JP4366728B2 - 活性エネルギー線を用いる表面処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、プラスチックなどの基材の表面を改質するための活性エネルギー線を用いる表面処理方法に関する。更に詳細には、酸素によるラジカル重合性単量体の重合阻害を防止するために従来行われている窒素などの不活性ガスによる重合雰囲気の置換や活性エネルギー線を透過する透明材での被覆が不用であり、ラジカル重合性単量体のグラフト化量が多く、活性エネルギー線照射により副生する単独重合体の洗浄が容易であり、曲面の基材への処理が容易であり、また優れた外観の処理面を得ることができる活性エネルギー線を用いる表面処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
固体物質の表面に親水性、親油性、撥水性、撥油性、印刷性、塗装性、接着性、帯電防止性、防曇性、防汚性などの性質を付与する処理方法の1つとして光グラフト重合が知られている。
例えば、基材上に形成された光開始基を有する疎水性重合体の層上に、親水性単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種を接触させて活性エネルギー線を照射する防曇膜の製造方法が開示されている(特開平10−45927号公報)。
またポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンなどの高分子化合物をラジカル重合性化合物の水溶液に添加して液粘度を増加させたものを高分子フィルム、例えばポリ塩化ビニルフィルムの片面に塗布し、次にフィルムの他方の面より回転する円筒状の光源から活性エネルギー線を照射することにより前記高分子フィルムから水素を引き抜いてグラフト化する該高分子フィルムの改質方法が開示されている(特開昭54−74870号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記特開平10−45927号公報に記載の方法では、粘度が低いため薄膜しか形成できず、十分な性能を得るためには、照射する雰囲気を窒素置換などにより酸素を除去することが必要であった。
また、特開昭54−74870号公報に記載の方法では、光照射により単量体のグラフト化重合が進行するが、基材となる高分子フィルムを幹にしてグラフト化するためグラフト化量が不十分である。
また光照射により単量体水溶液全体が増粘ゲル化するために、副生する単独重合体の洗浄が困難となり、その結果として洗浄にむらができて処理面が外観不良となる。
また、単量体水溶液が高粘度であるために、熱等の原因で少量のラジカルが発生した場合に、ラジカル重合の自動加速効果により液全体が増粘・ゲル化して使用不能となり易い。このために、室温で比較的長期間(1週間以上)保存した後の単量体水溶液の使用が困難となることがあった。
【0004】
さらには、この方法では単量体溶液を基材に塗布する方法としては流し塗りやバーコーター等で塗布することができるものの、スプレーで塗布した場合には溶液が微粒化せずに、いわゆる糸引き状態となり作業が困難となる。そのために、塗布する基材が平面板に限定されるという問題点があった。
この発明は、上記のような従来技術に存在する問題に着目してなされたものである。その目的とするところは、重合前において、ラジカル重合性単量体を含む組成物のスプレー塗布が可能であり、かつラジカル重合性単量体を含む組成物の経日安定性にも優れていること、そして重合の際において、窒素などの不活性ガスによる重合雰囲気の置換や活性エネルギー線を透過する透明材での被覆が不用であり、かつ曲面の基材への処理が容易であること、更には重合した塗膜において、ラジカル重合性単量体のグラフト化量が多く、活性エネルギー線照射により副生する単独重合体の洗浄が容易であり、また優れた外観の処理面を得ることができる活性エネルギー線を用いる表面処理方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前述の欠点を解決する方法を求めて鋭意研究した結果、本発明を完成した。即ち、第1の発明の活性エネルギー線を用いる表面処理方法は、基材に光重合開始基含有化合物ないし光重合開始基含有重合体を含む層を形成し、その層上にラジカル重合性単量体を含む組成物を接触させ、その組成物に活性エネルギー線を照射する表面処理方法において、ラジカル重合性単量体として親水性単量体を含む組成物がグリセリン又は重合度2〜22のポリグリセリンを組成物中1〜50重量%含有することを特徴とするものである。
【0006】
【化3】
(式中、nは0〜20、R1 は水素原子、R 2は水素原子、または
【0007】
【化4】
(R1 は水素原子)である。)
第2の発明の活性エネルギー線を用いる表面処理方法は、第1の発明において、上記ラジカル重合性単量体を含む組成物の25℃における粘度が5〜1000cpsである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
この発明の活性エネルギー線を用いる表面処理方法は、基材上に形成された光重合開始基含有化合物ないし光重合開始基含有重合体を含む下層の上に、粘性付与物質を含有させたラジカル重合性単量体を含む組成物である上層を接触させて活性エネルギー線を照射することにより実施され、最終的に得られる膜は二層構造となる。
即ち、基材上に形成される層に含まれる光重合開始基含有化合物は活性エネルギー線照射によりラジカルを発生し、それが層を形成する化合物から水素を引き抜いて発生したラジカルを出発点としてラジカル重合性単量体をグラフト共重合することにより、また層中に含まれるラジカル重合性単量体と上記ラジカル重合性単量体を含む組成物中のラジカル重合性単量体とのグラフト共重合体を生成することにより基材を表面処理するものである。
さらには、層に光重合開始基含有重合体を含ませた場合には光重合開始剤断片を出発点としてラジカル重合性単量体をグラフト共重合することにより基材を表面処理するものである。
【0009】
活性エネルギー線を用いる表面処理方法において、上層にはラジカル重合性単量体を含む組成物(以下、組成物ロと略記する。)が塗布されるが、そこで用いられる各成分について説明する。前記粘性付与物質とは、ラジカル重合性単量体を溶解できる溶剤と任意に混合することが可能な下記(カ)の親水性の化合物である。
(ア)下記(I)〜(XIII)の疎水性単官能ラジカル重合性単量体、1)〜15)の親水性単官能ラジカル重合性単量体、(a)〜(g)の多官能ラジカル重合性単量体からなる群から選ばれる1種以上の単量体から形成される単独重合体または共重合体。
【0010】
(I)メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ヒドロキシエチルなどの炭素数が1〜22のアルキル基を持つ(メタ)アクリル酸エステル。
(II)フマル酸ジメチル、フマル酸メチルエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸ジイソプロピル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸モノイソプロピル、イタコン酸ブチルエチルなどの不飽和ジカルボン酸エステル。
(III)スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレンなどのスチレン誘導体。
(IV)酢酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル。
(V)N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのN−置換マレイミド。
(VI)メチルビニルケトン、ブチルビニルケトンなどの不飽和ケトン。
(VII)メチルビニルエーテル、アリルビニルエーテルなどのビニルエーテル。
(VIII)アリルフェニルエーテル、アリルメチルエーテル、プロピオン酸アリルなどのアリル化合物。
(IX)ポリスチレン系、ポリメチルメタクリレート系、ポリブチルアクリレート系、シリコーン系などのメタクリロイル基を有するマクロモノマー(例えば、東亜合成(株)製の商品名:AS−6、AN−6、AA−6、AB−6、AK−5が挙げられる。)。
(X)下記構造に代表されるフッ素含有単量体。
【0011】
【化5】
【0012】
(但し、Rは水素又はメチル基であり、RfはC6F13,C8F17,C12F35,C16F33などのパーフルオロアルキル基である。)
(XI)チッソ製「サイラプレーンFM−0711」、「サイラプレーンFM−0721」、「サイラプレーンFM−0725」に代表されるシリコーン系単量体。
(XII)γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどのシランカップリング剤系単量体。
(XIII)N−ステアリルアクリルアミド、N−ラウリルアクリルアミドなどの長鎖アルキル基を有するN−置換アクリルアミド。
【0013】
1)(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネートなどの不飽和カルボン酸。
2)マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、4−メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物などの不飽和酸無水物。
3)ヒドロキシフェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドの付加モル数が2〜90のヒドロキシフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイドの付加モル数が2〜90のヒドロキフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ビニルフェノール、ヒドロキシフェニルマレイミドなどのフェノール基含有単量体。
4)スルホキシエチル(メタ)アクリレート、スチレンスルホン酸、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸などのスルホン酸基含有単量体。
5)モノ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどのリン酸基含有単量体。
【0014】
6)N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド。
7)N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート。
8)2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート。
9)エチレンオキサイドの付加モル数が2〜98のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドの付加モル数が2〜98のメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加モル数が2〜98のフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加モル数が1〜4のノニルフェノールモノエトキシレート(メタ)アクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリオキシエチレンのモノ(メタ)アクリレート。
【0015】
10)(メタ)アクリル酸のナトリウム塩、スチレンスルホン酸ナトリウム、スルホン酸ナトリウムエトキシ(メタ)アクリレート、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸のナトリウム塩などの酸基含有単量体のアルカリ金属塩。
11)(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどの四級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート。
12)アリルグリコール、エチレンオキサイド付加モル数が3〜32のポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテルなどの(メタ)アリル化合物。
13)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなどの環状複素環含有化合物。
14)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどのシアン化ビニル。
15)化学式化6〜化12で例示される反応性乳化剤。
【0016】
【化6】
[Ф: ベンゼン環、(OA)m又は(AO)n:ポリオキシアルキレン基を表しm,nはそれぞれ1〜100、R3又はR4:炭素数1〜22のアルキル基]
【0017】
【化7】
(R5:炭素数1〜22のアルキル基)
【0018】
【化8】
【0019】
【化9】
【0020】
【化10】
(Φ:ベンゼン環)
【0021】
【化11】
(Φ:ベンゼン環、nは1〜100)
【0022】
【化12】
(Φ: ベンゼン環、nは1〜100)
【0023】
具体的には、日本油脂(株)製のラピゾールAIS−112およびAIS−212、花王(株)製のラテムルS−180、180−A、日本乳化剤(株)製のAntox−MS−2N、Antox−MS−60、RA−4211、三洋化成(株)製のエレミノールJS−2、RS−30、第一工業製薬(株)製のアクアロンHS−20、HS−10、HS−5、ニューフロンテアA−229E、旭電化工業(株)製のSE−10Nなどを挙げることができる。
【0024】
(a)エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、出光石油化学製のフォスファゼン系6官能メタクリレートである「PPZ」などの多官能メタクリレート。
(b)エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの多官能アクリレート。
(c)メチレンビスアクリルアミド、エチレンビスアクリルアミドなどの多官能アクリルアミド。
(d)メチレンビスマレイミド、フェニレンビスマレイミドなどの多官能マレイミド。
【0025】
(e)エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、フタル酸ジアリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリルなどの多官能アリル化合物。
(f)ジビニルベンゼン、アジピン酸ジビニル、ジビニルエーテルなどの多官能ビニル化合物。
(g)コロイダルシリカをγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤で変成したメタクロイル変成コロイダルシリカ。
【0026】
(カ)グリセリン、ジグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリンなどのポリグリセリンおよび下記の式で表されるポリブリセリン。
【0027】
【化13】
(式中、nは0〜20、R1 は水素原子、R 2は水素原子、または
【0028】
【化14】
(R1 は水素原子)である。)
【0029】
(キ)流動パラフィン。
(ク)セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート、セルロイド、粉末セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体。
(ケ)クマロンプラスチック、フェノキシプラスチック、ポリブテン、液状ポリブタジエン、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニチリルブタジエンゴム(NBR)などの液状ゴム、石油樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂などのオリゴマー。
(コ)アルミナゾル。
(サ)シリカゲル。
【0030】
(シ)澱粉、プルラン、アルギン酸、グアーガム、アラビアゴム、トラガントガム、タマリンド種子、ゼラチンなどの天然高分子。
使用するラジカル重合性単量体の極性などの性状に応じて、これらの中からそれぞれ適応する粘性付与物質が選ばれる。例えば、親水性のラジカル重合性単量体の場合はグリセリン誘導体、ポリエチレングリコール類、親水性ラジカル重合性単量体より形成される重合体などを、疎水性のラジカル重合性単量体の場合は疎水性ラジカル重合性単量体より形成される重合体やポリオレフィンワックスなどを、フッ素系単量体の場合はポリメタクリル酸ステアリルなどを適宜用いることができる。
組成物ロに粘性付与物質を含有させることにより、組成物ロの液膜の形態保持性、ラジカル重合性単量体のグラフト重合効率を高めることができる。
この粘性付与物質の分子量としては特に限定されないが、経日安定性、スプレーによる塗工性や活性エネルギー線照射により副生する単独重合体の洗浄性をさらに良好にするために、粘性付与物質として分子量が50〜5000のものを使用することが好ましい。
【0031】
組成物ロ中の粘性付与物質の割合は1〜50重量%が好ましく、1重量%未満では活性エネルギー線照射によるラジカル重合性単量体のグラフト重合効率や塗布した液膜の安定性が悪くなり、また、50重量%を越えると塗布性や経日安定性が低下する傾向にある。
前記ラジカル重合性単量体とは、前記(I)〜(XIII)の疎水性単官能ラジカル重合性単量体、1)〜15)の親水性単官能ラジカル重合性単量体、(a)〜(g)の多官能ラジカル重合性単量体が挙げられ、これらの単量体の中から適宜その1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0032】
基材の表面に付与する機能に応じて、これらの中からそれぞれ適応する単量体が選ばれる。例えば、親油性や吸油性を付与するためにはメタクリル酸ステアリルやイタコン酸ジラウリル、N−ステアリルアクリルアミドなどの長鎖アルキル基を有する疎水性単量体やポリエチレンマクロモノマーなどを、親水性、吸水性や防曇性を付与するためにはアクリルアミド、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸、N−ビニルピロリドンなどの親水性単量体を、撥水性撥油性を付与するためにはフッ素含有モノマーを、防汚性を付与するためにはシリコーン系単量体を、帯電防止性を付与するには四級アンモニウム塩系単量体を適宜用いることができる。
組成物ロ中のラジカル重合性単量体成分の量は組成物全体に対して5〜60重量%が好ましい。5重量%未満では活性エネルギー線照射によるラジカル重合性単量体のグラフト重合効率が悪くなり、また、60重量%を越えると塗布性や経日安定性が低下する傾向にある。
組成物ロ中のラジカル重合性単量体及び粘性付与物質の合計濃度は5〜100重量%、より好ましくは20〜100重量%である。
組成物ロ中にはラジカル重合性単量体や粘性付与物質を溶解し、かつ光重合開始基含有化合物ないし光重合開始基含有重合体を含む層が溶解しないような溶媒で希釈して用いてもよい。
前記溶媒としては特に限定されないが、例えば、水、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン等の極性溶媒、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、鉱油等の非極性溶媒が挙げられる。
【0033】
組成物ロ中には、通常の塗膜を形成する際に用いられる添加剤を含有していてもよい。そのような添加剤としては、例えば、過ヨウ素酸ナトリウムやリポフラビンなどの酸素トラップ剤、光重合開始剤、硬化剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、チタネートカップリング剤、シランカップリング剤や界面活性剤等が挙げられる。
組成物ロの粘度は特に限定されないが、経日安定性、スプレー塗工性や活性エネルギー線照射後の重合物の水洗性をさらに良好にするために、5〜1000cpsの範囲にあることが好ましい。
【0034】
次に、下層について説明する。
下層は、下記の方法で得ることができる。
(i)光重合開始剤、光重合開始基を有する単量体、光重合開始基を有する単量体の単独重合体ないし共重合体(以下、光重合開始剤等と略記する。)からなる群から選ばれる1種以上を含有する組成物(以下、組成物イと略記する。)を基材に塗布することにより層を形成する。
(ii)光重合開始基を有さず、かつ官能基を有する重合体の表面に、化学反応によって光開始基を導入する方法。具体的には、ヨーロピアン・ポリマー・ジャーナル(Eur.Polym.J.),29巻、63頁,1993年、及び、ポリマー・マテリアル・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Polym.Mater.Sci.Eng.),60巻,1頁,1989年などに記載の方法である。 即ち、水酸基を有する基材に、アルコキシシリル基を有する光重合開始剤を反応させる方法等である。
【0035】
前記方法の中では、(i) の方法が簡便であるため好ましい。
ここで、光重合開始剤とは、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生させる基を有する化合物をいい、その具体例を例示すると例えば、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどのアセトフェノン誘導体、ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン誘導体、ベンゾフェン、4−フェニルベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体、チオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン誘導体、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどのアシルホスフィンオキサイド類、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどの過酸化物類、(η6-ベンゼン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)のヘキサフルオロフォスフェート塩などの鉄−アレン化合物類などが挙げられる。
【0036】
また前記方法(i) で用いる光重合開始基を有する単量体を具体的に示すと、S−(メタ)アクリロイル−O−メチルキサンテート、S−(メタ)アクリロイル−O−エチルキサンテート、S−(メタ)アクリロイル−O−プロピルキサンテートなどのキサンテート類、2,2’−アゾビス[2−(アクリロイルオキシメチル)プロピオニトリル]、2,2’−アゾビス[2−(メタクリロイルオキシメチル)プロピオニトリル]などのアゾ化合物、1−{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル}(1−ヒドロキシシクロヘキシル)ケトン、1−{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル}−2−モルホリノ−2−メチルプロパン−1−オン、1−{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル}−2−ジメチルアミノ−2−メチルプロパン−1−オンなどのケトン化合物などが例示される。
これらの化合物をそのまま用いて光重合開始基含有化合物を含む層を形成するか、又は単独重合体若しくは共重合体として用いて光重合開始基含有重合体を含む層を形成する。
【0037】
光重合開始基含有重合体を含む層を形成する場合には、光重合開始基を有する単量体の他に、光重合開始基を有しない単量体の1種又は2種以上を併用して形成することができる。
特に、光重合開始基を有しない単量体を用いることは、基材との密着性や機械的強度が不十分となる場合、これらの物性を改良する目的で使用される。
前記光重合開始基を有しない単量体は特に限定されず、具体的には、前記(I)〜(XIII)の疎水性単官能ラジカル重合性単量体、1)〜15)の親水性単官能ラジカル重合性単量体、(a)〜(g)の多官能ラジカル重合性単量体が例として挙げられる。
例えば、下記に示す基材との密着性を改良する場合には、次の光重合開始基を有しない単量体を使用することが好ましい。
即ち、基材にガラスを用いる場合にはγ−メタクリロキシプロピルメトキシシランを、基材にメタクリル樹脂板や塩ビシートを用いる場合にはメタクリル酸メチルを、基材にエポキシ樹脂を用いる場合にはメタクリル酸グリシジルを、基材にポリオレフィンシートを用いる場合にはメタクリル酸ステアリルを、基材にポリスチレン板を用いる場合にはスチレンがそれぞれ挙げられる。
【0038】
方法(i) で層を形成するために用いる組成物は、層としての形態保持性、基材との密着性や塗工性を得るために、通常高分子化合物や溶剤などのその他の化合物と混合して用いるが、上記した層としての要件を充たす場合には、単独でも使用することができる。
前記その他の化合物としては、溶剤に可溶性で光重合開始剤等と均一混合ないし分散することが可能であるという条件を満たす限り、有機低分子化合物、有機高分子化合物、無機低分子化合物、無機高分子化合物を問わずに各種の化合物を適宜用いることができる。
前記有機低分子化合物の具体例を示すと、例えば、デカンなどの飽和炭化水素、トルエン、ナフタレン、アントラセンなどの芳香族炭化水素、イミダゾール、キサンテンなどの複素環化合物、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素、プロピルアルコール、ステアリルアルコールなどのアルコール類、フェノール、クレゾールなどのフェノール、エチルグリシジルエーテルなどのエーテル、プロピオンアルデヒドなどのアルデヒド、イソブチルメチルケトンなどのケトン、酢酸、アジピン酸などのカルボン酸またはそれらの酸無水物、ベンゼンスルホン酸、硫酸ジメチル、ドデシルメルカプタンなどの硫黄含有化合物、エチルアミン、N−メチルアニリン、アセトアミド、アゾベンゼンなどの窒素含有化合物、前記(I)〜(XIII)の疎水性単官能ラジカル重合性単量体、1)〜15)の親水性単官能ラジカル重合性単量体、(a)〜(g)の多官能ラジカル重合性単量体などのラジカル重合性単量体類が挙げられる。
【0039】
前記有機高分子化合物の具体例を示すと、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸グリシジルなどの疎水性重合体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル、ポリN,N−ジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシスチレン、水溶性ポリアミドなどの親水性重合体が挙げられる。
前記無機低分子化合物の具体例を示すと、例えば、過塩素酸カリウム、塩化ナトリウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウムなどの塩類、酸化チタン、酸化銅などの金属酸化物が挙げられる。
前記無機高分子化合物の具体例を示すと、例えば、コロイダルシリカ、シリコーン、ポリホスホニトリルクロライド、ポリアミノボラゾールなどが挙げられる。
光重合開始剤等及びその他の化合物を均一混合して使用するが、塗布性を得るために、各種の溶剤と均一混合して用いてもよい。
【0040】
光重合開始基含有化合物ないし光重合開始基含有重合体を含む層中には、通常の塗膜を形成する際に用いられる添加剤を含有してもよい。
そのような添加剤としては、例えば、硬化剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、界面活性剤や、コロイダルシリカなどの無機フィラー等が挙げられる。
また、基材との密着性を向上させるために、通常用いられるシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等を添加してもよい。
【0041】
次に、活性エネルギー線を用いる表面処理は、例えば次のような手順に従って行われる。
(A)組成物イを基材上に塗布する。塗布を行った後、必要により乾燥、熱硬化などを行う。
(B)組成物イからなる下層を形成した基材上に組成物ロを所定の厚みで塗布する。
(C)活性エネルギー線を照射して、光重合開始基よりラジカルを発生させ、ラジカル重合性単量体のグラフト重合を行い、ラジカル重合性単量体の重合体の膜を形成する。
(D) 未反応のラジカル重合性単量体やラジカル重合性単量体の単独重合体がある場合など、必要に応じて水などの溶剤によって洗浄除去する。
(E) 洗浄等で膜に残存した溶剤などを除去するため必要に応じて乾燥を行う。
【0042】
手順(B)は、光重合開始基含有化合物ないし光重合開始基含有重合体を含む層と組成物ロとを接触させることが目的である。
前記塗布の方法としては、バーコーター、ロールコーター、カーテンフローコーターやスプレーなどを使用した従来公知の方法が採用できる。中でも、基材として曲面の成型品を用いる場合にはスプレーが適しているが、何ら限定するものではない。
なお、接触させる方法としては、前記塗布法以外の従来公知の方法を用いても良い。
【0043】
この発明の活性エネルギー線を用いる表面処理方法によれば、酸素によるラジカル重合性単量体の重合の阻害を防止するために従来行われている窒素などの不活性ガスによる重合雰囲気の置換や活性エネルギー線を透過する透明材での被覆を行わなくても、良好に光グラフト化による表面処理を実施できるが、ラジカル重合性単量体を含む組成物の雰囲気を窒素などの不活性ガスで置換してもまたは、組成物を活性エネルギー線を透過し、かつ酸素を遮断する材料、例えば、ガラス、石英、透明プラスチック製の板、フィルム等で覆っても差し支えない。
手順(C)において用いる活性エネルギー線としては、用いる光重合開始基の分解を進行させるものであれば特に限定はされず、紫外線、可視光線、電子線等が使用される。好ましくは、200〜800nm、さらに好ましくは、300〜600nmの紫外線及び可視光線が適当である。
光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、ハロゲンランプ、キセノンランプ、エキシマレーザー、色素レーザー、YAGレーザー、太陽光等が挙げられる。
【0044】
本発明に使用する基材としては、セラミック、ガラス、金属やプラスチック成形材料、フィルムなどの様々な材料が適用できる。
ラジカル重合性単量体を含む組成物中に多官能のアクリレートなどの架橋成分が含まれている場合などで、活性エネルギー線照射により組成物全体が十分な強度の塗膜になる場合には、ラジカル重合性単量体、ラジカル重合性単量体の単独重合体、粘性付与物質などが含まれていても差し支えない。そのような場合には、前記手順(D)や(E)を省略することができる。
【0045】
【実施例】
次に、参考例、実施例及び比較例により、この発明をさらに具体的に説明するが、この発明はこれにより限定されるものではない。
なお、本文および表中の%は重量%を表す。
また、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によりテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドまたはトルエンを展開溶剤として測定した値である。
更に、組成物ロの粘度はウベローデ粘度計を用いて25℃にて測定した値である。
【0046】
本文及び表中の略号は以下の通りである。
PI1:1−[4−{2−(2−(メタクリロイルオキシ)エトキシカルボニルオキシ)エトキシ}フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン
PI2:メチル[2−{4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]フマレート
PI3:ビス[2−{4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]イタコネート
PI4:1−{4−(2−メタクリロイルエトキシ)フェニル}−2,2−ジメトキシ−2−フェニルエタン−1−オン
PI5:1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオン−2−O−アクリロイルオキシム
【0047】
MMA:メチルメタクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
LMA:ラウリルメタクリレート
ST:スチレン
KBM503:トリメトキシシリルプロピルメタクリレート(信越化学工業(株)製、商品名:KBM−503)
BP:ベンゾフェノン
KIP:光重合開始剤(Fratelli Lambert社製、商品名:ESACURE KIP100F)
BTTB:3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(日本油脂(株)製、光重合開始剤)
D2959:光重合開始剤(メルク社製、商品名:イルガキュアー2959)
PPZ:ホスファゼン系6官能メタクリレート(出光石油化学(株)製、商品名:出光PPZ)
【0048】
PEG:ポリエチレングリコール(分子量:4000)
TTA:トリエチレンテトラミン
MEK:メチルエチルケトン
PGM:プロピレングリコールモノメチルエーテル
HE:ヘプタン
PC:ポリカーボネート板
AC:アクリル板
GA:ガラス板
PE:ポリエチレンテレフタレートフィルム
MAA:メタクリル酸
A−800:ヘキスト社製のβ-パーフロロオクチルエチルアクリレート
SMA:ステアリルメタクリレート
DQ−100:メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(共栄社化学(株)製、商品名:ライトエステルDQ−100)
ATBS:アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸(東亜合成(株)製、商品名:ATBS)のナトリウム塩
【0049】
VP:N−ビニル−2−ピロリドン
AIS−112:反応製乳化剤(日本油脂(株)製、商品名:ラピゾールAIS−112)
ポリグリ:ポリグリセリン(坂本薬品工業(株)製、商品名:ポリグリセリン#500)
DMA:N,N−ジメチルアクリルアミド
PVP:ポリビニルピロリドン
PVA:完全ケン化ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製、商品名:ゴーセノール NM−14、重合度:1400)
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
MeOH:メタノール
LPO:ラウロイルペルオキシド(日本油脂(株)製、商品名:パーロイルL)
【0050】
参考例1(光重合開始基含有重合体aの製造)
攪拌機、温度計、パージガス導入口、水冷コンデンサーを備えた300ミリリットルの反応容器に、MEK 50gを仕込み、窒素ガス通気下、80℃に加熱した。その後、攪拌しながら、MMA 90g、PI1 10g、MEK 50g、及び、LPO 5gの混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま4時間攪拌を続け重合を完結した。
得られた溶液を石油エーテル中に注入してポリマーを析出させた後、乾燥して光重合開始基含有重合体aを得た。その数平均分子量(表中、Mnと略記)は21000であった。また、紫外線吸収スペクトルから、仕込み量と同量の光重合開始基が重合体中に導入されていることを確認した。
【0051】
参考例2〜5(光重合開始基含有重合体b〜eの製造)
モノマーを表1の種類及び量に変える以外は参考例1と同様に重合を行い、光重合開始基含有重合体b〜eを得た。
【0052】
【表1】
【0053】
参考例6(粘性付与物質PMMA−Iの製造)
攪拌機、温度計、パージガス導入口、水冷コンデンサーを備えた300ミリリットルの反応容器に、MEK 80gを仕込み、窒素ガス通気下、80℃に加熱した。
その後、攪拌しながら、MMA 40g、MEK 80g、LPO 6g及びチオグリコール酸オクチル 2gの混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま4時間攪拌を続け重合を完結した。
得られた溶液を石油エーテル中に注入してポリマーを析出させた後、乾燥して粘性付与物質であるPMMA−Iを得た。その数平均分子量(Mn)は3300であった。
【0054】
参考例7(粘性付与物質PDMA−Iの製造)
攪拌機、温度計、パージガス導入口、水冷コンデンサーを備えた300ミリリットルの反応容器に、MEK 80gを仕込み、窒素ガス通気下、80℃に加熱した。
その後、攪拌しながら、DMA 40g、MEK 80g、LPO 6g及びチオグリコール酸オクチル 2gの混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま4時間攪拌を続け重合を完結した。
得られた溶液を石油エーテル中に注入してポリマーを析出させた後、乾燥して粘性付与物質であるPDMA−Iを得た。その数平均分子量(Mn)は4500であった。
【0055】
参考例8(粘性付与物質PSMA−Iの製造)
攪拌機、温度計、パージガス導入口、水冷コンデンサーを備えた300ミリリットルの反応容器に、ヘプタン80gを仕込み、窒素ガス通気下、80℃に加熱した。
その後、攪拌しながら、SMA 40g、ヘプタン 80g、LPO 6g及びチオグリコール酸オクチル 2gの混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま4時間攪拌を続け重合を完結した。
得られた溶液を石油エーテル中に注入してポリマーを析出させた後、乾燥して粘性付与物質であるPSMA−Iを得た。その数平均分子量(Mn)は3000であった。
【0056】
参考例9(粘性付与物質PMMA−IIの製造)
攪拌機、温度計、パージガス導入口、水冷コンデンサーを備えた300ミリリットルの反応容器に、MEK 40gを仕込み、窒素ガス通気下、80℃に加熱した。
その後、攪拌しながら、MMA 120g、MEK 40g、及びLPO 5gの混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま4時間攪拌を続け重合を完結した。
得られた溶液を石油エーテル中に注入してポリマーを析出させた後、乾燥して粘性付与物質であるPMMA−IIを得た。その数平均分子量(Mn)は25000であった。
【0057】
参考例10(粘性付与物質PDMA−IIの製造)
攪拌機、温度計、パージガス導入口、水冷コンデンサーを備えた300ミリリットルの反応容器に、MEK 40gを仕込み、窒素ガス通気下、80℃に加熱した。
その後、攪拌しながら、DMA 120g、MEK 40g及びLPO 5gの混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま4時間攪拌を続け重合を完結した。
得られた溶液を石油エーテル中に注入してポリマーを析出させた後、乾燥して粘性付与物質であるPDMA−IIを得た。その数平均分子量(Mn)は81000であった。
【0058】
参考例11(粘性付与物質PSMA−IIの製造)
攪拌機、温度計、パージガス導入口、水冷コンデンサーを備えた300ミリリットルの反応容器に、ヘプタン 40gを仕込み、窒素ガス通気下、80℃に加熱した。
その後、攪拌しながら、SMA 120g、ヘプタン 40g及びLPO 5gの混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま4時間攪拌を続け重合を完結した。
得られた溶液を石油エーテル中に注入してポリマーを析出させた後、乾燥して粘性付与物質であるPSMA−IIを得た。その数平均分子量(Mn)は39000であった。
【0059】
参考例12(粘性付与物質PVPの製造)
攪拌機、温度計、パージガス導入口、水冷コンデンサーを備えた300ミリリットルの反応容器に、MEK 80gを仕込み、窒素ガス通気下、80℃に加熱した。
その後、攪拌しながら、VP 40g、MEK 80g、LPO 6g及びチオグリコール酸オクチル 0.5gの混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま4時間攪拌を続け重合を完結した。
得られた溶液を石油エーテル中に注入してポリマーを析出させた後、乾燥して粘性付与物質であるPVPを得た。その数平均分子量(Mn)は10500であった。
【0060】
実験例1
組成物イとしてBP 5g、参考例9で得たPMMA−II 35g、PPZ10g及びPGM 50gの均一混合物を用い、10cm×10cm、厚さ2mmのポリカーボネート板に、乾燥膜厚が5μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、60℃で10分間乾燥した。 次に、得られた塗膜上に組成物ロとしてMAA 20g、参考例7で得たPDMA−I 5g、及びイオン交換水75gを均一混合したもの(粘度:12cps)をスプレーガン(吐出圧力:2kgf/cm2) を用いて塗布したところ、塗布液の微粒化が良好で糸引き等は見られなかった。続いて、1kW高圧水銀灯により1分間光照射(光照射量:5J/cm2 )した後、水道流水により水洗を行ったところ、副生した単独重合体などを容易に除去することができた。洗浄後、乾燥することにより、無色透明で表面外観の良好な表面処理膜を得た。
【0061】
次に、得られた組成物ロおよび表面処理膜について下記に示す評価方法により物性及び表面に付与した機能を評価した。評価結果を表4に示した。
(1)粘度測定
(株)東京計器製B型粘度計を用いて25℃における組成物ロの粘度を測定した。
(2)経日安定性
組成物ロを40℃の恒温槽に放置した後、組成物ロの流動性を観察し、次の三段階により評価した。
○:14日後も流動性が良好であった。
△:1〜7日の間にゲル化して流動性がなくなった。
×:1日後にゲル化して流動性がなくなった。
【0062】
(3)塗工性
スプレーガン(iwata W−88)より吐出圧力2.0kgf/cm2で組成物をガラス板上へ組成物ロを塗工し、スプレーノズルから出る組成物ロの微粒化の程度を目視により観察し、次の三段階により評価した。
○:微粒化が良好であった。
△:粒子が少し大きかった。
×:糸引きした。
(4)液膜の形態保持性
組成物ロの塗工性の評価で組成物ロを塗工したガラス板を20゜に傾けて10分放置した後の塗膜の流れ性を目視で観察して、次の二段階の評価を行った。
○:塗膜が流動せず安定であった。
×:塗膜がガラス板から流動した。
(5)光照射後の水洗性
光照射を行った組成物ロをシャワー状のノズルより噴射される水道水により5分間洗浄し、洗浄の状態を目視で観察し、次の三段階により評価した。
○:副製する単独重合体などを容易に除去できた。
△:若干の洗浄残りがあった。
×:シャワー洗浄では単独重合体などをほとんど除去できなかった。
【0063】
(6)塗膜外観
得られた各表面処理膜の外観を目視で観察した。
○:平滑であった。
△:若干の凹凸が見られた。
×:塗膜全体に凹凸が見られた。
(7)グラフト膜厚
グラフト重合前後の厚さをデジタル膜厚計(Sheen Instruments社製)で測定し、増加量をグラフト膜厚(μm)として表した。
(8)塗膜硬度
表面処理後の基材について、JIS K−5400に準じた鉛筆引っかき試験を行い、塗膜硬度を鉛筆の硬さで表した。
(9)親水性
基材の表面処理前後の水に対する静的接触角を測定した。処理前に比べてこの値が低下していることにより、親水性が付与されていることを確認した。
○:接触角が低下した。
×:接触角が基材に近く変化がなかった。
【0064】
(10)撥水性
基材の表面処理前後の水に対する静的接触角を測定した。
○:接触角が90゜以上に上昇した。
×:接触角が基材に近く変化がなかった。
(11)親油性
基材の表面処理前後のデカンに対する静的接触角を測定した。
○:接触角が低下した。
×:接触角が基材に近く変化がなかった。
(12)帯電防止性
基材の表面処理前後の表面固有抵抗をJIS K−6911に準じて測定した。
○:表面固有抵抗が低下した。
×:表面固有抵抗が基材に近く変化がなかった。
【0065】
(13)防曇性
表面処理後の基材について20℃、相対湿度50%の恒温恒湿室内で処理面に息を吹きかけ、曇りの状態を目視によって次の基準にて判断した。
○:全く曇らなかった。
△:やや曇りが見られた。
×:全面が曇った。
【0066】
実験例2〜4、実施例5〜7、実験例8、9
組成物イ、基材及び乾燥・硬化条件として表2に記載したものを用い、組成物ロ及び洗浄溶剤として表3に記載したものを用い、そして実験例1に準じる方法で表面処理膜を作り、その物性及び機能等を評価した。評価結果を表4に示した。
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
実験例10〜13、比較例1〜2
組成物イ、基材及び乾燥・硬化条件として表5に記載したものを用い、組成物ロ及び洗浄溶剤として表6に記載したものを用い、そして実施例1に準じる方法で表面処理膜を作り、その物性及び機能等を評価した。評価結果を表7に示した。
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】
【表7】
【0074】
各実施例及び比較例の結果から次のことがわかる。すなわち、比較例1、2の粘性付与物質を含まない組成物ロを使用したものでは、塗工した組成物ロの粘度が低いため基材からの液垂れが起こり、液膜厚を確保できない。
また、ラジカル重合性単量体のグラフト量も少なく、付与を試みた性能を発現できていない。
【0075】
これに対して、実施例5〜7の組成物ロを使用したものでは、組成物ロの経日安定性、スプレーによる塗工性に優れ、微粒化が良好であり、糸引き等が見られず、かつ塗布を行った液膜は安定であり、液垂れ等が見られなかった。また、光照射により副生した単独重合体などを容易に除去することができ、公知の活性エネルギー線を用いる表面処理方法に比べて、作業性、スプレーによる塗工性共に優れていることは明らかである。さらには、公知の活性エネルギー線を用いる表面処理方法に比べて、多量のグラフト重合体を形成できるので厚いグラフト膜を得ることができ、且つ、得られた表面処理膜の表面外観にも優れていることは明らかである。
【0076】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明によれば、次のような優れた効果を奏する。
(1)酸素によるラジカル重合性単量体の重合阻害を防止するために従来行われている活性ガスによる重合雰囲気の置換や活性エネルギー線を透過する透明材での被覆を行わなくても、ラジカル重合性単量体を効率よくグラフト重合することができ、ラジカル重合性単量体の重合体よりなる表面処理層を容易に形成することができる。
また、得られた表面処理膜には多量のグラフト重合体が形成されるので厚いグラフト膜を得ることができ、目的の性能を充分に発現できる。
更に、表面処理膜はラジカル重合性単量体が光重合開始基を有する化合物を含む重合体の層にグラフト重合することにより形成されるため、剥離する恐れがない。
しかも、実用的な塗膜強度を有しているとともに、基材との密着性も良好である。加えて、ラジカル重合性単量体を含む組成物の塗膜の形態保持性にも優れており、液垂れなども見られない。
【0077】
このように、この活性エネルギー線を用いる表面処理方法は、ガラス、鉄やセラミックのような無機材料または各種プラスチックのような有機材料の表面に平面や曲面などの基材の形状に関わらず好適に適応でき、産業上有用である。
(2)適度の分子量の粘性付与物質を組成物ロに含有させることにより、スプレーで塗工を行った場合にも塗液を良好に微粒化することができる。
(3)活性エネルギー線の照射により副生する単独重合体を容易に除去できることから、作業性が優れている。
(4)組成物ロは、適度の量の粘性付与物質を含んでいるので、経日安定性に優れている。
(5)組成物ロに添加する粘性付与物質としてグリセリン誘導体を用いることにより、スプレーによる塗工性及び組成物ロの経日安定性を向上させ、さらに副生する単独重合体の除去が容易となる。
Claims (2)
- 前記ラジカル重合性単量体を含む組成物の25℃における粘度が5〜1000cpsである請求項1に記載の活性エネルギー線を用いる表面処理方法。
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