JP4410726B2 - スクロール圧縮機 - Google Patents
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Description
このような圧縮ガスの漏出流路となる微小隙間として、段付形状を採用したスクロール圧縮機の段差部に設けられている「段差メッシュ隙間」と呼ばれる隙間がある。この段差メッシュ隙間は、段付形状の段差部において歯底側と歯先側との段部側面間(連結縁と連結壁面との間)に形成される隙間のことであり、スクロール圧縮機に2箇所ある段差メッシュ隙間は運転停止状態で同じ値となるように設定されている。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、運転状態における段差メッシュ隙間を最適化して圧縮効率を向上させたスクロール圧縮機を提供することにある。
本発明に係るスクロール圧縮機は、端板の一側面に立設された渦巻き状の壁体を有する固定スクロールと、端板の一側面に立設された渦巻き状の壁体を有し、前記各壁体どうしを噛み合わせて自転を阻止されつつ公転旋回運動可能に支持された旋回スクロールとを備え、前記固定スクロールと旋回スクロールの端板には、前記一側面に、その高さが壁体の渦に沿ってその中心部側で高く外終端側で低くなるよう形成された段差部が設けられ、前記固定スクロールと旋回スクロールの壁体の上縁は、前記端板の段差部に対応し、複数の部位に分割されかつ該部位の高さが渦の中心部側で低く外終端側で高くなる段付形状とされたスクロール圧縮機において、前記固定スクロールの歯底と前記旋回スクロールの歯先との段部側面間に生じる第1の段部メッシュ隙間設定値(Hf)と、前記旋回スクロールの歯底と前記固定スクロールの歯先との段部側面間に生じる第2の段部メッシュ隙間設定値(Ho)とを有し、前記旋回スクロールが運転時にガス圧を受けて傾斜することで互いに接近する段部メッシュ隙間設定値を互いに離間する他方より大きく設定し、前記第1及び第2の段部メッシュ隙間設定値(Hf,Ho)は、噛み合い開始時に形成される段部メッシュ隙間量(hs)よりも噛み合い終了時に形成される段部メッシュ隙間量(he)を小さく(hs>he)設定し、噛み合い開始から噛み合い終了に至るまで段部メッシュ隙間量(h)が徐々に減少するように設定したことを特徴とするものである。
さらに、差圧が大きい圧縮過程後半ほど段差メッシュ隙間を小さく設定することや、差圧が大きい圧縮過程後半ほど連結壁面と連結縁との接触面積を大きくする非対称の断面形状を採用してシール性能を増すことによって、段付形状の段付部を有するスクロール圧縮機の圧縮効率をより一層向上させることができる。
図3はスクロール圧縮機の構成例を示す断面図であり、図中の符号1は密閉状態のハウジング、2はハウジング1内を高圧室HRと低圧室LRとに分離するディスチャージカバー、5はフレーム、6は吸入管、7は吐出管、8はモータ、9は回転シャフト、10は自転阻止機構である。そして、符号12は固定スクロール、13は固定スクロール12に噛み合う旋回スクロールである。
この場合、旋回スクロール13は、モータ8で駆動される回転シャフト9の上端に設けられて旋回運動する偏心ピン9a及び自転阻止機構10の作用により、固定スクロール12に対して公転旋回運動を行うようになっている。一方、固定スクロール12は、ハウジング1に固定されており、端板12aの背面中央には圧縮された流体の吐出ポート11が設けられている。
端板13aの底面も上述した端板12aと同様に、段差部43が形成されていることにより、中心部よりに設けられた底の浅い底面13fと外終端よりに設けられた底の深い底面13gとの2つの部位に分けられている。隣り合う底面13f,13g間には、段差部43を構成し、前記底面13f,13gを繋いで垂直に切り立つ連結壁面13hが存在している。
具体的には、壁体12bの上縁は、中心部寄りに設けられた低位の上縁12cと外終端寄りに設けられた高位の上縁12dとの2つの部位に分けられ、隣り合う上縁12c,12d間には、両者を繋いで旋回面に垂直な連結縁12eが存在している。壁体13bの上縁も上述した壁体12bと同様に、中心部寄りに設けられた低位の上縁13cと外終端寄りに設けられた高位の上縁13dとの2つの部位に分けられ、隣り合う上縁13c,13d間には、両者を繋いで旋回面に垂直な連結縁13eが存在している。
また、連結壁面12hは、端板12aを旋回軸方向から見ると旋回スクロールの旋回に伴って連結縁13eが描く包絡線に一致する円弧をなしており、連結壁面13hも連結壁面12hと同様に、連結縁12eが描く包絡線に一致する円弧をなしている。
すなわち、固定スクロール12に旋回スクロール13を組み付けると、低位の上縁13cに設けたチップシール15bが底の浅い底面12fに当接し、高位の上縁13dに設けたチップシール15aが底の深い底面12gに当接することとなる。同時に、低位の上縁12cに設けたチップシール14aが底の浅い底面13fに当接し、高位の上縁12dに設けたチップシール14bが底の深い底面13gに当接することとなる。この結果、両スクロール12,13間には、互いに向かい合う端板12a,13aと壁体12b,13bとに区画されて圧縮室Cが形成される。なお、図4においては、固定スクロール12の段付形状を示すため、固定スクロール12の上下を逆にして図示されている。
すなわち、段差部42において固定スクロール12の連結壁面(歯底側段部壁面)12hと旋回スクロール13の連結縁(歯先側段部壁面)との段部側面間に生じる第1の段部メッシュ隙間設定値(以下、「固定側設定値」と呼ぶ)Hf と、段差部43において旋回スクロール13の連結壁面(歯底側段部壁面)13hと固定スクロール12の連結縁(歯先側段部壁面)12eとの段部側面間に生じる第2の段部メッシュ隙間設定値(以下、「旋回側設定値」と呼ぶ)Hoとを比較した場合、運転時にガス圧を受けて旋回スクロール13が傾斜することで互いに接近する側となる固定側設定値Hfが、互いに離間する旋回側設定値Hoよりも大きくなるように(Hf>Ho)設定されている。
一方の固定側段部メッシュ隙間 Hf′は、旋回スクロール13の傾斜により連結縁13eが連結壁面12hに接近するので、停止状態で設定された固定側設定値Hf
より狭くなる。反対に、旋回側段部メッシュ隙間 Ho′は、旋回スクロール13の傾斜により連結縁12eが連結壁面13hから離間するので、停止状態で設定された固定側設定値Ho
より広くなる。
この場合、段差部42,43で噛み合っている連結壁面(歯底)12h,13h及び連結縁(歯先)12e,13eの断面形状は、いずれも略半円形断面とされる。
しかし、高圧側PHと低圧側PLとの差圧が小さい圧縮開始初期においては、段部メッシュ隙間量hが比較的大きくても圧縮したガスの漏れ量はそれほど多くない。そして、圧縮過程が進行し、高圧側PHと低圧側PLとの差圧が大きくなるにつれて、段差メッシュ量hが一定であれば漏れ量は増加するのであるが、段差メッシュ隙間量hは徐々に小さくなるように設定されているので、圧縮したガスの漏れ量も制限されて少なくてすむ。この結果、圧縮過程全体としての圧縮ガス漏れ量を低減することができるので、段付形状を採用したスクロール圧縮機の圧縮効率を向上させることができる。
図7では、(a)に示す噛み合い開始の状態から圧縮が始まり、旋回スクロール13の連結縁13e′が圧縮過程の進行とともに(b)〜(d)の順に移動して(e)で圧縮が完了する。このような圧縮過程において、圧縮室Cは旋回スクロール13の壁体13bにより高圧側PHと低圧側PLとに分割される。
具体的に説明すると、噛み合い開始の状態では線接触にして接触面積を小さくしても、差圧が小さいので漏れ量は多くない。しかし、連結壁面(歯底)12h′,13h′及び連結縁(歯先)12e′,13e′は、圧縮過程が進んで差圧が大きくなるにつれて線接触から面接触に変化し、接触面積が徐々に増すような非対称の曲率半径の断面形状としたので、差圧の大きい圧縮過程後半では大きな接触面積により十分なシール性能を得ることができる。このため、差圧の大きい圧縮過程の後半でも段差メッシュ隙間からの漏れ量を低減することができるようになるので、段付形状を採用したスクロール圧縮機の圧縮効率を向上させることができる。
また、段差メッシュ隙間は、差圧が大きい圧縮過程後半ほど小さく設定したので、これによっても段付形状の段差部を有するスクロール圧縮機の圧縮効率が向上するという顕著な効果が得られる。さらに、差圧が大きい状態で連結壁面と連結縁との接触面積を大きくする非対称の断面形状を採用し、圧縮過程後半ほどシール性能を増すようにしたので、これによっても段付形状の段差部を有するスクロール圧縮機の圧縮効率が向上するという顕著な効果が得られる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
2 ディスチャージカバー
11 吐出ポート
12 固定スクロール
12a,13a 端板
12b,13b 壁体
12c,12d,13c,13d 上縁(歯先)
12e,13e 連結縁(歯先)
12f,12g,13f,13g 底面(歯底)
12h,13h 連結壁面(歯底)
13 旋回スクロール
42,43 段差部
C 圧縮室
Hf ,Ho 段部メッシュ隙間設定値
h,hs ,he 段差メッシュ隙間量
Claims (2)
- 端板の一側面に立設された渦巻き状の壁体を有する固定スクロールと、端板の一側面に立設された渦巻き状の壁体を有し、前記各壁体どうしを噛み合わせて自転を阻止されつつ公転旋回運動可能に支持された旋回スクロールとを備え、前記固定スクロールと旋回スクロールの端板には、前記一側面に、その高さが壁体の渦に沿ってその中心部側で高く外終端側で低くなるよう形成された段差部が設けられ、前記固定スクロールと旋回スクロールの壁体の上縁は、前記端板の段差部に対応し、複数の部位に分割されかつ該部位の高さが渦の中心部側で低く外終端側で高くなる段付形状とされたスクロール圧縮機において、
前記固定スクロールの歯底と前記旋回スクロールの歯先との段部側面間に生じる第1の段部メッシュ隙間設定値(Hf)と、前記旋回スクロールの歯底と前記固定スクロールの歯先との段部側面間に生じる第2の段部メッシュ隙間設定値(Ho)とを有し、前記旋回スクロールが運転時にガス圧を受けて傾斜することで互いに接近する段部メッシュ隙間設定値を互いに離間する他方より大きく設定し、
前記第1及び第2の段部メッシュ隙間設定値(Hf,Ho)は、噛み合い開始時に形成される段部メッシュ隙間量(hs)よりも噛み合い終了時に形成される段部メッシュ隙間量(he)を小さく(hs>he)設定し、噛み合い開始から噛み合い終了に至るまで段部メッシュ隙間量(h)が徐々に減少するように設定したことを特徴とするスクロール圧縮機。 - 請求項1に記載のスクロール圧縮機において、
前記段差部で噛み合う歯底及び歯先の断面形状が、噛み合い開始時から噛み合い終了時まで接触面積が増すように曲率半径を変化させた非対称形状であることを特徴とするスクロール圧縮機。
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