請求項1に記載の冷蔵庫は、複数の貯蔵室を備えた断熱箱体であって、前記貯蔵室の中で冷凍温度帯に設定可能な冷凍室は上下方向における両側に隣接貯蔵室が備えられるとともに前記冷凍室は複数設けられるものであり、前記複数の冷凍室の少なくとも1つは多温度領域に温度設定可能とし、前記多温度領域に温度設定可能な貯蔵室内を前方領域と後方領域との複数の貯蔵領域に分けるとともに、前記多温度領域に温度設定可能な貯蔵室内に冷気を吐出する複数の冷気吐出口を備え、前記複数の冷気吐出口は、前記後方領域に冷気を吐出する前記貯蔵室内の後方に開口した冷気吐出口と、前記前方領域に冷気を吐出する前記貯蔵室内の天面に開口した冷気吐出口とを備えたものである。
これによって、最も使い勝手の良い冷蔵庫中央部に使用頻度の高い冷凍室を配置させるとともに、ユーザーの食生活に応じてユーザー自身が選択し広範囲に多岐にわたって活用できる温度設定が可能としたことにより、よりユーザーの使い勝手を向上させた冷蔵庫を提供することができる。
また、冷凍温度帯に設定可能な冷凍室は上下方向における両側に隣接貯蔵室が備えられることで、冷凍室が断熱箱体を介して外気と接触する面積を抑えることができ、より省エネルギーを実現した冷蔵庫を提供することが可能となる。
請求項2に記載の冷蔵庫は、断熱箱体の最上部に冷蔵室と、最下部に野菜室、前記冷蔵室と前記野菜室の間に冷凍温度帯の貯蔵室を複数備え、前記冷凍温度帯の貯蔵室の中で最上部に位置する貯蔵室を多温度領域に温度設定可能な冷凍室としたものである。
これによって、複数の冷凍室の中で多温度領域に温度設定可能な冷凍室を最も上部に位置させることで冷凍温度帯よりも高い温度に設定された場合でも、他の冷凍室への熱影響をできるだけ低減することが可能となり、より省エネルギーを実現した冷蔵庫を提供することが可能となる。
また、冷蔵室の直下に位置し最も使い勝手の良い冷蔵庫中央部に多温度領域に温度設定可能な冷凍室を配置させることで、最も使い勝手の良い位置の貯蔵室をユーザーの食生活に応じてユーザー自身が選択し広範囲に多岐にわたって利用することができるので、使い勝手のよい冷蔵庫を提供することができる。
請求項3に記載の冷蔵庫は、多温度領域に温度設定可能な冷凍室もしくは切替室の天面に、食品の表面温度を検知する赤外線センサーを設置したことにより、切替室内に収納された食品の温度を瞬時に判断でき、あら熱をとる機能や、熱いままの食品を冷凍保存できる機能を付加した場合には、切替室の冷却を中止させ、食品の熱負荷による他の貯蔵室への温度影響を抑制することができる。
請求項4に記載の冷蔵庫は、多温度領域に温度設定可能な冷凍室に備えられた赤外線センサーは、複数の赤外線センサーで構成されるもしくは可動式の赤外線センサーであることで、検知範囲を高めたものである。
これによって、赤外線センサーとして検知範囲や検知精度を高めることができる。
請求項5に記載の冷蔵庫は、多温度領域に温度設定可能な冷凍室は、貯蔵室内において複数の領域に分かれて冷気を吐出する冷気吐出口を備え、赤外センサーによって熱いものが収納されたと判断した領域に対して集中冷却を行うものである。
これによって、赤外線センサーで検知する温度の情報により、貯蔵室内への食品等の収納物を投入した場合に、新たな収納物投入による温度上昇を赤外線センサーが検知し、集中冷却を行い、速やかに温度低下させるので温度が高い状態を長く維持することによる食品品質の劣化(変質,変色,乾燥等)や他の食品への温度影響を阻止することができる。
請求項6に記載の冷蔵庫は、赤外線センサーがあらかじめ設定された温度以上を検知すると、熱いものが収納されたと判断しあらかじめ設定された所定温度以下となるまで冷却を中止するものである。
これによって、熱いままの食品温度がある程度低下するまで冷却するのを中止し、ある程度食品温度が低下した後に冷却を開始することにより、熱いままの食品による温度上昇した空気が冷却器に戻り、温度上昇した空気による冷却器の蒸発温度の上昇を抑え、他の貯蔵室へ送風される冷気温度の上昇を抑えることができる。特に冷却器の蒸発温度の上昇、すなわち冷気温度の上昇により製氷室、冷凍室に影響が出るのを防ぐことができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1による冷蔵庫の正面図である。図2は本発明の実施の形態1による冷蔵庫の側面縦断面図である。図3は本発明の実施の形態1による切替室と冷凍室の一部拡大側面縦断面図である。
図1から図3に示すように、冷蔵庫本体101は、前方に開口する金属製(例えば鉄板)の外箱141と硬質樹脂製(例えばABS)の内箱142と、外箱141と内箱142の間に発泡充填された硬質発泡ウレタン断熱材143からなる断熱箱体で、この本体の上部に設けられた冷蔵室102と、冷蔵室の下に設けられた切替室103と、冷蔵室102の下で切替室103に並列に設けられた製氷室104と、本体下部に設けられた野菜室106と、並列に設置された切替室103及び製氷室104と野菜室106の間に設けられた冷凍室105で構成されている。切替室103と製氷室104と冷凍室105と野菜室106の前面部は引き出し式の扉により開閉自由に閉塞されると共に、冷蔵室102の前面は、例えば観音開き式の図示しない扉により開閉自由に閉塞される。
冷蔵室102は冷蔵保存のために凍らない温度を下限に通常1〜5℃で設定されている。野菜室106は冷蔵室102と同等もしくは若干高い温度設定の2℃〜7℃とすることが多い。低温にすれば葉野菜の鮮度を長期間維持することが可能である。冷凍室105は冷凍保存のために通常−22から−18℃で設定されているが、冷凍保存状態の向上のために、たとえば−30から−25℃の低温で設定されることもある。切替室103は、1℃〜5℃で設定される冷蔵、2℃〜7℃で設定される野菜、通常−22℃〜−15℃で設定される冷凍の温度帯以外に、冷蔵温度帯から冷凍温度帯の間で予め設定された温度帯に切り換えることができる。たとえば、ソフト冷凍(概ね−12〜−6℃程度),パーシャルフリージング(概ね−5〜−1℃程度),チルド(概ね−1〜1℃程度)等の冷蔵と冷凍の中間の温度帯である。切替室103は製氷室104に並設された独立扉を備えた貯蔵室であり、引き出し式の扉を備えることが多い。
上記のように、本実施の形態では切替室103も貯蔵室の中で冷凍温度帯に設定可能な冷凍室の一形態であり、冷凍室の中で最も上部に位置する冷凍室として切替室103が位置している。
製氷室104は、冷蔵室102内の貯水タンク(図示せず)から送られた水で室内上部に設けられた自動製氷機(図示せず)で氷を作り、室内下部に配置した貯氷容器(図示せず)に貯蔵しておくスペースであり、切替室103に並設された間口の小さい独立扉を備えた貯蔵室であり、引き出し式の扉を備えることが多い。
冷蔵庫本体101の天面部は、冷蔵庫本体101の背面方向に向かって階段状に凹みを設けて機械室119があり、第一の天面部と第二の天面部で構成されている。この階段状の凹部に配置された圧縮機117と、凝縮器(図示せず)と、水分除去を行うドライヤ(図示せず)と、キャピラリーチューブ118と、冷却器107と、吸入管108を順次環状に接続してなる冷凍サイクルに冷媒を封入し、冷却運転を行う。すなわち、圧縮機117を配設する機械室119は、冷蔵室102内の最上部の後方領域に食い込んで形成されることになる。手が届きにくくデッドスペースとなっていた冷蔵庫本体101の最上部の貯蔵室の後方領域に機械室119を設けて圧縮機117を配置することにより、従来の冷蔵庫で、使用者が使いやすい冷蔵庫本体101の最下部にあった機械室のスペースを貯蔵室容量として有効に転化することができ、収納性や使い勝手を大きく改善することができる。なお、本実施の形態における、以下に述べる発明の要部に関する事項は、従来一般的であった冷蔵庫本体101の最下部の貯蔵室の後方領域に機械室を設けて圧縮機117を配置するタイプの冷蔵庫に適用しても構わない。
冷媒には近年、環境保護のためにR600aなどの可燃性冷媒を用いることが多い。なお、三方弁や切替弁を用いる冷凍サイクルの場合は、それらの機能部品を機械室内に配設することも出来る。
製氷室104と切替室103、冷凍室105の背面には冷却室120が設けられ、冷却室120は断熱性を有する第一の冷却ダクト121により製氷室104と切替室103、冷凍室105と仕切られている。冷却室120内には、代表的なものとしてフィンアンドチューブ式の冷却器107が配設されており、冷却器107の上部空間には強制対流方式により冷却器107で冷却した冷気を冷蔵室102、切替室103、製氷室104、野菜室106、冷凍室105に送風する冷却ファン122が配置され、冷却器107の下部空間には冷却時に冷却器107や冷却ファン122に付着する霜を除霜する装置としてのガラス管製のラジアントヒータ123が設けられている。
第一の冷却ダクト121には、冷凍室105と冷蔵室102、切替室103、製氷室104に冷気を送風するための冷却風路124が形成されている。また、第一の冷却ダクト121には冷蔵室102と切替室103の冷気の流れをそれぞれ調節するダンパー装置としてのツインダンパー125が設けられており、冷蔵室102と切替室103の冷気の流れをそれぞれ調節するダンパー装置をツインダンパー化することにより収容スペースのコンパクト化とコスト削減を図っている。なお、冷却室120と第一の冷却ダクト121の高さ方向の寸法に余裕度が無いときには、ツインダンパーを冷蔵室102と切替室103,製氷室104を仕切る第一の仕切壁132に設置することにより、冷却室120内の冷却器107や冷却ファン122、ラジアントヒータ123の配置構成が容易になる。
切替室103の背面に相当する第一の冷却ダクト121には切替室103の温度設定に基づき温度調節するためにツインダンパー125を開閉させる切替室温度センサー136が備えられている。
製氷室104の背面に相当する第一の冷却ダクト121には、製氷室104を冷却するための図示しない冷気吐出口が設けられ、冷凍室105の背面に相当する第一の冷却ダクト121には、冷凍室105を冷却するための冷気が流れる冷凍室用冷気吐出口126と吸込口127が設けられている。切替室103の背面に相当する第一の冷却ダクト121には、ツインダンパー125により調節された冷気が切替室103内に流入する切替室用冷気吐出口128と、冷却室120に冷気が戻る切替室用冷気吸込口(図示せず)が設けられている。
切替室103、冷凍室105、製氷室104にはそれぞれ食品または氷を収納するための切替室用収納容器130、冷凍室用収納容器131、貯氷容器(図示せず)が設置されている。比較的小容量な切替室103に比べ大容量である冷凍室105の冷凍室用収納容器131は複数個あると収納に便利である。
冷蔵室102と切替室103,製氷室104を仕切る第一の仕切壁132と、冷凍室105と野菜室106を仕切る第二の仕切壁133は硬質発泡ウレタンなどの発泡断熱材が発泡充填され、温度差の大きい冷蔵温度帯と冷凍温度帯の断熱性を高めると同時に、冷蔵庫本体101の強度を増す役割を果たしている。
切替室103は、製氷室104と第三の仕切り壁134で区画され、冷凍室105と第四の仕切り壁135で区画されている。第三の仕切り壁134と第四の仕切り壁135は断熱仕切りであり、第一の冷却ダクト121の構成と取り付け方法により断熱材として硬質発泡ウレタンもしくは発泡ポリスチレンとし、硬質発泡ウレタンを用いると断熱性を高められ、特に第四の仕切り壁135に硬質発泡ウレタンを用いると切替室103を冷蔵温度帯に設定した場合の温度調節が容易となり温度補償用ヒータが不要もしくは必要容量を削減でき、コスト面と消費電力量面でメリットが生まれる。一方、切替室103の冷却風路と第一の冷却ダクト121の構成、冷却ファン122の配置が冷却器107の中央に位置しないなど、冷却室107が複雑化する。発泡ポリスチレンを用いた場合は、第一の冷却ダクト121の構成が簡単であり、取り外しも可能となるため、製造面、サービス面でメリットが生まれる一方、高質発泡ウレタンに比べ約3倍断熱性能が劣るために、切替室103を冷蔵温度帯に設定した場合の温度調節が困難となり温度補償用ヒータが必要となり、コスト面と消費電力量面でマイナスである。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用について説明する。
まず、冷凍サイクルの動作について説明する。庫内の設定された温度に応じて制御基板(図示せず)からの信号により冷凍サイクルが動作して冷却運転が行われる。圧縮機117の動作により吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器(図示せず)にて放熱して凝縮液化し、キャピラリーチューブ118に至る。その後、キャピラリーチューブ118では圧縮機117への吸入管108と熱交換しながら減圧されて低温低圧の液冷媒となって冷却器107に至る。冷却ファン122の動作により、各貯蔵室内の空気と熱交換されて冷却器122内の冷媒は蒸発気化し低温の冷気となる。低温の冷気は冷却ファン122から第一の冷却ダクト121に送られ、第一の冷却ダクト121内の冷却風路124から冷気の一部は冷凍室105と製氷室104に送風される。また残りの冷気はツインダンパー125を経由し冷蔵室102と切替室103とに送風され、所望の冷却を行う。冷却器107を出た冷媒は吸入管を経て圧縮機117へと吸い込まれる。
冷凍室105に送風される冷気は、冷凍室用冷気吐出口126から冷凍室用収納容器131内に吐出され、吸込口127から冷却器107に戻る。製氷室104に送風される冷気は、製氷室104用の冷気吐出口(図示せず)から貯氷容器(図示せず)内に吐出され、吸込口127から冷却器107に戻る。つまり製氷室104に吐出された冷気は、冷凍室105と同じ吸込口127から冷却器107に戻ることとなる。これにより、製氷室104用の戻りダクトを設ける必要がなく第一の冷却ダクト121の簡素化が図れる。
冷蔵室102に送風される冷気は、ツインダンパー125の冷蔵室102用フラップを経由し冷蔵室102に送風され、冷蔵室102を冷却した後冷蔵室用の戻りダクト(図示せず)を通り、野菜室106に送風される。冷蔵室102に送風された冷気は、野菜室用戻りダクト(図示せず)を経由し冷却器107に戻る。つまり野菜室106は、冷蔵室102の戻り冷気を利用し貯蔵室内を冷却している。これにより、冷蔵室102の戻りダクト(図示せず)を野菜室106の送風用ダクト兼用できるため、第一の冷却ダクト121の簡素化が図れ、さらに兼用することによりできたスペースを冷却器107に利用し、冷却器107を拡大させ冷却器能力を向上させることで、冷却能力や消費電力量の向上につなげられる。
なお、野菜室106の冷却方法として冷蔵室102の戻り冷気を利用せず、第一の冷却ダクト121内に野菜室106の専用風路を構成し冷却ファン122から送風された冷気で冷却することにより、冷気温度が低温のため比較的少ない風量で野菜室106を冷却できるため、野菜室106内の乾燥が進むのを抑制でき野菜の保鮮性を高められる。
切替室103に送風される冷気は、ツインダンパー125の切替室103用フラップを経由し切替室用冷気吐出口128から切替室用収納容器130内に吐出され、切替室用冷気吸込口(図示せず)から冷却器107に戻る。あらかじめユーザーが設定した温度帯、例えばパーシャルフリージングの設定温度が−3℃とすると、切替室温度センサー136が切替室103内の温度を検知し−3℃になるようにツインダンパー125の切替室103用フラップを開閉させる。
また、切替室103は食品のあら熱とり機能や熱いままの食品を冷凍保存できる機能を付け加えることもできる。従来、熱いままの食品、例えば調理したての熱いままの食品のあら熱をとる場合や炊き立ての御飯を冷凍保存する場合、常温で一度熱さましを行ってから冷蔵庫に収納するよう取扱説明書などで啓蒙してきた。これは、熱いままの食品を収納することにより、冷蔵庫に収納されていた他の食品に温度影響を与え、特に冷凍保存されていた食品が溶けたりする不具合が生じるためである。しかしながら本実施例においては、切替室103は上下、左右共に隣接する製氷室104と冷凍室105と断熱しているため、熱いままの食品を収納しても他の食品への温度影響は少ない。さらに、切替室温度センサー136とツインダンパー125により、切替室温度センサー136があらかじめ設定された温度以上を検知すると、熱いものが収納されたと判断しあらかじめ設定された所定温度以下となるまでツインダンパー125の切替室103用フラップを閉させ冷却を中止する。これは、熱いままの食品温度がある程度低下するまで冷却するのを止め、ある程度食品温度が低下した後に冷却を開始することにより、熱いままの食品による切替室103の温度上昇した空気が冷却器107に戻り、温度上昇した空気による冷却器107の蒸発温度の上昇を抑え、他の貯蔵室へ送風される冷気温度の上昇を抑えるものである。特に冷却器107の蒸発温度の上昇、すなわち冷気温度の上昇により製氷室104、冷凍室105に影響が出るのを防ぐためである。なお、あら熱とり機能や熱いままの食品を冷凍保存できる機能がユーザーの設定、例えばボタンで開始するような場合には、切替室103に熱いままの食品が収納されたことが判断できるので、より他の貯蔵室への温度影響を抑制することができる。
また、切替室温度センサー136に加え、例えば第一の仕切壁132に赤外線センサー138を設け切替室用収納容器130内に収納された食品の温度を検知すれば、食品の温度を瞬時に判断でき、ツインダンパー125の切替室103用フラップを閉させ冷却を中止し他の貯蔵室への温度影響の抑制精度を向上させられる。
冷蔵庫の使い易さに対して、日本人成人女性の標準的な身長(157cm)の使用者の肘高さである97センチ(図説エルゴノミクス,日本規格協会編,1990年発行)付近は、最も冷蔵庫を使用する成人女性が屈まずにそのままの姿勢で扉の開閉を行える位置である。この位置に使用頻度が高い冷凍室や製氷室、またユーザーが用途に応じ様々な温度を切替えられ、急速冷凍機能など多岐にわたり広範囲に使用できる利便性の高い切替室を配置することで、使い勝手が増しこれまで以上に冷蔵庫が活用され家庭での食生活の向上に寄与するものである。
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2による切替室と冷凍室の一部拡大側面縦断面図である。
なお、実施の形態1と同一構成もしくは同一の技術思想が適用できる部分については詳細な説明を省略する。
図4において、切替室103は、通常−22℃〜−15℃で設定される冷凍の温度帯以外に、たとえば、ソフト冷凍(概ね−12〜−6℃程度),パーシャルフリージング(概ね−5〜−1℃程度)等の0℃以下の温度帯である。切替室103は製氷室104に並設された独立扉を備えた貯蔵室であり、引き出し式の扉を備えることが多い。
第一の冷却ダクト121には、冷凍室105と冷蔵室102、切替室103、製氷室104に冷気を送風するための冷却風路124が形成されている。また、第一の冷却ダクト121には冷蔵室102と切替室103の冷気の流れをそれぞれ調節するダンパー装置としてのツインダンパー125が設けられており、冷蔵室102と切替室103の冷気の流れをそれぞれ調節するダンパー装置をツインダンパー化することにより収容スペースのコンパクト化とコスト削減を図っている。なお、冷却室120と第一の冷却ダクト121の高さ方向の寸法に余裕度が無いときには、ツインダンパーを冷蔵室102と切替室103,製氷室104を仕切る第一の仕切壁132に設置することにより、冷却室120内の冷却器107や冷却ファン122、ラジアントヒータ123の配置構成が容易になる。
切替室103の背面に相当する第一の冷却ダクト121には切替室103の温度設定に基づき温度調節するためにツインダンパー125を開閉させる切替室温度センサー136が備えられている。
製氷室104の背面に相当する第一の冷却ダクト121には、製氷室104を冷却するための図示しない冷気吐出口が設けられ、冷凍室105の背面に相当する第一の冷却ダクト121には、冷凍室105を冷却するための冷気が流れる冷凍室用冷気吐出口126と吸込口127が設けられている。切替室103の背面に相当する第一の冷却ダクト121には、ツインダンパー125により調節された冷気が切替室103内に流入する切替室用冷気吐出口128が設けられている。
切替室103、冷凍室105、製氷室104にはそれぞれ食品または氷を収納するための切替室用収納容器130、冷凍室用収納容器131、貯氷容器(図示せず)が設置されている。比較的小容量な切替室103に比べ大容量である冷凍室105の冷凍室用収納容器131は複数個あると収納に便利である。
冷蔵室102と切替室103,製氷室104を仕切る第一の仕切壁132と、冷凍室105と野菜室106を仕切る第二の仕切壁133は硬質発泡ウレタンなどの発泡断熱材が発泡充填され、温度差の大きい冷蔵温度帯と冷凍温度帯の断熱性を高めると同時に、冷蔵庫本体101の強度を増す役割を果たしている。
切替室103は、製氷室104と断熱性を有しない第三の仕切り壁134で区画され、第三の仕切り壁134には切替室103の引き出し用レールが形成されている。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用について説明する。
冷凍室105に送風される冷気は、冷凍室用冷気吐出口126から冷凍室用収納容器131内に吐出され、吸込口127から冷却器107に戻る。製氷室104に送風される冷気は、製氷室104用の冷気吐出口(図示せず)から貯氷容器(図示せず)内に吐出され、吸込口127から冷却器107に戻る。つまり製氷室104に吐出された冷気は、冷凍室105と同じ吸込口127から冷却器107に戻ることとなる。これにより、製氷室104用の戻りダクトを設ける必要がなく第一の冷却ダクト121の簡素化が図れる。
冷蔵室102に送風される冷気は、ツインダンパー125の冷蔵室102用フラップを経由し冷蔵室102に送風され、冷蔵室102を冷却した後冷蔵室用の戻りダクト(図示せず)を通り、野菜室106に送風される。冷蔵室102に送風された冷気は、野菜室用戻りダクト(図示せず)を経由し冷却器107に戻る。つまり野菜室106は、冷蔵室102の戻り冷気を利用し貯蔵室内を冷却している。これにより、冷蔵室102の戻りダクト(図示せず)を野菜室106の送風用ダクト兼用できるため、第一の冷却ダクト121の簡素化が図れ、さらに兼用することによりできたスペースを冷却器107に利用し、冷却器107を拡大させ冷却器能力を向上させることで、冷却能力や消費電力量の向上につなげられる。
なお、野菜室106の冷却方法として冷蔵室102の戻り冷気を利用せず、第一の冷却ダクト121内に野菜室106の専用風路を構成し冷却ファン122から送風された冷気で冷却することにより、冷気温度が低温のため比較的少ない風量で野菜室106を冷却できるため、野菜室106内の乾燥が進むのを抑制でき野菜の保鮮性を高められる。
切替室103に送風される冷気は、ツインダンパー125の切替室103用フラップを経由し切替室用冷気吐出口128から切替室用収納容器130内に吐出され、吸込口127から冷却器107に戻る。つまり切替室103に吐出された冷気は、冷凍室105と同じ吸込口127から冷却器107に戻ることとなる。これにより、製氷室104と同様に切替室103用の戻りダクトを設ける必要がなく第一の冷却ダクト121の簡素化が図れる。
あらかじめユーザーが設定した温度帯、例えばパーシャルフリージングの設定温度が−3℃とすると、切替室温度センサー136が切替室103内の温度を検知し−3℃になるようにツインダンパー125の切替室103用フラップを開閉させる。切替室103は、通常−22℃〜−15℃で設定される冷凍の温度帯以外に、たとえば、ソフト冷凍(概ね−12〜−6℃程度),パーシャルフリージング(概ね−5〜−1℃程度)等の0℃以下の温度帯に切替えられる貯蔵室である。
このようにして、切替室103は、製氷室104と断熱性を有しない第三の仕切り壁134で区画され、冷凍室105とは仕切り壁として区画していないので、安価で簡単に切替室103を形成しながら、他の貯蔵室には無い温度帯のソフト冷凍(概ね−12〜−6℃程度),パーシャルフリージング(概ね−5〜−1℃程度)等の0℃以下に切替えできる利便性の高い貯蔵室を冷蔵庫中央部に配置している。
冷蔵庫の使い易さに対して、日本人成人女性の標準的な身長(157cm)の使用者の肘高さである97センチ(図説エルゴノミクス,日本規格協会編,1990年発行)付近は、最も冷蔵庫を使用する成人女性が屈まずにそのままの姿勢で扉の開閉を行える位置である。この位置に使用頻度が高い冷凍室や製氷室、また急速冷凍機能やユーザーが用途に応じ他の貯蔵室に無い温度に切替えられる利便性の高い切替室を配置することで、使い勝手が増しこれまで以上に冷蔵庫が活用され家庭での食生活の向上に寄与するものである。
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3による切替室と冷凍室の一部拡大側面縦断面図である。
なお、実施の形態1または2と同一構成もしくは同一の技術思想が適用できる部分については詳細な説明を省略する。
図5において、切替室103は、1℃〜5℃で設定される冷蔵、2℃〜7℃で設定される野菜、通常−22℃〜−15℃で設定される冷凍の温度帯以外に、冷蔵温度帯から冷凍温度帯の間で予め設定された温度帯に切り換えることができる。たとえば、ソフト冷凍(概ね−12〜−6℃程度),パーシャルフリージング(概ね−5〜−1℃程度),チルド(概ね−1〜1℃程度)等の冷蔵と冷凍の中間の温度帯である。切替室103は製氷室104に並設された独立扉を備えた貯蔵室であり、引き出し式の扉を備えることが多い。
第一の冷却ダクト121には、冷凍室105と冷蔵室102、切替室103、製氷室104に冷気を送風するための冷却風路124が形成されている。また、第一の冷却ダクト121には冷蔵室102と切替室103の冷気の流れをそれぞれ調節するダンパー装置としてのツインダンパー125が設けられており、冷蔵室102と切替室103の冷気の流れをそれぞれ調節するダンパー装置をツインダンパー化することにより収容スペースのコンパクト化とコスト削減を図っている。なお、冷却室120と第一の冷却ダクト121の高さ方向の寸法に余裕度が無いときには、ツインダンパーを冷蔵室102と切替室103,製氷室104を仕切る第一の仕切壁132に設置することにより、冷却室120内の冷却器107や冷却ファン122、ラジアントヒータ123の配置構成が容易になる。
切替室103の背面に相当する第一の冷却ダクト121の庫内側には切替室103の温度設定に基づき温度調節するためにツインダンパー125を開閉させる切替室温度センサー136が備えられている。
製氷室104の背面に相当する第一の冷却ダクト121には、製氷室104を冷却するための図示しない冷気吐出口が設けられ、冷凍室105の背面に相当する第一の冷却ダクト121には、冷凍室105を冷却するための冷気が流れる冷凍室用冷気吐出口126と吸込口127が設けられている。切替室103の背面に相当する第一の冷却ダクト121には、ツインダンパー125により調節された冷気が切替室103内に流入する切替室用冷気吐出口128a、128b冷却室120に冷気が戻る切替室用冷気吸込口129が設けられている。
また、切替室103の天面には非接触で食品の温度検知を行う非接触センサーである赤外線センサー138が設けられている。
切替室103、冷凍室105、製氷室104にはそれぞれ食品または氷を収納するための切替室用収納容器130、冷凍室用収納容器131、貯氷容器(図示せず)が設置されている。比較的小容量な切替室103に比べ大容量である冷凍室105の冷凍室用収納容器131は複数個あると収納に便利である。
冷蔵室102と切替室103,製氷室104を仕切る第一の仕切壁132と、冷凍室105と野菜室106を仕切る第二の仕切壁133は硬質発泡ウレタンなどの発泡断熱材が発泡充填され、温度差の大きい冷蔵温度帯と冷凍温度帯の断熱性を高めると同時に、冷蔵庫本体101の強度を増す役割を果たしている。
切替室103は、製氷室104と第三の仕切り壁134で区画され、冷凍室105と第四の仕切り壁135で区画されている。第三の仕切り壁134と第四の仕切り壁135は断熱仕切りであり、第一の冷却ダクト121の構成と取り付け方法により断熱材として硬質発泡ウレタンもしくは発泡ポリスチレンとし、硬質発泡ウレタンを用いると断熱性を高められ、特に第四の仕切り壁135に硬質発泡ウレタンを用いると切替室103を冷蔵温度帯に設定した場合の温度調節が容易となり温度補償用ヒータが不要もしくは必要容量を削減でき、コスト面と消費電力量面でメリットが生まれる。一方、切替室103の冷却風路と第一の冷却ダクト121の構成、冷却ファン122の配置が冷却器107の中央に位置しないなど、冷却室107が複雑化する。発泡ポリスチレンを用いた場合は、第一の冷却ダクト121の構成が簡単であり、取り外しも可能となるため、製造面、サービス面でメリットが生まれる一方、高質発泡ウレタンに比べ約3倍断熱性能が劣るために、切替室103を冷蔵温度帯に設定した場合の温度調節が困難となり温度補償用ヒータが必要となり、コスト面と消費電力量面でマイナスである。
切替室用収納容器130の底面に、金属製トレー137が設けられている。金属製トレー137はアルミで形成すると安価であり、ステンレスで形成すると堅牢感が増す。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用について説明する。
冷凍室105に送風される冷気は、冷凍室用冷気吐出口126から冷凍室用収納容器131内に吐出され、吸込口127から冷却器107に戻る。製氷室104に送風される冷気は、製氷室104用の冷気吐出口(図示せず)から貯氷容器(図示せず)内に吐出され、吸込口127から冷却器107に戻る。つまり製氷室104に吐出された冷気は、冷凍室105と同じ吸込口127から冷却器107に戻ることとなる。これにより、製氷室104用の戻りダクトを設ける必要がなく第一の冷却ダクト121の簡素化が図れる。
冷蔵室102に送風される冷気は、ツインダンパー125の冷蔵室102用フラップを経由し冷蔵室102に送風され、冷蔵室102を冷却した後冷蔵室用の戻りダクト(図示せず)を通り、野菜室106に送風される。冷蔵室102に送風された冷気は、野菜室用戻りダクト(図示せず)を経由し冷却器107に戻る。つまり野菜室106は、冷蔵室102の戻り冷気を利用し貯蔵室内を冷却している。これにより、冷蔵室102の戻りダクト(図示せず)を野菜室106の送風用ダクト兼用できるため、第一の冷却ダクト121の簡素化が図れ、さらに兼用することによりできたスペースを冷却器107に利用し、冷却器107を拡大させ冷却器能力を向上させることで、冷却能力や消費電力量の向上につなげられる。
なお、野菜室106の冷却方法として冷蔵室102の戻り冷気を利用せず、第一の冷却ダクト121内に野菜室106の専用風路を構成し冷却ファン122から送風された冷気で冷却することにより、冷気温度が低温のため比較的少ない風量で野菜室106を冷却できるため、野菜室106内の乾燥が進むのを抑制でき野菜の保鮮性を高められる。
切替室103に送風される冷気は、ツインダンパー125の切替室103用フラップを経由し切替室用冷気吐出口128から切替室用収納容器130内に吐出され、切替室用冷気吸込口129から冷却器107に戻る。あらかじめユーザーが設定した温度帯、例えばパーシャルフリージングの設定温度が−3℃とすると、切替室温度センサー136が切替室103内の温度を検知し−3℃になるようにツインダンパー125の切替室103用フラップを開閉させる。
また、切替室103は食品のあら熱とり機能や熱いままの食品を冷凍保存できる機能を付け加えることもできる。従来、熱いままの食品、例えば調理したての熱いままの食品のあら熱をとる場合や炊き立ての御飯を冷凍保存する場合、常温で一度熱さましを行ってから冷蔵庫に収納するよう取扱説明書などで啓蒙してきた。これは、熱いままの食品を収納することにより、冷蔵庫に収納されていた他の食品に温度影響を与え、特に冷凍保存されていた食品が溶けたりする不具合が生じるためである。しかしながら本実施形態においては、切替室103は上下、左右共に隣接する製氷室104と冷凍室105と断熱しているため、熱いままの食品を収納しても他の食品への温度影響は少ない。さらに、切替室温度センサー136とツインダンパー125により、切替室温度センサー136があらかじめ設定された温度以上を検知すると、熱いものが収納されたと判断しあらかじめ設定された所定温度以下となるまでツインダンパー125の切替室103用フラップを閉させ冷却を中止する。これは、熱いままの食品温度がある程度低下するまで冷却するのを止め、ある程度食品温度が低下した後に冷却を開始することにより、熱いままの食品による切替室103の温度上昇した空気が冷却器107に戻り、温度上昇した空気による冷却器107の蒸発温度の上昇を抑え、他の貯蔵室へ送風される冷気温度の上昇を抑えるものである。特に冷却器107の蒸発温度の上昇、すなわち冷気温度の上昇により製氷室104、冷凍室105に影響が出るのを防ぐためである。なお、あら熱とり機能や熱いままの食品を冷凍保存できる機能がユーザーの設定、例えばボタンで開始するような場合には、切替室103に熱いままの食品が収納されたことが判断できるので、より他の貯蔵室への温度影響を抑制することができる。
切替室用収納容器130の底面に金属製トレー137を設けたことにより、金属製トレー137が熱伝導性を向上させ、切替室用収納容器130の底面に収納された食品の冷却スピードを向上させることができる。急速冷凍機能やあら熱とり機能、熱いままの食品を冷凍保存できる機能なども同様に冷却スピードを向上させることができ、特に肉や魚を急速に冷凍保存する急速冷凍機能においては、食品の凍結時間を短縮させ食材の組織を破壊せずに美味しく凍結保存させことができる。
なお、切替室用収納容器130の底面に蓄冷材を用いると、食品の冷却スピード向上に加え、あら熱とり機能、熱いままの食品を冷凍保存できる機能時の他の貯蔵室への温度影響を抑制することができる。蓄冷材は一般的な冷凍する食品の凍結温度より低めで最大氷結晶生成帯の温度より低く、冷凍室105の温度より高い温度である例えば−15℃に潜熱を有する材料で構成されている。この蓄冷材の潜熱と顕熱を利用し熱いままの食品が収納されるとこの蓄冷材の潜熱と顕熱で熱さましを行うことで他の貯蔵室への温度影響を抑制するものである。また、扉を開放し切替室用収納容器130が外気にさらされた場合でも、外気流入による熱負荷を蓄冷材で吸熱するので容器内が低温に保たれ、貯蔵されている食品の温度上昇が抑制でき品質劣化の抑制が可能である。
また、本実施の形態では、切替室温度センサー136に加え、例えば第一の仕切壁132に赤外線センサー138を設け切替室用収納容器130内に収納された食品の温度を検知しているので、食品の温度を瞬時に判断でき、ツインダンパー125の切替室103用フラップの角度を調整することで、例えば吐出口128aのみをあけて吐出口128bは閉塞させることで収納容器130内へ直接冷気が流れることで急速冷凍を行うことも可能であり、例えば、緩慢に貯蔵室を冷却することで過冷却温度での冷凍を実現する場合には、吐出口128aは閉塞して吐出口128bのみを開くことで収納容器の外周を通って緩やかに冷却を行うことも可能である。さらに、赤外線センサー138で検知した温度が高温の場合には、ツインダンパー125を閉として吐出口128aおよび吐出口128b共に閉塞させて冷却を中止し他の貯蔵室への温度影響の抑制精度を向上した上で、底面に備えられた蓄冷材によって一定温度に食品が温度低下した後に、冷却を開始すなわちツインダンパー125を開けるといった制御を行うと、より省エネルギーで多の貯蔵室への温度影響の少ない冷却を実現することができる。
このように、最も冷蔵庫を使用する成人女性が屈まずにそのままの姿勢で扉の開閉を行える位置に使用頻度が高い冷凍室や製氷室、またユーザーが用途に応じ様々な温度を切替えられ、急速冷却機能など多岐にわたり広範囲に使用できより高品質の冷凍保存ができる利便性の高い切替室を配置することで、使い勝手が増しこれまで以上に冷蔵庫が活用され家庭での食生活の向上に寄与するものである。
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4による切替室と冷凍室の一部拡大側面縦断面図である。
なお、実施の形態1乃至3と同一構成もしくは同一の技術思想が適用できる部分については詳細な説明を省略する。
図6において、切替室103は、1℃〜5℃で設定される冷蔵、2℃〜7℃で設定される野菜、通常−22℃〜−15℃で設定される冷凍の温度帯以外に、冷蔵温度帯から冷凍温度帯の間で予め設定された温度帯に切り換えることができる。たとえば、ソフト冷凍(概ね−12〜−6℃程度),パーシャルフリージング(概ね−5〜−1℃程度),チルド(概ね−1〜1℃程度)等の冷蔵と冷凍の中間の温度帯である。
本実施の形態では、切替室103を冷蔵〜冷凍に至る各温度帯をマルチに設定可能な例としたが、これに限らず冷凍と前述のソフト冷凍の選択としたり、或いは切替室ということでなく冷凍室のみの単一機能としても構わない。なお、切替室103は製氷室104に並設された独立扉を備えた貯蔵室であり、引き出し式の扉を備えることが多い。
第一の冷却ダクト121には、冷凍室105と冷蔵室102、切替室103、製氷室104に冷気を送風するための冷却風路124が形成されている。また、第一の冷却ダクト121の流通路には冷蔵室102への冷気の流れを調節するダンパー装置としてのシングルダンパー(図示せず)と切替室103への冷気の流れを調節するダンパー装置としてのツインダンパー141がそれぞれ設けられている。
切替室103の背面に相当する第一の冷却ダクト121の庫内側には切替室103の温度設定に基づき温度調節するためにツインダンパー141の二つのダンパーフラップを適宜開閉させる切替室温度センサー136が備えられている。
切替室103内への冷気供給に関しては、室内背面に相当する位置に開口された切替室用冷気吐出口141aと室内天面の比較的前方にダクト141cを通じて開口された切替室用冷気吐出口141bの二箇所によって行われ、これら二つの切替室用冷気吐出口141a,141bは切替室103内において前後に分かれて冷気を吐出するような関係になっている。そして、ツインダンパー141の二つの各ダンパーフラップに切替室用冷気吐出口141a,141bがそれぞれ割り付けられ、それぞれのダンパーフラップで調節された冷気が切替室用冷気吐出口141aまたは切替室用冷気吐出口141bを介して切替室103内に供給されるように構成されている。
また、切替室103内の後方には切替室用冷気吐出口141aまたは切替室用冷気吐出口141bから室内に供給された冷気を冷却器107が収容された冷却室120に戻すための切替室用冷気吸込口142が設けられている。本実施形態においては切替室用冷気吐出口141aまたは切替室用冷気吐出口141bから室内に供給された冷気は、切替室用収納容器130の外周を流通して室内後方にある切替室用冷気吸込口142に回収され、図示しない戻りダクトを通じて冷却室120に戻される。
また、切替室103の天面には非接触で食品の温度検知を行う非接触センサーである赤外線センサー138が設けられている。赤外線センサー138の設置位置は切替室103内に収納された食品等の収納物の温度を効果的に検出できる配置構成であれば特に限定されず目的に応じて選定すればよいが、比較的出し入れのされ易い室内前方に寄せて配置すると新たな収納物を検知し易いほか、実質的検知範囲を極力広角となるよう用いるためには室内中央に配置するよりも、比較的前方に片寄せて取り付け角度も配慮しながら室内後方に向けてワイドな検出範囲を確保できるようにすると好都合となる。赤外線センサー138が単一の固定された構成であると十分な検知範囲を確保できなければ、複数に増設したり、可動式の赤外線センサーとして検知範囲や検知精度を高める方法を用いてもなおよい。
切替室103は、製氷室104と第三の仕切り壁134で区画され、冷凍室105と第四の仕切り壁135で区画されている。第三の仕切り壁134と第四の仕切り壁135は断熱仕切りであり、断熱材として通常は硬質発泡ウレタンもしくは発泡ポリスチレンとし、硬質発泡ウレタンを用いると断熱性を高められ、特に第四の仕切り壁135に硬質発泡ウレタンを用いると切替室103を冷蔵温度帯やチルド,氷温,パーシャルフリージングなど冷凍室105との温度差が比較的大きい温度帯に設定した場合の温度調節が容易となり温度補償用ヒータが不要もしくは必要容量を削減でき、コスト面と消費電力量面でメリットが生まれる。もし、更なる断熱性が必要であれば硬質発泡ウレタンよりも数倍の断熱性を有する真空断熱材を適宜用いることも考慮できる。
一方で、切替室103の温度設定を前述のような冷凍室105との温度差が比較的大きくないソフト冷凍などの温度帯や、これに冷凍温度帯への切替を加えたりした設定とした場合は、第四の仕切り壁135の断熱性を低下させる、すなわち断熱壁の厚さを薄くする、もしくは、断熱性の劣る断熱材に置き換えるなどの対応が可能であり、冷凍温度帯のみの設定とする場合は、第四の仕切り壁135の断熱をなくしたり、第四の仕切り壁135自体の存在を廃止したりすることも可能である。この点は、製氷室104との間の第三の仕切り壁134についても同様の対応が可能であり、両室相互間に冷却品質上の問題が生じない範囲で適宜構成を選択することができる。
第四の仕切り壁135の断熱性を低下させるケースについては、切替室103内に対する間接的な冷却源として冷凍室105を利用し、安定冷却時の切替室用冷気吐出口141a,141bから切替室103内への直接の冷気供給の比率を低下させてダクト送風抵抗ロスによるエネルギー損失を抑えて省エネルギー化に繋げたり、室内の冷気供給,停止の断続による収納物の温度変動や乾燥を極力抑えて保存品質を高めたりすることも有用な手段となる。
切替室用収納容器130の底面には金属製トレー137が設けられている。金属製トレー137はアルミで形成すると安価であり、ステンレスで形成すると堅牢感が増す。なお、金属製トレー137の代わりに蓄冷材を用いて冷却促進や冷却の安定性を図ることも有用である。また、金属製トレー137と蓄冷材を併用してもいいし、蓄冷材を仕込んだ金属容器的な部材を用いることも考えられる。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用について切替室103に対する部分を中心に説明する。
冷却器107により冷却された冷気は、冷却風路124を通じてツインダンパー141の二つのダンパーフラップを経由し、室内後方に開口した切替室用冷気吐出口141aからと室内天面に開口した切替室用冷気吐出口141bから切替室103内に吐出され、切替室用収納容器130の外周を循環し、一部は切替室用収納容器130から溢れて室内後方に開口した切替室用冷気吸込口129から冷却器107に戻る。あらかじめユーザーが設定した温度帯、例えば冷凍温度の−18℃とすると、切替室温度センサー136が切替室103内の温度を検知し−18℃になるようにツインダンパー141のダンパーフラップを開閉させて供給冷気量を調節し所望の温度に冷却安定させる。
このとき、二つの切替室用冷気吐出口の双方を用いるか、どちらか一方を用いるかの選択があるが、切替室温度センサー136を一つだけ設ける場合は、通常は切替室温度センサー136の検知温度に対してツインダンパー141の二つのダンパーフラップは同時に開閉動作を行い切替室用冷気吐出口141a,141bの双方から冷気の供給が行われて室内を速やかに所望の温度に冷却する。
これに対して、ツインダンパー141の二つのダンパーフラップのそれぞれの開閉動作(フラップを駆動させるモーター等の制御による)に対して個別の切替室温度センサーをそれぞれ適切な位置(例えば、切替室用冷気吐出口141aに対しては室内後方、切替室用冷気吐出口141bに対しては室内前方など)に設けると、切替室103内の前後の温度分布の状況に応じて、よりきめ細やかな冷気供給の制御を行うこともできる。
そして、このような冷却制御をベースにして赤外線センサー138で検知する温度の情報を加味すると、切替室103内への食品等の収納物を投入した場合に、新たな収納物投入による温度上昇を赤外線センサー138が検知し、非定常の状態を冷却促進して速やかに安定化させるために、投入された領域に見合った切替室用冷気吐出口141aもしくは切替室用冷気吐出口141bに通じるダンパーフラップを選択して開放させ冷気供給するような効果的な集中冷却も可能となる。ツインダンパー141の二つのダンパーフラップをそれぞれの切替室用冷気吐出口に通じる風路に割り付けた構成になるので、風路の切替が精度よく確実に行える。
また、切替室103は食品のあら熱とり機能や熱いままの食品を冷凍保存できる機能を付け加えることもできる。従来、熱いままの食品、例えば調理したての熱いままの食品のあら熱をとる場合や炊き立ての御飯等を冷凍保存する場合、常温で一度熱さましを行ってから冷蔵庫に収納するよう取扱説明書などで啓蒙してきた。これは、熱いままの食品を収納することにより、冷蔵庫に収納されていた他の食品に温度影響を与え、特に冷凍保存されていた食品が溶けたりする不具合が生じるためである。
しかしながら本実施形態においては、熱いままの食品を投入しても赤外線センサー138が熱いものが収納されたと判断し、ツインダンパー141の二つのダンパーフラップのうち、投入食品が置かれた領域に対して適切な切替室用冷気吐出口に連通するダンパーフラップを開放させてあらかじめ設定された所定温度以下となるまで投入食品に対する集中冷却を行い、速やかに温度低下させるので温度が高い状態を長く維持することによる食品品質の劣化(変質,変色,乾燥等)や他の食品への温度影響を阻止することができる。
すなわち、切替室収納容器130内の前方領域に食品が投入されたと検知した場合は天面の切替室用冷気吐出口141bから冷気を供給し、切替室収納容器130内の後方領域に食品が投入されたと検知した場合は後方の切替室用冷気吐出口141aから冷気を供給する。ただし、いずれかの領域のみに特定されず切替室収納容器130内領域の双方や全域に亘って食品が投入されたと判断された場合は、切替室用冷気吐出口141a,141bの双方から冷気供給させるようにツインダンパー141の二つのダンパーフラップの双方を開放させてさらに冷却促進させることも可能である。
また、切替室用収納容器130の底面に金属製トレー137を設けたことにより、金属製トレー137が熱伝導性を向上させ、切替室用収納容器130の底面に収納された食品の冷却スピードを向上させることができる。急速冷凍機能やあら熱とり機能、熱いままの食品を冷凍保存できる機能なども同様に冷却スピードを向上させることができる。
さらに、切替室用収納容器130の底面に蓄冷材を用いると、食品の冷却スピード向上に加え、あら熱とり機能、熱いままの食品を冷凍保存できる機能時の他の貯蔵室への温度影響をより一層抑制することができる。
蓄冷材は一般的な冷凍する食品の凍結温度より低めで最大氷結晶生成帯の温度より低く、冷凍室105の温度より高い温度である例えば−15℃に潜熱を有する材料で構成されている。この蓄冷材の潜熱と顕熱を利用し熱いままの食品が収納されるとこの蓄冷材の潜熱と顕熱で熱さましを行うことで他の貯蔵室への温度影響を抑制するものである。また、扉を開放し切替室用収納容器130が外気にさらされた場合でも、外気流入による熱負荷を蓄冷材で吸熱するので容器内が低温に保たれ、貯蔵されている食品の温度上昇が抑制でき品質劣化の抑制が可能である。
これに対して、たとえば急速な冷凍温度への冷却(凍結)や熱いままの収納物のあら熱とりや熱冷ましなどの作用を、他の観点での品質向上や他への品質影響軽減の点から考慮すれば、切替室103の冷却を以下のような方法で行わせることも一定の意義が見出せ選択事項として考えられる。
すなわち、切替室103への新たな食品の投入に対して敢えて冷却初期から所定時期までは切替室用冷気吐出口141a,141bの双方に通じるツインダンパー141のダンパーフラップを閉じ、切替室103内に冷気供給をせず自然放冷に任せるというものであり、この自然放冷期間に切替室103の周囲室、特に第四の仕切り壁135を介しての冷凍室105からの温度差を生かしての吸熱(間接冷却)作用や、金属製トレー137や蓄冷材による吸熱(伝導冷却)作用によって投入食品は徐冷される。
この徐冷作用が進んで食品の凍結点に到達してもなお徐冷が進み、やがて凍結点を越えて過冷却の状態に移行する。この状態において、何らかの外的刺激を加える(例えば、切替室用冷気吐出口141aまたは141b、またはその双方に通じるツインダンパー141のダンパーフラップを開放して急激に冷気を供給し始める)ことにとって、食品の過冷却状態が解除され凍結点に急激に上昇復帰する際に、過冷却状態の深さと時間に応じて凍結潜熱が瞬時に奪われて微細な氷結晶が食品細胞内に無数に発現することが期待できる。
この微細な氷結晶が生じた状態で切替室用冷気吐出口141aまたは141bまたはその双方からの冷気供給を受けて食品が直接冷却されて冷凍温度帯に至ると、ベースの氷結晶が比較的大きく、氷結晶が肥大化して食品細胞を傷めやすい通常の冷凍に比べてベースの氷結晶が微細であるために氷結晶が成長しても肥大化しにくく食品細胞が破壊されにくくなり、冷凍貯蔵の品質を高めることができることが期待できる。
一方、新たな投入食品が温度の高い食品であり、この食品のあら熱取りや熱冷ましを品質に配慮しながら行いたい場合に、同様に切替室103内への冷気の供給を投入初期より一時的に断って、この間に自然放冷させ、ある程度食品温度が低下した後に冷却を開始することにより、熱いままの食品による切替室103の温度上昇した空気が冷却器107に戻り、温度上昇した空気による冷却器107の蒸発温度の上昇を抑え、他の貯蔵室へ送風される冷気温度の上昇を抑える。特に冷却器107の蒸発温度の上昇、すなわち冷気温度の上昇により製氷室104、冷凍室105に影響が出るのを防ぎ、同時に熱影響による余分な冷却運転を抑えて省エネルギー化を図ることを期待できる。
なお、前述の過冷却状態が解除をさせたり、熱いものの自然放冷から強制冷却に移るタイミングでツインダンパー141のダンパーフラップを開放する制御は、赤外線センサー138による投入食品の温度推移の検知により行うことができる。なお、過冷却を利用した冷凍やあら熱とり機能や熱いままの食品を冷凍保存できる機能がユーザーの設定、例えばボタンで開始するような場合には、切替室103に食品が収納されたことが判断できるので、赤外線センサー138のみに依存せず、簡易的に時間タイマーを用いる、もしくは併用するようなことも実用的には考えられる。
ここで、自然放冷を促進させる方法に関しては切替室103と冷凍室105との間の第四の仕切り壁135の断熱性を前述のように調整することにより、冷凍室105を間接的な冷却源として利用することができ有効な手段となり得る。これは、上下に冷蔵室102,野菜室106の冷蔵温度帯の貯蔵室を区画し、切替室103,製氷室104,冷凍室105のいわゆる冷凍温度帯を有する貯蔵室を、冷蔵庫本体の中央部に集約させ、冷凍温度帯の使い勝手に配慮したレイアウトとしたことにより、合理的かつ効果的に行える冷却効率の高い冷却方法である。
また、過冷却や自然放冷の徐冷を行わせる際に、全く冷気を供給しないかどうかは実用的には考慮の余地があり、例えば天面に設けた切替室用冷気吐出口141bを室内天面の前方に設けて切替室用収納容器130の外周を循環するような冷気吐出形態として、切替室の冷却補償を行わせるようなことや、切替室用冷気吐出口141aまたは141bから短時間のみ時々室内に冷気を送って冷却補償を行わせるようなことが過冷却状態を維持し自然放冷の目的を損なわない範囲で選択できる。
なお、本実施の形態では切替室用冷気吐出口141aを切替室103の後方に開口させ、切替室用冷気吐出口141bを切替室103の天面に開口させる構成として説明したが、これに関わらず、例えば切替室用冷気吐出口141a,141bともに切替室103の後方に置いて上下に使い分けてもよく、この場合は切替室用冷気吐出口141bまで冷気を導くダクト141cが不要となり構造は簡素化される。また、その他の配置の組合せでも構わない。すなわち、冷却分担する領域をどのように区分するかに応じて切替室用冷気吐出口の配置を適宜決めればよい。
以上、切替室103を冷凍温度に設定する場合について主に述べたが、これらの有用な効果は切替室103をソフト冷凍の温度帯に設定する場合にも享有でき、過冷却現象を利用した凍結や熱いもののそのまま貯蔵など、終結温度帯がソフト冷凍である方が使い勝手上(短期貯蔵や調理,加工処理の便利さ)を中心としてメリットのある場合に実用的効果を得ることができる。