JP4367803B2 - 半導体磁器およびこれを用いたサーミスタ - Google Patents

半導体磁器およびこれを用いたサーミスタ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえばカラーテレビの消磁用回路などに用いられるサーミスタに好適な、正の温度係数(PTC)特性を有する半導体磁器に関する。
【0002】
【従来の技術】
イットリウムやランタンなどの希土類元素を微量添加したチタン酸バリウムは、キュリー点以上の温度で抵抗値が急激に上昇するPTC(Positive Temperature Coefficient)特性を有することが知られている。この性質を利用してチタン酸バリウム系半導体磁器は、電流制御素子、カラーテレビの消磁用回路や、センサーなどに利用されている。
【0003】
最近の電子機器類の小型化および薄型化に伴い、チタン酸バリウム系半導体磁器も同様に小型化および薄型化が望まれている。それに従い製品素子としての信頼性を保つため、高い機械的強度、高い電気的特性が要求される。
【0004】
このような観点から従来より信頼性を高めるため、たとえば、特開平8−321404号公報では、気孔率が20〜60%の多孔質体を作り、耐熱衝撃性を高めている。この方法では、チタン酸バリウム主組成に酸素を0.5wt%以上含むチタン粉末を、3wt%以上添加し、真空中または不活性ガス中で焼成させることとしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報記載の方法では、チタン粉末を後添加することにより作製工程が増える、原料粉末のコストがかかる、主組成とチタン粉末を混合したときに組成ズレが生じる、といった問題があった。
【0006】
また、上記公報記載の方法により作製されるチタン酸バリウム系半導体磁器は、高い気孔率を有しているものの、機械的強度は十分とはいえず、素地を取り扱うときにチッピング(欠け)を起こすといった問題もあった。
【0007】
これに対し、機械的強度を高くするために素地の厚みを増す設計もなされているが、素地の厚みを増すと厚み方向の抵抗値のバラツキが大きくなり、信頼性試験での歩留まりが悪くなるいった課題を有する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、機械的強度が高く、抵抗温度係数が高い半導体磁器およびこれを用いたサーミスタを提供することを目的とする。
【0009】
本発明によれば、チタン酸バリウムBaTiOを主成分とし、焼結後の炭素量が62重量ppm未満、好ましくは60重量ppm以下、より好ましくは50重量ppm以下である半導体磁器が提供される。
【0010】
本発明の半導体磁器において、焼結後の炭素量が、好ましくは7重量ppm超(7重量ppmよりも多い)、より好ましくは30重量ppm以上である。
【0011】
本発明の半導体磁器において、希土類元素をさらに含有することが好ましい。半導体化剤として添加され希土類元素としては、たとえば、イットリウムY、ランタンLa、セリウムCe、エルビウムErなどを挙げることができる。
【0012】
本発明の半導体磁器において、ニオブNb、ビスマスBi、アンチモンSb、タングステンW、トリウムThおよびタンタルTaからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素をさらに含有することが好ましい。
【0013】
本発明の半導体磁器において、酸化マンガンMnOおよび酸化ケイ素SiOをさらに含有することが好ましい。
【0014】
【作用】
本発明者らは、鋭意検討した結果、焼結後の炭素含有量に着目し、これを制御することにより本発明に到達した。
【0015】
チタン酸バリウムを主成分とする半導体磁器において、焼結後の炭素量が62重量ppm以上でも、半導体磁器として機能するものの、機械的強度が不十分となる傾向がある。本発明によれば、焼結後の半導体磁器の炭素量を、62重量ppm未満、好ましくは60重量ppm以下、より好ましくは50重量ppm以下と漸次少なくしていくことで、得られる半導体磁器の機械的強度を漸次向上(たとえば抗折強度が、好ましくは40MPa以上、より好ましくは50MPa以上である)させていくことができる。
【0016】
換言すれば、機械的強度に優れた半導体磁器を得るという観点からは、焼結後の炭素量を0重量ppmに近づけることが最も好ましいが、あまりに炭素量が少ないと、半導体磁器として機能するものの、抵抗温度係数αが低くなり、PTC特性(異常抵抗増加現象)が低下する傾向がある。そこで、焼結後の半導体磁器の炭素量を、好ましくは7重量ppmより多くし、より好ましくは30重量ppm以上とすることで、抵抗温度係数の高い半導体磁器を得ることができる。
【0017】
なお、焼結後に半導体磁器に含まれる炭素量は、原料である炭酸塩および有機バインダに含まれる炭素成分である。
【0018】
本発明に係る半導体磁器は、たとえばPTC特性サーミスタや無接点温度スイッチなどの構成材料として好ましく用いることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
上述の本発明に係る半導体磁器は、たとえば以下のようにして製造することができる。図1は本発明に係る半導体磁器の製造方法の一例を示す工程図である。
【0020】
本発明に係る半導体磁器を製造するには、図1に示すように、まず、出発原料(たとえば、Ba、Sr、Ca、Y、Ti、Mn、Siの各元素を含む酸化物あるいは炭酸塩の粉末)を、所定の組成比となるように秤量し、水を加えて混合する。このとき、出発原料の平均粒径は、好ましくは1〜5μmである。また特に限定はされないが、本発明に係る半導体磁器の結晶粒径は、好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは1〜5μmである。
【0021】
次いで、このスラリーを乾燥させて仮焼きを行う。仮焼き温度は、好ましくは1000〜1400℃の間で行う。仮焼き温度が低すぎるとチタン酸バリウム結晶相が十分に生成せず、仮焼き温度が高すぎると粉砕が困難になる傾向がある。仮焼き時間は、通常1〜3時間程度である。こうした仮焼きは、通常、大気中で行われるが、大気中よりも酸素分圧が高い雰囲気や純酸素雰囲気で行っても良い。
【0022】
次いで、このようにして得られた仮焼き材料をボールミル等を用いて湿式粉砕する。このとき、スラリーの溶媒として、水もしくはエタノールなどのアルコール、または水とエタノールとの混合溶媒を用いることが好ましい。湿式粉砕は、仮焼き材料の平均粒径が、好ましくは0.5〜2μm程度となるまで行う。
【0023】
次いで、湿式粉砕されたスラリーを乾燥したら、仮焼き材料の粉末にバインダーを添加して造粒する。バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールに分散剤を添加したもの、エチルセルロースなど、一般的に用いられる有機バインダーを挙げることができる。
【0024】
次いで、得られた造粒物をプレス成形してディスク状に成形した後、脱バインダー処理(図示省略)を行う。この脱バインダー処理は、好ましくは300〜700℃の温度で、好ましくは0.5〜5時間程度行う。脱バインダー処理は、大気中で行っても良く、また大気中よりも酸素分圧が高い雰囲気または純酸素雰囲気で行っても良い。
【0025】
次いで、本焼成を行う。本焼成は、通常、大気フロー雰囲気中で行うが、大気フローによる炉内大気置換率が1〜35vol%/min.であることが好ましい。炉内大気置換率が1vol%/min.未満であると、焼結後の炭素量が多くなり、得られる半導体磁器の機械的強度(抗折強度)が低くなる傾向がある。炉内大気置換率が35vol%/minより多いと、焼結後の炭素量が少なくなり、抵抗温度係数αが低くなる傾向がある。焼成温度は、好ましくは1300〜1400℃である。焼成温度が低すぎると半導体化が十分に進まず、焼成温度が高すぎると比抵抗値があわなかったり、気孔率の大きい組織となり抗折強度が低下する傾向がある。昇温速度は、好ましくは3〜6℃/分である。焼成時間は、通常1〜3時間程度である。なお、脱バインダー処理と本焼成とを連続して行っても良く、別々に行っても良い。
【0026】
以上のような工程を経ることにより、本発明に係る半導体磁器が得られる。こうした半導体磁器は、たとえばPTCサーミスタなどに用いることができる。
【0027】
【実施例】
次に、本発明の実施の形態をより具体化した実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0028】
実施例1(試料7)
出発原料として、炭酸バリウムBaCO、炭酸ストロンチウムSrCO、炭酸カルシウムCaCO、酸化チタンTiOおよび酸化イットリウムYの粉末を、BaO換算のモル比が0.75、SrO換算のモル比が0.2、CaO換算のモル比が0.03、YO3/2 換算のモル比が0.004、TiO換算のモル比が1となるようにそれぞれを秤量して混合した。さらに、これら混合物100重量%に対して、酸化ケイ素SiOの粉末を0.4重量%、Mn(NO−0.1モル水溶液をMnO換算で0.02重量%添加して、ボールミルで湿式混合した。
【0029】
この出発原料を充分に混合して乾燥させたのち、仮焼きして仮焼き物を得た。仮焼きは、仮焼き温度1150℃、仮焼き時間120分、大気中で行った。この仮焼き物をボールミルで、その平均粒径が1.5μm程度となるまで湿式粉砕し乾燥させて、半導体磁器材料を得た。
【0030】
こうして得られた半導体磁器材料の粉末100重量%に、バインダーとしてのポリビニルアルコールPVAを2重量%を加え造粒し、これをプレス成形した。得られた試料を、炉内大気置換率が25vol%/min.である大気フロー雰囲気において、1350℃×110分、昇温速度3.33℃/分の本焼成を行って、直径約14mm×厚み約2.5mmのディスク状の半導体磁器の原試料を得た。
【0031】
得られた原試料について、恒温槽にて、原試料の温度を変化させたときの抵抗を測定し、抵抗が最小抵抗値の2倍になったときの温度をT1、抵抗が最小抵抗値の200倍になったときの温度をT2として、次式により抵抗温度係数α(%/℃)を求めることにより評価した。
【0032】
【数1】
α={4.606/(T2−T1)}×100
【0033】
また、原試料について、日本工業規格JIS−R1601に準拠した抗折強度試験を3点曲げで行った。
【0034】
さらに、原試料について、炭素・硫黄分析装置(堀場製作所製EMIA520)を用いて炭素量を測定した。この分析装置は、高周波加熱による酸素気流で原試料を燃焼させ、赤外線吸収により炭素量を測定するものである。これらの結果を表1および図2に示す。
【0035】
実施例2(試料4)
実施例1において、炉内大気置換率が30vol%/min.である大気フロー雰囲気とした以外は、実施例1と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表1および図2に示す。
【0036】
実施例3(試料12)
実施例1において、炉内大気置換率が8vol%/min.である大気フロー雰囲気とした以外は、実施例1と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表1および図2に示す。
【0037】
実施例4(試料14)
実施例1において、炉内大気置換率が6vol%/min.である大気フロー雰囲気とした以外は、実施例1と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表1および図2に示す。
【0038】
実施例5(試料6)
実施例1において、バインダーとしてポリビニルアルコールに分散剤を添加したものを用いた以外は、実施例1と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表1および図2に示す。
【0039】
実施例6(試料10)
実施例5において、炉内大気置換率が13vol%/min.である大気フロー雰囲気とした以外は、実施例5と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表1および図2に示す。
【0040】
実施例7(試料11)
実施例5において、炉内大気置換率が11vol%/min.である大気フロー雰囲気とした以外は、実施例5と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表1および図2に示す。
【0041】
実施例8(試料13)
実施例5において、炉内大気置換率が5vol%/min.である大気フロー雰囲気とした以外は、実施例5と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表1および図2に示す。
【0042】
実施例9(試料3)
実施例1において、炉内大気置換率が33vol%/min.である大気フロー雰囲気とし、かつ、バインダーとしてエチルセルロースを用いた以外は、実施例1と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表1および図2に示す。
【0043】
実施例10(試料5)
実施例9において、炉内大気置換率が25vol%/min.である大気フロー雰囲気とした以外は、実施例9と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表1および図2に示す。
【0044】
実施例11(試料8)
実施例9において、炉内大気置換率が14vol%/min.である大気フロー雰囲気とした以外は、実施例9と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表1および図2に示す。
【0045】
実施例12(試料9)
実施例9において、炉内大気置換率が11vol%/min.である大気フロー雰囲気とした以外は、実施例9と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表1および図2に示す。
【0046】
参考例1(試料1)
実施例9において、炉内大気置換率が52vol%/min.である大気フロー雰囲気とした以外は、実施例9と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表1および図2に示す。
【0047】
参考例2(試料2)
実施例9において、炉内大気置換率が41vol%/min.である大気フロー雰囲気とした以外は、実施例9と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表1および図2に示す。
【0048】
比較例1(試料15)
実施例1において、炉内大気置換率が0.8vol%/min.である大気フロー雰囲気とした以外は、実施例1と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表1および図2に示す。
【0049】
比較例2(試料16)
実施例1において、炉内大気置換率が0.5vol%/min.である大気フロー雰囲気とした以外は、実施例1と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表1および図2に示す。
【0050】
【表1】
Figure 0004367803
【0051】
以上の結果から、焼結後の炭素量が62ppmであると(比較例1)、抗折強度が35MPaと低く、半導体磁器の信頼性に欠けることが確認された。
【0052】
これに対して、焼結後の炭素量が58ppm以下(実施例1〜12)である場合には、抗折強度は41MPa〜105MPaと充分に大きく、抵抗温度係数αも9.5%/℃〜14.4%/℃と充分に大きかった。中でも、実施例1〜3,5〜7および10〜12(試料4〜12)が、抗折強度と抵抗温度係数のバランスがよい。なお、抵抗温度係数αが10%/℃未満の場合(参考例1〜2)、若干PTC特性に劣る傾向にあるものの実用的にはそれほど問題がないことも確認された。
【0053】
実施例13(試料20)
出発原料として、炭酸バリウムBaCO、炭酸ストロンチウムSrCO、炭酸カルシウムCaCO、酸化チタンTiO、酸化鉛PbOおよび酸化イットリウムYの粉末を、BaO換算のモル比が0.68、SrO換算のモル比が0.11、CaO換算のモル比が0.19、YO3/2 換算のモル比が0.003、PbO換算のモル比が0.005、TiO換算のモル比が1となるようにそれぞれを秤量して混合した。さらに、これら混合物100重量%に対して、酸化ケイ素SiOの粉末を0.5重量%、Mn(NO−0.1モル水溶液をMnO換算で0.02重量%添加して、ボールミルで湿式混合した。
【0054】
この出発原料を充分に混合して乾燥させたのち、炉内大気置換率が28vol%/min.である大気フロー雰囲気とし、かつ、昇温速度5℃/分の本焼成を行った以外は、実施例1と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表2および図3に示す。
【0055】
実施例14(試料21)
実施例13において、炉内大気置換率が23vol%/min.である大気フロー雰囲気とした以外は、実施例13と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表2および図3に示す。
【0056】
実施例15(試料23)
実施例13において、炉内大気置換率が13vol%/min.である大気フロー雰囲気とした以外は、実施例13と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表2および図3に示す。
【0057】
実施例16(試料22)
実施例13において、炉内大気置換率が25vol%/min.である大気フロー雰囲気とし、かつ、バインダーとしてポリビニルアルコールに分散剤を添加したものを用いた以外は、実施例13と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表2および図3に示す。
【0058】
実施例17(試料18)
実施例13において、炉内大気置換率が31vol%/min.である大気フロー雰囲気とし、かつ、バインダーとしてエチルセルロースを用いた以外は、実施例13と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表2および図3に示す。
【0059】
実施例18(試料19)
実施例17において、炉内大気置換率が25vol%/min.である大気フロー雰囲気とした以外は、実施例17と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表2および図3に示す。
【0060】
参考例3(試料17)
実施例17において、炉内大気置換率が60vol%/min.である大気フロー雰囲気とした以外は、実施例17と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表2および図3に示す。
【0061】
比較例3(試料24)
実施例13において、炉内大気置換率が0.8vol%/min.である大気フロー雰囲気とした以外は、実施例13と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表2および図3に示す。
【0062】
比較例4(試料25)
実施例16において、炉内大気置換率が0.9vol%/min.である大気フロー雰囲気とした以外は、実施例16と同じ条件で原試料を作成し、抵抗温度係数、抗折強度および炭素量を測定した。これらの結果を表2および図3に示す。
【0063】
【表2】
Figure 0004367803
【0064】
以上の結果から、焼結後の炭素量が62ppmであると(比較例3)、抗折強度が35MPaと低く、半導体磁器の信頼性に欠けることが確認された。
【0065】
これに対して、焼結後の炭素量が52ppm以下(実施例13〜18)である場合には、抗折強度は55MPa〜88MPaと充分に大きく、抵抗温度係数αも8.9%/℃〜11.7%/℃と充分に大きかった。中でも、実施例13〜14,16および18(試料19〜22)が、抗折強度と抵抗温度係数のバランスがよい。なお、抵抗温度係数αが10%/℃未満の場合(参考例3)、若干PTC特性に劣る傾向にあるものの実用的にはそれほど問題がないことも確認された。
【0066】
また、キュリー点を動かすために実施例13〜18、参考例3および比較例3〜4ではPbを含めたが、Pbを含めていない実施例1〜12、参考例1〜2および比較例1〜2の方が、抗折強度と抵抗温度係数αが全体的に高くなることも確認された(図2および図3参照)。
【0067】
以上、本発明の実施形態および実施例について説明してきたが、本発明はこうした実施形態および実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0068】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、機械的強度が高く、抵抗温度係数が高い半導体磁器およびこれを用いたサーミスタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明に係る半導体磁器の製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】 図2は本発明に関する実施例1〜12、参考例1〜2および比較例1〜2の結果を示すグラフである。
【図3】 図3は本発明に関する実施例13〜18、参考例3および比較例3〜4の結果を示すグラフである。

Claims (5)

  1. チタン酸バリウムを主成分とし、焼結後の炭素量が7重量ppm超58重量ppm以下である、正の温度係数(PTC)特性を有することを特徴とする半導体磁器。
  2. 希土類元素をさらに含有する請求項1に記載の半導体磁器。
  3. ニオブ、ビスマス、アンチモン、タングステン、トリウムおよびタンタルからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素をさらに含有する請求項1または2に記載の半導体磁器。
  4. 酸化マンガンおよび酸化ケイ素をさらに含有する請求項1乃至3の何れかに記載の半導体磁器。
  5. 請求項1乃至4の何れかに記載の半導体磁器を用いたサーミスタ。
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