JP4363105B2 - ポリプロピレン系重合体組成物、フィルム及びシート - Google Patents

ポリプロピレン系重合体組成物、フィルム及びシート Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリプロピレン系重合体組成物および該組成物からなるフィルム並びにシートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フィルムやシートに用いられる軟質オレフィン樹脂としては、従来、エチレン−酢酸ビニル共重合体や超低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系重合体が多く用いられてきた。ところが、ポリエチレン系重合体は、耐熱変形性において必ずしも十分満足いくものとはいえず、昨今では、ポリプロピレン系重合体を用いた組成物が提案されている。例えば、柔軟性に優れるポリプロピレン系重合体組成物として、結晶性プロピレン−エチレン共重合体と低結晶性・低分子量のプロピレン−1−ブテン共重合体との組成物が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、柔軟性、透明性に優れたポリプロピレン系重合体組成物として、プロピレン単独重合体と非晶性プロピレン−1−ブテン共重合体との組成物が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−194802号公報
【特許文献2】
特開平11−193309号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のポリプロピレン系重合体組成物からなる成形体を高温で使用した場合、成形体表面が白化して透明性が低下することがあり、耐熱白化性において十分満足のいくものではかった。
かかる状況のもと本発明が解決しようとする課題は、柔軟性、透明性、耐熱白化性、耐熱変形性に優れたポリプロピレン系重合体組成物、及び、該組成物からなるフィルム並びにシートを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の第一の発明は、下記成分(A)および成分(B)を含有し、成分(A)と成分(B)の合計量100重量%として、成分(A)の含有量が3〜97重量%であり、成分(B)の含有量が97〜3重量%であるポリプロピレン系重合体組成物にかかるものである。
(A)下記要件(a1)〜(a3)を充足する結晶性プロピレン系共重合体
(a1):炭素原子数が4〜20であるα−オレフィンに基づく単量体単位の含有量が3〜40重量%であること。(ただし、結晶性プロピレン系共重合体の全単量体単位の含有量を100重量%とする。)
(a2):結晶性プロピレン系共重合体試料5gを沸騰キシレン500mlに完全に溶解させた後、20℃に降温し、20℃に4時間保持した後、これを析出物と溶液とにろ別し、ろ液を乾固して減圧下70℃で乾燥させて、ろ液中の溶解している試料重量を測定して求められる、冷キシレン可溶部の含有量が、12〜65重量%であること。(ただし、結晶性プロピレン系共重合体を100重量%とする。)
(a3):示差走査熱量計(DSC)により測定される冷キシレン可溶部の融解ピークにおいて、ピーク高さが最大である融解ピークのピーク温度が70〜90℃であること。
(a4):冷キシレン可溶部の極限粘度[η]が1.2〜3dl/gであること。
(B)非晶性α−オレフィン系重合体
本発明の第二の発明は、上記重合体組成物からなるフィルム及びシートにかかるものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の成分(A)の結晶性プロピレン系共重合体は、炭素原子数が4〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位とプロピレンに基づく単量体単位とを含有する結晶性重合体である。炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ナノデセン、1−エイコセン等の直鎖状のα−オレフィン;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等の分岐状のα−オレフィンなどが例示される。
【0007】
本発明の成分(A)の結晶性プロピレン系共重合体中の炭素原子数が3〜20のα−オレフィンに基づく単量体の含有量は、結晶性プロピレン系共重合体の全単量体単位の含有量を100重量%として、本発明のポリプロピレン系重合体組成物の耐熱白化性を高める観点から、95重量%以上であり、好ましくは97重量%である。
【0008】
成分(A)の結晶性としては、本発明のポリプロピレン系重合体組成物の耐熱変形性を高める観点から、示差走査熱量計(DSC)により測定される融解ピークにおいて、ピーク温度が最大である融解ピークのピーク温度が100℃を超えることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。該融解ピークの結晶融解熱量としては、好ましくは30J/g以上であり、より好ましくは50J/g以上である。また、本発明のポリプロピレン系重合体組成物の柔軟性を高める観点から、好ましくは、示差走査熱量計(DSC)により測定される融解ピークにおいて、ピーク温度が最大である融解ピークのピーク温度は165℃以下であり、より好ましくは160℃以下である。
【0009】
成分(A)の結晶性プロピレン系共重合体において、炭素原子数4〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、本発明の重合体組成物からなるフィルムおよびシートの耐熱白化性と柔軟性を高める観点から、3重量%以上であり、好ましくは11重量%以上であり、本発明の重合体組成物からなるフィルムおよびシートの耐熱白化性を高める観点から、40重量%以下であり、好ましくは25重量%以下である。ただし、結晶性プロピレン系共重合体の全単量体単位の含有量を100重量%とする。
【0010】
成分(A)の結晶性プロピレン系共重合体の冷キシレン可溶部(以下、CXSと称する。)の含有量は、本発明の重合体組成物からなるフィルムおよびシートの耐熱白化性、柔軟性、透明性を高める観点から、1重量%以上であり、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは12重量%以上であり、本発明の重合体組成物からなるフィルムおよびシートの耐熱白化性、透明性を高める観点から、70重量%以下であり、好ましくは65重量%以下である。ただし、結晶性プロピレン系共重合体全重量を100重量%とする。
【0011】
成分(A)の結晶性プロピレン系共重合体のCXSとしては、耐熱白化性を高める観点から、示差走査熱量計(DSC)により測定されるCXSの融解ピークにおいて、ピーク高さが最大である融解ピークのピーク温度が60〜100℃であることが好ましく、70〜90℃であることがより好ましい。
【0012】
成分(A)の結晶性プロピレン系共重合体のCXSの極限粘度[η]は、好ましくは1〜5dl/gであり、より好ましくは1.2〜3dl/gである。なお、極限粘度[η]は、135℃のテトラリン溶媒中で測定される。
【0013】
成分(A)の結晶性プロピレン系共重合体を製造する方法としては、一般的には、いわゆるチタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分を組み合わせて用いるチーグラー・ナッタ型触媒、特には遷移金属成分がチタン、マグネシウム及びハロゲンを必須成分とし、電子供与性化合物を任意成分とする固体成分又は三塩化チタンとし、有機金属成分がアルミニウム化合物である触媒を用いて、スラリー重合、気相重合、バルク重合、溶液重合等又はこれらを組み合わせた重合法をあげることができる。また、市販の該当品を用いてもよい。
【0014】
成分(A)の製造方法としては、入手容易性の観点から、プロピレン単独重合体とプロピレン−α−オレフィン共重合体とを多段重合する方法、あるいは、プロピレン−α−オレフィン共重合体を多段重合する方法が好ましく、チーグラー・ナッタ型触媒を用いて、第一工程で、プロピレン単独重合あるいはプロピレンとα−オレフィンとを共重合し、炭素原子数が4〜20であるα−オレフィンに基づく単量体単位の含有量が10重量%未満である重合体成分を重合し、第二工程で、プロピレンとα−オレフィンとを共重合し、炭素原子数が4〜20であるα−オレフィンに基づく単量体単位の含有量が10〜40重量%である重合体成分を重合する多段重合法がより好ましい。
【0015】
本発明の成分(B)の非晶性α−オレフィン系重合体とは、α−オレフィンに基づく単量体単位を含有する重合体であって、示差走査熱量測定(DSC)により、−100〜200℃に結晶の融解熱量が1J/g以上の融解ピークおよび結晶化熱量が1J/g以上の結晶化ピークのいずれもが観測されない重合体である。
【0016】
成分(B)のα−オレフィンに基づく単量体単位のα−オレフィンとしては、炭素原子数3〜20のα−オレフィンがあげられ、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ナノデセン、1−エイコセン等の直鎖状のα−オレフィン;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等の分岐状のα−オレフィンなどが例示される。
【0017】
成分(B)の非晶性α−オレフィン系重合体は、α−オレフィン以外の単量体に基づく単量体単位を含有していてもよく、該α−オレフィン以外の単量体としては、たとえば、エチレン、ポリエン化合物、環状オレフィン、ビニル芳香族化合物等があげられる。該単量体単位の含有量は、非晶性α−オレフィン系重合体中の全単量体単位を100モル%として、70モル%以下であることが好ましい。
【0018】
上記ポリエン化合物としては、共役ポリエン化合物、非共役ポリエン化合物などをあげることができる。共役ポリエン化合物としては、脂肪族共役ポリエン化合物および脂環族共役ポリエン化合物などがあげられ、非共役ポリエン化合物としては、脂肪族非共役ポリエン化合物、脂環族非共役ポリエン化合物、芳香族非共役ポリエン化合物等があげられる。これらは、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基などを有していてもよい。
【0019】
上記環状オレフィンとしては、たとえば、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、1−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,5,6−トリメチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネン、5−エチリデンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−ヘキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−フルオロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,5−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−シクロへキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジクロロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−イソブチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、5−クロロノルボルネン、5,5−ジクロロノルボルネン、5−フルオロノルボルネン、5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメチルノルボルネン、5−クロロメチルノルボルネン、5−メトキシノルボルネン、5,6−ジカルボキシルノルボルネンアンハイドレート、5−ジメチルアミノノルボルネン、5−シアノノルボルネン、シクロペンテン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3,5−ジメチルシクロペンテン、3−クロロシクロペンテン、シクロへキセン、3−メチルシクロへキセン、4−メチルシクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロヘキセン、3−クロロシクロヘキセン、シクロへプテン等があげられる。
【0020】
上記ビニル芳香族化合物としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン等があげられる。
【0021】
成分(B)の非晶性α−オレフィン系重合体としては、炭素原子数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位を2種以上含有する重合体が好ましく、例えば、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体、1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、1−ブテン−1−オクテン共重合体、プロピレン−1−ブテン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン−エチレン共重合体、プロピレン−1−オクテン−エチレン共重合体、1−ブテン−1−ヘキセン−エチレン共重合体などをあげることができる。
【0022】
成分(B)の非晶性α−オレフィン系重合体としてより好ましくは、炭素原子数4〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位を1種以上とプロピレンに基づく単量体単位とを含有する重合体であり、更に好ましくは、炭素原子数4〜20のα−オレフィンとプロピレンとの共重合体、炭素原子数4〜20のα−オレフィンとプロピレンとエチレンとの共重合体であり、特に好ましくは、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ブテン−エチレン共重合体であり、更に好ましくはプロピレン−1−ブテン共重合体である。上記重合体は、1種で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0023】
成分(B)の非晶性α−オレフィン系重合体のプロピレンに基づく単量体単位含有量は、透明性をより高める観点から、好ましくは30モル%以上であり、より好ましくは50モル%以上であり、更に好ましくは80モル%以上である。ただし、非晶性α−オレフィン系重合体中の全単量体単位含有量を100モル%とする。
【0024】
成分(B)の非晶性α−オレフィン系重合体の極限粘度[η]は、耐熱白化性および加工性を高める観点から、好ましくは0.5〜10dl/gであり、より好ましくは0.7〜7dl/gである。なお、極限粘度[η]は135℃のテトラリン溶媒中で測定される。
【0025】
成分(B)の非晶性α−オレフィン系重合体の分子量分布は、1より大きく4以下であり、好ましくは2以上3以下である。分子量分布が大きすぎると耐熱白化性に劣ることがある。該分子量分布は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)であり、ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)により、標準ポリスチレンを分子量標準物質として測定される。
【0026】
成分(B)の非晶性α−オレフィン系重合体は、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等を採用し、所定のモノマーをメタロセン系触媒を用いて重合することにより製造できる。該触媒としては、たとえば特開昭58−19309号公報、特開昭60−35005号公報、特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報、特開昭60−35008号公報、特開昭61−130314号公報、特開平3−163088号公報、特開平4−268307号公報、特開平9−12790号公報、特開平9−87313号公報、特開平11−80233号公報、特表平10−508055号公報などに記載のメタロセン系触媒を例示することが出来る。また、メタロセン系触媒を用いた非晶性α−オレフィン系重合体の製造方法として特に好ましくは、欧州特許出願公開第1211287号明細書の方法を例示することができる。
【0027】
本発明のポリプロピレン系重合体組成物の成分(A)と成分(B)の含有量としては、成分(A)の含有量は3〜97重量%であり、成分(B)の含有量は97〜3重量%であり、好ましくは、成分(A)の含有量は60〜95重量%であり、成分(B)の含有量は40〜5重量%であり、さらに好ましくは、成分(A)の含有量が70〜90重量%であり、成分(B)の含有量は30〜10重量%である。成分(A)の含有量が少なすぎる(成分(B)の含有量が多すぎる)と、耐熱変形性に劣ることがあり、成分(A)の含有量が多すぎる(成分(B)の含有量が少なすぎる)と、柔軟性に劣ることがある。ただし、成分(A)と成分(B)の合計量を100重量%とする。
【0028】
本発明のポリプロピレン系重合体組成物には、必要に応じて耐熱安定剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、オゾン劣化防止剤、耐候性安定剤、結晶核剤、透明化剤、防曇剤、防錆剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤、無機充填剤、帯電防止剤、内部剥離剤、分散剤、アンチブロッキング剤、滑剤、抗菌剤、石油樹脂、発泡剤、発泡助剤、高周波加工助剤、有機顔料、無機顔料等の各種添加剤を加えることができる。各成分を前記した配合割合に調製し、その後各種の公知の方法、たとえばヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラブレンダー等で混合する方法;あるいは混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法を採用して成形用樹脂組成物を製造することができる。
【0029】
ポリプロピレン系重合体組成物の調整での溶融混練温度は、通常150〜300℃であり、重合体組成物の物性および色相を高める観点から、好ましくは170〜270℃である。
【0030】
本発明のポリプロピレン系重合体組成物は、公知の成形技術により、フィルム、シート、容器等、さまざまな形状の成形品に成形されて使用される。該成形技術としては、例えば、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、Tダイフィルム成形、延伸フィルム成形、インフレーションフィルム成形、シート成形、バンク成形、カレンダ成形、圧空成形、真空成形、パイプ成形、異型押出成形、中空成形、射出中空成形、射出延伸中空成形、ラミネート成形等が挙げられ、好ましくTダイフィルム成形、延伸フィルム成形、インフレーションフィルム成形である。
【0031】
本発明の重合体組成物を用いてなる成形体は、自動車部品、自転車部品、電気・電子機器部品、電線、建築材料、農・水産・園芸用品、化学産業用品、土木資材、産業・工業資材、家具、文房具、日用・雑貨用品、衣服、容器・包装用品、玩具、レジャー用品、医療用品等に用いることができる。自動車部品としては、ホース、チューブ、ガスケット、パッキング、ウェザーストリップ、各種シールスポンジ、ウォッシャー液ドレンチューブ、燃料タンク用クッション材等があげられる。電気・電子機器部品としては、たとえば、家電部材、冷蔵庫用品、照明器具、電気用各種カバー等があげられる。電線としては、プラスチックケーブル、絶縁電線、電線保護材等があげられる。建築材料としては、たとえば、リブ、巾木、パネル、ターポリン等の壁・天井材用途;波板、樋、屋根下地材等の屋根材用途;敷居材、タイル等の床部材用途;目地、目地棒、防水シート等の防水用途;ダクト、ケーブルダクト、プレハブ部材、浄化槽等の設備・装置部品用途;建築用エッジ、建築用ガスケット、カーペット抑え、アングル、ルーバー等の構造・造作材用途;ジョイナー、養生シート等の工業資材用途があげられる。農・水産・園芸用品としては、たとえば、農業用ハウス用途等があげられる。産業・工業用資材としては、たとえば、機械カバー、機械部品、パッキング、ガスケット、フランジ、レザー帆布、ボルト、ナット、バルブ、金属保護用フィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂組成物を補強材として複合使用した凹凸付ホース等があげられる。家具としては、たとえば、キャビネット、スツール、ソファー、マット、カーテン、テーブルクロス等があげられる。文房具としては、カードケース、筆記具ケース、アクセサリー、キーケース、キャッシュカードケース、ステッカー、ラベル、ブックカバー、ノートカバー、バインダー、手帳、表紙、ファイル、カード、定期類、下敷き、ホルダー、マガジントレー、アルバム、テンプレート、筆記具軸等があげられる。日用・雑貨用品としては、たとえば、防塵シート、風呂蓋、すのこ、バケツ、洋服カバー、布団ケース、洋傘、傘カバー、すだれ、裁縫用具、棚板、棚受け、額縁、エプロン、トレー、テープ、紐、ベルト類、鞄、等があげられる。衣服としては、レインコート、合羽、雨具シート、子供レザーコート、靴、シューズカバー、履物、手袋、スキーウエア、帽子、帽子用副資材等があげられる。容器・包装用品としては、たとえば、食品容器、衣料包装品、梱包・包装資材、化粧品瓶、化粧品容器、薬品瓶、食品瓶、理化学瓶、洗剤瓶、コンテナ、キャップ、フードパック、積層フィルム、マスキングフィルム、工業用シュリンクフィルム、業務用ラップフィルム等があげられる。医療用品としては、たとえば、輸液バック、連続携行式腹膜透析バック、血液バック等があげられる。これらの中でも特にフィルム、シート棟に加工し、その優れた特徴を利用して、日用・雑貨用品、容器・包装用品、文具用品等に好適に使用され得る。
【0032】
【実施例】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明する。
[I]測定方法
物性測定は、下記のとおり行った。
(1)結晶性プロピレン−1−ブテン重合体中の各単量体単位の含有量
高分子ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の619ページに記載されているIRスペクトル測定を行い、結晶性プロピレン−1−ブテン重合体に含まれる1−ブテンに基づく単量体単位の含量を求めた。
(2)非晶性α−オレフィン系重合体中の各単量体単位の含有量
核磁気共鳴装置(Bruker社製 商品名AC−250)を用いて、13C−NMRスペクトルの測定結果に基づき測定した。具体的には、13C−NMRスペクトルのプロピレンに基づく単量体単位由来のメチル炭素スペクトル強度と1−ブテンに基づく単量体単位由来のメチル炭素スペクトル強度の比からプロピレンに基づく単量体単位と1−ブテンに基づく単量体単位の組成比を算出した。
(3)冷キシレン可溶部(CXS)
試料5gを沸騰キシレン500mlに完全に溶解させた後、20℃に降温し、20℃に4時間保持した。その後、これを析出物と溶液とにろ別し、ろ液を乾固して減圧下70℃で乾燥させて、ろ液中の溶解している試料重量を測定し、冷キシレン可溶部の含有量(重量%)を求めた。
(4)極限粘度[η]
135℃において、ウベローデ粘度計を用いて行った。テトラリン単位体積あたりの非晶性α−オレフィン系重合体の濃度cが、0.6、1.0、1.5mg/mlである非晶性重合体のテトラリン溶液を調整し、135℃における極限粘度を測定した。それぞれの濃度で3回繰り返し測定し、得られた3回の値の平均値をその濃度での比粘度(ηsp)とし、ηsp/cのcをゼロ外挿した値を極限粘度[η]として求めた。
(5)分子量分布
ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法により測定した。測定装置はWaters社製150C/GPC、測定溶媒はo−ジクロロベンゼン、使用カラムは昭和電工社製Sodex Packed ColumnA−80M(2本)、分子量標準物質はポリスチレン(東ソー社製、分子量68〜8,400,000)を用い、溶出温度140℃、溶出溶媒流速1.0ml/minの条件で、重合体約5mgを5mlのo−ジクロロベンゼンに溶解したものを400μlインジェクションし、示差屈折検出器にてポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、この比である分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
(6)融解ピークおよび結晶化ピーク
JIS K7121に従い、示差走査熱量計(セイコー電子工業社製DSC220C:入力補償DSC)により測定を行った。具体的には、状態調整として、室温から200℃まで30℃/分で昇温し、200℃で5分間保持した。次に、10℃/分で−100℃まで降温し、結晶化ピークの測定を行った。次に、−100℃で5分間保持した後、−100℃から200℃まで10℃/分で昇温し、融解ピークの測定を行った。
【0033】
(7)柔軟性
ASTM D−882に従い、フィルムのヤング率を測定した。
(8)透明性
JIS K7105に従い、フィルムのヘイズ値を測定した。
(9)耐熱白化性
熱処理前のフィルムのヘイズ値と下記条件で熱処理後のフィルムのヘイズ値とをJIS K7105に従い測定し、熱処理前後でのフィルムのヘイズ値の差(Δヘイズ)を求めた。この値が小さいほど耐熱白化性に優れる。
熱処理温度:60℃または80℃
熱処理時間:24時間
(10)耐熱変形性
プレス成形により成形された試験片(厚み6.4mm)を用い、JIS K7207に規定された方法に従って、荷重0.451MPa、昇温速度2℃/分の条件で昇温し、試験片のたわみが0.254mmに達したときの温度を測定した。
(11)耐べたつき性
耐熱白化性の評価で行った熱処理後のフィルムを手で触り、フィルム表面の感触を以下の通り評価した。べたつきが少ないほど耐べたつき性に優れる。
○ :べたつきが無い。
△ :若干べたつきが有る。
× :べたつきが有る。
××:べたつきがかなり有る。
【0034】
実施例1
[非晶性α−オレフィン系重合体の製造]
攪拌機を備えた100LのSUS製重合器中で、プロピレンと1−ブテンとを、分子量調節として水素を用い、以下の方法で連続的に共重合させて、本発明の成分(B)に相当するプロピレン−1−ブテン共重合体を得た。
重合器の下部から、重合溶媒としてのヘキサンを100L/時間の供給速度で、プロピレンを24.00Kg/時間の供給速度で、1−ブテンを1.81Kg/時間の供給速度で、それぞれ連続的に供給した。
重合器の上部から、重合器中の反応混合物が100Lの量を保持するように、反応混合物を連続的に抜き出した。
重合器の下部から、重合触媒の成分として、ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドを0.005g/時間の供給速度で、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.298g/時間の供給速度で、トリイソブチルアルミニウムを2.315g/時間の供給速度で、それぞれ連続的に供給した。
共重合反応は、重合器の外部に取り付けられたジャケットに冷却水を循環させることによって、45℃で行った。
重合器の上部から連続的に抜き出された反応混合物に少量のエタノールを添加して重合反応を停止させた後、脱モノマー及び水洗浄し、次いで、大量の水中でスチームによって溶媒を除去することによって、プロピレン−1−ブテン共重合体(以下、重合体B▲1▼と称する。)を得、これを80℃で1昼夜減圧乾燥した。重合体B▲1▼の生成速度は7.10Kg/時間であった。重合体B▲1▼中のプロピレン単量体単位含有量は94.5重量%、1−ブテン単量体単位含有量は5.5重量%であった。また、重合体B▲1▼の[η]値は2.3dl/gであり、Mw/Mn値は2.2であり、融解ピークは観測されなかった。
【0035】
[ポリプロピレン系重合体組成物の製造]
結晶性プロピレン−1−ブテン共重合体(住友化学工業(株)製 ノーブレンBH180EL3、1−ブテン単位含有量=22重量%、CXS含有量=15重量%、CXSの融解ピーク温度=87℃、CXSの[η]=1.4dl/g)240gと、重合体B▲1▼60gとヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製 Irganox1010)0.12gと、芳香族フォスファイト系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製 Irgafos168)0.12gとを配合した後、2軸のバッチ式混練機ブラベンダープラスチコーダー(ブラベンダー社製)を用いて、温度220℃、スクリュー回転数100rpm、混練時間5分の条件で、溶融混練を行い、重合体組成物を得た。次に、該重合体組成物を20mmφ押出機(田辺プラスチック製 L/D=27)により樹脂温度260℃で溶融押出し、厚さ100μmのフィルムに成形した。得られた重合体組成物の耐熱変形性、得られたフィルムの柔軟性、透明性、耐熱白化性および耐べたつき性を評価した。評価結果を表1に示した。
【0036】
実施例2
ポリプロピレン系重合体組成物の製造において、結晶性プロピレン−1−ブテン共重合体(住友化学工業(株)製 ノーブレンBH180EL3)を150gとし、重合体B▲1▼を60gとした以外は、実施例1と同様の方法でポリプロピレン系重合体組成物の製造およびフィルムの成形を行った。得られた重合体組成物およびフィルムの評価結果を表1に示した。
【0037】
実施例3
[非晶性α−オレフィン系重合体の製造]
容量2Lのセパラブルフラスコ反応器に、攪袢器、温度計、滴下ロート、還流冷却管をつけて減圧にしたのち、窒素で置換した。このフラスコに乾燥したトルエン1Lを重合溶媒として導入した。ここにエチレン2NL/分、プロピレン4NL/分、1−ブテン1NL/分を常圧にて連続フィードし、溶媒温度を30℃とした。トリイソブチルアルミニウム(以後TIBAと略記)0.75mmolを重合槽に添加した後、ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド0.0015mmolを重合槽に添加した。その15秒後にトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.0075mmolを重合槽に添加し、10分間重合を行った。その結果、本発明の成分(B)に相当するプロピレン−1−ブテン−エチレン共重合体(以下、重合体B▲2▼と称する。)を86.4g得た。重合体B▲2▼中のエチレン単量体単位含有量は42重量%、プロピレン単量体単位含有量は6.9重量%、1−ブテン単量体単位含有量は51.1重量%であった。また、重合体B▲2▼の[η]値は1.69dl/gであり、Mw/Mn値は2.0であり、融解ピークは観測されなかった。
【0038】
[ポリプロピレン系重合体組成物の製造]
重合体B▲1▼に代えて重合体B▲2▼を用いた以外は実施例1と同様の方法でポリプロピレン系重合体組成物の製造およびフィルムの成形を行った。得られた重合体組成物およびフィルムの評価結果を表1に示した。
【0039】
比較例1
結晶性プロピレン−1−ブテン共重合体(住友化学工業(株)製 ノーブレンBH180EL3)に代えて結晶性プロピレン−エチレン共重合体(住友化学工業(株)製 ノーブレンRS160XG、CXS含有量=6重量%、CXSの融解ピーク温度=58℃、CXSの[η]=0.61dl/g)を用いる以外は、実施例1と同様の方法でポリプロピレン系重合体組成物の製造およびフィルムの成形を行った。得られた重合体組成物およびフィルムの評価結果を表1に示した。
【0040】
比較例2
重合体B▲1▼に代えて低結晶性オレフィン系重合体である宇部興産(株)製 UBETAC APAO UT2780(融解ピーク温度=90.5℃、プロピレン単位含有量=71モル%、[η]=0.43dl/g)を用いた以外は実施例1と同様の方法でポリプロピレン系重合体組成物の製造およびフィルムの成形を行った。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0041】
【表1】
Figure 0004363105
【0042】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明により、柔軟性、透明性、耐熱白化性、耐熱変形性に優れたポリプロピレン系重合体組成物、及び、該組成物からなるフィルム並びにシートを提供することができた。本発明の重合体組成物は、耐べたつき性にも優れ、本発明の重合体組成物からなるフィルム並びにシートは、雑貨品、包装材や文具などに好適に用いられる。

Claims (5)

  1. 下記成分(A)および成分(B)を含有し、成分(A)と成分(B)の合計量100重量%として、成分(A)の含有量が3〜97重量%であり、成分(B)の含有量が97〜3重量%であるポリプロピレン系重合体組成物。
    (A)下記要件(a1)〜(a3)を充足する結晶性プロピレン系共重合体
    (a1):炭素原子数が4〜20であるα−オレフィンに基づく単量体単位の含有量が3〜40重量%であること。(ただし、結晶性プロピレン系共重合体の全単量体単位の含有量を100重量%とする。)
    (a2):結晶性プロピレン系共重合体試料5gを沸騰キシレン500mlに完全に溶解させた後、20℃に降温し、20℃に4時間保持した後、これを析出物と溶液とにろ別し、ろ液を乾固して減圧下70℃で乾燥させて、ろ液中の溶解している試料重量を測定して求められる、冷キシレン可溶部の含有量が、12〜65重量%であること。(ただし、結晶性プロピレン系共重合体を100重量%とする。)
    (a3):示差走査熱量計(DSC)により測定される冷キシレン可溶部の融解ピーク
    において、ピーク高さが最大である融解ピークのピーク温度が70〜90℃であること。
    (a4):冷キシレン可溶部の極限粘度[η]が1.2〜3dl/gであること。
    (B)非晶性α−オレフィン系重合体
  2. 成分(B)の非晶性α−オレフィン系重合体が、下記要件(b1)を充足する重合体である請求項1に記載のポリプロピレン系重合体組成物。
    (b1):炭素原子数が3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位を2種以上含有すること。
  3. 成分(B)の非晶性α−オレフィン系重合体が、下記要件(b2)〜(b4)を充足する重合体である請求項1に記載のポリプロピレン系重合体組成物。
    (b2):α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量が30モル%以上であること。(ただし、非晶性α−オレフィン系重合体中の全単量体単位含有量を100モル%とする。)
    (b3):極限粘度[η]が0.5〜10dl/gであること。
    (b4):重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)分子量分布が1より大きく4以下であること。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載のポリプロピレン系重合体組成物からなるフィルム。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載のポリプロピレン系重合体組成物からなるシート。
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