JP4365807B2 - スクロール圧縮機 - Google Patents
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Description
そして、上述した内周部チップシール隙間δi と外周部チップシール隙間δo との間には、内周部チップシール隙間δi 側の段付部に隣接する位置に、チップシールを設けることができないチップシール切れ目部分が存在する。このチップシール切れ目部分は、歯先の先端が内周部チップシール隙間δi を形成するチップシール上端と略同一面とされる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上述したチップシール切れ目部分が内周部チップシール隙間δi に設定された領域では圧縮ガスの出口側から最も遠い位置にあるため、その分熱影響による熱膨張も小さくなることに着目し、段付部における高圧側から低圧側への漏れを低減して圧縮効率をより一層向上させることを目的とする。
本発明に係るスクロール圧縮機は、端板の一側面に立設された渦巻き状の壁体を有する固定スクロールと、端板の一側面に立設された渦巻き状の壁体を有し、前記各壁体どうしを噛み合わせて自転を阻止されつつ公転旋回運動可能に支持された旋回スクロールとを備え、前記固定スクロールと旋回スクロールの少なくともいずれか一方の端板には、前記一側面に、その高さが壁体の渦に沿ってその中心部側で高く外終端側で低くなるよう形成された段差部が設けられ、前記固定スクロールと旋回スクロールのいずれか他方の壁体の上縁は、前記端板の段差部に対応し、複数の部位に分割されかつ該部位の高さが渦の中心部側で低く外終端側で高くなる段付形状とされ、前記段差部の外周部チップシール隙間δo と内周部チップシール隙間δi との関係がδo <δi であるスクロール圧縮機において、
前記外周部チップシール隙間δo と前記内周部チップシール隙間δi との間に存在するチップシール切れ目部分の段差チップ隙間δをδo ≦δ<δi
となるように設定したことを特徴とするものである。
≦δ<δi となるように設定されているので、チップシールのない切れ目部分においては、段差チップ隙間δが従来より小さくなる。このため、圧縮ガスが高圧側から低圧側へ流出する流路開口の断面積を小さくして圧縮ガス漏れ量を低減できるので、スクロール部材に段付形状を採用しているスクロール圧縮機の圧縮効率が向上するという顕著な効果が得られる。
図2はスクロール圧縮機の構成例を示す断面図であり、図中の符号1は密閉状態のハウジング、2はハウジング1内を高圧室HRと低圧室LRとに分離するディスチャージカバー、5はフレーム、6は吸入管、7は吐出管、8はモータ、9は回転シャフト、10は自転阻止機構である。そして、符号12は固定スクロール、13は固定スクロール12に噛み合う旋回スクロールである。
この場合、旋回スクロール13は、モータ8で駆動される回転シャフト9の上端に設けられて旋回運動する偏心ピン9a及び自転阻止機構10の作用により、固定スクロール12に対して公転旋回運動を行うようになっている。一方、固定スクロール12は、ハウジング1に固定されており、端板12aの背面中央には圧縮された流体の吐出ポート11が設けられている。
端板13aの底面も上述した端板12aと同様に、段差部43が形成されていることにより、中心部よりに設けられた底の浅い底面13fと外終端よりに設けられた底の深い底面13gとの2つの部位に分けられている。隣り合う底面13f,13g間には、段差部43を構成し、前記底面13f,13gを繋いで垂直に切り立つ連結壁面13hが存在している。
具体的には、壁体12bの上縁は、中心部寄りに設けられた低位の上縁12cと外終端寄りに設けられた高位の上縁12dとの2つの部位に分けられ、隣り合う上縁12c,12d間には、両者を繋いで旋回面に垂直な連結縁12eが存在している。壁体13bの上縁も上述した壁体12bと同様に、中心部寄りに設けられた低位の上縁13cと外終端寄りに設けられた高位の上縁13dとの2つの部位に分けられ、隣り合う上縁13c,13d間には、両者を繋いで旋回面に垂直な連結縁13eが存在している。
また、連結壁面12hは、端板12aを旋回軸方向から見ると旋回スクロールの旋回に伴って連結縁13eが描く包絡線に一致する円弧をなしており、連結壁面13hも連結壁面12hと同様に、連結縁12eが描く包絡線に一致する円弧をなしている。
すなわち、固定スクロール12に旋回スクロール13を組み付けると、低位の上縁13cに設けたチップシール15bが底の浅い底面12fに当接し、高位の上縁13dに設けたチップシール15aが底の深い底面12gに当接することとなる。同時に、低位の上縁12cに設けたチップシール14aが底の浅い底面13fに当接し、高位の上縁12dに設けたチップシール14bが底の深い底面13gに当接することとなる。この結果、両スクロール12,13間には、互いに向かい合う端板12a,13aと壁体12b,13bとに区画されて圧縮室Cが形成される。なお、図3においては、固定スクロール12の段付形状を示すため、固定スクロール12の上下を逆にして図示されている。
図のように、固定スクロール12の底の深い底面12gと上縁13dに取付けられたチップシール15aとの間には、高さδo の外周部チップシール隙間21が形成され、底の浅い底面12fと上縁13cに取付けられたチップシール15bとの間には、高さδi の内周部チップシール隙間22が形成されており、外周部チップシール隙間21及び内周部チップシール隙間22の高さ(隙間量)は、
δo <δiとなるように設定されている。
すなわち、段差チップ隙間23は、運転時の熱膨張を考慮して外周部チップシール隙間21より大きな隙間高さに設定された内周部チップシール隙間22において、吐出ポート11から最も遠く外周部チップシール隙間21に隣接した位置にある。このため、内周部チップシール隙間22では最も熱膨張が小さくなるため、その隙間高さを外周部チップシール隙間22の高さδo に近づけるか同等まで小さく設定して漏出流路となる開口面積を狭め、高圧側から低圧側へ漏れる圧縮流体量の低減を優先した寸法設定が可能となる。
この結果、段付形状のスクロール圧縮機構においては、段差チップ隙間23の高さδが小さくなるので、圧縮時に段差部42の隙間から漏出する圧縮ガス漏れ量を低減して圧縮効率を向上させることができる。
図5(a)に示した第1変形例は、段差面24の角部を直線的に除去する面取加工を施して面取部24cを形成したものであるが、曲面に除去するR加工を採用してもよい。また、図5(b)に示した第2変形例は、段差面24の角部に面取加工より長い部分的な傾斜面を形成するテーパ加工を施したものである。さらに、図5(c)に示した第3変形例は、段差面24の角部全体を傾斜面とするテーパ加工を施したものである。
図6に示す第4変形例では、固定スクロール12の底面12fに形成した段差面25により高さδの段差チップ隙間23が形成されている。この場合の段差面25は、たとえば部分的な表面処理により形成された4フッ化エチレン樹脂やアルマイト等の表面処理膜、あるいは、アルミ箔等の箔を部分的に貼り付けたものである。なお、このような表面処理膜や箔による段差面25は、歯先側及び歯底側のいずれに形成してもよい。
の段差チップ隙間23が重力方向上側に位置するので、段差チップ隙間23の高さδは、δr <δf となるように設定すればよい。
この結果、重力方向下側に溜まりやすい潤滑油のシール作用により、比較的広く設定された重力方向下側の段差チップ隙間23のシール性を確保しやすくなる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
2 ディスチャージカバー
11 吐出ポート
12 固定スクロール
12a,13a 端板
12b,13b 壁体
12c,12d,13c,13d 上縁(歯先)
12e,13e 連結縁
12f,12g,13f,13g 底面(歯底)
12h,13h 連結壁面
13 旋回スクロール
14a,14b,15a,15b チップシール
21 外周部チップシール隙間
22 内周部チップシール隙間
23 段差チップ隙間
24,25 段差面
24a 傾斜面
42,43 段差部
C 圧縮室
Claims (4)
- 端板の一側面に立設された渦巻き状の壁体を有する固定スクロールと、端板の一側面に立設された渦巻き状の壁体を有し、前記各壁体どうしを噛み合わせて自転を阻止されつつ公転旋回運動可能に支持された旋回スクロールとを備え、前記固定スクロールと旋回スクロールの少なくともいずれか一方の端板には、前記一側面に、その高さが壁体の渦に沿ってその中心部側で高く外終端側で低くなるよう形成された段差部が設けられ、前記固定スクロールと旋回スクロールのいずれか他方の壁体の上縁は、前記端板の段差部に対応し、複数の部位に分割されかつ該部位の高さが渦の中心部側で低く外終端側で高くなる段付形状とされ、前記段差部の外周部チップシール隙間δo と内周部チップシール隙間δi との関係がδo <δi であるスクロール圧縮機において、
前記外周部チップシール隙間δo と前記内周部チップシール隙間δi との間に存在するチップシール切れ目部分の段差チップ隙間δをδo ≦δ<δi
となるように設定したことを特徴とするスクロール圧縮機。 - 請求項1に記載のスクロール圧縮機において、
前記スクロ−ル圧縮機を縦型とした場合の前記段差チップ隙間δは、前記固定スクロールの歯先に生じる段差チップ隙間δf と前記旋回スクロールの歯先に生じる段差チップ隙間δr とを比較して重力方向上側に位置する一方の段差チップ隙間が小さく設定されていることを特徴とするスクロール圧縮機。 - 請求項1または請求項2に記載のスクロール圧縮機において、
前記段差チップ隙間δは、表面処理膜または箔の貼り付けにより形成された段差により設定されたことを特徴とするスクロール圧縮機。 - 請求項1または2に記載のスクロール圧縮機において、
前記段差チップ隙間δの角部に面取加工、R加工またはテーパ加工を施したことを特徴とするスクロール圧縮機。
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