JP4356274B2 - 高周波回路用ジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体及び高周波用配線基板 - Google Patents

高周波回路用ジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体及び高周波用配線基板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アンテナ、分波器等の高周波デバイスにおいて、小型化、低損失を実現するために好適に用いられる高周波回路用無機材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の急速な情報技術の進歩と情報伝達量の増大にともない、携帯電話、コードレス電話、自動車電話等の通信機器デバイスに使用される周波数帯域はますます高周波数側へと移行している。高周波信号を伝送するための高周波回路を搭載した配線基板は、基板としての高誘電率、低誘電損失を有する誘電体材料と、所定の配線パターンを基板の表面に形成するために使用される銅や銀/パラジウム等の低電気抵抗の金属材料とで主に構成される。
【0003】
この高周波用配線基板の誘電体材料としては、例えば、フッ素樹脂やポリイミド樹脂をガラス繊維に含浸させて得られる複合材料、アルミナやシリカ等のセラミックス材料、セラミックス−ガラス系複合材料等が従来から使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、使用する周波数帯域の高周波数側へのシフトによる高性能化に加えて、通信機器デバイスを小型化することは需要者を惹きつける重要な要因となる。通信機器デバイスの小型化を図るには誘電体材料でなる基板の薄板化が一つの方法であるが、この場合には十分な機械的強度(靭性)を維持する必要がある。
【0005】
例えば、フッ素樹脂とガラス繊維の複合材料を基板とする場合は、低誘電損失が得られるものの、ガラス繊維を強化材として使用しているので薄板化するには限界がある。一方、アルミナ等のセラミックス材料は、靭性が低いため携帯用機器デバイスへの応用にあたっては耐衝撃性の観点から信頼性に欠けるという問題がある。また、10GHzまでの高周波信号に対しては、10程度の比誘電率と1x10-3オーダーの誘電正接を示すが、10GHz以上の高周波信号に対しては伝送損失が増大するという問題もある。
【0006】
このように、高周波数帯域における優れた誘電特性だけではなく、同時に十分な機械的特性を兼ね備えた誘電体材料の開発が待たれている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高周波領域に至るまで、高い誘電率と極めて低い誘電正接を有するとともに、従来のアルミナ焼結体と比較して飛躍的に高い機械的特性を併せ持ち、小型超高周波用アンテナ材料等に好適に使用される高周波回路用ジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体を提供することにある。
【0008】
すなわち、本発明のジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体は、少なくともセリア(CeO)を含有し、90容量%以上が正方晶ジルコニア(ZrO)粒子でなる第1相と、第1相中に分散されるアルミナ(Al)粒子でなる第2相とを含む高周波回路用ジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体であって、この複合セラミック焼結体中における第2相の含有量が0.5〜50容量%であると共に、上記第2相のアルミナ粒子の一部が第1相のジルコニア粒子内に存在することを特徴とする。
【0010】
さらに、上記したジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体は、10GHzまでの高周波信号に対して、30以上の比誘電率と1x10-4以下の誘電正接を有することが好ましい。
【0011】
本発明のさらなる目的は、上記したジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体でなる基板の表面および内部の少なくとも一方に回路を形成してなる高周波用配線基板を提供することにある。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の高周波回路用ジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体について詳細に説明する。
【0013】
本発明のジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体は、ジルコニア(ZrO2)粒子でなる第1相と、第1相中に分散されるアルミナ(Al23)粒子でなる第2相を含む。このジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体においては、第1相がマトリックス相となるように第1相の含有量が50容量%以上であることが好ましい。
【0014】
第1相を構成するジルコニア粒子の90容量%以上、より好ましくは95容量%以上は、正方晶ジルコニア粒子である。このような高い割合で正方晶ジルコニアを含有することにより、正方晶から単斜晶への応力誘起相変態に基づく複合セラミック焼結体の高強度化および高靭性化を達成できる。
【0015】
また、第1相を構成するジルコニア粒子はセリア(CeO2)を含有する。セリアは、アルミナ等に比較して誘電率の高い材料であるので、本発明の複合セラミック焼結体の誘電率向上に有効に寄与するとともに、正方晶ジルコニアの安定化剤として作用し、ジルコニアの正方晶から単斜晶へ応力誘起相変態する臨界応力を上昇させることで高強度化にも寄与する。
【0016】
第1相中のセリア含有量が多くなるほど、ジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体の高い誘電率を得ることができるが、その機械的性質をも加味すれば、セリア含有量をジルコニア全量に関して8〜12モル%、より好ましくは10〜12モル%とすることが好ましい。8モル%未満であると、準安定相である正方晶の量が不十分となって、正方晶に対する単斜晶の割合が増加するため、焼結後に割れやマイクロクラックなどが発生しやすく、機械的性質が低下する恐れがある。一方、12モル%を越えると、高温安定相である立方晶が出現し始め、正方晶に対する立方晶の割合が増加するため、単斜晶の場合と同様に機械的性質の改善効果が十分に得られなくなる恐れがある。
【0017】
尚、本発明のジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体は、高誘電率を有する他の安定化剤として、セリア以外にイットリア(Y23)を使用しても良い。また、高強度化の観点からは、チタニア(TiO2)、カルシア(CaO)およびマグネシア(MgO)からなるグループから選択される少なくとも一種をさらに使用しても良い。
【0018】
チタニアは、正方晶ジルコニアの安定化剤として作用するので、応力誘起相変態が生じる臨界応力を上昇させてジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体の高強度化を図るのに有効である。また、チタニアはジルコニア粒子の粒成長を促進させる効果を有するので、後述するように、ジルコニア粒子内に多くのアルミナ粒子を分散させることができ、複合セラミック焼結体のさらなる高強度化を図る上で有効である。上記した効果を得るには、例えば、チタニア含有量をジルコニア全量に関して、0.02〜4モル%、特に0.05〜1モル%とすることが好ましい。チタニア含有量が0.02モル%未満では、十分なジルコニア粒成長効果が得られない恐れがある。一方、4モル%を超えると、逆にジルコニア粒子の異常粒成長が起こりやすくなってジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体の機械的強度が低下する恐れがある。
【0019】
マグネシア及びカルシアは、正方晶ジルコニアの安定化剤として作用し、ジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体の高強度・高靭性に寄与すると共に、第1相のジルコニア粒子と第2相のアルミナ粒子との粒界整合性を改善し、ジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体の粒界強度を高める効果がある。また、マグネシウムもしくはカルシウムを含む複合酸化物の針状結晶がジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体中に第3相として生成される場合は、複合セラミック焼結体のさらなる高靭性化に寄与する。上記した効果を得るためには、例えば、マグネシア及びカルシアの少なくとも一方を、0.01〜0.1モル%、特に0.05〜0.1モル%とすることが好ましい。含有量が0.01モル%未満では、安定化剤としての効果が十分得られない恐れがある。一方、0.1モル%を超えると、逆に正方晶ジルコニアの安定化を阻害する恐れがある。また、マグネシアを使用する場合は、第3相として上記した針状結晶が異常成長して強度低下をもたらす恐れもある。
【0020】
複合セラミック焼結体中における第2相の含有量は、多くなればなるほど、ジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体の低い誘電正接を得ることができるが、その機械的性質をも加味すれば、0.5容量%以上で50容量%以下であり、特に30〜40容量%とすることが好ましい。アルミナの含有量が0.5容量%未満の場合は、アルミナ添加によるジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体の強度・靭性向上の効果、及び誘電正接の低減効果が十分に得られない恐れがある。一方、40容量%を越えると、アルミナ粒子同士が焼結され、ジルコニア粒子内に取り込まれるアルミナ粒子が減少して焼結体の強度が緩やかに減少に転じ、50容量%を越えると、ジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体のマトリックス相がアルミナ粒子で構成されることになって機械的性質の著しい低下を招く恐れがある。
【0021】
第2相を構成するアルミナ粒子は、第1相を構成するジルコニア粒子の粒界および/あるいは粒内に分散される。特に、アルミナ粒子がジルコニア粒子内に存在する時は、ジルコニア粒子を強化して複合セラミックス焼結体の強度上昇に大きく貢献する。この効果は、複合セラミックス焼結体中の全アルミナ粒子に対するジルコニア粒子内にあるアルミナ粒子の割合が2数量%以上である時に十分に発揮される。
【0022】
また、ジルコニア粒子内に微細なアルミナ粒子を存在させることは、複合セラミックス焼結体の誘電正接(tanδ)を下げる上でも特に有効である。この効果は、複合セラミックス焼結体中の全アルミナ粒子に対するジルコニア粒子内にあるアルミナ粒子の割合が多い時に有効であり、5数量%以上であることが好ましい。一般に、アルミナの含有量が多くなると、ジルコニア粒子内に取り込まれるアルミナ粒子の割合は少なくなる傾向を示し、より好ましいアルミナ含有量30〜40容量%の範囲では、およそ10数量%程度である。このような組織構造を得るためには、出発原料としてのアルミナ出発原料の平均粒径を適切に選択する必要がある。例えば、アルミナ出発原料の平均粒径は、0.2μm以下、より好ましくは0.1μm以下、さらに好ましくは0.05μm以下である。
【0023】
次に、本発明のジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体のジルコニア粒内に存在する微細アルミナ粒子による強度改善メカニズムおよび誘電正接の低下メカニズムについて考察する。正方晶ジルコニアの結晶粒内に取り込まれた微細なアルミナ粒子は、ジルコニアとアルミナとの熱膨張差に起因する局所的な残留応力場を形成する。この残留応力場は、正方晶から単斜晶への応力誘起相変態に要する臨界応力の増大をもたらし、結果的にジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体の高強度化をもたらす。また、この残留応力場は、ジルコニア結晶粒内に転位、および転位がパイルアップしたサブグレインバウンダリーを形成するので、結晶粒子の細分化による高強度化にも寄与する。
【0024】
一方、誘電正接の低下メカニズムに関しては、正方晶ジルコニア結晶粒内に取り込まれた微細なアルミナ粒子が均一に分散する構造とすることで、ジルコニア結晶粒自身の電子伝導性成分が有効に小さくなり、いては、ジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体全体の電子伝導性成分が小さくなる。すなわち、このような構造が高絶縁化に有効に寄与するため、損失成分が小さくなって誘電正接が低く抑えられるものと考えられている。
【0025】
次に、本発明にかかる高周波回路用ジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体の製造方法の一例について説明する。まず、出発原料として、上記した配合量となるようにジルコニアとアルミナの混合粉末を調整する。必要に応じて、イットリア、チタニア、カルシアおよび/あるいはマグネシアを所定量添加する。尚、出発原料の製造履歴や混合粉砕条件に特に限定はないが、適切な条件で混合粉末を焼結した時に、ジルコニア結晶粒内に微細なアルミナ粒子が効率よく取り込まれるように混合粉末の平均粒子径を制御することが好ましい。
【0026】
次いで、この混合粉末を成形して所定の形状の圧粉体を得た後、圧粉体を大気圧下で1300℃以上の温度で常圧焼結する。成形方法としては、例えば、一軸加圧成形のような金型成形、射出成形、押出し成形、ドクターブレード成形、あるいは静水圧加圧成形等を採用することができる。また、焼結方法としては、常圧焼結以外にもホットプレス焼結、ガス圧焼結、熱間静水圧加圧焼結(HIP)等を採用することができる。このようにして本発明の高周波回路用ジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体を得ることができる。
【0027】
このようにして得られたジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体は、従来のイットリア系安定化正方晶ジルコニア(Y−TZP)と同等の強度、硬度を有し、且つY−TZPよりも高靭性であるとともに、10GHzまでの高周波信号に対して、30以上の比誘電率と1x10-4以下の誘電正接を有する。
【0028】
(実施例)
本発明の高周波回路用ジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体を実施例に基づいてより具体的に説明する。尚、以下の実施例は本発明の好ましい一形態を紹介するものであって、本発明を限定するものではない。
【0029】
ジルコニア全量に対してセリアを10モル%を含有するジルコニア粉末に、チタニア粉末をジルコニア全量に対して0.05モル%添加し、エタノールを溶媒として24時間湿式ボールミルで粉砕/混合、乾燥して第1混合粉末を得た。使用したジルコニア粉末およびチタニア粉末の比表面積は、それぞれ15m2/gおよび25m2/gである。次いで、この第1混合粉末を大気中、950℃で3時間仮焼した。
【0030】
得られた仮焼粉末に気相法により合成された平均粒径0.05μmのα−アルミナ粉末をジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体全体に対して30容量%となるように添加し、エタノールを溶媒として24時間湿式ボールミルで粉砕/混合、乾燥して第2混合粉末を得た。この第2混合粉末を、10MPaの条件下で一軸加圧成形を行うとともに、150MPaの条件下で冷間静水圧加圧成形することにより所定形状の成形体を得た。この成形体を大気中、1450℃で3時間の条件下で常圧焼結し、本実施例のジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体を得た。
【0031】
得られたジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体の結晶相をX線回折により同定した。その結果、ジルコニア結晶相は、95容量%以上の正方晶と5容量%以下の単斜晶からなり、立方晶は認められなかった。また、走査電子顕微鏡および透過型電子顕微鏡により組織観察を実施したところ、一部微細なアルミナ粒子がジルコニア粒子内に存在することが観察された。さらに、ジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体の研磨面を熱処理し、走査型電子顕微鏡を用いてジルコニア及びその粒界に存在するアルミナ粒子の平均粒径をインターセプト法により求めた結果、それぞれ0.35μmおよび0.08μmであった。
【0032】
次に、全アルミナ粒子に対するジルコニア粒内に存在するアルミナ粒子の割合(R)を求めた。この割合(R)を求めるにあたっては、ジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体の透過型電子顕微鏡による観察、およびジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体の熱処理した研磨面の走査型電子顕微鏡による観察において、その視野に存在するすべてのアルミナ粒子の個数(S)とジルコニア粒子内に存在するアルミナ粒子の個数(n)とをぞれぞれカウントし、R(%)=(n/S)×100の式より算出した。その結果、本実施例のジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体ジルコニア粒子内に存在するアルミナ粒子の割合(R)は、およそ8〜12%の範囲内であった。
【0033】
また、ジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体を切断、研削加工、表面研磨して端面がフラットな研磨試料を作製した。この研磨試料の室温における3点曲げ強度をJIS R 1601に規定された方法により測定するとともに、破壊靭性値をIF法により測定した。その結果、3点曲げ強度は1200MPaであり、破壊靭性値は18.5MPa・m1/2であった。
【0034】
さらに、121℃、1.2気圧の飽和水蒸気雰囲気下で、6、12、18、36、72、および108時間の異なる時間条件下でオートクレーブ試験を実施した。ジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体試料は鏡面研磨され、試験前の表面粗さは0.03μmRaであった。また試験前に定量した単斜晶ジルコニアの量は1.5容量%であった。108時間のオートクレーブ試験を実施した後でさえ、本試料の鏡面に全く変化は認められなかった。また、単斜晶ジルコニア量の経時変化についても評価したが、2.0容量%(6時間)、2.6容量%(12時間)、2.6容量%(18時間)、2.2容量%(36時間)、2.5容量%(72時間)、2.7容量%(108時間)とほとんど変化がなく、この結果と対応するように強度にも有意な変化は認められなかった。
【0035】
尚、比較例1として、3モルのイットリアを安定化剤として使用して作製したイットリア安定化正方晶ジルコニア(Y−TZP)焼結体を使用し、上記と同じ条件下でオートクレーブ試験を実施した。試験前の表面粗さは0.03μmRaであり、単斜晶ジルコニアの量は0.5容量%であった。108時間オートクレーブ試験後の表面粗さは0.25μmRaに増大し、単斜晶ジルコニアの量は79.5容量%にまで増加していることが確認された。この試験では、Y−TZPの本質的欠点であるとされる低温劣化挙動が顕著に観察され、焼結体の著しい強度低下が確認される結果となった。このオートクレーブ試験の結果は、本発明のセリアを安定化剤として含有するジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体が上記のような過酷な試験条件下でも安定して使用可能であることを示唆している。
【0036】
さらに、トリプレート共振法により、3層からなるフィルター回路を構成し、図1に示す計測システムにより10GHzにおける誘電特性を測定した。尚、測定試料の作製及び測定は以下のように行った。まず、各々が110mm×40mm×1.6mmの寸法を有する2枚のジルコニアーアルミナ複合セラミック焼結体10を作製し、その表裏全面に無電解メッキにて1μm、ついで電解メッキにより20μmの厚さの銅被膜を形成した。焼結体の一方には、その片面側に図1(b)の平面図に示すようなトリプレート共振パターン30をエッチングにて形成した。また、他方の焼結体においては、片面の銅被膜全面をエッチングにて除去した。尚、双方の全面メッキ面は、グランドベタパターン面20とした。
【0037】
これら2枚のジルコニアーアルミナ複合セラミック焼結体を、図1(a)に示すように対向させて重ね、計測治具40中に挿入し適度に加圧した。次いで、共振周波数をネットワークアナライザ50により計測し、その透過特性(損失値と周波数)を読みとって比誘電率と誘電正接を算出した。測定は10個の試料について行い、その平均値を代表特性とした。尚、本試験においては、比較例2として純度96%のアルミナ基板を用い、上記と同様にして誘電特性を測定した。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
Figure 0004356274
【0039】
これらの測定データより、波長短縮率(=1/√εr)、および誘電体損失(=27.3・f・√εr・tanδ/c)を算出した。結果を表2に示す。尚、fは周波数であり、cは光速を示す。
【0040】
【表2】
Figure 0004356274
【0041】
以上の結果より、本発明のジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体は、従来のアルミナ基板に比較して、波長短縮率の比(実施例の波長短縮率/比較例の波長短縮率)よりサイズを57.2%に小型化できることがわかる。また、誘電体損失の比(比較例の誘電体損失−実施例の誘電体損失)より、従来のアルミナ基板の誘電体損失と比較して1.04dB低減できることがわかる。
【0042】
ところで、本発明のジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体は、高周波用配線基板として、単層用、多層用配線基板のいずれにも適用可能である。例えば、単層基板の場合は、前述したようにジルコニアーアルミナ複合セラミック焼結体基板全面にメッキ等により銅被膜を形成し、次いで、必要な回路パターンをエッチングにより形成することができる。尚、回路形成方法は、前述した方法に限られるものではなく、印刷法など通常用いられている方法がそのまま適用できる。また、多層基板の場合も同様に、印刷多層法や、コファイアー法等の製造方法を適用することができる。ここに、コファイアー法とは、例えば、スルーホールが形成されたグリーンシートに、タングステン、あるいはモリブデン等のペーストを印刷することにより、スルーホールへのペーストの充填、回路の形成を行い、その後、多層回路が形成されるようにグリンシートをプレス積層し、1400〜1500℃で焼結することにより、多層基板を得る方法である。
【0043】
【発明の効果】
本発明のジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体は、少なくともセリア(CeO2)を含有し、90容量%以上が正方晶ジルコニア粒子でなる第1相と、第1相中に分散されるアルミナ(Al23)粒子でなる第2相とでなり、高周波領域に至るまで、高い誘電率と極めて低い誘電正接を有するとともに、従来のアルミナ焼結体と比較して飛躍的に高い機械的特性を併せ持つ。
【0044】
特に、第2相のアルミナ粒子の一部を第1相のジルコニア粒子内に存在させるとともに、複合セラミックス焼結体中の全アルミナ粒子に対するジルコニア粒子内にあるアルミナ粒子の割合が5数量%以上である場合は、複合セラミックス焼結体の機械的性質および誘電性能のさらなる向上を達成することができる。
【0045】
このように、本発明のジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体は、小型超高周波用アンテナ材料等に好適に使用される高周波回路用無機材料としてその利用価値が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、トリプレート共振法による誘電特性の計測システムを示す概略図であり、(b)は測定試料の一方の表面に形成したトリプレート共振パターンを示す平面図である。
【符号の説明】
10 ジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体
20 グランドベタパターン面
30 トリプレート共振パターン
40 計測治具
50 ネットワークアナライザ

Claims (3)

  1. 少なくともセリア(CeO)を含有し、90容量%以上が正方晶ジルコニア(ZrO)粒子でなる第1相と、前記第1相中に分散されるアルミナ(Al)粒子でなる第2相とを含む高周波回路用ジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体であって、この複合セラミック焼結体中における第2相の含有量が0.5〜50容量%であると共に、上記第2相のアルミナ粒子の一部が第1相のジルコニア粒子内に存在することを特徴とする高周波回路用ジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体。
  2. 10GHzまでの高周波信号に対して、30以上の比誘電率と1x10 −4 以下の誘電正接を有することを特徴とする請求項1に記載の高周波回路用ジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体。
  3. 請求項1又は2に記載のジルコニア−アルミナ複合セラミック焼結体でなる基板の表面および内部の少なくとも一方に回路を形成してなる高周波用配線基板
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