本発明のゴルフボールは、コアと前記コアを被覆するカバー層とを有するゴルフボールであって、前記カバー層は、少なくとも3つの針状部を有する3次元形状の金属酸化物を含有し、そのスラブ硬度が、ショアD硬度で57D以上であることを特徴とする。尚、以下の説明において、本発明で使用する「少なくとも3つの針状部を有する3次元形状の金属酸化物」を単に「3次元形状金属酸化物」と略称する場合がある。
まず、本発明で使用する3次元形状金属酸化物について説明する。本発明で使用する金属酸化物は、少なくとも3つ針状部を有する3次元形状の金属酸化物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、前記針状部がそれぞれ、一方の端部で結合し、他方の端部を異なる方向に位置させた3次元形状を有するものが好ましく、より好ましくは、4つの針状部を有し、前記4つの針状部がそれぞれ、一方の端部を正四面体の略中心位置で結合し、他方の端部を正四面体の略各頂点方向に位置させた3次元形状を有するもの(所謂、「テトラポッド(登録商標)」形状)である。前記針状部は、金属酸化物の針状結晶からなることが好ましい。図1は、本発明で使用する3次元形状を有する金属酸化物を例示する説明図である。4つの針状部1は、長さがほぼ等しく、それぞれ一方の端部aを正四面体の略中心位置で結合し、他方の端部bは、正四面体の略各頂点方向に位置している。
前記3次元形状金属酸化物の針状部の(数)平均長さは、5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましい。5μm未満では、所望の剛性を有するカバーが得られない場合がある。一方、50μmを超えると、カバー層への3次元形状金属酸化物の分散性が低下する場合がある。また、前記針状部の平均径(繊維径)は、特に限定されるものではないが、0.2μm〜3μm程度である。
前記3次元形状金属酸化物を構成する金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、タルクなどを挙げることができ、好ましくは酸化亜鉛である。本発明で使用する3次元形状金属酸化物の具体例としては、松下電器産業社製「テトラポット形状の酸化亜鉛ウィスカ『パナテトラ(登録商標)』」を挙げることができる。
本発明において、前記カバー層は、基材樹脂成分100質量部に対して、前記3次元形状金属酸化物を0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であって、25質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下含有することが望ましい。0.3質量部以上含有することによって、得られるカバーの剛性向上効果が高くなる。一方、25質量以下含有することによって、カバー層への3次元形状金属酸化物の分散性が高まり、得られるカバーの耐久性向上効果が高くなるからである。
本発明において、カバー層を構成する基材樹脂成分は、特に限定されず、例えば、ポリウレタン、アイオノマー樹脂、ポリアミド、ポリエステル、或いは、これらの混合物を挙げることができる。特に、前記基材樹脂成分の主成分を、ポリウレタンまたはアイオノマー樹脂とすることが好ましい態様であり、ポリウレタンまたはアイオノマー樹脂の含有量を50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上とすることが望ましい。さらに、前記基材樹脂成分が、実質上、ポリウレタンまたはアイオノマー樹脂のみからなることも好ましい態様である。カバー層の基材樹脂成分として、ポリウレタンまたはアイオノマー樹脂を採用すれば、打球感や耐久性に優れるカバーが得られるからである。
前記カバー層の基材樹脂成分として使用できるポリウレタンとしては、ウレタン結合を分子内に複数有するものであれば、特に限定されず、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させることによって、ウレタン結合が分子内に形成された生成物であり、必要に応じて、さらにポリアミンなどを反応させることにより得られものである。前記ポリウレタンとしては、例えば、熱可塑性ポリウレタン、熱硬化性(二液硬化型)ポリウレタンを挙げることができる。
前記ポリウレタンは、一般に、ポリイソシアネート成分、ポリオール成分を含有し、さらに必要に応じて、ポリアミン成分を含有する。前記ポリイソシアネート成分としては、イソシアネート基を2以上有するものであれば特に限定されず、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)等の芳香族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂環式ポリイソシアネートまたは脂肪族ポリイソシアネート等のうちの1種、または、2種以上の混合物などである。
耐擦過傷性を向上するという観点からは、ポリウレタンのポリイソシアネート成分として、芳香族ポリイソシアネートを使用することが好ましい。芳香族ポリイソシアネートを使用することにより、得られるポリウレタンの機械的特性が向上し、耐擦過傷性に優れるカバーが得られる。また、耐候性を向上するという観点からは、ポリウレタンのポリイソシアネート成分として、非黄変性のポリイソシアネート(TMXDI、XDI、HDI、H6XDI、IPDI、H12MDIなど)を使用することが好ましく、さらに好ましくは4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)を使用する。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)は剛直な構造を有しており、得られるポリウレタンの機械的特性が向上し、耐擦過傷性に優れるカバーが得られるからである。
前記ポリウレタンを構成するポリオール成分としては、ヒドロキシル基を複数有するものであれば特に限定されず、例えば、低分子量のポリオールや高分子量のポリオールなどを挙げることができる。低分子量のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのトリオールが挙げられる。高分子量のポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)等のポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジぺート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)などの縮合系ポリエステルポリオール;ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)のようなラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートなどのポリカーボネートポリオール;及びアクリルポリオールなどが挙げられ、上述したポリオールの少なくとも2種以上の混合物であってもよい。
高分子量のポリオールの平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば、400以上であることが好ましく、より好ましくは1,000以上である。高分子量ポリオールの平均分子量が小さくなりすぎると、得られるポリウレタンが硬くなり、ゴルフボールの打球感が低下するからである。高分子量ポリオールの平均分子量の上限は、特に限定されるものではないが、10,000以下、より好ましくは8,000以下である。
また、必要に応じて前記ポリウレタンを構成するポリアミンは、少なくとも2以上のアミノ基を有するものであれば特に限定されない。前記ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族系ポリアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンなどの脂環式系ポリアミン、及び、芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
前記芳香族ポリアミンは、少なくとも2以上のアミノ基が芳香環に直接または間接的に結合しているものであれば、特に限定されない。ここで、間接的に結合しているとは、アミノ基が、例えば低級アルキレン基を介して芳香環に結合していることをいう。前記芳香族ポリアミンとしては、例えば、1つの芳香環に2以上のアミノ基が結合している単環式芳香族ポリアミンでもよいし、少なくとも1つのアミノ基が1つの芳香環に結合しているアミノフェニル基を2個以上含む多環式芳香族ポリアミンでもよい。
前記単環式芳香族ポリアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミンなどのアミノ基が芳香環に直接結合しているタイプ;キシリレンジアミンのようなアミノ基が低級アルキレン基を介して芳香環に結合しているタイプなどが挙げられる。また、前記多環式芳香族ポリアミンとしては、少なくとも2つのアミノフェニル基が直接結合しているポリ(アミノベンゼン)でもよいし、少なくとも2つのアミノフェニル基が低級アルキレン基やアルキレンオキシド基を介在して結合していてもよい。これらのうち、低級アルキレン基を介して2つのアミノフェニル基が結合しているジアミノジフェニルアルカンが好ましく、4,4'−ジアミノジフェニルメタン及びその誘導体が特に好ましい。
前記カバー層を構成する基材樹脂成分として使用できる熱可塑性ポリウレタン、及び、熱硬化性ポリウレタン(二液硬化型ポリウレタン)は、前記ポリイソシアネート、ポリオール、ポリアミンを適宜組み合わせることにより作製することができる。ポリウレタンの合成方法としては、例えば、ワンショット法、或いは、プレポリマー法を挙げることができる。ワンショト法とは、ポリイソシアネートとポリオール等とを一括に反応させる方法であり、プレポリマー法とは、多段階でポリイソシアネートとポリオール等とを反応させる方法であり、例えば、一旦低分子量のウレタンプレポリマーを合成した後、続けてさらに高分子量化する方法である。
熱可塑性ポリウレタンは、一般に、上記のような合成方法によって、ある程度高分子量化されたものであるが、低分子量のウレタンプレポリマーを一旦取り置き、カバー成形時に鎖長延長剤(或いは硬化剤)を配合して、高分子量化するようにすれば、熱硬化性ポリウレタン(二液硬化型ポリウレタン)が得られる。ポリウレタンの合成には、公知の触媒を使用することができる。前記触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンなどのモノアミン類;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン等のポリアミン類;1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)、トリエチレンジアミン等の環状ジアミン類;ジブチルチンジラウリレート、ジブチルチンジアセテートなどの錫系触媒などが挙げられる。
本発明では、カバー層の基材樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタンを使用することが好ましい一態様であり、さらに好ましくは熱可塑性ポリウレタンエラストマーを使用する。熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、いわゆるゴム弾性を示すポリウレタンであり、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを採用することにより、反発性の高いカバーが得られる。前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、例えば、射出成形や圧縮成形などによりカバーを成形できるものであれば特に限定されず、BASFポリウレタンエラストマーズ(株)から市販されている「エラストランXNY90A」、「エラストランXNY97A」、「エラストランXNY585」などを使用できる。
前記熱可塑性ポリウレタンおよび熱可塑性ポリウレタンエラストマーの構成態様としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリイソシアネート成分と高分子量ポリオール成分によって構成されている態様;ポリイソシアネート成分と高分子量ポリオール成分と低分子量ポリオール成分によって構成されている態様;ポリイソシアネート成分と高分子量ポリオール成分と低分子量ポリオール成分とポリアミン成分とによって構成されている態様;ポリイソシアネート成分と高分子量ポリオール成分とポリアミン成分とによって構成されている態様などを挙げることができる。
また本発明では、カバー層の基材樹脂成分として、熱硬化性ポリウレタンを使用することも好ましい態様である。熱硬化性ポリウレタンは、3次元架橋点を多く生成させることができるので、耐久性に優れたカバーが得られる。前記熱硬化性ポリウレタンとしては、例えば、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーをポリアミン、ポリオール等の硬化剤で硬化させるタイプ、或いは、ヒドロキシル基またはアミノ基末端ウレタンプレポリマーをポリイソシアネートなどの硬化剤で硬化させるタイプを挙げることができる。硬化剤として使用するポリアミン、ポリオール、及び、ポリイソシアネートは、上述したものの中から適宜選択することができる。
これらの中でも、熱硬化性ポリウレタンとしては、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーをポリアミンで硬化させて得られるものが好ましい。この場合、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基に対する硬化剤のアミノ基のモル比率(NH2/NCO)は、0.70以上、より好ましくは0.80以上、さらに好ましくは0.85以上とし、1.20以下、より好ましくは1.05以下、更に好ましくは1.00以下とするとすることが望ましい。0.70未満ではポリアミンに対するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの量が過剰となり、アロファネート架橋やビュレット架橋の生成反応が起こりやすくなり、最終的に得られるポリウレタンの柔軟性が不足気味になるからである。一方、1.20超では、イソシアネート基が不足するため、アロファネートやビュレット架橋反応が起こりにくくなり、その結果、3次元架橋点が少なくなりすぎて、最終的に得られる熱硬化性ポリウレタンの強度が低下する傾向がある。
本発明では、カバー層の基材樹脂成分として、アイオノマー樹脂を使用することも好ましい一態様である。前記アイオノマー樹脂としては、例えば、エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したアイオノマー樹脂、エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、または、これらの混合物を挙げることができる。
前記α,β−不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。前記エチレンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体や、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられるが、特にナトリウム、亜鉛、マグネシウムイオンが反発性、耐久性等から好ましく用いられる。
前記アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されているハイミラン(Himilan)1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM7311(Mg)等が挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、ハイミラン1856(Na)、ハイミラン1855(Zn)等が挙げられる。
さらにデュポン社から市販されているアイオノマー樹脂としては、サーリン(Surlyn)8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6910(Mg)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li)等が挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、サーリン8120(Na)、サーリン8320(Na)、サーリン9320(Zn)、サーリン6320(Mg)等が挙げられる。
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、アイオテック(Iotek)8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn)等が挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、アイオテック7510(Zn)、アイオテック7520(Zn)等が挙げられる。前記アイオノマー樹脂は、例示のものをそれぞれ単独または2種以上の混合物として用いてもよい。前記アイオノマー樹脂の商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、K、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。
本発明におけるカバー層の基材樹脂成分として、前記熱可塑性ポリウレタン或は前記アイオノマー樹脂等の基材樹脂に加えて、さらに熱可塑性エラストマーやジエン系ブロック共重合体等を使用することも好ましい態様である。前記熱可塑性エラストマーの具体例としては、例えばアルケマ(株)から商品名「ペバックス(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、BASFポリウレタンエラストマーズ社から商品名「エラストラン(例えば、「エラストランET880」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン」で市販されている熱可塑性ポリスチレンエラストマー等が挙げられ、これらの中でも熱可塑性ポリスチレンエラストマーが好ましい。前記熱可塑性ポリスチレンエラストマーは、例えば、ハードセグメントとして、ポリスチレンブロック成分と、ソフトセグメントとしてポリブタジエン、イソプレン、水素添加ポリブタジエン、水素添加ポリイソプレンなどのジエンブロック成分を有するポリスチレン−ジエン系ブロック共重合体を挙げることができる。前記ポリスチレン−ジエン系ブロック共重合体は、ブロック共重合体または部分水素添加ブロック共重合体の共役ジエン化合物に由来する二重結合を有するものである。前記ポリスチレン−ジエン系ブロック共重合体としては、例えば、ポリブタジエンブロックを有するSBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)構造のブロック共重合体、または、SIS(スチレン−イソプレン−スチレン)構造のブロック共重合体などが挙げられる。前記ジエン系ブロック共重合体の具体例としては、例えば、ダイセル化学工業(株)製の「エポフレンドA1010」、(株)クラレ製の「セプトンHG−252」などを挙げることができる。
本発明のゴルフボールのカバー層は、上述した基材樹脂成分および3次元形状金属酸化物のほか、酸化チタン、青色顔料などの顔料成分、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの比重調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
本発明のゴルフボールのカバー層のスラブ硬度は、ショアD硬度で57D以上であり、より好ましくは58D以上であり、さらに好ましくは59D以上であって、より好ましくは65D以下であり、さらに好ましくは64D以下であることが望ましい。カバー層のスラブ硬度を57D以上とすることによって、得られるカバー層の剛性が高まり、反発性(飛距離)に優れるゴルフボールが得られる。一方、スラブ硬度を65D以下とすることによって、ゴルフボール打撃時の打球感が向上する。ここで、カバー層のスラブ硬度とは、カバー層をシート状に成形して測定した硬度であり、後述する測定方法により測定する。また、前記カバー層のスラブ硬度は、上述した基材樹脂成分の組合せ、3次元形状金属酸化物の含有量などを適宜選択することによって、調整することができる。
本発明の好ましい態様では、ゴルフボールのカバー層のスラブ硬度をX(ショアD硬度)、曲げ剛性率をY(MPa)としたときに、前記XとYとが下記式を満足する。
57≦X≦65 式(1)
Y≧18X−850(好ましくはY≧18X−847) 式(2)
本発明では、3次元形状の金属酸化物をカバー層に配合することによって、得られるカバーの硬度の割りに剛性が著しく高くなるという特徴がある。これは、得られるゴルフボールにおいて、打球感を損なうことなく反発性を高めることができることを意味する。本発明の式(1)及び式(2)は、この関係を示すものであり、カバー層のスラブ硬度X(ショアD硬度)が57〜65という打球感が良好な範囲であっても、曲げ剛性率Yが高くなって、式(2)を満足するというものである。尚、式(2)は、上述した基材樹脂成分の組合せ、3次元形状金属酸化物の含有量などを適宜選択することによって満足することができ、例えば、アイオノマー樹脂と熱可塑性ポリスチレンエラストマーの比率を適宜制御することによって式(2)を満足することができる。
本発明のゴルフボールのカバー層の厚みは、2.3mm以下が好ましく、1.9mm以下がより好ましく、1.4mm以下がさらに好ましい。2.3mm以下とすることによって、ゴルフボールの打ち出し角が適切になり、飛距離が一層増大するからである。カバー層の厚みの下限は、特に限定されるものではないが、例えば、0.3mmである。0.3mm未満では、カバー層の成形が困難になる虞があるからである。
本発明のゴルフボールの構造は、コア層と前記コア層を被覆するカバー層とを有するものであれば、特に限定されない。いずれのゴルフボールもカバー層を有し、本発明を好適に適用できるからである。前記コア層は、少なくとも1層以上のコアであればよく、単層コアまたは2層以上の多層コア層のいずれであっても良い。前記カバー層も同様に、少なくとも1層からなるものであれば良く、単層カバーまたは2層以上の多層カバーのいずれであっても良い。また、少なくとも1層以上のカバー層と少なくとも1層以上のコア層との間に少なくとも1層以上の中間層が存在してもよい。カバー層が2層以上の多層からなる場合の最外層カバーを除く内層カバーと、コア層が2層以上の多層からなる場合の最内層コアを除く外層コアは、ゴルフボールの構造上、最内層コアと最外層カバーとの間に位置する中間層として扱うこともできる。
本発明のゴルフボールのカバー層が2層以上の多層カバーの場合には、カバー層の少なくとも1層(好ましくは最外層)が、上述した3次元形状金属酸化物を含有し、そのスラブ硬度が、上述したショアD硬度の範囲を満足するようにすればよい。また、カバー層の最外層のスラブ硬度X(ショアD硬度)と曲げ剛性率Y(MPa)とが上記式(1)及び(2)を満足すればよい。
本発明のゴルフボールの構造の具体例としては、コアと前記コアを被覆するカバーとからなるツーピースゴルフボール、コアと前記コアを被覆する中間層と前記中間層を被覆するカバーとからなるスリーピースゴルフボール、コアと前記コアを被覆する中間層と、前記中間層を被覆するカバーとを有し、少なくとも4層以上の構造を有するマルチピースゴルフボール、或いは、糸巻きゴルフボールを挙げることができる。
以下、本発明のゴルフボールを製造する方法について、ツーピースゴルフボールの態様に基づいて説明するが、本発明は、かかる製造方法に限定されるものではない。ツーピースゴルフボールのコアとしては、従来より公知のコアを使用することができ、例えば、基材ゴム、共架橋剤、有機過酸化物、充填剤を含むコア用ゴム組成物を加熱プレスして成形したものであることが好ましい。
前記コアは、基本的に、基材ゴム、架橋開始剤、共架橋剤、充填材、老化防止剤等を含有するコア用ゴム組成物を加熱プレスして得られる。前記コアは、少なくとも1つの層からなるものであれば特に限定されず、単層構造、または、2層以上の多層構造のいずれであっても良い。前記基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などを使用できる。これらの中でも、特に、反発に有利なシス結合が40%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。
前記架橋開始剤としては、有機過酸化物を好適に使用できる。前記有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。有機過酸化物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.3質量部以上、より好ましくは0.4質量部以上であって、5質量部以下、より好ましくは3質量部以下であることが望ましい。0.3質量部未満では、コアが柔らかくなりすぎて、反発性が低下する傾向があり、5質量部を超えると、硬くなりすぎて、打球感が低下するからである。
前記共架橋剤としては、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸またはその金属塩を使用できる。前記金属塩を構成する金属としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムを挙げることができ、反発性が高くなるということから、亜鉛を使用することが好ましい。前記α,β−不飽和カルボン酸またはその金属塩として好ましいのは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛である。
前記コアが、内層コアおよび外層コアから成る2層構造を有し、外層コアを薄くする場合、内層コアには高い反発性を付与するα,β−不飽和カルボン酸の亜鉛塩、特にアクリル酸亜鉛が好適であり、外層コアには金型離型性の良好なα,β−不飽和カルボン酸のマグネシウム塩、特にメタクリル酸マグネシウムが好適である。
前記共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して、10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であって、55質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは48質量部以下であることが望ましい。共架橋剤の使用量が10質量部未満では、適当な硬さとするために有機過酸化物の使用量を増加しなければならず、反発性が低下する傾向がある。一方、共架橋剤の使用量が55質量部を超えると、コアが硬くなりすぎて、打球感が低下する虞がある。
前記充填材は、ゴルフボールのコアに通常配合されるものであればよく、無機塩(具体的には、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等)、高比重金属粉末(例えば、タングステン粉末、モリブデン粉末等)およびそれらの混合物が挙げられる。前記充填剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上、好ましくは1質量部以上であって、30質量部以下、好ましくは20質量部以下であることが望ましい。0.5質量部未満では、比重調整が困難になり適正な重量が得られなくなり、30質量部を超えるとコア全体に占めるゴム分率が小さくなって反発性が低下するからである。
前記コア用ゴム組成物には、基材ゴム、共架橋剤、有機過酸化物、及び、充填剤に加えて、さらに、有機硫黄化合物、老化防止剤、または、しゃく解剤等を適宜配合することができる。老化防止剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
前記コアは、前述のコア用ゴム組成物を混合、混練し、金型内で成形することにより得ることができる。この際の条件は、特に限定されないが、通常は130〜180℃、圧力2.9〜11.8MPaで10〜40分間で行われる。
前記コアの直径は、30mm以上、より好ましくは32mm以上であって、41mm以下、より好ましくは40.5mm以下であることが望ましい。前記コアの直径が30mmよりも小さいと、中間層またはカバー層を所望の厚さより厚くする必要があり、その結果反発性が低下する場合がある。一方、コアの直径が41mmを超える場合は、中間層またはカバー層を所望の厚さより薄くする必要があり、中間層またはカバー層の機能が十分発揮されない。
前記コアは、直径30mm〜41mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にゴルフボールが縮む量)が、3.0mm以上、より好ましくは3.4mm以上であって、6.0mm以下、より好ましくは5.5mm以下であることが望ましい。前記圧縮変形量が、3.0mm未満では打球感が硬くて悪くなり、6.0mmを超えると、反発性が低下する場合がある。
本発明のゴルフボールは、糸巻きゴルフボールにも適用できる。斯かる場合、糸巻きコアとしては、例えば、上述したコア用ゴム組成物を硬化させてなるセンターとそのセンターの周囲に糸ゴムを延伸状態で巻き付けることによって形成した糸ゴム層とから成るものを使用すればよい。また、前記センター上に巻き付ける糸ゴムは、糸巻きゴルフボールの糸巻き層に従来から使用されているものと同様のものを使用することができ、例えば、天然ゴムまたは天然ゴムと合成ポリイソプレンに硫黄、加硫助剤、加硫促進剤、老化防止剤等を配合したゴム組成物を加硫することによって得られたものを用いてもよい。糸ゴムはセンター上に約10倍に引き伸ばして巻きつけて糸巻きコアを作製する。
また、本発明のゴルフボールが、スリーピース以上のマルチピースゴルフボールの場合、中間層としては、カバー層に含有される基材樹脂成分として上述したのと同一のものを使用することができ、例えば、ポリウレタン、アイオノマー樹脂、ナイロン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂;ポリスチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等の熱可塑性エラストマー;ジエン系ブロック共重合体等などが挙げられる。また、中間層として、例えば、ゴム組成物の硬化物を使用することもできる。前記中間層には、さらに、硫酸バリウム、タングステン等の比重調整剤、老化防止剤、顔料などが配合されていてもよい。
中間層を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、中間層形成用材料を予め半球殻状のハーフシェルに形成し、それを2枚用いてコアを包み、加圧成形する方法、または、前記中間層用材料を直接コア上に射出成形してコアを包み込む方法などを採用できる。
本発明のゴルフボールを製造する際には、例えば、コアをカバー用組成物で被覆してカバーを成形する。カバーを成形する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、カバー用組成物を予め半球殻状のハーフシェルに成形し、それを2枚用いてコアを包み、130〜170℃で1〜5分間加圧成形するか、またはカバー用組成物を直接コア上に射出成形してコアを包み込む方法が用いられる。
また、カバーを成形してゴルフボール本体を作製する際には、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。カバー成形後、ペイント仕上げ、スタンプ等も必要に応じて施し得る。さらに、ゴルフボール本体表面は、必要に応じて、マークや塗膜との密着性を向上するために、サンドブラスト処理のような研磨処理がなされてもよい。
本発明のゴルフボールは、直径42.60mm〜42.90mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にゴルフボールが縮む量)が、2.0mm以上、より好ましくは2.2mm以上、さらに好ましくは2.3mm以上であって、4.5mm以下、より好ましくは4.3mm以下、さらに好ましくは4.0mm以下であることが望ましい。前記圧縮変形量が、2.0mm未満では打球感が硬くて悪いものとなり、4.5mmを超えると反発性が低下する場合がある。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
[評価方法]
(1)カバー層のスラブ硬度(ショアD硬度)
カバー用組成物を用いて、熱プレス成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板等の影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、ASTM−D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて測定した。
(2)曲げ剛性率(MPa)
カバー用組成物を用いて、熱プレス成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートの曲げ剛性率を、JIS K7106に準じて測定した。
(3)圧縮変形量(mm)
ゴルフボールまたはコアに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にゴルフボールが縮む量)を測定した。
(4)耐久性
ツルーテンパー社製のスイングロボットにメタルヘッド製#W1ドライバーを取り付け、各ゴルフボールをヘッドスピード45m/秒で打撃し衝突板に衝突させて、ゴルフボールが壊れるまでの繰返し打撃回数を測定した。各ゴルフボールの耐久性は、ゴルフボールNo.7の打撃回数を100として、各ゴルフボールについての打撃回数を指数化した値で示した。指数化された値が大きいほど、ゴルフボールが耐久性に優れていることを示す。
(5)打球感
プロゴルファーと上級アマチュアゴルファー(ハンデキャップ5以下)20人により、ドライバーを用いて実打テストを行って、打球感を下記のA〜Dの4段階に格付けし、最も多い評価を各ゴルフボールの打球感とした。
A:極めて良い
B:良好
C:やや不良
D:不良
(6)飛距離
ツルーテンパー社製のスイングロボットにメタルヘッド製#W1ドライバーを取り付け、ヘッドスピード45m/秒でゴルフボールを打撃し、飛距離(発射始点から静止地点までの距離(m))を測定した。測定は、各ゴルフボールについて10回ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの飛距離とした。
[ゴルフボールの作製]
(1)コアの作製
表1に示す配合のコア用ゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃で20分間加熱プレスすることにより直径39.0mm〜40.0mmの球状コアを得た。
ポリブタジエンゴム:JSR(株)製のBR730(ハイシスポリブタジエン)
アクリル酸亜鉛:日本蒸留製のZNDA−90S
酸化亜鉛:東邦亜鉛製の銀嶺R
硫酸バリウム:堺化学製硫酸バリウムBD
ジフェニルジスルフィド:住友精化製
ジクミルパーオキサイド:日本油脂製のパークミルD
尚、硫酸バリウムは、得られるゴルフボールの質量が、45.4gとなるように適量加えた。
(2)カバー組成物の調製
表2に示した配合材料を、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状のカバー用組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160〜230℃に加熱された。カバー用組成物について、スラブ硬度、曲げ剛性率を測定した結果を表2に併せて示した。
サーリン8945:デュポン社製のナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
サーリン9945:デュポン社製の亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
ラバロンSR04:三菱化学社製熱可塑性ポリスチレンエラストマー
パナテトラWZ−0501:松下電器産業社製3次元形状金属酸化物(酸化亜鉛)
WHITESEAL:PT.INDO LYSAGHTより市販の亜鉛華(粒子状の形状:粒子径344μm)
アルボレックスYS3A:四国化成工業社製繊維状ホウ酸アルミニウムウィスカー
ティスモD−102:大塚化学社製の針状のチタン酸カリウムウィスカー
サーフェストランドREV8:エヌエスジー・ヴェトロテックス社製のガラス繊維
(3)ゴルフボール本体の作製
上記で得たカバー用組成物を、前述のようにして得たコア上に直接射出成形することによりカバー層を形成し、ツーピースゴルフボール本体を作製した。カバー成形用上下金型は、半球状キャビティを有し、ディンプル付きで、ディンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねている。上記ホールドピンを突き出し、コアを投入後ホールドさせ、80トンの圧力で型締めした金型に210℃に加熱した樹脂を0.3秒で注入し、30秒間冷却して型開きしてゴルフボールを取り出した。得られたゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理をして、マーキングを施した後、クリアーペイントを塗布し、40℃のオーブンで塗料を乾燥させ、直径42.7mm、質量45.4gのゴルフボールを得た。尚、ゴルフボール表面には、表3及び図2〜図4に示したディンプルパターンを形成した。
得られたゴルフボールの構成、並びに、耐久性、飛距離、打球感について評価した結果を表4に示した。
表3中のディプル直径、深さ、容積の定義は、特開2005−143877号公報に記載されている通りである。
表4中、ゴルフボールNo.1〜No.6は、コアと前記コアを被覆するカバー層とを有するツーピースゴルフボールであって、前記カバー層は、少なくとも3つの針状部を有する3次元形状の金属酸化物を含有し、そのスラブ硬度が、ショアD硬度で57D以上であるゴルフボールである。いずれのゴルフボールも、耐久性、飛距離、及び、打球感に優れることが分かる。また、ゴルフボールNo.1〜No.6が使用するカバー組成物A〜Eは、得られるカバー層のスラブ硬度の割りに、曲げ剛性率が高くなっていることが確認できる。ゴルフボールNo.7は、カバー層が充填剤(強化材)を含有しない従来のゴルフボールである。ゴルフボールNo.8は、カバー層が3次元形状金属酸化物を含有するが、そのスラブ硬度が57未満の場合である。ゴルフボールNo.7と比べて、耐久性が向上したものの飛距離が低下した。ゴルフボールNo.9は、カバー層が粒状の酸化亜鉛を含有する場合であるが、耐久性及び飛距離の向上効果は認められなかった。ゴルフボールNo.10〜No.12はいずれも、カバー層が繊維状の充填剤(強化材)を含有する場合であるが、飛距離は増大したものの耐久性が低下していることが分かる。ゴルフボールNo.13は、ゴルフボールNo.7のコア径を大きくした場合であるが、飛距離が増大したものの、カバーが薄くなったために耐久性が低下したものと考えられる。