JP4364257B2 - 駆動力伝達用プーリ - Google Patents

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Description

本発明は、車両の駆動力を伝達すべく無端状ベルトを懸架可能とされた駆動力伝達用プーリに関するものである。
スクータ式の自動二輪車において一般に採用されている遠心クラッチは、図14に示すように、エンジンの駆動により回転する駆動プーリ(不図示)との間でVベルトを懸架する従動プーリ101と、該従動プーリ101と連結されたドライブプレート104と、該ドライブプレート104の外周面に形成され、回転時の遠心力により側方へ移動可能なクラッチ部材105と、側方へ移動したクラッチ部材105と当接してドライブプレート104とともに回転する出力用ハウジング106と、該出力用ハウジング106の中央から延設されて車両の後輪と減速機を介して連結されたシャフト107とを有していた。
このうち従動プーリ101(駆動力伝達用プーリ)は、同図に示すように、固定側テーパ面102aが形成された固定シーブ102と、該固定シーブ102の固定側テーパ面102aと向かい合った可動側テーパ面103aを有し、当該固定側テーパ面102aと可動側テーパ面103aとの間で無端状ベルト(Vベルト)を懸架しつつ固定シーブ102と共に回転可能とされるとともに、当該固定シーブ102と近接又は離間可能とされた可動シーブ103とから主に構成され、可動シーブ103の固定シーブ102に対する近接又は離間動作により、車両の変速がなされるようになっていた。
固定シーブ102及び可動シーブ103は、共に鉄製部材から成るとともに、それぞれの略中央には開口部102b、103bが形成されており、該開口部102b、103bにそれぞれ円筒状の鉄製部材から成る第1軸部材108及び第2軸部材109を挿通して突出形成させていた。そして、固定シーブ102及び可動シーブ103の開口部102b、103b縁部と、第1軸部材108及び第2軸部材109とをプラズマ溶接又はTig溶接等にて溶着していた。尚、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
しかしながら、上記従来の駆動力伝達用プーリにおいては、固定シーブ102と第1軸部材108と、及び可動シーブ103と第2軸部材109とがそれぞれ鉄製部材から成るので、プラズマ溶接又はTig溶接等にて溶着可能であるものの、全体の重量が嵩んでしまうという問題があった。また、上記従来のものにおいては、開口部102b、103bの内周縁を立ち上げ、その立ち上げた突端と第1軸部材108又は第2軸部材109の端部とをプラズマ溶接又はTig溶接等にて溶着するものであったので、面同士の溶着に比べ、接合強度が乏しいという問題もあった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、全体の重量を軽減させることができるとともに、固定シーブと第1軸部材、又は可動シーブと第2軸部材との接合強度を向上させることができる駆動力伝達用プーリを提供することにある。
請求項1記載の発明は、固定側テーパ面が形成された固定シーブと、該固定シーブの固定側テーパ面と向かい合った可動側テーパ面を有し、当該固定側テーパ面と可動側テーパ面との間で無端状ベルトを懸架しつつ前記固定シーブと共に回転可能とされるとともに、当該固定シーブと近接又は離間可能とされた可動シーブと、前記固定シーブ及び可動シーブの略中央で開口した開口部と、前記固定シーブの開口部から突出形成されて当該固定シーブの回転軸を成すとともに、円筒状の鉄製部材から成る第1軸部材と、前記可動シーブの開口部から突出形成されつつ前記第1軸部材を挿通可能とされるとともに、円筒状の鉄製部材から成る第2軸部材とを有し、車両の駆動力を伝達するための駆動力伝達用プーリにおいて、前記固定シーブ及び可動シーブがアルミ成形品から成るとともに、当該固定シーブ又は可動シーブにおける前記開口部の内周面に溶着面を臨ませつつ前記固定シーブ又は可動シーブにインサート成形された鉄製部材から成り当該溶着面で前記第1軸部材又は第2軸部材と溶着可能とされたインサート部材を具備し、且つ、前記第1軸部材又は第2軸部材をインサート部材の溶着面に圧入しつつ当該溶着面と第1軸部材又は第2軸部材の周面における被溶着面との間で通電させて円環状の電気抵抗溶接することにより、当該第1軸部材又は第2軸部材とインサート部材とが溶着して成るものとされ、且つ、前記インサート部材は、前記固定シーブ又は可動シーブの開口部に対応した貫通孔を有し、当該貫通孔周縁をバーリング加工又はカーリング加工して立ち上げた鉄製の板材から成り、当該立ち上げられて前記開口部の内周面に臨ませた貫通孔縁部が前記溶着面を成すとともに、当該貫通孔縁部の突端が前記電気抵抗溶接のための電極と当接し得ることを特徴とする。
請求項記載の発明は、請求項1記載の駆動力伝達用プーリにおいて、前記第1軸部材又は第2軸部材の被溶着面は、当該第1軸部材又は第2軸部材の周面から径方向に突出した突出部位に形成されて成ることを特徴とする。
請求項記載の発明は、請求項記載の駆動力伝達用プーリにおいて、前記突出部位における被溶着面と連なる部位が面取りされて成り、当該面取り部側から前記インサート部材の溶着面を圧入することを特徴とする。
請求項1の発明によれば、固定シーブ及び可動シーブがアルミ成形品から成るので、駆動力伝達用プーリ全体の重量を軽減させることができるとともに、当該固定シーブ又は可動シーブにおける開口部の内周面に溶着面を臨ませつつ固定シーブ又は可動シーブにインサート成形された鉄製部材から成り当該溶着面で第1軸部材又は第2軸部材と溶着可能とされたインサート部材を具備したので、固定シーブと第1軸部材、又は可動シーブと第2軸部材との接合強度を向上させることができる。
更に、第1軸部材又は第2軸部材をインサート部材の溶着面に圧入しつつ当該溶着面と第1軸部材又は第2軸部材の周面における被溶着面との間で通電させて円環状の電気抵抗溶接することにより、当該第1軸部材又は第2軸部材とインサート部材とが溶着して成るので、固定シーブと第1軸部材又は可動シーブと第2軸部材との溶着を短時間で且つ良好に行わせ、製造時のサイクルタイムの短縮及び組み付け精度の向上を図ることができる。
請求項の発明によれば、第1軸部材又は第2軸部材の被溶着面は、当該第1軸部材又は第2軸部材の周面から径方向に突出した突出部位に形成されて成るので、第1軸部材又は第2軸部材のインサート部材の溶着面への圧入を適切且つ良好に行わせることができるとともに、円環状の電気抵抗溶接を確実に行わせることができる。
請求項の発明によれば、突出部位における被溶着面と連なる部位が面取りされて成り、当該面取り部側からインサート部材の溶着面を圧入するので、当該圧入をより良好に行わせることができるとともに、溶着面と被溶着面とを確実に圧接させ、円環状の電気抵抗溶接をより確実に行わせることができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る駆動力伝達用プーリは、スクータ型の自動二輪車における遠心クラッチ装置の従動プーリに適用されたものである。かかる遠心クラッチ装置は、スクータ型の自動二輪車におけるエンジン駆動力の伝達及びその遮断を行わせるもので、図1に示すように、従動プーリ1と、ドライブプレート4と、クラッチ部材7と、出力用ハウジング6と、シャフト7とから主に構成されている。
従動プーリ1(駆動力伝達用プーリ)は、二輪車のエンジンの駆動により回転する駆動プーリ(不図示)との間で樹脂製のVベルト10(無端状ベルト)を懸架可能とされたものである。かかる従動プーリ1は、アルミ成形品から成る固定シーブ2及び可動シーブ3から構成され、これら固定シーブ2及び可動シーブ3の離間部にはテーパ面(固定側テーパ面2a及び可動側テーパ面3a)が形成されている。これら対向するテーパ面にVベルト10が嵌入して駆動プーリとの間で当該Vベルト10を懸架するようになっている。
固定シーブ2には、図2、3に示すように、アルミ成形品から成るとともに、その略中央で開口した開口部2bが形成されており、その開口部2bから円筒状の鉄製部材から成る第1軸部材8が突出形成されている。この第1軸部材8は、固定シーブ2の回転軸を成すとともに、その内周面にニードルベアリングB1及びボールベアリングB2が配設されて、シャフト7を回転自在に挿通可能とされている。
この固定シーブ2の外周には可動シーブ3が組み付けられている。かかる可動シーブ3は、アルミ成形品から成るとともに、図5に示すように、その略中央で開口した開口部3bが形成されており、その開口部3bから円筒状の鉄製部材から成る第2軸部材9が突出形成されている。この第2軸部材9は、第1軸部材8を挿通して組み付け可能とされており、Vベルト10の回転と共に両シーブが回転し得るとともに、可動シーブ3が固定シーブ2に対して近接又は離間可能とされている。
具体的には、可動シーブ3は、スプリングSPにより固定シーブ2に対して近接する方向(即ち、固定側テーパ面と可動側テーパ面とが近接する方向)へ常時付勢されており、従動プーリ1におけるVベルト10の縮径動作が作用すると、スプリングSPの付勢力に抗して固定シーブ2から遠ざかる方向(同図中左方向)へ移動し得るよう構成されている。このとき、第2軸部材9は、第1軸部材8を挿通して組み付けられているので、当該第1軸部材8に沿って可動シーブ3が摺動し得るようになっている。
しかして、エンジンの回転数が増加すると駆動プーリ側のVベルト10の嵌入部が狭まって、その径が広がるよう構成されているので、これに伴い従動プーリ1側のVベルト10が同図矢印方向へ移動しようとし、かかる作用を受けて可動シーブ3が左方向(Vベルト10の嵌入部の径が縮小する方向)へ移動し、シフトアップするようになっている。このように、本実施形態の遠心クラッチ装置においては、車速に応じてシフトチェンジが自動的になされるよう構成されている。
ドライブプレート4は、従動プーリ1の固定シーブ2に連結されて当該従動プーリ1とともに回転可能なもので、その外周面には、径方向(同図上下方向)へ移動可能な摩擦材から成るクラッチ部材5と、錘11とが配設されている。即ち、従動プーリ1の回転数が所定値以上となると、その遠心力にて拡径する方向へクラッチ部材5が移動し、出力用ハウジング6のフランジ部内周面に当接可能して当該出力用ハウジング6を連れ回しするようになっている。
出力用ハウジング6は、略中央に挿通孔6aが形成されるとともに、ドライブプレート4の外周面を覆って配設された傘状のものであり、当該挿通孔6aにはシャフト7の先端が挿通し得るよう構成されている。また、挿通孔6aの内周面周縁からは、従動プーリ1側に延びる筒状部材6bが一体的(例えば溶接等により固着)に形成されており、かかる筒状部材6bの内周面に形成されたスプラインがシャフト7側に形成されたスプラインと噛み合うよう組み付けられている。
シャフト7は、締付ナットNによりその先端が出力用ハウジング6と連結されており、当該出力用ハウジング6とともに回転し得るものである。かかるシャフト7の基端側には、図示しない減速機(減速歯車等により構成)が接続され、自動二輪車の後輪を駆動し得るようになっている。即ち、従動プーリ1が所定回転数に達すると、その遠心力にてクラッチ部材5が出力用ハウジング6と当接することとなり、当該従動プーリ1及びドライブプレート4の回転力が出力用ハウジング6を介してシャフト7に伝達され、自動二輪車の後輪を駆動させるのである。
ここで、本実施形態における固定シーブ2には、図3に示すように、当該固定シーブ2における開口部2bの内周面に溶着面12aを臨ませつつインサート成形(鋳込み)されたインサート部材12を具備している。このインサート部材12は、例えばプレス鋼板(SP材)などの鉄製部材を所定形状にプレス加工したものから成り、その溶着面12aで第1軸部材8と溶着可能とされたものである。
例えば、インサート部材12は、図4に示すように、中央に貫通孔Aa及び所定箇所に貫通孔Abが形成された鉄製の板材A(同図(a))に対し、その周縁をカーリング加工して立ち上げ部Acを形成した後(同図(b))、貫通孔Aa周縁に対してカーリング加工とは逆方向にバーリング加工を施して溶接面12aを形成する(同図(c))ことにより得られるものである。そして、かかるインサート部材12を成形型内に設置し、その溶接面12aが開口部2bの内周面から臨ませた(露出させた)状態となるようにアルミ材を成形型内に流し込んで成形し、それを冷却固化させることにより図6で示す如き固定シーブ2を得る。
一方、第1軸部材8は、例えば炭素鋼(SCM415やS35Cなど)から成るもので、図7に示すように、その周面におけるインサート部材12との溶接部位には、径方向に突出した突出部位8aが形成されている。この突出部位8aには、被溶着面8aaが形成されるとともに、当該被溶着面8aaと連なる部位が面取りされて面取り部8abが形成されている。かかる面取り部8abは、突出部位8aにおけるインサート部材12の溶着面12aを圧入する方向(同図中左側)に形成されている。
また、本実施形態における可動シーブ3には、図9に示すように、当該可動シーブ3における開口部3bの内周面に溶着面13aを臨ませつつインサート成形(鋳込み)されたインサート部材13を具備している。このインサート部材13は、例えばプレス鋼板(SP材)などの鉄製部材を所定形状にプレス加工したものから成り、その溶着面13aで第2軸部材9と溶着可能とされたものである。
例えば、インサート部材13は、図8に示すように、中央に貫通孔Ba及び所定箇所に貫通孔Bbが形成された鉄製の板材B(同図(a))に対し、その周縁をカーリング加工して立ち上げ部Bcを形成した後(同図(b))、貫通孔Aa周縁に対してカーリング加工と同方向にカーリング加工を施して溶接面13aを形成する(同図(c))ことにより得られるものである。そして、かかるインサート部材13を成形型内に設置し、その溶接面13aが開口部3bの内周面から臨ませた(露出させた)状態となるようにアルミ材を成形型内に流し込んで成形し、それを冷却固化させることにより図9で示す如き可動シーブ3を得る。
一方、第2軸部材9は、例えば炭素鋼(SCM415やS35Cなど)から成るもので、図10に示すように、その周面におけるインサート部材13との溶接部位には、径方向に突出した突出部位9aが形成されている。この突出部位9aには、被溶着面9aaが形成されるとともに、当該被溶着面9aaと連なる部位が面取りされて面取り部9abが形成されている。かかる面取り部9abは、突出部位9aにおけるインサート部材13の溶着面13aを圧入する方向(同図中右側)に形成されている。
然るに、上記固定シーブ2に第1軸部材8を溶着させるには、図11に示すような円環状の電気抵抗溶接装置を用いて行う。尚、可動シーブ3に第2軸部材8を溶着させる場合も以下と同様である。かかる円環状の電気抵抗溶接装置は、突端(図中下端)がリング状に形成された導電体から成る上側電極部材19と、該上側電極部材19と連結された導電体から成る可動型14と、固定シーブ2の固定側テーパ面2aに沿って当接し得る上側パッド部材17と、第1軸部材8を載置させ得ると共に導電体から成る下側電極部材15と、該下側電極部材15と連結された導電体から成る固定型16と、固定シーブ2の固定側テーパ面2aとは反対の面に沿って当接し得る下側パッド部材18とから主に構成されている。
上側電極部材19、可動型14、下側電極部材15及び固定型16は、例えばクロム銅などの良導体から成るとともに、上側パッド部材17及び下側パッド部材18は、非磁性絶縁体から成るものである。そして、同図の左側で示すように、下側パッド18上に固定シーブ2を載置させつつ上側パッド17を固定側テーパ面2aに当接して保持させれば、円環状の電気抵抗溶接装置内に固定シーブ2を固定することができる。
一方、同図左側に示すように、下側電極部材15上には、溶接部位を下方に向けて倒立させた第1軸部材8を載置させるとともに、上側電極部材19の突端を固定シーブ2における開口部2bの開口縁部に当接させておく。この状態から、可動型14を固定型16に対して近接させる方向に動作させ、上側電極部材19を伴って下降させると同時に、当該可動型14と固定型16との間で電圧を印加する。
このとき、図12に示すように、第1軸部材8の突出部位8aにおける面取り部8abに対し、固定シーブ2の開口部2bから臨ませたインサート部材12の溶着面12aが強く押圧することとなって圧入され、その圧入過程で通電が行われて円環状の電気抵抗溶が行われることとなる。これにより、同図右側で示すように、略中央にて第1軸部材8を突出状態で溶着して成る固定シーブ2を得ることができる。このとき、図13に示すように、被溶着面8aaと溶着面12aとが圧接した状態となっている。
上記の如く本実施形態によれば、第1軸部8の被溶着面8aaは、当該第1軸部材8の周面から径方向に突出した突出部位8aに形成されて成るので、第1軸部材8のインサート部材12の溶着面12aへの圧入を適切且つ良好に行わせることができるとともに、通電箇所を限定して円環状の電気抵抗溶接を確実に行わせることができる。また、面取り部8ab側からインサート部材12の溶着面12aを圧入するので、当該圧入をより良好に行わせることができるとともに、溶着面12aと被溶着面8aaとを確実に圧接させ、円環状の電気抵抗溶接をより確実に行わせることができる。
更に、従来の如き溶接トーチを用いたプラズマ溶接又はTig溶接等に比べ、固定シーブ2と第1軸部材8との溶着を短時間で且つ良好に行わせ、製造時のサイクルタイムの短縮及び組み付け精度の向上を図ることができる。即ち、本実施形態の如く円環状の電気抵抗溶接によれば、プラズマ溶接に比べて溶着作業が短時間で済み、入熱量を少なくして歪みを抑制しつつ固定シーブ2と第1軸部材8との溶接を行うことができるのである。
そして、可動型14を上側電極部材19と共に上昇させ、上側パッド17も上昇させれば、第1軸部材8が溶着された固定シーブ2を取り出すことができる。尚、本実施形態においては、上側電極部材19を下降させることにより、固定された第1軸部材8に対して固定シーブ2を動作させて円環状の電気抵抗溶接しているが、固定された固定シーブ2に対して第1軸部材8を動作させ、円環状の電気抵抗溶接するようにしてもよい。
尚、可動シーブ3と第2軸部材9との溶接においても上記と同様であり、面取り部9ab側からインサート部材13の溶着面13aを圧入しつつ通電して円環状の電気抵抗溶接するようになっている。これにより、固定シーブ2と第1軸部材8との溶接と同様、当該圧入をより良好に行わせることができるとともに、溶着面13aと被溶着面9aaとを確実に圧接させ、円環状の電気抵抗溶接をより確実に行わせることができる。
上記実施形態によれば、固定シーブ2又は可動シーブ3がアルミ成形品から成るので、駆動力伝達用プーリ(従動プーリ1)全体の重量を軽減させることができるとともに、当該固定シーブ2又は可動シーブ3における開口部2b、3bの内周面に溶着面12a、13aを臨ませつつ固定シーブ2又は可動シーブ3にインサート成形された鉄製部材から成り当該溶着面12a、13aで第1軸部材8又は第2軸部材9と溶着可能とされたインサート部材12、13を具備したので、固定シーブ2と第1軸部材8、又は可動シーブ3と第2軸部材9との接合強度を向上させることができる。
また、第1軸部材8又は第2軸部材9をインサート部材12、13の溶着面12a、13aに圧入しつつ当該溶着面12a、13aと第1軸部材8又は第2軸部材9の周面における被溶着面8aa、9aaとの間で通電させて円環状の電気抵抗溶接することにより、当該第1軸部材8又は第2軸部材9とインサート部材12、13とが溶着して成るので、固定シーブ2と第1軸部材8又は可動シーブ3と第2軸部材9との溶着を短時間で且つ良好に行わせ、製造時のサイクルタイムの短縮及び組み付け精度の向上を図ることができる。
更に、第1軸部材8又は第2軸部材9の被溶着面8aa、9aaは、当該第1軸部材8又は第2軸部材9の周面から径方向に突出した突出部位8a、9aに形成されて成るので、第1軸部材8又は第2軸部材9のインサート部材12、13の溶着面12a、13aへの圧入を適切且つ良好に行わせることができるとともに、円環状の電気抵抗溶接を確実に行わせることができる。
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、無端状ベルトを懸架し得る駆動力伝達用プーリであれば、他の形態のプーリ(本実施形態の如きスクータ型自動二輪車の駆動プーリと対応して配設されるものとは異なる形態)に適用してもよい。また、本実施形態においては、固定シーブと第1軸部材、及び可動シーブと第2軸部材の双方を円環状の電気抵抗溶接にて溶接しているが、何れかのみにインサート部材をインサート成形して円環状の電気抵抗溶接にて溶接すうようにしてもよい。
固定シーブ又は可動シーブがアルミ成形品から成るとともに、当該固定シーブ又は可動シーブにおける開口部の内周面に溶着面を臨ませつつ固定シーブ又は可動シーブにインサート成形された鉄製部材から成り当該溶着面で第1軸部材又は第2軸部材と溶着可能とされたインサート部材を具備し、且つ、第1軸部材又は第2軸部材をインサート部材の溶着面に圧入しつつ当該溶着面と第1軸部材又は第2軸部材の周面における被溶着面との間で通電させて円環状の電気抵抗溶接することにより、当該第1軸部材又は第2軸部材とインサート部材とが溶着して成るものとされ、且つ、インサート部材は、固定シーブ又は可動シーブの開口部に対応した貫通孔を有し、当該貫通孔周縁をバーリング加工又はカーリング加工して立ち上げた鉄製の板材から成り、当該立ち上げられた貫通孔縁部が前記溶着面を成す駆動力伝達用プーリであれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたものにも適用することができる。
本発明の実施形態に係る駆動力伝達用プーリが適用される遠心クラッチ装置を示す断面模式図 同駆動力伝達用プーリにおける固定シーブ及び第1軸部材を示す正面図及び側面図 図2におけるIII−III線断面図 同動力伝達用プーリにおける固定シーブにインサート成形されるべきインサート部材の加工方法を示す断面図 同動力伝達用プーリにおける可動シーブ及び第2軸部材を示す断面図 同動力伝達用プーリにおける固定シーブを示す断面図 同動力伝達用プーリにおける第1軸部材を示す断面図 同動力伝達用プーリにおける可動シーブにインサート成形されるべきインサート部材の加工方法を示す断面図 同動力伝達用プーリにおける可動シーブを示す断面図 同動力伝達用プーリにおける第2軸部材を示す断面図 同動力伝達用プーリにおける第1軸部材を固定シーブに溶接するための円環状の電気抵抗溶接装置を示す模式図であって、左側が溶接前の状態、右側が溶接後の状態を示す図 図11におけるXII部拡大図 図11におけるXIII部拡大図 従来の駆動力伝達用プーリが適用される遠心クラッチ装置を示す断面模式図
符号の説明
1 従動プーリ(駆動力伝達用プーリ)
2 固定シーブ
2a 固定側テーパ面
2b 開口部
3 可動シーブ
3a 可動側テーパ面
3b 開口部
4 ドライブプレート
5 クラッチ部材
6 出力用ハウジング
7 シャフト
8 第1軸部材
8a 突出部位
8aa 被溶着面
8ab 面取り部
9 第2軸部材
9a 突出部位
9aa 被溶着面
9ab 面取り部
10 無端状ベルト
11 錘
12 インサート部材
12a 溶着面
13 インサート部材
13a 溶着面
14 可動型
15 下側電極部材
16 固定型
17 上側パッド部材
18 下側パッド部材
19 上側電極部材

Claims (3)

  1. 固定側テーパ面が形成された固定シーブと、
    該固定シーブの固定側テーパ面と向かい合った可動側テーパ面を有し、当該固定側テーパ面と可動側テーパ面との間で無端状ベルトを懸架しつつ前記固定シーブと共に回転可能とされるとともに、当該固定シーブと近接又は離間可能とされた可動シーブと、
    前記固定シーブ及び可動シーブの略中央で開口した開口部と、
    前記固定シーブの開口部から突出形成されて当該固定シーブの回転軸を成すとともに、円筒状の鉄製部材から成る第1軸部材と、
    前記可動シーブの開口部から突出形成されつつ前記第1軸部材を挿通可能とされるとともに、円筒状の鉄製部材から成る第2軸部材と、
    を有し、車両の駆動力を伝達するための駆動力伝達用プーリにおいて、
    前記固定シーブ及び可動シーブがアルミ成形品から成るとともに、当該固定シーブ又は可動シーブにおける前記開口部の内周面に溶着面を臨ませつつ前記固定シーブ又は可動シーブにインサート成形された鉄製部材から成り当該溶着面で前記第1軸部材又は第2軸部材と溶着可能とされたインサート部材を具備し、且つ、
    前記第1軸部材又は第2軸部材をインサート部材の溶着面に圧入しつつ当該溶着面と第1軸部材又は第2軸部材の周面における被溶着面との間で通電させて円環状の電気抵抗溶接することにより、当該第1軸部材又は第2軸部材とインサート部材とが溶着して成るものとされ、且つ、
    前記インサート部材は、前記固定シーブ又は可動シーブの開口部に対応した貫通孔を有し、当該貫通孔周縁をバーリング加工又はカーリング加工して立ち上げた鉄製の板材から成り、当該立ち上げられて前記開口部の内周面に臨ませた貫通孔縁部が前記溶着面を成すとともに、当該貫通孔縁部の突端が前記電気抵抗溶接のための電極と当接し得ることを特徴とする駆動力伝達用プーリ。
  2. 前記第1軸部材又は第2軸部材の被溶着面は、当該第1軸部材又は第2軸部材の周面から径方向に突出した突出部位に形成されて成ることを特徴とする請求項1記載の駆動力伝達用プーリ。
  3. 前記突出部位における被溶着面と連なる部位が面取りされて成り、当該面取り部側から前記インサート部材の溶着面を圧入することを特徴とする請求項記載の駆動力伝達用プーリ。
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