JP4362183B2 - 熱変色性布帛 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱変色性布帛に関する。更に詳細には、布帛表面に熱変色性顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた熱変色層を設けた熱変色性布帛に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、熱変色性顔料をバインダー樹脂を含むビヒクル中に分散させた熱変色性インキを、布帛表面に付着乾燥させて熱変色層を形成した熱変色性布帛は、人形用衣裳等の玩具分野に適用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この種の熱変色性布帛にあっては、熱変色性インキの印刷、塗工過程において、布帛の内部にまでインキが含浸することにより風合いが著しく損なわれると共に熱変色層の発色時のカラーが不鮮明となり、更には、無駄なインキを消費することになり、不経済である。
本発明は、前記した不具合を解消した熱変色性布帛を提供し、商品性を高め、玩具用衣裳は勿論、衣料分野等への適用を図ろうとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明を図面について説明する(図1参照)。
本発明は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)前記化合物を呈色させる電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の必須三成分からなる熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包した、平均粒子径が0.5μm〜30μmの熱変色性顔料をバインダー樹脂を含むビヒクル中に分散させた熱変色性インキを、布帛2表面に付着乾燥させて熱変色層4を形成した熱変色性布帛において、布帛2表面にカレンダー加工を施して、繊維表面を平滑化すると共に繊維表面の繊維密度を高密度化してなる、熱変色性インキの浸透を抑制する浸透抑制層3が形成されていることを特徴とする熱変色性布帛1を要件とする。
【0005】
前記における布帛2は、目付け量が15g/m2〜500g/m2(好ましくは、50g/m2〜400g/m2)の織布、編物、不織布等の汎用の布帛が適用できる。
【0006】
浸透抑制層3は、布帛表面のカレンダー加工による平滑化と共に繊維密度を高密度化して形成する。
前記カレンダー加工は、汎用のカレンダー装置の適用により形成することができる。
【0007】
前記熱変色性顔料は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)前記化合物を呈色させる電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の必須三成分を含む、従来より公知の熱変色性組成物をマイクロカプセル化したものであり、具体的には、本出願人が提案した、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載のものが利用できる。前記は所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、変色点以上の温度域で消色状態、変色点未満の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。即ち、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔHA=1〜7℃)を有する加熱消色型(A)を挙げることができる。
【0008】
又、本出願人が提案した特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔHB=8〜50℃)を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、低温側変色点以下で発色状態、高温側変色点以上で消色状態を呈し、前記低温側変色点と高温側変色点の間の温度域で、前記発色状態又は消色状態を互変的に記憶保持できる色彩記憶保持型熱変色性組成物(B)を適用することができる。
【0009】
又、加熱発色型(C)の組成物として、消色状態からの加熱により発色する、本出願人の提案(特開平11−129623号公報、特開平11−5973号公報)による、(ロ)電子受容性化合物として、炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物を適用した系を挙げることができる。
【0010】
前記熱変色性顔料は、前記(イ)、(ロ)、(ハ)の三成分を含み、鮮明な発色性、高発色濃度、均質性、分散安定性、耐薬品性等の面でマイクロカプセル形態のものが用いられる。
前記熱変色性組成物をカプセルに内包させる手段としては、界面重合法、界面重縮合法、インサイチュー法、コアセルベート法等、公知のカプセル化方法が適用される。
【0011】
熱変色性顔料の平均粒子径〔(長径+短径)/2〕は、0.5μm〜30μmの範囲、好ましくは、0.5〜15μm、更に好ましくは、0.5〜10μmの範囲にあることが、変色の鋭敏性、持久性、加工適性等の面で有効である。
粒子径が30μmを越える系にあっては、均質な分散性を保持し難く、一方、0.5μm未満の系にあっては、水性媒体中に懸濁した状態でマイクロカプセル化した熱変色性顔料が得られるとしても、濾別又は遠心分離等の手段によるカプセル化顔料の単離に難がある上、強度的に不充分である。
【0012】
又、本発明のカプセル化された熱変色性顔料にあっては、熱変色性組成物/マイクロカプセル壁膜=7/1〜1/1(重量比)の範囲にあることが望ましい。
熱変色性組成物の比率が前記範囲より大になると壁膜の厚みが肉薄となり過ぎ、内包した熱変色性組成物の保護機能の低下がみられる。
一方、壁膜の比率が前記範囲より大になると壁膜強度が向上し、保護機能は高められるが、熱変色性組成物の相対的な比率の低下により発色濃度の低下を余儀なくされ、好ましくない。
【0013】
前記熱変色性顔料は、バインダー樹脂を含むビヒクル中に所定量を分散させてインキ又は塗料となし、従来より汎用のスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、転写印刷等の印刷手段、スプレー塗装等の印刷乃至塗布手段により、1μm〜300μm、好ましくは5μm〜100μmの厚みの熱変色層4を形成する。
ここで、熱変色性顔料は、バインダー樹脂100重量部に対して、20〜400重量部の割合でブレンドされる。20重量部未満では、鮮明な熱変色性を示さない。一方、400重量部を越えると消色時における色残りが発生しがちであり、好適には50〜350重量部の範囲内で適用される。
前記熱変色性顔料とバインダー樹脂との配合割合を満たすことにより、熱変色層4の耐久性が保持されると共に風合いの硬質化を防ぐ。
【0014】
前記バインダー樹脂は、水溶性或いは油溶性の樹脂のいずれであってもよく、目的に応じて適宜、選択して使用できる。
具体的に例示すると、従来より汎用の樹脂、例えば、アイオノマー樹脂、イソブチレン−無水マレイン酸樹脂共重合樹脂、アクリロニトリル−アクリリックスチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル塩素化ポリエチレン−スチレン共重合樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフト共重合樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルスチレン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、フェノール樹脂変性アルキド樹脂、エポキシ樹脂変性アルキド樹脂、スチレン変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキッド樹脂、天然ゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、ポリビニルアルキルエーテル、ロジン、ロジンエステル、ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、油溶性フェノール樹脂、石油系炭化水素樹脂、シェラック、環化ゴム、酢酸ビニル系エマルジョン樹脂、スチレン−ブタジエン系エマルジョン樹脂、アクリル酸エステル系エマルジョン樹脂、水性シリコンゴムエマルジョン樹脂、水溶性アルキド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリブタジエン樹脂、酢酸セルローズ、硝酸セルローズ、エチルセルローズ等を挙げることができ、水や有機溶剤等の適宜の溶剤に溶解または分散させて、熱変色性顔料を分散させるためのビヒクルを得ることができる。
又、前記樹脂は、1種又は2種以上を併用することができる。
【0015】
前記熱変色層4の下層には、公知の印刷手段により非熱変色層(ベタ印刷に限らず、非熱変色像を含む)を適宜設けることにより、様相変化を多様化させることができる。
【0016】
又、前記熱変色層4の上層には、光安定剤等を含む保護層を適宜、設けて熱変色層4の光劣化を抑制することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に実施例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
尚、実施例中の部は重量部を示す。
【0018】
【実施例】
【0019】
実施例1(図1参照)
白色ポリエステル繊維からなる目付量120g/m2のトリコット布2表面にカレンダー加工を行ない、当該個所の繊維を圧縮し繊維密度を高め、平滑化して光沢性を向上させた浸透抑制層3を形成したトリコット布を適用し、前記浸透抑制層3上に、平均粒子径8μmのマイクロカプセル形態の加熱消色型顔料〔青色←→無色、変色温度30℃〕30部、ピンク色蛍光顔料5部、アクリル系エマルジョン樹脂50部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる熱変色性インキを120メッシュのスクリーン版を用いてベタ印刷を行ない、乾燥硬化させて熱変色層4を形成し、熱変色性布帛1を構成した。
前記熱変色性布帛1は、30℃未満の温度では鮮明な紫色を呈し、30℃以上の温度では鮮明なピンク色を呈し、両状態共非常に鮮明なカラーを呈した。また、触った感触が非常に柔らかく、風合いの良い布帛であった。
尚、前記熱変色層4上には、必要に応じて、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤5部、アクリルポリオール樹脂50部、イソシアネート系架橋剤0.5部、トルエン25部、酢酸エチル25部からなる樹脂溶液を版深120μmのグラビア版を用いて塗工し、乾燥硬化させて保護層を形成することができ、以下の実施例についても、適宜、保護層を設けることができる。
【0020】
実施例2
白色ポリエステル繊維からなる目付量120g/m2のトリコット布2表面に、実施例1と同様にしてカレンダー加工を行なって浸透抑制層3を形成し、前記浸透抑制層3上に、黄色蛍光顔料10部、ウレタン系エマルジョン樹脂50部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる黄色蛍光インキを180メッシュのスクリーン版を用いてベタ印刷を行ない、乾燥硬化させて非熱変色性黄色蛍光色層を設けた。次いで、平均粒子径8μmのマイクロカプセル形態の色彩記憶保持型熱変色性顔料〔ピンク色←→無色、変色温度15℃、30℃〕30部、ウレタン系エマルジョン樹脂50部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる熱変色性インキ、平均粒子径8μmのマイクロカプセル形態の色彩記憶型熱変色性顔料〔青色←→無色、変色温度15℃、30℃〕30部、ウレタン系エマルジョン樹脂50部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる熱変色性インキを150メッシュの花柄のデザインのスクリーン版を用いて、2色の花柄の印刷を行ない、熱変色性層4を形成した。
前記熱変色性布帛1は、15℃未満の温度では鮮明な赤色と緑色の、全体の柄として非常に鮮やかな2色の花柄模様を呈し、30℃以上の温度では鮮明な黄色を呈し、両状態共非常に鮮明なカラーを呈した。また、触った感触が非常に柔らかく、風合いの良い布帛であった。
【0021】
【0022】
【0023】
比較例1
白色ポリエステル繊維からなる目付量120g/m2のトリコット布に、浸透抑制層3を設けることなく、直接的に実施例1の処方により熱変色層4を形成したところ、熱変色性インキが布帛背面にまで浸透しており、実施例1の布帛に較べ、触感が硬く、布帛本来の風合いを損なう度合いが大であった。
【0024】
【0025】
【0026】
【発明の効果】
本発明の熱変色性布帛は、表面に浸透抑制層が形成された布帛を適用するので、熱変色性インキの塗布乃至印刷加工に際し、インキが布帛の内部まで浸透することが抑制されており、布帛本来の風合いを損なう度合いも少ない上、表面層に効果的に熱変色層が形成されているので、温度変化に鋭敏に感応し熱変色させることができると共に発色時のカラーが鮮明であり、人形用衣裳や衣料分野等に好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の熱変色性布帛の一実施例の縦断面拡大説明図である。
【符号の説明】
1 熱変色性布帛
2 布帛
3 浸透抑制層
4 熱変色層
Claims (1)
- (イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)前記化合物を呈色させる電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の必須三成分からなる熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包した、平均粒子径が0.5μm〜30μmの熱変色性顔料をバインダー樹脂を含むビヒクル中に分散させた熱変色性インキを、布帛表面に付着乾燥させて熱変色層を形成した熱変色性布帛において、布帛表面にカレンダー加工を施して、繊維表面を平滑化すると共に繊維表面の繊維密度を高密度化してなる、熱変色性インキの浸透を抑制する浸透抑制層が形成されていることを特徴とする熱変色性布帛。
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