以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。図1は、本発明の一側面としての光発生装置1の構成を示す概略ブロック図である。
光発生装置1は、真空又は減圧環境に置かれた標的部材(ターゲット)にレーザー光を照射してプラズマPLを生成し、かかるプラズマPLから放射されるEUV光ELを取り出す光発生装置である。光発生装置1は、レーザー光源部10と、レーザー光学系20と、EUV光学系30と、制御部40とを有する。
図1を参照するに、制御部40からの発光開始信号によりレーザー光源部10からレーザー光が射出される。射出されたレーザー光は、レーザー光学系20を介して集光され、図示しないターゲットに照射される。ターゲットは、本実施形態では、銅の固体であるが、錫、アルミニウム等の他の金属でもよく、また、Xeのガス、液滴、クラスタでもよい。ターゲットは、図示しないターゲット供給装置からレーザー光源部10のレーザー光の発光に同期して断続的に供給される。
レーザー光源部10から射出したレーザー光からのエネルギーによって、ターゲットから高温、高密度のプラズマPLが生成され、かかるプラズマPLからEUV光ELが発光される。EUV光ELは、集光ミラー32により集められ、後段の光学系(EUV光学系30)へ供給される。なお、本実施形態において、EUV光ELを集光する集光ミラー32は、EUV光学系30を構成する一部とする。
レーザー光学系20は、レンズ、ミラー、平行平板ガラスなどから構成される。本実施形態では、真空チャンバVCの真空隔壁の一部として用いられ、レーザー光を透過するレーザー導入窓22もレーザー光学系20に含まれる。レーザー光学系20は、本実施形態では大気中に設置されているが、真空中に設置されてもよい。レーザー光学系20は、EUV光ELを効率よく取り出すために、レーザー光をターゲット上でプラズマPLの生成に必要、且つ、十分なスポットサイズ及びエネルギー密度となるようにする機能を有する。
プラズマPLからはEUV光ELだけでなく、ターゲットからのデブリ(本実施形態では、銅のデブリ)及び図示しないターゲット供給機構からのデブリ(以下、「デブリDB」で総括する。)が発生する。発生したデブリDBは、レーザー導入窓22に付着し、レーザー光を散乱及び吸収する。そのため、レーザー導入窓22へのデブリDBの付着に伴い、レーザー光がターゲット上でプラズマPLを生成するために十分なスポットサイズ及びエネルギー密度とならず、EUV光ELの光強度が低下してしまう。
そこで、本実施形態の光発生装置1は、レーザー導入窓22にデブリDBが付着することを防止する防止手段100を有する。防止手段100は、レーザー光学系20の下流から上流に向かって(レーザー光の入射側に向かって順番に)、電荷を帯びたデブリDBeの運動方向を変更する偏向手段110と、レーザー光の発光時はレーザー光を通過させ、レーザー光の発光時以外はレーザー光の光路LRを遮断する遮断機構120と、デブリDBを吸着すると共に、レーザー光を透過又は反射する吸着機構130とを有する。
防止手段100は、偏向手段110、遮断機構120及び吸着機構130によって、発生したデブリDBのレーザー導入窓22への付着を防ぎ、レーザー光学系20の光学性能の劣化を防止する機能を有する。以下、偏向手段110、遮断機構120及び吸着機構130について説明する。
図2は、偏向手段110の一例としての磁場発生装置110Aの構成を示す図である。磁場発生装置110Aは、磁石112Aを有し、磁場MFを発生させる。磁石112Aは、レーザー光の光路LRに対して垂直な方向に磁場MFがかかるように2つ設置される。但し、2つの磁石112Aの間隔dMは、レーザー光を遮らない範囲で狭めてある。
デブリDBの中で電荷を帯びたデブリDBeは、磁石112Aの発生する磁場MFの中を進み、ローレンツ力により運動方向を変える。運動方向を変えたデブリDBeは、図1に示すアパーチャ114の開口114aを通らずにアパーチャ114に衝突する。換言すれば、磁場発生装置110Aは、デブリDBeがレーザー導入窓22に到達し、付着することを防止する。
デブリDBeの曲がる(運動方向が変わる)角度θは、一般に、以下に示す数式1で表される。
従って、アパーチャ114と磁石112Aとの距離を大きくした方が、デブリDBeがレーザー光の光路LRから離れるため効果的である。例えば、銅の1価イオンの場合、磁石長20mm、磁場0.1ステラ、アパーチャと磁石との距離300mm、アパーチャの開口20mmとすることで、40000m/s以下の速度のデブリを全て除去することができる。
偏向手段110は、図3に示すように、電場発生装置110Bを用いてもよい。磁場発生装置110Aでは、電荷を有するデブリDBeの除去に磁石112Aを用いたが、電場発生装置110Bでは、電極112Bから発生する電場EFを用いる。ここで、図3は、偏向手段110の一例としての電場発生装置110Bの構成を示す図である。
電極112Bは、レーザー光の光路LRに対して垂直な方向に電場EFがかかるように2つ設置される。但し、2つの電極112Bの間隔dEは、レーザー光を遮らない範囲で狭めてある。
デブリDBの中で電荷を帯びたデブリDBeは、電極112Bの発生する電場EFの中を進み、クーロン力により運動方向を変える。運動方向を変えたデブリDBeは、図1に示すアパーチャ114の開口114aを通らずにアパーチャ114に衝突する。換言すれば、電場発生装置110Bは、デブリDBeがレーザー導入窓22に到達し、付着することを防止する。
デブリDBeの曲がる(運動方向が変わる)角度θは、一般に、以下に示す数式2で表される。
従って、アパーチャ114と電極112Bとの距離を大きくした方が、デブリDBeがレーザー光の光路LRから離れるため効果的である。また、偏向手段110は質量の小さなデブリに対して特に有効である。
プラズマPLから発生するデブリDBの内で、比較的飛散速度の小さいものはレーザー導入窓22に到達する以前に後述する遮断機構120でほぼ完全に遮断可能であるが、飛散速度の大きいものは必ずしも遮断することができない。しかしながら、ここで問題となる高い飛散速度を有するものは比較的質量が小さいものが殆どである。また、プラズマPLから発生するデブリDBは電荷を帯びているものが殆どである。
これらのことを利用して、偏向手段110と後述する遮断機構120を組合わせて使用することにより、それぞれの特徴を生かしてデブリDBの除去率を高めることが可能となる。
図4は、遮断機構120の構成の一例を示す図である。遮断機構120は、本実施形態では、レーザー光を通過させる開口部124を設けた円盤形状の回転体122を回転させる方式のものである。回転体122は、モータ122aにより回転する。回転体122の回転は、図4(a)に示すように、レーザー光の発光と同期してレーザー光が通過する時のみ、開口部124がレーザー光の光路LRに現れるように制御部40によって制御される。
レーザー光源部10ではパルス状のレーザー光を射出することによりプラズマPLを生成している。レーザー光のパルスのタイミングと回転体122の開口部124の位相を同期させることにより、レーザー光は開口部124を通過する。また、デブリDBが回転体122の位置に来たときには、図4(b)に示すように、開口部124はレーザー光の光路LRからずれ、遮断部126によってレーザー光の光路LRが遮断されているため、デブリDBは遮断部126に衝突する。
なお、デブリDBのレーザー光に対する遅れtは、以下に示す数式3で表される。
従って、より速度の速いデブリDBを有効に除去するためには、デブリDBの発生位置と、回転体122との距離を大きくし、更に、回転体122の角速度を速くすることが効果的である。また、レーザー光とデブリの速度差に着目して、回転体122に十分な厚みを持たせて開口部124を筒状にすることで、開口部124に入射したデブリについてもその側面で捕獲が可能となる。
デブリDBの発生位置は、一般には、プラズマPLの位置近傍である。デブリDBの発生位置から回転体122までの距離、開口部124の大きさ、回転体122の角速度などで異なるが、一般的に、遮断機構120によって1000m/s乃至2000m/s程度までの速度を有するデブリDBを除去することが可能である。例えば、固体のSn、Auをターゲットとして用いた場合、640m/s以下の速度を有するデブリが総デブリ量に占める割合は、それぞれ98%、69%であることが、「H.A.Bender,“Verlocity characterization of particulate debris from laser−produced plasmas used for extreme−ultraviolet lithography”, Applied Optics Vol34, No28 page6513」の論文において報告されている。
回転体122の開口部124の位置は、制御部40により制御され、また、開口部124の位置は、開口位置センサ127により検出されている。開口位置センサ127の検出した開口部124の位置情報は、制御部40に送られる。制御部40は、開口部124の位置情報に基づいて、レーザー光の発光のタイミングと、開口部124の位相が常に同期されるように補正を行う。
回転体122の法線とレーザー光の光路LRが平行になるように配置すると、レーザー光の発光のタイミングと回転体122の開口部124との位相がずれた際、回転体122の遮断部126からのレーザー光の正反射光によってレーザー光学系20及びその他の光学素子が損傷を受ける場合がある。従って、回転体122(の遮断部126)の表面は、粗面に加工し、また、回転体122をレーザー光の光路LRに対して適当な角度で配置することが好ましい。
但し、回転体122の表面を粗面に加工してもレーザー光のエネルギーの大部分は反射位置に集中するため、反射位置には反射したレーザー光を吸収する吸収体129を配置することが更に好ましい。レーザー光が回転体122の遮断部126にあたった場合には、散乱光を検出部128が検出し、直ちにレーザー光の発光を停止することで、レーザー光による回転体122の損傷を防止する。
また、本実施形態では、遮断機構120を、開口部124を有する回転体122を回転させる方式としたが、レーザー光の光路LRをパルス状のレーザー光のタイミングに合わせて周期的に開閉できる構成であればよい。
図5は、吸着機構130の構成の一例を示す図である。吸着機構130は、偏向手段110及び遮断機構120によって除去できなかった2000m/sの速度を超える中性のデブリDB及び4000m/sの速度を超える電荷を帯びたデブリDBeを吸着する機構を有し、ガラス131と、検出部132と、ガラスホルダ133と、駆動機構134と、保護壁135とから構成される。吸着機構130はガラス131がレーザー光の光路LR上に来るように配置され、当該光路LRに沿って飛散するデブリを除去する。なお、ガラス131は、デブリDBを散乱させる機能も有する。これにより、デブリDBeがレーザー導入窓22に到達し、付着することを防止することができる。なお、上述したターゲットの例では、偏向手段110及び遮断機構120によって除去できないデブリDBは、発生する総デブリ量の2%以下(Snの場合)、31%以下(Auの場合)である。
ガラス131は、レーザー光を吸収しない材質が好ましい。ガラス131の大きさは、ガラス131が配置される位置でのレーザー光のスポットよりも大きければよい。ガラス131に付着したデブリDBは、レーザー光を散乱させるため、かかる散乱光を検出部132で検出することでデブリDBの付着量を見積もることができる。なお、デブリDBの付着量と散乱光との関係は、予め求めておく必要がある。
ガラスホルダ133は、複数のガラス131を保持しており、ガラス131に付着するデブリDBの付着量が規定量を超えた際に駆動機構134によってガラス131を駆動し、デブリDBが付着したガラス131からデブリDBの付着していないガラス131に交換する。これにより、真空チャンバVC内の真空環境を破ることなくガラス131を交換することができる。ガラス131を交換することでデブリDBによるレーザー光の散乱及び吸収を除去し、ガラス131にデブリDBが付着することによるレーザー光学系20の光学性能の劣化(即ち、ガラス131に付着したデブリDBに起因するレーザー光のターゲットまでの透過率低下)を防止することができる。なお、ガラスホルダ133が保持するガラス131の数は、本実施形態では、3つであるが、かかる数は例示的である。
図1に示すように、保護壁135は、デブリDBが付着していない(即ち、交換前の)ガラス131とターゲットとの間に配置され、交換前のガラス131にデブリDBが付着することを防止する。保護壁135は、交換前のガラス131(本実施形態では、2つ)全体をデブリDBから保護できる大きさであればよい。
ガラス131は、パワーを有するレンズでもよいが、平行平板ガラスであることが好ましい。平行平板ガラスは、レンズに比べて安価であり、アライメントが容易であるからである。ガラス131が平行平板ガラスの場合、ガラス131を交換する際など、図5に示すx、y、z軸方向にガラス131を駆動してもレーザー光の集光状態及び集光条件は変化しない。但し、各軸回りの回転は、レーザー光の集光位置を変化させてしまうので、集光位置を調整する調整機構を設けることが好ましい。
本実施形態の光発生装置1と従来の光発生装置とのレーザー光のショット数とEUV光ELの光強度との関係を図6に示す。同図は、縦軸にEUV光ELの光強度を、横軸にレーザー光のショット数を採用し、本実施形態の光発生装置1の場合、従来の光発生装置として遮断機構のある場合、遮断機構のない場合をそれぞれ示している。
図6を参照するに、遮断機構のない従来の光発生装置では、EUV光の光強度の低下が激しいことがわかる。また、遮断機構のある従来の光発生装置でも徐々にEUV光の光強度は低下し、回復することはない。従来の光発生装置に対して、本実施形態の光発生装置1は、偏向手段110及び遮断機構120がレーザー導入窓22に付着するデブリDBを除去するためにEUV光の光強度の低下が緩やかであり、更に、偏向手段110及び遮断機構120が除去できなかったデブリDBを吸着機構130のガラス131に付着させ、デブリDBが付着したガラス131を真空雰囲気中にて交換可能としているため、徐々に低下していたEUV光の光強度を回復させることができる。従って、光発生装置1によれば、デブリDBの付着により低下したレーザー光学系20の光学性能を回復させ、安定したEUV光を供給することが可能となる。
なお、吸着機構130の構成は、図1及び図5に示す構成だけには限らない。例えば、図7及び図8に示すように、ガラスホルダ133を1つのガラス131としてもよい。ガラスホルダ133(ガラス131)は、レーザー光のスポットLSに対して十分に大きな平行平板ガラスから構成され、駆動機構134により図8に示すx、y軸方向に駆動することができる。ガラスホルダ133にデブリDBが付着するとレーザー光が散乱するため、かかる散乱光を検出部132で検出することでデブリDBの付着量を見積もることができる。なお、デブリDBの付着量と散乱光との関係は、予め求めておく必要がある。ここで、図7は、図1及び図5に示す吸着機構130とは異なる構成を有する光発生装置1を示す概略ブロック図である。図8は、図7に示す吸着機構130の構成を示す図である。
図8(a)に示すように、ガラスホルダ133の領域DE1に付着するデブリDBの付着量が規定量を超えた際に駆動機構134によってガラスホルダ133を駆動し、図8(b)に示すように、レーザー光がデブリDBが付着した領域DE1からデブリDBの付着していない領域DE2を通過するようにする。ガラスホルダ133の領域の変更は、真空チャンバVC内の真空環境を破ることなく行うことができる。ガラスホルダ133の領域を変更することでデブリDBによるレーザー光の散乱及び吸収を除去し、ガラスホルダ133にデブリDBが付着することによるレーザー光学系20の光学性能の劣化(即ち、ガラスホルダ133の領域DE1に付着したデブリDBに起因するレーザー光のターゲットまでの透過率低下)を防止することができる。
本実施形態では、ガラスホルダ133は、1つの平行平板ガラスであり、図8に示すx、y軸方向にのみ駆動されるため、ガラスホルダ133の駆動した後もレーザー光のガラスホルダ133への入射角は変化しない。従って、ガラスホルダ133を駆動してもレーザー光の集光状態及び集光位置は変化しない。
従って、吸着機構130に1つのガラスホルダ133(ガラス131)を用いた場合においても、デブリDBの付着により低下したレーザー光学系20の光学性能を回復させ、安定したEUV光を供給することが可能となる。
また、吸着機構130は、図9及び図10に示すように、ミラー136と、ミラーホルダ137と、駆動機構134とから構成してもよい。ミラー136は、パワーを有するミラーでも可能であるが、平面ミラーであることが好ましい。平面ミラーは、パワーを有するミラーに比べて安価であり、アライメントが容易であるからである。ミラー136が平面ミラーである場合、ミラー136を交換する際など、図10に示すx、y軸方向にミラー136を駆動してもレーザー光の集光状態及び集光位置は変化しない。ミラー136にデブリDBが付着するとレーザー光が散乱するため、かかる散乱光を検出部132で検出することでデブリDBの付着量を見積もることができる。なお、デブリDBの付着量と散乱光との関係は、予め求めておく必要がある。ここで、図9は、図1及び図5に示す吸着機構130とは異なる構成を有する光発生装置1を示す概略ブロック図である。図10は、図9に示す吸着機構130の構成を示す図である。
ミラーホルダ137は、複数のミラー136を保持しており、ミラー136に付着するデブリDBの付着量が規定量を超えた際に駆動機構134によってミラー136を駆動し、デブリDBが付着したミラー136からデブリDBの付着していないミラー136に交換する。これにより、真空チャンバVC内の真空環境を破ることなくミラー136を交換することができる。ミラー136を交換することでデブリDBによるレーザー光の散乱及び吸収を除去し、ミラー136にデブリDBが付着することによるレーザー光学系20の光学性能の劣化(即ち、ミラー136に付着したデブリDBに起因するレーザー光のターゲットまでの透過率低下)を防止することができる。なお、ミラーホルダ137が保持するミラー136の数は、本実施形態では、3つであるが、かかる数は例示的である。
従って、吸着機構130にミラー136及びミラーホルダ137を用いた場合においても、デブリDBの付着により低下したレーザー光学系20の光学性能を回復させ、安定したEUV光を供給することが可能となる。また、ミラー136を吸着機構130に用いた場合には、レーザー光源部10とターゲットとを直線上に配置しなくてもよくなるため、レーザー導入窓22に付着するデブリDB自体を低減することができる。
なお、吸着機構130に用いるミラー136及びミラーホルダ137の構成は、図9及び図11に示す構成だけには限らない。図11及び図12に示すように、ミラーホルダ137を1つのミラー136としてもよい。ミラーホルダ137(ミラー136)は、レーザー光のスポットLSに対して十分に大きな平面ミラーから構成され、駆動機構134により図12に示すx、y軸方向に駆動することができる。ミラーホルダ137にデブリDBが付着するとレーザー光が散乱するため、かかる散乱光を検出部132で検出することでデブリDBの付着量を見積もることができる。なお、デブリDBの付着量と散乱光との関係は、予め求めておく必要がある。ここで、図11は、図9及び図10に示す吸着機構130とは異なる構成を有する光発生装置1を示す概略ブロック図である。図12は、図11に示す吸着機構130の構成を示す図である。
図12(a)に示すように、ミラーホルダ137の領域ME1に付着するデブリDBの付着量が規定量を超えた際に駆動機構134によってミラーホルダ137を駆動し、図12(b)に示すように、レーザー光がデブリDBが付着した領域ME1からデブリDBの付着していない領域ME2を通過するようにする。ミラーホルダ137の領域の変更は、真空チャンバVC内の真空環境を破ることなく行うことができる。ミラーホルダ137の領域を変更することでデブリDBによるレーザー光の散乱及び吸収を除去し、ミラーホルダ137のデブリDBが付着することによるレーザー光学系20の光学性能(即ち、ミラーホルダ137の領域ME1に付着したデブリDBに起因するレーザー光のターゲットまでの伝達率低下)を防止することができる。
本実施形態では、ミラーホルダ137は、1つの平面ミラーであり、図12に示すx、y軸方向にのみ駆動されるため、ミラーホルダ137の駆動した後もレーザー光の集光状態及び集光位置は変化しない。
なお、ガラス131及びミラー136に付着したデブリDBの付着量を検出する検出部132は、デブリDBで散乱したレーザー光の散乱光を検出する機構だけではなく、図13に示すように、測定用レーザー光を射出するレーザー射出部132Aと、ガラス131を透過した測定用レーザー光を検出する受光部132A’とから構成してもよい。ガラス131にデブリDBが付着すると測定用レーザー光の透過率が低下するため、受光部132A’で検出される測定用レーザー光の(透過光の)光量からデブリDBの付着量を見積もることができる。ここで、図13は、検出部132の構成の一例を示す図である。
また、検出部132は、図14に示すように、測定用レーザー光を射出するレーザー射出部132Bと、ガラス132で反射した測定用レーザー光を検出する受光部132B’とから構成することもできる。ガラス131にデブリDBが付着するとガラス132からの測定用レーザー光の反射光が増加するため、受光部132B’で検出される測定用レーザー光の(反射光の)光量からデブリDBの付着量を見積もることができる。なお、吸着機構130にミラー136を用いた場合には、デブリDBがミラー136に付着するとミラー136から反射する測定用レーザー光の反射光が低下するため、受光部132B’で検出される測定用レーザー光の(反射光の)光量からデブリDBの付着量を見積もることができる。ここで、図14は、検出部132の構成の一例を示す図であって、図14(a)は吸着機構130にレンズ131を用いた場合を示し、図14(b)は吸着機構130にミラー136を用いた場合を示している。
更に、ガラス131及びミラー136に付着したデブリDBの付着量を検出する検出部132は、デブリDBで散乱したレーザー光の散乱光を検出する機構だけではなく、図15に示すように、ガラス131及びミラー136に取り付けた温度計132Cでもよい。ガラス131及びミラー136にデブリDBが付着すると、ガラス131及びミラー136がレーザー光の一部を吸収するため、温度上昇を生じる。デブリDBの付着量が増加すると、レーザー光の吸収量が増加して温度上昇も大きくなるため、温度計132Cが検出するガラス131及びミラー136の温度からデブリDBの付着量を見積もることができる。ここで、図15は、検出部132の構成の一例を示す図である。
また、ガラス131及びミラー136に付着したデブリDBの付着量を検出する検出部132は、デブリDBで散乱したレーザー光の散乱光を検出する機構だけではなく、図16に示すように、真空チャンバVC内に設置された水晶振動子膜厚計132Dでもよい。水晶振動子膜厚計132Dは、ガラス131及びミラー136の近傍に配置することが好ましい。
本実施形態の光発生装置1は、検出部132によってガラス131及びミラー136に付着したデブリDBの量を検出し、規定量を超えた際にガラス131及びミラー136の交換を行っているが、必ずしも付着したデブリDBの量を検出せず、定期的にガラス131及びミラー136を交換することで、レーザー光学系20の光学性能の低下を防止してもよい。ガラス131及びミラー136の交換を開始するタイミングは、適当な時間間隔で行ってもよいが、実験又は理論的に予め求めておくことが望ましい。例えば、レーザー光LLの発光回数に対して付着するデブリDBの量との関係を予め求めておき、かかる関係に基づいてガラス131及びミラー136を交換するか判断するようにしてもよい。
更に、吸着機構130は、図17に示すように、フィルム138と、フィルム駆動機構139とから構成してもよい。偏向手段110及び遮断機構120によって除去できなかった2000m/sの速度を超える中性のデブリDB及び4000m/sの速度を超える電荷を帯びたデブリDBeをフィルム138に吸着させる又はフィルム138との衝突により散乱させることで、かかるデブリDBがレーザー導入窓22に到達し、付着することを防止することができる。ここで、図17は、図1及び図5に示す吸着機構130とは異なる構成を有する光発生装置1を示す概略ブロック図である。
フィルム138は、フィルム駆動機構139によってレーザー光の発光時に常に駆動しているため、適当な速度でフィルム138を駆動させることで、フィルム138に付着したデブリDBに起因するレーザー光学系20の光学性能の低下を防止することができる。レーザー光の発光回数とフィルム138に付着するデブリDBの付着量との関係を予め求め、かかる関係からフィルム138の駆動速度を設定する。但し、フィルム138に付着するデブリDBの量を常に検出し、かかる検出結果からフィルム138の駆動速度を設定してもよい。デブリDBの付着量が多いほどフィルム138の駆動速度は速くなる。
本実施形態の光発生装置1と図24に示す従来の光発生装置とのレーザー光のショット数とEUV光ELの光強度との関係を図18に示す。同図は、縦軸にEUV光の光強度を、横軸にレーザー光のショット数を採用し、本実施形態の光発生装置1と従来の光発生装置とでフィルムの駆動速度が同じ場合を示している。図18を参照するに、従来の光発生装置において、光発生装置1と同等のEUV光の光強度を得るためには、かかる光強度の比率に応じてフィルムの駆動速度を速める必要がある。更に、光発生装置1と同等のEUV光の発光時間を得るためには、かかる発光時間に応じた長さのフィルムが必要となる。光発生装置1は、デブリDBを除去する手段として吸着機構だけを有する従来の光発生装置に比べて偏向手段110及び遮断機構120を有するため、フィルム138に付着するデブリDBの付着量が低減し、フィルム駆動機構139への負担が少なく、長時間の発光が可能となる。また、フィルム138の長さも従来の光発生装置と比べて短くてもよくなる。
光発生装置1は、図19に示すように、防止手段100としてガス供給機構140を更に有してもよい。ガス供給機構140は、偏向手段110と遮断機構120との間に配置され、デブリDBを減速及び/又は偏向させるガス流GFを形成するガスを供給する。ここで、図19は、防止手段100としてガス供給機構140を更に有する光発生装置1の構成を示す概略ブロック図である。
上述したように、遮断機構120によって1000m/s乃至2000m/s以下の速度を有するデブリDBは除去することが可能であるが、ガス供給機構140が供給するガスが形成するガス流GFによりデブリDBの飛散速度を減速させることで更に多くのデブリDBを除去することが可能となる。また、ガス供給機構140は、ガスとデブリとの衝突によりデブリDBの進行方向を変える効果も有する。供給するガスは、真空チャンバVCが収納する光学素子を汚染しないもの、デブリDBを減速及び散乱させるために質量数の大きいもの、レーザー光に対して吸収及び屈折作用を示さないものが好ましい。かかるガスとしては、例えば、Xeなどの不活性ガスがある。
EUV光は、ガスによる吸収が大きいためEUV光の光路は超高真空に保たれる必要がある。そこで、図19に示すように、ガス供給機構140とプラズマPLとの間に差動排気機構150を設け、ガス供給機構140により供給されたガスは、差動排気機構150が有する排気系152により排気することが好ましい。また、ガス供給機構140が供給したガスを回収する回収機構142も設けることが好ましい。
ガス流GFにより効率よくデブリDBを減速及び散乱させるためには、ガス流量が多い方が好ましく、ガス流量の上限は、例えば、EUV光の光路に必要な真空度及び差動排気機構150の能力によって決まる。ガスの供給は、レーザー光の発光に同期させる必要はなく、連続的に供給してもよい。また、ガス供給機構140によるガスの供給において、分子流領域において十分に平行流としたガスを供給することで、対向して設置される回収機構142での回収効率を高め、より多くのガスを流すことが可能となる。
光発生装置1によれば、防止手段100によってレーザー導入窓22に付着するデブリDBを良好に除去することができるので、レーザー光学系20の性能の低下を抑え、安定してEUV光を発生させることができる。
なお、発生するデブリDBのうち、電気的に中性のデブリや1000m/s以下の速度のデブリが支配的である場合には、必ずしも磁場発生装置110A(即ち、磁石112A)又は電場発生装置110B(即ち、電極112B)は必要ではなく、防止手段100は、遮断機構120と吸着機構130との組み合わせでもよい。
また、発生するデブリDBのうち、電荷を帯びたデブリDBが支配的である場合には、必ずしも遮断機構120は必要ではなく、防止手段100は、偏向手段110と吸着機構130との組み合わせでもよい。
また、プラズマPLから発生するデブリDBとして、比較的電荷を帯び難く、また小質量で高速のデブリを発生するようなターゲットを使用する場合には、ガス供給機構140と遮断機構120を組合わせて用いることが有効である。
以下、図20を参照して、本発明の光発生装置1を適用した例示的な露光装置300について説明する。ここで、図20は、本発明の一側面としての露光装置300の構成を示す概略ブロック図である。
本発明の露光装置300は、露光用の照明光としてEUV光(例えば、波長13.4nm)を用いて、例えば、ステップ・アンド・スキャン方式やステップ・アンド・リピート方式でレチクル320に形成された回路パターンを被処理体340に露光する投影露光装置である。かかる露光装置は、サブミクロンやクオーターミクロン以下のリソグラフィー工程に好適であり、以下、本実施形態ではステップ・アンド・スキャン方式の露光装置(「スキャナー」とも呼ばれる。)を例に説明する。ここで、「ステップ・アンド・スキャン方式」とは、レチクルに対してウェハを連続的にスキャン(走査)してレチクルパターンをウェハに露光すると共に、1ショットの露光終了後ウェハをステップ移動して、次の露光領域に移動する露光方法である。「ステップ・アンド・リピート方式」は、ウェハの一括露光ごとにウェハをステップ移動して次のショットの露光領域に移動する露光方法である。
図20を参照するに、露光装置300は、照明装置310と、レチクル320を載置するレチクルステージ325と、投影光学系330と、被処理体340を載置するウェハステージ345と、アライメント検出機構350と、フォーカス位置検出機構360とを有する。
照明装置310は、投影光学系330の円弧状の視野に対する円弧状のEUV光(例えば、波長13.4nm)によりレチクル320を照明する照明装置であって、光発生装置1と、照明光学系314とを有する。
光発生装置1は、上述した通りのいかなる形態をも適用可能であり、ここでの詳細な説明は省略する。また、図20では、図1に示す光発生装置1を使用するが、かかる形態は例示的であり本発明はこれに限定されない。
照明光学系314は、集光ミラー314a、オプティカルインテグレーター314bから構成される。集光ミラー314aは、レーザープラズマからほぼ等方的に放射されるEUV光を集める役割を果たす。オプティカルインテグレーター314bは、レチクル320を均一に所定の開口数で照明する役割を持っている。
レチクル320は、反射型レチクルで、その上には転写されるべき回路パターン(又は像)が形成され、レチクルステージ325に支持及び駆動されている。レチクル320から発せられた回折光は、投影光学系330で反射されて被処理体340上に投影される。レチクル320と被処理体340とは、光学的に共役の関係に配置される。露光装置300は、スキャナーであるため、レチクル320と被処理体340を走査することによりレチクル320のパターンを被処理体340上に縮小投影する。
レチクルステージ325は、レチクル320を支持して図示しない移動機構に接続されている。レチクルステージ325は、当業界周知のいかなる構造をも適用することができる。図示しない移動機構は、リニアモーターなどで構成され、少なくともX方向にレチクルステージ325を駆動することでレチクル320を移動することができる。露光装置300は、レチクル320と被処理体340を同期した状態で走査する。
投影光学系330は、複数の反射ミラー(即ち、多層膜ミラー)330aを用いて、レチクル320面上のパターンを像面である被処理体340上に縮小投影する。複数のミラー330aの枚数は、4枚乃至6枚程度である。少ない枚数のミラーで広い露光領域を実現するには、光軸から一定の距離だけ離れた細い円弧状の領域(リングフィールド)だけを用いて、レチクル320と被処理体340を同時に走査して広い面積を転写する。投影光学系330の開口数(NA)は、0.2乃至0.3程度である。
被処理体340は、本実施形態ではウェハであるが、液晶基板その他の被処理体を広く含む。被処理体340には、フォトレジストが塗布されている。
ウェハステージ345は、ウェハチャック345aによって被処理体340を支持する。ウェハステージ345は、例えば、リニアモーターを利用してXYZ方向に被処理体340を移動する。レチクル320と被処理体340は、同期して走査される。また、レチクルステージ325の位置とウェハステージ345の位置は、例えば、レーザー干渉計などにより監視され、両者は一定の速度比率で駆動される。
アライメント検出機構350は、レチクル320の位置と投影光学系330の光軸との位置関係、及び、被処理体340の位置と投影光学系330の光軸との位置関係を計測し、レチクル320の投影像が被処理体340の所定の位置に一致するようにレチクルステージ325及びウェハステージ345の位置と角度を設定する。
フォーカス位置検出機構360は、被処理体340面でフォーカス位置を計測し、ウェハステージ345の位置及び角度を制御することによって、露光中、常時被処理体340面を投影光学系330による結像位置に保つ。
露光において、照明装置310から射出されたEUV光はレチクル320を照明し、投影光学系330によりレチクル320面上のパターンを被処理体340面上に結像する。本実施形態において、像面は円弧状(リング状)の像面となり、レチクル320と被処理体340を縮小倍率比の速度比で走査することにより、レチクル320の全面を露光する。露光装置300に用いられる照明装置310が有する光発生装置1は、良好なデブリ除去を実現し、安定してEUV光を発生させることができるため、高いスループットで経済性よくデバイス(半導体素子、LCD素子、撮像素子(CCDなど)、薄膜磁気ヘッドなど)を提供することができる。
次に、図21及び図22を参照して、上述の露光装置300を利用したデバイス製造方法の実施例を説明する。図21は、デバイス(ICやLSIなどの半導体チップ、LCD、CCD等)の製造を説明するためのフローチャートである。ここでは、半導体チップの製造を例に説明する。ステップ1(回路設計)では、デバイスの回路設計を行う。ステップ2(マスク製作)では、設計した回路パターンを形成したマスクを製作する。ステップ3(ウェハ製造)では、シリコンなどの材料を用いてウェハを製造する。ステップ4(ウェハプロセス)は、前工程と呼ばれ、マスクとウェハを用いてリソグラフィー技術によってウェハ上に実際の回路を形成する。ステップ5(組み立て)は、後工程と呼ばれ、ステップ4によって作成されたウェハを用いて半導体チップ化する行程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の工程を含む。ステップ6(検査)では、ステップ5で作成された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テストなどの検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これが出荷(ステップ7)される。
図22は、ステップ4のウェハプロセスの詳細なフローチャートである。ステップ11(酸化)では、ウェハの表面を酸化させる。ステップ12(CVD)では、ウェハの表面に絶縁膜を形成する。ステップ13(電極形成)では、ウェハ上に電極を蒸着などによって形成する。ステップ14(イオン打ち込み)では、ウェハにイオンを打ち込む。ステップ15(レジスト処理)では、ウェハに感光剤を塗布する。ステップ16(露光)では、露光装置300によってマスクの回路パターンをウェハに露光する。ステップ17(現像)では、露光したウェハを現像する。ステップ18(エッチング)では、現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ19(レジスト剥離)では、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行うことによってウェハ上に多重に回路パターンが形成される。本実施形態のデバイス製造方法によれば、従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。このように、露光装置300を使用するデバイス製造方法、並びに結果物としてのデバイスも本発明の一側面を構成する。
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。