JP2005000534A - ゴルフボール - Google Patents
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Abstract
【課題】反発性を大きく損なうことなく、耐擦過傷性に優れたカバーを有するゴルフボールを提供する。
【解決手段】カバーを有するゴルフボールにおいて、前記カバーが、シランカップリング剤で表面処理された薄片状無機補強材を含有することを特徴とする。
【選択図】 なし
【解決手段】カバーを有するゴルフボールにおいて、前記カバーが、シランカップリング剤で表面処理された薄片状無機補強材を含有することを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カバーを有するゴルフボールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ゴルフボールの表面には、アイアンなどの打撃や地面等との摩擦によって、クラブフェースの跡や、毛羽立ちやささくれなどの擦過傷がつくことがある。そのため、ゴルフボールのカバーに有機短繊維や無機短繊維などを配合して、カバーの耐擦過傷性を高める方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、カバー材料に繊維状ホウ酸アルミニウムウィスカを配合してなるゴルフボールが開示され、特許文献2には、カバー材料に有機短繊維を配合したゴルフボールが開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−137365号公報
【特許文献2】
特開2002−136618号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に示されているような繊維状無機充填剤は、比表面積が小さいため補強効果が小さい。また、カバー材料中に充填剤が均一に分散しにくいため、配合量を増加させるとゴルフボールの反発性が低下する。一方、特許文献2において使用されている有機短繊維は、無機充填剤に比べて弾性率が小さいために補強効果が小さく、十分な耐擦過傷性が得られないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、反発性を大きく損なうことなく、耐擦過傷性に優れたカバーを有するゴルフボールを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明とは、カバーを有するゴルフボールにおいて、前記カバーが、シランカップリング剤で表面処理された薄片状無機補強材を含有することを特徴とする。前記薄片状無機補強材は、弾性率が高く、比表面積も大きいので、カバーの基材に対する補強効果が大きくなる。特に、薄片状の無機補強材は、耐衝撃性を向上するのに適しているので、カバーの耐擦過傷性を向上するのに好適である。また、シランカップリング剤で表面処理されている補強材を使用することにより、補強材とカバー基材との界面接着力が向上し、補強効果が一層高まる。
【0008】
本発明では、前記カバーが、さらに、シランカップリング剤で表面処理された塊状無機補強材を含有することも好ましい態様である。塊状無機補強材を併用することにより、カバー中に薄片状無機補強材が積層するのを妨げることができ、無機補強材を均一に分散させることができる。そのため、得られるカバーの耐擦過傷性に異方性がなくなり、耐擦過傷性が均質に向上する。前記カバーを構成する基材樹脂の主成分としては、ポリウレタンが好適である。カバーを構成する基材樹脂として、耐久性に優れるポリウレタンを採用することにより、カバーの耐擦過傷性を一層高めることができる。前記無機補強材の主成分は、二酸化珪素であることが好ましい。二酸化珪素を主成分とする無機補強材は、弾性率が高く、シランカップリング剤による表面処理も容易だからである。前記シランカップリング剤としては、例えば、アミノシラン、エポキシシラン又はメルカプトシランが好適である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のゴルフボールは、カバーを有するゴルフボールにおいて、前記カバーが、シランカップリング剤で表面処理された薄片状無機補強材を含有することを特徴とする。ゴム、アイオノマー樹脂、ポリウレタンなどの高分子材料を基材とするカバーに、上記薄片状無機補強材を配合することにより、カバーの耐擦過傷性を向上することができる。
【0010】
まず、前記薄片状無機補強材について説明する。前記シランカップリング剤で表面処理された薄片状無機補強材は、その形状が薄片状であり、無機成分からなる。表面積が大きい薄片状の形状を有し、さらに、弾性率の高い無機成分からなる補強材を使用することにより、カバー基材に対する補強効果が一層高くなる。
【0011】
前記薄片状無機補強材の粒子形状は、薄片状であれば特に限定されるものではなく、鱗片状、円形状、多角形状、および、その他の不定形の形状などを挙げることができ、好ましくは多角形状であり、さらに好ましくは正六角形状である。また、前記補強材を構成する無機成分としては、例えば、二酸化珪素などの非金属元素酸化物;銀、又は、アルミなどの金属;酸化アルミニウム又は酸化鉄などの金属酸化物;および、非金属元素または金属元素を含有する複酸化物などを挙げることができ、好ましくは、二酸化珪素である。前記補強材の主成分を二酸化珪素としておけば、シランカップリング剤による表面処理効果が一層高まるからである。
【0012】
前記シランカップリング剤で表面処理された薄片状無機補強材としては、例えば、ガラスフレーク、アルミフレークおよび銀フレークなどの金属フレーク、タルク、マイカ、カオリナイトなどの表面をシランカップリング剤で表面処理したものを挙げることができる。
【0013】
前記薄片状無機補強材の厚みは、特に限定されず、例えば、平均厚みが50μm〜300μm程度のガラスフレーク、厚み約20μm程度の金属フレーク、厚み約1μm程度のカオリナイトなどのシランカップリング剤表面処理物を使用することができる。特に、厚みが1μm以下、より好ましくは0.5μm以下の薄片状無機補強材を使用することが好ましい態様である。厚みの薄い無機補強材を使用することにより、表面積が大きくなって、補強効果が高まるからである。前記薄片状無機補強材の厚みの下限は、特に限定されるものではないが、コストや製造上の理由から、0.001μmであることが好ましく、より好ましくは0.01μmである。
【0014】
また、前記薄片状無機補強材の平均粒子径は、例えば、1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上であって、15μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8μm以下であることが望ましい。同一配合量で比較すると、平均粒子径が小さい程表面積が大きくなって、補強効果が高まるからである。尚、平均粒子径は、例えば、Fraunhofer線のスペクトル光波回折により測定することができる。
【0015】
本発明で使用する薄片状無機補強材は、シランカップリング剤で表面処理されている。シランカップリング剤で表面処理しておくことにより、無機補強材とカバーを構成する基材との界面接着力が高くなり、カバー基材に対する補強効果が一層高まるからである。前記シランカップリング剤は、特に限定されるものではないが、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノシラン;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのエポキシシラン;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどのメタクリロキシシラン;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)などのメルカプトシランなどを挙げることができる。
【0016】
前記シランカップリング剤は、カバーを構成する基材樹脂の種類に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、カバーを構成する基材樹脂として、ポリウレタンを使用する場合は、例えば、メルカプトシラン、アミノシラン、エポキシシランなどを好適に使用できる。また、カバーを構成する基材樹脂としてアイオノマー樹脂を使用する場合には、ビニルシラン、メタクリロキシシラン、エポキシシランなどを使用することも好ましい態様である。
【0017】
本発明のゴルフボールのカバーが、さらに、シランカップリング剤で表面処理された塊状無機補強材を含有することも好ましい態様である。前記塊状無機補強材と前記薄片状無機補強材の混合物を使用することにより、薄片状無機補強材が積層するのを妨げることができ、カバー中に無機補強材を均一に分散させることができる。その結果、得られるカバーの耐擦過傷性に異方性がなくなり、カバーの耐擦過傷性が均質に向上する。
【0018】
前記塊状無機補強材の粒子形状は、非薄片状の形状であって、薄片状無機補強材の積層防止効果を有する立体的形状であれば特に限定されるものではなく、例えば、球状、ラグビーボール状、立方体状、直方体状、多角柱状、多角錐状、円錐状、円筒状、円柱状(繊維状)、及び、その他の不定形の立体的形状などを挙げることができ、好ましくは、球状、又は、ラグビーボール状である。球状、又は、ラグビーボール状の無機補強材は、薄片状無機補強材が積層するのを効果的に防止することができる。
【0019】
また、前記塊状補強材は、上述した薄片状無機補強材と同様に無機成分からなる。弾性率の高い無機成分からなることにより、カバー基材に対する補強効果を高めるためである。前記塊状補強材を構成する無機成分としては、例えば、二酸化珪素などの非金属元素酸化物;銀、又は、アルミなどの金属;酸化アルミニウム、又は、酸化鉄などの金属酸化物;および、非金属元素または金属元素を含有する複酸化物などを挙げることができる。前記塊状補強材の主成分を二酸化珪素とすることも好ましい態様である。二酸化珪素はシランカップリング剤と容易に反応するので、シランカップリング剤による表面処理効果が一層高くなるからである。
【0020】
前記塊状無機補強材の平均粒子径は、例えば、0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上、2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.7μm以下であることが望ましい。同一添加量では、平均粒子径が比較的小さい程、表面積が大きくなって、補強効果が高まるからである。尚、平均粒子径は、上述した方法で測定できる。
【0021】
前記塊状無機補強材としては、例えば、ガラスビース、クオーツ粉末(石英粉末)、シリカ粒子、炭酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末、酸化チタン粉末、酸化亜鉛粉末などを挙げることができ、好ましくはガラスビース、クオーツ粉末(石英粉末)、又は、シリカ粒子である。ガラスビース、クオーツ粉末(石英粉末)、シリカ粒子などは、二酸化珪素を主成分とするので、シランカップリング剤による表面処理効果が高くなるからである。尚、硫酸バリウム粉末、炭酸カルシウム粉末、酸化チタン粉末、及び、酸化亜鉛粉末などは、カバーの基材を補強するとともに、カバーの比重を調整したり、カバーを着色する作用などを併せ持つ場合がある。
【0022】
前記塊状無機補強材の表面に処理されているシランカップリング剤としては、薄片状無機補強材の表面に処理されているシランカップリング剤として上述したシランカップリング剤を使用することができる。
【0023】
本発明では、ゴルフボールのカバーが、前記薄片状無機補強材と前記塊状無機補強材とを含有することが極めて好ましい態様であり、かかる組み合わせとして好ましいのは、例えば、薄片状カオリナイト(好ましくは正六角形状カオリナイト)とクオーツ粉末(石英粉末)との組み合わせ、ガラスビーズまたはシリカ粒子とガラスフレークとの組み合わせなどを挙げることができる。また、前記薄片状無機補強材と前記塊状無機補強材との合計比表面積は、特に限定されるものではないが、11〜16m2/gであることが好ましい。前記薄片状無機補強材と前記塊状無機補強材との配合比は、特に限定されないが、塊状無機補強材/薄片状無機補強材(質量比)で0.5以上、より好ましくは1以上であって、6以下、より好ましくは4以下であることが望ましい。配合比が0.5未満では、薄片状無機補強材の割合が増えて、層状に凝集しやすくなるからである。また、配合比が6を超えると、薄片状無機補強材の割合が少ないため、補強効果が小さくなる。
【0024】
本発明のゴルフボールのカバーは、基材となる樹脂成分と上述した無機補強材とを含有するカバー用組成物を成形することにより得られ、前記樹脂成分がカバーを構成する基材樹脂となる。上述した無機補強材のカバー用組成物中の配合量は、特に限定されないが、樹脂成分100質量部に対して、2質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上であって、35質量部以下、より好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下であることが望ましい。無機補強材の配合量が少なすぎると、補強効果が小さくなり、一方、配合量が多すぎるとカバー組成物中の無機成分の割合が高くなって、反発性が低下する虞がある。
【0025】
前記カバー用組成物の樹脂成分は、特に限定されず、例えば、ポリウレタン、アイオノマー樹脂、ポリアミド、ポリエステル、或いは、これらの混合物を挙げることができる。特に、前記樹脂成分の主成分を、ポリウレタン又はアイオノマー樹脂とすることが好ましい態様であり、ポリウレタン又はアイオノマー樹脂の含有量を50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含有することが好ましい。さらに、前記樹脂成分が、実質上、ポリウレタンまたはアイオノマー樹脂のみからなることも好ましい態様である。カバー用組成物の樹脂成分として、ポリウレタン又はアイオノマー樹脂を採用すれば、耐久性の優れたカバーが得られるからである。
【0026】
前記カバー用組成物の樹脂成分として使用できるポリウレタンとしては、ウレタン結合を分子内に複数有するものであれば、特に限定されず、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させることによって、ウレタン結合が分子内に形成された生成物であり、必要に応じて、さらにポリアミンなどを反応させることにより得られものである。前記ポリウレタンとしては、例えば、熱可塑性ポリウレタン、熱硬化性(二液硬化型)ポリウレタンを挙げることができる。
【0027】
前記ポリウレタンは、一般に、ポリイソシアネート成分、ポリオール成分を含有し、さらに必要に応じて、ポリアミン成分を含有する。前記ポリイソシアネート成分としては、イソシアネート基を2以上有するものであれば特に限定されず、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)等の芳香族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂環式ポリイソシアネート又は脂肪族ポリイソシアネート等のうちの1種、または、2種以上の混合物などである。
【0028】
耐擦過傷性を向上するという観点からは、ポリウレタンのポリイソシアネート成分として、芳香族ポリイソシアネートを使用することが好ましい。芳香族ポリイソシアネートを使用することにより、得られるポリウレタンの機械的特性が向上し、耐擦過傷性に優れるカバーが得られる。また、耐候性を向上するという観点からは、ポリウレタンのポリイソシアネート成分として、非黄変性のポリイソシアネート(TMXDI、XDI、HDI、H6XDI、IPDI、H12MDIなど)を使用することが好ましく、さらに好ましくは4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)を使用する。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)は剛直な構造を有しており、得られるポリウレタンの機械的特性が向上し、耐擦過傷性に優れるカバーが得られるからである。
【0029】
前記ポリウレタンを構成するポリオール成分としては、ヒドロキシル基を複数有するものであれば特に限定されず、例えば、低分子量のポリオールや高分子量のポリオールなどを挙げることができる。低分子量のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのトリオールが挙げられる。高分子量のポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)等のポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジぺート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)などの縮合系ポリエステルポリオール;ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)のようなラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートなどのポリカーボネートポリオール;及びアクリルポリオールなどが挙げられ、上述したポリオールの少なくとも2種以上の混合物であってもよい。
【0030】
高分子量のポリオールの平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば、400以上であることが好ましく、より好ましくは1000以上である。高分子量ポリオールの平均分子量が小さくなりすぎると、得られるポリウレタンが硬くなり、ゴルフボールの打球感が低下するからである。高分子量ポリオールの平均分子量の上限は、特に限定されるものではないが、10000以下、より好ましくは8000以下である。
【0031】
また、必要に応じて前記ポリウレタンを構成するポリアミンは、少なくとも2以上のアミノ基を有するものであれば特に限定されない。前記ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族系ポリアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンなどの脂環式系ポリアミン、及び、芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
【0032】
前記芳香族ポリアミンは、少なくとも2以上のアミノ基が芳香環に直接又は間接的に結合しているものであれば、特に限定されない。ここで、間接的に結合しているとは、アミノ基が、例えば低級アルキレン基を介して芳香環に結合していることをいう。前記芳香族ポリアミンとしては、例えば、1つの芳香環に2以上のアミノ基が結合している単環式芳香族ポリアミンでもよいし、少なくとも1つのアミノ基が1つの芳香環に結合しているアミノフェニル基を2個以上含む多環式芳香族ポリアミンでもよい。
【0033】
前記単環式芳香族ポリアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミンなどのアミノ基が芳香環に直接結合しているタイプ;キシリレンジアミンのようなアミノ基が低級アルキレン基を介して芳香環に結合しているタイプなどが挙げられる。また、前記多環式芳香族ポリアミンとしては、少なくとも2つのアミノフェニル基が直接結合しているポリ(アミノベンゼン)でもよいし、少なくとも2つのアミノフェニル基が低級アルキレン基やアルキレンオキシド基を介在して結合していてもよい。これらのうち、低級アルキレン基を介して2つのアミノフェニル基が結合しているジアミノジフェニルアルカンが好ましく、4,4’−ジアミノジフェニルメタン及びその誘導体が特に好ましい。
【0034】
前記カバー用組成物の樹脂成分として使用できる熱可塑性ポリウレタン、及び、熱硬化性ポリウレタン(二液硬化型ポリウレタン)は、上記ポリイソシアネート、ポリオール、ポリアミンを適宜組み合わせることにより作製することができる。ポリウレタンの合成方法としては、ワンショット法、或いは、プレポリマー法を挙げることができる。ワンショト法とは、ポリイソシアネートとポリオール等とを一括に反応させる方法であり、プレポリマー法とは、多段階でポリイソシアネートとポリオール等とを反応させる方法であり、例えば、一旦低分子量のウレタンプレポリマーを合成した後、続けてさらに高分子量化する方法である。
【0035】
熱可塑性ポリウレタンは、一般に、上記のような合成方法によって、ある程度高分子量化されたものであるが、低分子量のウレタンプレポリマーを一旦取り置き、カバー成形時に鎖長延長剤(或いは硬化剤)を配合して、高分子量化するようにすれば、熱硬化性ポリウレタン(二液硬化型ポリウレタン)が得られる。ポリウレタンの合成には、公知の触媒を使用することができる。前記触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンなどのモノアミン類;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン等のポリアミン類;1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)、トリエチレンジアミン等の環状ジアミン類;ジブチルチンジラウリレート、ジブチルチンジアセテートなどの錫系触媒などが挙げられる。
【0036】
本発明では、カバー用組成物の樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタンを使用することが好ましい態様の一つであり、さらに好ましくは熱可塑性ポリウレタンエラストマーを使用する。熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、いわゆるゴム弾性を示すポリウレタンであり、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを採用することにより、反発性の高いカバーが得られる。前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、例えば、射出成形や圧縮成形などによりカバーを成形できるものであれば特に限定されず、BASFポリウレタンエラストマーズ(株)から市販されている「エラストランXNY90A」、「エラストランXNY97A」、「エラストランXNY585」などを使用できる。
【0037】
前記熱可塑性ポリウレタンおよび熱可塑性ポリウレタンエラストマーの構成態様としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリイソシアネート成分と高分子量ポリオール成分によって構成されている態様;ポリイソシアネート成分と高分子量ポリオール成分と低分子量ポリオール成分によって構成されている態様;ポリイソシアネート成分と高分子量ポリオール成分と低分子量ポリオール成分とポリアミン成分とによって構成されている態様;ポリイソシアネート成分と高分子量ポリオール成分とポリアミン成分とによって構成されている態様などを挙げることができる。
【0038】
また本発明では、カバー用組成物の樹脂成分として、熱硬化性ポリウレタンを使用することも好ましい態様である。熱硬化性ポリウレタンは、3次元架橋点を多く生成させることができるので、耐久性に優れたカバーが得られる。前記熱硬化性ポリウレタンとしては、例えば、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーをポリアミン、ポリオール等の硬化剤で硬化させるタイプ、或いは、ヒドロキシル基またはアミノ基末端ウレタンプレポリマーをポリイソシアネートなどの硬化剤で硬化させるタイプを挙げることができる。硬化剤として使用するポリアミン、ポリオール、及び、ポリイソシアネートは、上述したものの中から適宜選択することができる。
【0039】
これらの中でも、熱硬化性ポリウレタンとしては、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーをポリアミンで硬化させて得られるものが好ましい。この場合、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基に対する硬化剤のアミノ基のモル比率(NH2/NCO)は、0.70以上、より好ましくは0.80以上、さらに好ましくは0.85以上とし、1.20以下、より好ましくは1.05以下、更に好ましくは1.00以下とするとすることが望ましい。0.70未満ではポリアミンに対するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの量が過剰となり、アロファネート架橋やビュレット架橋の生成反応が起こりやすくなり、最終的に得られるポリウレタンの柔軟性が不足気味になるからである。一方、1.20超では、イソシアネート基が不足するため、アロファネートやビュレット架橋反応が起こりにくくなり、その結果、3次元架橋点が少なくなりすぎて、最終的に得られる熱硬化性ポリウレタンの強度が低下する傾向がある。
【0040】
本発明では、カバー用組成物の樹脂成分として、アイオノマー樹脂を使用することも好ましい一態様である。前記アイオノマー樹脂としては、例えば、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、またはエチレンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものを挙げることができる。上記のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。また、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルが好ましい。上記エチレンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体や、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられるが、特にナトリウム、亜鉛、マグネシウムイオンが反発性、耐久性等から好ましく用いられる。
【0041】
上記アイオノマー樹脂の具体例としては、ハイミラン1555、1557、1605、1652、1702、1705、1706、1707、1855、1856(三井デュポンポリケミカル社製)、サーリン8945、サーリン9945、サーリンAD8511、サーリンAD8512、サーリンAD8542(デュポン社製)、IOTEK 7010、8000(エクソン(Exxon)社製)等を例示することができる。これらのアイオノマー樹脂は、上記例示のものをそれぞれ単独または2種以上の混合物として用いてもよい。
【0042】
本発明におけるカバー用組成物の樹脂成分として、上記熱可塑性ポリウレタンあるいは上記アイオノマー樹脂等の基材樹脂に加えて、さらに熱可塑性エラストマーやジエン系ブロック共重合体等を使用することも好ましい態様である。前記熱可塑性エラストマーの具体例としては、東レ(株)から商品名「ペバックス」で市販されている(例えば、「ペバックス2533」)熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル」で市販されている(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)熱可塑性ポリエステルエラストマー、BASFポリウレタンエラストマーズ社から商品名「エラストラン」で市販されている(例えば、「エラストランET880」)熱可塑性ポリウレタンエラストマー等が挙げられる。
【0043】
前記ジエン系ブロック共重合体は、ブロック共重合体または部分水素添加ブロック共重合体の共役ジエン化合物に由来する二重結合を有するものである。その基体となるブロック共重合体とは、少なくとも1種のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと少なくとも1種の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとから成るブロック共重合体である。また、部分水素添加ブロック共重合体とは、上記ブロック共重合体を水素添加して得られるものである。ブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−t−ブチルスチレン、1,1−ジフェニルスチレン等の中から1種または2種以上を選択することができ、スチレンが好ましい。また、共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等の中から1種または2種以上を選択することができ、ブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。好ましいジエン系ブロック共重合体の例としては、エポキシ基を含有するポリブタジエンブロックを有するSBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)構造のブロック共重合体、または、エポキシ基を有するSIS(スチレン−イソプレン−スチレン)構造のブロック共重合体などが挙げられる。
【0044】
上記ジエン系ブロック共重合体の具体例としては、例えば、ダイセル化学工業(株)製の「エポフレンドA1010」、(株)クラレ製の「セプトンHG−252」などを挙げることができる。上記熱可塑性エラストマーやジエン系ブロック共重合体の配合量は、基材樹脂100質量部に対して、1〜60質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜35質量部である。
【0045】
本発明のカバー用組成物は、上述した樹脂成分および無機補強材のほか、酸化亜鉛、酸化チタン、青色顔料などの顔料成分、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの比重調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0046】
本発明のゴルフボールの構造は、特に限定されず、ツーピースゴルフボール、スリーピースゴルフボール以上のマルチピースゴルフボール、或いは、糸巻きゴルフボールであってもよい。いずれの場合であっても、本発明を好適に適用できるからである。
【0047】
以下、本発明のゴルフボールを製造する方法について、ツーピースゴルフボールの態様に基づいて説明するが、本発明は、かかる製造方法に限定されるものではない。ツーピースゴルフボールのコアとしては、従来より公知のコアを使用することができ、例えば、基材ゴム、共架橋剤、有機過酸化物、充填剤を含むコア用ゴム組成物を加熱プレスして成形したものであることが好ましい。
【0048】
前記基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などを使用できる。これらの中でも、特に、反発に有利なシス結合が40%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。
【0049】
前記共架橋剤としては、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸又はその金属塩を使用することができ、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、又は、これらの金属塩を挙げることができる。前記金属塩を構成する金属としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムを挙げることができ、反発性が高くなるということから、亜鉛を使用することが好ましい。共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して、10質量部以上、より好ましくは20質量部以上であって、50質量部以下、より好ましくは40質量部以下であることが望ましい。共架橋剤の使用量が10質量部未満では、適当な硬さとするために有機過酸化物の量を増加しなければならず、反発性が低下する傾向がある。一方、共架橋剤の使用量が50質量部を超えると、コアが硬くなりすぎて、打球感が低下する虞がある。
【0050】
コア用ゴム組成物に含有される有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。有機過酸化物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.2〜3質量部が好ましく、より好ましくは0.3〜2質量部である。0.2質量部未満では、コアが柔らかくなりすぎて、反発性が低下する傾向があり、3質量部を超えると、適切な硬さにするために、共架橋剤の使用量を増加する必要があり、反発性が不足気味になる。
【0051】
コア用ゴム組成物に含有される充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。前記充填剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、2質量部以上、より好ましくは3質量部以上であって、50質量部以下、より好ましくは35質量部以下であることが望ましい。充填剤の配合量が2質量部未満では、重量調整が難しくなり、50質量部を超えるとゴム成分の重量分率が小さくなり反発性が低下する傾向があるからである。
【0052】
前記コア用ゴム組成物には、基材ゴム、共架橋剤、有機過酸化物、及び、充填剤に加えて、さらに、有機硫黄化合物、老化防止剤、又は、しゃく解剤等を適宜配合することができる。老化防止剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
【0053】
前記コア用ゴム組成物の加熱プレス成形条件は、ゴム組成に応じて適宜設定すればよいが、通常、130〜200℃で10〜60分間加熱するか、あるいは130〜150℃で20〜40分間加熱した後、160〜180℃で5〜15分間と2段階加熱することが好ましい。
【0054】
本発明では、上記の如く成形したコアに、上述したカバー用組成物を被覆して、ゴルフボール本体を作製する。カバー用組成物の樹脂成分として熱硬化性ポリウレタンを使用する場合には、例えば、得られたコアを半球状の金型に保持させた状態で、この金型内にカバー用組成物を注入し、次にこれを反転させて、カバー用組成物を注入した別の半球状の金型と合わせて硬化反応を行なって、カバーを成形すればよい。前記熱硬化性ポリウレタンを含有するカバー用組成物の硬化反応は、30℃〜120℃、好ましくは50℃〜80℃で、2〜60分間、好ましくは5〜30分間行うことが望ましい。
【0055】
また、カバー用組成物の樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタン、アイオノマー樹脂、熱可塑性エラストマーなどを使用する場合には、例えば、まずカバー用組成物を予め半球殻状のハーフシェルに形成し、これを2枚用いてコアを包み、130〜170℃で1〜5分間加圧成形する方法;カバー用組成物をコアを被覆するように射出成形する方法などが適用される。
【0056】
本発明のゴルフボールのカバーの厚みは、特に限定されないが、0.3〜2.5mmとすることが好ましく、より好ましくは0.3〜2.0mm、さらに好ましくは0.5〜0.9mmとする。また、カバーを被覆してゴルフボール本体を作製する際には、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。さらに、ゴルフボール本体表面は、サンドブラスト処理のような研磨処理がなされてもよい。本発明のゴルフボールは、美観および商品価値を高めるために、通常ペイント仕上げ、マーキングスタンプ等を施すことも好ましい。
【0057】
上記製法では、ツーピースゴルフボールの態様に基づいて説明したが、例えば、糸巻きゴルフボールの場合には、糸巻きコアを使用すればよく、スリーピース以上のマルチピースゴルフボールの場合には、コアとカバーとの間に少なくとも1層以上の中間層を設けることができる。
【0058】
前記糸巻きコアは、センターとそのセンターの周囲に糸ゴムを延伸状態で巻き付けることによって形成した糸ゴム層とから成り、従来より公知のものを使用することができる。センターとしては液系(リキッドセンター)またはゴム系(ソリッドセンター)のいずれを用いてもよい。また、上記センター上に巻き付ける糸ゴムは、糸巻きゴルフボールの糸巻き層に従来から使用されているものと同様のものを使用することができ、例えば、天然ゴムまたは天然ゴムと合成ポリイソプレンに硫黄、加硫助剤、加硫促進剤、老化防止剤等を配合したゴム組成物を加硫することによって得られたものを用いてもよい。糸ゴムはセンター上に約10倍に引き伸ばして巻きつけて糸巻きコアを作製する。
【0059】
また、スリーピース以上のマルチピースゴルフボールの中間層としては、カバー用組成物に含有される樹脂成分として上述したのと同一のものを使用することができ、例えば、熱可塑性ポリウレタン、アイオノマー樹脂、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー等の熱可塑性エラストマーやジエン系ブロック共重合体等を使用することができる。前記中間層には、さらに、硫酸バリウム、タングステン等の比重調整剤、老化防止剤、顔料などが配合されていてもよい。
【0060】
中間層を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、中間層形成用材料を予め半球殻状のハーフシェルに形成し、それを2枚用いてソリッドセンターを包み、加圧成形する方法、または、前記中間層用材料を直接ソリッドセンターの上に射出成形してソリッドセンターを包み込む方法などを採用できる。
【0061】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0062】
[評価方法]
▲1▼反発指数
各ゴルフボールに、200gのアルミニウム製円筒物を速度45m/秒で衝突させ、衝突前後の該円筒物及びゴルフボールの速度を測定し、それぞれの速度及び重量から、各ゴルフボールの反発係数を算出した。測定は、各ゴルフボールについて5回行って、その平均を算出した。尚、反発係数は、ゴルフボールNo.1の反発係数を100として、指数化した数値であり、反発指数が大きいほど、反発性が高いことを示している。
【0063】
▲2▼耐擦過傷性
市販のピッチングウェッジをスイングロボットマシンに取付け、ヘッドスピード36m/秒でボールの2箇所を打撃し、打撃部分を目視で観察して、下記基準に基づいて4段階で評価した。
◎:ボールの表面に傷がほとんどない。
○:ボール表面に傷が残る場合もあるが、毛羽立ちはない。
△:ボール表面に傷がくっきり残り、毛羽立ちが少し見られる。
×:ボール表面がかなり削れ、毛羽立ちが目立つ。
【0064】
[ツーピースゴルフボールの作製]
▲1▼コアの作製
表1に示す配合のコア用ゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃で15分間加熱プレスすることにより直径41.2mmの球状コアを得た。
【0065】
【表1】
【0066】
ポリブタジエンゴム:JSR製のBR18(シス含有率96%以上)
アクリル酸亜鉛:日本蒸留製のZNDA−90S
酸化亜鉛:東邦亜鉛製の銀嶺R
ジクミルパーオキサイド:日本油脂製のパークミルD
ジフェニルジスルフィド:住友精化製
【0067】
▲2▼カバー組成物の調製
表2に示した材料を、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状のカバー用組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で200〜260℃に加熱された。
【0068】
▲3▼カバーの作製
得られたカバー用組成物を、前述のようにして得たコア上に直接射出成形することによりカバーを形成し、直径42.8mmを有するツーピースゴルフボール本体を作製した。カバー成形用上下金型は、半球状キャビティを有し、ディンプル付きで、ディンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねている。上記ホールドピンを突き出し、コアを投入後ホールドさせ、80トンの圧力で型締めした金型に210℃に加熱したカバー用組成物を0.3秒で注入し、30秒間冷却して型開きしてゴルフボールを取り出した。得られたゴルフボールについて、耐擦過傷性、反発性について評価した結果を併せて表2に示した。
【0069】
【表2】
【0070】
熱可塑性ポリウレタン:エラストランXNY97A(BSAFポリウレタンエラストマーズ(株)製の4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを使用した熱可塑性ポリウレタンエラストマー)
アクティジルMM:3−メルカプトプロピルトリメトキシシランで表面処理された薄板状カオリナイト(薄片状無機補強材)とクオーツ粉末(石英粉末:塊状無機補強材)との混合物((株)イムペックスケミカルズ謙信洋行)
アクティジルPF216:ビス−(3−(トリエトキシンリル)−プロピル)−テトラサルファンで表面処理された薄板状カオリナイト(薄片状無機補強材)とクオーツ粉末(石英粉末:塊状無機補強材)との混合物((株)イムペックスケミカルズ謙信洋行)
アクティジルMAM:3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランで表面処理された薄板状カオリナイト(薄片状無機補強材)とクオーツ粉末(石英粉末:塊状無機補強材)との混合物((株)イムペックスケミカルズ謙信洋行)
ホウ酸アルミニウムウィスカ:四国化成工業(株)製アルボレックスYS3A(アミノシラン表面処理タイプの繊維状補強材)
【0071】
ゴルフボールNo.1〜7は、ゴルフボールのカバーがシランカップリング剤で表面処理された薄片状無機補強材と塊状無機補強材とを含有する場合であり、反発性を大きく損なうことなく、耐擦過傷性が向上していることが分かる。一方、ゴルフボールNo.8は、カバーが無機補強材を含有しない場合であり、耐擦過傷性が低い。また、ゴルフボールNo.8のカバーにホウ酸アルミニウムウィスカを配合していくと(ゴルフボールNo.9〜No.11)、耐擦過傷性は向上する傾向はあるものの、反発性が損なわれることが分かる。
【0072】
ゴルフボールNo.3とゴルフボールNo.9との比較、及び、ゴルフボールNo.5とゴルフボールNo.11との比較からも明らかなように、同程度の無機補強材を配合した場合には、繊維状の無機補強材したゴルフボールNo.9およびNo.11よりも、薄片状無機補強材と塊状無機補強材の混合物を配合したゴルフボールNo.3およびゴルフボールNo.5の方が、耐擦過傷性に優れていると同時に反発性の低下も小さくなっていることが分かる。また、メルカプトシランで表面処理された無機補強材を使用したゴルフボールNo.3の耐擦過傷性は、No.6及びNo.7の耐擦過傷性に比べて優れていることが分かる。
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、反発性を大きく損なうことなく、ゴルフボールのカバーの耐擦過傷性を向上することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、カバーを有するゴルフボールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ゴルフボールの表面には、アイアンなどの打撃や地面等との摩擦によって、クラブフェースの跡や、毛羽立ちやささくれなどの擦過傷がつくことがある。そのため、ゴルフボールのカバーに有機短繊維や無機短繊維などを配合して、カバーの耐擦過傷性を高める方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、カバー材料に繊維状ホウ酸アルミニウムウィスカを配合してなるゴルフボールが開示され、特許文献2には、カバー材料に有機短繊維を配合したゴルフボールが開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−137365号公報
【特許文献2】
特開2002−136618号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に示されているような繊維状無機充填剤は、比表面積が小さいため補強効果が小さい。また、カバー材料中に充填剤が均一に分散しにくいため、配合量を増加させるとゴルフボールの反発性が低下する。一方、特許文献2において使用されている有機短繊維は、無機充填剤に比べて弾性率が小さいために補強効果が小さく、十分な耐擦過傷性が得られないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、反発性を大きく損なうことなく、耐擦過傷性に優れたカバーを有するゴルフボールを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明とは、カバーを有するゴルフボールにおいて、前記カバーが、シランカップリング剤で表面処理された薄片状無機補強材を含有することを特徴とする。前記薄片状無機補強材は、弾性率が高く、比表面積も大きいので、カバーの基材に対する補強効果が大きくなる。特に、薄片状の無機補強材は、耐衝撃性を向上するのに適しているので、カバーの耐擦過傷性を向上するのに好適である。また、シランカップリング剤で表面処理されている補強材を使用することにより、補強材とカバー基材との界面接着力が向上し、補強効果が一層高まる。
【0008】
本発明では、前記カバーが、さらに、シランカップリング剤で表面処理された塊状無機補強材を含有することも好ましい態様である。塊状無機補強材を併用することにより、カバー中に薄片状無機補強材が積層するのを妨げることができ、無機補強材を均一に分散させることができる。そのため、得られるカバーの耐擦過傷性に異方性がなくなり、耐擦過傷性が均質に向上する。前記カバーを構成する基材樹脂の主成分としては、ポリウレタンが好適である。カバーを構成する基材樹脂として、耐久性に優れるポリウレタンを採用することにより、カバーの耐擦過傷性を一層高めることができる。前記無機補強材の主成分は、二酸化珪素であることが好ましい。二酸化珪素を主成分とする無機補強材は、弾性率が高く、シランカップリング剤による表面処理も容易だからである。前記シランカップリング剤としては、例えば、アミノシラン、エポキシシラン又はメルカプトシランが好適である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のゴルフボールは、カバーを有するゴルフボールにおいて、前記カバーが、シランカップリング剤で表面処理された薄片状無機補強材を含有することを特徴とする。ゴム、アイオノマー樹脂、ポリウレタンなどの高分子材料を基材とするカバーに、上記薄片状無機補強材を配合することにより、カバーの耐擦過傷性を向上することができる。
【0010】
まず、前記薄片状無機補強材について説明する。前記シランカップリング剤で表面処理された薄片状無機補強材は、その形状が薄片状であり、無機成分からなる。表面積が大きい薄片状の形状を有し、さらに、弾性率の高い無機成分からなる補強材を使用することにより、カバー基材に対する補強効果が一層高くなる。
【0011】
前記薄片状無機補強材の粒子形状は、薄片状であれば特に限定されるものではなく、鱗片状、円形状、多角形状、および、その他の不定形の形状などを挙げることができ、好ましくは多角形状であり、さらに好ましくは正六角形状である。また、前記補強材を構成する無機成分としては、例えば、二酸化珪素などの非金属元素酸化物;銀、又は、アルミなどの金属;酸化アルミニウム又は酸化鉄などの金属酸化物;および、非金属元素または金属元素を含有する複酸化物などを挙げることができ、好ましくは、二酸化珪素である。前記補強材の主成分を二酸化珪素としておけば、シランカップリング剤による表面処理効果が一層高まるからである。
【0012】
前記シランカップリング剤で表面処理された薄片状無機補強材としては、例えば、ガラスフレーク、アルミフレークおよび銀フレークなどの金属フレーク、タルク、マイカ、カオリナイトなどの表面をシランカップリング剤で表面処理したものを挙げることができる。
【0013】
前記薄片状無機補強材の厚みは、特に限定されず、例えば、平均厚みが50μm〜300μm程度のガラスフレーク、厚み約20μm程度の金属フレーク、厚み約1μm程度のカオリナイトなどのシランカップリング剤表面処理物を使用することができる。特に、厚みが1μm以下、より好ましくは0.5μm以下の薄片状無機補強材を使用することが好ましい態様である。厚みの薄い無機補強材を使用することにより、表面積が大きくなって、補強効果が高まるからである。前記薄片状無機補強材の厚みの下限は、特に限定されるものではないが、コストや製造上の理由から、0.001μmであることが好ましく、より好ましくは0.01μmである。
【0014】
また、前記薄片状無機補強材の平均粒子径は、例えば、1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上であって、15μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8μm以下であることが望ましい。同一配合量で比較すると、平均粒子径が小さい程表面積が大きくなって、補強効果が高まるからである。尚、平均粒子径は、例えば、Fraunhofer線のスペクトル光波回折により測定することができる。
【0015】
本発明で使用する薄片状無機補強材は、シランカップリング剤で表面処理されている。シランカップリング剤で表面処理しておくことにより、無機補強材とカバーを構成する基材との界面接着力が高くなり、カバー基材に対する補強効果が一層高まるからである。前記シランカップリング剤は、特に限定されるものではないが、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノシラン;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのエポキシシラン;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどのメタクリロキシシラン;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)などのメルカプトシランなどを挙げることができる。
【0016】
前記シランカップリング剤は、カバーを構成する基材樹脂の種類に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、カバーを構成する基材樹脂として、ポリウレタンを使用する場合は、例えば、メルカプトシラン、アミノシラン、エポキシシランなどを好適に使用できる。また、カバーを構成する基材樹脂としてアイオノマー樹脂を使用する場合には、ビニルシラン、メタクリロキシシラン、エポキシシランなどを使用することも好ましい態様である。
【0017】
本発明のゴルフボールのカバーが、さらに、シランカップリング剤で表面処理された塊状無機補強材を含有することも好ましい態様である。前記塊状無機補強材と前記薄片状無機補強材の混合物を使用することにより、薄片状無機補強材が積層するのを妨げることができ、カバー中に無機補強材を均一に分散させることができる。その結果、得られるカバーの耐擦過傷性に異方性がなくなり、カバーの耐擦過傷性が均質に向上する。
【0018】
前記塊状無機補強材の粒子形状は、非薄片状の形状であって、薄片状無機補強材の積層防止効果を有する立体的形状であれば特に限定されるものではなく、例えば、球状、ラグビーボール状、立方体状、直方体状、多角柱状、多角錐状、円錐状、円筒状、円柱状(繊維状)、及び、その他の不定形の立体的形状などを挙げることができ、好ましくは、球状、又は、ラグビーボール状である。球状、又は、ラグビーボール状の無機補強材は、薄片状無機補強材が積層するのを効果的に防止することができる。
【0019】
また、前記塊状補強材は、上述した薄片状無機補強材と同様に無機成分からなる。弾性率の高い無機成分からなることにより、カバー基材に対する補強効果を高めるためである。前記塊状補強材を構成する無機成分としては、例えば、二酸化珪素などの非金属元素酸化物;銀、又は、アルミなどの金属;酸化アルミニウム、又は、酸化鉄などの金属酸化物;および、非金属元素または金属元素を含有する複酸化物などを挙げることができる。前記塊状補強材の主成分を二酸化珪素とすることも好ましい態様である。二酸化珪素はシランカップリング剤と容易に反応するので、シランカップリング剤による表面処理効果が一層高くなるからである。
【0020】
前記塊状無機補強材の平均粒子径は、例えば、0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上、2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.7μm以下であることが望ましい。同一添加量では、平均粒子径が比較的小さい程、表面積が大きくなって、補強効果が高まるからである。尚、平均粒子径は、上述した方法で測定できる。
【0021】
前記塊状無機補強材としては、例えば、ガラスビース、クオーツ粉末(石英粉末)、シリカ粒子、炭酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末、酸化チタン粉末、酸化亜鉛粉末などを挙げることができ、好ましくはガラスビース、クオーツ粉末(石英粉末)、又は、シリカ粒子である。ガラスビース、クオーツ粉末(石英粉末)、シリカ粒子などは、二酸化珪素を主成分とするので、シランカップリング剤による表面処理効果が高くなるからである。尚、硫酸バリウム粉末、炭酸カルシウム粉末、酸化チタン粉末、及び、酸化亜鉛粉末などは、カバーの基材を補強するとともに、カバーの比重を調整したり、カバーを着色する作用などを併せ持つ場合がある。
【0022】
前記塊状無機補強材の表面に処理されているシランカップリング剤としては、薄片状無機補強材の表面に処理されているシランカップリング剤として上述したシランカップリング剤を使用することができる。
【0023】
本発明では、ゴルフボールのカバーが、前記薄片状無機補強材と前記塊状無機補強材とを含有することが極めて好ましい態様であり、かかる組み合わせとして好ましいのは、例えば、薄片状カオリナイト(好ましくは正六角形状カオリナイト)とクオーツ粉末(石英粉末)との組み合わせ、ガラスビーズまたはシリカ粒子とガラスフレークとの組み合わせなどを挙げることができる。また、前記薄片状無機補強材と前記塊状無機補強材との合計比表面積は、特に限定されるものではないが、11〜16m2/gであることが好ましい。前記薄片状無機補強材と前記塊状無機補強材との配合比は、特に限定されないが、塊状無機補強材/薄片状無機補強材(質量比)で0.5以上、より好ましくは1以上であって、6以下、より好ましくは4以下であることが望ましい。配合比が0.5未満では、薄片状無機補強材の割合が増えて、層状に凝集しやすくなるからである。また、配合比が6を超えると、薄片状無機補強材の割合が少ないため、補強効果が小さくなる。
【0024】
本発明のゴルフボールのカバーは、基材となる樹脂成分と上述した無機補強材とを含有するカバー用組成物を成形することにより得られ、前記樹脂成分がカバーを構成する基材樹脂となる。上述した無機補強材のカバー用組成物中の配合量は、特に限定されないが、樹脂成分100質量部に対して、2質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上であって、35質量部以下、より好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下であることが望ましい。無機補強材の配合量が少なすぎると、補強効果が小さくなり、一方、配合量が多すぎるとカバー組成物中の無機成分の割合が高くなって、反発性が低下する虞がある。
【0025】
前記カバー用組成物の樹脂成分は、特に限定されず、例えば、ポリウレタン、アイオノマー樹脂、ポリアミド、ポリエステル、或いは、これらの混合物を挙げることができる。特に、前記樹脂成分の主成分を、ポリウレタン又はアイオノマー樹脂とすることが好ましい態様であり、ポリウレタン又はアイオノマー樹脂の含有量を50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含有することが好ましい。さらに、前記樹脂成分が、実質上、ポリウレタンまたはアイオノマー樹脂のみからなることも好ましい態様である。カバー用組成物の樹脂成分として、ポリウレタン又はアイオノマー樹脂を採用すれば、耐久性の優れたカバーが得られるからである。
【0026】
前記カバー用組成物の樹脂成分として使用できるポリウレタンとしては、ウレタン結合を分子内に複数有するものであれば、特に限定されず、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させることによって、ウレタン結合が分子内に形成された生成物であり、必要に応じて、さらにポリアミンなどを反応させることにより得られものである。前記ポリウレタンとしては、例えば、熱可塑性ポリウレタン、熱硬化性(二液硬化型)ポリウレタンを挙げることができる。
【0027】
前記ポリウレタンは、一般に、ポリイソシアネート成分、ポリオール成分を含有し、さらに必要に応じて、ポリアミン成分を含有する。前記ポリイソシアネート成分としては、イソシアネート基を2以上有するものであれば特に限定されず、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)等の芳香族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂環式ポリイソシアネート又は脂肪族ポリイソシアネート等のうちの1種、または、2種以上の混合物などである。
【0028】
耐擦過傷性を向上するという観点からは、ポリウレタンのポリイソシアネート成分として、芳香族ポリイソシアネートを使用することが好ましい。芳香族ポリイソシアネートを使用することにより、得られるポリウレタンの機械的特性が向上し、耐擦過傷性に優れるカバーが得られる。また、耐候性を向上するという観点からは、ポリウレタンのポリイソシアネート成分として、非黄変性のポリイソシアネート(TMXDI、XDI、HDI、H6XDI、IPDI、H12MDIなど)を使用することが好ましく、さらに好ましくは4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)を使用する。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)は剛直な構造を有しており、得られるポリウレタンの機械的特性が向上し、耐擦過傷性に優れるカバーが得られるからである。
【0029】
前記ポリウレタンを構成するポリオール成分としては、ヒドロキシル基を複数有するものであれば特に限定されず、例えば、低分子量のポリオールや高分子量のポリオールなどを挙げることができる。低分子量のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのトリオールが挙げられる。高分子量のポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)等のポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジぺート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)などの縮合系ポリエステルポリオール;ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)のようなラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートなどのポリカーボネートポリオール;及びアクリルポリオールなどが挙げられ、上述したポリオールの少なくとも2種以上の混合物であってもよい。
【0030】
高分子量のポリオールの平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば、400以上であることが好ましく、より好ましくは1000以上である。高分子量ポリオールの平均分子量が小さくなりすぎると、得られるポリウレタンが硬くなり、ゴルフボールの打球感が低下するからである。高分子量ポリオールの平均分子量の上限は、特に限定されるものではないが、10000以下、より好ましくは8000以下である。
【0031】
また、必要に応じて前記ポリウレタンを構成するポリアミンは、少なくとも2以上のアミノ基を有するものであれば特に限定されない。前記ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族系ポリアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンなどの脂環式系ポリアミン、及び、芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
【0032】
前記芳香族ポリアミンは、少なくとも2以上のアミノ基が芳香環に直接又は間接的に結合しているものであれば、特に限定されない。ここで、間接的に結合しているとは、アミノ基が、例えば低級アルキレン基を介して芳香環に結合していることをいう。前記芳香族ポリアミンとしては、例えば、1つの芳香環に2以上のアミノ基が結合している単環式芳香族ポリアミンでもよいし、少なくとも1つのアミノ基が1つの芳香環に結合しているアミノフェニル基を2個以上含む多環式芳香族ポリアミンでもよい。
【0033】
前記単環式芳香族ポリアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミンなどのアミノ基が芳香環に直接結合しているタイプ;キシリレンジアミンのようなアミノ基が低級アルキレン基を介して芳香環に結合しているタイプなどが挙げられる。また、前記多環式芳香族ポリアミンとしては、少なくとも2つのアミノフェニル基が直接結合しているポリ(アミノベンゼン)でもよいし、少なくとも2つのアミノフェニル基が低級アルキレン基やアルキレンオキシド基を介在して結合していてもよい。これらのうち、低級アルキレン基を介して2つのアミノフェニル基が結合しているジアミノジフェニルアルカンが好ましく、4,4’−ジアミノジフェニルメタン及びその誘導体が特に好ましい。
【0034】
前記カバー用組成物の樹脂成分として使用できる熱可塑性ポリウレタン、及び、熱硬化性ポリウレタン(二液硬化型ポリウレタン)は、上記ポリイソシアネート、ポリオール、ポリアミンを適宜組み合わせることにより作製することができる。ポリウレタンの合成方法としては、ワンショット法、或いは、プレポリマー法を挙げることができる。ワンショト法とは、ポリイソシアネートとポリオール等とを一括に反応させる方法であり、プレポリマー法とは、多段階でポリイソシアネートとポリオール等とを反応させる方法であり、例えば、一旦低分子量のウレタンプレポリマーを合成した後、続けてさらに高分子量化する方法である。
【0035】
熱可塑性ポリウレタンは、一般に、上記のような合成方法によって、ある程度高分子量化されたものであるが、低分子量のウレタンプレポリマーを一旦取り置き、カバー成形時に鎖長延長剤(或いは硬化剤)を配合して、高分子量化するようにすれば、熱硬化性ポリウレタン(二液硬化型ポリウレタン)が得られる。ポリウレタンの合成には、公知の触媒を使用することができる。前記触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンなどのモノアミン類;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン等のポリアミン類;1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)、トリエチレンジアミン等の環状ジアミン類;ジブチルチンジラウリレート、ジブチルチンジアセテートなどの錫系触媒などが挙げられる。
【0036】
本発明では、カバー用組成物の樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタンを使用することが好ましい態様の一つであり、さらに好ましくは熱可塑性ポリウレタンエラストマーを使用する。熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、いわゆるゴム弾性を示すポリウレタンであり、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを採用することにより、反発性の高いカバーが得られる。前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、例えば、射出成形や圧縮成形などによりカバーを成形できるものであれば特に限定されず、BASFポリウレタンエラストマーズ(株)から市販されている「エラストランXNY90A」、「エラストランXNY97A」、「エラストランXNY585」などを使用できる。
【0037】
前記熱可塑性ポリウレタンおよび熱可塑性ポリウレタンエラストマーの構成態様としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリイソシアネート成分と高分子量ポリオール成分によって構成されている態様;ポリイソシアネート成分と高分子量ポリオール成分と低分子量ポリオール成分によって構成されている態様;ポリイソシアネート成分と高分子量ポリオール成分と低分子量ポリオール成分とポリアミン成分とによって構成されている態様;ポリイソシアネート成分と高分子量ポリオール成分とポリアミン成分とによって構成されている態様などを挙げることができる。
【0038】
また本発明では、カバー用組成物の樹脂成分として、熱硬化性ポリウレタンを使用することも好ましい態様である。熱硬化性ポリウレタンは、3次元架橋点を多く生成させることができるので、耐久性に優れたカバーが得られる。前記熱硬化性ポリウレタンとしては、例えば、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーをポリアミン、ポリオール等の硬化剤で硬化させるタイプ、或いは、ヒドロキシル基またはアミノ基末端ウレタンプレポリマーをポリイソシアネートなどの硬化剤で硬化させるタイプを挙げることができる。硬化剤として使用するポリアミン、ポリオール、及び、ポリイソシアネートは、上述したものの中から適宜選択することができる。
【0039】
これらの中でも、熱硬化性ポリウレタンとしては、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーをポリアミンで硬化させて得られるものが好ましい。この場合、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基に対する硬化剤のアミノ基のモル比率(NH2/NCO)は、0.70以上、より好ましくは0.80以上、さらに好ましくは0.85以上とし、1.20以下、より好ましくは1.05以下、更に好ましくは1.00以下とするとすることが望ましい。0.70未満ではポリアミンに対するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの量が過剰となり、アロファネート架橋やビュレット架橋の生成反応が起こりやすくなり、最終的に得られるポリウレタンの柔軟性が不足気味になるからである。一方、1.20超では、イソシアネート基が不足するため、アロファネートやビュレット架橋反応が起こりにくくなり、その結果、3次元架橋点が少なくなりすぎて、最終的に得られる熱硬化性ポリウレタンの強度が低下する傾向がある。
【0040】
本発明では、カバー用組成物の樹脂成分として、アイオノマー樹脂を使用することも好ましい一態様である。前記アイオノマー樹脂としては、例えば、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、またはエチレンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものを挙げることができる。上記のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。また、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルが好ましい。上記エチレンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体や、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられるが、特にナトリウム、亜鉛、マグネシウムイオンが反発性、耐久性等から好ましく用いられる。
【0041】
上記アイオノマー樹脂の具体例としては、ハイミラン1555、1557、1605、1652、1702、1705、1706、1707、1855、1856(三井デュポンポリケミカル社製)、サーリン8945、サーリン9945、サーリンAD8511、サーリンAD8512、サーリンAD8542(デュポン社製)、IOTEK 7010、8000(エクソン(Exxon)社製)等を例示することができる。これらのアイオノマー樹脂は、上記例示のものをそれぞれ単独または2種以上の混合物として用いてもよい。
【0042】
本発明におけるカバー用組成物の樹脂成分として、上記熱可塑性ポリウレタンあるいは上記アイオノマー樹脂等の基材樹脂に加えて、さらに熱可塑性エラストマーやジエン系ブロック共重合体等を使用することも好ましい態様である。前記熱可塑性エラストマーの具体例としては、東レ(株)から商品名「ペバックス」で市販されている(例えば、「ペバックス2533」)熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル」で市販されている(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)熱可塑性ポリエステルエラストマー、BASFポリウレタンエラストマーズ社から商品名「エラストラン」で市販されている(例えば、「エラストランET880」)熱可塑性ポリウレタンエラストマー等が挙げられる。
【0043】
前記ジエン系ブロック共重合体は、ブロック共重合体または部分水素添加ブロック共重合体の共役ジエン化合物に由来する二重結合を有するものである。その基体となるブロック共重合体とは、少なくとも1種のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと少なくとも1種の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとから成るブロック共重合体である。また、部分水素添加ブロック共重合体とは、上記ブロック共重合体を水素添加して得られるものである。ブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−t−ブチルスチレン、1,1−ジフェニルスチレン等の中から1種または2種以上を選択することができ、スチレンが好ましい。また、共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等の中から1種または2種以上を選択することができ、ブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。好ましいジエン系ブロック共重合体の例としては、エポキシ基を含有するポリブタジエンブロックを有するSBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)構造のブロック共重合体、または、エポキシ基を有するSIS(スチレン−イソプレン−スチレン)構造のブロック共重合体などが挙げられる。
【0044】
上記ジエン系ブロック共重合体の具体例としては、例えば、ダイセル化学工業(株)製の「エポフレンドA1010」、(株)クラレ製の「セプトンHG−252」などを挙げることができる。上記熱可塑性エラストマーやジエン系ブロック共重合体の配合量は、基材樹脂100質量部に対して、1〜60質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜35質量部である。
【0045】
本発明のカバー用組成物は、上述した樹脂成分および無機補強材のほか、酸化亜鉛、酸化チタン、青色顔料などの顔料成分、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの比重調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0046】
本発明のゴルフボールの構造は、特に限定されず、ツーピースゴルフボール、スリーピースゴルフボール以上のマルチピースゴルフボール、或いは、糸巻きゴルフボールであってもよい。いずれの場合であっても、本発明を好適に適用できるからである。
【0047】
以下、本発明のゴルフボールを製造する方法について、ツーピースゴルフボールの態様に基づいて説明するが、本発明は、かかる製造方法に限定されるものではない。ツーピースゴルフボールのコアとしては、従来より公知のコアを使用することができ、例えば、基材ゴム、共架橋剤、有機過酸化物、充填剤を含むコア用ゴム組成物を加熱プレスして成形したものであることが好ましい。
【0048】
前記基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などを使用できる。これらの中でも、特に、反発に有利なシス結合が40%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。
【0049】
前記共架橋剤としては、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸又はその金属塩を使用することができ、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、又は、これらの金属塩を挙げることができる。前記金属塩を構成する金属としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムを挙げることができ、反発性が高くなるということから、亜鉛を使用することが好ましい。共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して、10質量部以上、より好ましくは20質量部以上であって、50質量部以下、より好ましくは40質量部以下であることが望ましい。共架橋剤の使用量が10質量部未満では、適当な硬さとするために有機過酸化物の量を増加しなければならず、反発性が低下する傾向がある。一方、共架橋剤の使用量が50質量部を超えると、コアが硬くなりすぎて、打球感が低下する虞がある。
【0050】
コア用ゴム組成物に含有される有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。有機過酸化物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.2〜3質量部が好ましく、より好ましくは0.3〜2質量部である。0.2質量部未満では、コアが柔らかくなりすぎて、反発性が低下する傾向があり、3質量部を超えると、適切な硬さにするために、共架橋剤の使用量を増加する必要があり、反発性が不足気味になる。
【0051】
コア用ゴム組成物に含有される充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。前記充填剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、2質量部以上、より好ましくは3質量部以上であって、50質量部以下、より好ましくは35質量部以下であることが望ましい。充填剤の配合量が2質量部未満では、重量調整が難しくなり、50質量部を超えるとゴム成分の重量分率が小さくなり反発性が低下する傾向があるからである。
【0052】
前記コア用ゴム組成物には、基材ゴム、共架橋剤、有機過酸化物、及び、充填剤に加えて、さらに、有機硫黄化合物、老化防止剤、又は、しゃく解剤等を適宜配合することができる。老化防止剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
【0053】
前記コア用ゴム組成物の加熱プレス成形条件は、ゴム組成に応じて適宜設定すればよいが、通常、130〜200℃で10〜60分間加熱するか、あるいは130〜150℃で20〜40分間加熱した後、160〜180℃で5〜15分間と2段階加熱することが好ましい。
【0054】
本発明では、上記の如く成形したコアに、上述したカバー用組成物を被覆して、ゴルフボール本体を作製する。カバー用組成物の樹脂成分として熱硬化性ポリウレタンを使用する場合には、例えば、得られたコアを半球状の金型に保持させた状態で、この金型内にカバー用組成物を注入し、次にこれを反転させて、カバー用組成物を注入した別の半球状の金型と合わせて硬化反応を行なって、カバーを成形すればよい。前記熱硬化性ポリウレタンを含有するカバー用組成物の硬化反応は、30℃〜120℃、好ましくは50℃〜80℃で、2〜60分間、好ましくは5〜30分間行うことが望ましい。
【0055】
また、カバー用組成物の樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタン、アイオノマー樹脂、熱可塑性エラストマーなどを使用する場合には、例えば、まずカバー用組成物を予め半球殻状のハーフシェルに形成し、これを2枚用いてコアを包み、130〜170℃で1〜5分間加圧成形する方法;カバー用組成物をコアを被覆するように射出成形する方法などが適用される。
【0056】
本発明のゴルフボールのカバーの厚みは、特に限定されないが、0.3〜2.5mmとすることが好ましく、より好ましくは0.3〜2.0mm、さらに好ましくは0.5〜0.9mmとする。また、カバーを被覆してゴルフボール本体を作製する際には、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。さらに、ゴルフボール本体表面は、サンドブラスト処理のような研磨処理がなされてもよい。本発明のゴルフボールは、美観および商品価値を高めるために、通常ペイント仕上げ、マーキングスタンプ等を施すことも好ましい。
【0057】
上記製法では、ツーピースゴルフボールの態様に基づいて説明したが、例えば、糸巻きゴルフボールの場合には、糸巻きコアを使用すればよく、スリーピース以上のマルチピースゴルフボールの場合には、コアとカバーとの間に少なくとも1層以上の中間層を設けることができる。
【0058】
前記糸巻きコアは、センターとそのセンターの周囲に糸ゴムを延伸状態で巻き付けることによって形成した糸ゴム層とから成り、従来より公知のものを使用することができる。センターとしては液系(リキッドセンター)またはゴム系(ソリッドセンター)のいずれを用いてもよい。また、上記センター上に巻き付ける糸ゴムは、糸巻きゴルフボールの糸巻き層に従来から使用されているものと同様のものを使用することができ、例えば、天然ゴムまたは天然ゴムと合成ポリイソプレンに硫黄、加硫助剤、加硫促進剤、老化防止剤等を配合したゴム組成物を加硫することによって得られたものを用いてもよい。糸ゴムはセンター上に約10倍に引き伸ばして巻きつけて糸巻きコアを作製する。
【0059】
また、スリーピース以上のマルチピースゴルフボールの中間層としては、カバー用組成物に含有される樹脂成分として上述したのと同一のものを使用することができ、例えば、熱可塑性ポリウレタン、アイオノマー樹脂、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー等の熱可塑性エラストマーやジエン系ブロック共重合体等を使用することができる。前記中間層には、さらに、硫酸バリウム、タングステン等の比重調整剤、老化防止剤、顔料などが配合されていてもよい。
【0060】
中間層を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、中間層形成用材料を予め半球殻状のハーフシェルに形成し、それを2枚用いてソリッドセンターを包み、加圧成形する方法、または、前記中間層用材料を直接ソリッドセンターの上に射出成形してソリッドセンターを包み込む方法などを採用できる。
【0061】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0062】
[評価方法]
▲1▼反発指数
各ゴルフボールに、200gのアルミニウム製円筒物を速度45m/秒で衝突させ、衝突前後の該円筒物及びゴルフボールの速度を測定し、それぞれの速度及び重量から、各ゴルフボールの反発係数を算出した。測定は、各ゴルフボールについて5回行って、その平均を算出した。尚、反発係数は、ゴルフボールNo.1の反発係数を100として、指数化した数値であり、反発指数が大きいほど、反発性が高いことを示している。
【0063】
▲2▼耐擦過傷性
市販のピッチングウェッジをスイングロボットマシンに取付け、ヘッドスピード36m/秒でボールの2箇所を打撃し、打撃部分を目視で観察して、下記基準に基づいて4段階で評価した。
◎:ボールの表面に傷がほとんどない。
○:ボール表面に傷が残る場合もあるが、毛羽立ちはない。
△:ボール表面に傷がくっきり残り、毛羽立ちが少し見られる。
×:ボール表面がかなり削れ、毛羽立ちが目立つ。
【0064】
[ツーピースゴルフボールの作製]
▲1▼コアの作製
表1に示す配合のコア用ゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃で15分間加熱プレスすることにより直径41.2mmの球状コアを得た。
【0065】
【表1】
【0066】
ポリブタジエンゴム:JSR製のBR18(シス含有率96%以上)
アクリル酸亜鉛:日本蒸留製のZNDA−90S
酸化亜鉛:東邦亜鉛製の銀嶺R
ジクミルパーオキサイド:日本油脂製のパークミルD
ジフェニルジスルフィド:住友精化製
【0067】
▲2▼カバー組成物の調製
表2に示した材料を、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状のカバー用組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で200〜260℃に加熱された。
【0068】
▲3▼カバーの作製
得られたカバー用組成物を、前述のようにして得たコア上に直接射出成形することによりカバーを形成し、直径42.8mmを有するツーピースゴルフボール本体を作製した。カバー成形用上下金型は、半球状キャビティを有し、ディンプル付きで、ディンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねている。上記ホールドピンを突き出し、コアを投入後ホールドさせ、80トンの圧力で型締めした金型に210℃に加熱したカバー用組成物を0.3秒で注入し、30秒間冷却して型開きしてゴルフボールを取り出した。得られたゴルフボールについて、耐擦過傷性、反発性について評価した結果を併せて表2に示した。
【0069】
【表2】
【0070】
熱可塑性ポリウレタン:エラストランXNY97A(BSAFポリウレタンエラストマーズ(株)製の4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを使用した熱可塑性ポリウレタンエラストマー)
アクティジルMM:3−メルカプトプロピルトリメトキシシランで表面処理された薄板状カオリナイト(薄片状無機補強材)とクオーツ粉末(石英粉末:塊状無機補強材)との混合物((株)イムペックスケミカルズ謙信洋行)
アクティジルPF216:ビス−(3−(トリエトキシンリル)−プロピル)−テトラサルファンで表面処理された薄板状カオリナイト(薄片状無機補強材)とクオーツ粉末(石英粉末:塊状無機補強材)との混合物((株)イムペックスケミカルズ謙信洋行)
アクティジルMAM:3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランで表面処理された薄板状カオリナイト(薄片状無機補強材)とクオーツ粉末(石英粉末:塊状無機補強材)との混合物((株)イムペックスケミカルズ謙信洋行)
ホウ酸アルミニウムウィスカ:四国化成工業(株)製アルボレックスYS3A(アミノシラン表面処理タイプの繊維状補強材)
【0071】
ゴルフボールNo.1〜7は、ゴルフボールのカバーがシランカップリング剤で表面処理された薄片状無機補強材と塊状無機補強材とを含有する場合であり、反発性を大きく損なうことなく、耐擦過傷性が向上していることが分かる。一方、ゴルフボールNo.8は、カバーが無機補強材を含有しない場合であり、耐擦過傷性が低い。また、ゴルフボールNo.8のカバーにホウ酸アルミニウムウィスカを配合していくと(ゴルフボールNo.9〜No.11)、耐擦過傷性は向上する傾向はあるものの、反発性が損なわれることが分かる。
【0072】
ゴルフボールNo.3とゴルフボールNo.9との比較、及び、ゴルフボールNo.5とゴルフボールNo.11との比較からも明らかなように、同程度の無機補強材を配合した場合には、繊維状の無機補強材したゴルフボールNo.9およびNo.11よりも、薄片状無機補強材と塊状無機補強材の混合物を配合したゴルフボールNo.3およびゴルフボールNo.5の方が、耐擦過傷性に優れていると同時に反発性の低下も小さくなっていることが分かる。また、メルカプトシランで表面処理された無機補強材を使用したゴルフボールNo.3の耐擦過傷性は、No.6及びNo.7の耐擦過傷性に比べて優れていることが分かる。
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、反発性を大きく損なうことなく、ゴルフボールのカバーの耐擦過傷性を向上することができる。
Claims (5)
- カバーを有するゴルフボールにおいて、前記カバーが、シランカップリング剤で表面処理された薄片状無機補強材を含有することを特徴とするゴルフボール。
- 前記カバーは、さらに、シランカップリング剤で表面処理された塊状無機補強材を含有するものである請求項1に記載のゴルフボール。
- 前記カバーを構成する基材樹脂の主成分は、ポリウレタンである請求項1または2に記載のゴルフボール。
- 前記無機補強材の主成分は、二酸化珪素である請求項1〜3のいずれかに記載のゴルフボール。
- 前記シランカップリング剤は、アミノシラン、エポキシシラン、又は、メルカプトシランである請求項1〜4のいずれかに記載のゴルフボール。
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2003
- 2003-06-13 JP JP2003169751A patent/JP2005000534A/ja active Pending
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