(b)の実線の矢印の経路と同じになる。
以上のような具体的な配置をもってブレーキ制御装置U1を構成すると、各電磁弁1s〜4sやポンプ6などがコンパクトに配置されることとなる。
また、このブレーキ制御装置U1においては、図3の(a)に示すように、流路構成部100A(100B)に形成された第一流路51および第二流路52が、互いに平行に配置されているので、流路構成部100A(100B)の構成(各装着穴31〜34)の配置、流路51〜57の配置等)をシンプルなものにすることが可能となる。
さらに、このブレーキ制御装置U1においては、第一外側装着穴31、第二外側装着穴32、第一内側装着穴33および第二内側装着穴34が、正方形又は長方形の頂点を形成するように配置されていることから、流路構成部100A(100B)の構成がより一層シンプルなものになっている。
なお、図1に示すブレーキ制御装置U1の基体100は、二つの流路構成部100A,100Bを合わせて合計8つの電磁弁装着用の装着穴(第一外側装着穴31、第二外側装着穴32、第一内側装着穴33、第二内側装着穴34)を備えているが、図9に示すように、アンチロックブレーキ制御が行えるように構成された自動四輪車用ブレーキ制御装置U2の基体100’も、合計8個の装着穴を備えているので、自動四輪車用ブレーキ制御装置U2の基体100’をバーハンドル車両用ブレーキ制御装置U1の基体100に流用することが可能である。
ここで、アンチロックブレーキ制御が可能な自動四輪車用ブレーキ制御装置(以下、「ブレーキ制御装置」ということがある。)U2について、簡単に説明する。
ブレーキ制御装置U2は、図9に示すように、基体(ポンプボディ)100’と、基体100’の後面に組み付けられるモータ200と、基体100’の前面に組み付けられるコントロールハウジング300と、コントロールハウジング300に収容される制御装置400とを備えて構成されている。
ブレーキ制御装置U2は、図13に示す液圧回路を具現化したものであり、四つの車輪ブレーキRL,FR,FL,RRのうちの二つの車輪ブレーキRL,FRを制動するためのブレーキ系統K1’および残り二つの車輪ブレーキFL,RRを制動するためのブレーキ系統K2’を備えていて、車輪ブレーキRL,FR,FL,RRごとに(すなわち、一つのブレーキ系統につき二つ)設けられた制御弁手段Vによって各車輪の独立したアンチロックブレーキ制御が可能となっている。
ブレーキ系統K1’は、左後および右前の車輪を制動するためのものであり、液圧源であるマスタシリンダMの出力ポートM11に至る配管H11が接続される入口ポート21’から車輪ブレーキRL,FRに至る配管H12,H12が接続される出口ポート22’,22’に至る系統である。
ブレーキ系統K2’は、右後および左前の車輪を制動するためのものであり、マスタシリンダMの出力ポートM12に至る配管H21が接続される入口ポート23’から車輪ブレーキFL,RRに至る配管H22,H22が接続される出口ポート24’,24’に至る系統である。なお、ブレーキ系統K1’,K2’は、実質的に同一の構成であるので、以下においては主としてブレーキ系統K1’について説明し、適宜ブレーキ系統K2’について説明する。
なお、ブレーキ制御装置U2は、ブレーキ操作子であるブレーキペダルL3およびマスタシリンダMが一つである点(すなわち、一つのブレーキペダルL3に踏力を加えるだけで、四つの車輪ブレーキRL,FR,FL,RRを制動することができる点)、入口ポート21に接続される配管H11,H21がそれぞれマスタシリンダMの出力ポートM11,M12に接続されている点、ブレーキ系統K1’,K2’にそれぞれ二つの制御弁手段V,Vが設けられている点、図8に示すレギュレータRおよび吸入弁4を含む吸入液圧路Cがない点で前記したバーハンドル車両用ブレーキ制御装置U1と相違するが、制御弁手段V、リザーバ5、ポンプ6、ダンパ7、オリフィス7aの構成は、前記したブレーキ制御装置U1のものと同様であるので、その説明は省略する。
また、図9に示すモータ200、コントロールハウジング300および制御装置400の構成も、前記したバーハンドル車両用ブレーキ制御装置U1のものと同様であるので、その詳細な説明を省略する。
基体100’も、二つのブレーキ系統K1’,K2’(図13参照)に対応する二つの流路構成部100C,100Dを備えているが、その構成は、前記したブレーキ制御装置U1の流路構成部100A,100B(図1参照)と一致する点が多い。
例えば、図10の(a)に示すブレーキ制御装置U1の流路構成部100Aと、図10の(b)に示すブレーキ制御装置U2の流路構成部100Cとを対比すると、流路構成部100C(100D)の前面に形成された第一外側装着穴31、第二外側装着穴32、第一内側装着穴33および第二内側装着穴34の配置や口径をはじめ、リザーバ穴37、ポンプ穴38、ダンパ穴39の配置や口径が、前記したブレーキ制御装置U1の流路構成部100A(100B)のものと全く同じであることが分かる。なお、図9に示すように、第一外側装着穴31および第一内側装着穴33には、それぞれ、入口弁2(図13参照)となる常開型の電磁弁2sが装着され、第二外側装着穴32および第二内側装着穴34には、それぞれ、出口弁3(図13参照)となる常閉型の電磁弁3sが装着される。
また、図10の(a)に示すブレーキ制御装置U1の入口ポート21は、図10(b)に示すブレーキ制御装置U2では、出口ポート22’になっているが、その位置に変わりはない。
なお、図12の(a)に示すように、ブレーキ制御装置U2の入口ポート21’は、第一外側装着穴31の後方に設けられている。入口ポート21’は、後面に開口する有底円筒状の穴であり、その底面から始まる第八流路58を介して第五流路55に接続されている。
流路構成部100C(100D)の内部に形成された流路の構成も、前記したバーハンドル車両用ブレーキ制御装置U1の流路構成部100A(100B)のものと一致する点が多い。
例えば、図10の(a)および図11の(a)に示すブレーキ制御装置U1の流路構成部100Aと、図10の(b)および図11の(b)に示すブレーキ制御装置U2の流路構成部100Cとを対比すると、第一流路51、第二流路52、第三流路53、第四流路54を構成する縦孔54b、第五流路55、第七流路57の配置や口径が、ブレーキ制御装置U1とブレーキ制御装置U2とで全く同じあることが分かる。ブレーキ制御装置U1とブレーキ制御装置U2とで異なるのは、ブレーキ制御装置U2において第四流路54を構成する横孔54aが第二内側装着穴34に達していること(図11の(a)参照)、ブレーキ制御装置U1にある第六流路56(横孔56a、縦孔56b、横孔56c;図11の(a)参照)が、ブレーキ制御装置U2では削除されていることである。
このように、本実施形態に係るバーハンドル車両用ブレーキ制御装置U1によれば、その基体100を構成する要素(各装着穴や流路)の大半が、搭載される車両の種類や機能が大きく異なる自動四輪車用ブレーキ制御装置U2の基体100’を構成する要素と同一になる。
すなわち、バーハンドル車両用ブレーキ制御装置U1の基体100を製造する工程と、自動四輪車用ブレーキ制御装置U2と基体100’を製造する工程とは、その大半が共通することになるので、製造コストを削減することが可能となる。
なお、参考までに、ブレーキ制御装置U2において、通常のブレーキ制御およびアンチロックブレーキ制御を行った場合のブレーキ液の実際の流れを説明する。
(通常のブレーキ制御)
通常のブレーキ制御においては、図12の(a)に示すように、入口ポート21’から流入したブレーキ液は、第八流路58、第五流路55を介して第一外側装着穴31に流入し、第三流路53を介して第一内側装着穴33に流入する。第一外側装着穴31および第一内側装着穴33に流入したブレーキ液は、開弁状態にある電磁弁2s(図9参照)の内部を通って第一流路51又は第二流路52に流入し、出口ポート22’,22’を通って車輪ブレーキRL,FRに至る。
(アンチロックブレーキ制御)
アンチロックブレーキ制御によって例えば車輪ブレーキRLに作用するブレーキ液圧を減圧する場合には、制御装置400(図9参照)によって車輪ブレーキRLに対応する入口弁2が閉弁状態にされ、出口弁3が開弁状態にされる。そうすると、車輪ブレーキRLに作用していたブレーキ液は、出口ポート22’および第二流路52を通って第二内側装着穴34の側部に流入し、さらに、開弁状態にある電磁弁3s(図9参照)の内部を通って第四流路54に流入し、ポンプ穴38に流入する。なお、第一内側装着穴33に流入したブレーキ液は、電磁弁2sが閉弁状態にあることから、第三流路53に流入することはなく、第一内側装着穴33の側壁と電磁弁2s(図9参照)の外周面との間にある空間を通って第二内側装着穴34側へ流出する。なお、アンチロックブレーキ制御を実行する場合には、制御装置400によってモータ200が駆動されてポンプ6が作動され、ポンプ穴38にあるブレーキ液が第五流路55へ吐出される。なお、ポンプ穴38に流入したブレーキ液は、第七流路57(図11の(b)参照)を通ってリザーバ穴37にも流入する。リザーバ穴37に貯留されたブレーキ液は、ポンプ6によって第五流路55に吐出される。
また、アンチロックブレーキ制御によって車輪ブレーキRLに作用するブレーキ液圧を一定に保持する場合には、制御装置400によって入口弁2および出口弁3が閉弁状態にされるので(図13参照)、第二流路52へのブレーキ液の流入も第二流路52からのブレーキ液の流出も起こらない。
また、アンチロックブレーキ制御によって車輪ブレーキRLに作用するブレーキ液圧を増圧する場合には、制御装置400によって入口弁2が開弁状態にされ、出口弁3が閉弁状態にされるので、ブレーキ液の流れは、通常のブレーキ制御の場合と同じになる。
(バーハンドル車両用ブレーキ制御装置の変形例)
前記した実施形態に係るブレーキ制御装置U1においては、図1に示すように、上下二段に配置された装着穴31〜34のうち、上段にある装着穴31,33(第一外側装着穴31、第一内側装着穴33)に常開型の電磁弁1s,2s(すなわち、カット弁1、入口弁2)を装着し、下段にある装着穴32,34に常閉型の電磁弁3s,4s(出口弁3、吸入弁4)を配置したが、これに限定されることはなく、図示は省略するが、上段にある装着穴31,33に常閉型の電磁弁3s,4s(出口弁3、吸入弁4)を装着し、下段にある装着穴32,34に常開型の電磁弁1s,2s(カット弁1、入口弁2)を配置してもよい。
具体的には、例えば、第一外側装着穴31に吸入弁4となる常閉型の電磁弁4sを、第二外側装着穴32にカット弁1となる常開型の電磁弁1sを、第一内側装着穴33に出口弁3となる常閉型の電磁弁3sを、第二内側装着穴34に入口弁2となる常開型の電磁弁2sをそれぞれ装着してもよく、この場合には、図14の(a)および(b)に示すように、第一外側装着穴31を、第五流路55’を介してポンプ穴38の吸入側およびダンパ穴39と連通させるとともに、第七流路57’を介してポンプ穴38の吐出側と連通させ、第二外側装着穴32を、第四流路54’を介して第二内側装着穴34と連通させ、さらに、第一内側装着穴33を、第六流路56’を介してリザーバ穴37と連通させればよい。
また、前記した実施形態に係るブレーキ制御装置U1においては、図3の(a)に示すように、流路構成部100A(100B)の外側に入口ポート21および第一流路51が配置され、内側に出口ポート22および第二流路52が配置されていたが、これに限定されることはなく、図示は省略するが、流路構成部100A(100B)の内側に入口ポート21および第一流路51が配置され、外側に出口ポート22および第二流路52が配置されているものであってもよい。この場合には、流路構成部100A(100B)の内部の流路の配置を適宜変更したうえで、第一外側装着穴31に入口弁2となる常開型の電磁弁2sを、第二外側装着穴32に出口弁3となる常閉型の電磁弁3sを、第一内側装着穴33にカット弁1となる常閉型の電磁弁1sを、第二内側装着穴34に吸入弁4となる常開型の電磁弁4sをそれぞれ配置すればよい。