JP4360572B2 - 新規アントラピリドン化合物、水性マゼンタインク組成物及びインクジェット記録方法 - Google Patents

新規アントラピリドン化合物、水性マゼンタインク組成物及びインクジェット記録方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規アントラピリドン化合物、水性マゼンタインク組成物及びインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタによる記録方法としてインクの各種吐出方式が開発されているが、いずれもインクの小滴を発生させ、これを種々の被記録材料(紙、フィルム、布帛等)に付着させ記録を行うものである。インクジェットプリンタによる記録方法は、記録ヘッドと被記録材料とが接触しない為、機械音の発生がなく、またプリンタの小型化、高速化、カラー化が容易という特長の為、近年急速に普及し、今後も大きな伸長が期待されている。コンピュータのカラーディスプレイ上の画像又は文字情報をインクジェットプリンタにより、カラ−で記録するには、一般にはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクによる減法混色で表現される。CRTディスプレイ等のR、G、Bによる加法混色画像を減法混色画像によりできるだけ忠実に再現するには、使用する色素、中でもYMCのインクに使用される色素にはできるだけYMCそれぞれの標準に近い色相を有し、且つ鮮明であることが望まれる。又、インク組成物は長期の保存に対し安定であり、又プリントした画像の濃度が高く、しかも耐水性、耐光性等の堅牢度に優れている事が求められる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
インクジェットプリンタの用途はOA用小型プリンタから産業用の大型プリンタにまで拡大されてきており、耐水性及び耐光性等の堅牢度がこれまで以上に求められている。耐水性については多孔質シリカ、カチオン系ポリマー、アルミナゾル又は特殊セラミックなどのインク中の色素を吸着し得る無機微粒子をPVA樹脂などとともに紙の表面にコーティングすることにより大幅に改良され、既にインクジェットプリント用の各種コート紙が市販されている。しかし、耐光性については大幅に改良させる技術は確立されておらず、特にYMCKの4原色のうちマゼンタの色素はもともと耐光性が弱いものが多く、その改良が重要な課題となっている。
【0004】
インクジェット記録用水溶性インクに用いられるマゼンタ色素の色素骨格としては、特開昭54ー89811、特開平8−60053及び同8−143798等にみられるキサンテン系と、特開昭61−62562、同62−156168、特開平3−203970、特開平7−157698及び特公平7−78190等にみられるH酸アゾ系が代表的である。しかしキサンテン系については色相及び鮮明性は非常に優れるが耐光性は非常に劣る。またH酸アゾ系については色相及び耐水性は良いものがあるが、耐光性及び鮮明性が劣る。特開平3−203970のようにこのタイプでは鮮明性及び耐光性の優れたマゼンタ染料も開発されているが、銅フタロシアニン系に代表されるシアン染料やイエロー染料など他の色相の染料に比べ耐光性は依然劣る水準である。
【0005】
さらに鮮明性及び耐光性の優れるマゼンタの色素骨格としては特開昭59−74173及び特開平2−16171等にみられるアントラピリドン系があるが、色相、鮮明性、耐光性、耐水性及び溶解安定性のすべてを満足させるものは得られていない。
本発明は、インクジェット記録に適する色相と鮮明性を有し、且つ記録物の耐光及び堅牢度が強いマゼンタ色素を提供する事を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記したような課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至ったものである。即ち本発明は、
(1)式(1)
【0007】
【化4】
Figure 0004360572
【0008】
(式中、R1は水素原子、アルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基、シクロヘキシル基、モノ又はジアルキルアミノアルキル基叉はシアノ低級アルキル基を、R2は水素原子、メチル基、エチル基、フェノキシ基(置換されていても良い)、スルホン酸基叉はカルボキシ基を、X,Yは各々独立して塩素、水酸基、アルコキシ基、フェノキシ基(スルホン酸基、カルボキシ基、アセチルアミノ基、アミノ基及び水酸基からなる群から選択される置換基で置換されていても良い。)、スルホン酸基もしくはカルボキシ基を有するモノ又はジアルキルアミノ基、アニリノ基(スルホン酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種又は2種の置換基で置換されていても良い。)、ナフチルアミノ基(ナフチル基はスルホン酸基で置換されていても良い。)叉はモノ又はジアルキルアミノアルキルアミノ基を表す。(但し、R2が水素原子の場合、X、Yのそれぞれが塩素原子、水酸基及びアニリノ基(スルホン酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種叉は2種の置換基で置換されていても良い。)から選ばれる基のいずれか1つの基である場合を除く。))で表される新規アントラピリドン化合物又はその塩、
(2)式(2)
【0009】
【化5】
Figure 0004360572
【0010】
(式中、R1は水素原子叉はアルキル基を、X,Yは各々独立して塩素、水酸基、アルコキシ基、フェノキシ基(スルホン酸基、カルボキシ基、アセチルアミノ基、アミノ基及び水酸基からなる群から選択される置換基で置換されていても良い。)、スルホン酸基もしくはカルボキシ基を有するアルキルアミノ基、アニリノ基(スルホン酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種叉は2種の置換基で置換されていても良い。)、ナフチルアミノ基(ナフチル基はスルホン酸基で置換されていても良い。)叉はジアルキルアミノアルキルアミノ基を表す。(但し、X、Yのそれぞれが塩素原子、水酸基及びアニリノ基(スルホン酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種叉は2種の置換基で置換されていても良い。)から選ばれる基のいずれか1つの基である場合を除く。))で表される(1)に記載の新規アントラピリドン化合物又はその塩、
【0011】
(3)Xがアニリノ基(スルホン酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種又は2種の置換基で置換されていても良い。)またはナフチルアミノ基(ナフチル基はスルホン酸基で置換されていても良い。)であり、Yが塩素、水酸基、アルコキシ基、フェノキシ基(スルホン酸基、カルボキシ基、アセチルアミノ基、アミノ基、水酸基から選択される置換基で置換されていても良い。)、アニリノ基(スルホン酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種又は2種の置換基で置換されていても良い。)、スルホン酸基もしくはカルボキシ基を有するアルキルアミノ基叉はジアルキルアミノアルキルアミノ基である(1)又は(2)に記載の新規アントラピリドン化合物又はその塩、
(4)R1が水素原子又はメチル基であり、Xがスルホン酸基及びカルボキシ基から選択される1種又は2種の置換基で置換されたアニリノ基であり、Yが水酸基、メトキシ基、フェノキシ基(スルホン酸基、カルボキシ基、アセチルアミノ基、アミノ基、水酸基から選択される置換基で置換されていても良い。)、スルホン酸基を有するアニリノ基、またはスルホン酸基もしくはカルボキシ基を有するアルキルアミノ基叉はジアルキルアミノアルキルアミノ基である(1)又は(2)に記載の新規アントラピリドン化合物又はその塩、
【0012】
(5)R1が水素原子又はメチル基であり、Xがカルボキシ基を2つ有するアニリノ基であり、Yが水酸基、スルホン酸基を2つ有するアニリノ基、スルホン酸基もしくはカルボキシ基を有するアルキルアミノ基叉はジアルキルアミノアルキルアミノ基である(1)又は(2)に記載の新規アントラピリドン化合物又はその塩、
(6)カルボキシ基を2つ有するアニリノ基が3,5−ジカルボキシアニリノ基であり、スルホン酸基もしくはカルボキシ基を有するアルキルアミノ基が2−スルホエチルアミノ基、カルボキシメチルアミノ基、2−カルボキシエチルアミノ基、1−カルボキシエチルアミノ基、ジエチルアミノエチルアミノ基叉はジエチルアミノプロピルアミノ基である(5)に記載の新規アントラピリドン化合物又はその塩、
(7)Xがスルホン酸基で置換されたナフチルアミノ基であり、Yが塩素、水酸基、メトキシ基、フェノキシ基(スルホン酸基、カルボキシ基、アセチルアミノ基、アミノ基、水酸基から選択される置換基で置換されていても良い。)、または、スルホン酸基もしくはカルボキシ基を有するアルキルアミノ基である(1)又は(2)に記載の新規アントラピリドン化合物又はその塩、
【0013】
(8)R1が水素原子又はメチル基であり、Xが3つのスルホン酸基で置換されたナフチルアミノ基であり、Yが塩素、水酸基またはフェノキシ基である(1)又は(2)に記載の新規アントラピリドン化合物又はその塩、
(9)3つのスルホン酸基で置換されたナフチルアミノ基がスルホン酸基を3,6,8位もしくは4,6,8位に有する2−ナフチルアミノ基もしくは1−ナフチルアミノ基である(8)に記載の新規アントラピリドン化合物又はその塩、
(10)色素成分として、(1)ないし(9)に記載の新規アントラピリドン化合物又はその塩を含むことを特徴とする水性マゼンタインク組成物、
(11)有機溶剤を含有する(10)に記載の水性マゼンタインク組成物、
(12)色素成分中の無機塩の含有量が1重量%以下である(10)又は(11)に記載の水性マゼンタインク組成物、
(13)インクジェット記録用である(10)ないし(12)のいずれか一項に記載の水性マゼンタインク組成物、
【0014】
(14)インク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に記録を行うインクジェット記録方法において、インクとして(10)ないし(13)のいずれか一項に記載の水性マゼンタインクを使用することを特徴とするインクジェット記録方法、
(15)被記録材が情報伝達用シートである(14)に記載のインクジェット記録方法、
(16)(10)ないし(13)に記載の水性マゼンタインク組成物を含有する容器、
(17)(16)の容器を有するインクジェットプリンター、
(18)(1)ないし(9)に記載の新規アントラピリドン化合物又はその塩を有する着色体、
(19)式(5)
【0015】
【化6】
Figure 0004360572
【0016】
(式中、R1、R2はそれぞれ式(1)におけるのと同じ意味を表す。)
で表されるアントラピリドン化合物、
に関する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の新規アントラピリドン化合物は、前記式(1)で表される。前記式(1)において、R1のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等のC1〜C4のアルキル基があげられる。また、R1におけるヒドロキシ低級アルキル基及びシアノ低級アルキル基におけるアルキルとしては、例えばエチル、プロピル等が挙げられるが、エチルが好ましい。X,Yにおけるアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等のC1〜C4のアルコキシ基があげられる。スルホン酸基又はカルボキシ基を有するアルキルアミノ基におけるアルキルとしては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル等のC1〜C4のアルキルがあげられる。但し、R2が水素原子の場合、X、Yのそれぞれが塩素原子、水酸基及びアニリノ基(スルホン酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種叉は2種の置換基で置換されていても良い。)から選ばれる基のいずれか1つの基である場合を除く。
【0018】
X,Yにおける、スルホン酸基、カルボキシ基、アセチルアミノ基、アミノ基、水酸基から選択される置換基で置換されていても良いフェノキシ基としては、例えば4−スルホフェノキシ基、4−カルボキシフェノキシ基、4−アセチルアミノ−フェノキシ基、4−アミノフェノキシ基、4−ヒドロキシフェノキシ基等があげられる。
【0019】
X,Yにおける、スルホン酸基又はカルボキシ基を有するアルキルアミノ基としては、例えば2−スルホエチルアミノ基、カルボキシメチルアミノ基、2−カルボキシエチルアミノ基、1−カルボキシエチルアミノ基、1,2−ジカルボキシエチルアミノ基又はジ(カルボキシメチル)アミノ基等があげられる。
【0020】
X,Yにおける、スルホン酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種又は二種の置換基で置換されていても良いアニリノ基としては、例えば2,5−ジスルホアニリノ基、3−スルホアニリノ基、2−スルホアニリノ基、4−スルホアニリノ基、2−カルボキシ−4−スルホアニリノ基、2−カルボキシ−5−スルホアニリノ基等があげられる。
【0021】
X,Yにおける、スルホン酸基で置換されていても良いナフチルアミノ基としては、例えば3,6,8−トリスルホ−1−ナフチルアミノ基、4,6,8−トリスルホ−2−ナフチルアミノ基、3,6,8−トリスルホ−2−ナフチルアミノ基、4,8−ジスルホ−2−ナフチルアミノ基等があげられる。
【0022】
1,X,Yの好ましい組み合わせとしては、例えば、R1が水素原子又はメチル基、Xがアニリノ基(スルホン酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種又は2種の置換基で置換されていても良い。)またはナフチルアミノ基(ナフチル基はスルホン酸基で置換されていても良い。)であり、Yが塩素、水酸基、アルコキシ基、フェノキシ基(スルホン酸基、カルボキシ基、アセチルアミノ基、アミノ基及び水酸基からなる群から選択される置換基で置換されていても良い。)、アニリノ基(スルホン酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種又は2種の置換基で置換されていても良い。)、またはスルホン酸基又はカルボキシ基を有するアルキルアミノ基である。
【0023】
1,X,Yのより好ましい組み合わせとしては、例えば、R1が水素原子又はメチル基、Xがスルホン酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種又は2種の置換基で置換されたアニリノ基であり、Yが水酸基、メトキシ基、フェノキシ基(スルホン酸基、カルボキシ基、アセチルアミノ基、アミノ基及び水酸基からなる群から選択される置換基で置換されていても良い。)、スルホン酸基を有するアニリノ基又はスルホン酸基もしくはカルボキシ基を有するアルキルアミノ基である。
【0024】
1,X,Yのさらに好ましい組み合わせとしては、例えば、R1が水素原子又はメチル基、Xがカルボキシ基を2個有するアニリノ基であり、Yが水酸基及び/又はスルホン酸基を2個有するアニリノ基、またはスルホン酸基もしくはカルボキシ基を有するアルキルアミノ基である。また、カルボキシ基を2個有するアニリノ基として具体的には3,5−ジカルボキシアニリノ基が好ましく、スルホン酸基又はカルボキシ基を有するアルキルアミノ基としては2−スルホエチルアミノ基、カルボキシメチルアミノ基又は2−カルボキシエチルアミノ基が、それぞれ好ましい。
【0025】
1,X,Yの別の好ましい組み合わせとしては、例えば、R1が水素原子又はメチル基、Xがスルホン酸基で置換されたナフチルアミノ基であり、Yが塩素、水酸基、メトキシ基、フェノキシ基(スルホン酸基、カルボキシ基、アセチルアミノ基、アミノ基、水酸基から選択される置換基で置換されていても良い。)、または、スルホン酸基もしくはカルボキシ基を有するアルキルアミノ基である。
【0026】
1,X,Yの別のより好ましい組み合わせとしては、例えば、R1が水素原子又はメチル基、Xが3個のスルホン酸基で置換されたナフチルアミノ基であり、Yが塩素、水酸基またはフェノキシ基である。また、3個のスルホン酸基で置換されたナフチルアミノ基はスルホン酸基を3,6,8位もしくは4,6,8位に有する2−ナフチルアミノ基又は1−ナフチルアミノ基が好ましい。
【0027】
本発明の前記式(1)で示される新規アントラピリドン化合物の具体例を表1に示す。尚、表1中(S)はスルホン酸基を、(K)はカルボキシ基を、(S)または(K)の直前にある数字は各置換基の数をそれぞれ意味する。
【0028】
Figure 0004360572
【0029】
Figure 0004360572
【0030】
Figure 0004360572
【0031】
Figure 0004360572
【0032】
Figure 0004360572
【0033】
Figure 0004360572
【0034】
Figure 0004360572
注)表中、Phはフェニル基を表す。
【0035】
式(1)の化合物を得るには、例えば対応するアニリン類またはナフチルアミン類1モルと2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン(シアヌルクロライド)0.9〜1.1モルとを水中で、pH3〜6、0〜10℃、2〜4時間反応させて得られる1次縮合物に、下記式(5)のアミノアントラピリドン化合物0.8〜0.9モルを、pH4〜9、50〜70℃、2〜5時間反応させることにより、Yが塩素原子である化合物が2次縮合物として得られる。次いで、pH9〜12、70〜90℃、1〜5時間加水分解することにより、又は対応するアミン類、フェノール類もしくはメタノール等のアルコール類を、pH8〜9、90〜100℃、3〜8時間反応させることにより、3次縮合物としてYが塩素原子以外の化合物が得られる。なお、縮合の順序は各種化合物の反応性に応じ、適宜定められ、上記に限定されない。
【0036】
こうして得られる化合物は遊離酸の形で、あるいはその塩の形で存在する。本発明では遊離酸又はその塩として、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルキルアミン塩、アルカノールアミン塩またはアンモニウム塩として使用できる。好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩等のアルカノールアミン塩、アンモニウム塩があげられる。また塩の作り方としては、例えば、上記で得られる3次縮合物の反応液に食塩を加えて、塩析、濾過することによってナトリウム塩がウェットケーキとして得られる。そのウェットケーキを再び水に溶解後、塩酸を加えてpHを1〜2に調整して得られる結晶を濾過すれば、遊離酸(あるいは一部はナトリウム塩のまま)の形で得られる。更に、その遊離酸の形のウェットケーキを水と共に撹拌しながら、例えば、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水を添加してアルカリ性にすれば、各々カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩が得られる。
【0037】
なお、式(5)のアントラピリドン化合物は、例えば次のようにして得られる。即ち、下記式(3)で示されるアントラピリドンのブロム体1モルに5−アセチルアミノ−2−スルホアニリン1.1〜5モルを、DMF等の非プロトン性極性有機溶媒中、炭酸ナトリウムのような脱酸剤及び酢酸銅のような銅触媒の存在下、120〜140℃、2〜5時間、ウルマン反応を行って縮合し、下記式(4)の化合物が得られる。次いでアセチル基を硫酸等の強酸の存在下、90〜130℃で加水分解することにより、一般式(5)のアントラピリドン化合物が得られる。
【0038】
【化7】
Figure 0004360572
【0039】
(式中、R1、R2は式(1)におけるのと同じ意味を表す。)
【0040】
本発明の水性マゼンタインク組成物は、前記式(1)及び(2)で表される化合物又はその塩を水又は水性溶媒(後記する水溶性有機溶剤(溶解助剤を含む。以下同様。)を含有する水)に溶解したものである。インクのpHは6〜11程度が好ましい。この水性インク組成物をインクジェット記録用プリンタに使用する場合、色素成分としては金属陽イオンの塩化物、硫酸塩等の無機物の含有量は少ないものを用いるのが好ましく、その含有量の目安は例えば、塩化ナトリウムと硫酸ナトリウムの総含量として1重量%以下である。無機物の少ない本発明の色素成分を製造するには、例えば逆浸透膜による通常の方法又は本発明の色素成分の乾燥品あるいはウェットケーキを必要な回数だけメタノール及び水の混合溶媒中で撹拌し、濾過、乾燥する方法で脱塩処理する操作を繰り返せば良い。
【0041】
本発明の水性インク組成物は水を媒体として調製されるが、本発明の化合物又はその塩は該水性インク組成物中に、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%、更に好ましくは2〜8重量%程度含有される。本発明の水性インク組成物にはさらに水溶性有機溶剤0〜30重量%、インク調製剤0〜5重量%含有していても良い。
【0042】
本発明のインク組成物は、蒸留水等の精製水に、本発明の化合物又はその塩及び必要により、上記水溶性有機溶剤、インク調製剤等を添加混合することにより調製される。また、水と上記水溶性有機溶剤、インク調製剤等との混合物に本発明の化合物又はその塩を添加、溶解してもよい。また必要ならインク組成物を得た後で濾過を行い、狭雑物を除去してもよい。
【0043】
使用し得る水溶性有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1 〜C4 アルカノール、N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド、ε−カプロラクタム、N−メチルピロリジン−2−オン等のラクタム類、尿素、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン又は1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の環式尿素、アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトン又はケトアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル、エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、チオジグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のC2 〜C6 アルキレン単位を有するモノー、オリゴー又はポリアルキレングリコール又はチオグリコール、グリセリン、ヘキサン−1.2.6−トリオール等のポリオール(トリオール)、エチレングリコールモノメチルーエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのC1 〜C4 アルキルエーテル、γーブチロラクトン又はジメチルスルホキシド等があげられる。これらの有機溶剤は2種以上併用しても良い。
【0044】
水と混和可能で有利な有機溶媒としては、N−メチルピロリジン−2−オン、C2 〜C6 アルキレン単位を有するモノ、ジ又はトリアルキレングリコール等が挙げられ、好ましいものとしてはモノ、ジ又はトリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、特に、N−メチルピロリジン−2−オン、ジエチレングリコール、ジメチルスルホキシドの使用が好ましい。
【0045】
インク調製剤は、上記本発明の化合物(色素成分)を含有する水溶液に所望のインク適性を付与する目的で使用されるもので、例えば防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、水溶性高分子化合物、染料溶解剤、界面活性剤などがあげられる。防腐防黴剤としては、例えばデヒドロ酢酸ソーダ、ソルビン酸ソーダ、2ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等があげられる。pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼさずに、インクのpHを6〜11の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。その例として、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、水酸酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などが挙げられる。キレート試薬としては、例えばエチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウムなどがあげられる。防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグルコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどがあげられる。
【0046】
本発明のインクジェット記録方法の被記録材としては例えば紙、フィルム等の情報伝達用シート、繊維及び皮革等が挙げられる。情報伝達用シートについては、表面処理されたもの、具体的にはこれらの基材にインク受容層を設けたものが好ましい。インク受容層は、例えば上記基材にカチオンポリマーを含浸あるいは塗工することにより、また多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックス等のインク中の色素を吸着し得る無機微粒子をポリビニルアルコールやポリビニールピロリドン等の親水性ポリマーと共に上記基材表面に塗工することにより設けられる。このようなインク受容層を設けたものは通常インクジェット専用紙(フィルム)や光沢紙(フィルム)と呼ばれ、例えばピクトリコ(旭硝子社製)、カラーBJペーパー、カラーBJフォトフィルムシート(いずれもキャノン社製)、カラーイメージジェット用紙(シャープ社製)、スーパーファイン専用光沢フィルム(セイコーエプソン社製)ピクタファイン(日立マクセル社製)等が挙げられる。なお、普通紙にも利用できることはもちろんである。
【0047】
また繊維についてはナイロン、絹及びウール等のポリアミド繊維が好ましく、不織布や布状のものが好ましい。これらの繊維については、本発明のインク組成物を該繊維に付与した後、好ましくはインクジェット方法により付与した後、湿熱(例えば約80〜120℃)あるいは乾熱(例えば約150〜180℃)の固着工程を加えることで該繊維内部に色素を染着させることができ、鮮明性、耐光性及び耐洗濯性に優れた染色物を得ることができる。
【0048】
本発明の容器は上記の水性マゼンタインク組成物を含有する。また、本発明のインクジェットプリンターは、この水性マゼンタインク組成物を含有する本発明の容器がインクタンク部分にセットされたものである。さらに、本発明の着色体は、上記の式(1)及び(2)で表される新規アントラピリドン化合物又はその塩で、好ましくは上記の水性マゼンタインク組成物で着色されたものである。
【0049】
本発明の水性インク組成物は、鮮明で、理想に近いマゼンタ色であり、他のイエロー、シアンのインクと共に用いる事で、広い可視領域の色調を色出しする事ができ、かつ耐光性及び耐水性の優れた既存のイエロー、シアン、ブラックと共に用いることで耐光性及び耐水性に優れた記録物を得ることができる。
【0050】
【実施例】
以下に本発明を更に実施例により具体的に説明する。尚、本文中「部」及び「%」とあるのは、特別の記載のない限り重量基準である。
【0051】
実施例1
(1)N,N−ジメチルホルムアミド450部中に、撹拌しながら式(3)の化合物(R1=CH3、R2=H)51.0部、炭酸ソーダ23.9部、酢酸第二銅・一水和物18.0部及び5−アセチルアミノ−2−スルホアニリン114.0部を順次仕込み、昇温する。130〜135℃の温度にて3時間反応を行う。次いで、冷却し、20℃にて30分撹拌後濾過し、メタノール300部で洗浄後、乾燥して、式(4)の化合物(R1=CH3、R2=H)62.9部を赤色結晶として得る。
【0052】
次に、水471部中に、冷却下96%硫酸513部を滴下し、50%硫酸を調製し、No.1の化合物61.3部を添加する。熱上げし、還流下(123℃)3時間反応を行う。水冷下(約25℃)、1時間撹拌後ろ過、水120部で洗浄し、赤色のウェットケーキを得る。このウェットケーキを、水2000部、24%苛性ソーダ80部の混合液中に、撹拌下徐々に添加する。室温にて1時間撹拌後ろ過して少量の不溶解分をろ別する。撹拌下、母液に食塩100部を添加する。1時間室温にて撹拌後、ろ過、乾燥して、式(5)の化合物(R1=CH3、R2=H)50.2部を赤色結晶として得る。λmax:523nm(アンモニア水溶液中)
【0053】
(2)氷水200部にリパールOH(商品名、アニオン界面活性剤、ライオン株式会社製)0.25部を加え、溶解後シアヌルクロライド12.0部を添加し、30分撹拌する。次に、5−アミノ−イソフタール酸ナトリウム塩(純度97.9%)15.5部を8〜10℃にて添加し、その温度で10%苛性ソーダ水溶液を滴下しながら、pHを5.7〜6.3に保ち、4時間1次縮合反応を行い、シアヌルクロライドと5−アミノ−イソフタール酸の1次縮合物を含有する反応液を得る。
【0054】
(3)(2)の反応液中に(1)で得られた式(5)の化合物23.5部を加え、昇温する。60〜65℃の温度で、10%苛性ソーダ水溶液を滴下しながら、pHを7.2〜7.8に保ち、1時間反応を行う。次に、pHを8.2〜8.8に1時間保った後、ろ過して少量の不溶解分をろ別してNo.1の化合物を含有する反応液を得る。
【0055】
(4)(3)の反応液中にタウリン16.5部を加え、昇温する。98℃の温度で、10%苛性ソーダ水溶液を滴下しながら、pHを9.0に保ち、2時間反応を行う。60〜65℃に保ちながら濃塩酸を添加し、pHを2に調整して60〜65℃にて撹拌する。1時間後結晶をろ別し、約60℃の湯250部で洗浄して、No.2の化合物を赤色ウェットケーキとして得る。
【0056】
(5)(4)で得られるウェットケーキを、メタノール1500部中に加え、60〜65℃に加熱、撹拌し1時間保持した後、濾過、メタノールで洗浄、乾燥し、No.2の化合物42.0部を赤色結晶として得る。λmax:523nm(水溶液中、アンモニウム塩),水に対する溶解度:100g/l以上
【0057】
実施例2
(1)実施例1の(1)〜(3)と同様にして得られるNo.1の化合物を含有する反応液中に、グリシン75.0部を加え、昇温する。95〜97℃の温度で、10%苛性ソーダ水溶液を滴下しながら、pHを9.0に保ち、2時間反応を行う。濾過を行い少量の不溶解物を除去した後、母液を60〜65℃に加熱、撹拌しながら、濃塩酸を加え、pHを1.5に調整して結晶を析出させる。1時間撹拌後濾過、水洗してNo.5の化合物のウェットケーキを得る。
【0058】
(2)(1)で得られるウェットケーキを実施例1(5)と同様に処理して、No.5の化合物35.0部を赤色結晶として得る。λmax:522nm(水溶液中、アンモニウム塩),水に対する溶解度:100g/l以上
【0059】
実施例3
(1)氷水75部にリパールOH 0.1部を加え、溶解後シアヌルクロライド2.0部を添加し、30分撹拌する。次に、2−ナフチルアミン−3,6,8トリスルホン酸(スルホアミノG酸)(純度65.8%)7.1部を5〜10℃にて添加し、その温度で10%苛性ソーダ水溶液を滴下しながら、pHを4.0〜5.0に保ち、2時間1次縮合反応を行い、濾過を行い少量の不溶解物を除去して、シアヌルクロライドと2−ナフチルアミン−3,6,8トリスルホン酸の1次縮合物を含有する反応液を得る。
【0060】
(2)(1)の反応液中に実施例1(1)(2)と同様にして得られる式(5)の化合物(R1=CH3、R2=H)4.7部を加え、昇温する。60〜65℃の温度で、10%苛性ソーダ水溶液を滴下しながら、pHを4〜5に保ち、1時間反応を行う。次に、pHを6.5〜7.0に1時間保った後、ろ過して少量の不溶解分をろ別してNo.15の化合物を含有する反応液を得る。水を加えて液量を250部として、60〜65℃に加熱する。食塩50部を添加して撹拌を行う。約30分後、結晶が析出する。1時間撹拌後、濾過し、10%食塩水溶液100部で洗浄、乾燥してNo.15の化合物のナトリウム塩8.9部を赤色結晶として得る。λmax:527nm(水溶液),水に対する溶解度:100g/l以上
【0061】
実施例4
(A)インクの作製
実施例1ないし3でそれぞれ得られたNo.2、No.5及びNo.15のアントラピリドン化合物(色素成分)を含む下記表2の組成の液体を調製し、0.45μmのメンブランフィルターでろ過することにより各インクジェット用水性インク組成物を得た。
【0062】
表2
色素成分 4.0部
(脱塩処理したものを使用)
水 77.0部
グリセリン 5.0部
尿素 5.0部
N−メチル−2−ピロリドン 4.0部
IPA(イソプロピルアルコール) 3.0部
ブチルカルビトール 2.0部
計 100.0部
【0063】
(B)インクジェットプリント
インクジェットプリンタ(商品名 NEC社PICTY80L)を用いて、普通紙(プリンタペーパーA4 TLB5A4S(キャノン社製))、専用紙A(Color BJ Paper LC101(キャノン社製))、専用紙B(カラーイメージジェット用コート紙 STX73A4(シャープ製))、光沢フィルム(専用光沢フィルム MJA4SP6(セイコーエプソン社製))の4種の被記録材料にインクジェット記録を行った。
【0064】
(C)記録画像の評価
▲1▼ 色相評価
記録画像の色相、鮮明性:記録紙を測色システム(GRETAG SPM50:GRETAG社製)を用いて測色し、L 、a 、b 値を算出。色相はJNC(社団法人 日本印刷産業機械工業会)のJAPAN Colorの標準マゼンタのカラーサンプルとの比較、鮮明性はC =((a2+(b21/2で評価した。次に、JNCのJAPAN Colorの標準マゼンタのカラーサンプルの色相を表3に示す。
【0065】
Figure 0004360572
※ 紙はJapan Color Standard Paper
【0066】
▲2▼ 耐光試験
カーボンアークフェードメーター(スガ試験機社製)を用い、記録画像に20時間照射した。判定級は、JIS L−0841に規定されたブルースケールの等級に準じて判定するとともに、上記の測色システムを用いて試験前後の色差(ΔE)を測定した。
▲3▼ 耐水試験
水を張ったビーカー中に記録紙を入れ、2分間撹拌した後取り出し風乾し、試験前後の変化をJIS変褪色グレースケールで判定するとともに、上記の測色システムを用いて試験前後の色差を測定した。
【0067】
本発明、実施例1ないし3の水性マゼンタインク組成物の記録画像の色相、鮮明性、耐光性及び耐水試験結果を表4に示す。
【0068】
Figure 0004360572
【0069】
本発明のアントラピリドン色素はJNC標準マゼンタの色相及び鮮明性に近似しており、インクジェット用マゼンタ色素として適した色素である。また、専用紙に対する耐光性、耐水性も良好である。さらに、実施例1,2と3の対比から、X成分及び/またはY成分がカルボキシル基を有する成分の場合、普通紙における耐水性が大幅に向上している。さらに実施例1ないし3でそれぞれ得られたNo.2、No.5及びNo.15の色素は、アルカリ性条件下(pH=8〜9)における水に対する溶解性が100g/l以上であり、インクジェット用の色素として安定なインクの作製が可能であり、又高濃度のインクの作製も可能であることから使用用途も広く使いやすい色素である。
【0070】
実施例5
実施例1の(1)〜(3)と同様にして得られるNo.1の化合物を含有する反応液中にβ−アラニン8.9部を加え昇温する。90〜95℃の温度で、10%苛性ソーダ水溶液を滴下しながらpHを9.0に保ち、1.5時間反応を行なう。次いでpHを10.0に保ち、1時間反応を行ない、反応を完結させる。濾過を行ない、少量の不溶解物を除去した後、母液を60〜65℃に加熱、攪拌しながら、食塩を総液量に対して20重量%を添加し、次いで濃塩酸を加えてpH1.5に調整して結晶を析出させる。1時間攪拌後、濾過、250部の水で洗浄、次いで250部のメタノールで洗浄後乾燥させ、No.7の化合物37.0部を赤色結晶として得る。λmax:521nm(水溶液中、アンモニウム塩)
【0071】
実施例6
(1)実施例1の(1)〜(3)と同様にして得られるNo.1の化合物を含有する反応液に、反応液に対して15重量%の食塩を添加して、塩析を行ない、室温にて30分間攪拌後、濾過してNo.1の化合物のケーキを得る。
(2)(1)で得られたケーキを、水500部と共に攪拌し、次いでL−アスパラギン酸20.0部を添加して90〜95℃の温度にてpH9.5に保ち6時間反応させる。濾過を行ない、少量の不溶解物を除去した後、母液を60〜65℃に加熱、攪拌しながら、濃塩酸を加えてpHを1.5に調整し、1時間攪拌を行なう。得られた結晶を濾過し、赤色のウェットケーキが得られる。
(3)(2)で得られるウェットケーキ175部を、メタノール800部と共に還流下、加熱処理を1時間行ない、濾過、メタノール洗浄、乾燥してNo.8の化合物21.2部を赤色結晶として得る。λmax:523nm(水溶液中、アンモニウム塩)
【0072】
実施例7
(1)実施例6の(1)と同様にして得られるNo.1の化合物のウェットケーキを水600部と共に攪拌、加熱し、85〜90℃に保つ。イミノジ酢酸20.0部を添加し、10%苛性ソーダ水溶液を加えながらpHを10.0に2.5時間保持し、反応を完結させる。濾過して、少量の不溶解物を除去した後、母液を65〜70℃に加熱し、次いで総液量に対して15重量%の食塩を添加、次いで濃塩酸を添加してpHを2に調整する。1時間攪拌後得られる結晶を濾過し、No.90の化合物を含むウェットケーキを得る。
(2)(1)で得られるウェットケーキをメタノール500部及び水300部と共に攪拌、65℃に加熱し、1時間後濾過、メタノール洗浄、乾燥して、No.90の化合物42.5部を赤色結晶として得る。λmax:522nm(水溶液中、アンモニウム塩)
【0073】
実施例8
(1)実施例6の(1)と同様にして得られるNo.1の化合物のウェットケーキを水800部と共に攪拌、80〜85℃に加熱し、次いで2−ジエチルアミノ−エチルアミン10.2部を添加し、10%苛性ソーダ水溶液を加えながらpHを10に調整しながら2時間反応を行なう。反応液を濾過し、少量の不溶解物を除去後、母液を攪拌しながら濃塩酸を添加し、pHを1.5に調整して結晶を析出させる。70℃にて30分攪拌後、濾過してNo.89の化合物のウェットケーキを得る。
(2)(1)で得られるウェットケーキを水800部と共に攪拌、加熱して65〜70℃にて1時間保持する。濾過、湯洗、乾燥して、No.89の化合物26.1部を赤色結晶として得る。λmax:525nm(水溶液中、アンモニウム塩)
【0074】
実施例9
実施例1の(1)〜(3)と同様にして得られるNo.1の化合物を含有する反応液に、3−ジエチルアミノ−プロピルアミン11.4部を添加し、80〜85℃に加熱、攪拌する。10%苛性ソーダ水溶液を添加しながらpHを10に調整し、2時間反応を行なう。反応液を濾過して少量の不溶解物を除去して、母液を50〜60℃に加熱し、攪拌下、濃塩酸を添加して、pHを2に調整し、結晶を析出させる。30分間攪拌後、濾過し、湯洗、乾燥して、No.33の化合物42.0部を赤色結晶として得る。λmax:524nm(水溶液中、アンモニウム塩)
【0075】
【発明の効果】
本発明の新規アントラピリドン化合物は極めて水溶解性に優れ、水溶液は経時安定性が良く、又インク組成物製造過程でのメンブランフィルターに対する濾過性が良好という特徴を有する。更に、この化合物は生体に対する安全性も高い。この新規アントラピリドン化合物を使用した本発明のインク組成物は長期間保存後の結晶析出、物性変化、色変化等もなく、貯蔵安定性が良好である。又、本発明のインク組成物をインクジェット記録用のマゼンタインクとして使用した印刷物は耐光性及び耐水性に優れ、イエロー、シアン及びブラック染料と共に用いることで耐光性及び耐水性に優れたインクジェット記録が可能である。更に印刷面は鮮明で理想に近いマゼンタ色であり、他のイエロー、シアンのインクと共に用いる事で、広い可視領域の色調を色出しする事ができる。このように、本発明のインク組成物はインクジェット記録用のマゼンタインクに極めて有用である。

Claims (19)

  1. 式(1)
    Figure 0004360572
    (式中、R1は水素原子、アルキル基、ヒドロキシC2〜C3アルキル基、シクロヘキシル基、モノ又はジアルキルアミノアルキル基叉はシアノC2〜C3アルキル基を、R2は水素原子、メチル基、エチル基、フェノキシ基(置換されていても良い)、スルホン酸基叉はカルボキシ基を、X,Yは各々独立して塩素、水酸基、アルコキシ基、フェノキシ基(スルホン酸基、カルボキシ基、アセチルアミノ基、アミノ基及び水酸基からなる群から選択される置換基で置換されていても良い。)、スルホン酸基もしくはカルボキシ基を有するモノ又はジアルキルアミノ基、アニリノ基(スルホン酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種又は2種の置換基で置換されていても良い。)、ナフチルアミノ基(ナフチル基はスルホン酸基で置換されていても良い。)叉はモノ又はジアルキルアミノアルキルアミノ基を表す。(但し、R2が水素原子の場合、X、Yのそれぞれが塩素原子、水酸基及びアニリノ基(スルホン酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種叉は2種の置換基で置換されていても良い。)から選ばれる基のいずれか1つの基である場合を除く。))で表される新規アントラピリドン化合物又はその塩。
  2. 式(2)
    Figure 0004360572
    (式中、R1は水素原子叉はアルキル基を、X,Yは各々独立して塩素、水酸基、アルコキシ基、フェノキシ基(スルホン酸基、カルボキシ基、アセチルアミノ基、アミノ基及び水酸基からなる群から選択される置換基で置換されていても良い。)、スルホン酸基もしくはカルボキシ基を有するアルキルアミノ基、アニリノ基(スルホン酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種叉は2種の置換基で置換されていても良い。)、ナフチルアミノ基(ナフチル基はスルホン酸基で置換されていても良い。)叉はジアルキルアミノアルキルアミノ基を表す。(但し、X、Yのそれぞれが塩素原子、水酸基及びアニリノ基(スルホン酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種叉は2種の置換基で置換されていても良い。)から選ばれる基のいずれか1つの基である場合を除く。))で表される請求項1に記載の新規アントラピリドン化合物又はその塩。
  3. Xがアニリノ基(スルホン酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種又は2種の置換基で置換されていても良い。)またはナフチルアミノ基(ナフチル基はスルホン酸基で置換されていても良い。)であり、Yが塩素、水酸基、アルコキシ基、フェノキシ基(スルホン酸基、カルボキシ基、アセチルアミノ基、アミノ基、水酸基から選択される置換基で置換されていても良い。)、アニリノ基(スルホン酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種又は2種の置換基で置換されていても良い。)、スルホン酸基もしくはカルボキシ基を有するアルキルアミノ基叉はジアルキルアミノアルキルアミノ基である請求項1又は2に記載の新規アントラピリドン化合物又はその塩。
  4. 1が水素原子又はメチル基であり、Xがスルホン酸基及びカルボキシ基から選択される1種又は2種の置換基で置換されたアニリノ基であり、Yが水酸基、メトキシ基、フェノキシ基(スルホン酸基、カルボキシ基、アセチルアミノ基、アミノ基、水酸基から選択される置換基で置換されていても良い。)、スルホン酸基を有するアニリノ基、またはスルホン酸基もしくはカルボキシ基を有するアルキルアミノ基叉はジアルキルアミノアルキルアミノ基である請求項1又は2に記載の新規アントラピリドン化合物又はその塩。
  5. 1が水素原子又はメチル基であり、Xがカルボキシ基を2つ有するアニリノ基であり、Yが水酸基、スルホン酸基を2つ有するアニリノ基、スルホン酸基もしくはカルボキシ基を有するアルキルアミノ基叉はジアルキルアミノアルキルアミノ基である請求項1又は2に記載の新規アントラピリドン化合物又はその塩。
  6. カルボキシ基を2つ有するアニリノ基が3,5−ジカルボキシアニリノ基であり、スルホン酸基もしくはカルボキシ基を有するアルキルアミノ基が2−スルホエチルアミノ基、カルボキシメチルアミノ基、2−カルボキシエチルアミノ基、1−カルボキシエチルアミノ基、ジエチルアミノエチルアミノ基叉はジエチルアミノプロピルアミノ基である請求項5に記載の新規アントラピリドン化合物又はその塩。
  7. Xがスルホン酸基で置換されたナフチルアミノ基であり、Yが塩素、水酸基、メトキシ基、フェノキシ基(スルホン酸基、カルボキシ基、アセチルアミノ基、アミノ基、水酸基から選択される置換基で置換されていても良い。)、または、スルホン酸基もしくはカルボキシ基を有するアルキルアミノ基である請求項1又は2に記載の新規アントラピリドン化合物又はその塩。
  8. 1が水素原子又はメチル基であり、Xが3つのスルホン酸基で置換されたナフチルアミノ基であり、Yが塩素、水酸基またはフェノキシ基である請求項1又は2に記載の新規アントラピリドン化合物又はその塩。
  9. 3つのスルホン酸基で置換されたナフチルアミノ基がスルホン酸基を3,6,8位もしくは4,6,8位に有する2−ナフチルアミノ基もしくは1−ナフチルアミノ基である請求項8に記載の新規アントラピリドン化合物又はその塩。
  10. 色素成分として、請求項1ないし9のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物又はその塩を含むことを特徴とする水性マゼンタインク組成物。
  11. 有機溶剤を含有する請求項10に記載の水性マゼンタインク組成物。
  12. 色素成分中の無機塩の含有量が1重量%以下である請求項10又は11に記載の水性マゼンタインク組成物。
  13. インクジェット記録用である請求項10ないし12のいずれか一項に記載の水性マゼンタインク組成物。
  14. インク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に記録を行うインクジェット記録方法において、インクとして請求項10ないし13のいずれか一項に記載の水性マゼンタインクを使用することを特徴とするインクジェット記録方法。
  15. 被記録材が情報伝達用シートである請求項14に記載のインクジェット記録方法。
  16. 請求項10ないし13に記載の水性マゼンタインク組成物を含有する容器。
  17. 請求項16の容器を有するインクジェットプリンター。
  18. 請求項1ないし9に記載の新規アントラピリドン化合物又はその塩を有する着色体。
  19. 式(5)
    Figure 0004360572
    (式中、R1、R2はそれぞれ式(1)におけるのと同じ意味を表す。)
    で表されるアントラピリドン化合物。
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