近年、オフィスにおける快適性あるいは知的生産性の向上を支援するためにオフィス環境の向上が求められている。この動きを受けて、複写機あるいはプリンタ等の用紙搬送を伴う画像形成装置では、その騒音を低減することが強く求められている。
画像形成装置全体の騒音を低減するためには、モータのような用紙駆動系あるいは機械冷却用ファンのみならず、搬送される記録シート(用紙)に関わる騒音も低減する必要がある。搬送される用紙に関わる騒音は、第1に、用紙先端が搬送ロールに衝突して発生する、第2に、用紙面がいわゆるガイドやシュートといった搬送経路ガイド部材と擦れて発生する、第3に、用紙がループを作って用紙面でシュートを叩く、又はガイド部材により曲げられていた用紙後端部が段差のある別のガイド部材へと落下する際に用紙姿勢が変わりながら衝突して発生する、といった騒音の発生原因が明らかになってきており、その発生原因や構造にあわせて、回避方法が提案されている。
また、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の用紙搬送装置には、印字速度、機械サイズ、用紙排出トレイ位置等の都合により、様々な構成の用紙搬送経路が用いられている。このような用紙搬送装置では、積載された用紙がストレート(直線的)に配置された搬送路を搬送される過程で印字等の処理をして外部へ排出されるような構造をとるものは皆無に近く、例えば、装置本体の縦側面に沿って用紙を上方に搬送する搬送路、若しくは装置中心部を用紙が横方向に搬送する搬送路、装置背面部を用紙が上方に向けて縦に搬送される搬送路、等に構成されるのが普通である。
また、上述のような用紙搬送装置の搬送路には、屈曲した経路部分における用紙搬送ガイド部材が分割されて段差をもつように配置される場合がある。このような屈曲すると共に用紙搬送ガイド部材が分割されて段差をもつよう配置されている経路部分を、用紙後端が通過すると衝撃的な音が発生する。
この音の発生原因について見ると、屈曲されて搬送されている用紙後端が上流側の用紙搬送ガイド部材を通過して、用紙後端の支持が外れた際に、用紙後端は、用紙の腰の強さである弾性復帰力により、搬送方向に湾曲していた用紙後端部の姿勢が、急激に平面状に戻ろうとする。
このとき、第1に、用紙後端が急激に平らに戻る動作の際に、用紙面振動が起って音が出る。
第2に、用紙後端が、分割された下流側の用紙搬送ガイド部材に衝突して用紙面振動が起り音が出る。
このような第1と第2の用紙面振動が同時に起って、いわゆる用紙後端はね音が発生する。なお、この用紙後端はね音は、用紙の屈曲の度合い、分割した用紙搬送ガイド間の距離、衝突面の形状といった要因により、第1の用紙後端が急激に平らに戻る動作による音と、第2の用紙後端が、分割された下流側の用紙搬送ガイド部材に衝突して起る音の大きさと、それらの割合が変化する。
このような用紙後端はね音を抑制するため、従来の装置では、給紙ローラ下流の用紙後端が衝突する部分に弾性部材を設ける手段が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
このような用紙後端が衝突する部分に弾性部材を設け衝突を緩和する手段では、前述した第2の、用紙後端がガイド部材に衝突して起る音を抑制できるが、第1の、用紙後端が急激に平らに戻る動作の際に、用紙面振動が起って出る音を防止できない。
また、用紙後端はね音を抑制するための従来の手段には、曲率を有するシートパス部分における、シート材搬送方向上流側と下流側のシート材搬送規制部材間の外側と内側のガイド部材間に、搬送シート材のレジストループ等を形成するための空間を有するシート材搬送装置において、シート材搬送方向上流側のシート材搬送規制部材側からこの空間に向けて、シート材搬送方向に対してテーパ状に構成したシート材ガイド手段を設けるものが提案されている。
そして、この用紙後端はね音を抑制するための従来の手段では、搬送されているシート材の後端がシート材ガイド手段を抜けて解放されるとき、シート材後端辺は、その全長に渡って一度にシート材ガイド手段の先端辺から抜け出て解放されるのではなく、シート材後端辺の一端側の隅部から他端側の隅部にかけて徐々に解放されながら抜けていくようにしてシート材後端部が外側ガイド部材に対して強い跳ね戻りを生じることを防止して、突発音の発生を防止する(例えば、特許文献2参照。)。
さらに、用紙後端はね音を抑制するための従来の手段には、パッド台に支持されたフリクションパッドを給紙ローラに圧接し、シートを分離し湾曲ガイドによって案内しながら給紙する給紙装置において、パッド台の下流側の端縁をシートの搬送方向と直交する直線に対して傾斜させるよう構成する。これにより、シートの後端側のエッジがパッド台の端縁を少しずつ位置を変えながら時間をかけて通過することで、湾曲されたシートの後端側のエッジが一気に跳ねることを防止し、シートが跳ねることによる騒音を抑制するものが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
前述のような従来のいわゆる用紙後端はね音の回避手段では、画像形成装置本体の小型化のためストレートな用紙搬送経路を採れない装置を前提とした搬送路の小型化された屈曲部分、あるいは、搬送路上に配置する種々の用紙搬送ガイド部材のうち、用紙ジャム発生の再生に用紙を取り出すため搬送路から引き離せるように固定ガイド部材に対して可動に構成した可動式用紙搬送ガイド部材を配置した、ガイド部材の分割部分において、これらの手段を適用しようとすると、次のような問題がある。
例えば、搬送路上のガイド部材の用紙後端が衝突する部分に弾性部材を設ける手段を利用する場合には、ガイド部材がガイドする用紙がフラットな用紙の他に、アッパーカールした用紙又はダウンカールした用紙もあるので、このような用紙先端をガイドする際にガイド部材に設けた弾性部材が用紙先端をガイドすることを阻害する虞がある。
また、ガイド部材の下流側の端縁をシートの搬送方向と直交する直線に対して傾斜させるよう構成する手段では、小型化した搬送路上に、このガイド部材に対し搬送方向に延出する傾斜部分を設けるだけの余分なスペースを確保できない場合がある。
さらに、ガイド部材に傾斜した部分を搬送方向に延出させるよう構成する手段では、搬送路上において、ガイド部材の傾斜した部分が搬送方向に対して短く延出した端部と、これに隣接する他のガイド部材との間に大きな隙間ができるので、波うちした用紙、アッパーカールした用紙又はダウンカールした用紙の先端が、この大きな隙間を通るときにジャムを発生する(用紙先端が引っ掛かってジャミングを生じる)虞がある。
特開平5−294489号公報
特開平7−251976号公報
特開2001−158542号
本発明の実施の形態に係わる、シート搬送装置及びこれを備えた画像形成装置について、図1乃至図10により説明する。図1の斜視図及び図2の概略構成図に示すように、この画像形成装置(デジタル複写機)本体10は、プリンタ12の上方に、イメージスキャナ14を配置し、その上部に自動原稿搬送装置16を配置して構成する。なお、本明細書で、シート搬送装置というときには、紙以外のフィルムその他の記録シートを供給するものを含むものと定義する。
このイメージスキャナ14には、その上面に原稿を載置するためのプラテンガラス18(図2に図示)が設置してある。
また、自動原稿搬送装置16には、複写しようとする単数又は複数の原稿22を重ねて載置する原稿給紙トレイ24を設置する。この自動原稿搬送装置16は、原稿給紙トレイ24上に載置された原稿22を、順次プラテンガラス18上の複写位置を通過して原稿排紙トレイ26上に排出されるように自動搬送してイメージスキャン動作を行えるように構成する。この自動原稿搬送装置16は、プラテンガラス18の上部を開放できるように、図示しないヒンジで開閉可能に装着する。
また、プリンタ12の上部には、上方に配置されたイメージスキャナ14との間に、用紙排出トレイ20を設置する。
イメージスキャナ14には、ユーザが複写開始等を入力操作するためのユーザインタフェース及び原稿画像を読み取るための露光光学系28を設置する。この露光光学系28で読み取った原稿画像の出力信号は、図示しない制御部においてデジタル画像データに変換して一時的に記憶しておき、所定のタイミングで潜像形成用の画像データとして、プリンタ12の内部に配置されたROS(潜像形成装置)30に出力される。
このプリンタ12の内部には、装置本体下部に配置された給紙装置から記録シート(用紙)を1枚づつ引き出して、シート搬送装置で搬送して転写部を通し、定着部を通して、用紙排出トレイ20へ排出するための、搬送路が構成されている。
プリンタ12内部に配置される転写部には、回転駆動される感光体ドラム32を装着する。感光体ドラム32は、その表面が帯電ローラ34により一様に帯電された後、前述したROS30から照射されるレーザビーム36により露光走査されて静電潜像が形成される。
このようにして感光体ドラム32上に形成された静電潜像は、感光体ドラム32と共に回転して、現像ローラ38の位置に至って現像ローラ38により静電潜像がトナー像に現像され、さらに回転して転写ローラ40の位置に至る。
この転写ローラ40は、転写領域において感光体ドラム32に圧接された状態で転写バイアスが印加されているので、この転写ローラ40によって、感光体ドラム32上のトナー像が、搬送路上を搬送されてきた記録シート(記録用紙)に転写される。
このようにしてトナー像が転写された記録シートは、トナー像が未定着の状態でさらに搬送路上を搬送されて定着部(定着領域)に至り、一対の定着ローラ42に挟まれた状態でトナー像が定着される。
定着トナー像が形成された記録シートは、さらに搬送路上を搬送されて、排紙口44から用紙排出トレイ20上に排出されストックされる。
上述のように構成された画像形成装置(デジタル複写機)本体10に設ける給紙装置は、給紙トレイ46と、給紙トレイ46に収容された記録シート束より記録シートを1枚ずつ送り出す記録シート送出手段とを有する。
この給紙トレイ46には、図1及び図2に示すように、多数枚重ねられて束にされた記録シートを収容する箱状に構成された用紙収容ケース部分を有する。この用紙収容ケース部分には、給紙トレイの用紙搬出方向前端に位置決め用前壁を立設し、記録シートである用紙の束の搬送方向前端を当接させて位置決めした状態で多数枚重ねられて束にされた記録シートを収納する。
この給紙トレイ46は、画像形成装置本体10の前面に形成された給紙トレイ挿入口から、画像形成装置本体10内部のトレイ収容空間内に、引き出しのように出し入れ可能に装着する。
図2に示すように、画像形成装置本体10のトレイ収容空間には、給紙トレイ挿入口から給紙トレイ46を挿入又は抜き出し操作(紙面に直交する方向へ操作)するために、給紙トレイ46を移動可能に支持するためのレール48を設置する。さらに、給紙トレイ46の左右両側部には被ガイドレール50を設置し、この被ガイドレール50がレール48上を移動可能となるよう装着する。
この給紙トレイ46の用紙を収容するケース状部分の底部には、用紙載置プレート52を装着し、この用紙載置プレート52の上面に記録シート54を積載するよう構成する。この用紙載置プレート52は、回転軸56(図2に図示)を中心に回動可能に構成し、図示しないモータによって回動操作して、給紙時に用紙載置プレート52を持ち上げることにより、記録シート54の上面位置をピックアップローラ58に当接させる位置に保持するよう構成する。
すなわち、この用紙載置プレート52は、不使用の時に、ピックアップローラ58が記録シート54上面から離れるように降下した水平位置に保持され、給紙時に図示しない揺動機構により回転軸56を中心にピックアップローラ58が記録シート54上面に接触する位置に移動するよう構成する。
この給紙トレイ46の給紙側上部位置には、記録シート送出手段としてのピックアップローラ58を配置すると共に、給紙トレイ46の上部左側(搬送方向下流側)に、フィードローラ60と、これに転接するよう設置されたリタードローラ62とからなる分離搬送ローラ64を配置する。
これら、ピックアップローラ58及び分離搬送ローラ64は、それぞれ記録シート54の横幅よりも短く構成する。これにより、記録シート54と接触する面積を小さくし、単位面積当たりの圧力を大きくして、記録シート54を確実にピックアップし、分離し、搬送することができる。さらに、これら、ピックアップローラ58及び分離搬送ローラ64は、搬送路における記録シート54の搬送方向に直交する方向(幅方向)における中央近傍に配置し、記録シート54が斜めに送られるスキューを生じることを軽減するとともに、種々のサイズの記録シート54を搬送可能とする。
なお、上述した分離搬送ローラ64は、トルクリミッタを介してフィードローラ60と逆方向に回転駆動され、フィードローラ60との圧接領域に記録シート54が存在しない場合あるいは記録シート54が1枚存在する場合はフィードローラ60に従動され、圧接領域に記録シート54が複数枚搬送された場合はフィードローラ60と逆方向に回転して重送された記録シート54をさばく逆回転型のリタードローラを用いた手段の他に、分離搬送ローラ64を構成するリタード部材として、フィードローラ60に圧接されその表面の摩擦力により重送された用紙をさばくリタードパッドを用いた手段、フィードローラ60に圧接して従動されかつ回転軸に設けられた負荷抵抗により重送された用紙をさばく従動ローラ型のリタードローラを用いた手段、等の様々な種類のリタード手段を用いても良い。
ここでは、記録シート送出手段を構成するリタードローラ62を、図示しないスプリングによってフィードローラ60に押圧されて転接するよう構成する。このリタードローラ62には、図示しないモータおよびトルクリミッタが取り付けられて、フィードローラ60と逆方向に駆動力が作用するよう構成する。このように構成することによりリタードローラ62は、フィードローラ60が回転した際、あらかじめ設定されたトルクリミッタの設定値以上の回転力(トルク)が加わったときにフィードローラ60の回転に連れ回りする。
よって、フィードローラ60とリタードローラ62との間に記録シート54が存在しない場合又は記録シート54が1枚存在する場合には、リタードローラ62がフィードローラ60の回転時に連れ回りして、1枚の記録シート54を搬出可能とする。
また、記録シート54が複数枚引き出されて搬送されフィードローラ60とリタードローラ62との間に2枚以上存在する場合は、各記録シート54間の摩擦抵抗が小さいため、リタードローラ62に加わる回転力が小さくなり、リタードローラ62がフィードローラ60と逆方向に回転して、記録シート54の重送を抑制するよう構成する。
これらピックアップローラ58と、フィードローラ60、リタードローラ62とは、記録シート54の横幅方向(用紙搬送方向と交わる方向)の長さ以上に構成して記録シート54の横幅方向全域で記録シート54と接するようにしてもよいし、記録シート54横幅方向の長さより短く構成して、記録用紙の横幅方向の一部分で記録シート54と転接するように構成しても良い。
このピックアップローラ58と分離搬送ローラ64との間には、記録シート54の先端を分離搬送ローラ64のニップ部に案内するための2つの給紙ガイド部材66、68を配置する。
これら給紙ガイド部材66、68は、それぞれ例えば、厚さ4mmのプラスチック板(金属板で構成しても良い)で形成する。なお、給紙ガイド部材66、68は、紙、ゴム、プラスチック、金属などの任意の材料で構成することが可能であるが、様々な種類の記録シート54を分離搬送ローラ64の圧接領域に安定して導くために、十分な機械的強度と曲げ剛性を有するプラスチック、金属等の材料で構成することが望ましい。
給紙ガイド部材66、68は、記録シート54の搬送方向(記録用紙搬送方向)と交差する方向に対し2分割して、リタードローラ62を挟みこむ状態で配置する。給紙トレイ46を引き出す方向手前側の給紙ガイド部材66は、給紙トレイ46の前壁と一体に形成する。すなわち、一方の給紙ガイド部材66は、ピックアップローラ58及び分離搬送ローラ64よりも、給紙トレイ46を外部へ引き出す側に配置するもので、給紙トレイ46の一側部に一体的に形成する。
また、給紙トレイ46を引き出す方向奥側の給紙ガイド部材68は、独立して配置するように構成する。すなわち、他方の給紙ガイド部材68は、ピックアップローラ58及び分離搬送ローラ64よりも、給紙トレイ46を外部へ引き出す方向と反対側に配置するもので、図示しない画像形成装置本体10内の固定部材に固着して配置する。
このように構成することにより、給紙トレイ46を脱着する操作時に給紙ガイド部材68がリタードローラ62と干渉するなどの支障を生じることなく、給紙ガイド部材66、68が記録シート54の先端をより安定して分離搬送ローラ64のニップ領域に案内することが可能になる。
図2に示すように、この画像形成装置本体10では、記録シート54の搬送路における、分離搬送ローラ64から記録シート搬送方向下流側にかけて、上方に向けて湾曲した湾曲用紙搬送路(シート搬送路)を構成するためのガイド部材70を配置する。
このガイド部材70から記録シート搬送方向下流側にかけての部分には、記録シート54(画像転写用紙)を転写ローラ40に搬入するための用紙搬送ローラ(テイクアウェイローラ)72とレジローラ74とを配置する。
この画像形成装置本体10では、分離搬送ローラ64から転写ローラ40へ至る搬送路上で記録シート54がジャミングを生じたときに、ジャミングしている記録シート54を、使用者が搬送路上から機外に取り出す作業を行えるようにするため、図10に示すように、シート搬送装置における図に想像線で囲まれた範囲内の少なくともガイド部材70と一方のテイクアウェイローラ72とを、一体的にまとめて搬送路から引き離し可能に装着する。
このように構成された画像形成装置本体10では、その搬送路上に配置されたガイド部材70が、急角度で湾曲(屈曲)する搬送路のカーブ部分を構成し、記録シート54が屈曲されて搬送されるようにすると共に、ガイド部材70をジャム対策用に移動可能に装着するため、ガイド部材70を給紙ガイド部材66、68から分割した状態に構成する。
すなわち、この画像形成装置本体10では、ガイド部材70が設定する搬送路上の急角度のカーブ部分に、ガイド部材70と給紙ガイド部材66、68との間に不連続で段差を生じる構造が存在する。
そこで、この画像形成装置本体10では、ガイド部材70と給紙ガイド部材66、68との間を、一体化したガイド部材で構成できないため、給紙ガイド部材66、68からガイド部材70へかけて、記録シート54の先端部を適切に搬送可能とすると共に、記録シート54の後端部が給紙ガイド部材66、68からガイド部材70へかけて搬送される際に騒音が発生しないようにする手段を講じる。
このため、給紙ガイド部材66、68には、それぞれのガイド部材70に向いた搬送方向下流側端部近くに、滑らかにガイドすると共に騒音低減を図るためのガイド手段を構成する。
この給紙ガイド部材66、68に設けるガイド手段は、各給紙ガイド部材66、68における、搬送方向に直交する方向に位置する搬送方向下流側端辺が、後続する搬送路として設定された平面に対して、高さ方向(搬送路として設定された平面に直交する方向の高さ)に高低差を設けて構成する。
すなわち、この給紙ガイド部材66、68には、そのガイド面上を、記録シート54の後端部が通過する際に、記録シート54後端に搬送方向に直交する方向(用紙奥行き方向)に対して記録シート54平面と対向する方向に高低差を生じせしめるガイド手段を構成する。
この給紙ガイド部材66、68に設けるガイド手段は、例えば図3及び図4に示すように、給紙ガイド部材66、68の各搬送方向下流側端辺が、一つの直線上で並ぶように構成すると共に、これら直線上に並んだ各搬送方向下流側端辺が、搬送方向に直交する方向(用紙奥行き方向)に対して片側端部からもう一方の端部に向かって高くなる、あるいは低くなるように構成する。
このように構成することによって、給紙ガイド部材66、68における図3及び図4に示すガイド手段にガイドされた記録シート54の後端部は、給紙ガイド部材66、68の搬送方向下流側端辺から開放された際に、搬送方向に直交する方向(用紙奥行き方向)で給紙ガイド部材66、68による支持が解除される時間がずれることになり、後続の搬送路平面に対して斜めの姿勢となった高低差を生じたねじれた状態から、後続の搬送路平面に沿う状態へと弾性復帰する。
この記録シート54の後端部は、ねじれた状態から、後続の搬送路平面に沿う状態へと弾性復帰する際に、記録シート54の搬送方向下流側端辺の各位置で、搬送方向に湾曲したものが直線的に伸びる動作と、搬送方向に直交する方向に湾曲したものが直線的に伸びる動作とが同時に進行する複合動作がなされる。
すなわち、記録シート54の後端部は、立体的にねじれた状態から、平面的に伸びる状態へと移行するため、記録シート54後端部に作用する力の方向を分散し、かつ立体的にねじれた状態から平面的に伸びる状態へと移行するまでに掛かる時間を伸ばして瞬時に大きな姿勢戻り力が生じることを防止し、記録シート54の後端で生じる騒音であるいわゆるはね音を大幅に低減することができる。
これは、記録シート54の搬送方向下流側端部が、搬送方向に直交する方向の全体に渡って同時に、搬送方向に湾曲したものが直線的に伸びる動作を行う場合に生じる騒音に比べて、大幅な騒音の低減となる。
特に、給紙ガイド部材66、68に設ける図3及び図4に示すガイド手段の構成では、給紙ガイド部材66、68の各搬送方向下流側端辺が一つの直線上で並ぶため、その一方の端部から他方の端部に至るまで、搬送方向に直交する方向に対する高低差を大きく設定できるので、立体的にねじれた状態から平面的に伸びる状態へと移行するまでに掛かる時間を最大にでき、騒音防止効果を大きくできる。
なお、図示しないが、給紙ガイド部材66、68は、リタードローラ62を挟んで分割した構成とするばかりでなく、搬送方向下流側端辺が直線的に連なる一体構造に構成しても良い。
また、給紙ガイド部材66、68のガイド手段では、給紙ガイド部材66、68の搬送方向下流側端辺に設定する具体的な高低差を1〜6mm程度とする。
このように設定したときには、記録シート54の用紙姿勢戻り速度が用紙搬送経路形状及び用紙の厚さ等の関係から400mm/sec程度で、かつプロセススピードが200mm/secである画像形成装置の場合に、良好な結果がえられることが実験で確認できた。なお、より望ましくは3〜6mm程度であればより効果を発揮できることも確認できた。
この給紙ガイド部材66、68に設けるガイド手段は、例えば図5に示すように、リタードローラ62の回転軸方向両側部で高く、各給紙ガイド部材66、68のリタードローラ62から離れた両側部に行くのに従って低くなる形状に形成してもよい。
この図5に示すガイド手段の構成では、前述した図3及び図4に示すガイド手段と同様に、各給紙ガイド部材66、68における、リタードローラ62に隣接する高い部分からリタードローラ62より離間した低い部分へかけて、それぞれ立体的にねじれた状態から平面的に伸びる状態へと移行するまでに掛かる時間を伸ばして、騒音防止効果をうることができる。
さらに、この図5に示すガイド手段の構成では、給紙ガイド部材66、68が、ダウンカールした記録シート54の形状に沿うように対応して、ダウンカールした記録シート54の先端を滑らかにガイドできるから、ダウンカールした記録シート54の先端のガイド動作を安定して確実に行えるようにできる。さらに、この図5に示すガイド手段の構成では、ダウンカールした記録シート54の両側端部が給紙ガイド部材66、68の各両側端部に強く擦れて騒音を発生することを防止できる。
この給紙ガイド部材66、68に設けるガイド手段は、例えば図6に示すように、リタードローラ62の回転軸方向両側部で低く、各給紙ガイド部材66、68のリタードローラ62から離れた両側部に行くのに従って高くなる形状に形成してもよい。
この図6に示すガイド手段の構成では、前述した図3及び図4に示すガイド手段と同様に、各給紙ガイド部材66、68における、リタードローラ62に隣接する低い部分からリタードローラ62より離間した高い部分へかけて、それぞれ立体的にねじれた状態から平面的に伸びる状態へと移行するまでに掛かる時間を伸ばして、騒音防止効果をうることができる。
さらに、この図6に示すガイド手段の構成では、給紙ガイド部材66、68が、アッパーカールした記録シート54の形状に沿うように対応して、アッパーカールした記録シート54の先端を滑らかにガイドできる。さらに、この図6に示すガイド手段の構成では、アッパーカールした記録シート54の幅方向中央部が給紙ガイド部材66、68の各中央側部分に強く擦れて騒音を発生することを防止できる。
この給紙ガイド部材66、68に設けるガイド手段は、例えば図7乃至図9に示すような搬送方向に直交する方向(用紙幅奥行き方向)に対して曲げ剛性勾配をもつ構造に構成しても良い。
この曲げ剛性勾配をもつ構造は、曲げ剛性の低い部分で通常使用される記録シート54に対して変形する性質を有し、曲げ剛性の高い部分で通常使用される記録シート54に対して変形しないプロファイルを、給紙ガイド部材66、68の搬送方向下流側端部における搬送方向に直交する方向(用紙奥行き方向)に対してもたせるよう構成する。
また例えば、曲げ剛性勾配をもつ構造は、給紙ガイド部材66、68の端部に別材料によって構成してもよい。この場合、例えばポリエチレンフィルムやマイラフィルムのような可変性フィルム等を、給紙ガイド部材66、68における記録シート54後端の押し付け圧力では曲げられない1mm程度の厚さをもついわゆるPC、ABS板、あるいは板金等様々な材料で構成したフレームに、可変性フィルム等を貼り付けることで構成しても良い。
この図7乃至図9に示す給紙ガイド部材66、68に設けるガイド手段は、可変性薄膜部材を用いて構成する。このため、給紙ガイド部材66、68では、それぞれの搬送方向下流側端部を所定幅切欠して、ガイド手段設置部を設ける。このガイド手段設置部には、リタードローラ62の両側部に隣接した補強リブ部69を突設する。
そして、各給紙ガイド部材66、68におけるガイド手段設置部には、それぞれ補強リブ部69先端から搬送方向に直交する方向へ向けて各両側部まで伸びる矩形範囲に、平面視矩形状に形成したマイラフィルム67Eを配置する。このマイラフィルム67Eは、給紙ガイド部材66又は給紙ガイド部材68の搬送方向下流側端部と、各補強リブ部69とに同時に貼着して取り付ける。
さらに、この各給紙ガイド部材66、68におけるガイド手段設置部には、それぞれマイラフィルム67Eに重ねるように、マイラフィルム67Eより一回り小さなマイラフィルム67Dを、同様にして取り付ける。
この各給紙ガイド部材66、68におけるガイド手段設置部には、それぞれ図示するように、マイラフィルム67Dに重ねて、一回り小さなマイラフィルム67Cと、これより一回り小さなマイラフィルム67Bと、さらにこれより一回り小さなマイラフィルム67Aとを、順次、同様にして取り付けて一体化する。
すなわち、この図7乃至図9に示す給紙ガイド部材66、68に設けるガイド手段は、大きさが段階的に小さくなるマイラフィルムを、ガイド手段設置部における補強リブ部69の基端部角から、ガイド手段設置部の自由端の外側角へかけて、5枚ずらして重ねて張り合わせることにより構成する。なお、この図7乃至図9に示す給紙ガイド部材66、68に設けるガイド手段では、マイラフィルムのこしの強さと、弾性変形量との要請に対応して、6枚ずらして重ねて張り合わせる構成としても良い。
なお、複数枚数のマイラフィルム等の可変性フィルムを、搬送方向に直交する方向(奥行き方向)に対して張り合わせる枚数を変えることで所定の曲げ剛性勾配を実現できる。
上述のように構成することにより、図7乃至図9に示す給紙ガイド部材66、68に設けるガイド手段では、リタードローラ62付近は曲がりにくく、搬送方向に直交する方向の端部で曲がり易いという、曲げ剛性勾配を有する構成が実現できる。
このように構成した図7乃至図9に示す給紙ガイド部材66、68に設けるガイド手段では、マイラフィルム67Eの上に、マイラフィルムが複数枚数張り合わせている部分が、記録シート54先端の通過時と、記録シート54後端通過時とで変形しない。
この図7乃至図9に示す給紙ガイド部材66、68に設けるガイド手段では、各給紙ガイド部材66、68の搬送方向下流側端部における両外側部で、それぞれ記録シート54が通過する際に、記録シート54後端の押し付け圧力により、図9に示すように下向きの方向に弾性変形を起こす。
これにより記録シート54後端は、リタードローラ62付近のマイラフィルム67Eが硬くされた部分から徐々に解放され、最後に解放されるのが搬送方向に直交する方向(用紙奥行き方向)端部となる。
よって、この図7乃至図9に示す給紙ガイド部材66、68に設けるガイド手段によれば、各給紙ガイド部材66、68の搬送方向下流側端部における両外側部にかけて弱くなる曲げ剛性勾配により、記録シート54の後端が通過する際に、徐々に記録シート54後端の支持をマイラフィルム67Eが解除して搬送方向に直交する方向に対して記録シート54後端の支持解除の時間が伸びるようにして記録シート54後端が次のガイド部材70に衝突するようにすることから、記録シート54後端部に瞬時に大きな姿勢戻り力が発生したり、大きな衝突力が発生することを回避し、騒音が発生することを防止できる。
特に、図7乃至図9に示す給紙ガイド部材66、68に設けるガイド手段は、ダウンカールした記録シート54によって弾性変形されて、ダウンカールの形状にぴったりと沿うことができるので、ダウンカールした記録シート54の先端部を適切にガイドでき、さらにダウンカールした記録シート54の後端部が通過する際に発生する騒音を低減するのに効果的である。
なお、記録シート54後端が通過した後に、マイラフィルム67E自体の姿勢も戻る。また、通常薄手のマイラフィルムを用紙搬送経路で用いる場合に生じる、変形されたマイラフィルムの変形が解放された後のマイラフィルム戻り音は、図7乃至図9に示す給紙ガイド部材66、68に設けるガイド手段の構成のように、一部に複数枚数を用いていることで、振動しにくくなるため生じない。
また、給紙ガイド部材66、68に設けるガイド手段としての記録シート54の搬送方向に直交する方向(用紙奥行き方向)に対して曲げ剛性勾配を設ける構造は、例えば、奥行き方向に対して可撓性材料で形成した可変性フィルム等の厚みを変えることで所定の曲げ剛性勾配の状態を実現できる。あるいは、可変性フィルム等の奥行き方向に対して加える熱処理のプロファイルを変えることで所定の曲げ剛性勾配の状態を実現できる。
さらに、可変性フィルムの奥行き方向に対して加える弾性材料をコーティングする加工処理のプロファイルを変えることで所定の曲げ剛性勾配の状態を実現できる。
また、給紙ガイド部材66、68の搬送方向下流側端部にガイド手段としての曲げ剛性勾配の構造を設ける場合には、この曲げ剛性勾配の構造部分の幅は、3mm以上にすると良い。このように構成した場合には、曲げ剛性勾配の構造部分における曲げ剛性の低い部分が、記録シート54先端あるいは記録シート54後端の押し付け圧力により、下方に押され変形する。
この給紙ガイド部材66、68にそれぞれ設けた曲げ剛性勾配の構造部分は、搬送方向に直交する方向から見て連続体であるため変形の程度は曲げ剛性勾配の設定状態と記録シート54の厚さ等で変化するが、通常使用する記録シート54に対応して構成した曲げ剛性勾配の構造部分を変形の最大点を概略下方45度以内に収まるように設定することが望ましい。
また、前述したシート搬送装置に設ける給紙ガイド部材66、68は、記録シート54と摺接する表面における搬送方向下流側部分の摩擦を下げることで、徐々に記録シート54後端の支持を解除する際に作用する力を低減できる。例えば具体的には、給紙ガイド部材66、68の端部に丸みをもたせた形状に加工し又は表面平滑化のコーティング加工を施すことにより実現できる。
このように記録シート54における搬送方向下流側部分の表面で摩擦を減らし又はこの部分に丸みを持たせることで記録シート54後端部が解放されるときの加振力を減らすことができ、騒音低減効果を大きくできる。
上述のように構成された、画像形成装置本体10に設けられた、給紙ガイド部材66、68にガイド手段を設けたシート搬送装置を利用した給紙装置では、記録シート送出手段としてのピックアップローラ58により取り出された記録シート54が、フィードローラ60及びリタードローラ62の圧接領域に作用する強い圧接力およびリタードローラ62の逆搬送力により1枚ずつ分離されて送り出される。送り出された記録シート54は、給紙ガイド部材66、68のガイド手段にガイドされ、騒音の発生を抑制されてガイド部材70を通過するようテイクアウェイローラ72によって搬送される。そして、テイクアウェイローラ72によりレジローラ74に搬入された記録シート54は、レジローラ74により所定のタイミングで、感光体ドラム32と転写ローラ40とにニップされた転写領域に搬送される。
なお、本発明は前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、その他種々の構成を取り得ることは勿論である。