JP4356643B2 - パンツ - Google Patents
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Description
(1)身頃表地の内側に、後身頃のヒップ部から脇線を通り前身頃の一部を被う裏地を付設したパンツであって、該裏地は後身頃から前身頃にかけて連続した形状で、かつパンツ全周に付設されず、かつ該裏地が少なくともウエストラインと内股で身頃表地に接合されていることを特徴とするパンツ。
(2)前記身頃表地が、タテまたは/およびヨコ方向に伸縮可能な織編物であることを特徴とする(1)に記載のパンツ。
(3)前記身頃表地または/および前記裏地が、一方がポリトリメチレンテレフタレートを主体としたポリエステルである2種類のポリエステル系重合体を繊維長さに沿ってサイドバイサイド型に貼り合わせた複合繊維のマルチフィラメントを、タテ糸およびヨコ糸の少なくとも一方に用いたポリエステル系ストレッチ織物であることを特徴とする(1)または(2)のいずれかに記載のパンツ。
(4)前記裏地が、タテまたは/およびヨコ方向に伸縮可能な織編物であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のパンツ。
(5)前記裏地の、タテ方向およびヨコ方向の少なくとも一方の伸長率が1.5kg荷重下で30〜200%、繰り返し10回伸長後の伸長回復率が80%〜100%であることを特徴とする(4)に記載のパンツ。
(6)前記裏地は、少なくとも1ヶ所以上後身頃で接ぎ合わされ、ヒップの丸みに合わせて立体縫製されていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のパンツ。
(7)前記裏地に、後身頃のヒップライン下から前身頃に向かい斜め上方に傾斜した帯状のヒップアップ別布を付設したことを特徴とする(1)〜(6)のいすれかに記載のパンツ。
(8)前記ヒップアップ別布が、後中心で5〜7cm、前身頃のウエストラインで8〜10cmとなるように漸増させた形状であることを特徴とする(7)に記載のパンツ。
本発明により、見た目も通常のパンツと変わらず、ヒップアップ効果があり、着用快適性に優れたパンツを得ることができる。本発明は、さらにヒップの脇についても引き上げ効果を有し、サイドラインの矯正効果も期待できるものである。
本発明のパンツにおいては、身頃表地にタテまたは/およびヨコ方向に伸縮可能な織編物を使用することにより、着用感、運動機能性、美観全てにおいてさらに顕著な効果を確認することができる。
伸縮可能な織編物としては、綿やウールの天然繊維やレーヨンなどの再生繊維、アクリル系繊維やポリエステル系繊維などの合成繊維などにポリウレタン繊維(弾性繊維)を混用したストレッチ織物等を使用することができる。また、弾性繊維を使用しないで、例えば一方がポリトリメチレンテレフタレート(以下、PTTと略する)を主体としたポリエステルである2種類のポリエステル系重合体を繊維長さに沿ってサイドバイサイド型に貼り合わせた複合繊維のマルチフィラメントを、タテ糸およびヨコ糸の少なくとも一方に用いたポリエステル系ストレッチ織物を使用してもよい。サイドバイサイド型の複合繊維は、固有粘度や共重合成分、共重合率等が異なる重合体を貼り合わせ、それらの弾性回復特性や収縮特性の差によって、捲縮を発現するものである。固有粘度差を有するサイドバイサイド型複合の場合、紡糸、延伸時に高固有粘度側に応力が集中するため、2成分間で内部歪みが異なる。そのため、延伸後の弾性回復率差および織物の熱処理工程での熱収縮率差により高粘度側が大きく収縮し、単繊維内で歪みが生じて3次元コイル捲縮の形態をとる。この3次元コイルの径および単位繊維長当たりのコイル数は、高収縮成分と低収縮成分との収縮差(弾性回復率差を含む)によって決まると言ってもよく、収縮差が大きいほどコイル径が小さく、単位繊維長当たりのコイル数が多くなる。ストレッチ素材として要求されるコイル捲縮は、コイル径が小さく、単位繊維長当たりのコイル数が多い(伸長特性に優れ、見栄えが良い)、コイルの耐へたり性が良い(伸縮回数の応じたコイルのへたり量が小さく、ストレッチ保持性に優れる)、さらにはコイルの伸長回復時におけるヒステリシスロスが小さい(弾発性に優れ、フィット感が良い)等である。これらの要求を全て満足しつつ、ポリエステルとしての特性、例えば適度な張り腰、ドレープ性、高染色堅牢性を有することで、トータルバランスに優れたストレッチ素材とすることができる。この特性を満足させるためには、高収縮成分にPTTを主体としたポリエステルを用いることが好ましい。PTTとは、テレフタル酸を主たる酸成分とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルである。低収縮成分には、高収縮成分であるPTTとの界面接着性が良好で、製糸性が安定している繊維形成性ポリエステルであれば特に限定されるものではないが、力学的特性、化学的特性および原料価格を考慮すると、繊維形成能のあるポリエチレンテレフタレートが好ましい。
かかる伸長回復率とは身体の動きで伸長した生地が、素早く元の状態に戻ろうとする回復程度を表すものであり、この数値が大きい程、パンツを着用した時の型崩れが少なく、着用前後で形態変化を起こしにくい。本発明のパンツにおいて、表地の伸長回復率は60%以上、より好ましくは80%以上あることが好ましい。60%より低いと臀部や膝等の身体の凸部のみ生地が回復しないで表地が伸びた状態になり、美観を損なう。
本発明のパンツの表地に使用する素材は紡績糸、フィラメント糸のどちらでも良く、好みにより選択することができる。
また、帯状のヒップアップ別布8を後身頃のヒップライン下から前身頃に向かい斜め上方に傾斜させるにあたっては、直線状ではなく、図2〜4に示すように曲線状に傾斜させることが好ましい。特に、後身頃部分はヒップのラインに合わせた曲線、具体的には図3のように、後から見たときに丸みのあるW字状とすることが好ましい。この曲線を前身頃ウエストラインに向かい延長させると、自然な丸みの連続したヒップアップ別布ができあがる。W字の深さは、図4に示すように、後身頃中心線とヒップアップ別布上辺との交点Aと、前ウエストラインとヒップアップ別布上辺との交点Bを仮に直線Cで結び、Cからの距離Dで表す。Cからカーブの一番深い部分との距離Dは3〜12cmであることが好ましい。より好ましくは5〜10cmとすることにより、臀部の曲線に合わせた形状の別布とすることができる。
(1)伸長率
表地及び裏地の伸長率はJIS L 1096「一般織物試験方法」の定速伸長法のストリップ法に準じて測定した。
すなわち、5cm×30cmの試験片をタテ、ヨコ方向にそれぞれ3枚ずつ採取した。自動記録装置付定速伸長形引張試験機を用い、つかみ間隔を20cmとし、試験片のたるみや張力を除いてつかみに固定した。引張速度20cm/minで14.7N(1.5kg)まで伸ばし、その時のつかみ間隔を測り、次の式により伸長率LA(%)を求め、3枚の平均で表した。
L :つかみ間隔(mm)
L1:14.7Nまで伸ばした時のつかみ間隔(mm)
(2)伸長回復率
表地及び裏地の伸長回復率はJIS L 1096「一般織物試験方法」の繰り返し定速伸長法のストリップ法に準じて測定した。
すなわち、5cm×30cmの試験片をタテ、ヨコ方向にそれぞれ3枚ずつ採取した。自動記録装置付定速伸長形引張試験機を用い、つかみ間隔を20cmとし、試験片のたるみや張力を除いてつかみに固定した。引張速度20cm/minで別に求めた伸長率(前項LA)の値の80%まで伸ばして、1分放置した後、同じ速度で元の位置まで戻し、3分間放置する。この操作を10回繰り返した後、再び同じ速度で初荷重以上の荷重まで引き伸ばす。記録した荷重−伸長曲線から残留伸びを測り次式により伸長回復率LB(%)を求め、3枚の平均で表した。
伸長率LB(%)=[(Lb1−Lb)/Lb]×100
Lb :伸長率LAの80%の伸びに相当するチャート上の長さ(mm)
Lb1:10回繰り返し伸長後の残留伸びに相当するチャートの長さ(mm)
(3)臀部頂点の位置
本文中に述べたように、着用中の写真を体側面からカメラで撮影し、パソコン上で床面から臀部頂点までの距離を測定する。3回の着用−撮影−測定の平均値を求めた。パンツのデザインにより変化する値であるので、全く同じサイズ、デザインのパンツで裏地の有無により臀部頂点の位置の違いを差寸で表す。着用者も同一人物で比較する。
なお、臀部頂点については、体側面の画像に頭部から床面に垂直に補助線を入れ、臀部で交わる点を臀部頂点とした。
出来上がったパンツの審美性および着用感、運動機能性、ヒップアップ効果、サイドの締め付け効果について官能評価を実施した。その評価基準を表1に示す。
タテ糸に綿60番手双糸をヨコ糸に165デシテックスのPTTを用い、2/1のツイル(綾織)に製織、染色仕上げした。こうして得られた織物の伸度はタテ8%ヨコ25%、伸長回復率はタテ92%ヨコ85%であった。この表地の裏に次の工程で縫製した裏地を縫着して婦人用パンツを縫製した。パンツの裏地には、伸度タテ147%ヨコ41%、伸長回復率はタテ96%ヨコ85%のトリコット編地を後身頃から前身頃ウエストラインに向かい斜め上方に傾斜した形状に裁断し、内股部とウエストラインに縫着した。さらにヒップライン下から前身頃ウエストラインに向かって帯状のヒップアップ別布を伸びを止めないように下糸にナイロンウーリー糸を用いて千鳥縫いミシンで裏地に縫い付けた。ヒップアップ別布の伸度はタテ156%ヨコ53%、伸長回復率はタテ96%ヨコ94%のパワーネットを用い、後中心線で5cm幅(図4記載の9の寸法)、前身頃のウエストラインで8cm幅(図4記載の10の寸法)となるように漸増させた曲線帯状とする。
タテ糸に綿50番手双糸をヨコ糸に44デシテックスの弾性糸に綿50番手をカバーリングした糸を用い、平織物に製織、染色仕上げした。こうして得られた織物の伸度はタテ12%ヨコ28%、伸長回復率はタテ85%ヨコ65%であった。この表地の裏に次の工程で縫製した裏地を縫着して婦人、紳士兼用のパンツを縫製した。パンツの裏地には、タテ糸に55デシテックスのポリエステル糸、ヨコ糸に55デシテックスのPTTを用い、平織物に製織、染色仕上げした。こうして得られた織物の伸度はタテ9%ヨコ32%、伸長回復率はタテ95%ヨコ86%であった。この裏地を後身頃から前身頃ウエストラインに向かい斜め上方に傾斜した形状に裁断し、内股部とウエストラインに縫着した。実施例1と同様のパワーネットを使いヒップライン下から前身頃に向かい斜め上方に傾斜した形状のヒップアップ別布を縫い付けた。該ヒップアップ別布は後中心線で7cm幅(図4記載の9の寸法)、左右前身頃のウエストラインで10cm幅(図4記載の10の寸法)となるように漸増させた曲線帯状とした。ヒップアップ別布の縫着は伸びを止めないように偏平2本針ミシンで裏飾り糸にナイロンウーリー糸を用いて裏地に縫い付けた。
裏地は、パンツ後身頃の股上部と前身頃の一部を被う形状とし、内股部とウエストベルトに縫着した。
タテ糸、ヨコ糸にポリエステルとレーヨンの混紡糸で3/1のサテン(朱子織)に製織、染色仕上げした織物を表地に使用して婦人用のパンツを縫製した。こうして得られた織物の伸度はタテ21%ヨコ20%、伸長回復率はタテ91%ヨコ89%であった。この表地の裏に次の工程で縫製した裏地を縫着して婦人用パンツを縫製した。
パンツの裏地には、伸度タテ180%ヨコ104%、伸長回復率はタテ92%ヨコ94%のトリコット編地を後身頃から前身頃の一部を覆う形状に設計した後、4分割して、各縫い合わせ線を曲線にして立体形状となるようにした。4分割した後は、各縫い合わせ線を千鳥縫いで縫い合わせて一体化する。この時、着用中の破損を防止するため縫い合わせ線の裏側にヒップアップ別布用のパワーネットを1cm幅に裁断して補強テープとして、同時に縫い付けた。さらにヒップライン下から前身頃ウエストラインに向かって帯状のヒップアップ別布を伸びを止めないように下糸にナイロンウーリー糸を用いて千鳥縫いミシンで裏地に縫い付けた。ヒップアップ別布の伸度はタテ109%ヨコ85%、伸長回復率はタテ97%ヨコ89%のパワーネットを用い、後中心線で5cm幅(図4記載の9の寸法)、前身頃のウエストラインで8cm幅(図4記載の10の寸法)となるように漸増させた曲線帯状とする。
タテ糸に綿50番手双糸をヨコ糸に44デシテックスの弾性糸に綿50番手をカバーリングした糸を1本交互に使用して22Gの両面丸編機にて編成した。この両面丸編地を通常の丸編地の染色方法に準じ、染色仕上げした。こうして得られた編物の伸度はタテ60%ヨコ105%、伸長回復率はタテ65%ヨコ75%であった。この表地の裏に次の工程で縫製した裏地を縫着して婦人用のパンツを縫製した。パンツの裏地には、伸度タテ180%ヨコ104%、伸長回復率はタテ92%ヨコ94%のトリコット編地を後身頃から前身頃ウエストラインに向かい斜め上方に傾斜した形状に裁断し、内股部とウエストラインに縫着した。さらにヒップライン下から前身頃ウエストラインに向かって帯状のヒップアップ別布を伸びを止めないように下糸にナイロンウーリー糸を用いて千鳥縫いミシンで裏地に縫い付けた。ヒップアップ別布の伸度はタテ109%ヨコ85%、伸長回復率はタテ97%ヨコ89%のパワーネットを用い、後中心線で7cm幅(図4記載の9の寸法)、前身頃のウエストラインで9cm幅(図4記載の10の寸法)となるように漸増させた曲線帯状とする。裏地は、パンツ後身頃の股上部と前身頃の一部を被う形状とし、内股部とウエストベルトに縫着した。
実施例1で用いた織物を表地に使用して婦人用パンツを縫製した。裏地は付設しなかった。
綿30番手の紡績糸をタテ糸、ヨコ糸に用い、3/1のサテン(朱子織)に製織、染色仕上げした織物を表地に使用して婦人、紳士兼用パンツを縫製した。こうして得られた織物の伸度はタテ5%ヨコ6%、伸長回復率はタテ98%ヨコ98%であった。パンツの裏地には、伸度タテ99%ヨコ72%、伸長回復率はタテ67%ヨコ73%のトリコット編地を後身頃の臀部のみ覆う形状に裁断し、内股部と脇線で表地と縫着した。さらにヒップラインの下に20cmの帯状のヒップアップ別布を伸びを止めないように下糸にナイロンウーリー糸を用いて千鳥縫いミシンで裏地に縫い付けた。ヒップアップ別布の伸度はタテ156%ヨコ53%、伸長回復率はタテ96%ヨコ94%のパワーネットを用いた
こうして得られた婦人、紳士兼用パンツの生地物性評価結果を表2に、縫製品を着用した時の審美性、着用感、運動機能性、ヒップアップ効果、サイド締め付け効果について評価をした結果を表3に示した。
56デシテックスのポリエステル糸100%の長繊維糸を使い20G丸編機で編成し、通常染色加工仕上げをして編地を得た。こうして得られた編物の伸度はタテ40%ヨコ80%、伸長回復率はタテ88%ヨコ55%であった。パンツのウエストはゴムで始末をした開きのないタイプのいわゆるジャージパンツとした。パンツの裏地には伸度タテ109%ヨコ85%、伸長回復率はタテ97%ヨコ87%のパワーネットで、股部から上部を後身頃、前身頃ともに被うように2本の筒状に縫製し、ウエストゴム部で表地と縫着した。
2 :前身頃
3 :裏地
4 :脇線
5 :ウエストライン
6 :内股
7 :後中心線
8 :ヒップアップ別布
9 :ヒップアップ別布後中心巾
10 :ヒップアップ別布前ウエストライン巾
A :後身頃中心線とヒップアップ別布上辺との交点
B :前ウエストラインとヒップアップ別布上辺との交点
C :(深さ測定用)仮の直線
D :Cからカーブの一番深い部分の距離
Claims (8)
- 身頃表地の内側に、後身頃のヒップ部から脇線を通り前身頃の一部を被う裏地を付設したパンツであって、該裏地は後身頃から前身頃にかけて連続した形状で、かつパンツ全周に付設されず、かつ該裏地が少なくともウエストラインと内股で身頃表地に接合されていることを特徴とするパンツ。
- 前記身頃表地が、タテまたは/およびヨコ方向に伸縮可能な織編物であることを特徴とする請求項1に記載のパンツ。
- 前記身頃表地または/および前記裏地が、一方がポリトリメチレンテレフタレートを主体としたポリエステルである2種類のポリエステル系重合体を繊維長さに沿ってサイドバイサイド型に貼り合わせた複合繊維のマルチフィラメントを、タテ糸およびヨコ糸の少なくとも一方に用いたポリエステル系ストレッチ織物であることを特徴とする請求項1または2に記載のパンツ。
- 前記裏地が、タテまたは/およびヨコ方向に伸縮可能な織編物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のパンツ。
- 前記裏地の、タテ方向およびヨコ方向の少なくとも一方の伸長率が1.5kg荷重下で30〜200%、繰り返し10回伸長後の伸長回復率が80%〜100%であることを特徴とする請求項4に記載のパンツ。
- 前記裏地は、少なくとも1ヶ所以上後身頃で接ぎ合わされ、ヒップの丸みに合わせて立体縫製されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のパンツ。
- 前記裏地に、後身頃のヒップライン下から前身頃に向かい斜め上方に傾斜した帯状のヒップアップ別布を付設したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のパンツ。
- 前記ヒップアップ別布が、後中心で5〜7cm、前身頃のウエストラインで8〜10cmとなるように漸増させた形状であることを特徴とする請求項7に記載のパンツ。
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