以下、図面を参照して本発明の実施形態による光半導体素子について詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態は、本発明の一部の態様を示すものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の説明で参照する各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態による光半導体素子を模式的に示す平面図であり、図2は図1中のA−A線に沿う断面図である。図2に示す通り、本実施形態の光半導体素子10は、面発光型半導体レーザ20、受光素子としての光検出素子30、及び静電耐圧素子40を含んで構成される。以下、これらの構成及び全体構成について順に説明する。
〈面発光型半導体レーザ〉
面発光型半導体レーザ20は、半導体基板(本実施形態ではn型GaAs基板)11上に形成されている。この面発光型半導体レーザ20は垂直共振器を有しており、本実施形態では垂直共振器をなす一方の分布反射型多層膜ミラーが柱状の半導体堆積体(以下、第1柱状部という)P1に形成されている。つまり、面発光型半導体レーザ20はその一部が第1柱状部P1に含まれた構成である。
面発光型半導体レーザ20は、例えば、n型Al0.9Ga0.1As層とn型Al0.15Ga0.85As層とを交互に積層した40ペアの分布反射型多層膜ミラー(以下、第1ミラーという)21と、GaAsウェル層とAl0.3Ga0.7Asバリア層からなり、ウェル層が3層で構成される量子井戸構造を含む活性層22と、p型Al0.9Ga0.1As層とp型Al0.15Ga0.85As層とを交互に積層した25ペアの分布反射型多層膜ミラー(以下、第2ミラーという)23と、p型GaAsからなるコンタクト層24とが順次積層された多層構造である。
尚、本実施形態において、AlGaAs層のAl組成とは、ガリウム(Ga)に対するアルミニウム(Al)の組成をいう。AlGaAs層のAl組成は、「0」から「1」までである。即ち、AlGaAs層は、GaAs層(Al組成が「0」の場合)及びAlAs層(Al組成が「1」の場合)を含む。また、以上説明した第1ミラー21、活性層22、第2ミラー23、及びコンタクト層24を構成する各層の組成及び層数は特に限定される訳ではない。
面発光型半導体レーザ20をなす第1ミラー21は、例えばケイ素(Si)がドーピングされることによりn型にされており、第2ミラー23は、例えば炭素(C)がドーピングされることによりp型にされている。従って、p型の第2ミラー23、不純物がドーピングされていない活性層22、及びn型の第1ミラー21により、pinダイオードが形成される。また、面発光型半導体レーザ20のうち、第2ミラー23及びコンタクト層24が、第2ミラー23の上面からみて円形の形状にエッチングされて第1柱状部P1が形成されている。尚、本実施形態では、第1柱状部P1の平面形状を円形としたが、この形状は任意の形状をとることができる。
更に、第2ミラー23を構成する層のうち活性層22に近い領域に、AlGaAs層を側面から酸化することにより得られる電流狭窄層25が形成されている。この電流狭窄層25はリング状に形成されている。即ち、この電流狭窄層25は、図1及び図2に示す半導体基板11の表面11aと平行な面で切断した場合における断面形状が、第1柱状部P1の平面形状の円形と同心の円のリング状である。
また、コンタクト層24上には、第1柱状部P1の外周に沿うようにリング状の平面形状を有する電極26が形成されている。この電極26は、例えば、クロム(Cr)、金(Au)と亜鉛(Zn)との合金、及び金(Au)の積層膜からなる。或いは、白金(Pt)、チタン(Ti)及び金(Au)の積層膜からなる。この電極26は、面発光型半導体レーザ20を駆動するためのものであり、電極26から活性層22に電流が注入される。
〈分離層〉
本実施形態の光半導体素子10は、面発光型半導体レーザ20上に分離層27が形成されている。即ち、分離層27は、面発光型半導体レーザ20と後述する光検出素子30との間に設けられている。具体的には、図2に示す通り、分離層27は、コンタクト層24上に形成されている。即ち、分離層27は、面発光型半導体レーザ20のコンタクト層24と、後述する光検出素子30の後述する第1コンタクト層31との間に設けられている。尚、前述した通り、コンタクト層24の上面にはリング状の電極26が形成されているため、分離層27は周囲が電極26に取り囲まれている。
この分離層27の平面形状は円形である。図示の例では、分離層27の平面形状は第1コンタクト層31の平面形状と同じであるが、これらの直径は第1柱状部P1の直径よりも小さくなるよう形成されている。尚、分離層27の平面形状は、第1コンタクト層31の平面形状よりも大きく形成することもできる。分離層27については、後述する光半導体素子の製造方法の項にて更に詳細に説明する。
〈光検出素子〉
光検出素子30は分離層27上に設けられている。光検出素子30は第1コンタクト層31、光吸収層32、及び第2コンタクト層33を含んで構成される。第1コンタクト層31は分離層27上に設けられ、光吸収層32は第1コンタクト層31上に設けられ、第2コンタクト層33は光吸収層32上に設けられている。光吸収層32及び第2コンタクト層33の平面形状は、第1コンタクト層31の平面形状よりも小さく形成されている。第2コンタクト層33及び光吸収層32は、柱状の半導体堆積体(以下、第2柱状部という)P2を構成する。つまり、光検出素子30はその一部が第2柱状部P2に含まれた構成である。尚、光検出素子30の上面は、面発光型半導体レーザ20からのレーザ光の射出面34とされている。
光検出素子30を構成する第1コンタクト層31はn型GaAs層からなり、光吸収層32は不純物が導入されていないGaAs層からなり、第2コンタクト層33はp型GaAs層からなる。具体的には、第1コンタクト層31は、例えばケイ素(Si)がドーピングされることによりn型にされ、第2コンタクト層33は、例えば炭素(C)がドーピングされることによりp型にされている。従って、n型の第1コンタクト層31、不純物がドーピングされていない光吸収層32、及びp型の第2コンタクト層33により、pinダイオードが形成される。
第1コンタクト層31上には、その外周に沿うようにリング状の平面形状を有する電極35が形成されている。つまり、電極35は、第2柱状部P2を取り囲むように設けられている。この電極35は、例えば、クロム(Cr)、金(Au)とゲルマニウム(Ge)との合金、ニッケル(Ni)、及び金(Au)の積層膜からなる。
また、光検出素子30の上面上(第2コンタクト層33上)には電極36が形成されている。電極35,36は、光検出素子30を駆動するために使用される。電極36には開口部37が設けられており、この開口部37によって第2コンタクト層33の上面の一部が露出する。この露出した面が、レーザ光の射出面34である。従って、開口部37の平面形状及び大きさを適宜設定することにより、射出面34の形状及び大きさを適宜設定することができる。本実施形態においては、図1に示す通り、射出面34が円形であるものとする。また、電極36は、面発光型半導体レーザ20のコンタクト層24上に形成される電極26と同じ材質にて形成することができる。
電極36は、図1に示す通り、リング状の平面形状を有する接続部36aと、直線状の平面形状を有する引き出し部36bと、円状の平面形状を有するパッド部36cとを有する。電極36は、接続部36aにおいて第2コンタクト層33と電気的に接続されている。電極36の引き出し部36bは、接続部36aとパッド部36cとを接続している。第4電極のパッド部36cは、電極パッドとして用いられる。尚、本実施形態では電極36の接続部36aの形状がリング状である場合を例に挙げているが、接続部36aは第2コンタクト層33に接触してさえいれば良いため、その平面形状は任意の形状とすることができる。
〈静電耐圧素子〉
静電耐圧素子40は、半導体基板11上であって、第1柱状部P1及び第2柱状部が形成された位置とは異なる位置に形成された柱状の半導体堆積体(以下、第3柱状部という)P3及び第3柱状部P3上の柱状の半導体堆積体(以下、第4柱状部という)P4に形成されている。第3柱状部P3は、第2ミラー23、コンタクト層24、分離層27、及び第1コンタクト層31がエッチングされて形成される。また、第4柱状部P4は、光吸収層32及び第2コンタクト層33がエッチングされて形成される。
第3柱状部P3は第1コンタクト層31の上面からみて円形の形状にエッチングされ、第4柱状部P4は第2コンタクト層33の上面からみて円形の形状にエッチングされる。また、図1及び図2に示す通り、第4柱状部P4は、その直径が第3柱状部P3の直径よりも小さくなるように形成され、且つ第3柱状部P3と同心とならないよう、第1柱状部P1及び第2柱状部P2から離れる方向に偏心した状態に形成される。尚、本実施形態では、第3柱状部P3と第4柱状部P4とを偏心させた構造を例に挙げて説明するが、これらが同心の構造であっても良い。
静電耐圧素子40は、第3柱状部P3の第1コンタクト層31と、第4柱状部P4の光吸収層32及び第2コンタクト層33とを含んで構成される。静電耐圧素子40の一部をなす第1コンタクト層31は、光検出素子30の一部をなす第1コンタクト層31と層構造が同一である。また、静電耐圧素子40の一部をなす光吸収層32は、光検出素子30の一部をなす光吸収層32と層構造が同一である。更に、静電耐圧素子40の一部をなす第2コンタクト層33は、光検出素子30の一部をなす第2コンタクト層33と層構造が同一である。
従って、静電耐圧素子40を構成する第1コンタクト層31、吸収層32、及び第2コンタクト層33によってもpinダイオードが形成される。ここで、「層構造が同一」であるとは、対象となる2つの層の厚み及び組成が同一であることを意味し、対象となる2つの層の層構造が多層構造である場合には、多層構造をなす各層の厚み及び組成が対象となる2つの層でそれぞれ同一であることを意味する。
静電耐圧素子40の一部をなす第1コンタクト層31上には、第1柱状部P1及び第2柱状部P2と向かい合う側に、略矩形形状の平面形状を有する電極41が形成されている。この電極41は、光検出素子30の一部をなす第1コンタクト層31上に形成される電極35と同じ材質にて形成することができる。即ち、電極41を、例えば、クロム(Cr)、金(Au)とゲルマニウム(Ge)との合金、ニッケル(Ni)、及び金(Au)の積層膜で形成することができる。
また、静電耐圧素子40の一部をなす第2コンタクト層33上には、電極42が形成されている。電極41,42は、静電耐圧素子40を駆動するために使用される。電極42は、面発光型半導体レーザ20のコンタクト層24上に形成される電極26と同じ材質にて形成することができる。即ち、電極42を、例えば、クロム(Cr)、金(Au)と亜鉛(Zn)との合金、及び金(Au)の積層膜で形成することができる。この電極42は、その平面形状を第4柱状部P4の平面形状と相似の円形の形状にすることが望ましい。
〈絶縁層〉
本実施形態の光半導体素子10は、図1及び図2に示す通り、主として第1柱状部P1、第2柱状部P2、及び第3柱状部P3の周囲を取り囲むよう第1ミラー21の上、又は活性層22の上に絶縁層50が形成されている。また、この絶縁層50は、第4柱状部P4の側面の一部を覆うように形成されている。この絶縁層50は、電極36の引き出し部
36b及びパッド部36cの下、及び後述する電極配線51,52の下に形成されている。
〈電極配線〉
電極配線51は、面発光型半導体レーザ20の電極26、光検出素子30の電極35、及び静電耐圧素子40の電極41とを電気的に接続するものである。図1に示す通り、電極配線51は、リング状の平面形状を有する接続部51aと、T字の平面形状を有する配線部51bと、円状の平面形状を有するパッド部51cとを有する。電極配線51は、接続部51aにおいて電極26,35の上面に接合されて電気的に接続されている。電極配線51の配線部51bは、接続部51aと静電耐圧素子40の電極41とを接続するとともに、パッド部51cに接続されている。電極配線51のパッド部51cは、電極パッドとして用いられる。
また、電極配線52は、第1ミラー21上の一部に形成された電極28及び静電耐圧素子40の電極42とを接続するものである。電極28は、面発光型半導体レーザ20の電極の1つであり、光検出素子30の第1コンタクト層31上に形成される電極35及び静電耐圧素子40の第1コンタクト層34上に形成される電極41と同じ材質にて形成することができる。即ち、電極28を、例えば、クロム(Cr)、金(Au)とゲルマニウム(Ge)との合金、ニッケル(Ni)、及び金(Au)の積層膜で形成することができる。電極配線52は、図1に示す通り、リング状の平面形状を有する接続部52aと、矩形の平面形状を有する配線部52bと、パッド部52bとを有する。電極配線52は、接続部52aにおいて電極42の上面に接合されて電気的に接続されている。電極配線52の配線部52bは、接続部52aとパッド部52cとを接続するとともに、電極28と接続されている。電極配線52のパッド部52cは、電極パッドとして用いられる。電極配線51,52は、例えば金(Au)を用いて形成することができる。
尚、面発光型半導体レーザ20の電極26、光検出素子30の電極35、及び静電耐圧素子40の電極41とを電極配線51で接続し、第1ミラー21上の一部に形成された電極28と静電耐圧素子40の電極42とを電極配線52で接続する代わりに、電極26、電極35、及び電極41をワイヤボンディングで接続し、電極28と電極42とをワイヤボンディングで接続しても良い。しかしながら、電極配線51,52で接続した方が配線抵抗が低いため、高周波特性に優れるとともにプロセスの信頼性も高い。
〈全体の構成〉
本実施形態の光半導体素子10は、面発光型半導体レーザ20のn型の第1ミラー21及びp型の第2ミラー23、並びに光検出素子30のn型の第1コンタクト層31及びp型の第2コンタクト層33から、全体としてnpnp構造になっている。光検出素子30は、面発光型半導体レーザ20で発生したレーザ光の出力をモニタするために設けられる。具体的には、光検出素子30は、面発光型半導体レーザ20で生じたレーザ光を電流に変換し、この電流の値によって面発光型半導体レーザ20で生じたレーザ光の出力がモニタされる。
より具体的には、光検出素子30において、面発光型半導体レーザ20により生じたレーザ光の一部が光吸収層32にて吸収され、この吸収された光によって光吸収層32で光励起が生じ、電子及び正孔が生成される。そして、外部から印加された電界によって電子は電極35に、正孔は電極36にそれぞれ移動する。その結果、光検出素子30において、第1コンタクト層31から第2コンタクト層33の方向に電流が生じる。
また、面発光型半導体レーザ20の光出力は、主として面発光型半導体レーザ20に印加するバイアス電圧によって決定される。特に、面発光型半導体レーザ20の光出力は、面発光型半導体レーザ20の周囲温度や面発光型半導体レーザ20の寿命によって大きく変化する。このため、面発光型半導体レーザ20において所定の光出力を維持することが必要である。
本実施形態の光半導体素子10では、面発光型半導体レーザ20の光出力を光検出素子30でモニタし、光検出素子30にて発生した電流の値に基づいて面発光型半導体レーザ20に印加する電圧値を調整することによって、面発光型半導体レーザ20内を流れる電流の値を調整することができる。従って、面発光型半導体レーザ20において所定の光出力を維持することができる。面発光型半導体レーザ20の光出力を面発光型半導体レーザ20に印加する電圧値にフィードバックする制御は、外部電子回路(駆動回路:図示省略)を用いて実現することができる。
また、本実施形態の光半導体素子10は、面発光型半導体レーザ20の電極26と静電耐圧素子40の電極41とが電極配線51によって電気的に接続されており、面発光型半導体レーザ20の電極28と静電耐圧素子40の電極42とが電極配線52によって電気的に接続されている。面発光型半導体レーザ20の電極26はp型GaAsからなるコンタクト層24上に形成されたp電極であり、電極28はn型の第1ミラー21上に形成されたn電極である。一方、静電耐圧素子40の電極41はn型GaAs層からなる第1コンタクト層31上に形成されたn電極であり、電極42はp型GaAs層からなる第2コンタクト層33上に形成されたp電極である。従って、静電耐圧素子40は、電極配線51,52によって、面発光型半導体レーザ20に対して逆極性となるよう(逆方向の整流作用を有するよう)並列に接続されている。
図3は、本発明の第1実施形態による光半導体素子10の電気的な等価回路図である。図3に示す通り、光検出素子30は、アノード電極(正電極)が電極36のパッド部36cに、カソード電極(負電極)が電極配線51のパッド部51cに接続されている。また、面発光型半導体レーザ20は、アノード電極(正電極)が電極配線51のパッド部51cに、カソード電極(負電極)が電極配線52のパッド部52cに接続されている。静電耐圧素子40は、アノード電極(正電極)が電極配線52のパッド部52cに、カソード電極(負電極)が電極配線51のパッド部51cに接続されている。
〔光半導体素子の動作〕
次に、実施形態の光半導体素子10の一般的な動作について説明する。尚、下記の光半導体素子10の駆動方法は一例であり、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。まず、電極パッド51c,52cを不図示の電源に接続して電極26と電極28との間に順方向の電圧を印加すると、面発光型半導体レーザ20の活性層22において、電子と正孔との再結合が生じ、再結合による発光が生じる。そこで生じた光が第2ミラー23と第1ミラー21との間を往復する間に誘導放出が起こって光の強度が増幅される。光利得が光損失を上まわると、レーザ発振が起こり、第2ミラー23の上面からレーザ光が射出され、分離層27へと入射する。次いで、レーザ光は光検出素子30の第1コンタクト層31に入射する。
次に、光検出素子30を構成する第1コンタクト層31に入射した光は光吸収層32に入射する。この入射光の一部が光吸収層32にて吸収されると光吸収層32において光励起が生じ、電子及び正孔が生じる。そして、外部から印加された電界により、電子は電極35に、正孔は電極36にそれぞれ移動する。その結果、光検出素子30において、第1コンタクト層31から第2コンタクト層33の方向に電流(光電流)が生じる。この電流を電極パッド36c,51cから取り出してその値を測定することにより、面発光型半導体レーザ20の光出力を検知することができる。
ここで、電極26と電極28との間に逆方向の電圧が印加されたとする。この逆方向の電圧は、面発光型半導体レーザ20にとっては逆方向の電圧であるが、静電耐圧素子40にとっては順方向の電圧である。このため、面発光型半導体レーザ20にとって逆方向の電圧が印加されても静電耐圧素子40に電流が流れるため、面発光型半導体レーザ20を静電破壊から保護することができる。
〔光半導体素子の製造方法〕
次に、以上説明した光半導体素子10の製造方法について説明する。図4〜図6は、本発明の第1実施形態による光半導体素子の製造工程を模式的に示す断面図である。尚、これらの図は図2に示す断面図に対応している。本実施形態の光半導体素子10を製造するには、図4(a)に示す通り、まずn型GaAs層からなる半導体基板11の表面11aに組成を変調させながらエピタキシャル成長させて半導体多層膜を形成する。
ここで、半導体多層膜は、例えばn型Al0.9Ga0.1As層とn型Al0.15Ga0.85As層とを交互に積層した40ペアの第1ミラー21、GaAsウェル層とAl0.3Ga0.7Asバリア層とからなり、ウェル層が3層で構成される量子井戸構造を含む活性層22、p型Al0.9Ga0.1As層とp型Al0.15Ga0.85As層とを交互に積層した25ペアの第2ミラー23、p型GaAsからなるコンタクト層24、不純物がドーピングされていないAlGaAs層からなる分離層27、n型GaAs層からなる第1コンタクト層31、不純物がドーピングされていないGaAs層からなる光吸収層32、及びp型GaAs層からなる第2コンタクト層33からなる。これらの層を順に半導体基板11上に積層させることにより、半導体多層膜が形成される。尚、分離層27は、p型又はn型のAlGaAs層としてもよい。
尚、第2ミラー23を成長させる際に、活性層22近傍の少なくとも1層は、後に酸化されて電流狭窄層25となる層に形成される(図5(c)参照)。具体的には、電流狭窄層25となる層は、Al組成が分離層27のAl組成より大きなAlGaAs層(AlAs層を含む)に形成される。換言すると、分離層27は、Al組成が電流狭窄層25となる層より小さなAlGaAs層に形成することが望ましい。これにより、後述する電流狭窄層25を形成する酸化工程において(図5(c)参照)、分離層27は酸化されないようにすることができる。より具体的には、例えば電流狭窄層25となる層のAl組成が0.95以上であって、分離層27のAl組成が0.95未満であるように、電流狭窄層25となる層及び分離層27を形成することが望ましい。分離層27の光学的膜厚は、面発光型半導体レーザ20(図2参照)の設計波長がλであるとすると、例えば、λ/4の奇数倍にすることが好適である。
また、第1コンタクト層31、光吸収層32、及び第2コンタクト層33の光学的膜厚の総和、即ち、光検出素子30(図2参照)の全体の光学的膜厚は、例えばλ/4の奇数倍とすることが好適である。かかる膜厚にすることで、光検出素子30全体は分布反射型ミラーとして機能することができる。即ち、面発光型半導体レーザ20における活性層22の上方において、光検出素子30全体が、分布反射型ミラーとして機能することができる。従って、面発光型半導体レーザ20の特性に悪影響を及ぼすことなく、光検出素子30は分布反射型ミラーとして機能することができる。
エピタキシャル成長を行う際の温度は、成長方法や原料、半導体基板11の種類、或いは形成する半導体多層膜の種類、厚さ、及びキャリア密度によって適宜決定されるが、一般に、450℃〜800℃に設定するのが好ましい。また、エピタキシャル成長を行う際の所要時間も、温度と同様に適宜決定される。また、エピタキシャル成長させる方法としては、有機金属気相成長(MOVPE:Metal-Organic Vapor Phase Epitaxy)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、或いはLPE(Liquid Phase Epitaxy)法を用いることができる。
次に、図4(b)に示す通り、第2柱状部P2及び第柱状部P4を形成する。第2柱状部P2及び第4柱状部P4を形成するには、まず、半導体多層膜上にレジスト(図示省略)を塗布した後、リソグラフィ法によりレジストをパターニングする。これにより、第2コンタクト層33の上面に所定の平面形状を有するレジスト層が形成される。次いで、このレジスト層をマスクとして、例えばドライエッチング法により、第2コンタクト層33及び光吸収層32をエッチングする。これにより、第2コンタクト層33と、第2コンタクト層33と同一の平面形状を有する光吸収層32とが形成される。これにより、第2柱状部P2及び第4柱状部P4が形成される。尚、第2柱状部P2及び第4柱状部P4が形成されると、レジスト層は除去される。
第2柱状部P2及び第4柱状部P4を形成すると、第1コンタクト層31を所定の形状にパターニングする。具体的には、まず、第1コンタクト層31上にレジスト(図示省略)を塗布した後、リソグラフィ法により塗布したレジストをパターニングする。これにより、第1コンタクト層31上に第2柱状部P2及び第4柱状部P4を覆うように所定のパターンのレジスト層が形成される。次いで、このレジスト層をマスクとして、第1コンタクト層31を、例えばドライエッチングにより所定の厚みになるまでエッチングする。
次いで、残りの第1コンタクト層31を、ウェットエッチング法によりエッチングする。ここで、第1コンタクト層31のエッチングには、エッチャントとして、例えばアンモニア、過酸化水素、及び水との混合溶液を用いることができる。アンモニア、過酸化水素、及び水の混合比率は、例えば1:10:150程度のものを用いることができるが、特にこの混合比率は限定されず、適宜決定される。第1コンタクト層31の下には分離層27が配置されており、分離層27がエッチングストッパ層として機能するため、分離層27が露出した時点で、第1コンタクト層31のエッチングを正確且つ容易に止めることができる。
以上の工程を経ることにより、図4(b)に示す通り、光検出素子30及び静電耐圧素子40が形成される。光検出素子30及び静電耐圧素子40は、第2コンタクト層33、光吸収層32、及び第1コンタクト層31を含んでなる。また、第1コンタクト層31の平面形状は、第2コンタクト層33及び光吸収層32の平面形状よりも大きく形成される。このように、本実施形態では、光検出素子30と静電耐圧素子40とが同一の工程を経て形成される。尚、以上説明した工程では、第2コンタクト層33及び光吸収層32をパターニングした後、第1コンタクト層31をパターニングしていたが、第1コンタクト層31をパターニングした後、第2コンタクト層33及び光吸収層32をパターニングしてもよい。
光検出素子30及び静電耐圧素子40を形成すると、図4(c)に示す通り、分離層27を所定の形状にパターニングする。具体的には、上述のレジスト層(第1コンタクト層31のエッチングに用いたレジスト層)をマスクとして、分離層27をエッチングする。このとき、分離層27の下には、コンタクト層24が配置されており、このコンタクト層24がエッチングストッパ層として機能するため、分離層27のエッチングを、コンタクト層24が露出した時点で、正確且つ容易に止めることができる。ここで、分離層27のエッチングに用いるエッチャントとして、例えばフッ化水素水溶液や、フッ化水素酸系緩衝溶液を用いることができる。
これにより、図4(c)に示す通り、パターニングされた分離層27が形成される。その後、レジスト層(第1コンタクト層31及び分離層27のエッチングに用いたレジスト層)が除去される。図示の例では、分離層27の平面形状は、第1コンタクト層31の平面形状と同じとなるように形成したが、分離層27の平面形状は、第1コンタクト層31の平面形状よりも大きく形成しても良い。具体的には、上述の分離層27のパターニングに用いるレジスト層を、より平面形状の大きなレジスト層にして分離層27をパターニングすることができる。
次に、図5(a)に示す通り、第1柱状部P1を含む面発光型半導体レーザ20及び静電耐圧素子40の下方に位置する第3柱状部P3の残りの部分を形成する。具体的には、まず、コンタクト層24上にレジスト(図示省略)を塗布した後、リソグラフィ法により塗布したレジストをパターニングする。これにより、所定のパターンのレジスト層が形成される。次いで、このレジスト層をマスクとして、例えばドライエッチング法により、コンタクト層24、第2ミラー23、及び活性層22をエッチングする。尚、本実施形態では、第1柱状部P1と第3柱状部P3との間の活性層22はエッチングせずに残すようにしている。これにより、図5(a)に示す通り、第1柱状部P1及び第3柱状部P3が形成される。
以上の工程により、半導体基板11上に、第1柱状部P1を含む垂直共振器(面発光型半導体レーザ20)が形成される。これにより、面発光型半導体レーザ20と、分離層27と、光検出素子30との積層体が形成され、更に、第3柱状部P3の上方に静電耐圧素子40が形成される。その後、レジスト層が除去される。尚、本実施形態では前述した通り、光検出素子30及び静電耐圧素子40並びに分離層27をまず形成した後に第1柱状部P1及び第3柱状部P3を形成する場合について説明したが、第1柱状部P1及び第3柱状部P3を形成した後に光検出素子30及び静電耐圧素子40並びに分離層27を形成してもよい。
続いて、図5(b)に示す通り、電流狭窄層25を形成する。この電流狭窄層25を形成するには、上記工程によって第1柱状部P1及び第2柱状部P3が形成された半導体基板11を、例えば400℃程度の水蒸気雰囲気中に投入する。これにより、前述した第2ミラー23中のAl組成が高い層が側面から酸化されて、電流狭窄層25が形成される。
酸化レートは、炉の温度、水蒸気の供給量、酸化すべき層のAl組成、及び膜厚に依存する。酸化により形成される電流狭窄層25を備えた面発光型半導体レーザでは、駆動する際に、電流狭窄層25が形成されていない部分(酸化されていない部分)のみに電流が流れる。従って、電流狭窄層25を形成する工程において、形成する電流狭窄層25の範囲を制御することにより、電流密度の制御が可能となる。また、面発光型半導体レーザ20から射出されるレーザ光の大部分が第1コンタクト層31に入射するように、電流狭窄層25の径を調整することが望ましい。
次に、図6(a)に示す通り、活性層22及び第1ミラー21上であって第1柱状部P1及び第3柱状部P3の周囲、及び第2柱状部P2の周囲に絶縁層50を形成する。絶縁層50の材質としては厚膜化が容易なものを用いることが望ましい。絶縁層50の膜厚は、例えば2〜4μm程度であるが、特に限定される訳ではなく、第1柱状部P1及び第3柱状部P3の高さに応じて適宜設定することができる。
例えば、絶縁層50は、熱又は光等のエネルギーによって硬化可能な液体材料(例えば紫外線硬化型樹脂や熱硬化型樹脂の前駆体)を硬化させることにより得られるものを用いることができる。紫外線硬化型樹脂としては、例えば紫外線硬化型のアクリル系樹脂及びエポキシ系樹脂が挙げられる。また、熱硬化型樹脂としては、熱硬化型のポリイミド系樹脂等が例示できる。また、例えば、絶縁層50は、上記材料を複数用いて積層膜とすることもできる。
ここでは、絶縁層50を形成するための材料として、ポリイミド系樹脂の前駆体を用いた場合について述べる。まず、例えばスピンコート法を用いて前駆体(ポリイミド系樹脂の前駆体)を半導体基板11上に塗布して前駆体層を形成する。このとき、前駆体層が第1柱状部P1の上面を覆うように前駆体層を形成する。尚、前駆体層の形成方法としては、前述したスピンコート法のほか、ディッピング法、スプレーコート法、液滴吐出法等の公知技術が利用できる。次いで、例えばホットプレート等を用いて半導体基板11を加熱して溶媒を除去した後、例えば350℃程度の炉に入れて前駆体層をイミド化させることにより、ほぼ完全に硬化したポリイミド系樹脂層を形成する。続いて、図6(a)に示す通り、ポリイミド系樹脂層を公知のリソグラフィ技術を用いてパターニングすることにより、絶縁層50を形成する。
尚、パターニングの際に用いられるエッチング方法としては、ドライエッチング法等を用いることができる。ドライエッチングは、例えば酸素又はアルゴン等のプラズマにより行うことができる。また、上述の絶縁層50の形成方法では、ポリイミド系樹脂の前駆体層を硬化した後、パターニングを行う例について示したが、ポリイミド系樹脂の前駆体層を硬化する前に、パターニングを行うこともできる。このパターニングの際に用いられるエッチング方法としては、ウェットエッチング法等を用いることができる。ウェットエッチングは、例えばアルカリ溶液又は有機溶液等により行うことができる。
以上の工程が終了すると、図6(b)に示す通り、第1ミラー21上の電極28及び第1コンタクト層31の上面上の電極35,41が形成される。また、コンタクト層24上の電極26及び第2コンタクト層33上の電極36,42が形成される。ここで、電極36は、リング状の平面形状を有する接続部36a、直線状の平面形状を有する引き出し部36b、円状の平面形状を有するパッド部36cを有しているが、第2コンタクト層33の上面上には接続部36aが形成され、引き出し部36b及びパッド部36cは絶縁層50上に形成される。
電極28,35,41を形成する具体的な方法は以下の通りである。まず、電極28,35,41を形成する前に、必要に応じてプラズマ処理法等を用いて、第1ミラー21の上面及び第1コンタクト層31の上面を洗浄する。これにより、より安定した特性の素子を形成することができる。次に、例えば真空蒸着法により、例えばクロム(Cr)、金(Au)とゲルマニウム(Ge)との合金、ニッケル(Ni)、及び金(Au)の積層膜を形成する。次いで、リフトオフ法により、所定の位置以外の積層膜を除去することにより電極28,35,41が形成される。
また、電極26,36,42を形成する具体的な方法は以下の通りである。まず、電極26,36,42を形成する前に、必要に応じてプラズマ処理法等を用いて、コンタクト層24の上面及び第2コンタクト層33の上面を洗浄する。これにより、より安定した特性の素子を形成することができる。次に、例えば真空蒸着法により、例えばクロム(Cr)、金(Au)と亜鉛(Zn)との合金、及び金(Au)の積層膜を形成する。次いで、リフトオフ法により、所定の位置以外の積層膜を除去することにより電極26,36,42が形成される。
尚、上記の電極28,35,41及び電極26,36,42を形成する工程において、リフトオフ法の代わりにドライエッチング法又はウェットエッチング法を用いることもできる。また、上記工程において、真空蒸着法の代わりにスパッタ法を用いることもできる。更に、上記の工程においては、電極28,35,41を同時にパターニングし、電極26,36,42を同時にパターニングしているが、これらを個々に形成しても良い。
以上の工程が終了すると、図6(b)に示す通り、電極配線51,52が形成される。ここで、電極配線51は、面発光型半導体レーザ20の電極26、光検出素子30の電極35、及び静電耐圧素子40の電極41を電気的に接続するよう形成される。また、電極配線52は、面発光型半導体レーザ20の電極28と静電耐圧素子40の電極42とを電気的に接続するよう形成される。具体的には、上記各電極を形成する場合と同様に、必要に応じてプラズマ処理法等を用いて半導体基板11上を洗浄する。次いで、例えば真空蒸着法により、例えば金(Au)からなる金属膜を形成する。そして、リフトオフ法等により、所定の位置以外の金属膜を除去することにより電極配線51,52が形成される。
最後に、アニール処理を行う。アニール処理の温度は電極材料に依存する。本実施形態で用いる電極材料の場合は、通常400℃前後で行う。尚、必要であれば、電極配線51,52を形成する前にアニール処理を行っても良い。これによって工程によって図1,図2に示す本実施形態の光半導体素子10が製造される。以上説明した通り、本実施形態では、光検出素子30と静電耐圧素子40とが同一の工程を経て形成される。このため、製造プロセスを複雑にすることなく静電破壊耐圧が向上した光半導体素子10を製造することができる。
〔第2実施形態〕
図7は本発明の第2実施形態による光半導体素子を模式的に示す平面図であり、図8は図7中のB−B線に沿う断面図である。尚、図7及び図8においては、図1及び図2に示した構成に相当するものには同一の符号を付してある。図7及び図8に示す通り、本実施形態の光半導体素子60は、面発光型半導体レーザ20、光検出素子30、及び静電耐圧素子70を含んで構成される。本実施形態の光半導体素子60が備える面発光型半導体レーザ20及び光検出素子30は、図1,図2に示す第1実施形態の光半導体素子10が備えるものと同一構成であるが、静電耐圧素子70は光半導体素子10が備える静電耐圧素子40とは異なる構成である。
本実施形態においては、第3柱状部P3が第2ミラー23のみから形成されており、第4柱状部P4は形成されていない。この第3柱状部P3を構成する第2ミラー23は、前述した通り、p型Al0.9Ga0.1As層(以下、第1層という)とp型Al0.15Ga0.85As層(以下、第2層という)とを交互に積層したものであり、何れか一方の層が第3柱状部P3の上面に現れている。尚、ここでは、第1層が第3柱状部P3の上面に現れているとする。
図9は、第3柱状部P3の最上部を拡大した断面図である。図9(a)に示す通り、第3柱状部P3の最上部には第1層L1と第2層L2とが積層されている。第3柱状部P3の最上部において、最も上方に位置する第1層L1が除去されている部分があり、この部分において第2層L2が第3柱状部P3の上面に現れている。第3柱状部P3の最も上方に位置する第1層L1上には電極71が形成されており、第3柱状部P3の上面に現れている第2層L2上には電極72が形成されている。本実施形態では、電極71と第3柱状部P3の最も上方に位置する第1層L1との接合がショットキー接合となっており、これにより静電耐圧素子70が形成されている。即ち、面発光型半導体レーザ20をなす第1ミラー21の一部と同一の層構造を用いて静電耐圧素子70が形成されている。
第1層L1はp型Al0.9Ga0.1As層であるため、ショットキー接合を形成する電極71としては、チタン(Ti)、白金(Pt)、及び金(Au)の積層膜を用いることができる。或いは、アルミニウム(Al)からなる金属膜、若しくはアルミニウム(Al)と金(Au)との合金からなる金属膜を用いることができる。また、第2層L2上に形成される電極72は、第1実施形態の光半導体素子10に形成された電極26,36,42と同様に、例えば、クロム(Cr)、金(Au)と亜鉛(Zn)との合金、及び金(Au)の積層膜、又は、白金(Pt)、チタン(Ti)及び金(Au)の積層膜を用いて形成することができる。
尚、図9(a)に示す例では、1ペアをなす第1層L1上に電極71を、第2層L2上に電極72を形成していた。しかしながら、図9(b)に示す通り、1つのペアの第1層L1上に電極71を形成し、このペアとは異なるペアの第2層L2上に電極72を形成しても良い。図9(b)に示す例では、上面に電極71が形成された第1層L1(最も上方に位置する第1層L1)と、上面に電極72が形成された第2層L2との間に第1層L1及び第2層L2とが1層ずつ設けられた構成を図示しているが、これらの間に設けられる層数は任意でよい。また、図9に示す例では、第3柱状部P3の最も上方に位置する層が第1層L1である場合を図示しているが、第3柱状部P3の最も上方に位置する層が第2層L2であっても良い。即ち、第2層L2上に電極71が形成され、際1層L1上に電極72が形成されていても良い。
また、図8に示す通り、電極71上には電極配線51が形成されている。これにより、電極71は、面発光型半導体レーザ20の電極26及び光検出素子30の電極35と電気的に接続されている。また、電極72上には電極配線52が形成されている。これにより、面発光型半導体レーザ20の電極28と電気的に接続されている。従って、本実施形態の光半導体素子60においても、静電耐圧素子70は、電極配線51,52によって、面発光型半導体レーザ20に対して逆極性となるよう(逆方向の整流作用を有するよう)並列に接続されている。このため面発光型半導体レーザ20の電極26と電極28との間に逆方向の電圧が印加されても静電耐圧素子40に電流が流れるため、面発光型半導体レーザ20の静電破壊から保護することができる。
また、本実施形態においては、ショットキー接合を得るための電極71を形成する工程が必要になるものの、静電耐圧素子70を形成するための専用の工程は必要ない。このため、製造プロセスを複雑にすることなく静電破壊耐圧が向上した光半導体素子60を製造することができる。
〔第3実施形態〕
図10は、本発明の第3実施形態による光半導体素子を模式的に示す断面図である。尚、本実施形態の光半導体素子80の平面的な構成は図7に示す構成と同様の構成である。従って、図10は、図7中のB−B線に沿う断面図ということができる。尚、図10においては、図1及び図2に示した構成に相当するものには同一の符号を付してある。図10に示す通り、本実施形態の光半導体素子80は、面発光型半導体レーザ20、光検出素子30、及び静電耐圧素子90を含んで構成される。本実施形態の光半導体素子80が備える面発光型半導体レーザ20及び光検出素子30は、図1,図2に示す第1実施形態の光半導体素子10が備えるものと同一構成であるが、静電耐圧素子90は光半導体素子10が備える静電耐圧素子40及び光半導体素子60が備える静電耐圧素子70とは異なる構成である。
本実施形態においては、第3柱状部P3が第2ミラー23及びコンタクト層24から形成されており、第4柱状部P4が分離層27及び第1コンタクト層31から形成されている。尚、第4柱状部P4は、第3柱状部P3よりも径が小さく形成されている。本実施形態では、コンタクト層24、分離層27、及び第1コンタクト層31から静電耐圧素子90が形成されている。コンタクト層24と分離層27とによってヘテロ接合が形成されており、第1コンタクト層31と分離層27とによってヘテロ接合が形成されている。即ち、面発光型半導体レーザ20の一部をなすコンタクト層24、及び光検出素子30の一部をなす第1コンタクト層31と同一の層構造を用いて静電耐圧素子90が形成されている。
この第4柱状部P4の上面(第1コンタクト層31上)には電極91が形成されており、第3柱状部P3の上面(コンタクト層24上)には電極92が形成されている。電極91は、例えば、クロム(Cr)、金(Au)とゲルマニウム(Ge)との合金、ニッケル(Ni)、及び金(Au)の積層膜を用いて形成することができる。また、電極92は、例えば、クロム(Cr)、金(Au)と亜鉛(Zn)との合金、及び金(Au)の積層膜、又は、白金(Pt)、チタン(Ti)及び金(Au)の積層膜を用いて形成することができる。
また、図10に示す通り、電極91上には電極配線51が形成されている。これにより、電極91は、面発光型半導体レーザ20の電極26及び光検出素子30の電極35と電気的に接続されている。また、電極92上には電極配線52が形成されている。これにより、電極92は、面発光型半導体レーザ20の電極28と電気的に接続されている。従って、本実施形態の光半導体素子80においても、静電耐圧素子90は、電極配線51,52によって、面発光型半導体レーザ20に対して逆極性となるよう(逆方向の整流作用を有するよう)並列に接続されている。このため面発光型半導体レーザ20の電極26と電極28との間に逆方向の電圧が印加されても静電耐圧素子40に電流が流れるため、面発光型半導体レーザ20の静電破壊から保護することができる。また、本実施形態においては、静電耐圧素子90は、面発光型半導体レーザ20及び光検出素子30を形成するために行われるエッチングを工夫することで形成される。よって、静電耐圧素子90を形成するための専用の工程は必要ない。このため、製造プロセスを複雑にすることなく静電破壊耐圧が向上した光半導体素子80を製造することができる。
〔第4実施形態〕
図11は本発明の第4実施形態による光半導体素子を模式的に示す平面図であり、図12は図11中のC−C線に沿う断面図である。尚、図11及び図12においては、図1及び図2に示した構成に相当するものには同一の符号を付してある。図11及び図12に示す通り、本実施形態の光半導体素子100は、面発光型半導体レーザ20、光検出素子110、及び静電耐圧素子120を含んで構成される。本実施形態の光半導体素子100が備える面発光型半導体レーザ20は、図1,図2に示す第1実施形態の光半導体素子10が備えるものと同一構成であるが、光検出素子110及び静電耐圧素子120が光半導体素子10が備えるものとは異なる構成である。
図12に示す通り、面発光型半導体レーザ20は、第1ミラー21、活性層22、第2ミラー23、及びコンタクト層24からなる。以上説明した第1〜第3実施形態では、このコンタクト層24上に分離層27が形成されていたが、本実施形態では分離層27が省略されており、コンタクト層24上に光吸収層111とコンタクト層112が順に積層されて第2柱状部P2が形成されている。本実施形態では、面発光型半導体レーザ20の一部をなすコンタクト層24、光吸収層111、及びコンタクト層112から光検出素子110が形成されている。
コンタクト層24はp型GaAsからなり、光吸収層111は不純物が導入されていないGaAs層からなり、コンタクト層112はn型GaAs層からなる。具体的には、コンタクト層24は、例えば炭素(C)がドーピングされることによりp型にされており、コンタクト層112は、例えばケイ素(Si)がドーピングされることによりn型にされている。したがって、p型のコンタクト層24、不純物がドーピングされていない光吸収層111、及びn型のコンタクト層112により、pinダイオードが形成される。
コンタクト層24上には、第1柱状部P1の外周に沿い、且つ第2柱状部P2を取り囲むようにリング状の平面形状を有する電極26が形成されている。本実施形態においてはコンタクト層24は、面発光型半導体レーザ20と光検出素子110とに共用されているため、この電極26は、面発光型半導体レーザ20の一方の電極及び光検出素子110の一方の電極として共用される。
また、光検出素子110の上面上(コンタクト層112上)には電極113が形成されている。電極113は、光検出素子110の他方の電極として使用される。電極113には開口部114が設けられており、この開口部114によってコンタクト層112の上面の一部が露出する。この露出した面が、レーザ光の射出面115である。従って、開口部114の平面形状及び大きさを適宜設定することにより、射出面115の形状及び大きさを適宜設定することができる。本実施形態においては、図11に示す通り、射出面115が円形であるものとする。電極113は、例えば、クロム(Cr)、金(Au)とゲルマニウム(Ge)との合金、ニッケル(Ni)、及び金(Au)の積層膜を用いて形成することができる。
電極36は、図11に示す通り、リング状の平面形状を有する接続部113aと、直線状の平面形状を有する引き出し部113bと、円状の平面形状を有するパッド部113cとを有する。電極113は、接続部113aにおいてコンタクト層112と電気的に接続されている。電極113の引き出し部113bは、接続部113aとパッド部113cとを接続している。電極のパッド部113cは、電極パッドとして用いられる。尚、本実施形態では電極113の接続部113aの形状がリング状である場合を例に挙げているが、接続部113aはコンタクト層112に接触してさえいれば良いため、その平面形状は任意の形状とすることができる。
また、本実施形態においては、第3柱状部P3が第2ミラー23及びコンタクト層24から形成されており、第4柱状部P4が光吸収層111とコンタクト層112とから形成されている。尚、第4柱状部P4は、第3柱状部P3よりも径が小さく形成されている。本実施形態では、光検出素子110と同様に、コンタクト層24、光吸収層111、及びコンタクト層112から静電耐圧素子120が形成されている。即ち、光検出素子110と同一の層構造を用いて静電耐圧素子120が形成されている。
第4柱状部P4の上面(コンタクト層112上)には電極121が形成されており、第3柱状部P3の上面(コンタクト層24上)には電極122が形成されている。電極121は、例えば、クロム(Cr)、金(Au)とゲルマニウム(Ge)との合金、ニッケル(Ni)、及び金(Au)の積層膜を用いて形成することができる。また、電極122は、例えば、クロム(Cr)、金(Au)と亜鉛(Zn)との合金、及び金(Au)の積層膜、又は、白金(Pt)、チタン(Ti)及び金(Au)の積層膜を用いて形成することができる。
また、図10に示す通り、電極121上には電極配線51が形成されている。これにより、電極121は、面発光型半導体レーザ20及び光検出素子110の電極26と電気的に接続されている。また、電極122上には電極配線52が形成されている。これにより、電極122は、面発光型半導体レーザ20の電極28と電気的に接続されている。従って、本実施形態の光半導体素子100においても、静電耐圧素子120は、電極配線51,52によって、面発光型半導体レーザ20に対して逆極性となるよう(逆方向の整流作用を有するよう)並列に接続されている。このため面発光型半導体レーザ20の電極26と電極28との間に逆方向の電圧が印加されても静電耐圧素子120に電流が流れるため、面発光型半導体レーザ20の静電破壊から保護することができる。また、本実施形態においては、静電耐圧素子120は、光検出素子11と同一の製造プロセスによって形成される。よって、静電耐圧素子120を形成するための専用の工程は必要ない。このため、製造プロセスを複雑にすることなく静電破壊耐圧が向上した光半導体素子100を製造することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明した、本発明は上記の実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では面発光型半導体レーザ20の上方に光検出素子30,110が設けられた構成の光素子を例に挙げて説明したが、例えば特公平7−56552号公報又は特開平6−37299号公報に開示されている光検出素子の上方に面発光型半導体レーザが設けられた構成の光素子にも本発明を適用することができる。
また、上記実施形態では、光検出素子30,110が面発光型半導体レーザ20から射出されたレーザ光の光強度を検出するために設けられていた。しかしながら、外部からの光を受光するために光検出素子30,110を用いても良い。具体的には、例えば光通信の用途に光素子を用い、送信すべき光信号には面発光型半導体レーザ20から射出されたレーザ光を用い、送信されてきた光信号を光検出素子30,110で受光することができる。光検出素子30,100で受光された光信号は、電極35,36又は電極26,113から電気信号として取り出される。更に、上記実施形態において、各半導体層におけるp型とn型とを入れ替えても本発明の範囲外となるものではない。