JP4366820B2 - 無機粒子含有感光性組成物および感光性フィルム - Google Patents
無機粒子含有感光性組成物および感光性フィルム Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は無機粒子含有感光性組成物および感光性フィルムに関し、さらに詳しくは、プラズマディスプレイパネルの各表示セルを構成する誘電体、電極、抵抗体、蛍光体、隔壁、カラーフィルターおよびブラックマトリクスの形成において、有機成分の熱分解性に優れ、精度の高いパターンを形成するために好適に使用することができる無機粒子含有感光性組成物および感光性フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、平板状の蛍光表示体としてプラズマディスプレイが注目されている。図1は交流型のプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」ともいう)の断面形状を示す模式図である。同図において、1および2は対向配置されたガラス基板、3は隔壁であり、ガラス基板1、ガラス基板2および隔壁3によりセルが区画形成される。4はガラス基板1に固定された透明電極、5は透明電極の抵抗を下げる目的で、透明電極上に形成されたバス電極、6はガラス基板2に固定されたアドレス電極、7はセル内に保持された蛍光体、8は透明電極4およびバス電極5を被覆するようガラス基板1の表面に形成された誘電体層、9はアドレス電極6を被覆するようにガラス基板2の表面に形成された誘電体層、10は例えば酸化マグネシウムよりなる保護膜である。なお、直流型のPDPにおいては、通常、電極端子(陽極端子)と電極リード(陽極リード)との間に抵抗体を設ける。
また、PDPのコントラストを向上させるために、赤色、緑色、青色のカラーフィルターや、通常ストライプ状や格子状の形状を有するブラックマトリクスを、上記ガラス基板1と誘電体層8の間や上記誘電体層8と保護膜10の間などに設ける場合もある。
【0003】
このようなPDPの各種部材の形成方法としては、(1)非感光性の無機粒子含有ペーストを基板上にスクリーン印刷してパターンを得、これを焼成するスクリーン印刷法、(2)感光性の無機粒子含有組成物の膜を基板上に膜形成し、この膜にフォトマスクを介して紫外線を照射した上で現像することにより基板上にパターンを残存させ、これを焼成するフォトリソグラフィー法などが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記スクリーン印刷法では、パネルの大型化および高精細化に伴い、パターンの位置精度の要求が非常に厳しくなり、通常の印刷では対応できないという問題がある。
また、前記フォトリソグラフィー法では、パターンの位置精度には優れるものの、焼成工程における感光性有機成分の熱分解性が低いという問題があった。
【0005】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の第一の目的は、精度の高いパターンを形成することができ、かつ有機成分の熱分解性に優れた無機粒子含有感光性組成物を提供することにある。
本発明の第二の目的は、精度の高いパターンを形成することができ、かつ有機成分の熱分解性に優れた無機粒子含有感光性樹脂層を有する感光性フィルムを提供することにある。
本発明の無機粒子含有感光性組成物および感光性フィルムは、プラズマディスプレイパネルの各表示セルを構成する部材形成のために好適に使用することができる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の無機粒子含有感光性組成物は、(A)無機粒子、(B)アルカリ可溶性樹脂、(C)エチレン性不飽和基含有化合物ならびに(D)下記式(1)で表される化合物および下記式(2)で表される化合物を含む400℃における重量減少が90%以上である光重合開始剤を含有することを特徴とする。本発明の無機粒子含有感光性組成物は、下記式(1)で表される化合物および下記式(2)で表される化合物の質量換算における含有比率(下記式(1)で表される化合物:下記式(2)で表される化合物)が50:50〜95:5であることを特徴とする無機粒子含有感光性組成物を含有することが好ましい。さらに、本発明の無機粒子含有感光性組成物は、前記無機粒子は、ガラスフリット、金属粒子、酸化金属粒子から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0007】
【化3】
【0008】
(式(1)において、R1 およびR2 は相互に独立に炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
【0009】
【化4】
【0010】
(式(2)において、R3、R4、R5およびR6はエチル基を示す。)
【0011】
本発明の感光性フィルムは、本発明の無機粒子含有感光性組成物から得られる無機粒子含有感光性樹脂層を含有することを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の無機粒子含有感光性組成物の詳細について説明する。
(A)無機粒子
無機粒子含有感光性組成物に使用される無機粒子は、形成材料の種類によって異なる。
PDPを構成する誘電体および隔壁形成材料に使用される無機粒子としては、低融点ガラスフリットなどが挙げられる。この低融点ガラスフリットは、その軟化点が400〜600℃の範囲内にあることが好ましい。
ガラスフリットの軟化点が400℃未満である場合には、当該組成物による無機粒子含有感光性樹脂層の焼成工程において、アルカリ可溶性樹脂などの有機物質が完全に分解除去されない段階でガラスフリットが溶融してしまうため、形成される焼結体中に有機物質の一部が残留し、この結果、焼結体が着色されて、その光透過率が低下する傾向がある。一方、ガラスフリットの軟化点が600℃を超える場合には、600℃より高温で焼成する必要があるために、ガラス基板に歪みなどが発生しやすい。
【0013】
具体的には、▲1▼ 酸化鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素系(PbO−B2O3−SiO2系)、▲2▼ 酸化鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム系(PbO−B2O3−SiO2−Al2O3系)、▲3▼ 酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素系(ZnO−B2O3−SiO2系)、▲4▼ 酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム系(ZnO−B2O3−SiO2−Al2O3系)、▲5▼ 酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素系(PbO−ZnO−B2O3−SiO2系)、▲6▼ 酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム系(PbO−ZnO−B2O3−SiO2−Al2O3系)、▲7▼ 酸化ビスマス、酸化ホウ素、酸化ケイ素系(Bi2O3−B2O3−SiO2系)、▲8▼ 酸化ビスマス、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム系(Bi2O3−B2O3−SiO2−Al2O3系)、▲9▼ 酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素系(Bi2O3−ZnO−B2O3−SiO2系)、▲9▼ 酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム系(Bi2O3−ZnO−B2O3−SiO2−Al2O3系)などのガラスフリットを挙げることができる。
【0014】
また、上記低融点ガラスフリットの形状としては特に限定されず、平均粒径としては、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.5〜5μmである。上記低融点ガラスフリットは単独であるいは異なるガラスフリット組成、異なる軟化点、異なる形状、異なる平均粒径を有する低融点ガラスフリットを2種以上組み合わせて使用することができる。
これらの低融点ガラスフリットは、誘電体および隔壁以外の構成要素(例えば電極・抵抗体・蛍光体・カラーフィルター・ブラックマトリックス)を形成するための組成物中に含有されていてもよい。この場合の低融点ガラスフリットの含有量は、用途によって異なるが、低融点ガラスフリットを含む無機粒子全量100質量部に対して、通常、70質量部以下であり、好ましくは50質量部以下であり、より好ましくは30質量部以下である。
【0015】
PDP、LCD、有機EL素子、プリント回路基板、多層回路基板、マルチチップモジュールおよびLSIなどの電極形成材料に使用される無機粒子としては、Ag、Au、Al、Ni、Ag−Pd合金、Cu、Crなどを挙げることができる。これらの中でも、大気中で焼成した場合においても酸化による導電性の低下が生じず、比較的安価なAgを用いることが好ましい。電極形成材料に使用される無機粒子の形状としては、粒状、球状、フレーク状等特に限定されず、単独であるいは二種以上の形状の無機粒子を混合して使用することもできる。また、平均粒径としては、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.05〜5μmであり、異なる平均粒径を有する無機粒子を混合して使用することもできる。
【0016】
PDP、LCD、有機EL素子などの透明電極形成材料に使用される無機粒子としては、酸化インジウム、酸化錫、錫含有酸化インジウム(ITO)、アンチモン含有酸化錫(ATO)、フッ素添加酸化インジウム(FIO)、フッ素添加酸化錫(FTO)、フッ素添加酸化亜鉛(FZO)、ならびに、Al、Co、Fe、In、SnおよびTiから選ばれた一種もしくは二種以上の金属を含有する酸化亜鉛微粒子などを挙げることができる。
PDPの抵抗体形成材料に使用される無機粒子としては、RuO2などからなる粒子を挙げることができる。
【0017】
PDPの蛍光体形成材料に使用される無機粒子は、赤色用としてはY2 O3 :Eu3+、Y2 SiO5 :Eu3+、Y3 Al5 O12:Eu3+、YVO4 :Eu3+、(Y,Gd)BO3 :Eu3+、Zn3 (PO4 )2 :Mnなど、緑色用としてはZn2 SiO4 :Mn、BaAl12O19:Mn、BaMgAl14O23:Mn、LaPO4 :(Ce,Tb)、Y3 (Al,Ga)5 O12:Tbなど、青色用としてはY2 SiO5 :Ce、BaMgAl10O17:Eu2+、BaMgAl14O23:Eu2+、(Ca,Sr,Ba)10(PO4 )6 Cl2 :Eu2+、(Zn,Cd)S:Agなどを挙げることができる。
PDP、LCD、有機EL素子などのカラーフィルター形成材料に使用される無機粒子は、赤色用としてはFe2 O3 など、緑色用としてはCr2 O3 など、青色用としてはCoO・Al2 O3 などを挙げることができる。
PDP、LCD、有機EL素子などのブラックストライプ(マトリックス)形成材料に使用される無機粒子としては、例えば、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Ni、Ti、Znなどの金属およびその酸化物、複合酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、けい化物、ほう化物やカーボンブラック、グラファイトなどを挙げることができ、単独であるいは二種以上を混合して使用することができる。この中で好ましい無機粒子としてはCo、Cr、Cu、Fe、Mn、NiおよびTiの群から選ばれた金属粒子、金属酸化物粒子および複合酸化物粒子が挙げられる。また、平均粒径としては、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.05〜5μmであり、特に好ましくは0.1〜2μmである。
【0018】
(B)アルカリ可溶性樹脂
無機粒子含有感光性組成物に使用されるアルカリ可溶性樹脂としては、種々の樹脂を用いることができる。ここに、「アルカリ可溶性」とは、アルカリ性の現像液によって溶解し、目的とする現像処理が遂行される程度に溶解性を有する性質をいう。
かかるアルカリ可溶性樹脂の具体例としては、例えば(メタ)アクリル系樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ノボラック樹脂、ポリエステル樹脂などを挙げることができる。
このようなアルカリ可溶性樹脂のうち、特に好ましいものとしては、下記のモノマー(イ)とモノマー(ハ)との共重合体、モノマー(イ)、モノマー(ロ)およびモノマー(ハ)の共重合体などのアクリル樹脂を挙げることができる。
【0019】
モノマー(イ):カルボキシル基含有モノマー類
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ケイ皮酸、コハク酸モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなど。
モノマー(ロ):OH含有モノマー類
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどの水酸基含有モノマー類;o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレンなどのフェノール性水酸基含有モノマー類など。
モノマー(ハ):その他の共重合可能なモノマー類
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、グリシジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなどのモノマー(イ)以外の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル系モノマー類;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン類;ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ベンジル等のポリマー鎖の一方の末端に(メタ)アクリロイル基などの重合性不飽和基を有するマクロモノマー類:
【0020】
上記モノマー(イ)とモノマー(ハ)との共重合体や、モノマー(イ)、モノマー(ロ)およびモノマー(ハ)の共重合体は、モノマー(イ)および/またはモノマー(ロ)のフェノール性水酸基含有モノマーに由来する共重合成分の存在により、アルカリ可溶性を有するものとなる。中でもモノマー(イ)、モノマー(ロ)およびモノマー(ハ)の共重合体は、(A)無機粒子の分散安定性や後述するアルカリ現像液への溶解性の観点から特に好ましい。この共重合体におけるモノマー(イ)に由来する共重合成分の含有率は、好ましくは1〜50質量%、特に好ましくは5〜30質量%であり、モノマー(ロ)に由来する共重合成分の含有率は、好ましくは1〜50質量%、特に好ましくは5〜30質量%である。また、モノマー(ロ)成分としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどの水酸基含有モノマー類が好ましい。
【0021】
無機粒子含有感光性組成物を構成するアルカリ可溶性樹脂の分子量としては、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、単に「重量平均分子量(Mw)」ともいう)として、5,000〜5,000,000であることが好ましく、さらに好ましくは10,000〜300,000とされる。
無機粒子含有感光性組成物におけるアルカリ可溶性樹脂の含有割合としては、無機粒子100質量部に対して、通常1〜500質量部とされ、好ましくは10〜200質量部とされる。なお、無機粒子含有感光性組成物中にアルカリ可溶性樹脂以外の樹脂を含有してもよい。
【0022】
(C)エチレン性不飽和基含有化合物
無機粒子含有感光性組成物を構成するエチレン性不飽和基含有化合物としては、エチレン性不飽和基を含有し、後述する光重合開始剤により、ラジカル重合反応し得る化合物である限り特に限定はされないが、通常、(メタ)アクリレート化合物が用いられる。
かかる(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類;両末端ヒドロキシポリブタジエン、両末端ヒドロキシポリイソプレン、両末端ヒドロキシポリカプロラクトンなどの両末端ヒドロキシル化重合体のジ(メタ)アクリレート類;
グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールアルカン、テトラメチロールアルカン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類;3価以上の多価アルコールのポリアルキレングリコール付加物のポリ(メタ)アクリレート類;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ベンゼンジオール類などの環式ポリオールのポリ(メタ)アクリレート類;ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、スピラン樹脂(メタ)アクリレート等のオリゴ(メタ)アクリレート類などを挙げることができる。なお、前述したアルカリ可溶性樹脂を構成するモノマー(イ)、(ロ)および(ハ)に示された化合物を使用してもよい。これらのうち、エチレン性不飽和基を2個以上含有する化合物が好ましく用いられる。
これらのエチレン性不飽和基含有化合物の分子量としては、特に限定されないが、通常、分子量が5,000以下である。
これらの(メタ)アクリレート化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができ、通常、前述のアルカリ可溶性樹脂100質量部に対して20〜500質量部、より好ましくは、40〜250質量部で用いられる。
【0023】
(D)光重合開始剤
本発明の無機粒子含有感光性組成物を構成する光重合開始剤は、400℃における重量減少が90%以上であることを特徴とする。すなわち、数種類の光重合開始剤を用いる場合には、光重合開始剤全量の400℃における重量減少が90%以上であればよい。当該光重合開始剤を含有することにより、精度の高いパターンを形成し、かつ熱分解性に優れた無機粒子含有感光性組成物を提供することができる。
ここに、「400℃における重量減少」とは、当該光重合開始剤を毎分10℃の昇温速度で熱重量分析を行った際の、
{1−(400℃における重量/50℃における重量)}×100(%)
により求められる値をいう。
この光重合開始剤としては、後述する露光工程においてラジカルを発生し、前述したエチレン性不飽和基含有化合物の重合反応を開始せしめる化合物である限り特に限定はされず、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができるが、好ましくは、400℃における重量減少が95%以上の化合物2種以上を混合して用いる。
【0024】
かかる光重合開始剤として、上記式(1)で表される化合物(以下、「光重合開始剤(1)」ともいう)および上記式(2)で表される化合物(以下、「光重合開始剤(2)」ともいう)を含む。上記式(1)におけるR1およびR2としては、炭素数1〜4のアルキル基、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。上記式(2)におけるR 3 、R 4 、R 5 およびR 6 は、エチル基である。
【0025】
本発明の無機粒子含有感光性組成物には、光重合開始剤(1)と光重合開始剤(2)がともに含有される。光重合開始剤(1)と光重合開始剤(2)がともに含有されることにより、それぞれ単独で含有される場合に比べて露光時における感度が上昇し、良好なパターン形状を得ることができる。光重合開始剤(1)と光重合開始剤(2)との含有比率としては、光重合開始剤(2)が、質量換算で光重合開始剤(1)を超えない範囲で含有されることが好ましく、特に好ましい含有比率は、光重合開始剤(1):光重合開始剤(2)が50:50〜95:5である。
【0026】
その他の光重合開始剤としては、2,4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系光重合開始剤などが挙げられる。
さらに、本発明の無機粒子含有感光性組成物には、増感剤、増感助剤、水素供与体および連鎖移動剤などが併用されていてもよい。
光重合開始剤の含有割合としては、前記アルカリ可溶性樹脂とエチレン性不飽和基含有化合物の合計量100質量部に対して、通常、0.1〜100質量部とされ、好ましくは1〜50質量部である。
【0027】
(E)溶剤
無機粒子含有感光性組成物には、通常、溶剤が含有される。上記溶剤としては、(A)無機粒子との親和性、およびその他の有機成分の溶解性が良好で、無機粒子含有感光性組成物に適度な粘性を付与することができ、乾燥されることによって容易に蒸発除去できるものであることが好ましい。
かかる溶剤の具体例としては、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;n−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系アルコール類;酢酸−n−ブチル、酢酸アミルなどの飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類;乳酸エチル、乳酸−n−ブチルなどの乳酸エステル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのエーテル系エステル類などを例示することができ、これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
無機粒子含有感光性組成物における溶剤の含有割合としては、良好な無機粒子含有感光性樹脂層形成性能(流動性または可塑性)が得られる範囲内において適宜選択することができるが、通常、(A)無機粒子100質量部に対して、1〜10,000質量部であり、好ましくは10〜1,000質量部とされる。
【0028】
(F)各種添加剤
無機粒子含有感光性組成物には、上記(A)〜(E)の成分のほかに、可塑剤、接着助剤、分散剤、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、現像促進剤などの各種添加剤が任意成分として含有されていてもよい。
▲1▼可塑剤
可塑剤は、形成される無機粒子含有感光性樹脂層に良好な可撓性と燃焼性とを発現させるために添加される。具体的には、下記式(3)または(4)で表される化合物が、熱により容易に分解除去され、得られる各種部材の性能に悪影響を及ぼさないため、好ましく用いられる。
【0029】
【化5】
【0030】
(式中、R7 およびR10は、それぞれ、同一または異なる炭素数1〜30のアルキル基を示し、R8 およびR9 は、それぞれ、同一または異なるメチレン基または炭素数2〜30のアルキレン基を示し、sは0〜5の数であり、tは1〜10の数である。)
【0031】
【化6】
【0032】
(式中、R11は炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基を示す。)
【0033】
上記式(3)において、R7 またはR10で示されるアルキル基、並びにR8 またはR9 で示されるアルキレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、また、飽和基であっても不飽和基であってもよい。R7 またはR10で示されるアルキル基の炭素数は、1〜30とされ、好ましくは2〜20、さらに好ましくは4〜10とされる。当該アルキル基の炭素数が30を超える場合には、溶剤に対する可塑剤の溶解性が低下し、フィルムの良好な可撓性が得られない場合がある。
【0034】
上記式(3)で示される化合物の具体例としては、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジブチルセバケート、ジブチルジグリコールアジペートなどが挙げられる。好ましくは、nが2〜6で表される化合物である。
【0035】
上記式(4)において、R11で示されるアルキル基およびアルケニル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、また、飽和基であっても不飽和基であってもよい。R11で示されるアルキル基またはアルケニル基の炭素数は、1〜30とされ、好ましくは2〜20、さらに好ましくは10〜18とされる。
上記式(4)で示される化合物の具体例としては、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールモノオレートなどが挙げられる。
【0036】
無機粒子含有感光性組成物における可塑剤の含有割合としては、無機粒子100重量部に対して、0.1〜20重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜10重量部とされる。
【0037】
▲2▼接着助剤
接着助剤としては、下記式(5)で表される化合物などのシランカップリング剤〔飽和アルキル基含有(アルキル)アルコキシシラン〕が好適に用いられる。
【0038】
【化7】
【0039】
(式中、pは3〜20の整数、mは1〜3の整数、nは1〜3の整数、aは1〜3の整数である。)
【0040】
上記式(5)において、飽和アルキル基の炭素数を示すpは3〜20の整数とされ、好ましくは4〜16の整数とされる。
【0041】
上記式(5)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、n−プロピルジメチルメトキシシラン、n−ブチルジメチルメトキシシラン、n−デシルジメチルメトキシシラン、n−ヘキサデシルジメチルメトキシシラン、n−イコサンジメチルメトキシシランなどの飽和アルキルジメチルメトキシシラン類(a=1,m=1,n=1);
n−プロピルジエチルメトキシシラン、n−ブチルジエチルメトキシシラン、n−デシルジエチルメトキシシラン、n−ヘキサデシルジエチルメトキシシラン、n−イコサンジエチルメトキシシランなどの飽和アルキルジエチルメトキシシラン類(a=1,m=1,n=2);
n−ブチルジプロピルメトキシシラン、n−デシルジプロピルメトキシシラン、n−ヘキサデシルジプロピルメトキシシラン、n−イコサンジプロピルメトキシシランなどの飽和アルキルジプロピルメトキシシラン類(a=1,m=1,n=3);
n−プロピルジメチルエトキシシラン、n−ブチルジメチルエトキシシラン、n−デシルジメチルエトキシシラン、n−ヘキサデシルジメチルエトキシシラン、n−イコサンジメチルエトキシシランなどの飽和アルキルジメチルエトキシシラン類(a=1,m=2,n=1);
n−プロピルジエチルエトキシシラン、n−ブチルジエチルエトキシシラン、n−デシルジエチルエトキシシラン、n−ヘキサデシルジエチルエトキシシラン、n−イコサンジエチルエトキシシランなどの飽和アルキルジエチルエトキシシラン類(a=1,m=2,n=2);
n−ブチルジプロピルエトキシシラン、n−デシルジプロピルエトキシシラン、n−ヘキサデシルジプロピルエトキシシラン、n−イコサンジプロピルエトキシシランなどの飽和アルキルジプロピルエトキシシラン類(a=1,m=2,n=3);
n−プロピルジメチルプロポキシシラン、n−ブチルジメチルプロポキシシラン、n−デシルジメチルプロポキシシラン、n−ヘキサデシルジメチルプロポキシシラン、n−イコサンジメチルプロポキシシランなどの飽和アルキルジメチルプロポキシシラン類(a=1,m=3,n=1);
n−プロピルジエチルプロポキシシラン、n−ブチルジエチルプロポキシシラン、n−デシルジエチルプロポキシシラン、n−ヘキサデシルジエチルプロポキシシラン、n−イコサンジエチルプロポキシシランなどの飽和アルキルジエチルプロポキシシラン類(a=1,m=3,n=2);
n−ブチルジプロピルプロポキシシラン、n−デシルジプロピルプロポキシシラン、n−ヘキサデシルジプロピルプロポキシシラン、n−イコサンジプロピルプロポキシシランなどの飽和アルキルジプロピルプロポキシシラン類(a=1,m=3,n=3);
【0042】
n−プロピルメチルジメトキシシラン、n−ブチルメチルジメトキシシラン、n−デシルメチルジメトキシシラン、n−ヘキサデシルメチルジメトキシシラン、n−イコサンメチルジメトキシシランなどの飽和アルキルメチルジメトキシシラン類(a=2,m=1,n=1);
n−プロピルエチルジメトキシシラン、n−ブチルエチルジメトキシシラン、n−デシルエチルジメトキシシラン、n−ヘキサデシルエチルジメトキシシラン、n−イコサンエチルジメトキシシランなどの飽和アルキルエチルジメトキシシラン類(a=2,m=1,n=2);
n−ブチルプロピルジメトキシシラン、n−デシルプロピルジメトキシシラン、n−ヘキサデシルプロピルジメトキシシラン、n−イコサンプロピルジメトキシシランなどの飽和アルキルプロピルジメトキシシラン類(a=2,m=1,n=3)
n−プロピルメチルジエトキシシラン、n−ブチルメチルジエトキシシラン、n−デシルメチルジエトキシシラン、n−ヘキサデシルメチルジエトキシシラン、n−イコサンメチルジエトキシシランなどの飽和アルキルメチルジエトキシシラン類(a=2,m=2,n=1);
n−プロピルエチルジエトキシシラン、n−ブチルエチルジエトキシシラン、n−デシルエチルジエトキシシラン、n−ヘキサデシルエチルジエトキシシラン、n−イコサンエチルジエトキシシランなどの飽和アルキルエチルジエトキシシラン類(a=2,m=2,n=2);
n−ブチルプロピルジエトキシシラン、n−デシルプロピルジエトキシシラン、n−ヘキサデシルプロピルジエトキシシラン、n−イコサンプロピルジエトキシシランなどの飽和アルキルプロピルジエトキシシラン類(a=2,m=2,n=3);
n−プロピルメチルジプロポキシシラン、n−ブチルメチルジプロポキシシラン、n−デシルメチルジプロポキシシラン、n−ヘキサデシルメチルジプロポキシシラン、n−イコサンメチルジプロポキシシランなどの飽和アルキルメチルジプロポキシシラン類 (a=2,m=3,n=1);
n−プロピルエチルジプロポキシシラン、n−ブチルエチルジプロポキシシラン、n−デシルエチルジプロポキシシラン、n−ヘキサデシルエチルジプロポキシシラン、n−イコサンエチルジプロポキシシランなどの飽和アルキルエチルジプロポキシシラン類 (a=2,m=3,n=2);
n−ブチルプロピルジプロポキシシラン、n−デシルプロピルジプロポキシシラン、n−ヘキサデシルプロピルジプロポキシシラン、n−イコサンプロピルジプロポキシシランなどの飽和アルキルプロピルジプロポキシシラン類(a=2,m=3,n=3);
【0043】
n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−イコサントリメトキシシランなどの飽和アルキルトリメトキシシラン類(a=3,m=1);
n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−イコサントリエトキシシランなどの飽和アルキルトリエトキシシラン類(a=3,m=2);
n−プロピルトリプロポキシシラン、n−ブチルトリプロポキシシラン、n−デシルトリプロポキシシラン、n−ヘキサデシルトリプロポキシシラン、n−イコサントリプロポキシシランなどの飽和アルキルトリプロポキシシラン類(a=3,m=3)などを挙げることができ、これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
これらのうち、n−ブチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−デシルジメチルメトキシシラン、n−ヘキサデシルジメチルメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−デシルエチルジエトキシシラン、n−ヘキサデシルエチルジエトキシシラン、n−ブチルトリプロポキシシラン、n−デシルトリプロポキシシラン、n−ヘキサデシルトリプロポキシシランなどが特に好ましい。
【0045】
無機粒子含有感光性組成物における接着助剤の含有割合としては、無機粒子100重量部に対して、0.001〜10重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.001〜5重量部とされる。
【0046】
▲3▼分散剤
無機粒子の分散剤としては、脂肪酸が好ましく用いられる。特に、炭素数8〜30の脂肪酸が好ましい。上記脂肪酸の好ましい具体例としては、オクタン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデカン酸、ステアリン酸、アラキン酸等の飽和脂肪酸;エライジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸を挙げることができ、これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
無機粒子含有感光性組成物における分散剤の含有割合としては、無機粒子100重量部に対して、0.01〜20重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜10重量部とされる。
本発明の無機粒子含有感光性組成物は、通常、(A)無機粒子、(B)アルカリ可溶性樹脂、(C)特定メタクリレート化合物、(D)光重合開始剤、(E)溶剤および必要に応じて(F)各種添加剤を、ロール混練機、ミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミルなどの混練機を用いて混練することにより調製することができる。
上記のようにして調製される無機粒子含有感光性組成物は、塗布に適した流動性を有するペースト状の組成物であり、その粘度は、通常10〜100,000mPa・s-1とされ、好ましくは50〜10,000mPa・s-1、より好ましくは100〜5,000mPa・s-1とされる。
本発明の組成物は、以下に詳述する本発明の感光性フィルムを製造するために特に好適に使用することができる。
【0048】
<感光性フィルム>
本発明の感光性フィルムは、通常、支持フィルムと、当該支持フィルム上に形成された無機粒子含有感光性樹脂層とを有してなり、当該無機粒子含有感光性樹脂層の表面に保護フィルムが設けられていてもよい。
【0049】
本発明の感光性フィルムを構成する支持フィルムは、耐熱性および耐溶剤性を有すると共に可撓性を有する樹脂フィルムであることが好ましい。支持フィルムが可撓性を有することにより、ロールコータ等によってペースト状組成物を塗布することによって無機粒子含有感光性樹脂層を形成することができ、感光性フィルムをロール状に巻回した状態で保存し、供給することができる。支持フィルムを形成する樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリフロロエチレンなどの含フッ素樹脂、ナイロン、セルロースなどを挙げることができる。支持フィルムの厚さとしては、例えば20〜100μmとされる。
支持フィルムの表面には離型処理が施されていてもよい。これにより、後述のパターンの形成工程において、支持フィルムの剥離操作を容易に行うことができる。
なお、保護フィルムについても、支持フィルムと同様のものを用いることができる。また、保護フィルムの表面には好ましくは離型処理が施され、保護フィルム/無機粒子含有感光性樹脂層間の剥離強度が、支持フィルム/無機粒子含有感光性樹脂層間の剥離強度よりも小さいことが必要である。
本発明のフィルムは、本発明の無機粒子含有感光性組成物を支持フィルム上に塗布し、塗膜を乾燥して溶剤の一部又は全部を除去して無機粒子含有感光性樹脂層を形成し、通常、当該無機粒子含有感光性樹脂層上に保護フィルムを設ける(圧着する)ことにより製造することができる。
【0050】
無機粒子含有感光性組成物を支持フィルム上に塗布し、無機粒子含有感光性樹脂層を得る方法としては、膜厚の均一性に優れた膜厚の大きい(例えば1μm以上)塗膜を効率よく形成することができるものであることが好ましく、具体的には、ロールコーターによる塗布方法、ブレードコーターによる塗布方法、スリットコーターによる塗布方法、カーテンコーターによる塗布方法、ワイヤーコーターによる塗布方法などを好ましいものとして挙げることができる。
塗膜の乾燥条件としては、50〜150℃で0.5〜30分間程度とされ、乾燥後における溶剤の残存割合(無機粒子含有感光性樹脂層中の含有率)は、通常、2質量%以下とされる。
上記のようにして支持フィルム上に形成される無機粒子含有感光性樹脂層の膜厚としては、無機粒子の含有率、部材の種類やサイズなどにより、適宜選択することができる。
【0051】
<部材の形成方法>
本発明の無機粒子含有感光性組成物および感光性フィルムは、プラズマディスプレイパネルの各表示セルを構成する誘電体、電極、抵抗体、蛍光体、隔壁、カラーフィルターおよびブラックマトリクスの形成において、有機成分の熱分解性に優れ、精度の高いパターンを形成するために好適に使用することができる。
本発明の感光性フィルムを用いた部材の形成方法においては、通常、少なくとも〔1〕無機粒子含有感光性樹脂層の転写工程、〔2〕無機粒子含有感光性樹脂層の露光工程、〔3〕無機粒子含有感光性樹脂層の現像工程および〔4〕無機粒子含有感光性樹脂層パターンの焼成工程の各工程を有する。
【0052】
〔1〕無機粒子含有感光性樹脂層の転写工程
転写工程では、本発明の感光性フィルムを使用し、当該感光性フィルムを構成する無機粒子含有感光性樹脂層を基板上に転写する。
基板材料としては、例えばガラス、シリコーン、アルミナなどからなる板状部材が用いられ、PDP用にはガラス基板が用いられる。この板状部材の表面に予め所望のパターンを形成したものを用いても差し支えない。基板表面に対しては、必要に応じて、シランカップリング剤などによる薬品処理;プラズマ処理;イオンプレーティング法、スパッタリング法、気相反応法、真空蒸着法などによる薄膜形成処理のような適宜の前処理を施していてもよい。
転写工程の一例を示せば以下のとおりである。必要に応じて設けられる感光性フィルムの保護フィルムを剥離した後、基板上に、無機粒子含有感光性樹脂層の表面が当接されるように感光性フィルムを重ね合わせ、この感光性フィルムを加熱ローラなどにより熱圧着する。これにより、基板上に無機粒子含有感光性樹脂層が転写されて密着した状態となる。ここで、転写条件としては、例えば、加熱ローラの表面温度が20〜140℃、加熱ローラによるロール圧が1〜5kg/cm2 、加熱ローラの移動速度が0.1〜10.0m/分を示すことができる。また、基板は予熱されていてもよく、予熱温度としては例えば40〜100℃とすることができる。
また、本発明の感光性フィルムから形成された無機粒子含有感光性樹脂層の上に、無機粒子を含有しない、感光性樹脂層(レジスト層)がさらに設けられても良い。この感光性樹脂層は、通常、後述する現像工程・焼成工程においてパターン上から消失する。
【0053】
〔2〕無機粒子含有感光性樹脂層の露光工程
露光工程においては、無機粒子含有感光性樹脂層の表面に、露光用マスクを介して、放射線を選択的照射(露光)して、無機粒子含有感光性樹脂層のパターンの潜像を形成する。なお、無機粒子含有感光性樹脂層上の支持フィルムは露光工程の前に剥離除去してもよく、また、露光工程の後、後述する現像工程の前に剥離除去してもよい。感度上昇の観点から、無機粒子含有感光性樹脂層上の支持フィルムは露光工程の後、後述する現像工程の前に剥離除去することが好ましい。また、前述したレジスト層を設ける場合には、レジスト層の表面に露光用マスクを介して放射線を照射する。
露光工程において放射線を選択的照射(露光)される放射線としては、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線あるいはX線等を含むものであり、好ましくは可視光線、紫外線および遠紫外線が用いられ、さらに好ましくは紫外線が用いられる。
露光用マスクの露光パターンは目的によって異なるが、例えば、10〜500μm幅のストライプが用いられる。
放射線照射装置としては、フォトリソグラフィー法で使用されている紫外線照射装置、半導体および液晶表示装置を製造する際に使用されている露光装置など特に限定されるものではない。
【0054】
〔3〕無機粒子含有感光性樹脂層の現像工程
現像工程においては、露光された無機粒子含有感光性樹脂層を現像処理することにより、無機粒子含有感光性樹脂層のパターン(潜像)を顕在化させる。
無機粒子含有感光性樹脂層の現像工程で使用される現像液としては、アルカリ現像液を使用することができる。これにより、無機粒子含有感光性樹脂層に含有されるアルカリ可溶性樹脂を容易に溶解除去することができる。
なお、無機粒子含有感光性樹脂層に含有される無機粒子は、アルカリ可溶性樹脂により均一に分散されているため、バインダーであるアルカリ可溶性樹脂を溶解させ、洗浄することにより、無機粒子も同時に除去される。
アルカリ現像液の有効成分としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、アンモニアなどの無機アルカリ性化合物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エタノールアミンなどの有機アルカリ性化合物などを挙げることができる。
無機粒子含有感光性樹脂層の現像工程で使用されるアルカリ現像液は、前記アルカリ性化合物の1種または2種以上を水などに溶解させることにより調製することができる。ここに、アルカリ性現像液におけるアルカリ性化合物の濃度は、通常0.001〜10質量%とされ、好ましくは0.01〜5質量%とされる。アルカリ現像液には、ノニオン系界面活性剤や有機溶剤などの添加剤が含有されていてもよい。なお、アルカリ現像液による現像処理がなされた後は、通常、水洗処理が施される。また、必要に応じて現像処理後に無機粒子含有感光性樹脂層パターン側面および基板露出部に残存する不要分を擦り取る工程を含んでもよい。
ここに、現像処理条件としては、現像液の種類・組成・濃度、現像時間、現像温度、現像方法(例えば浸漬法、揺動法、シャワー法、スプレー法、パドル法)、現像装置などを適宜選択することができる。
この現像工程により、無機粒子含有感光性樹脂層残留部と、無機粒子含有感光性樹脂層除去部とから構成される無機粒子含有感光性樹脂層パターン(露光用マスクに対応するパターン)が形成される。
【0055】
〔4〕無機粒子含有感光性樹脂層パターンの焼成工程
この工程においては、無機粒子含有感光性樹脂層パターンを焼成処理して、部材を形成する。これにより、無機粒子含有感光性樹脂層残留部中の有機物質が焼失して、基板の表面に部材を得ることができる。
ここに、焼成処理の温度としては、樹脂層残留部中の有機物質が焼失される温度であることが必要であり、通常、大気中、400〜600℃とされる。また、焼成時間は、通常10〜90分間とされる。
なお、無機粒子含有感光性樹脂層パターンの焼成工程は、製造効率向上の観点から、目的とする部材の性能を著しく損なわない限り、他の部材の焼成工程と同時に行われることが好ましい。
【0056】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、以下において「部」は「質量部」を示す。
また、重量平均分子量(Mw)は、東ソー株式会社製ゲルパーミィエーションクロマトグラフィー(GPC)(商品名HLC−802A)により測定したポリスチレン換算の平均分子量である。
【0057】
<実施例1>
(1)無機粒子含有感光性組成物の調製:
(A)無機粒子として、平均粒径0.5μmのCr−Cu複合酸化物粒子(粒状)60部、平均粒径1μmのPbO−B2 O3 −SiO2系低融点ガラスフリット(不定形、軟化点500℃)40部、(B)アルカリ可溶性樹脂として、メタクリル酸n−ブチル/メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル/メタクリル酸=60/20/20(質量%)共重合体(Mw=100,000)40部、(C)エチレン性不飽和基含有化合物として、トリメチロールプロパントリアクリレート40部、(D)光重合開始剤として、2−メチル−〔4’−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン(400℃における重量減少97%)5部、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン(400℃における重量減少96%)5部(E)溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150部および(F)分散剤として、オレイン酸1部をビーズミルで混練りした後、ステンレスメッシュ(500メッシュ、25μm径)でフィルタリングすることにより、無機粒子含有感光性組成物を調製した。なお、当該無機粒子含有感光性組成物中の(D)光重合開始剤全量の400℃における重量減少は97%であった。
【0058】
(2)感光性フィルムの作製:
下記(イ)、(ロ)の操作により、支持フィルム、無機粒子含有感光性樹脂層、保護フィルムが順に積層されてなる本発明の無機粒子含有フィルムを作製した。
(イ)無機粒子含有感光性組成物をPETフィルムよりなる支持フィルム(幅200mm、長さ30m、厚さ38μm)上にブレードコーターを用いて塗布し、塗膜を100℃で5分間乾燥して溶剤を完全に除去し、平均膜厚15μmの無機粒子含有感光性樹脂層を支持フィルム上に形成した。
(ロ)上記(イ)で形成した無機粒子含有感光性樹脂層上に予め離型処理したPETフィルムよりなる保護フィルムを熱圧着し、支持フィルム、無機粒子含有感光性樹脂層、保護フィルムが順に積層された感光性フィルムを作製した。
【0059】
(3)部材の形成
無機粒子含有感光性樹脂層の転写工程:
感光性フィルムより保護フィルムを剥離除去した後、6インチパネル用のガラス基板の表面に、無機粒子含有感光性樹脂層の表面が当接されるよう感光性フィルムを重ね合わせ、この感光性フィルムを加熱ローラにより熱圧着した。ここで、圧着条件としては、加熱ローラの表面温度を120℃、ロール圧を4kg/cm2 、加熱ローラの移動速度を0.5m/分とした。これにより、ガラス基板の表面に無機粒子含有感光性樹脂層が転写されて密着した状態となった。
【0060】
無機粒子含有感光性樹脂層の露光工程・現像工程:
無機粒子含有感光性樹脂層に対して、露光用マスク(400μm幅のストライプパターン)を介して、超高圧水銀灯により、i線(波長365nmの紫外線)を照射した。ここに、照射量は400mJ/cm2とした。
露光工程の終了後、無機粒子含有感光性樹脂層より支持フィルムを剥離除去した後、露光処理された無機粒子含有感光性樹脂層に対して、0.4質量%の炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を現像液とするシャワー法による現像処理を1分かけて行った。次いで超純水による水洗処理を行い、これにより、紫外線が照射されていない未硬化の無機粒子含有感光性樹脂層を除去し、無機粒子含有感光性樹脂層パターンを形成した。
【0061】
誘電体ペーストの印刷工程:
無機粒子含有感光性樹脂パターンが形成されたガラス基板上に、誘電体ペースト(旭硝子株式会社製YPT030)をスクリーン印刷した後、100℃で5分間乾燥を行い、平均膜厚30μmの誘電体ペースト膜を形成した。
【0062】
無機粒子含有感光性樹脂層パターンおよび誘電体ペースト膜の焼成工程:
無機粒子含有感光性樹脂層パターン上に誘電体ペースト膜が形成されたガラス基板を焼成炉内で580℃の温度雰囲気下で30分間にわたり焼成処理を行った。これにより、ガラス基板の表面にブラックマトリックスパターンおよび誘電体層が形成されてなるパネル材料が得られた。
得られたパネル材料におけるブラックマトリックスパターン上の誘電体層について、光学顕微鏡観察を行ったところ、誘電体層に直径20μm以上の気泡、ピンホール等は観測されなかった。
【0063】
<実施例2>
(A)無機粒子として、Ag粒子(粒状)95部、平均粒径3μmのBi2 O3 −ZnO−B2 O3 −SiO2 −Al2 O3 系低融点ガラスフリット(不定形、軟化点520℃)5部、(D)光重合開始剤として、2−メチル−〔4’−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン(400℃における重量減少97%)7部、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン(400℃における重量減少96%)3部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、無機粒子含有感光性組成物を調製した。なお、当該無機粒子含有感光性組成物中の(D)光重合開始剤全量の400℃における重量減少は97%であった。当該無機粒子含有感光性組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、感光性フィルムを作製した。当該感光性フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、無機粒子含有感光性樹脂層の転写工程および無機粒子含有感光性樹脂層の露光工程・現像工程を行い、無機粒子含有感光性樹脂層パターンを形成した。
次いで、実施例1と同様にして、誘電体ペーストの印刷工程ならびに無機粒子含有感光性樹脂層パターンおよび誘電体ペースト膜の焼成工程を行い、これにより、ガラス基板の表面に電極パターンおよび誘電体層が形成されてなるパネル材料が得られた。
得られたパネル材料における電極パターン上の誘電体層について、光学顕微鏡観察を行ったところ、誘電体層に直径20μm以上の気泡、ピンホール等は観測されなかった。
【0064】
<比較例1>
(D)光重合開始剤として、2−メチル−〔4’−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン(400℃における重量減少97%)5部、2,4−ジエチルチオキサントン(400℃における重量減少93%)5部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、無機粒子含有感光性組成物を調製した。なお、当該無機粒子含有感光性組成物中の(D)光重合開始剤全量の400℃における重量減少は95%であった。当該無機粒子含有感光性組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、感光性フィルムを作製した。当該感光性フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、無機粒子含有感光性樹脂層の転写工程および無機粒子含有感光性樹脂層の露光工程・現像工程を行い、無機粒子含有感光性樹脂層パターンを形成した。次いで、実施例1と同様にして、誘電体ペーストの印刷工程ならびに無機粒子含有感光性樹脂層パターンおよび誘電体ペースト膜の焼成工程を行い、これにより、ガラス基板の表面にブラックマトリックスパターンおよび誘電体層が形成されてなるパネル材料が得られた。得られたパネル材料におけるブラックマトリックスパターン上の誘電体層について、光学顕微鏡観察を行ったところ、誘電体層に直径20μm以上の気泡が少数観測されたが、使用に問題ないレベルのパターン精度を有していた。
【0065】
<比較例2>
(D)光重合開始剤として、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル
1,2’−ビイミダゾール(400℃における重量減少22%)5部、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン(400℃における重量減少96%)5部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、無機粒子含有感光性組成物を調製した。なお、当該無機粒子含有感光性組成物中の(D)光重合開始剤全量の400℃における重量減少は59%であった。当該無機粒子含有感光性組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、感光性フィルムを作製した。当該感光性フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、無機粒子含有感光性樹脂層の転写工程および無機粒子含有感光性樹脂層の露光工程・現像工程を行い、無機粒子含有感光性樹脂層パターンを形成した。次いで、実施例1と同様にして、誘電体ペーストの印刷工程ならびに無機粒子含有感光性樹脂層パターンおよび誘電体ペースト膜の焼成工程を行い、これにより、ガラス基板の表面にブラックマトリックスパターンおよび誘電体層が形成されてなるパネル材料が得られた。得られたパネル材料におけるブラックマトリックスパターン上の誘電体層について、光学顕微鏡観察を行ったところ、誘電体層に直径50μm以上のピンホールが多数観測された。
【0066】
<比較例3>
(D)光重合開始剤として、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(400℃における重量減少85%)10部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、無機粒子含有感光性組成物を調製した。当該無機粒子含有感光性組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、感光性フィルムを作製した。当該感光性フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、無機粒子含有感光性樹脂層の転写工程および無機粒子含有感光性樹脂層の露光工程・現像工程を行い、無機粒子含有感光性樹脂層パターンを形成した。次いで、実施例1と同様にして、誘電体ペーストの印刷工程ならびに無機粒子含有感光性樹脂層パターンおよび誘電体ペースト膜の焼成工程を行い、これにより、ガラス基板の表面にブラックマトリックスパターンおよび誘電体層が形成されてなるパネル材料が得られた。得られたパネル材料におけるブラックマトリックスパターン上の誘電体層について、光学顕微鏡観察を行ったところ、誘電体層に直径20μm以上の気泡が多数観測された。
【0067】
【発明の効果】
本発明の無機粒子含有感光性組成物および感光性フィルムによれば、有機成分の熱分解性に優れ、かつ精度の高いパターンを形成することができる。本発明の無機粒子含有感光性組成物および感光性フィルムは、プラズマディスプレイパネルの各表示セルを構成する誘電体、電極、抵抗体、蛍光体、隔壁、カラーフィルターおよびブラックマトリクス形成のために好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 交流型のプラズマディスプレイパネルの断面形状を示す模式図。
【符号の説明】
1 ガラス基板(前面基板) 2 ガラス基板(背面基板)
3 隔壁 4 透明電極
5 バス電極 6 アドレス電極
7 蛍光体 8 誘電体層(前面基板)
9 誘電体層(背面基板) 10 保護膜
Claims (4)
- 上記式(1)で表される化合物および上記式(2)で表される化合物の質量換算における含有比率(上記式(1)で表される化合物:上記式(2)で表される化合物)が50:50〜95:5であることを特徴とする、請求項1記載の無機粒子含有感光性組成物。
- 前記無機粒子は、ガラスフリット、金属粒子、酸化金属粒子から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1乃至請求項2記載の無機粒子含有感光性組成物。
- 請求項1乃至請求項3記載の無機粒子含有感光性組成物から得られる無機粒子含有感光性樹脂層を含有することを特徴とする、感光性フィルム。
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